(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165404
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】電動弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20241121BHJP
F25B 41/35 20210101ALI20241121BHJP
【FI】
F16K31/04 A
F25B41/35
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081577
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 一也
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB05
3H062BB10
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062HH04
3H062HH08
3H062HH09
(57)【要約】
【課題】駆動軸のロックを防止して作動性を良好に維持することができる電動弁および冷凍サイクルシステムを提供する。
【解決手段】電動弁10は、弁本体1と、弁部材2と、駆動部(ステッピングモータ3)と、ロータ軸32とともにねじ送り機構17を構成する支持部材5と、弁部材2とロータ軸32とに亘る弁ホルダ6と、を備え、弁ホルダ6には、ロータ軸32の上昇に伴ってフランジ部32cに係止されるワッシャ(被係止部)65と、バネ受け(ばね受け部材)63の基端部側への移動を規制するスペーサ部(移動規制手段)67と、が設けられ、ねじ送り機構17におけるねじ部の軸線方向のバックラッシュ量Bと、フランジ部32cとワッシャ65との軸線方向のクリアランスCと、の関係が、B<Cに設定されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室および弁ポートを有する弁本体と、前記弁ポートの開度を変更する弁部材と、前記弁部材を前記弁ポートの軸線方向に進退駆動する駆動軸を有する駆動部と、前記駆動軸とともにねじ送り機構を構成する支持部材と、前記弁部材と前記駆動軸とに亘る弁ホルダと、前記弁ホルダを前記軸線方向に案内するホルダガイドと、を備え、前記駆動部の回転運動を前記ねじ送り機構によって前記駆動軸の軸線方向の直線運動に変換し、前記駆動軸に連結された前記弁部材により前記弁ポートの開度を制御する電動弁であって、
前記駆動軸は、前記弁部材側の先端部にて鍔状に形成されたフランジ部を有し、
前記弁ホルダは、全体筒状のホルダ本体と、前記駆動軸の先端と前記弁部材の基端部との間に設けられるばね受け部材と、前記ばね受け部材と前記弁部材の基端部との間に設けられて前記弁部材を押圧付勢する圧縮ばねと、を有し、
前記弁ホルダには、前記ホルダ本体の基端部に形成されて前記駆動軸の先端部を挿通させる挿通孔と、前記駆動軸の上昇に伴って前記フランジ部に係止される被係止部と、前記圧縮ばねに付勢された前記ばね受け部材の基端部側への移動を規制する移動規制部と、が設けられ、
前記ねじ送り機構における前記駆動軸と前記支持部材とで構成されるねじ部の軸線方向のバックラッシュ量Bと、
前記移動規制部によって前記ばね受け部材の移動が規制された状態、かつ、前記駆動軸の先端が前記ばね受け部材に当接した状態、における前記フランジ部と前記被係止部との軸線方向のクリアランスCと、
の関係が、B<Cに設定されていることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記ねじ送り機構における前記ねじ部の径方向の外側クリアランスW1および内側クリアランスW2は、いずれも前記クリアランスCよりも小さい(W1orW2<C)に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記弁ホルダと前記ホルダガイドとの径方向のクリアランスCL1と、
前記駆動軸の前記フランジ部と前記移動規制部との径方向のクリアランスCL2と、
前記駆動軸と前記被係止部との径方向のクリアランスCL3と、
は、いずれも前記クリアランスCよりも大きく(C<CL1orCL2orCL3)設定されていることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項4】
