IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社デンソーの特許一覧

<>
  • 特開-マルチチップモジュール 図1
  • 特開-マルチチップモジュール 図2
  • 特開-マルチチップモジュール 図3
  • 特開-マルチチップモジュール 図4
  • 特開-マルチチップモジュール 図5
  • 特開-マルチチップモジュール 図6
  • 特開-マルチチップモジュール 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165381
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】マルチチップモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/04 20230101AFI20241121BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01L25/04 Z
H01L23/12 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081531
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】笹木 悠一郎
(72)【発明者】
【氏名】國枝 大佳
(72)【発明者】
【氏名】平松 聖史
(57)【要約】
【課題】LID付き電子部品を含む複数の電子部品が搭載されたモジュール基板を有するマルチチップモジュールにおいて、コアを有するはんだボールを使用することなく、メイン基板に対し一定間隔でBGA接続できるようにする。
【解決手段】LID付き電子部品を含む複数の電子部品が搭載されたモジュール基板10を有するマルチチップモジュールであって、モジュール基板の裏面10Bに実装された第1チップ部品24及び第2チップ部品26と、メイン基板にBGA接続するために裏面に設けられたはんだボール22とを備える。第2チップ部品は、裏面からの高さが第1チップ部品よりも高く、LID付き電子部品との対応位置に実装されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
LID付き電子部品(12)を含む複数の電子部品(12~16)が搭載されたモジュール基板(10)を有するマルチチップモジュールであって、
前記モジュール基板において前記LID付き電子部品が搭載されるおもて面(10F)とは反対側の裏面(10B)に実装された第1チップ部品(24)と、
前記モジュール基板において、前記裏面の前記LID付き電子部品との対応位置で前記第1チップ部品とは異なる位置に実装され、前記裏面からの高さが前記第1チップ部品よりも高い第2チップ部品(26)と、
当該マルチチップモジュールをメイン基板にBGA接続するために、前記裏面の前記第1チップ部品及び前記第2チップ部品とは異なる位置に設けられたはんだボール(22)と、
を備えたマルチチップモジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のマルチチップモジュールであって、
前記第2チップ部品は、前記モジュール基板の前記裏面で、前記モジュール基板を挟んで前記LID付き電子部品と対向する対応領域(12A)内に実装されている、マルチチップモジュール。
【請求項3】
請求項2に記載のマルチチップモジュールであって、
前記第2チップ部品は、前記モジュール基板の前記裏面で前記対応領域内に実装された前記第1チップ部品を囲むように、前記対応領域内に複数実装されている、マルチチップモジュール。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のマルチチップモジュールであって、
前記LID付き電子部品及び前記対応領域は、矩形形状であり、
前記第2チップ部品は、前記対応領域の周囲の各辺に平行で、前記モジュール基板の中心を通る2本の線分(X0,Y0)、若しくは、前記対応領域の周囲の4つの角を対角に結んだ2本の線分(DL1,DL2)にて、前記対応領域を分割した4つの分割領域(DA~DD,D1~D4)内に、それぞれ、1つ以上設けられている、マルチチップモジュール。
【請求項5】
請求項4に記載のマルチチップモジュールであって、
前記4つの前記分割領域内にそれぞれ設けられた4つの前記第2チップ同士を接続することにより形成される四角形(S1,S2)の中心と、前記対応領域の中心(PC)とが、所定の誤差範囲内にて一致している、マルチチップモジュール。
