(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165392
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】パイロットリレー及びポジショナ
(51)【国際特許分類】
F15B 9/06 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
F15B9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081554
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】大藪 裕貴
【テーマコード(参考)】
3H001
【Fターム(参考)】
3H001AA03
3H001AB07
(57)【要約】
【課題】パイロットリレーの弁体を、出力気圧室と供給気圧室とを連通する連通路を閉じた第1位置から、当該連通路を開いた第2位置に速やかに移動させる。
【解決手段】パイロットリレー30は、出力気圧室31Eと供給気圧室31Fとを連通する連通路31Gを通り、移動体35側に付勢され、連通路31Gと移動体35の空気流路35Aとを下方側から閉じる弁体36を備える。弁体36は、下方に移動する移動体35により押されることで空気流路35Aを閉じた状態で連通路31Gの開度を増加させ、上方に移動する移動体35から離れることで連通路31Gを閉じた状態で空気流路35Aの開度を増加させる。受圧部材38は、弁体36及びハウジング31と接続され、供給気圧室31Fの圧縮空気圧Psを受圧することで弁体36に下方への力を作用させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気圧信号を増幅するパイロットリレーであって、
前記空気圧信号が入力される入力気圧室と、前記入力気圧室よりも第1方向側に配置され、増幅後の前記空気圧信号を出力する出力気圧室と、前記入力気圧室よりも前記第1方向側に配置され、前記パイロットリレーの外部から供給される圧縮空気圧が入力される供給気圧室と、前記出力気圧室から前記第1方向に延びて前記供給気圧室に至り、前記出力気圧室と前記供給気圧室とを連通する連通路と、前記出力気圧室の空気を排気する排気室と、が形成されたハウジングと、
前記入力気圧室に面し、前記空気圧信号の空気圧が増加したときに前記第1方向に変形し、前記空気圧が減少したときに前記第1方向と反対の第2方向に変形する入力ダイアフラムと、
前記入力ダイアフラムに接続され、前記排気室を貫通して前記出力気圧室に至り、前記入力ダイアフラムの変形に連動して前記第1方向又は前記第2方向に移動する移動体であって、前記出力気圧室に繋がる第1端と前記排気室に繋がる第2端を有する空気流路が通る移動体と、
前記出力気圧室に面し、前記移動体に接続され、前記移動体の移動に連動して前記第1方向又は前記第2方向に変形し、前記入力ダイアフラムとの面積の違いが前記空気圧信号の増幅率に寄与する出力ダイアフラムと、
前記連通路を通り、前記第2方向に付勢され、前記連通路と前記第1端とを前記第1方向側から閉じる弁体であって、前記第1方向に移動する前記移動体により押されることで前記第1端を閉じた状態で前記連通路の開度を増加させ、前記第2方向に移動する前記移動体から離れることで前記連通路を閉じた状態で前記第1端の開度を増加させる弁体と、
前記弁体及び前記ハウジングと接続され、前記供給気圧室の前記圧縮空気圧を受圧することで前記弁体に前記第1方向への力を作用させる受圧部材と、
を備えるパイロットリレー。
【請求項2】
前記弁体は、増幅後の前記空気圧信号の空気圧が、増幅前の前記空気圧信号の空気圧を所望の増幅率で増幅させた目標空気圧に達したときに、前記第1端を閉じかつ前記連通路をブリード分だけ開くブリード型である、
請求項1に記載のパイロットリレー。
【請求項3】
前記ハウジングには、前記連通路と前記供給気圧室を介して対向しかつ大気が導入される対向室が設けられ、
前記受圧部材は、前記供給気圧室と前記対向室とを隔てるダイアフラムである、
請求項1又は2に記載のパイロットリレー。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のパイロットリレーと、
増幅前の前記空気圧信号を前記パイロットリレーに出力する電空変換機構と、
を備えるポジショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロットリレー及びポジショナに関する。
