(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016538
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】人体用害虫忌避剤組成物および人体用害虫忌避製品
(51)【国際特許分類】
A01N 25/02 20060101AFI20240131BHJP
A01N 47/16 20060101ALI20240131BHJP
A01N 37/18 20060101ALI20240131BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20240131BHJP
A01N 25/30 20060101ALI20240131BHJP
A01P 17/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
A01N25/02
A01N47/16 A
A01N37/18 Z
A01N25/00 101
A01N25/30
A01P17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118742
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000112853
【氏名又は名称】フマキラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕城
(72)【発明者】
【氏名】叶井 真美
(72)【発明者】
【氏名】木本 芙美子
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AC06
4H011BA01
4H011BA05
4H011BB06
4H011BB09
4H011BC03
4H011BC06
4H011DA13
4H011DC05
4H011DD07
4H011DG05
(57)【要約】
【課題】使用時の舞い散りや液だれがなく、しかも、使用感が良好で、肌に均一塗布しやすい泡状となる人体用害虫忌避剤組成物及び人体用害虫忌避製品を提供する。
【解決手段】人体用害虫忌避剤組成物は、忌避有効成分(a)と、ノニオン界面活性剤(b)と、エタノール(c)と、水(d)とを含んでおり、使用時に泡状となる。人体用害虫忌避剤組成物を容器2に収容して人体用害虫忌避製品1を構成することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
害虫に対する忌避効果を有する忌避有効成分(a)と、ノニオン界面活性剤(b)と、エタノール(c)と、水(d)とを含んでおり、泡状となる人体用害虫忌避剤組成物。
【請求項2】
前記忌避有効成分(a)が、イカリジンおよびディートを含む群から選ばれる少なくとも1種を含んでいる、請求項1に記載の人体用害虫忌避剤組成物。
【請求項3】
前記ノニオン界面活性剤(b)は、POEアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油、アルキルアルカノールアミドおよびアルキルポリグルコシドを含む群から選ばれる少なくとも1種を含んでいる、請求項1に記載の人体用害虫忌避剤組成物。
【請求項4】
前記ノニオン界面活性剤(b)の濃度範囲が5質量%以下である、請求項1に記載の人体用害虫忌避剤組成物。
【請求項5】
前記エタノール(c)の濃度は、人体用害虫忌避剤組成物の全質量に対して30質量%以上である、請求項1に記載の人体用害虫忌避剤組成物。
【請求項6】
前記エタノール(c)の濃度は、人体用害虫忌避剤組成物の全質量に対して40質量%以下である、請求項1に記載の人体用害虫忌避剤組成物。
【請求項7】
前記忌避有効成分(a)の濃度範囲が5質量%以上である、請求項1に記載の人体用害虫忌避剤組成物。
【請求項8】
前記忌避有効成分(a)の濃度範囲が15質量%以下である、請求項1に記載の人体用害虫忌避剤組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の人体用害虫忌避剤組成物と、