【請求項6】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載のマルチチップモジュールであって、
前記はんだボールは、前記モジュール基板の前記裏面を、前記モジュール基板の外周に沿った外周領域(OA)と、前記モジュール基板の中心を含む中心領域(CA)と、前記外周領域と前記中心領域との間の中間領域(MA)とに分割した3つの領域のうち、前記外周領域及び前記中心領域に、それぞれ、所定密度で複数設けられており、
前記第1チップ部品及び前記第2チップ部品は、前記はんだボールが設けられない前記中間領域に実装されている、マルチチップモジュール。
【請求項7】
請求項1~請求項3の何れか1項に記載のマルチチップモジュールであって、
前記はんだボールは、前記モジュール基板の前記裏面を、前記モジュール基板の外周に沿った外周領域(OA)と、該外周領域よりも内側の内周領域(IA)とに分割した2つの領域内に、それぞれ、所定密度で複数設けられており、
前記内周領域は、前記外周領域に比べて前記はんだボールの密度が粗く、前記第1チップ部品及び前記第2チップ部品は、前記内周領域に実装されている、マルチチップモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、LID付き電子部品を含む複数の電子部品が搭載されたモジュール基板を有するマルチチップモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数の電子部品がモジュール基板に搭載されたマルチチップモジュールを、メイン基板にBGA接続する技術として、2種類のはんだボールを使用することが記載されている。なお、BGAは、ボールグリッドアレイの略である。
【0003】
2種類のはんだボールのうち、第1のはんだボールは、はんだだけで構成され、第2のはんだボールは、銅又はニッケルなどの金属素材にて構成されるコアと、コアを囲むはんだとにより構成される。このため、マルチチップモジュールをメイン基板にBGA接続する際、第2のはんだボールのコアにて、モジュール基板とメイン基板との間隔を一定にして、モジュール基板のメイン基板との対向面に実装されたチップ部品がメイン基板に接触するのを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-48383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、第2のはんだボールは、はんだボールの中に金属素材にて構成されるコアを設ける必要があるので、上記特許文献1に記載の技術では、マルチチップモジュールのコストアップを招くという問題がある。また、モジュール基板にLID付き電子部品が搭載されている場合、第2のはんだボールの位置によっては、モジュール基板が変形し、メイン基板との対向面に実装されたチップ部品がメイン基板に接触することがある。
【0006】
つまり、LID付き電子部品において、LIDは、電子部品が発生した熱を周囲に拡散させて、電子部品の放熱性を高めるためのものであり、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、などの熱伝導性が高い材料にて、蓋状に形成される。なお、LIDは板状に形成されることもある。また、LIDは、電子部品内の集積回路とインターポーザ基板がフリップチップ接続されているような、高性能で発熱の大きい電子部品に設置される。このため、LID付き電子部品は、LIDのない電子部品に比べて、大きく、重くなる。従って、LID付き電子部品が搭載されたモジュール基板をメイン基板にBGA接続すると、LID付き電子部品の重みによってモジュール基板がメイン基板側に沈み込み、チップ部品がメイン基板に接触して、電気回路が故障することが考えられる。
【0007】
本開示の一局面は、LID付き電子部品を含む複数の電子部品が搭載されたモジュール基板を有するマルチチップモジュールにおいて、コアを有するはんだボールを使用することなく、メイン基板に対し一定間隔でBGA接続できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一局面のマルチチップモジュールは、LID付き電子部品(12)を含む複数の電子部品(12~16)が搭載されたモジュール基板(10)を有する。そして、モジュール基板において、LID付き電子部品が搭載されるおもて面(10F)とは反対側の裏面(10B)には、第1チップ部品(24)が実装されている。
【0009】
また、モジュール基板の裏面において、おもて面のLID付き電子部品との対応位置で、第1チップ部品とは異なる位置には、裏面からの高さが第1チップ部品よりも高い第2チップ部品(26)が実装されている。
