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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165374
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】推進システム
(51)【国際特許分類】
   B64D 27/24 20240101AFI20241121BHJP
   B64D 33/08 20060101ALI20241121BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B64D27/24
B64D33/08
H02K9/19 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081523
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高畑 良一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大祐
(72)【発明者】
【氏名】大野 友幹
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 俊
(72)【発明者】
【氏名】川島 徹也
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB01
5H609PP02
5H609PP16
5H609QQ04
5H609QQ08
5H609RR51
(57)【要約】
【課題】冗長性と冷却性能の低下を抑制する推進システムを提供する。
【解決手段】本発明の推進システムSは、電動航空機100のプロペラ201~303を回転させるモータ10と、モータ10へ電力を供給するインバータ20と、複数のモータ10と複数のインバータ20とを冷却する冷媒を流す冷媒配管70と、冷媒配管70と接続され冷媒を送出するポンプ60と、冷媒配管70と接続され冷媒の熱を放出するラジエータ50L、50Rと、冷媒を流す複数の冷媒配管70を何れかに切り替える第一切替器110L、110Rと、第一切替器110L、110Rを制御する制御部400とを備え、ポンプ60とラジエータ50L、50Rを接続する冷媒配管70M1~70M4は複数あり、制御部400は冷媒配管70内の冷媒の圧力が正常範囲から逸脱した場合に第一切替器110L、110Rを切替え制御している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動航空機のプロペラを回転させるモータと、
前記モータへ電力を供給するインバータと、
複数の前記モータと複数の前記インバータとを冷却する冷媒を流す冷媒配管と、
前記冷媒配管と接続され前記冷媒を送出するポンプと、
前記冷媒配管と接続され前記冷媒の熱を放出するラジエータと、
前記冷媒を流す複数の前記冷媒配管を何れかに切り替える第一切替器と、
前記第一切替器を制御する制御部とを備え、
前記ポンプと前記ラジエータを接続する前記冷媒配管は複数あり、
前記制御部は前記冷媒配管内の前記冷媒の圧力が正常範囲から逸脱した場合に前記第一切替器を切替え制御する
ことを特徴とする推進システム。
【請求項2】
請求項1に記載の推進システムにおいて、
前記冷媒配管、前記ポンプ、および前記ラジエータは、冷却システムを構成し、
前記冷媒配管は他の前記冷却システムと第二切替器を通じて接続され、
前記制御部は、前記冷媒配管内の前記冷媒の圧力が正常範囲から逸脱した場合に前記第二切替器を切替え、前記冷媒配管を他の前記冷却システムと接続されるように制御する
ことを特徴とする推進システム。
【請求項3】
請求項1に記載の推進システムにおいて、
前記冷媒配管、前記ポンプ、および前記ラジエータは、冷却システムを構成し、
前記冷媒配管は他の前記冷却システムと第二切替器を通じて接続され、
前記制御部は、前記冷媒配管内の前記冷媒の温度が正常範囲から逸脱した場合に前記第二切替器を切替え、前記冷媒配管を他の前記冷却システムと接続されるように制御する
ことを特徴とする推進システム。
【請求項4】
請求項1に記載の推進システムにおいて、
前記冷媒配管、前記ポンプ、および前記ラジエータは、冷却システムを構成し、
前記冷媒配管は他の前記冷却システムと第二切替器を通じて接続され、
前記制御部は、前記第一切替器と前記第二切替器のそれぞれの切り替えに係わらず、前記冷却システムの前記冷媒配管と、前記他の冷却システムの冷媒配管とに冷媒が流れるように制御する
ことを特徴とする推進システム。
【請求項5】
請求項1に記載の推進システムにおいて、