【背景技術】
【0002】
ポジショナ等に使用されるパイロットリレーは、入力される空気圧信号を増幅して出力するように構成されている(特許文献1)。パイロットリレーは、入力ダイアフラム及び出力ダイアフラムに接続され、ハウジング内に形成された出力気圧室と排気室とを連通する空気流路が内部を通る移動体と、ハウジング内に形成された出力気圧室及び供給気圧室を連通する連通路を通り、連通路と空気流路との少なくとも一方を閉じる弁体と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記パイロットリレーでは、弁体が、連通路を閉じた第1位置から開いた第2位置に移動するときに、供給気圧室内の圧縮空気圧が邪魔をして、速やかに移動しない場合がある。
【0005】
本発明は、パイロットリレーの弁体を、出力気圧室と供給気圧室とを連通する連通路を閉じた第1位置から、当該連通路を開いた第2位置に速やかに移動させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係るパイロットリレーは、空気圧信号を増幅するパイロットリレーであって、前記空気圧信号が入力される入力気圧室と、前記入力気圧室よりも第1方向側に配置され、増幅後の前記空気圧信号を出力する出力気圧室と、前記入力気圧室よりも前記第1方向側に配置され、前記パイロットリレーの外部から供給される圧縮空気圧が入力される供給気圧室と、前記出力気圧室から前記第1方向に延びて前記供給気圧室に至り、前記出力気圧室と前記供給気圧室とを連通する連通路と、前記出力気圧室の空気を排気する排気室と、が形成されたハウジングと、前記入力気圧室に面し、前記空気圧信号の空気圧が増加したときに前記第1方向に変形し、前記空気圧が減少したときに前記第1方向と反対の第2方向に変形する入力ダイアフラムと、前記入力ダイアフラムに接続され、前記排気室を貫通して前記出力気圧室に至り、前記入力ダイアフラムの変形に連動して前記第1方向又は前記第2方向に移動する移動体であって、前記出力気圧室に繋がる第1端と前記排気室に繋がる第2端を有する空気流路が通る移動体と、前記出力気圧室に面し、前記移動体に接続され、前記移動体の移動に連動して前記第1方向又は前記第2方向に変形し、前記入力ダイアフラムとの面積の違いが前記空気圧信号の増幅率に寄与する出力ダイアフラムと、前記連通路を通り、前記第2方向に付勢され、前記連通路と前記第1端とを前記第1方向側から閉じる弁体であって、前記第1方向に移動する前記移動体により押されることで前記第1端を閉じた状態で前記連通路の開度を増加させ、前記第2方向に移動する前記移動体から離れることで前記連通路を閉じた状態で前記第1端の開度を増加させる弁体と、前記弁体及び前記ハウジングと接続され、前記供給気圧室の前記圧縮空気圧を受圧することで前記弁体に前記第1方向への力を作用させる受圧部材と、を備える。
【0007】
一例として、前記弁体は、増幅後の前記空気圧信号の空気圧が、増幅前の前記空気圧信号の空気圧を所望の増幅率で増幅させた目標空気圧に達したときに、前記第1端を閉じかつ前記連通路をブリード分だけ開くブリード型である。
【0008】
一例として、前記ハウジングには、前記連通路と前記供給気圧室を介して対向しかつ大気が導入される対向室が設けられ、前記受圧部材は、前記供給気圧室と前記対向室とを隔てるダイアフラムである。
【0009】
本発明に係るポジショナは、上記パイロットリレーと、増幅前の前記空気圧信号を前記パイロットリレーに出力する電空変換機構と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、パイロットリレーの弁体を、出力気圧室と供給気圧室とを連通する連通路を閉じた第1位置から、当該連通路を開いた第2位置に速やかに移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るポジショナの構成図である。
【
図2】
図2は、
図1のパイロットリレーのバランス状態を示す概略切断部端面図である。
【
図3】
図3は、
図1のパイロットリレーの排気状態を示す概略切断部端面図である。
【
図4】
図4は、
図1のパイロットリレーの給排気停止状態を示す概略切断部端面図である。
【
図5】
図5は、比較例に係るパイロットリレーのバランス状態を示す概略切断部端面図である。
【
図6】
図6は、増幅信号の空気圧の目標空気圧が切り替わったときの目標空気圧の時間変化の例を示す図である。
【
図7】
図7は、
