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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165387
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】生分解性樹脂押出発泡体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/14 20060101AFI20241121BHJP
   C08L 3/04 20060101ALI20241121BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20241121BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20241121BHJP
   C08L 101/16 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C08J9/14 CFD
C08L3/04 ZBP
C08L67/02
C08L63/00 Z
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081541
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【復代理人】
【識別番号】100126413
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 太亮
(74)【代理人】
【識別番号】100109601
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 邦則
(72)【発明者】
【氏名】野呂 仁一朗
(72)【発明者】
【氏名】須永 佳祐
【テーマコード(参考)】
4F074
4J002
4J200
【Fターム(参考)】
4F074AA03
4F074AA66A
4F074BA37
4F074BA38
4F074BA75
4F074BA95
4F074BB10
4F074CA22
4F074CC06X
4F074CC22X
4F074DA02
4F074DA13
4F074DA24
4J002AB04W
4J002CD19Y
4J002CF03X
4J002EA016
4J002ED026
4J002FD14Y
4J002GA00
4J200AA06
4J200BA07
4J200BA09
4J200CA09
4J200DA01
4J200EA04
(57)【要約】

【課題】 本発明は、ポリブチレンアジペートテレフタレートと熱可塑性デンプンとの混合樹脂を基材とする、生分解性樹脂を押出発泡させることにより、良好な発泡体を得ることが可能な生分解性樹脂押出発泡体の製造方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 本発明の生分解性樹脂押出発泡体の製造方法は、生分解性樹脂と発泡剤とを押出機にて混練してなる発泡性樹脂溶融物を押出発泡させて押出発泡体を製造する方法であり、該生分解性樹脂がポリブチレンアジペートテレフタレートと熱可塑性デンプンとの混合樹脂を基材とし、該物理発泡剤がジメチルエーテルを含む物理発泡剤であることを特徴とする。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性樹脂と発泡剤とを押出機で混練してなる発泡性樹脂溶融物を押出発泡する生分解性樹脂押出発泡体の製造方法において、
該生分解性樹脂がポリブチレンアジペートテレフタレートと熱可塑性デンプンとの混合樹脂を基材とし、該発泡剤がジメチルエーテルを含む物理発泡剤であることを特徴とする生分解性樹脂押出発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記ポリブチレンアジペートテレフタレートと熱可塑性デンプンとの配合割合が質量比で、ポリブチレンアジペートテレフタレート:熱可塑性デンプン=30:70~90:10である、請求項1に記載の生分解性樹脂押出発泡体の製造方法。
【請求項3】
エポキシ基を有すると共にエポキシ当量が100g/eq.以上600g/eq.以下であるアクリル系ポリマーを用いて前記生分解性樹脂を架橋し、前記押出発泡体のゲル分率を5質量%以上30質量%以下とする、請求項1又は2に記載の生分解性樹脂押出発泡体の製造方法。
【請求項4】
前記生分解性樹脂押出発泡体の見掛け密度が20kg/m以上250kg/m以下である、請求項1又は2に記載の生分解性樹脂押出発泡体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性樹脂押出発泡体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生分解性樹脂としてポリブチレンアジペートテレフタレートが用いられた押出発泡体が知られている(特許文献1)。