前記モータと前記インバータと前記ポンプのそれぞれの温度を検出する温度センサを備え、
前記冷媒配管、前記ポンプ、および前記ラジエータは、冷却システムを構成し、
前記冷媒配管は、他の前記冷却システムと第二切替器を通じて接続され、
前記制御部は、前記モータの温度と前記インバータの温度と、前記ポンプの温度と、前記冷媒配管内の前記冷媒の温度とに基づいて前記第一切替器と、前記第二切替器とを切替え制御することを特徴とする推進システム。
【請求項6】
請求項1に記載の推進システムにおいて、
前記冷媒配管、前記ポンプ、および前記ラジエータは、冷却システムを構成し、
前記冷媒配管は、他の前記冷却システムと第二切替器を通じて接続され、
前記制御部は負荷や飛行状態に基づいて前記第一切替器と、前記第二切替器を制御して、
前記モータや前記インバータ、前記ポンプの駆動数を切り替えることを特徴とする推進システム。
【請求項7】
請求項1に記載の推進システムにおいて、
前記冷媒配管の吐出し側に逆流防止機構を設けたことを特徴とする推進システム。
【請求項8】
請求項1に記載の推進システムにおいて、
前記ポンプの内部に逆流防止機構を設けたことを特徴とする推進システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今のCO削減の流れから、ゼロカーボン社会の実現に向け、各国においてCO排出規制が強く求められている。COを排出する化石燃料を使用するエンジンの代替として、動力系統の運転時にCOを排出しない電動化が盛んに進められている。そこで、あらゆるエンジン駆動のモビリティ製品において、将来のパワエレ機器化に対する出力密度の向上が求められている。
【0003】
そのため、世界中のあらゆる気候に対応できること、また、航空機においては、急激な高度の変化に対応できる耐環境性が必須となる。同時に、冷却性能向上、高電圧化ならびに軽量化などへの技術対応が求められている。
特許文献1では、航空機の揚力または推力を発生させるロータを駆動する電動コンポーネント群を備えた航空機において、性能を維持するために電動コンポーネント群を冷却する冷却回路について開示されている。
【0004】
特許文献1は、航空機(10)の揚力と推力の少なくとも一方を発生させるロータ(20)と、ロータ(20)を回転させる複数の電気コンポーネントからなるコンポーネント群(24)と、コンポーネント群(24)を冷却する冷却回路(62)と、を備える冷却システム(60)であって、複数のロータ(20)に対応する複数のコンポーネント群(24)を有し、複数のコンポーネント群(24)は、同じ冷却回路(62)で冷却されている。すなわち、特許文献1は、簡素で軽い冷却システムを提供することを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-157295号公報(図1図2図3図9、段落0055~0064等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術では、すべてのロータ(20)を駆動する際において、一つのロータ(20)に関連する電気系統または機械系統が故障した場合、機体にヨーモメント(回転させる力)が発生するため、故障したロータ(20)と対をなす一方の正常なロータ(20)を停止させる必要がある。
【0007】
さらに、対となる二つのロータ(20)の停止に伴い、該二つのロータ(20)を含む一つの独立した冷却システムも停止させる。そのため、推進システムとして、冗長性ならびに冷却性能の低下を招来する恐れがある。
本発明は上記実状に鑑み創案されたものであり、冗長性と冷却性能の低下を抑制する推進システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明による推進システムは、電動航空機のプロペラを回転させるモータと、前記モータへ電力を供給するインバータと、複数の前記モータと複数の前記インバータとを冷却する冷媒を流す冷媒配管と、前記冷媒配管と接続され前記冷媒を送出するポンプと、前記冷媒配管と接続され前記冷媒の熱を放出するラジエータと、前記冷媒を流す複数の前記冷媒配管を何れかに切り替える第一切替器と、前記第一切替器を制御する制御部とを備え、前記ポンプと前記ラジエータを接続する前記冷媒配管は複数あり、前記制御部は前記冷媒配管内の前記冷媒の圧力が正常範囲から逸脱した場合に前記第一切替器を切替え制御している。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、冗長性と冷却性能の低下を抑制する推進システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る推進システムを備える電動航空機を上から見た模式的平面図。