図6の時間変化で目標空気圧を変化させたときの、比較例に係るパイロットリレーの増幅信号の空気圧の時間変化の例を示す図である。
【
図8】
図8は、
図6の時間変化で目標空気圧を変化させたときの、実施形態に係るパイロットリレーの増幅信号の空気圧の時間変化の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、下記での上下方向及び左右方向は、便宜上設定されたものであり、パイロットリレー及びポジショナの取り付け方向を限定する意図で設定されたものではない。
【0013】
図1に示す本実施形態に係るポジショナ10は、調節計などの外部装置91からの弁開度を指定する電気信号を空気圧信号Pnに変換する電空変換機構20と、空気圧信号Pnを増幅し、増幅した後の空気圧信号Pnを増幅信号Poとして流量制御弁95に出力するパイロットリレー30と、を備える。増幅信号Poにより流量制御弁95の弁開度が制御される。なお、空気圧信号Pnの空気圧及び増幅信号Poの空気圧を、空気圧Pn及び空気圧Poとそれぞれ呼ぶことがある。
【0014】
電空変換機構20は、モータ等のアクチュエータによって変位するフラッパと、フラッパと対向し、流体を噴出するノズルと、を備えるノズルフラッパ機構からなる。ノズルフラッパ機構は、外部装置91からの電気信号によりアクチュエータを駆動することにより、当該電気信号の電流値に応じた変位量でフラッパを変位させる。ノズルフラッパ機構は、フラッパとノズルの先端との距離に応じて変化するノズル背圧を空気圧信号Pnとして出力する。このように電空変換機構20は、電気信号を空気圧信号Pnに変換し、変換した空気圧信号Pnを出力する。空気圧信号Pnは、チューブを介してパイロットリレー30に入力される。
【0015】
図2に示すように、パイロットリレー30は、ハウジング31と、ダイアフラム32A~32Cと、移動体35と、弁体36と、スプリング37と、受圧部材38と、を備える。なお、
図2は、端面図であるが、奥に見える外形線の一部を適宜破線(ハウジング31の内部に配置された要素)又は実線(ハウジング31の輪郭線)で描いている。
【0016】
ハウジング31には、入力気圧室31Aと、導入路31Bと、排気室31Cと、バイアス室31Dと、出力気圧室31Eと、供給気圧室31Fと、連通路31Gと、導入路31Hと、対向室31Iと、が形成されている。また、ハウジング31には、ダイアフラム32A~32C、及び、ダイアフラムからなる受圧部材38が接続されており、ハウジング31は、これらを支持している。図示はしていないが、ハウジング31は、例えば複数の部材からなってもよく、複数の部材のいずれか2つずつにより、ダイアフラム32A~32C、及び、受圧部材38をそれぞれ挟み込んで支持してもよい。
【0017】
ダイアフラム32Aは、入力気圧室31Aとその下側の排気室31Cとを隔てている。ダイアフラム32Bは、排気室31Cとその下側のバイアス室31Dとを隔てている。ダイアフラム32Cは、バイアス室31Dとその下側の出力気圧室31Eとを隔てている。受圧部材38は、供給気圧室31Fと対向室31Iとを隔てている。
【0018】
入力気圧室31Aには、電空変換機構20からの空気圧信号Pnが、入力気圧室31Aに接続された導入路31Bを介して入力される。入力気圧室31Aに面しているダイアフラム32Aには、移動体35が接続されている。
【0019】
移動体35は、上下方向に移動可能に設けられており、かつ、上下方向に延びてダイアフラム32B及びその下方に位置するダイアフラム32Cを貫通している。移動体35には、ダイアフラム32B及び32Cが接続されている。このような構成により、移動体35は、排気室31Cとバイアス室31Dとを貫通して出力気圧室31Eに至っている。移動体35は、複数の部材の組み合わせから構成されてもよい。この場合、複数の部材のいずれか2つずつによりダイアフラム32A~32Cを挟み込むことで、これらが移動体35に接続される。
【0020】
移動体35の内部には、下側(第1方向側)の出力気圧室31Eと上側(第2方向側)の排気室31Cとを連通する断面T字状の空気流路35Aが通っている。移動体35の下端部には、空気流路35Aの両端のうちの出力気圧室31Eに繋がる第1端35AAが下方に開口している。この下端部ないし第1端35AAは、連通路31Gと対向し、後述のように連通路31Gを通っている弁体36と対向している。移動体35の上端部には、空気流路35Aの両端のうちの排気室31Cに繋がる2つの第2端35ABが左右に開口している。
【0021】