しかし、近年、環境意識の高まりから、原材料として植物由来の原料を使用することが求められるなど、環境にやさしい素材が求められてきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2022-511890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、生分解性樹脂押出発泡体の植物度を向上させるために、熱可塑性デンプンを添加した場合には、得られた押出発泡体が収縮しやすくなり、良好な外観を有する押出発泡体を得ることが困難であった。
【0005】
本発明は、ポリブチレンアジペートテレフタレートと熱可塑性デンプンとの混合樹脂を基材とする、生分解性樹脂を押出発泡させることにより、押出発泡後の収縮が少なく、良好な発泡体を得ることが可能な生分解性樹脂押出発泡体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下に示す生分解性樹脂押出発泡体の製造方法が提供される。
[1]生分解性樹脂と発泡剤とを押出機で混練してなる発泡性樹脂溶融物を押出発泡する生分解性樹脂押出発泡体の製造方法において、
該生分解性樹脂がポリブチレンアジペートテレフタレートと熱可塑性デンプンとの混合樹脂を基材とし、該発泡剤がジメチルエーテルを含む物理発泡剤であることを特徴とする生分解性樹脂押出発泡体の製造方法。
[2]前記ポリブチレンアジペートテレフタレートと熱可塑性デンプンとの配合割合が質量比で、ポリブチレンアジペートテレフタレート:熱可塑性デンプン=30:70~90:10である、前記1に記載の生分解性樹脂押出発泡体の製造方法。
[3]エポキシ基を有すると共にエポキシ当量が100g/eq.以上600g/eq.以下であるアクリル系ポリマーを用いて前記生分解性樹脂を架橋し、前記押出発泡体のゲル分率を5質量%以上30質量%以下とする、前記1又は2に記載の生分解性樹脂押出発泡体の製造方法。
[4]前記生分解性樹脂押出発泡体の見掛け密度が20kg/m以上250kg/m以下である、前記1又は2に記載の生分解性樹脂押出発泡体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポリブチレンアジペートテレフタレートと熱可塑性デンプンとの混合樹脂を基材とする生分解性樹脂を押出発泡させる方法であって、押出発泡後の押出発泡体の収縮を抑制して、良好な発泡体を得ることが可能な生分解性樹脂押出発泡体の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1において得られた押出発泡体の切断面の写真の一例である。
図2図2は、比較例1において得られた押出発泡体の切断面の写真の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の生分解性樹脂押出発泡体(以下、押出発泡体又は発泡体ともいう。)の製造方法について、詳細に説明する。
本発明の製造方法においては、生分解性樹脂と発泡剤とを押出機で混練してなる発泡性樹脂溶融物を押出発泡させることにより、押出発泡体が製造される。
【0010】
本発明の製造方法において用いられる生分解性樹脂は、ポリブチレンアジペートテレフタレート(以下、PBATともいう。)と熱可塑性デンプンとの混合樹脂を基材として含有する。
ポリブチレンアジペートテレフタレートは、テレフタル酸と、ブタンジオールと、アジピン酸とを共重合することにより得られる共重合体であり、生分解性を有する熱可塑性樹脂である。なお、ポリブチレンアジペートテレフタレートは、一般に石油由来の樹脂として流通している。
本明細書において、生分解性樹脂とは、土中・水中のバクテリア、菌類、藻類などの微生物の作用によって、物質の分子結合が切断され、最終的に水と二酸化炭素とに分解されることを指し、具体的には、ISO 9408、ISO 9439、ISO 10707、JIS K 6950、JIS K 6951、JIS K 6953又は、JIS K 6955の少なくとも1つの試験において、生分解性を示すものをいう。
【0011】
前記熱可塑性デンプンとは、熱可塑性を有する加工デンプンであり、加熱による流動性を有し、例えば、デンプンの水酸基をエステル化するなどの方法により流動可能にしたものが挙げられる。
ここで、デンプンとは、化学式 (C10)の炭水化物(多糖類)であり、多数のα-グルコース分子がグリコシド結合によって重合した、植物由来の天然高分子化合物である。樹脂中に熱可塑性デンプンを配合することにより、樹脂の植物度を向上させることができる。
【0012】
本発明の生分解性樹脂において、ポリブチレンアジペートテレフタレートと熱可塑性デンプンとの配合割合は、質量比で、ポリブチレンアジペートテレフタレート:熱可塑性樹脂デンプン=30:70~90:10の範囲内であることが好ましい。該配合比率がこの範囲内であれば、押出発泡後の押出発泡体の収縮がより抑えられ、且つ植物度の向上効果が得られるものとなる。