図2】本発明の第1実施形態に係る推進システムの冷却回路の一部の模式図。
図3】第1実施形態に係る推進システムの冷却回路の模式図。
図4A】比較例(従来)の推進システムの冷却回路の模式図。
図4B】比較例(従来)の推進システムの冷却回路の模式図。
図4C】比較例(従来)の推進システムの冷却回路の模式図。
図5】第2実施形態に係る推進システムの冷却回路の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1図3を参照して、本発明の第1実施形態に係る推進システムSについて説明する。
【0012】
図1に、本発明の第1実施形態に係る推進システムSを備える電動航空機100を上から見た模式的平面図を示す。
第1実施形態に係る推進システムSは、駆動源がモータ10(図3参照)である電動航空機100を想定する。
【0013】
図2に、本発明の第1実施形態に係る推進システムSの冷却回路の一部の模式図を示す。
図3に、第1実施形態に係る推進システムSの冷却回路の模式図を示す。
【0014】
図1に示す推進システムSが適用される電動航空機100は、モータ10へ電力を供給するインバータ20(図3参照)を用いてプロペラ201~203(図1参照)、301~303を駆動し、推力を発生させる。
電動航空機100は、離陸時に出力を上げて離陸する。その後、電動航空機100は、所定高度まで上昇すると、巡航速度で飛行を行う。電動航空機100のコックピットには高度計101k(図1参照)が設けられ、高度が測定されている。
【0015】
図2に示すように、電動航空機100は、胴体(機体)101と、胴体101の左側のプロペラ201、202、203と、胴体101の右側のプロペラ301、302、303とを備えている。
左側のプロペラ201~203と右側のプロペラ301~303を駆動するための電動システム(電力コンポーネント)は、モータ10(10a~10f)とインバータ20(20a~20f)とを備えている。インバータ20(20a~20f)は、電源の直流電力を交流電力に変換して駆動電流をモータ10(10a~10f)に供給する。
インバータ20は、複数のパワー半導体素子(不図示)と、パワー半導体素子を制御する制御回路(不図示)とを有している。インバータ20は、電源の蓄電装置(不図示)に接続されている。インバータ20は、蓄電装置からの直流電力を、モータ10(10a~10f)に適合した交流電力に変換する。
【0016】
蓄電装置は、例えば、キャパシタ、あるいはリチウムイオン電池、ニッケル水素電池などの二次電池により構成される。蓄電装置とモータ10との間の電力の授受は、インバータ20(図3参照)を介して行われる。
モータ10による回転トルクは、減速機(不図示)と差動装置(不図示)を介して、プロペラ201、202、203、301、302、303に伝達される。これにより、図1に示す電動航空機100のプロペラ201、202、203、301、302、303が回転し、機体(胴体101)が巡航する。
【0017】
図3に示すインバータ20は、統合制御装置(不図示)からのトルク指令に基づき、指令通りのトルク出力あるいは発電電力が発生するようにモータ10を制御する。
インバータ20の制御回路は、統合制御装置(不図示)からの指令に基づきパワー半導体素子のスイッチング動作を制御する。パワー半導体素子のスイッチング動作により、モータ10は電動機として運転される。
モータ10を電動機として運転する場合、蓄電装置からの直流電力がインバータ20の直流端子に供給される。インバータ20の制御回路は、パワー半導体素子のスイッチング動作を制御して直流電力を3相交流電力に変換し、モータ10に供給する。なお、第1実施形態に係るモータ10は、磁石埋込型の三相同期電動機である。
【0018】
推進システムSの冷却システム700(700L、700R)は、稼働により高温となるモータ10とインバータ20とを冷却する。
そのため、図3に示す冷却システム700は、冷媒を流す冷媒配管70とポンプ60とラジエータ50L、50Rとを備えている。
ポンプ60は、冷媒配管70に接続され、冷媒を送出する。ラジエータ50L、50Rは、冷媒の熱を放出する。こうして、冷却システム700の冷媒配管70を流れ冷却される冷媒は、モータ10とインバータ20とを冷却する。
【0019】
図2に示すように、冷媒配管70は、機体の胴体101の内部を通るように、胴体101の左側の冷媒配管70Lと、胴体101の右側の冷媒配管70Rが設けられている。つまり、冷媒配管70は、機体である胴体101の左右に分けた冷却システム700を構成している。
【0020】
