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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165384
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】モータ制御装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/689 20150101AFI20241121BHJP
   B60J 1/17 20060101ALI20241121BHJP
   H02P 7/06 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
E05F15/689
B60J1/17 A
H02P7/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081534
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
【テーマコード(参考)】
2E052
3D127
5H571
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA03
2E052DB03
2E052EA14
2E052EB01
2E052EC01
2E052GD08
2E052JA03
3D127AA04
3D127BB01
3D127CB05
3D127CC05
3D127DF04
3D127DF36
3D127FF03
3D127FF05
5H571AA03
5H571BB04
5H571CC04
5H571EE09
5H571FF02
5H571HB01
5H571HD02
5H571LL32
5H571LL34
(57)【要約】
【課題】車両の開閉体のモータ制御装置の信頼性を向上させる。
【解決手段】ドア制御装置は、ウィンドウガラスWGを全閉位置Pcに向けて移動させるときに、通常定速区間SC1からスローストップ区間SC2へ遷移するようにモータを制御する。通常定速区間SC1は、全開位置Poからスロー開始位置P0までの間で一定のバッテリ電圧をモータに印加する。スローストップ区間SC2は、スロー開始位置P0から全閉位置Pcに近づくにつれてモータ印加電圧を減少させ、モータ印加電圧が切替電圧になると、ウィンドウガラスWGが全閉位置Pcに到達するまで、切替電圧をモータに印加する。ドア制御装置は、ウィンドウガラスWGを作動させた作動回数に応じて切替電圧を設定する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた開閉体(WG)を全開位置と全閉位置との間で自動開閉するための駆動力を発生させるモータ(3)を制御するモータ制御装置(1)であって、
前記開閉体を前記全閉位置に向けて移動させるときに、前記全開位置から、前記全開位置と前記全閉位置との間に設定されたスロー開始位置までの間で一定の通常定速電圧を前記モータに印加する通常定速区間から、前記スロー開始位置から前記全閉位置に近づくにつれて前記モータに印加するモータ印加電圧を減少させ、前記モータ印加電圧が予め設定された切替電圧になると、前記開閉体が前記全閉位置に到達するまで、前記切替電圧を前記モータに印加するスローストップ区間へ遷移するように前記モータを制御するように構成された制御部(12)と、
前記開閉体を作動させた作動回数に応じて前記切替電圧を設定するように構成された切替電圧設定部(S240)と
を備えるモータ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ制御装置であって、
前記切替電圧設定部は、前記作動回数と前記切替電圧との間で負の相関を有するように前記切替電圧を設定するモータ制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のモータ制御装置であって、
前記開閉体の位置の原点を設定する原点設定処理を実行しているときにおける前記モータの回転速度に基づいて、前記作動回数と前記切替電圧との対応関係を設定するように構成された初期設定部(S10~S70)を更に備えるモータ制御装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のモータ制御装置であって、
