(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165394
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】軌道スラブの支持状態評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/04 20060101AFI20241121BHJP
E01B 37/00 20060101ALI20241121BHJP
E01B 35/10 20060101ALI20241121BHJP
G01N 29/46 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G01N29/04
E01B37/00 C
E01B35/10
G01N29/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081562
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 紅子
(72)【発明者】
【氏名】谷川 光
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 成汰
【テーマコード(参考)】
2D057
2G047
【Fターム(参考)】
2D057AB01
2D057AB06
2D057CA04
2D057CA05
2D057CA08
2D057DA05
2G047AA10
2G047AC09
2G047BA04
2G047BC04
2G047BC09
2G047BC10
2G047CA03
2G047CA07
2G047EA12
2G047EA15
2G047GG06
2G047GG10
2G047GG32
2G047GG33
2G047GG38
2G047GH06
(57)【要約】
【課題】打撃位置や集音位置の数量を削減して試験装置の小型化を図ることができると共に、打撃位置や集音位置の削減によっても評価精度を確保することができる軌道スラブの支持状態評価方法を提供する。
【解決手段】軌道スラブの下にてん充層を有するスラブ軌道における軌道スラブの支持状態評価方法であって、音圧の時刻歴応答波形を時間周波数解析して判定用スペクトログラムを得る工程と、平均絶対誤差及び閾値の比から異常度を計算する工程とを有し、異常度と空隙深さの関係から空隙範囲を推定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道スラブの下にてん充層を有するスラブ軌道における軌道スラブの支持状態評価方法であって、
前記軌道スラブの任意の打撃位置を打撃する工程と、
前記打撃位置から所定の距離離れた複数の集音位置で前記打撃による音圧の時刻歴応答波形を計測する工程と、
前記音圧の時刻歴応答波形を時間周波数解析して判定用スペクトログラムを得る工程と、
前記判定用スペクトログラムと予め準備した学習用データセットから生成した写像及び射影とを用いて平均絶対誤差を求める工程と、
前記学習用データセットから閾値を求める工程と、
前記平均絶対誤差及び前記閾値の比から異常度を計算する工程と、
前記異常度と空隙深さの関係から空隙範囲を推定することを特徴とする軌道スラブの支持状態評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載の軌道スラブの支持状態評価方法において、
前記学習用データセットは、軌道スラブがてん充層で完全に支持されたスラブ軌道で複数回の打撃試験を行い、当該打撃試験で得られた音圧の時刻歴応答波形を時間周波数解析して得られた学習用スペクトログラムの集合であることを特徴とする軌道スラブの支持状態評価方法。
【請求項3】
請求項1に記載の軌道スラブの支持状態評価方法において、
前記学習用データセットから閾値を求める工程は、前記学習用データセットを写像生成用データと閾値計算用データに分割する工程と、
前記写像生成用データを圧縮・復元して写像を生成する工程と、
前記写像に対する前記閾値計算用データの射影を生成する工程とを有し、
前記射影と前記閾値計算用データからスペクトログラムにおける画素の差分の絶対値を全体の画素数で平均して前記閾値を得ることを特徴とする軌道スラブの支持状態評価方法。
【請求項4】
請求項1に記載の軌道スラブの支持状態評価方法において、
前記打撃位置は、前記軌道スラブの幅方向の縁部であり、
前記集音位置は、前記打撃位置から幅方向内方に所定の間隔で配置されることを特徴とする軌道スラブの支持状態評価方法。
【請求項5】
請求項1に記載の軌道スラブの支持状態評価方法において、
前記空隙範囲の推定は、前記軌道スラブにおける前記異常度のコンターを作成して行うことを特徴とする軌道スラブの支持状態評価方法。
【請求項6】
請求項1に記載の軌道スラブの支持状態評価方法において、
前記判定用スペクトログラムは、時間、周波数及びスペクトル強度の3軸からなる3次元の画像データであることを特徴とする軌道スラブの支持状態評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道スラブの支持状態評価方法に関し、具体的には、軌道スラブの下にてん充層を有するスラブ軌道における軌道スラブの支持状態評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道が走行する軌道として、路盤上にバラストを敷設した道床を設け、当該道床にまくらぎやレールを敷設したバラスト軌道や、コンクリート道床や高架橋などの上にコンクリート製の板状部材である軌道スラブを配設し、当該軌道スラブ上にレールを敷設したスラブ軌道が知られている。スラブ軌道は、軌道変位が起こりにくいことから、保守管理の手間が軽減される。