図3に示す左の冷却システム700Lは、冷媒配管70M1、70M2を介して、ラジエータ50Lと接続され、冷媒配管70M1の異常を補償している。右の冷却システム700Rは、冷媒配管70M3、70M4を介して、ラジエータ50Rと接続され、冷媒配管70M3の異常を補償している。これにより、冷媒配管70L、70Rの冗長性の向上を図っている。
ラジエータ50Lは、左側の冷媒配管70Lを流れる冷媒を冷却する。ラジエータ50Rは、右側の冷媒配管70Rを流れる冷媒を冷却する。
【0021】
<比較例(従来)の冷却回路と第1実施形態の冷却回路>
図4A図4Cに、それぞれ比較例(従来)の推進システム101S、102S、103Sの冷却回路の模式図を示す。
【0022】
図4A図4Cに示す従来の推進システム101S、102S、103Sは、電気系統ならびに機械系統と連動し、対となるプロペラ251、353およびプロペラ252、352およびプロペラ253、351と合わせて冷却システム750a、750b、750cを構成している。
【0023】
図4Aに示す左側のプロペラ251の稼働機構と右側のプロペラ353の稼働機構を有する冷却システム750aは、ラジエータ55aを、左側のモータ15aとインバータ25aおよび、右側のモータ15fとインバータ25fの冷却のために有している。
【0024】
図4Bに示す左側のプロペラ252の稼働機構と右側のプロペラ352の稼働機構を有する冷却システム750bは、ラジエータ55bを、左側のモータ15bとインバータ25bおよび右側のモータ15eとインバータ25eの冷却のために有している。
【0025】
図4Cに示す左側のプロペラ253の稼働機構と右側のプロペラ351の稼働機構を有する冷却システム750cは、ラジエータ55cを、左側のモータ15cとインバータ25cおよび右側のモータ15dとインバータ25dの冷却のために有している。
上述の構成により、冷却システム750a、750b、750cは、簡素で軽い冷却システムを提供している。
しかしながら、図4Aに示すロータ251r、353rの何れか一つに関連する電気系統または機械系統が故障した場合、機体にヨーモメントが発生するため、故障したロータ251r、353rの何れか一つと対をなす一方の正常なロータ251r、353rの何れか他方を停止させる必要がある。
【0026】
或いは、図4Bに示すロータ252r、352rの何れか一つに関連する電気系統または機械系統が故障した場合、機体にヨーモメントが発生するため、故障したロータ252r、352rの何れか一つと対をなす一方の正常なロータ252r、352rの何れか他方を停止させる必要がある。
或いは、図4Cに示すロータ253r、351rの何れか一つに関連する電気系統または機械系統が故障した場合、機体にヨーモメントが発生するため、故障したロータ253r、351rの何れか一つと対をなす一方の正常なロータ253r、351rの何れか他方を停止させる必要がある。
【0027】
さらに、図4Aに示す対となる二つのロータ251r、353rの停止に伴い一つの独立した冷却システム750aも停止させるため、推進システム101Sとして、冗長性ならびに冷却性能の低下を招く恐れがある。
また、図4Bに示す対となる二つのロータ252r、352rの停止に伴い一つの独立した冷却システム750bも停止させるため、推進システム102Sとして、冗長性ならびに冷却性能の低下を招く恐れがある。
【0028】
また、図4Cに示す対となる二つのロータ253r、351rの停止に伴い一つの独立した冷却システム750cも停止させるため、推進システム103Sとして、冗長性ならびに冷却性能の低下を招く恐れがある。
【0029】
これに対して、図3に示す第1実施形態の冷却システム700Lでは、複数のモータ10a~10cと複数のインバータ20a~20cとを冷却する冷媒を流す冷媒配管70Lと、冷媒配管70Lと接続され冷媒を送出するポンプ60a~60cと、冷媒配管70Lに接続され冷媒の熱を放出するラジエータ50Lとを、備えている。
つまり、ポンプ60a~60cから送出される冷媒が流れる冷媒配管70Lが、複数のモータ10a~10cと複数のインバータ20a~20cとラジエータ50Lに接続されている。冷媒配管70Lを流れる冷媒で、複数のモータ10a~10cと複数のインバータ20a~20cが冷却される。そして、ラジエータ50Lで冷媒の温熱が放出される。
【0030】
また、第1実施形態の冷却システム700Rでは、複数のモータ10d~10fと複数のインバータ20d~20fとを冷却する冷媒を流す冷媒配管70Rと、冷媒配管70Rと接続され冷媒を送出するポンプ60d~60fと、冷媒配管70Rに接続され冷媒の熱を放出するラジエータ50Rとを、備えている。