前記車両の外部の気温である外気温に基づいて、前記作動回数と前記切替電圧との対応関係を設定するように構成された外気温設定部(S310~S330)を更に備えるモータ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の開閉体を駆動するモータを制御するモータ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータ本体の回転速度が、第1閾値よりも大きい第2閾値以下となったとき、当該時点でのモータ印加電圧以上の電圧値を、当該時点から開閉体が端位置に到達して停止制御が実行されるまでの間のモータ印加電圧に設定する開閉体駆動モータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-190591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者の詳細な検討の結果、第2閾値の大きさによっては、必要以上の電圧がモータに印加されることとなり、開閉体が端位置に到達したときにおける衝突音が大きくなってしまったり、必要な電圧がモータに印加されずに開閉体を端位置まで到達させることができなくなったりする恐れがあるという課題が見出された。
【0005】
本開示は、車両の開閉体のモータ制御装置の信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、車両に設けられた開閉体(WG)を全開位置と全閉位置との間で自動開閉するための駆動力を発生させるモータ(3)を制御するモータ制御装置(1)であって、制御部(12)と、切替電圧設定部(S240)とを備える。
【0007】
制御部は、開閉体を全閉位置に向けて移動させるときに、通常定速区間から、スローストップ区間へ遷移するようにモータを制御するように構成される。通常定速区間は、全開位置から、全開位置と全閉位置との間に設定されたスロー開始位置までの間で一定の通常定速電圧をモータに印加する。スローストップ区間は、スロー開始位置から全閉位置に近づくにつれてモータに印加するモータ印加電圧を減少させ、モータ印加電圧が予め設定された切替電圧になると、開閉体が全閉位置に到達するまで、切替電圧をモータに印加する。
【0008】
切替電圧設定部は、開閉体を作動させた作動回数に応じて切替電圧を設定するように構成される。
このように構成された本開示のモータ制御装置は、上記の作動回数に応じて、開閉体が全閉位置に到達する時のモータ印加電圧を変化させることができる。このため、本開示のモータ制御装置は、作動回数に応じて開閉体に係る負荷が変動する場合であっても、開閉体を全閉位置に到達させることができ且つ開閉体が全閉位置に到達したときに発生する衝突音が大きくならない適切なモータ印加電圧を作動回数に応じて設定することができる。これにより、本開示のモータ制御装置は、開閉体が閉じ切らない事態の発生を抑制したり、開閉体が全閉位置に到達したときの衝突音で車両の乗員に不快な思いをさせてしまう事態の発生を抑制したりすることができ、モータ制御装置の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態のパワーウィンドウシステムの構成を示すブロック図である。
図2】原点設定処理におけるモータ印加電圧の変化を示すグラフである。
図3】初期設定処理を示すフローチャートである。
図4】原点設定処理におけるモータ回転速度の変化を示すグラフである。
図5】全閉位置へ移動させるときにおける窓位置とモータ印加電圧との関係を示すグラフである。
図6】電圧設定処理を示すフローチャートである。
図7】第2実施形態のパワーウィンドウシステムの構成を示すブロック図である。
図8】外気温設定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
以下に本開示の第1実施形態を図面とともに説明する。
本実施形態のパワーウィンドウシステム1は、車両に搭載され、図1に示すように、ドア制御装置2と、モータ3と、回転検出センサ4と、操作部5と、バッテリ6とを備える。
【0011】
モータ3は、車両ドアのウィンドウガラスWGの自動開閉を行うために、各ドアに取り付けられる。図1では、1つのドアに対する構成を示す。
回転検出センサ4は、モータ3の回転を検出する。回転検出センサ4は、例えば、モータ3のロータと一体に回転する磁石と、磁気検出用のホールICとを用いて構成され、ロータの回転に同期した検出信号として、所定の回転角毎にパルス信号を出力する。