前記観点から、配合比率(質量%)は、40:60~85:15であることがより好ましく、更に好ましくは50:50~80:20である。
【0013】
なお、得られた押出発泡体の収縮は、ストランド状に押出された押出発泡体の場合はストランドの径が小さくなり、シート状に押出された押出発泡体の場合は、シート厚み、シート幅が小さくなる現象として現れる。
【0014】
次に、前記生分解性樹脂の溶融物性(溶融張力、溶融粘度)について説明する。
該生分解性樹脂の溶融張力は、3mN以上150mN以下であることが好ましく、より好ましくは5mN以上110mN以下であり、さらに好ましくは8mN以上50mN以下である。該生分解性樹脂の溶融張力がこの範囲内であれば、押出発泡後の発泡体の収縮を抑制して、低見掛け密度の発泡体(高倍率化)を得ることができる。
【0015】
溶融張力(MT)は、例えば株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dを使用して測定することができる。具体的には、シリンダー径9.55mm、長さ350mmのシリンダーと、ノズル径2.095mm、長さ8.0mmのオリフィスを用い、シリンダー及びオリフィスの設定温度を190℃とし、試料の必要量を該シリンダー内に入れ、4分間放置してから、ピストン速度を10mm/分として溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出して、この紐状物を直径45mmの張力検出用プーリーに掛け、引き取り速度が0m/分から200m/分に達するように一定の増速で引取り速度を増加させながら引取りローラーで紐状物を引取って紐状物が破断した際の直前の張力の極大値を得る。この操作を計5回行い、5回で得られた極大値を相加平均して得られた値を溶融張力(mN)とする。
【0016】
該生分解性樹脂の溶融粘度は、700Pa・s以上3000Pa・s以下であることが好ましく、より好ましくは800Pa・s以上2900Pa・s以下である。
該生分解性樹脂の溶融粘度が前記範囲内であれば、より安定して押出発泡体を製造することができる。
【0017】
溶融粘度は、例えば株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dの測定機を使用して測定することができる。具体的には、シリンダー径9.55mm、長さ350mmのシリンダーと、ノズル径1.0mm、長さ10mmのオリフィスを用い、シリンダー及びオリフィスの設定温度を190℃とする。そのシリンダー内に測定用の試料を15g入れ、4分間放置して溶融樹脂となし、剪断速度100sec-1で溶融樹脂をオリフィスから紐状に押出して、その押出時の溶融樹脂の粘度を測定して、この値を溶融粘度とする。
【0018】
生分解性樹脂の基材となるポリブチレンアジペートテレフタレートと熱可塑性デンプンの混合樹脂は、Novamonnt社(伊)のMater-Biとして販売されている。なお、本発明においては、必ずしも、ポリブチレンアジペートテレフタレートと熱可塑性デンプンとが溶融混合された混合樹脂として押出機に投入され、加熱、溶融混練される必要はなく、最終的に、ポリブチレンアジペートテレフタレートと熱可塑性デンプンとが生分解性樹脂を構成する成分として含まれていればよく、例えば、ポリブチレンアジペートテレフタレートと熱可塑性デンプンのそれぞれを押出機に供給して溶融、混合して押出発泡することができる。
なお、Mater-Biは日本・欧米の認証機関・協会から生分解性と安全性の認証を取得しており、海洋中においても、1年以内に生分解することが確認されている。
【0019】
前記生分解性樹脂の溶融物性(溶融張力、溶融粘度など)は、改質剤を用いることによりその物性値を調整することができる。これにより、より低見掛け密度の押出発泡体を製造する場合であっても、押出発泡後の収縮をより低減させることができる。前記改質剤として、生分解性樹脂を架橋させる作用を有するものが好ましく、例えば、アクリル系ポリマー、無水マレイン酸-スチレン共重合体、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、など、それらの類似物又はそれらの混合物を適宜用いることができ、これらの中でもアクリル系ポリマーが好ましい。
【0020】
改質剤を用いて、押出発泡体を製造した例としては、エポキシ基を有するともに、エポキシ当量が100g/eq.以上600g/eq.以下である、アクリル系ポリマーを用いて生分解性樹脂を架橋することができる。具体的には、前記アクリル系ポリマーを前記押出機に供給して、加熱、溶融、混練することによって、前記押出発泡体を構成する樹脂のゲル分率を5質量%以上30質量%以下に調整することが挙げられる。