つまり、ポンプ60d~60fから送出される冷媒が流れる冷媒配管70Rが、複数のモータ10d~10fと複数のインバータ20d~20fとラジエータ50Rに接続されている。冷媒配管70Rの冷媒で、複数のモータ10d~10fと複数のインバータ20d~20fが冷却される。そして、ラジエータ50Rで冷媒の温熱が放出される。
【0031】
さらに、第1実施形態の冷却システム700Lでは、各ポンプ60a~60cとラジエータ50Lとをそれぞれ接続する冷媒配管70l1、70l2、70l3が複数ある。
なお、各ポンプ60a~60cの吸込み側と吐出し側にはそれぞれ圧力計が設けられている。圧力計は、制御部400に接続されており、圧力計の検出値情報が制御部400に送信される。
また、第1実施形態の冷却システム700Rでは、各ポンプ60d~60fとラジエータ50Rをそれぞれ接続する冷媒配管70r1、70r2、70r3が複数ある。
【0032】
なお、各ポンプ60d~60fの吸込み側と吐出し側にはそれぞれ圧力計が設けられている。圧力計は、制御部400に接続されており、圧力計の検出値情報が制御部400に送信される。
また、ポンプ60a~60fにはそれぞれ図示しない温度センサが設けられている。ラジエータ50L、50Rの何れかが故障した場合、冷媒が冷却されないので、故障した側のポンプ60a~60cまたはポンプ60d~60fの温度が上昇する。
【0033】
<第一の切替器110L、110Rと第二の切替器111>
図3に示すように、冷却システム700Lは、冷媒を流す冷媒配管70Lを冷媒配管70M1と冷媒配管70M2とに切り替える第一の切替器110Lを有している。そのため、冷媒配管70M1と冷媒配管70M2の何れかに配管異常が生じた場合(冷媒の流れが正常範囲から逸脱した場合)に、第一の切替器110Lで正常な冷媒配管70M1、70M2の何れかに切り換えられる。
【0034】
また、冷却システム700Rは、冷媒を流す冷媒配管70Rを冷媒配管70M3と冷媒配管70M4とに切り替える第一の切替器110Rを有している。そのため、冷媒配管70M3と冷媒配管70M4の何れかに配管異常が生じた場合(冷媒の流れが正常範囲から逸脱した場合)、第一の切替器110Rで正常な冷媒配管70M3、70M4の何れかに切り換えられる。
そして、推進システムSの冷却システム700は、第一の切替器110L、第一の切替器110Rを制御する制御部400を備えている。
【0035】
また、冷媒配管70Rと冷媒配管70Lとの間には、第二の切替器111が接続されている。第二の切替器111は、左右のラジエータ50R、ラジエータ50Lの何れかが故障の場合に、冷媒配管70Rと冷媒配管70Lとを接続して、故障している側の配管に冷却した冷媒を流すことができる。なお、故障している側の配管に冷媒を流す際には、故障している側のポンプ60a~60cまたはポンプ60d~60fを停止する。或いは、冷媒配管70Rの下流側と冷媒配管70Lの下流側とを接続する弁(図示せず)を設け、左右のラジエータ50R、ラジエータ50Lの何れかが故障の場合にのみ接続する構成としてもよい。
【0036】
さらに、制御部400は、冷媒配管70L内の冷媒の圧力と冷媒配管70R内の冷媒の圧力とに基づいて第一の切替器110L、110Rを制御する。つまり、制御部400は、冷媒配管70L内の冷媒の圧力と冷媒配管70R内の冷媒の圧力とが正常範囲にあるか否かに基づいて第一の切替器110L、110Rを制御する。
例えば、ポンプ60a~60cのうち少なくとも何れかの吸込み側の圧力が正常範囲から逸脱して低下した場合や、各モータ10a~10cの温度と各インバータ20a~20cの温度と各ポンプ60a~60cの温度のうち少なくとも何れかが正常範囲から逸脱して上昇した場合、制御部400は、冷媒配管70M1に異常が生じたと判断し第一の切替器110Lを冷媒配管70M2側に切り換える。
【0037】
例えば、冷媒配管70M1に異常が生じた場合、冷媒での冷却が困難になるために、各モータ10a~10cの温度と各インバータ20a~20cの温度と各ポンプ60a~60cの温度のうち少なくとも何れかが正常範囲から逸脱して上昇する。そこで、第一の切替器110Lを冷媒配管70M2側に切り換える。
それでも、改善しない場合、第二の切替器111が切り換えられ、左の冷却システム700Lと右の冷却システム700Rとが接続される。これにより、各モータ10a~10fの温度と各インバータ20a~20fの温度と各ポンプ60a~60fの温度を正常値になるように冷却できる。
【0038】
同様に、冷媒配管70M3に異常が生じた場合、第一の切替器110Rを冷媒配管70M4側に切り換える。それでも、改善しない場合、第二の切替器111が切り換えられ、右の冷却システム700Rと左の冷却システム700Lとが接続される。