【0010】
また、モジュール基板の裏面には、マルチチップモジュールをメイン基板にBGA接続するために、第1チップ部品及び第2チップ部品と異なる位置に、はんだボール(22)が設けられている。
【0011】
従って、本開示のマルチチップモジュールによれば、はんだボールを介してメイン基板にはんだ付けされた際に、第2チップ部品によって、メイン基板との間隔を一定に保つことができる。また、第2チップ部品は、モジュール基板の裏面で、LID付き電子部品との対応位置に設けられることから、LID付き電子部品の重みでモジュール基板がメイン基板側に変形するのを抑制できる。
【0012】
このため、本開示のマルチチップモジュールによれば、メイン基板にBGA接続した際に、第1チップ部品がメイン基板に接触して、電気回路が故障するのを抑制できる。また、メイン基板との間隔が短くなって、電気的特性が不安定になるのを抑制できる。
【0013】
また、第2チップ部品によって、モジュール基板とメイン基板との間隔を一定間隔に保持することができるので、マルチチップモジュールをメイン基板にBGA接続するはんだの高さが安定し、はんだ寿命を安定させることができる。つまり、はんだの高さが変化すると、はんだボールの形状が変わるので、基板間でのはんだ寿命のばらつきが大きくなるが、高さを安定させることで、はんだボールの形状変化を抑制し、はんだ寿命を安定させることができる。
【0014】
また、第2チップ部品には、電子部品の裏面からの高さが第1チップ部品よりも高いチップ部品、換言すれば、第1チップ部品よりも体格が大きい既存のチップ部品、を使用することができる。つまり、特許文献1に記載のように、高さ調整のために、金属素材にて構成されるコアを有する特殊なはんだボールを使用する必要がない。このため、本開示のマルチチップモジュールは、特許文献1に記載のものに比べて、低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1実施形態のマルチチップモジュールの構成を表す平面図である。
図2図1に示すマルチチップモジュールのA-A線端面図である。
図3】モジュール基板への第2チップ部品の配置を表す説明図である。
図4】第2チップ部品単体の構成を表す説明図である。
図5】モジュール基板への第2チップ部品の配置の第1変形例を表す説明図である。
図6】モジュール基板への第2チップ部品の配置の第2変形例を表す説明図である。
図7】第2実施形態のマルチチップモジュールの構成を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を説明する。
[第1実施形態]
図2に示すように、本実施形態のマルチチップモジュール2は、モジュール基板10と、モジュール基板10のおもて面(以下、表面)10Fに実装された複数の電子部品12、14、16を備える。
【0017】
複数の電子部品12~16のうち、電子部品12は、リッド付きの集積回路、換言すればLID付き電子部品である。そして、モジュール基板10の表面10Fとは反対側の裏面10Bには、モジュール基板10を挟んで電子部品12と対向する対応領域12A内に、複数の第1チップ部品24が実装されている。
【0018】
なお、電子部品12の裏面は矩形形状であり、モジュール基板10の裏面10Bにおける電子部品12との対応領域12Aも矩形形状である。また、対応領域12Aは、電子部品12と対応する領域であればよく、必ずしも電子部品12の裏面と同じ面積となるように設定する必要はない。つまり、対応領域12Aは、電子部品12の面積よりも広く、電子部品12の周囲を含む領域として設定されてもよい。
【0019】
第1チップ部品24は、ノイズ対策や電子部品12の特性補正などを行うためのものであり、抵抗器、コンデンサ、インダクタなど、所定の電気特性を有する矩形形状の回路素子である。そして、第1チップ部品24には、マルチチップモジュール2の小型・軽量化のために、比較的体格が小さいチップ部品が利用される。
【0020】
また、モジュール基板10の裏面10Bには、マルチチップモジュール2をメイン基板40にはんだ付けするためのはんだボール22が設けられている。このため、マルチチップモジュール2は、このはんだボール22を利用して、メイン基板40にBGA接続可能である。
【0021】
図1に示すように、はんだボール22は、モジュール基板10の裏面10Bの外周領域OA及び中心領域CAに、それぞれ複数設けられている。つまり、モジュール基板10は、矩形形状であり、裏面10Bは、モジュール基板10の外周に沿った大小2つの矩形の枠L1、L2にて、最も外側の外周領域OAと、最も内側の中心領域CAと、これらの間の中間領域MAとに区分されている。そして、はんだボール22は、外周領域OAと中心領域CAに、それぞれ、ほぼ等間隔で複数分散して(すなわち所定密度で)設けられている。