【0012】
操作部5は、車両の乗員が操作可能な場所に設けられる。操作部5は、閉スイッチ、開スイッチおよびオートスイッチを備える。閉スイッチは、オン状態に操作されている間、ウィンドウガラスWGを全閉位置に向けて作動させるためのスイッチである。開スイッチは、オン状態に操作されている間、ウィンドウガラスWGを全開位置に向けて作動させるためのスイッチである。オートスイッチは、オン状態に操作されると、オフ状態に戻った後でも、ウィンドウガラスWGを全閉位置または全開位置に到達するまで作動させ続けるためのスイッチである。
【0013】
バッテリ6は、直流のバッテリ電圧VB(例えば、12V)で、車両各部に電力を供給する。
ドア制御装置2は、バッテリ6から電力供給を受けて作動し、回転検出センサ4からの信号と、操作部5を構成する各スイッチの操作状態とに基づいて、モータ3を駆動することでウィンドウガラスWGを開閉する。
【0014】
ドア制御装置2は、モータ駆動回路11と、制御部12とを備える。
モータ駆動回路11は、例えば、Hブリッジ回路により構成され、制御部12から供給される駆動信号であるPWM信号に従って、正極性または逆極性のバッテリ電圧VBをモータ3に印加する。つまり、モータ3の回転方向、ひいてはウィンドウガラスWGの移動方向(すなわち、開方向または閉方向)は、モータ3に印加するバッテリ電圧VBの極性によって制御される。また、モータ3の回転速度、ひいてはウィンドウガラスWGの移動速度は、PWM信号のデューティによって決まるモータ3の印加電圧によって制御される。モータ3の印加電圧は、デューティ100%のPWM信号で駆動した場合はVBであり、ディーティ50%のPWM信号で駆動した場合はVB/2である。
【0015】
制御部12は、CPU21、ROM22およびRAM23等を備えたマイクロコンピュータを中心に構成された電子制御装置である。マイクロコンピュータの各種機能は、CPU21が非遷移的実体的記録媒体に格納されたプログラムを実行することにより実現される。この例では、ROM22が、プログラムを格納した非遷移的実体的記録媒体に該当する。また、このプログラムの実行により、プログラムに対応する方法が実行される。なお、CPU21が実行する機能の一部または全部を、一つあるいは複数のIC等によりハードウェア的に構成してもよい。また、制御部12を構成するマイクロコンピュータの数は1つでも複数でもよい。
【0016】
車両工場においてパワーウィンドウシステム1が車両に搭載された後に、ウィンドウガラスWGの全閉位置を原点位置として設定する原点設定処理が行われる。
原点設定処理が実行されると、制御部12は、図2に示すように、ウィンドウガラスWGの全開位置から全閉位置まで、デューティ100%(すなわち、バッテリ電圧VB)でモータ3を駆動させることにより、ウィンドウガラスWGを全開位置から全閉位置へ移動させる。そして、モータ3の回転速度が所定の閾値以下となると、制御部12は、ウィンドウガラスWGが全閉位置に到達したと判断して、モータ3の駆動を停止し、更に、現時点におけるウィンドウガラスWGの位置(以下、窓位置)を原点位置に設定する。具体的には、制御部12は、窓位置カウンタの値を0に設定することにより、ウィンドウガラスWGの原点位置を設定する。
【0017】
制御部12は、回転検出センサ4からパルス信号が入力されると、ウィンドウガラスWGが開動作中であるか閉動作中であるかを判断する。そして制御部12は、ウィンドウガラスWGが開動作中である場合には、窓位置カウンタをインクリメント(すなわち、1加算)し、ウィンドウガラスWGが閉動作中である場合には、窓位置カウンタをデクリメント(すなわち、1減算)する。これにより、制御部12は、窓位置カウンタの値に基づいて、窓位置を検出することができる。
【0018】
次に、制御部12が実行する初期設定処理の手順を説明する。初期設定処理は、原点設定処理の開始と同時に開始される。
初期設定処理が実行されると、制御部12のCPU21は、図3に示すように、S10にて、上記の原点設定処理が実行中であるか否かを判断する。ここで、原点設定処理が終了した場合には、CPU21は、S40に移行する。
【0019】
一方、原点設定処理が実行中である場合には、CPU21は、S20にて、回転検出センサ4から入力されるパルス信号に基づいて、モータ3の回転速度を算出する。CPU21は、S30にて、S20で算出した回転速度をRAM23に記憶し、S10に移行する。