移動体35の空気流路35Aに繋がる排気室31Cは、左右方向の両端が開放されており、後述のように空気流路35Aを介して排出される出力気圧室31E内の空気を大気に排気する。
【0022】
出力気圧室31E及び供給気圧室31Fは、入力気圧室31A、排気室31C、及び、バイアス室31Dよりも下方に配置されている。出力気圧室31Eは、空気圧信号Pnの空気圧及び空気流量を増幅させた増幅信号Poを出力する。供給気圧室31Fには、パイロットリレー30の外から供給される圧縮空気の圧縮空気圧Psが供給される。
【0023】
供給気圧室31Fと出力気圧室31Eとは、連通路31Gにより連通している。連通路31Gは、出力気圧室31Eから下方に延びて供給気圧室31Fに至っている。連通路31Gには、弁体36が通っている。供給気圧室31Fの圧縮空気圧Psの圧縮空気は、連通路31Gを介して出力気圧室31Eに流入する他、供給気圧室31Fに接続された導入路31Hを介してバイアス室31Dにも流入する。出力気圧室31Eの空気圧つまり増幅信号Poの空気圧は、圧縮空気の流入量つまり連通路31Gの後述の開度に応じた量だけ増加する。バイアス室31Dの空気圧は、圧縮空気圧Psに保たれる。
【0024】
弁体36は、上下方向に移動可能に設けられている。弁体36は、スプリング37により、上方つまり移動体35側に付勢されている。弁体36は、ポペット弁として構成されている。弁体36は、移動体35の下端部に当たって空気流路35Aの第1端35AAを下方から閉じる上側弁36Aと、連通路31Gを下方から閉じる下側弁36Bとを備える。弁体36は、下側弁36Bから下方に延びた下端部36Cを備える。下端部36Cには、ハウジング31に接続された受圧部材38が接続されている。弁体36は、例えば複数の部材からなってもよく、複数の部材のいずれか2つにより、受圧部材38を挟み込んで受圧部材38と接続されてもよい。
【0025】
ダイアフラムからなる受圧部材38は、供給気圧室31Fと、供給気圧室31Fを介して連通路31Gと対向する対向室31Iと、を隔てている。受圧部材38は、供給気圧室31Fに面する上面で圧縮空気圧Psを受け、対向室31Iに面する下面で対向室31Iに導入される大気圧Pairを受ける。受圧部材38は、圧縮空気圧Psは大気圧Pairよりも大きいので、圧縮空気圧Psを受けることで弁体36に下方への力を作用させる。受圧部材38の役割については、後述する。
【0026】
以上のような構成のパイロットリレー30は、入力気圧室31Aに導入される空気圧信号Pnの空気圧を、所定の増幅率で増幅させる。以下、空気圧信号Pnの空気圧を所定の増幅率で増幅させたあとの空気圧を目標空気圧という。
【0027】
空気圧の増幅率の多少は、入力気圧室31Aに面するダイアフラム(入力ダイアフラム)32Aと、出力気圧室31Eに面するダイアフラム(出力ダイアフラム)32Cと、の面積の違いが寄与する。より具体的に、空気圧の増幅率は、ダイアフラム(入力ダイアフラム)32Aと移動体35との組み合わせにおける空気圧信号Pnの空気圧の受圧面と、ダイアフラム(出力ダイアフラム)32Cと移動体35との組み合わせにおける増幅信号Poの空気圧の受圧面との有効面積(上下方向の空気圧を受ける領域の面積)比により決まる。
【0028】
パイロットリレー30は、空気圧信号Pnの空気流量も増幅する。この増幅は、出力気圧室31Eと、供給気圧室31Fと、連通路31Gと、空気流路35Aと、排気室31Cとの、空気の流れ方向に直交する断面のそれぞれの面積が大きいことで実現される。
【0029】
パイロットリレー30は、ブリード型で構成されており、
図2に示すバランス状態では、弁体36が、移動体35の空気流路35Aの第1端35AAを閉じ、かつ、連通路31Gを所定の開度以下の開度つまりブリード分だけ開く位置に位置する。従って、バランス状態では、供給気圧室31Fからの圧縮空気圧Psの圧縮空気が、一定量つまり所望のブリード量分、出力気圧室31Eに流入する。
【0030】
図2に示すバランス状態から、入力気圧室31Aに導入される空気圧信号Pnの空気圧が増加すると、この増加により、ダイアフラム32Aが下方に膨らむように変形する(図示略)。この変形に連動して、移動体35が下方に移動する。移動体35の下方への移動に連動して、ダイアフラム32B及び32Cが下方に変形する。移動体35が下方に移動することで、移動体35が弁体36をスプリング37の付勢力に抗して下方に押し込む。この押し込み時、空気流路35Aの第1端35AAが弁体36の上側弁36Aにより閉じられる。弁体36の下方への移動により、下側弁36Bが連通路31Gから離れる方向である下方に移動するため、連通路31Gの開度が増加し、供給気圧室31Fから出力気圧室31Eに流入する圧縮空気圧Psの圧縮空気が増加する。この状態が、圧縮空気を出力気圧室31Eに供給する給気状態である。給気状態により、供給気圧室31Fから出力される増幅信号Poの空気圧が連通路31Gに開度に応じた量だけ増加する。増幅信号Poの空気圧が目標空気圧に近づくにつれて、弁体36および移動体35が上方に移動し、弁体36による連通路31Gの開度が減少し、増幅信号Poの空気圧が目標空気圧に到達することで、パイロットリレー30は