【0022】
これに対し、第1チップ部品24は、モジュール基板10の裏面10Bの電子部品12との対応領域12A内で、はんだボール22が設けられない中間領域MAに設けられている。また、この対応領域12A内の中間領域MAには、モジュール基板10の裏面10Bからの高さが第1チップ部品24よりも高い第2チップ部品26も実装されている。
【0023】
図3に示すように、第2チップ部品26は、上記対応領域12A内の中間領域MAに、対応領域12A内の複数の第1チップ部品24を囲むように、複数設けられている。具体的には、第2チップ部品26は、矩形形状の対応領域12Aの4つの角を対角に結んだ2本の線分DL1、DL2にて対応領域12Aを分割した、4つの分割領域DA、DB、DC、DDに、1つずつ設けられている。また、4つの分割領域DA、DB、DC、DDにおいて、第2チップ部品26は、対応領域12Aの外周の各辺の中心に対応する位置に設けられている。
【0024】
そして、第1チップ部品24及び第2チップ部品26は、モジュール基板10の裏面10Bの電極10Eにペースト状のはんだを介して固定され、リフローはんだ付けにより電極10Eにはんだ付けされる。なお、第2チップ部品26は、第1チップ部品24よりも体格が大きいものの、第1チップ部品24と同様、抵抗器、コンデンサ、インダクタなど、所定の電気特性を有する矩形形状の回路素子である。
【0025】
次に、はんだボール22の裏面10Bからの高さは、第2チップ部品26よりも高くなっている。つまり、モジュール基板10の裏面10Bからの高さは、はんだボール22>第2チップ部品26>第1チップ部品24となっている。従って、マルチチップモジュール2をメイン基板40にはんだ付けする前には、はんだボール22がメイン基板40の基板面に当接される。
【0026】
そして、マルチチップモジュール2をメイン基板40にBGA接続する際には、リフローはんだ付けにより、はんだボール22が溶けることから、マルチチップモジュール2とメイン基板40との間隔が短くなる。
【0027】
一方、第2チップ部品26は、第1チップ部品24に比べて裏面10Bからの高さが高いことから、はんだボール22が溶けることで、メイン基板40に当接される。従って、第2チップ部品26は、モジュール基板10の裏面10Bとメイン基板40の基板面との間隔を、第1チップ部品24がメイン基板40に接触することのない一定間隔以上に保持する、高さ調整部品として機能する。
【0028】
図2に示すように、メイン基板40において、第2チップ部品26との対応位置には、はんだ付け用の電極40Eが設けられている。この電極40Eには、マルチチップモジュール2がメイン基板40にはんだ付けされる前に、ペースト状のはんだが塗布される。
【0029】
このペースト状のはんだは、リフローはんだ付けによりマルチチップモジュール2をメイン基板40にBGA接続する際に溶けることから、第2チップ部品26は、モジュール基板10の電極10Eだけでなく、メイン基板40の電極40Eにもはんだ付けされる。
【0030】
モジュール基板10及びメイン基板40において、第2チップ部品26がはんだ付けされる電極10E、40Eは、各基板に形成された配線パターンのうち、ソルダレジストが設けられていない配線パターンにて構成される。
【0031】
そして、本実施形態では、これらの電極10E、40Eは、モジュール基板10及びメイン基板40の電気回路に接続されない独立した配線パターンにて構成される。このため、第2チップ部品26は、矩形形状の本体部分の両端に設けられた2つの電極層26Eを使って、モジュール基板10の電極10Eとメイン基板40の電極40Eとを、それぞれ、同時に接続することができる。
【0032】
このように、第2チップ部品26を、モジュール基板10及びメイン基板40の電気回路に接続しない高さ調整部品として使用する場合、第2チップ部品26としては、図4Aに示す構成のチップ部品26Aを利用するとよい。
【0033】
すなわち、図4Aに示すチップ部品26Aには、チップ部品26Aの長手方向両端側の2箇所に、導電体層にて構成される電極層26Eが設けられている。そして、その2つの電極層26Eは、チップ部品26Aにおいて、長手方向両端側の端面、及び、モジュール基板10やメイン基板40に対し対向配置される表裏面だけでなく、表裏面の間の両側面にも設けられている。
【0034】