このように、該アクリル系ポリマーを改質剤として用いることにより、PBATや熱可塑性デンプンを架橋させることで、押出発泡後の収縮を効果的に防止することができる。
【0021】
アクリル系ポリマーの具体例としては、メタクリル酸グリシジルを主成分として含むアクリル系ポリマーが好ましく挙げられる。ここで主成分とは、アクリル系ポリマー全体の50質量%以上であることをいい、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0022】
なお、前記した「アクリル系ポリマーを前記押出機に供給して、加熱、溶融、混練する」とは、固体のアクリル系ポリマーを、固体のPBATと熱可塑性デンプンとの混合樹脂と共に、押出機の原料供給口に供給することもできれば、加熱溶融させたアクリル系ポリマーを、押出機中を流動する発泡性樹脂溶融物に、物理発泡剤の注入と同様な方法で、シリンダーを通して注入することもできることを意味する。
【0023】
アクリル系ポリマーのエポキシ当量は100g/eq.以上600g/eq.以下であることが好ましい。前記範囲内であれば、生分解性樹脂の発泡性を向上させるとともに、押出発泡後の収縮を低減させることが可能となる。前記観点から、エポキシ当量は、110g/eq.以上300g/eq.以下であることが好ましく、130g/eq.以上200g/eq.以下であることがより好ましい。
【0024】
エポキシ当量は、JIS K7236:2001により測定することができる。具体的には、精秤した試料をクロロホルムに溶解させ、酢酸と臭化テトラエチルアンモニウム酢酸溶液を加えた後、0.1mol/L過塩素酸酢酸標準液によって電位差滴定することにより、グラム当量(g/eq.)として求められる。
【0025】
押出発泡体のゲル分率は、5質量%以上60%質量%以下に調整することが好ましい。該ゲル分率がこの範囲内であれば、押出発泡体を構成するPBATや熱可塑性デンプンが架橋されて発泡性が向上するとともに、発泡後の収縮が効果的に防止される。前記観点から、該ゲル分率は、5質量%以上30質量%以下であることが好ましく、8質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0026】
ゲル分率の調整は、改質剤の添加量を調整することにより行うことができる。具体的には、前記した生分解性樹脂100重量部に対して、0.1質量部以上2質量部以下が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上1.5質量部以下である。
【0027】
ゲル分率は熱キシレン抽出法により測定される。具体的には、発泡体試料0.5gを120メッシュの金網袋に入れ、金網袋込みの重量を測定する。この金網袋を容量150mLのソックスレー脂肪抽出器用平底フラスコに100mLのキシレンとともに加え、平底フラスコに冷却器をセットし、マントルヒーターで8時間加熱することにより還流を行う。還流終了後、空冷にてフラスコを冷却し、金網袋を取り出し、真空オーブンにて金網袋を80℃、3時間真空乾燥させる。乾燥後の金網袋の重量を測定し、還流前の金網袋との重量の差がキシレン不溶分(ゲル)であり、次式よりゲル分率を求める。
ゲル分率(%)=[乾燥後の不溶分重量/発泡体試料の重量]×100
【0028】
前記生分解性樹脂は、ポリブチレンアジペートテレフタレートと熱可塑性デンプンとの混合樹脂を基材とするものであるが、他の樹脂成分を含有させてもよい。他の樹脂成分としては、例えば、熱可塑性樹脂が挙げられ、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、直鎖状超低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体等のエチレン系樹脂や、ポリスチレン、耐衝撃性ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体等のポリスチレン系樹脂や、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂等が例示される。また前記高分子材料として、エチレン-ヘキセン共重合体や、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体等のオレフィン系エラストマーや、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体やスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、それらの水添物等のスチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーを用いることもできる。これらの樹脂、ゴム、又はエラストマーは2種以上を組合せて用いることもできる。上記他の樹脂成分を含有する場合、他の樹脂成分の含有量は合計で、生分解性樹脂100質量%中に10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0029】