図2のバランス状態となる。
【0031】
空気圧信号Pnの空気圧が減少した場合、
図3に示すように、ダイアフラム32Aが上方に凹むように変形し、これに連動して移動体35が上方に移動する。移動体35の上方への移動に連動し、ダイアフラム32B及び32Cが上方に変形する。移動体35の上方への移動により、移動体35が弁体36と離れ、移動体35の空気流路35Aの第1端35AAが開放される。この開放時、弁体36は連通路31Gを閉じる。これにより、出力気圧室31E内の空気が、空気流路35A及び排気室31Cを介して大気に放出される。従って、増幅信号Poの空気圧が下がる。この状態が、出力気圧室31E内の空気を排気する排気状態である。増幅信号Poの空気圧が目標空気圧に近づくにつれて、移動体35は、下方に徐々に移動する。下方に移動する移動体35は、
図4に示すように弁体36に接触する。このときの状態は、空気流路35A及び連通路31Gの両者が閉鎖した給排気停止状態である。その後、移動体35は、弁体36を下方に押す。増幅信号Poの空気圧が目標空気圧に到達したとき、弁体36は連通路31Gを予め定められたブリード分だけ開く位置に配置され、パイロットリレー30は
図2のバランス状態となる。
【0032】
この実施の形態では、排気状態からバランス状態への移行をスムーズにするために、受圧部材38が設けられている。この点を、
図5に示す、受圧部材38を備えない比較例に係るパイロットリレー130を参照して説明する。パイロットリレー130では、弁体36の下端部36Cが設けられず、対向室31Iも設けられていない。パイロットリレー30及び130で共通する要素については、同じ符号を付して以下説明する。
【0033】
排気状態において、パイロットリレー130の移動体35に作用する上下方向に沿った力F1は、下記式(1)で算出される。なお、下記式(1)では、各ダイアフラム32A~32Cを平坦に近似している(他の式についても同じ)。ここでは、下方の向きの力を正とする(以下同じ)。また、Anは、ダイアフラム(入力ダイアフラム)32Aと移動体35との組み合わせにおける、空気圧信号Pnの空気圧の受圧面の有効面積である。Pnは、空気圧信号Pnの空気圧の値である。Asは、ダイアフラム32Bと移動体35との組み合わせにおける、バイアス室31D内の圧縮空気圧Psの受圧面の有効面積と、ダイアフラム32Cと移動体35との組み合わせにおける、バイアス室31D内の圧縮空気圧Psの受圧面の有効面積との差分である。Aoは、ダイアフラム(出力ダイアフラム)32Cと移動体35との組み合わせにおける、増幅信号Poの空気圧の受圧面の有効面積である。Poは、増幅信号Poの空気圧の値である。
F1=An*Pn-As*Ps-Ao*Po・・・(1)
【0034】
また、排気状態から移行した給排気停止状態において移動体35に作用する上下方向に沿った力F2は、弁体36が受ける上下方向に沿った力Fbも移動体35に作用するため、下記式(2)及び式(3)で算出される。ここで、Psは、供給気圧室31F内の圧縮空気圧Psの値であり、Abは、連通路31Gを閉じた位置の弁体36のうち、圧縮空気圧Psを受圧する受圧面(ここでは、下面)の有効面積である。
F2=An*Pn-As*Ps-Ao*Po-Fb・・・(2)
Fb=Ab*Ps・・・(3)
【0035】
上記式(2)から分かるように、移動体35が弁体36に当たった瞬間から、F1とF2の差のFb=Ab*Ps分(つまり、弁体36が受ける力の分)だけ、どこかの圧力が変化しない限り、移動体35及び弁体36の一体移動つまりバランス状態への移行が開始されない。しかしながら、圧縮空気圧Ps及び空気圧Pnは意図的に変化させることができないので、バランス状態への移行時には、空気圧Poがブリード分だけ減少するのを待つほかなく、バランス状態への移行つまり空気圧Poの整定に時間がかかる。また、移動体35に押されて弁体36が動き始めるほど空気圧Poが下がっている頃には、空気圧Poが本来意図していた目標空気圧よりも小さくなってしまっている場合もあり、その場合は再び給気状態への移行が発生し、オーバーシュートして整定にさらに多くの時間を要する場合もある(