従って、第2チップ部品26として、図4Aに示すチップ部品26Aを使用すれば、チップ部品26Aの表裏面、両側面及び端面の5箇所に設けられた電極層26Eを使って、電極10Eと電極40Eとを、直接、はんだにて接続することができる。つまり、この場合、第2チップ部品26を利用して、モジュール基板10とメイン基板40とを、より強固に接続することができる。
【0035】
このように、表裏面、両側面及び端面に電極層26Eを備えたチップ部品26Aとしては、コンデンサが一般的である。このため、本実施形態のように、第2チップ部品26を、モジュール基板10及びメイン基板40の電気回路に接続されない、独立した高さ調整部品として使用する場合には、第2チップ部品26として、コンデンサのチップ部品を利用するようにするとよい。
【0036】
ところで、第2チップ部品26は、モジュール基板10のメイン基板40からの高さを調整する高さ調整部品として利用できるだけでなく、モジュール基板10とメイン基板40の電気回路を接続する電子部品として利用することもできる。この場合、第2チップ部品26に、コンデンサを利用すると、電気回路の信号経路のインピーダンスが変化して、電気回路の高周波特性に影響を与えることが考えられる。
【0037】
そこで、第2チップ部品26を、モジュール基板10とメイン基板40の電気回路を接続する電子部品として利用する際には、第2チップ部品26として、電気回路の高周波特性に影響を与えることが少ない、抵抗器を利用するとよい。
【0038】
抵抗器のチップ部品は、図4Bに示すチップ部品26Bのように、図4Aに示したチップ部品26Aと同様、長手方向両端側の2箇所に電極層26Eが設けられるものの、各電極層26Eは、チップ部品26Bの両側面に設けられないのが一般的である。
【0039】
また、第2チップ部品26を、モジュール基板10とメイン基板40の電気回路を接続するのに使用する場合、モジュール基板10及びメイン基板40には、それぞれ、第2チップ部品26の一方の電極層26Eに対応する位置に電極10E、40Eを設ける。
【0040】
そして、第2チップ部品26の2つの電極層26Eを、それぞれ、電極10E又は40Eにはんだ付けすることで、第2チップ部品26にて、モジュール基板10とメイン基板40との間の信号経路を形成する。
【0041】
このように、抵抗器のチップ部品26Bを第2チップ部品26として、モジュール基板10とメイン基板40の電気回路を接続するのに利用した場合、各基板間の接続強度は低下するものの、第2チップ部品26により電気回路の特性が変化するのを抑制できる。
【0042】
なお、第2チップ部品26としては、必ずしも、コンデンサ、或いは、抵抗器のチップ部品26A、26Bを用いる必要はなく、インダクタのチップ部品を利用することもできる。つまり、第2チップ部品26としては、抵抗、コンデンサ、インダクタなどの電気特性を有するチップ部品を利用することができる。
【0043】
そして、これらのチップ部品には、既存のものを利用することができ、第2チップ部品26には、既存のチップ部品の中から、第1チップ部品24に比べて体格が大きいチップ部品を選択すればよい。
【0044】
このため、第1チップ部品24及び第2チップ部品26をモジュール基板10へマウントする際には、一般的なマウント装置を利用することができ、マルチチップモジュール2の製造コストが上昇するのを抑制できる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態のマルチチップモジュール2においては、LID付き電子部品を含む複数の電子部品12~16がモジュール基板10の表面10Fに搭載され、モジュール基板10の裏面10Bに複数のはんだボール22が設けられている。このため、マルチチップモジュール2は、この複数のはんだボール22を利用して、メイン基板40にBGA接続可能である。
【0046】
また、モジュール基板10の裏面10Bで、電子部品12との対応領域12Aには、第1チップ部品24及び第2チップ部品26の2種類のチップ部品が設けられている。第2チップ部品26は、モジュール基板10の裏面10Bからの高さが第1チップ部品24よりも高いチップ部品にて構成されている。
【0047】
そして、第2チップ部品26は、モジュール基板10の裏面10Bにおいて、電子部品12との対応領域12Aを4つに分割した分割領域DA~DD内に、対応領域12A内の複数の第1チップ部品24を囲むように、1つずつ設けられている。このため、マルチチップモジュール2をメイン基板40にBGA接続する際、電子部品12の重みによって、モジュール基板10が変形するのを抑制できる。
【0048】