前記生分解性樹脂には、本発明の目的が損なわれない範囲で、発泡核剤、結晶核剤、難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、光安定剤、抗菌剤、着色剤等の添加剤が含まれていてもよい。その配合量は、生分解性樹脂100質量部に対して、0.1~5質量部が好ましい。
【0030】
次に、本発明で用いられる発泡剤について説明する。
該発泡剤として、ジメチルエーテルを含む物理発泡剤が用いられる。ジメチルエーテルを使用することにより、押出発泡直後からの押出発泡体の収縮を抑えることができる。
ジメチルエーテルは、他の発泡剤と比べて適度の極性を有し、PBATに対する溶解性や可塑性に優れるため、発泡最適温度を低く設定することができるので、収縮が抑えられると考えられる。
【0031】
本発明で用いられる物理発泡剤は、本発明で所望される目的が阻害されない限り、他の物理発泡剤を含有することができる。その場合であっても、物理発泡剤中のジメチルエーテルの含有割合は、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80 質量%以上である。ジメチルエーテルのみを物理発泡剤として用いることが特に好ましい。
【0032】
他の物理発泡剤としては、例えばプロパン、n-ブタン、i-ブタン、n-ペンタン、i-ペンタン、ヘキサン等の飽和脂肪族炭化水素、メタノール、エタノール等の飽和脂肪族炭アルコール、ベンゼン、キシレン、トルエンのような芳香族炭化水素、塩化メチル、フレオン(登録商標)のようなハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテルのようなジメチルエーテル以外のエーテル化合物、水、二酸化炭素、窒素等の無機系物理発泡剤が挙げられる。
【0033】
なお、本発明で所望される目的が阻害されない限り、発泡剤として化学発泡剤も併用することができる。化学発泡剤としては、例えばアゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾイルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウム等が挙げられる。
【0034】
本発明においては、前記したジメチルエーテルの配合量により、得られる押出発泡体の低見掛け密度化(高発泡倍率化)及び押出発泡後の収縮抑制を調整することが出来る。更に、ジメチルエーテルの配合量と前記した改質剤の種類、配合量とを組合せることにより、得られる押出発泡体の低見掛け密度化(高発泡倍率化)及び押出発泡後の収縮抑制を調整することが出来る。
【0035】
前記生分解性樹脂には、発泡核剤を添加することが好ましい。該発泡核剤としては、タルク、炭酸カルシウム、ホウ砂、ホウ酸亜鉛、水酸化アルミニウム、ミョウバン等の無機物が挙げられる。その添加量は、前記生分解性樹脂100重量部あたり、0.001~10重量部が好ましく、0.01~5重量部がより好ましい。
尚、生分解性樹脂に発泡核剤を添加する場合、発泡核剤をそのまま配合することもできるが、通常は分散性等を考慮して発泡核剤のマスターバッチとして添加することが好ましい。
【0036】
本発明に用いられる押出機としては、公知の単軸押出機、公知の二軸スクリュー押出機、公知のタンデム押出機等が用いられる。押出機の加熱温度は、160℃~220℃であることが好ましく、発泡温度は105℃~130℃であることが好ましい。
得られる生分解性樹脂押出発泡体の形状に制限はないが、通常ストランド状又はシート状に押出発泡される。
【0037】
次に、本発明方法により得られる生分解性樹脂押出発泡体の物性について説明する。
該押出発泡体の見掛け密度は、20kg/m以上250kg/m以下であることが好ましい。特に、本発明の製造方法においては、見掛け密度が低く、収縮しやすい押出発泡体であっても収縮が抑制される。押出発泡体の見掛け密度は40kg/m以上200kg/m以下が好ましく、50kg/m以上150kg/m以下がより好ましい。
【0038】
本発明において、見掛け密度の測定は次のように行う。
見かけ密度は、得られた押出発泡体、即ちストランド状(柱状)又はシート状等の発泡体から試験片を採取し、該試験片の重量(g)を、試験片の体積(cm)で割り単位換算して求められる。試験片の体積は、試験片を水の入った目盛り線の付いた容器中に沈めて水位の上昇を測定する方法(水没法)により求められる。
【0039】
本発明により得られる押出発泡体の平均気泡径は、100μm以上1800μm以下であることが好ましい。前記の範囲であれば、押出発泡体の収縮力に耐え、収縮が防止された発泡体となる。前記観点から、平均気泡径は、800μm以上1600μm以下あることが好ましい。
【0040】