前記人体用害虫忌避剤組成物が収容され、前記人体用害虫忌避剤組成物を泡状にして吐出する泡吐出容器とを備えている人体用害虫忌避製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人体用害虫忌避剤組成物および人体用害虫忌避製品に関するものであり、詳しくは使用時の液だれや舞い散りがなく、しかも使用感が良好であるとともに肌に均一塗布しやすい泡状となる人体用害虫忌避剤組成物および人体用害虫忌避製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の肌に使用する、蚊をはじめとした害虫用の忌避剤としては、エタノールを含有した液状の製品が広く知られている。液状の製品は使用時に液だれを起こすことが多く、肌に均一塗布しにくいという問題がある。また使用時に噴射された粒子が舞い散り、使用者およびその周囲の者が忌避有効成分等を吸い込むことによる粘膜刺激等の安全性の問題もあるものの、エタノールを含む忌避剤は性状のコントロールが難しく、液体の状態で液だれや舞い散りのない性状にすることが困難であり、舞い散り等の改善を目的とした技術開発が行われている。例えば特許文献1では、揮発抑制成分を用いる方法が提案されており、また特許文献2では、増粘剤を配合する方法が提案されている。その他肌に使用する人体用害虫忌避剤については、使用感の改善や刺激性の軽減等を目的とした様々な技術開発が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/171030号公報
【特許文献2】特開2018-035150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、従来の忌避剤はエタノールを含有した液状のものが多く、使用時に液だれによって服や周囲の物品を汚損してしまうという問題や、肌に均一塗布しづらいという問題があった。また使用時に舞い散った忌避有効成分等を使用者や周囲の者が吸引することにより刺激を感じることもある。エタノールを含む忌避剤は性状のコントロールが難しいことから、これらの問題を、液状を保ったまま解決することが困難であった。
【0005】
本開示は、上述のような従来の問題点を解決するものであり、舞い散りや液だれがなく、しかも、使用感が良好で、肌に均一塗布しやすい泡状となる人体用害虫忌避剤組成物およびその人体用害虫忌避剤組成物を含む製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る人体用害虫忌避剤組成物は、害虫に対する忌避効果を有する忌避有効成分(a)と、ノニオン界面活性剤(b)と、エタノール(c)と、水(d)とを含んでおり、泡状として使用できるものである。
【0007】
忌避有効成分(a)は、イカリジンおよびディートを含む群から選ばれる少なくとも1種とすることができる。忌避有効成分(a)は、イカリジンおよびディートの両方を含んでいてもよい。
【0008】
ノニオン界面活性剤(b)は、POEアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油、アルキルアルカノールアミド、アルキルポリグルコシドから選ばれた界面活性剤であってもよい。
【0009】
また、ノニオン界面活性剤(b)の濃度範囲が5質量%以下であってもよい。
【0010】
エタノール(c)の濃度は、人体用害虫忌避剤組成物の全質量に対して30質量%以上とすることができ、また40質量%以下とすることもできる。
【0011】
忌避有効成分(a)の濃度範囲は5質量%以上とすることができ、また15質量%以下とすることもできる。
【0012】
上記人体用害虫忌避剤組成物を泡状にして吐出する泡吐出容器を備えている人体用害虫忌避製品とすることもできる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、使用時の舞い散りや液だれがなく、しかも、使用感が良好で、肌に均一塗布しやすい泡状人体用忌避剤組成物及び人体用害虫忌避製品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る人体用害虫忌避製品の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る人体用害虫忌避製品1を示すものである。人体用害虫忌避製品1は、泡吐出容器2と、泡吐出容器2に収容された人体用害虫忌避剤組成物とを備えている。泡吐出容器2は、内部に収容された人体用害虫忌避剤組成物を泡状にして吐出することが可能に構成された容器である。このような泡吐出容器2は、従来から様々あり、どのようなタイプのものであっても本泡吐出容器2として使用できる。泡吐出容器2の内容量は、任意に設定することができる。
【0017】
泡吐出容器2の一例を
図1に示しており、泡吐出容器2は、例えば樹脂材等で構成された中空部材からなる容器本体20と、容器本体20の上部に取り付けられた手動ポンプ21とを備えている。手動ポンプ21は、ポンプ機構21aを内蔵しており、このポンプ機構21aの吸入口(図示せず)には人体用害虫忌避剤組成物を吸入する吸入管21bが接続されている。吸入管21bは容器本体20の底壁部近傍まで延びている。手動ポンプ21の上部には、ポンプ機構21aを操作するための操作部21cが設けられている。操作部21cは、上下動可能になっており、図示しない付勢部材等によって上方へ常時付勢されている。使用者が操作部21cを押し下げると、ポンプ機構21aが作動して吸入管21bから液状の人体用害虫忌避剤組成物を吸い上げるとともに、空気を混合させて人体用害虫忌避剤組成物を泡状にして吐出口21dから吐出する。液状の人体用害虫忌避剤組成物に空気を混合して泡状にする機構は、従来から周知であるため、詳細な説明は省略する。