また特に、本実施形態では、第2チップ部品26が、各分割領域DA~DD内で、対応領域12Aの外周の各辺の中心に対応する位置に設けられている。このため、図3に示すように、各分割領域DA~DD内の4つの第2チップ部品26同士を接続することにより形成される四角形S1の中心が、対応領域12Aの中心PCとほぼ一致する。従って、4つの第2チップ部品26には、電子部品12から加わる荷重が、ほぼ均等に分散されて加わり、モジュール基板10の裏面10Bがメイン基板40に対し傾くのを抑制できる。
【0049】
よって、本実施形態のマルチチップモジュール2によれば、4つの第2チップ部品26によって、モジュール基板10の裏面10Bの全域でメイン基板40との間隔が一定となるように、メイン基板40にBGA接続することができる。
【0050】
このため、マルチチップモジュール2をメイン基板40にBGA接続した際に、第1チップ部品24がメイン基板40に接触して、マルチチップモジュール2の電気回路が故障したり、電気回路の電気的特性が不安定になるのを抑制できる。
【0051】
また、4つの第2チップ部品26によって、モジュール基板10とメイン基板40との間隔を一定間隔に保持することができるので、マルチチップモジュール2がメイン基板40にBGA接続される部分のはんだの高さも安定する。その結果、はんだボール22の形状変化を抑制し、はんだ寿命を安定させることができる。
【0052】
また、第2チップ部品26には、モジュール基板10の裏面10Bからの高さが第1チップ部品24よりも高いチップ部品を使用すればよく、特許文献1に記載のように、高さ調整のために、コアを有する特殊なはんだボールを使用する必要がない。このため、本実施形態のマルチチップモジュール2は、特許文献1に記載の技術に比べて、低コストで製造することができる。
【0053】
(第1変形例)
本実施形態では、第2チップ部品26は、モジュール基板10の裏面10Bの4つの分割領域DA~DD内で、対応領域12Aの外周の各辺の中心に対応する位置に設けられるものとして説明した。
【0054】
しかし、各分割領域DA~DD内での第2チップ部品26の位置は、必ずしもこのように設定する必要はなく、図5に示すように、対応領域12Aの外周の各辺の中心から外れた任意の位置に設定するようにしてもよい。
【0055】
このようにしても、マルチチップモジュール2をメイン基板40にBGA接続する際に、4つの第2チップ部品26によって、モジュール基板10を、電子部品12との対応領域12Aの中心周りで支持することができる。このため、電子部品12の重みによって、モジュール基板10が変形し、第1チップ部品24がメイン基板40に接触するのを抑制できる。
【0056】
なお、第2チップ部品26を、各分割領域DA~DD内の任意の位置に設ける場合、4つの第2チップ部品26同士を接続することにより形成される四角形S2の中心が、対応領域12Aの中心PCと所定の誤差範囲内で一致するようにするとよい。
【0057】
この場合、所定の誤差範囲は、例えば、電子部品12との対応領域12Aの長さに対し、ずれ量が10%以内となるようにすればよい。そして、このようにすれば、電子部品12から加わる荷重が、4つの第2チップ部品26にほぼ均等に分散されて加わることから、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
(第2変形例)
本実施形態では、第2チップ部品26は、対応領域12Aの4つの角を対角に結んだ2本の線分DL1、DL2にて分割された、対応領域12Aの4つの分割領域DA、DB、DC、DDに設けられるものとして説明した。
【0059】
これに対し、第2チップ部品26は、図6に示すように、対応領域12Aの周囲の各辺に平行で、対応領域12Aの中心PCを通る2本の線分X0、Y0にて分割された、対応領域12Aの4つの分割領域D1~D4に、設けるようにしてもよい。
【0060】
このようにしても、4つの第2チップ部品26によって、モジュール基板10を、電子部品12との対応領域12Aの中心周りで支持することができることから、第1変形例と同様の効果を得ることができる。
【0061】
また、この場合、4つの第2チップ部品26は、図6に示すように、各分割領域DA~DDにおいて、対応領域12Aの4角と中心PCとの間の中間位置に、対応領域12A内の複数の第1チップ部品24を囲むように配置するとよい。
【0062】
このように4つの第2チップ部品26を配置すれば、4つの第2チップ部品26同士を接続することにより形成される四角形S3の中心が、対応領域12Aの中心PCと一致する。この結果、電子部品12から加わる荷重が、各第2チップ部品26にほぼ均等に分散されて加わることになり、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0063】