本発明により得られる押出発泡体の連続気泡率は、60%以上であることが好ましく、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。連続気泡率がこの範囲内であれば、緩衝性に優れた押出発泡体となり、例えば植物生育用の発泡基体として使用した場合、植物の根が押出発泡体に比較的容易に侵入することができる。
【0041】
本発明において、連続気泡率の測定は次のように行う。
得られた押出発泡体から試験片を切り出し、ASTM-D2856-70(1976年再認定)の手順Cに従ってVxを測定し、次式により連続気泡率を算出する。
【0042】
連続気泡率(%)=100-{(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)}
x;試験片の真の体積(独立気泡部分の体積と樹脂の体積との和)(cm)
Va;水没法により求められる試験片の見かけ体積(独立気泡部分の体積と連続気泡部分の体積と樹脂の体積の和)(cm)
W;試験片の重量(g)
ρ;試験片を構成する樹脂の密度(g/cm)
【0043】
本発明により得られる押出発泡体の25%圧縮永久歪(24時間)は、10%以下であることが好ましい。25%圧縮永久歪が、この範囲内であれば、例えば植物生育用の発泡基体として好適に使用できる。前記観点から、25%圧縮永久歪(24時間)は、7%以下であることがより好ましく、更に好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。
25%圧縮永久歪(24時間)が、前記範囲内であれば、押出発泡体は寸法的に安定したものとなり、圧縮可能かつ拡張可能な柔軟な形状を有するものとなる。
【0044】
前記25%圧縮永久歪(24時間)は、次のように測定される。
JIS K 6767を参考に、発泡体がストランド状の場合、発泡体を長さ25mmにカットし、試験片の測定方向の長さから25%歪んだ状態まで、長さ方向に圧縮し、22時間放置し、圧縮終了24時間後の厚さを測定する。
発泡体がシート状の場合、発泡体を押出方向又は幅方向に、長さ25mm×幅方向25mmにカットし、厚みが25mmになるようにシートを重ね、試験片の測定方向の厚さから25%歪んだ状態まで圧縮し、22時間放置し、24時間後の厚さを測定する。測定は厚み方向にて行う。
【0045】
本発明の押出発泡体は、例えば植物育成用の生分解性発泡体としての利用が期待される。
【実施例0046】
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0047】
実施例、比較例において、次の原料を用いた。
(原料樹脂、熱可塑性デンプン)
(1)略称「樹脂1」:Novamont社製「PBAT-熱可塑性デンプンの混合樹脂」、商品名「Mater-Bi」、グレード「EF04P」(PBAT(質量%)と熱可塑性デンプン(質量%)=70/30の混合樹脂(融点:116℃、密度:1.27g/cm)
(2)略称「SGS」:三協化学(株)製「熱可塑性デンプン」、商品名「SANKYO GOLDEN STARCH(SGS)」(Tg=58.8℃、密度:1.32g/cm)
(3)略称「樹脂2」:BASF社製「PBAT」、商品名「Ecoflex F Blend C1200」(融点:117.2℃、密度:1.26g/cm)と、「(2)SGS」との50質量%:50質量%の混合樹脂
【0048】
(物理発泡剤)
(1)略称「DME」:ジメチルエーテル
(2)略称「ブタン(Bu)」:ノルマルブタン35重量%とイソブタン65重量%との混合物
【0049】
(発泡核剤)
略称「PO217K」:ファインセルマスター「PO217K」(大日精化製、LDPEベース):クエン酸と重曹との混合物
【0050】
(改質剤)
(1)略称「G01100」:日油(株)製「エポキシ基含有アクリルポリマー」、商品名「マープルーフG01100」(エポキシ当量170g/eq.)
(2)略称「XIRAN」:川原油化(株)製「無水マレイン酸-スチレン共重合体」、商品名「TDS XIRAN3000P」
【0051】
(押出発泡体製造装置)
内径50mmの押出機の途中に物理発泡剤注入口が設けられ、先端に樹脂排出口(ダイリップ)を備えたダイが取付られた製造装置を用いた。
【0052】
実施例1~5、比較例1~5:ストランド状の押出発泡体の製造
表1、表2に示す樹脂100質量部に、表1、表2に示す配合量となるように発泡核剤を配合し、混合した。これらの原料を押出機に投入して、押出機シリンダー温度を220℃に設定して加熱、溶融、混錬し、押出機途中に設けられた物理発泡剤注入口から、表1、表2に示す種類、配合量の物理発泡剤を供給した。表1、表2に示す発泡温度に調整した後、表1に示す吐出量でダイリップから大気中へ押出してストランド状の押出発泡体を製造した。
得られた押出発泡体の諸物性を表1、表2に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