【0018】
また、図示しないが、泡吐出容器はエアゾール容器であってもよい。この場合、容器本体に噴射剤(圧縮ガス、液化ガス等)を収容しておき、操作ボタンを押動することによって噴射剤を人体用害虫忌避剤組成物に混合して人体用害虫忌避剤組成物を泡状にし、吐出口から吐出するように構成することもできる。
【0019】
人体用害虫忌避剤組成物は、例えば泡吐出容器2を利用することで使用時には泡状となる性質を持っている。搬送時や保管時、店頭に並んでいる時には泡吐出容器2内で液状であり、使用時にすぐに泡状になる性質を起泡性ということもできる。つまり、本実施形態に係る人体用害虫忌避剤組成物は、気泡性の人体用害虫忌避剤組成物、または泡状で使用される人体用害虫忌避剤組成物である。
【0020】
<人体用害虫忌避剤組成の組成>
人体用害虫忌避剤組成物は、忌避有効成分(a)と、ノニオン界面活性剤(b)と、エタノール(c)と、水(d)とを含んでいる。人体用害虫忌避剤組成物は、忌避有効成分(a)、ノニオン界面活性剤(b)、エタノール(c)および水(d)以外の他の成分を含んでいてもよい。以下、各成分の詳細について説明するが、以下に示す例は一例である。
【0021】
<忌避有効成分(a)>
忌避有効成分(a)は、害虫に対する忌避効果を有する成分である。対象害虫は、例えば蚊、ブヨ、サシバエ、イエダニ、トコジラミ(ナンキンムシ)、マダニ、ツツガムシ、ヒアリ等であり、これら害虫に対する忌避効果を有する成分であれば、忌避有効成分(a)として使用可能である。
【0022】
このような忌避有効成分(a)としては、特に限定されず、例えばイカリジン、ディート(ジエチルトルアミド)、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル(IR3535)、p-メンタン-3,8-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサジオール、ブチル3,4-ジヒドロ-2,2-ジメチル-4-オキソ-2H-ピラン-6-カルボキシレート、n-ヘキシルトリエチレングリコールモノエーテル、メチル6-n-ペンチル-シクロヘキセン-1-カルボキシレート、ジメチルフタレート、ユーカリプトール、α-ピネン、ゲラニオール、シトロネラール、カンファー、リナロール、テルペノール、カルボン、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、ナフタレン、桂皮、樟脳、レモングラス、クローバ、タチジャコウソウ、ジェラニウム、ベルガモント、月桂樹、松、アカモモ、ベニーロイアル、ユーカリ、インドセダン、等の害虫忌避成分;天然ピレトリン、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、ペルメトリン、シフェノトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、エンペントリン、トランスフルトリン、等のピレスロイド系殺虫化合物等が挙げられる。これらを含む群から選ばれる1種を単独で用いてもよく、これらを含む群から選ばれる任意の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
忌避有効成分(a)としては、水に難溶でエタノールに可溶である忌避有効成分が好ましく、このような忌避有効成分としては、例えば、イカリジン、ディート(ジエチルトルアミド)、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル(IR3535)、p-メンタン-3,8-ジオール等が挙げられる。これらの中でも、肌に塗布した際の使用感や効果の点において、イカリジンまたはディートが好ましい。
【0024】
<ノニオン界面活性剤(b)>
ノニオン界面活性剤(b)は、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル(以下POEアルキルエーテルと記載する)およびPOEソルビタン脂肪酸エステルを含む群から選ばれる少なくとも1種を含んでいる。ノニオン界面活性剤(b)は、人体用害虫忌避剤組成物の起泡性の向上に寄与する成分であればよいので、上述したノニオン界面活性剤以外の界面活性剤を用いてもよい。
【0025】
<水(d)>
水(d)としては特に限定されず、使用可能な水(d)は、例えば、精製水、イオン交換水、温泉水、海洋深層水、植物蒸留水、発酵液、樹皮液等が挙げられる。
【0026】
<他の成分>