[第2実施形態]
第1実施形態では、モジュール基板10の裏面10Bは、外側から外周領域OA、中間領域MA、中心領域CAの3つの領域に区分され、外周領域OAと中心領域CAに、はんだボール22が設けられるものとして説明した。
【0064】
これに対し、本第2実施形態では、図7に示すように、モジュール基板10の裏面10Bが、モジュール基板10の外周に沿った1つの枠L1にて、外周領域OAと内周領域IAとの2つの領域に区分されている。そして、内周領域IAには、外周領域OAに比べて、はんだボール22の配置密度が低くなるよう、はんだボール22が設けられている。
【0065】
このように、モジュール基板10の裏面10Bの全域にはんだボール22が設けられる場合であっても、第1チップ部品24及び第2チップ部品26は、はんだボール22の間隔が広い内周領域IAに配置することができる。
【0066】
そして、図7に示すマルチチップモジュール2において、第2チップ部品26は、LID付きの電子部品12との対応領域12A内に、対応領域12A内の複数の第1チップ部品24を挟むように、2つ設けられている。
【0067】
このため、本実施形態においても、マルチチップモジュール2をメイン基板40にBGA接続する際、電子部品12の荷重が2つの第2チップ部品26に略均等に分散して加わり、モジュール基板10がメイン基板40に対し変形するのを抑制できる。よって、本実施形態のマルチチップモジュール2においても、第1実施形態とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0068】
[他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。
【0069】
(a)例えば、第1実施形態では、第2チップ部品26は、電子部品12との対応領域12Aを4つに分割した分割領域DA~DD又はD1~D4に、それぞれ1つずつ設けられるものとして説明した。
【0070】
しかし、第1実施形態のマルチチップモジュール2においても、第2実施形態と同様、電子部品12との対応領域12Aには、複数の第1チップ部品24を挟むように、2つの第2チップ部品26を設けるようにしてもよい。
【0071】
また、第2実施形態のマルチチップモジュール2においても、第1実施形態と同様、電子部品12との対応領域12A内には、対応領域12A内の複数の第1チップ部品24を囲むように、4つの第2チップ部品26を設けるようにしてもよい。
【0072】
(b)モジュール基板10の裏面10Bの電子部品12との対応領域12Aに設ける第2チップ部品26の数は、上記各実施形態に記載のように、4つ、或いは、2つであってもよいが、例えば、3つ或いは5つ以上であってもよい。
【0073】
つまり、モジュール基板10の裏面10Bの電子部品12との対応領域12Aに、少なくとも1つ以上の第2チップ部品26を設けるようにすれば、本開示の所期の目的を達成できる。
【0074】
(c)上記実施形態では、第1チップ部品24及び第2チップ部品26は、モジュール基板10の裏面10Bで、LID付きの電子部品12との対応領域12Aに設けられるものとして説明した。
【0075】
しかし、対応領域12Aには、少なくとも第2チップ部品26が1つ以上設けられていればよく、第1チップ部品24は、モジュール基板10の裏面10Bで、LID付きの電子部品12との対応領域12Aから外れた位置に設けられていてもよい。このようにしても、第2チップ部品26の重みによって、モジュール基板10がメイン基板40に対し変形するのを抑制できる。
【0076】
また、第2チップ部品26は、LID付きの電子部品12との対応領域12Aだけでなく、更に、対応領域12Aとは異なる位置に設けられていてもよい。この場合、メイン基板40の基板面に対し、モジュール基板10を、より多くの第2チップ部品26で支持することができるため、モジュール基板10がメイン基板40に対し変形するのを、より良好に抑制することができる。
【0077】
(d)上記実施形態では、第2チップ部品26は、マルチチップモジュール2のモジュール基板10の電極10Eと、メイン基板40の電極40Eとの両方にはんだ付けされるものとして説明した。
【0078】
しかし、第2チップ部品26の少なくとも1つが、モジュール基板10の電極10Eとメイン基板40の電極40Eにはんだ付けされ、それ以外の第2チップ部品26は、モジュール基板10の電極10Eにだけはんだ付けされてもよい。また、第2チップ部品26の全てが、モジュール基板10の電極10Eにだけはんだ付けされてもよい。
【0079】