図5及び
図6参照)。
【0036】
上記Abは、弁体36の大きさに依存するが、例えばパイロットリレー130の給気能力を上げるため弁体36を大きくした場合、上記Fbの影響がより大きくなる。また、近年、弁体36の連通路31Gの閉鎖のための圧力増加を狙って、圧縮空気圧Psを高く設定する傾向があり、このような観点からも上記Fbの影響は無視できなくなっている。なお、大きなブリード穴を設けるなどにより、ブリード量を増加させれば整定は早くなるが、全体の空気消費量が大きくなる問題がある。
【0037】
他方、この実施の形態では、
図4の給排気停止状態において、受圧部材38により、Fbを下記式(4)とすることができる。ここで、Adiaは、弁体36を囲む環状の受圧部材38の面積(平坦に近似したときの有効面積)である(
図3参照)。Abは、連通路31Gを閉じた位置の弁体36のうち、圧縮空気圧Psを受圧する受圧面(ここでは、下側弁36Bの、下端部36Cを囲む下面)の有効面積である(
図3参照)。
Fb=(Ab-Adia)*Ps・・・(4)
【0038】
式(4)から分かるように、受圧部材38が圧縮空気圧Psを受けることで弁体36に下方への力(Adia*Ps)を作用させることができ、この力の分だけ、Fbの値を小さくすることができる。その結果、バランス状態への移行時間、つまり、上記整定に要する時間を比較例よりも短くすることができる(
図5及び
図7参照)。
【0039】
以上のように、この実施の形態では、連通路31Gと供給気圧室31Fを介して対向し、弁体36及びハウジング31と接続され、供給気圧室31Fの圧縮空気圧を受圧することで弁体36に第1方向への力を作用させる受圧部材38を設けたので、弁体36の下方への移動時における圧縮空気圧Psの影響を低減できる。従って、バランス状態への移行時間、つまり、上記整定に要する時間が受圧部材38を設けない場合よりも短くなる。
【0040】
なお、対向室31I内に弾性体を配置し、受圧部材38を上方に付勢してもよい。また、受圧部材38は、ベローズなどにより実現されてもよい。本実施形態のように、受圧部材38は、弾性体により付勢されず、圧縮空気圧の受圧面と反対側の面が大気を受圧することで、簡便な構成により、上記整定に要する時間を受圧部材38を設けない場合よりも短くすることができる。
【0041】
上記実施形態では、ブリード型のパイロットリレー30を説明した。つまり、弁体36は、増幅後の空気圧信号Pnつまり増幅信号Poの空気圧が、増幅前の空気圧信号Pnの空気圧をパイロットリレー30に設定された所望の増幅率で増幅させた目標空気圧に達したときに、空気流路35Aの第1端35AAを閉じかつ連通路31Gをブリード分だけ開くブリード型としている。しかし、パイロットリレー30は、ノンブリード型であってもよい。パイロットリレー30が、ノンブリード型であってもブリード型であっても、受圧部材38により、弁体36を、出力気圧室31Eと供給気圧室31Fとを連通する連通路31Gを閉じた第1位置から、当該連通路31Gを開いた第2位置に移動させるときに、圧縮空気圧Psの影響を低減でき、弁体36を速やかに移動させることができる。
【0042】
以上、実施の形態及び変形例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施の形態及び変形例に限定されるものではない。例えば本発明には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る、上記の実施の形態及び変形例に対する様々な変更が含まれる。例えば、バイアス室31Dは設けられなくてもよい。なお、上記実施の形態及び変形例に挙げた各構成は、矛盾の無い範囲で適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0043】
10…ポジショナ、20…電空変換機構、30…パイロットリレー、31…ハウジング、31A…入力気圧室、31B…導入路、31C…排気室、31D…バイアス室、31E…出力気圧室、31F…供給気圧室、31G…連通路、31H…導入路、31I…対向室、32A…ダイアフラム、32B…ダイアフラム、32C…ダイアフラム、35…移動体、35A…空気流路、35AA…第1端、35AB…第2端、36…弁体、36A…上側弁、36B…下側弁、36C…下端部、37…スプリング、38…受圧部材、91…外部装置、95…流量制御弁、130…パイロットリレー。