他の成分としては、例えばノニオン界面活性剤(b)以外の他の界面活性剤が挙げられる。その他、保湿剤、殺菌・防腐剤、水溶性高分子以外の増粘剤、色素、pH調整剤、香料、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、酸化防止剤等の添加剤等が挙げられる。これらのうち、任意の1種または任意の2種以上を組み合わせて人体用害虫忌避剤組成物に混合してもよい。
【0027】
他の界面活性剤としては、特に限定されず、公知の界面活性剤を適宜用いることができる。具体例としては、ポリエーテル変性シリコーン、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルポリグルコシド等が挙げられ、これらの界面活性剤は忌避剤組成物の安定性を損ないにくく、好ましい。
【0028】
<各成分の濃度>
本実施形態に係る人体用害虫忌避剤組成物中、忌避有効成分(a)の濃度の下限値は、人体用害虫忌避剤組成物の全質量に対して3質量%以上とすることができ、5質量%以上とすることがより好ましい。また忌避有効成分(a)の濃度の上限値は、19質量%以下とすることができ、または15質量%以下、または12質量%以下とすることもできる。忌避有効成分(a)の濃度が上記下限値以上であれば、人体用害虫忌避剤組成物を肌に使用したときに害虫に対する忌避効果が発揮されやすく、上記上限値以下であれば、人体用害虫忌避剤組成物の起泡性がより優れる。
【0029】
ノニオン界面活性剤(b)の濃度の下限値は、人体用害虫忌避剤組成物の全質量に対して0.00000000000001質量%以上とすることができ、または0.001質量%以上、または0.1質量%以上とすることもできる。またノニオン界面活性剤(b)の濃度の上限値は、人体用害虫忌避剤組成物の全質量に対して10質量%以下とすることができ、または5質量%以下、または2質量%以下とすることもできる。ノニオン界面活性剤(b)の濃度が上記上限値を超えると、人体用害虫忌避剤組成物の使用感が低下するおそれがある。
【0030】
エタノール(c)の濃度の下限値は、忌避剤組成物の全質量に対して25質量%以上、または30質量%以上とすることもできる。またエタノール(c)の濃度の上限値は、45質量%以下、または40質量%以下とすることもできる。エタノール(c)の濃度が上記範囲内であれば、泡状忌避剤組成物の安定性が優れる。
【0031】
<忌避剤組成物の調製方法>
人体用害虫忌避剤組成物の調製方法は特に限定されず、公知の方法を利用できる。例えば以下の方法により人体用害虫忌避剤組成物の調製可能である。
【0032】
忌避剤有効成分(a)と、界面活性剤(ノニオン界面活性剤(b)、必要に応じて他の界面活性剤)と、エタノール(c)と、水(d)とを室温で撹拌し、攪拌によってできた混合物に、必要に応じて添加剤(他の成分)を添加し、均一に分散させた後、防腐剤、香料等の添加剤を加え、さらに撹拌する。
【0033】
<作用効果>
人体用害虫忌避剤組成物を泡吐出容器2に収容して使用者が操作部21cを押し下げると、泡状になった人体用害虫忌避剤組成物が吐出口21dから吐出される。人体用害虫忌避剤組成物が泡状になって吐出されるので、使用時に液だれや舞い散りがなく、しかも、使用感が良好で、肌に均一塗布しやすい。
【0034】
また、界面活性剤としてノニオン界面活性剤(b)を用いているので、エタノール(c)を大量に含んでも、起泡性に優れる人体用害虫忌避剤組成物を提供することができる。
【0035】
人体用害虫忌避剤組成物が例えば肌に塗布されることで、害虫に対して忌避効果を発揮する。
【0036】
また、人体用害虫忌避剤組成物を人体の肌等に塗布することにより、例えば蚊、ブヨ、サシバエ、イエダニ、トコジラミ(ナンキンムシ)、マダニ、ツツガムシ、ヒアリ等が忌避するので、それら害虫による被害を抑制できる。
【実施例0037】
以下に実施例および比較例を記載し本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】
<実施例および比較例の作製方法>
表1は、ノニオン界面活性剤の種類とHLB値とを示すものである。
【0039】
【0040】
以下に示す表3~5記載の種類および配合量(数値は質量%を示す)の忌避剤有効成分(a)と、界面活性剤(ノニオン界面活性剤(b)、必要に応じて他の界面活性剤)と、エタノール(c)、水(d)を室温で撹拌し、この混合物に必要に応じて添加剤を添加し、均一に分散させた後、防腐剤、香料等の添加剤を加え、さらに撹拌する。
【0041】
表3~5中の水の「バランス」は、人体用害虫忌避剤組成物の全量が100質量%になる量を示す。
【0042】
<起泡性評価>
起泡性評価について説明する。泡吐出容器(吉野工業製)を用いて、メスシリンダーに5ml(5プッシュ分)吐出し、その際に生じる泡体積を計測し、その計測結果に基づいて起泡性を評価した。表2に基づき、起泡性を点数化した。泡体積10ml以下を0点とし、起泡性なしとみなした。