このようにしても、第2チップ部品26にて、モジュール基板10とメイン基板40との間隔を一定間隔以上に保ち、LID付きの電子部品12の重みによってモジュール基板10がメイン基板40側に変形するのを抑制できる。
【0080】
また、この場合、メイン基板40において、モジュール基板10の電極10Eにだけはんだ付けされる第2チップ部品26との対応位置には、電極40Eを設ける必要がなく、設計変更時に、位置変更が必要な電極40Eの数を少なくすることができる。このため、メイン基板40の設計の自由度を高めることができる。
【0081】
(e)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0082】
(f)本開示の技術は、マルチチップモジュールの他、マルチチップモジュールを構成要素とするシステム、マルチチップモジュールのメイン基板へのBGA接続方法など、種々の形態で実現することができる。
【0083】
[本明細書が開示する技術思想]
(1)LID付き電子部品(12)を含む複数の電子部品(12~16)が搭載されたモジュール基板(10)を有するマルチチップモジュールであって、
前記モジュール基板において前記LID付き電子部品が搭載されるおもて面(10F)とは反対側の裏面(10B)に実装された第1チップ部品(24)と、
前記モジュール基板において、前記裏面の前記LID付き電子部品との対応位置で前記第1チップ部品とは異なる位置に実装され、前記裏面からの高さが前記第1チップ部品よりも高い第2チップ部品(26)と、
当該マルチチップモジュールをメイン基板にBGA接続するために、前記裏面の前記第1チップ部品及び前記第2チップ部品とは異なる位置に設けられたはんだボール(22)と、
を備えたマルチチップモジュール。
【0084】
(2)(1)に記載のマルチチップモジュールであって、
前記第2チップ部品は、前記モジュール基板の前記裏面で、前記モジュール基板を挟んで前記LID付き電子部品と対向する対応領域(12A)内に実装されている、マルチチップモジュール。
【0085】
(3)(2)に記載のマルチチップモジュールであって、
前記第2チップ部品は、前記モジュール基板の前記裏面で前記対応領域内に実装された前記第1チップ部品を囲むように、前記対応領域内に複数実装されている、マルチチップモジュール。
【0086】
(4)(2)又は(3)に記載のマルチチップモジュールであって、
前記LID付き電子部品及び前記対応領域は、矩形形状であり、
前記第2チップ部品は、前記対応領域の周囲の各辺に平行で、前記モジュール基板の中心を通る2本の線分(X0,Y0)、若しくは、前記対応領域の周囲の4つの角を対角に結んだ2本の線分(DL1,DL2)にて、前記対応領域を分割した4つの分割領域(DA~DD,D1~D4)内に、それぞれ、1つ以上設けられている、マルチチップモジュール。
【0087】
(5)(4)に記載のマルチチップモジュールであって、
前記4つの前記分割領域内にそれぞれ設けられた4つの前記第2チップ同士を接続することにより形成される四角形(S1,S2)の中心と、前記対応領域の中心(PC)とが、所定の誤差範囲内にて一致している、マルチチップモジュール。
【0088】
(6)(1)~(5)の何れか1項に記載のマルチチップモジュールであって、
前記はんだボールは、前記モジュール基板の前記裏面を、前記モジュール基板の外周に沿った外周領域(OA)と、前記モジュール基板の中心を含む中心領域(CA)と、前記外周領域と前記中心領域との間の中間領域(MA)とに分割した3つの領域のうち、前記外周領域及び前記中心領域に、それぞれ、所定密度で複数設けられており、
前記第1チップ部品及び前記第2チップ部品は、前記はんだボールが設けられない前記中間領域に実装されている、マルチチップモジュール。
【0089】
(7)(1)~(5)の何れか1項に記載のマルチチップモジュールであって、
前記はんだボールは、前記モジュール基板の前記裏面を、前記モジュール基板の外周に沿った外周領域(OA)と、該外周領域よりも内側の内周領域(IA)とに分割した2つの領域内に、それぞれ、所定密度で複数設けられており、
前記内周領域は、前記外周領域に比べて前記はんだボールの密度が粗く、前記第1チップ部品及び前記第2チップ部品は、前記内周領域に実装されている、マルチチップモジュール。
【符号の説明】
【0090】
2…マルチチップモジュール、10…モジュール基板、10F…おもて面、10B…裏面、12~16…電子部品、22…はんだボール、24…第1チップ部品、26…第2チップ部品。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7