【0003】
スラブ軌道は軌道スラブの下面とコンクリート道床等の上面の間にモルタル等からなるてん充層が介在される。このてん充層は、長期にわたる使用や間隙水の凍結融解の繰り返しによる凍害などの原因によって劣化することが知られており、当該劣化によって軌道スラブ底面とてん充層上面の間に空隙が生じることがある。このような空隙については、補修する必要が生じるが、てん充層は軌道スラブの下に存在しているため、スラブ軌道上から直接視認することは困難である。
【0004】
このようなてん充層の状態を検知する方法としては、種々の方法が知られているが、例えば特許文献1に記載されたスラブ軌道用打音試験装置を用いた方法が知られている。
【0005】
特許文献1に記載されたスラブ軌道用打音試験装置は、スラブ軌道のレール上を走行可能な車両に取り付けられ、スラブ軌道の幅方向に延在する支持梁と、スラブ軌道の幅方向に並んで支持梁に支持された複数の打撃装置であって、重錘を落下させる打撃装置と、スラブ軌道の軌道スラブの上面を打撃装置が打撃した際に計測された打音の音圧及び荷重値を記憶する記憶装置を含む制御装置とを備え、打撃装置は、軌道スラブの上面から所定の高さにおいて、軌道スラブの上面を打撃し、制御装置は、音圧と荷重値との比に基づいて、軌道スラブの下面側の空隙の有無を評価している。
【0006】
このようなスラブ軌道用打音試験装置を用いた軌道スラブの支持状態の評価方法によれば、重錘を落下させる打撃装置の軌道スラブの上面からの高さを一定に保つようにして、軌道スラブの上面の各所に一定の打撃力を付与することができ、高精度の打音試験を行うことができ、軌道スラブの各所の下面側に生じた空隙を正確に検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のスラブ軌道用打音試験装置を用いた軌道スラブの支持状態評価方法によると、音圧の時刻歴応答波形や周波数応答スペクトルを用いて評価しているために、重錘を落下させる打撃位置と、音圧及び荷重値を測定する集音位置とを近接させる必要があり、打撃装置を複数備える必要があることからスラブ軌道用打音試験装置の小型化を図ることが難しいという問題があった。
【0009】
また、従来のスラブ軌道用打音試験装置は、上述したようにスラブ軌道1枚あたり150から200箇所程度を打撃する必要があり、検査効率の観点から打撃箇所を削減したいという要望があった。しかしながら、打撃位置1点に対して複数の集音位置を設定した場合、従来のスラブ軌道用打音試験装置の構成では、音響差を捉えることは極めて困難であった。
【0010】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、打撃位置や集音位置の数量を削減して試験装置の小型化を図ることができると共に、打撃位置や集音位置の削減によっても評価精度を確保することができる軌道スラブの支持状態評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る軌道スラブの下にてん充層を有するスラブ軌道における軌道スラブの支持状態評価方法であって、前記軌道スラブの任意の打撃位置を打撃する工程と、前記打撃位置から所定の距離離れた複数の集音位置で前記打撃による音圧の時刻歴応答波形を計測する工程と、前記音圧の時刻歴応答波形を時間周波数解析して判定用スペクトログラムを得る工程と、前記判定用スペクトログラムと予め準備した学習用データセットから生成した写像及び射影とを用いて平均絶対誤差を求める工程と、前記学習用データセットから閾値を求める工程と、前記平均絶対誤差及び前記閾値の比から異常度を計算する工程と、前記異常度と空隙深さの関係から空隙範囲を推定することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る軌道スラブの支持状態評価方法において、前記学習用データセットは、軌道スラブがてん充層で完全に支持されたスラブ軌道で複数回の打撃試験を行い、当該打撃試験で得られた音圧の時刻歴応答波形を時間周波数解析して得られた学習用スペクトログラムの集合であると好適である。
【0013】
また、本発明に係る軌道スラブの支持状態評価方法において、前記学習用データセットから閾値を求める工程は、前記学習用データセットを写像生成用データと閾値計算用データに分割する工程と、前記写像生成用データを圧縮・復元して写像を生成する工程と、前記写像に対する前記閾値計算用データの射影を生成する工程とを有し、前記射影と前記閾値計算用データからスペクトログラムにおける画素の差分の絶対値を全体の画素数で平均して前記閾値を得ると好適である。
【0014】
また、本発明に係る軌道スラブの支持状態評価方法において、前記打撃位置は、前記軌道スラブの幅方向の縁部であり、前記集音位置は、前記打撃位置から幅方向内方に所定の間隔で配置されると好適である。
【0015】
また、本発明に係る軌道スラブの支持状態評価方法において、前記空隙範囲の推定は、前記軌道スラブにおける前記異常度のコンターを作成して行うと好適である。
【0016】
また、本発明に係る軌道スラブの支持状態評価方法において、前記判定用スペクトログラムは、時間、周波数及びスペクトル強度の3軸からなる3次元の画像データであると好適である。
【0017】