【0020】
S40に移行すると、CPU21は、RAM23に記憶された複数のモータ回転速度の中から、最小となるモータ回転速度を、回転速度最小値Rminとして抽出する。
CPU21は、S50にて、回転速度最小値Rminが予め設定された速度閾値J1以上であるか否かを判断する。ここで、回転速度最小値Rminが速度閾値J1未満である場合には、CPU21は、S60にて、後述する第1設定を行い、初期設定処理を終了する。一方、回転速度最小値Rminが速度閾値J1以上である場合には、S70にて、後述する第2設定を行い、初期設定処理を終了する。
【0021】
第1設定は、後述する第1切替回数、第2切替回数および第3切替回数をそれぞれ、第1回数N1、第2回数N2および第3回数N3に設定する処理である。第2回数N2は第1回数N1より大きい。第3回数N3は第2回数N2より大きい。
【0022】
さらに第1設定は、第1切替電圧を第1低速区間電圧V1、第2切替電圧を第2低速区間電圧V2、第3切替電圧を第3低速区間電圧V3に設定する。第2低速区間電圧V2は第1低速区間電圧V1より小さい。第3低速区間電圧V3は第2低速区間電圧V2より小さい。
【0023】
第2設定は、第1切替回数および第2切替回数をそれぞれ、第4回数N4および第5回数N5に設定する処理である。第5回数N5は第4回数N4より大きい。第2設定では、第3切替回数は設定されない。
【0024】
さらに第2設定は、第1切替電圧を第4低速区間電圧V4、第2切替電圧を第5低速区間電圧V5に設定する。第5低速区間電圧V5は第4低速区間電圧V4より小さい。
また、第1低速区間電圧V1は第4低速区間電圧V4より大きく、第2低速区間電圧V2は第5低速区間電圧V5より大きい。
【0025】
図4は、原点設定処理においてウィンドウガラスWGが全開位置から全閉位置へ移動するときのモータ回転速度の変化を示す。図4の線L1で示すように、原点設定処理におけるモータ回転速度の最小値(すなわち、回転速度最小値Rmin)が速度閾値J1以上である場合には、上記の第2設定が行われる。図4の線L2で示すように、原点設定処理におけるモータ回転速度の最小値(すなわち、回転速度最小値Rmin)が速度閾値J1未満である場合には、上記の第1設定が行われる。
【0026】
すなわち、第1設定は、ガラスランによってウィンドウガラスWGに掛かる負荷が大きいときの設定であり、第2設定は、ガラスランによってウィンドウガラスWGに掛かる負荷が小さいときの設定である。
【0027】
図5は、ウィンドウガラスWGを全開位置から全閉位置へ移動させるときにおける窓位置とモータ印加電圧との関係を示す。図5のグラフG1は、初期設定処理で第1設定が行われた場合におけるモータ印加電圧の制御方法を示す。図5のグラフG2は、初期設定処理で第2設定が行われた場合におけるモータ印加電圧の制御方法を示す。
【0028】
図5に示すように、制御部12は、ウィンドウガラスWGを全開位置Poから全閉位置Pcへ移動させるときに、通常定速区間SC1およびスローストップ区間SC2とを設定して、モータ印加電圧を制御する。
【0029】
通常定速区間SC1は、全開位置Poから、全開位置Poと全閉位置Pcとの間に設定されたスロー開始位置P0までの区間である。制御部12は、通常定速区間SC1において、デューティ100%(すなわち、バッテリ電圧VB)でモータ3を駆動させる。
【0030】
スローストップ区間SC2は、スロー開始位置P0から全閉位置Pcまでの区間である。スローストップ区間SC2は、減速区間SC3と低速一定区間SC4とで構成される。
制御部12は、減速区間SC3において、全開位置Poから離れるにつれてデューティ(すなわち、モータ印加電圧)が徐々に小さくなるようにしてモータ印加電圧を制御する。
【0031】
制御部12は、低速一定区間SC4において、100%より小さい一定のデューティでモータ3を駆動させる。
初期設定処理で第1設定が行われた場合と第2設定が行われた場合とで、スローストップ区間SC2における制御が異なる。
【0032】
まず、第1設定が行われた場合において制御部12がスローストップ区間SC2で行う制御を説明する。
制御部12は、ウィンドウガラスWGが全閉位置Pcに到達した回数(以下、作動回数)が第1切替回数(すなわち、第1回数N1)未満である場合には、グラフG1の破線L11で示すように、モータ印加電圧が第1低速区間電圧V1まで低下したときに(すなわち、窓位置が第1低速位置P1に到達したときに)、減速区間SC3から低速一定区間SC4へ移行する。すなわち、制御部12は、低速一定区間SC4において、第1低速区間電圧V1に相当する一定のデューティでモータ3を駆動させる。