また、例えば、ポンプ60a~60cの吐出し側の圧力のうち少なくとも何れかが正常範囲から逸脱して上昇した場合、制御部400は、冷媒配管70M1に異常が生じたと判断し第一の切替器110Lを冷媒配管70M2側に切り換える。それでも、改善しない場合、第二の切替器111が切り換えられ、左の冷却システム700Lと右の冷却システム700Rとが接続される。
【0039】
或いは、例えば、ポンプ60d~60fの吸込み側の圧力のうち少なくとも何れかが正常範囲から逸脱して低下した場合、制御部400は、冷媒配管70M3に異常が生じたと判断し第一の切替器110Rを冷媒配管70M4側に切り換える。それでも、改善しない場合、第二の切替器111が切り換えられ、右の冷却システム700Rと左の冷却システム700Lとが接続される。
ポンプ60d~60fの吐出し側の圧力のうち少なくとも何れかが正常範囲から逸脱して上昇した場合、制御部400は、冷媒配管70M3に異常が生じたと判断し第一の切替器110Rを冷媒配管70M4側に切り換える。それでも、改善しない場合、第二の切替器111が切り換えられ、右の冷却システム700Rと左の冷却システム700Lとが接続される。
【0040】
或いは、左右のラジエータ50R、ラジエータ50Lの何れかが故障の場合に、冷媒配管70Lと冷却システム700Rとが、第二の切替器111を通じて接続される。
また、制御部400は、冷媒配管70L、70R内の冷媒の圧力に基づいて第二の切替器111を制御する。つまり、制御部400は、冷媒配管70L、70R内の冷媒の圧力が正常範囲から逸脱したか否かによって第二の切替器111を制御する。具体的には、制御部400は、冷媒配管70L、70R内の冷媒の圧力が正常範囲から逸脱した場合、第二の切替器111を切換て冷媒配管70Lと冷媒配管70Rが接続されるように制御する。
【0041】
例えば、図3に示すポンプ60a~60cの吸込み側の圧力が低下し、ラジエータ50Rが故障したと判定した場合、第二の切替器111を接続し、冷却システム700Lと冷却システム700Rとを接続する。これにより、冷却システム700Lに冷却システム700Rの冷媒を流し、冷却システム700Rを冷却システム700Lで代替運転できる。
或いは、各モータ10a~10fに設けるサーミスタの温度検出値で各モータ10a~10fの温度が検出される。また、各インバータ20a~20fに設けるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)の動作温度で各インバータ20a~20fの温度が検出される。また、ポンプ60a~60fの温度が温度センサで検出される。各モータ10a~10fの温度検出値の信号情報と、各インバータ20a~20fのIGBTの動作信号情報と、各ポンプ60a~60fの温度情報とは、制御部400に入力される。
【0042】
そして、各モータ10a~10fの温度や、各インバータ20a~20fの温度、各ポンプ60a~60fの温度のうち少なくとも何れかが正常範囲から逸脱して所定温度以上になった場合、制御部400は、ラジエータ50R、ラジエータ50Lの何れかが故障し冷却できないと判定する。この場合、制御部400は、第二の切替器111を接続し、故障した冷却システム700L、冷却システム700Rの何れかから、故障してない冷却システム700L、冷却システム700Rの何れに冷媒を流す。これにより、ラジエータ50R、ラジエータ50Lの何れかが故障した場合も、他の故障しないラジエータ50R、ラジエータ50Lの何れかで冷却を継続できる。なお、第一の切替器110Rまたは第一の切替器110Lを切り替えても改善しない場合に、第二の切替器111を接続する構成としてもよい。
【0043】
また、冷媒配管70Lおよび冷媒配管70Rには、それぞれ図示しない温度センサが設けられている。温度センサは、冷媒配管70L内の冷媒の温度と冷媒配管70R内の冷媒の温度とを測定する。
ラジエータ50R、ラジエータ50Lの何れかが故障した場合、故障した側の冷媒の温度が正常範囲から逸脱して上昇するため、第二の切替器111を接続して、故障していないラジエータ50R、ラジエータ50Lの何れで、故障した側の冷媒の冷却を行う。この場合も、第一の切替器110Rまたは第一の切替器110Lを切り替えても改善しない場合に、第二の切替器111を接続する構成としてもよい。
なお、第一の切替器110Rまたは第一の切替器110Lを切り替えても、問題が改善しない場合、制御部400は、電動航空機100が飛行を中止するようアラームを発するように構成することが好ましい。
【0044】
<電動航空機100の運航>
電動航空機100は、離陸時に出力を上げて離陸する。そして、電動航空機100は、所定高度まで上昇すると、巡航速度で飛行を行う。