上記発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた発明となり得る。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る軌道スラブの支持状態評価方法は、音圧の時刻歴応答波形を時間周波数解析して判定用スペクトログラムを得る工程と、判定用スペクトログラムと予め準備した学習用データセットから生成した写像及び射影とを用いて平均絶対誤差を求める工程と、学習用データセットから閾値を求める工程と、平均絶対誤差及び閾値の比から異常度を計算する工程と、異常度と空隙深さの関係から空隙範囲を推定するので、打撃位置や集音位置の数量を削減して、これらの配置を合理化することができ、測定精度を維持したまま測定装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法を行うスラブ軌道の概略図。
【
図2】本発明の実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法に用いる学習用データセットを作成するフロー図。
【
図3】本発明の実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法のフロー図。
【
図4】本実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法に用いるスペクトログラムの一例を示す図。
【
図5】本実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法に用いる判定用データのスペクトログラムの一例を示す図。
【
図6】本実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法に用いる空隙深さと異常度の関係を示すグラフ。
【
図7】本実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法で用いる異常度のコンターの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法を行うスラブ軌道の概略図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法に用いる学習用データセットを作成するフロー図であり、
図3は、本発明の実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法のフロー図であり、
図4は、本実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法に用いるスペクトログラムの一例を示す図であり、
図5は、本実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法に用いる判定用データのスペクトログラムの一例を示す図であり、
図6は、本実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法に用いる空隙深さと異常度の関係を示すグラフであり、
図7は、本実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法で用いる異常度のコンターの一例を示す図である。
【0022】
[スラブ軌道の構成]
まず、本実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法の評価対象であるスラブ軌道1の概要について説明を行う。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法の評価対象であるスラブ軌道1は、プレキャスト製のコンクリート版である軌道スラブ4にレール5を一定間隔で配置したレール締結装置6に固定した軌道構造である。軌道スラブ4の底面は、コンクリート道床2との間に形成されたてん充層3で支持され、列車荷重を構造物に伝えている。てん充層3は、セメントとアスファルト乳剤等からなるセメントアスファルトモルタルが用いられている。
【0024】
このようなスラブ軌道1は、長期間の使用により凍結融解作用が原因と考えられる隙間や欠損を起因とする空隙Sが発生することが知られている。この空隙Sの劣化の程度によっては補修が必要なため、鉄道事業者等は定期検査等を実施している。なお、空隙Sは、てん充層3の縁部から中央部に向かって劣化が進行することが知られている。
【0025】
[軌道スラブの支持状態評価方法の実施形態]
次に、
図2から7を参照して本実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法について説明を行う。
【0026】
本実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法は、
図2に示す手順に沿って学習用データセットを作成する。学習用データセットの作成には、軌道スラブがてん充層で完全に支持された、すなわち、てん充層に空隙を有さない学習用スラブ軌道を準備し、当該学習用スラブ軌道を用いて打音試験を行い、音圧の時刻歴応答波形を計測する(ステップS101)。
【0027】
このとき、打音試験の打撃位置及び集音位置は、
図1に示すように軌道スラブ4任意の幅方向断面においてスラブ軌道の概略一方の縁部近傍の打撃位置H
1、縁部から幅方向に50mmの集音位置M
1、200mmの集音位置M
2及び600mmの集音位置点M
3を用いる。また、他方の縁部についても、同様の打撃位置及び集音位置を用いる。これを軌道スラブの長手方向に沿って所定の間隔で測定して学習用データセットを作成する。なお、本実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法においては、集音位置の総数は、レール締結装置の設置間隔に基づいて測定され、データ総数は、スラブ軌道1枚あたり90点となるように測定を行う。