【0033】
制御部12は、作動回数が第1切替回数以上であり且つ第2切替回数(すなわち、第2回数N2)未満である場合には、グラフG1の破線L12で示すように、モータ印加電圧が第2低速区間電圧V2まで低下したときに(すなわち、窓位置が第2低速位置P2に到達したときに)、減速区間SC3から低速一定区間SC4へ移行する。すなわち、制御部12は、低速一定区間SC4において、第2低速区間電圧V2に相当する一定のデューティでモータ3を駆動させる。
【0034】
制御部12は、作動回数が第2切替回数以上であり且つ第3切替回数(すなわち、第3回数N3)未満である場合には、グラフG1の破線L13で示すように、モータ印加電圧が第3低速区間電圧V3まで低下したときに(すなわち、窓位置が第3低速位置P3に到達したときに)、減速区間SC3から低速一定区間SC4へ移行する。すなわち、制御部12は、低速一定区間SC4において、第3低速区間電圧V3に相当する一定のデューティでモータ3を駆動させる。
【0035】
制御部12は、作動回数が第3切替回数以上である場合には、グラフG1の実線L14で示すように、モータ印加電圧が最小低速区間電圧Vaまで低下したときに(すなわち、窓位置が最小低速位置Paに到達したときに)、減速区間SC3から低速一定区間SC4へ移行する。すなわち、制御部12は、低速一定区間SC4において、最小低速区間電圧Vaに相当する一定のデューティでモータ3を駆動させる。
【0036】
次に、第2設定が行われた場合において制御部12がスローストップ区間SC2で行う制御を説明する。
制御部12は、作動回数が第1切替回数(すなわち、第4回数N4)未満である場合には、グラフG2の破線L15で示すように、モータ印加電圧が第4低速区間電圧V4まで低下したときに(すなわち、窓位置が第4低速位置P4に到達したときに)、減速区間SC3から低速一定区間SC4へ移行する。すなわち、制御部12は、低速一定区間SC4において、第4低速区間電圧V4に相当する一定のデューティでモータ3を駆動させる。
【0037】
制御部12は、作動回数が第1切替回数以上であり且つ第2切替回数(すなわち、第5回数N5)未満である場合には、グラフG2の破線L16で示すように、モータ印加電圧が第5低速区間電圧V5まで低下したときに(すなわち、窓位置が第5低速位置P5に到達したときに)、減速区間SC3から低速一定区間SC4へ移行する。すなわち、制御部12は、低速一定区間SC4において、第5低速区間電圧V5に相当する一定のデューティでモータ3を駆動させる。
【0038】
制御部12は、作動回数が第2切替回数以上である場合には、グラフG2の実線L17で示すように、モータ印加電圧が最小低速区間電圧Vaまで低下したときに(すなわち、窓位置が最小低速位置Paに到達したときに)、減速区間SC3から低速一定区間SC4へ移行する。すなわち、制御部12は、低速一定区間SC4において、最小低速区間電圧Vaに相当する一定のデューティでモータ3を駆動させる。
【0039】
次に、制御部12が実行する電圧設定処理の手順を説明する。電圧設定処理は、ウィンドウガラスWGが閉動作中であるときに繰り返し実行される処理である。
電圧設定処理が実行されると、制御部12のCPU21は、図6に示すように、S210にて、窓位置カウンタの値に基づいて、ウィンドウガラスWGが全閉位置Pcに到達したか否かを判断する。ここで、ウィンドウガラスWGが全閉位置Pcに到達していない場合には、CPU21は、S230に移行する。一方、ウィンドウガラスWGが全閉位置Pcに到達した場合には、CPU21は、S220にて、作動回数カウンタをインクリメントし、S230に移行する。
【0040】
S230に移行すると、CPU21は、窓位置カウンタの値に基づいて、ウィンドウガラスWGがスロー開始位置P0に到達したか否かを判断する。ここで、ウィンドウガラスWGがスロー開始位置P0に到達していない場合には、CPU21は、電圧設定処理を終了する。
【0041】
一方、ウィンドウガラスWGがスロー開始位置P0に到達した場合には、CPU21は、S240にて、作動回数カウンタの値(すなわち、作動回数)に応じて低速一定電圧を設定し、電圧設定処理を終了する。
【0042】