【0043】
表2は起泡性評価方法を示すものである。表3の「直後」は各実施例および比較例の作製直後における起泡性評価結果、「50℃1カ月後」は作製後50℃の環境で1カ月保管した後の起泡性評価結果である。
【0044】
【0045】
【0046】
表3に示すように、実施例1~10の人体用害虫忌避剤組成物は、ノニオン界面活性剤(b)の種類が、POEアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油、アルキルアルカノールアミド、アルキルポリグルコシドで、忌避有効成分を均一に分散が可能であり、起泡性試験結果も良好であった。しかし、ノニオン界面活性剤(b)の種類がPOEグリコール脂肪酸エステル、テトラオレイン酸POEソルビットである比較例1、2では起泡性が低下した。
【0047】
【0048】
表4には、実施例11~22及び比較例3~5を示している。表4に示すように、忌避有効成分(a)であるイカリジンの濃度範囲が5質量%以上15質量%である実施例11~16は、忌避有効成分が均一に分散され、起泡性試験結果も良好であった。
【0049】
【0050】
表5には、実施例23~25及び比較例6~17を示している。表5に示すように、実施例23~25はエタノール濃度が40質量%含まれているが、起泡性試験結果は良好であった。
【0051】
表4に示すように、実施例17~22の忌避剤組成物は、忌避有効成分としてディートを配合しているが、イカリジンと同様にディートも濃度範囲が5質量%以上15質量%以下で均一分散され、起泡性試験結果も良好であった。しかし、イカリジンの配合量が20質量%である比較例3~5(表4に示す)、エタノールの配合量が50質量%以上である比較例9~14(表5に示す)、水を配合していない比較例15~17(表5に示す)はいずれも起泡性はなかった。
【0052】
【0053】
表6に示すように、実施例26~38の忌避剤組成物はノニオン界面活性剤(b)を5質量%以下含有するが、起泡性試験結果は良好であった。
【0054】
【0055】
表7に示すように、実施例2の人体用害虫忌避剤組成物は、泡吐出容器で吐出すると起泡性を確認できたが、ポンプミスト容器では起泡性を確認できなかった。
【0056】
<舞い散り評価>
人体用害虫忌避剤組成物を被験者5名の前腕内側に均一塗布し、被験者の評価結果より以下の基準で舞い散りを評価した。結果は表8に示した。
【0057】
(評価基準)
〇:5名全員が舞い散りを感じなかった。
×:1名以上が舞い散りを感じた。
【0058】
<液だれ評価>
人体用害虫忌避剤組成物を被験者5名の前腕内側に塗布し、被験者の評価結果より以下の基準で液だれのしにくさを評価した。結果は表7に示した。
【0059】
(評価基準)
〇:5名全員が液だれを感じなかった。
×:1名以上が液だれを感じた。
【0060】
<均一塗布のしやすさ評価>
人体用害虫忌避剤組成物を被験者5名の前腕内側に塗布し、被験者の評価結果より以下の基準で、均一塗布のしやすさを評価した。結果は表8に示した。
【0061】
(評価基準)
〇:5名全員が均一塗布しやすいと感じた。
×:1名以上が均一塗布しにくいと感じた。
【0062】
<噴霧時の粘膜刺激評価>
人体用害虫忌避剤組成物を被験者5名の前腕内側に均一塗布し、被験者の評価結果より以下の基準で、刺激感を評価した。結果は表7に示した。
【0063】
(評価基準)
〇:5名全員が刺激を感じなかった。
×:1名以上が刺激を感じた。
【0064】
【0065】
表8に示すように、実施例5の人体用害虫忌避剤組成物は、市販品A(液体)や市販品B(エアゾール)と比較すると、忌避剤有効成分の舞い散りがなく、使用時の刺激感も少なく、液だれもしなかった。
【0066】
<吸血阻止効果>
忌避剤組成物を被験者3名の前腕内側に均一塗布し、メスのヒトスジシマカ10匹を入れたシリンジを各時間経過後に肌に1分押し当て、吸血した数をカウントし、忌避効果を測定し評価した。結果は表9、表10に示した。
【0067】
【0068】
【0069】
表10に示すように、実施例の人体用害虫忌避剤組成物は、市販品A(液体)と比較しても、吸血阻止効果は同等以上であることが確認された。
【0070】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
以上説明したように、本発明に係る人体用害虫忌避剤組成物および人体用害虫忌避製品は、蚊、ブヨ、サシバエ、イエダニ、トコジラミ(ナンキンムシ)、マダニ、ツツガムシ、ヒアリ等の害虫を忌避するために使用されるものであり、例えば人の皮膚に塗布する虫よけ剤、またペットや家畜の表皮に塗布する虫よけ剤等としての利用も可能である。