電動航空機100の離陸時は、負荷が大きいので、モータ10a~10fやインバータ20a~20f、ポンプ60a~60fなどの複数の電力コンポーネント群の駆動数(駆動速度)を上げて離陸する。
電動航空機100の巡航時は、負荷が離陸時より低下するので、モータ10a~10fやインバータ20a~20f、ポンプ60a~60fなどの複数の電力コンポーネント群の駆動数(駆動速度)を下げて運航する。
【0045】
制御部400は、負荷や飛行状態に基づいて、モータ10a~10fやインバータ20a~20f、ポンプ60a~60fなどの複数の電力コンポーネント群の駆動数(駆動速度)を切り替える。また、制御部400は、第一の切替器110L、110R、第二の切替器111を制御して、モータ10a~10fやインバータ20a~20f、ポンプ60a~60fの運転状態に応じて、冷却用の冷媒を流す量を制御する。
例えば、冷媒配管70M1、70M3を太い径とし、冷媒が多く流れるようにする。一方、冷媒配管70M2、70M4を細い径とし、冷媒が少な目に流れるようにする。そして、第一の切替器110L、110Rを用いて、離陸時には、太い冷媒配管70M1、70M3から冷媒を流し、巡航時には、細い冷媒配管70M2、70M4から冷媒を流す。
或いは、冷媒配管70M1、70M2、70M3、70M4を同じ径とする。そして、離陸時は、第二の切替器111を切断して、ラジエータ50L、50Rで冷却した冷媒を冷却システム700L、700Rにそれぞれ流す。巡航時には、ラジエータ50L、50Rの何れかの運転を停止し、第二の切替器111で冷却システム700L、700Rを接続して、ラジエータ50L、50Rの何れかの運転で冷媒を冷却してもよい。
これにより、無駄なエネルギを消費しないで済む。
【0046】
以上の構成により、電動航空機100において、機体左右で分けた冷却システム700L、700Rとし、かつ左右相互に補償するための冷媒配管70L、70Rと第一の切替器110L、110R、第二の切替器111と、これらを制御する制御部400を設けている。
そして、第一の切替器110L、110Rと第二切替器111のそれぞれの切り替えに係わらず、冷却システム700Lの冷媒配管70Lと、他の冷却システムの冷媒配管700Rとに冷媒が流れるように制御するので、機体(胴体101)の左右のバランスがとれる。
これにより、電気系統や機械系統と独立した冷却システム700(700L、700R)とすることができる。したがって、推進システムSの冗長性を確保し、冷却性能の低下を抑制することができる。
【0047】
<第2実施形態>
図5に、第2実施形態に係る推進システム2Sの冷却回路の模式図を示す。
本発明の第2実施形態に係る推進システム2Sについて説明する。なお、図5中、第1実施形態と同一構成もしくは相当構成には同一の参照符号を付し、相違点を述べる。
第2実施形態では、ポンプ60a~60fならびに電気コンポーネントのモータ10a~10fおよびインバータ20a~20fの吐出し側に、それぞれ逆流防止機構80a~80fを施している。逆流防止機構80a~80fは、例えば逆止弁である。
【0048】
これにより、機体の胴体101の負荷や飛行状態によってプロペラ201~203、301~303を停止・起動させた際、ポンプ60a~60fの吸込み側と吐出し側の差圧によって、ポンプ60a~60fを通じて冷媒が逆流するのを抑制することができる。
そのため、推進システム2Sの冷却システム700の冷却性能を向上することができる。
なお、逆流防止機構80a~80fは、それぞれポンプ60a~60fの内部に備えたものであってもよい。この場合も、ポンプ60a~60fを通じて冷媒が逆流するのを抑制することができる。
【0049】
<<その他の実施形態>>
1.以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
本発明は、前記した実施形態の構成に限られることなく、添付の特許請求の範囲内で様々な変形形態、具体的形態が可能である。
【符号の説明】
【0050】
100 電動航空機、
101 導体、
10、10a~10f モータ、
20、20a~20f インバータ、
50L、50R ラジエータ、
60、60a~60f ポンプ、
70L、70R、70M1、70M2、70M3、70M4 冷媒配管、
80a~80f 逆流防止機構、
110L、110R 第一の切替器(第一切替器)
111 第二の切替器(第二切替器)
201、202、203、301、302、303 プロペラ
400 制御部
500 制御ケーブル、
700L、700R 冷却システム
S、2S 推進システム
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5