例えば、上記の第1設定が行われた場合において、作動回数が第1回数N1未満である場合には、CPU21は、低速一定電圧を第1低速区間電圧V1に設定する。作動回数が第1回数N1以上であり且つ第2回数N2未満である場合には、CPU21は、低速一定電圧を第2低速区間電圧V2に設定する。作動回数が第2回数N2以上であり且つ第3回数N3未満である場合には、CPU21は、低速一定電圧を第3低速区間電圧V3に設定する。作動回数が第3回数N3以上である場合には、CPU21は、低速一定電圧を最小低速区間電圧Vaに設定する。これにより、CPU21は、図5のグラフG1で示すようにウィンドウガラスWGの閉動作を制御する。
【0043】
また、上記の第2設定が行われた場合において、作動回数が第4回数N4未満である場合には、CPU21は、低速一定電圧を第4低速区間電圧V4に設定する。作動回数が第4回数N4以上であり且つ第5回数N5未満である場合には、CPU21は、低速一定電圧を第5低速区間電圧V5に設定する。作動回数が第5回数N5以上である場合には、CPU21は、低速一定電圧を最小低速区間電圧Vaに設定する。これにより、CPU21は、図5のグラフG2で示すようにウィンドウガラスWGの閉動作を制御する。
【0044】
このように構成されたドア制御装置2は、車両に設けられたウィンドウガラスWGを全開位置Poと全閉位置Pcとの間で自動開閉するための駆動力を発生させるモータ3を制御する。
【0045】
ドア制御装置2の制御部12は、ウィンドウガラスWGを全閉位置Pcに向けて移動させるときに、通常定速区間SC1から、スローストップ区間SC2へ遷移するようにモータ3を制御するように構成される。通常定速区間SC1は、全開位置Poから、全開位置Poと全閉位置Pcとの間に設定されたスロー開始位置P0までの間で一定のバッテリ電圧VBをモータ3に印加する。スローストップ区間SC2は、スロー開始位置P0から全閉位置Pcに近づくにつれてモータ3に印加するモータ印加電圧を減少させ、モータ印加電圧3が予め設定された切替電圧になると、ウィンドウガラスWGが全閉位置Pcに到達するまで、切替電圧をモータ3に印加する。
【0046】
ドア制御装置2の制御部12は、ウィンドウガラスWGを作動させた作動回数に応じて切替電圧を設定するように構成される。
このようなドア制御装置2は、上記の作動回数に応じて、ウィンドウガラスWGが全閉位置Pcに到達する時のモータ印加電圧を変化させることができる。このため、ドア制御装置2は、作動回数に応じてウィンドウガラスWGに係る負荷が変動する場合であっても、ウィンドウガラスWGを全閉位置Poに到達させることができ且つウィンドウガラスWGが全閉位置Poに到達したときに発生する衝突音が大きくならない適切なモータ印加電圧を作動回数に応じて設定することができる。これにより、ドア制御装置2は、ウィンドウガラスWGが閉じ切らない事態の発生を抑制したり、ウィンドウガラスWGが全閉位置Pcに到達したときの衝突音で車両の乗員に不快な思いをさせてしまう事態の発生を抑制したりすることができ、ドア制御装置2の信頼性を向上させることができる。
【0047】
また制御部12は、作動回数と切替電圧との間で負の相関を有するように切替電圧を設定する。なお、「作動回数と切替電圧との間で負の相関を有する」とは、作動回数の増大に伴い連続的に切替電圧が減少することだけではなく、作動回数の増大に伴い段階的に切替電圧が減少することも含む。
【0048】
これにより、ドア制御装置2は、例えばガラスランのように、作動回数の増大に伴いウィンドウガラスWGに係る負荷が減少する場合において、ウィンドウガラスWGが閉じ切らない事態の発生を抑制したり、ウィンドウガラスWGが全閉位置Pcに到達したときの衝突音で車両の乗員に不快な思いをさせてしまう事態の発生を抑制したりすることができる。
【0049】
また制御部12は、ウィンドウガラスWGの位置の原点を設定する原点設定処理を実行しているときにおけるモータ3の回転速度に基づいて、作動回数と切替電圧との対応関係を設定するように構成される。これにより、ドア制御装置2は、車両工場でパワーウィンドウシステム1が車両に搭載された初期状態におけるウィンドウガラスWGに係る負荷に応じて適切な作動回数と切替電圧との対応関係を設定することができる。
【0050】
以上説明した実施形態において、ドア制御装置2はモータ制御装置に相当し、ウィンドウガラスWGは開閉体に相当し、バッテリ電圧VBは通常定速電圧に相当し、S240は切替電圧設定部としての処理に相当し、S10~S70は初期設定部としての処理に相当する。