実施例6,7、比較例6:改質剤を用いたストランド状の押出発泡体の製造
表3に示す樹脂100質量部に、表3に示す配合量となるように発泡核剤を、また表3に示す種類、配合量の改質剤を配合し、混合した。これらの原料を押出機に投入して、押出機シリンダー温度を220℃に設定して加熱、溶融、混錬し、押出機途中に設けられた物理発泡剤注入口から、表3に示す種類、配合量の物理発泡剤を供給した。表3に示す発泡温度に調整した後、表3に示す吐出量でダイリップから大気中へ押出してストランド状の押出発泡体を製造した。
得られた押出発泡体の諸物性を表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】
実施例8:シート状の押出発泡体の製造
表4に示す樹脂100質量部に、表4に示す配合量の発泡核剤となるように配合し、混合し、ドライブレンドを行った。これらの原料を押出機に投入して、押出機シリンダー温度220℃で加熱、溶融、混錬し、途中に設けられた物理発泡剤注入口から表4に示す物理発泡剤を供給した。表4に示す発泡温度に調整した後、表4に示す吐出量でダイリップから大気中へ押出してシート状の押出発泡体を製造した。
得られた押出発泡体の諸物性を表4に示す。
【0058】
【表4】
【0059】
実施例9:改質剤を用いたシート状の押出発泡体の製造
表5に示す樹脂100質量部に、表5に示す配合量となるように発泡核剤と、表5に示す種類、配合量の改質剤とを配合し、混合した。これらの原料を押出機に投入して、押出機シリンダー温度220℃で加熱、溶融、混錬し、途中に設けられた物理発泡剤注入口から表5に示す物理発泡剤を供給した。表5に示す発泡温度に調整した後、表5に示す吐出量でダイリップから大気中へ押出してシート状の押出発泡体を製造した。
得られた押出発泡体の諸物性を表5に示す。
【0060】
【表5】
【0061】
実施例2~5は、実施例1に対し、表1に記載の条件を変更した例である。得られた押出発泡体は、収縮防止性評価が良好なものであった。
実施例6、7は、実施例1に対し、表1に示す種類、量の改質剤を用いた例である。改質剤を用いることにより、より径が大きく、低見掛け密度の押出発泡体を得ても、収縮を防止することができた。
【0062】
比較例1~4は、実施例1に対し、物理発泡剤を変更した例である。物理発泡剤としてジメチルエーテルを用いない場合には、得られた押出発泡体は、発泡後の収縮が激しいものであった。
比較例5においては、生分解性樹脂の代わりに、熱可塑性デンプンのみを用いた例である。押出発泡体を得ることができなかった。
比較例6は、改質剤を用いたが、物理発泡剤を変更した例である。物理発泡剤としてジメチルエーテルを用いない場合には、改質剤を用いても、得られた押出発泡体は、発泡後の収縮が激しかった。
【0063】
実施例8は、シート状の発泡体を製造した例である。物理発泡剤としてジメチルエーテルを用いることにより、得られた押出発泡体は、発泡倍率が高く、収縮防止性評価が良好なものであった。
実施例9は、改質剤を用いてシート状の発泡体を製造した例である。改質剤を用いることにより、得られた押出発泡体は、より厚みが大きく、より低見掛け密度のものであった。
【0064】
表1~表5中の溶融粘度、溶融張力は、原料樹脂の場合、原料そのものを用いて測定を行った。改質剤を用いて改質された場合、別途改質したサンプルを用いて測定を行った。
【0065】
表1~表5中の各種物性は次のように測定した。
【0066】
ストランド径は、ストランド形状の押出発泡体を切断した切断面における、最大直径をノギスにより測定し、少なくとも10か所の算術平均値として求めた。
【0067】
シートの厚みは、その幅方向に亘って10mm間隔で複数個所についてのシートの特定箇所での厚みをノギスにより測定し、それらの値を算術平均することにより得られた平均厚みとして求めた。
【0068】
見掛け密度は、前記した方法により、試験片の重量を(g)を、試験片の体積(cm)で割り単位換算して求め、5か所の算術平均値とした。
【0069】
連続気泡率は、前記した方法により測定し、5サンプルの算術平均値として求めた。
【0070】
押出発泡体の断面写真は、ストランド形状の押出発泡体を長手方向に対して直角方向に切断し、切断された切断面を、走査型電子顕微鏡等の顕微鏡を用いて切断面全体の拡大写真として撮影した。
【0071】
25%圧縮永久歪(24h)は、前記した方法により測定した(n=5)。
【0072】
ゲル分率は、前記した方法により測定した。
【0073】
(収縮性評価)
ダイリップから押出発泡された直後の押出発泡体の直径Dと、24時間経過後の押出発泡体の直径D24から次式により収縮率(%)を求めた(n=5)。
収縮率(%)=〔(D-D24)/D〕×100
【0074】
得られた収縮率(%)を用いて、下記基準により収縮性を評価した。
◎:収縮率が15%以下である。
〇:収縮率が15%より大きく20%以下である。
×:収縮率が20%より大きい。

図1
図2