【0028】
次に、ステップS101で計測した音圧の時刻歴応答波形を時間周波数解析を行い、
図4に示すようなスペクトログラムを作成する(ステップS102)。スペクトログラムは、時間、周波数およびスペクトル強度の3軸からなる3次元の画像データである。
【0029】
ステップS102で得たスペクトログラムを学習用データセットとして格納する(ステップS103)。
【0030】
これを集音位置ごとに複数回繰り返し、所定の回数となるまでスペクトログラムを学習用データセットに格納して学習用データセットを作成する(ステップS104)。
【0031】
次に、ステップS104でまとめた学習用データセットを写像生成用データ11と閾値計算用データ12に分割する。写像生成用データ11を、良品学習のアルゴリズムである主成分分析(PCA)、オートエンコーダ(AE)または、畳み込みオートエンコーダ(CAE)を介して、圧縮したのち復元して写像13を作成する。圧縮は、スペクトログラムを構成するデータの説明変数を削減し、復元は、削減した説明変数をもとの数に戻す処理を行う。なお、写像生成用データと閾値計算用データの分割は、任意に設定した分割比率(例えば50%)に応じて疑似乱数によりランダムに抽出する。
【0032】
また、閾値計算用データ12は、生成した写像13を参照して、写像13に対する閾値計算用データの射影14を生成する。その後、射影14と元の閾値計算用データ12を用いて、学習用平均絶対誤差を求める。学習用平均絶対誤差は、スペクトログラムにおける画素の差分の絶対値を全体の画素数で平均して求める。
【0033】
次に、学習用平均絶対誤差の標本集合から、閾値15を計算する。閾値15は、学習用平均絶対誤差の平均をμ、学習用平均絶対誤差の標準偏差をσとした場合、閾値15=μ+1.96σで求めることができる。閾値15の計算が終了すると、学習用データセットの作成フローは終了する。
【0034】
次に、
図3を参照して本実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法の判定用データの生成方法および当該判定用データを用いた軌道スラブの支持状態評価方法について詳細に説明を行う。
【0035】
まず、上述したステップS101と同様の方法で、評価対象となる支持状態が不明なスラブ軌道に対して、音圧の時刻歴応答波形を測定する(ステップS201)。なお、打撃位置および集音位置は、上述した学習用データセットの作成に用いた打撃位置および集音位置と同様の位置を用いる。
【0036】
さらに、ステップS102と同様にステップS201で計測した音圧の時刻歴応答波形に対して時間周波数解析を行い、判定用スペクトログラムを得る(ステップS202)。
【0037】
次に、上述した学習用データセットから生成した写像13を介してステップS202で生成した判定用スペクトログラムを圧縮・復元して射影21を得る(ステップS203)。
【0038】
ステップS203で得た射影21とステップS202で得た判定用スペクトログラムとによって平均絶対誤差を算出する(ステップS204)。平均絶対誤差の算出方法は、上述した学習用平均絶対誤差と同様に算出を行うことができる。
【0039】
ステップS204で得た平均絶対誤差と、判定用データセットから算出した閾値15の比から異常度を計算する(ステップS205)。異常度(%)は、ステップS204で計算した平均絶対誤差を閾値15で除して100倍することで得ることができる。
【0040】
次に、異常度が100%より大きいか否かを判定する(ステップS206)。このとき、異常度が100%よりも大きい場合には、当該集音位置は空隙があると判定し、100%以下の場合には、空隙がないと判定する。
【0041】
上述した判定用データを集音位置ごとに行い、異常度と空隙深さの関係から空隙範囲を推定する。このとき、
図6に示すように異常度と空隙深さ(てん充層側面から空隙範囲と支持範囲の境界までの距離)の関係から
図7に示すようなコンターを作成して空隙範囲を推定する。
【0042】
このように、本実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法によれば、スペクトログラムを用いた評価を行う事で、誤判定を生じることなく、打音試験における、打撃位置や集音位置の数量を削減することができ、これらの配置の効率化を図ることができる。また、打撃位置や集音位置の数量を削減することで、本実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法に用いられるスラブ軌道用打音試験装置の小型化・軽量化を図ることが可能となり、よりスラブ軌道の支持状態評価の実施をより容易に行うことができる。
【0043】
また、上述した本実施形態に係る軌道スラブの支持状態評価方法では、スラブ軌道として、コンクリート道床に軌道スラブをてん充層を介して配置した場合について説明を行ったが、スラブ軌道の構成はこれに限らず、例えば、高架橋のコンクリート床板にてん充層を介して軌道スラブを配置した構成などのスラブ軌道についても適用することができる。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0044】
1 スラブ軌道, 2 コンクリート道床, 3 てん充層, 4 軌道スラブ, 5 レール, 6 レール締結装置, 11 写像生成用データ, 12 閾値計算用データ, 13 写像, 14 射影, 15 閾値, H1 打撃位置, M1~M3 集音位置, S 空隙。