【0051】
[第2実施形態]
以下に本開示の第2実施形態を図面とともに説明する。なお第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分を説明する。共通する構成については同一の符号を付す。
【0052】
第2実施形態のパワーウィンドウシステム1は、パワーウィンドウシステム1の構成が変更された点と、初期設定処理の代わりに外気温設定処理を実行する点とが第1実施形態と異なる。
【0053】
第2実施形態のパワーウィンドウシステム1は、図7に示すように、外気温センサ7が追加された点が第1実施形態と異なる。
外気温センサ7は、車両の外部の気温である外気温を検出し、検出結果を示す外気温検出信号を制御部12へ出力する。
【0054】
次に、制御部12が実行する外気温設定処理の手順を説明する。外気温設定処理は、ドア制御装置2の動作中において繰り返し実行される処理である。
外気温設定処理が実行されると、制御部12のCPU21は、図8に示すように、S310にて、外気温センサ7からの外気温検出信号に基づいて、外気温が予め設定された温度閾値J2以上であるか否かを判断する。ここで、外気温が温度閾値J2未満である場合には、CPU21は、S320にて、上記の第1設定を行い、外気温設定処理を終了する。一方、外気温が温度閾値J2以上である場合には、CPU21は、S330にて、上記の第2設定を行い、外気温設定処理を終了する。
【0055】
すなわち、第1設定は、外気温が低いためにガラスランによってウィンドウガラスWGに掛かる負荷が大きいときの設定であり、第2設定は、外気温が高いためにガラスランによってウィンドウガラスWGに掛かる負荷が小さいときの設定である。
【0056】
このように構成されたドア制御装置2は、車両の外部の気温である外気温に基づいて、作動回数と切替電圧との対応関係を設定するように構成される。これにより、ドア制御装置2は、例えばガラスランのように、車両の外気温によってウィンドウガラスWGに係る負荷が変動する場合において、車両の外気温に応じて適切な作動回数と切替電圧との対応関係を設定することができる。
【0057】
以上説明した実施形態において、S310~S330は外気温設定部としての処理に相当する。
以上、本開示の一実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができる。
【0058】
[変形例1]
上記実施形態では、ウィンドウガラスWGが全閉位置Pcに到達した回数を作動回数とした形態を示したが、全閉位置Pcに到達した回数に限定されるものではなく、例えば、作動回数は、全閉位置Pcへ向かって移動させた回数であってもよい。
【0059】
[変形例2]
上記実施形態では、通常定速区間SC1におけるデューティが100%である形態を示したが、通常定速区間SC1におけるデューティは100%より小さくてもよい。
【0060】
本開示に記載の制御部12およびその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部12およびその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部12およびその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサおよびメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されてもよい。制御部12に含まれる各部の機能を実現する手法には、必ずしもソフトウェアが含まれている必要はなく、その全部の機能が、一つあるいは複数のハードウェアを用いて実現されてもよい。
【0061】
上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加または置換してもよい。
【0062】
上述したドア制御装置2の他、当該ドア制御装置2を構成要素とするシステム、当該ドア制御装置2としてコンピュータを機能させるためのプログラム、このプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実体的記録媒体、モータ制御方法など、種々の形態で本開示を実現することもできる。
【符号の説明】
【0063】
2…ドア制御装置、3…モータ、12…制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8