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1~3のいずれか一項に記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁および冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、弁ポートを有する弁本体と、弁ポートの開度を変更する弁体と、弁体を進退駆動する駆動部と、を備えた電動弁が知られている(例えば、特許文献1参照)。この電動弁において、駆動部のロータ軸(雄ねじ)と支持部材の雌ねじとによってねじ送り機構が構成され、弁体は、弁ポートに接近または離間する弁部材(ニードル弁)と、駆動部のロータ軸と弁部材とを接続する弁ホルダと、を有し、弁ホルダがロータ軸のフランジ部に係止されることで弁体が吊り上げられて弁開する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の電動弁では、駆動部のロータ軸における雄ねじと支持部材の雌ねじとのねじ送り機構によって雄ねじと雌ねじとが当接しながら弁体が進退駆動される。駆動部のロータ軸が雌ねじに対して傾斜した場合、ロータ軸のフランジ部も傾斜するが、傾斜したフランジ部の弁ホルダ内への当接の仕方によっては、雄ねじと雌ねじとの当接に加えフランジ部も2か所以上の複数箇所で当接する恐れがある。このようにフランジ部を含むロータ軸が3か所以上で当接しながら進退駆動すると当接の状態によってはロータ軸がロックする可能性があり、作動性が低下するという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、駆動軸のロックを防止して作動性を良好に維持することができる電動弁および冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動弁は、弁室および弁ポートを有する弁本体と、前記弁ポートの開度を変更する弁部材と、前記弁部材を前記弁ポートの軸線方向に進退駆動する駆動軸を有する駆動部と、前記駆動軸とともにねじ送り機構を構成する支持部材と、前記弁部材と前記駆動軸とに亘る弁ホルダと、前記弁ホルダを前記軸線方向に案内するホルダガイドと、を備え、前記駆動部の回転運動を前記ねじ送り機構によって前記駆動軸の軸線方向の直線運動に変換し、前記駆動軸に連結された前記弁部材により前記弁ポートの開度を制御する電動弁であって、前記駆動軸は、前記弁部材側の先端部にて鍔状に形成されたフランジ部を有し、前記弁ホルダは、全体筒状のホルダ本体と、前記駆動軸の先端と前記弁部材の基端部との間に設けられるばね受け部材と、前記ばね受け部材と前記弁部材の基端部との間に設けられて前記弁部材を押圧付勢する圧縮ばねと、を有し、前記弁ホルダには、前記ホルダ本体の基端部に形成されて前記駆動軸の先端部を挿通させる挿通孔と、前記駆動軸の上昇に伴って前記フランジ部に係止される被係止部と、前記圧縮ばねに付勢された前記ばね受け部材の基端部側への移動を規制する移動規制部と、が設けられ、前記ねじ送り機構における前記駆動軸と前記支持部材とで構成されるねじ部の軸線方向のバックラッシュ量Bと、前記移動規制部によって前記ばね受け部材の移動が規制された状態、かつ、前記駆動軸の先端が前記ばね受け部材に当接した状態、における前記フランジ部と前記被係止部との軸線方向のクリアランスCと、の関係が、B<Cに設定されていることを特徴とすることを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、ねじ送り機構におけるねじ部の軸線方向のバックラッシュ量Bよりも、駆動軸のフランジ部と被係止部との軸線方向のクリアランスCが大きく(B<C)設定されていることで、駆動軸が支持部材に対して傾斜したとしても、駆動軸のフランジ部が弁ホルダ内に2箇所以上の複数箇所で当接しにくくなり、駆動軸がロックすることを防止して電動弁の作動性を良好に維持することができる。すなわち、移動規制部によってばね受け部材の移動が規制された状態、かつ、駆動軸の先端がばね受け部材に当接した状態、とは、駆動軸に対する圧縮ばねの付勢力が作用せず、かつ、駆動軸のフランジ部が被係止部を係止していない状態であるため、駆動軸の先端部の振れを拘束する力がゼロか小さいため、駆動軸に傾きが生じやすい。このように駆動軸が傾きやすい状態であっても、ねじ部のバックラッシュ量Bよりも、駆動軸のフランジ部と被係止部との軸線方向のクリアランスCが大きく設定されていれば、雄ねじ部と雌ねじ部との当接に加え、フランジ部が弁ホルダ内の2箇所以上の複数箇所で当接すること、すなわち、フランジ部を含む駆動軸が3箇所以上で当接することを抑制でき、駆動軸のロックを防止することができる。
【0008】
この際、前記ねじ送り機構における前記ねじ部の径方向の外側クリアランスW1および内側クリアランスW2は、いずれも前記クリアランスCよりも小さい(W1orW2<C)に設定されていることが好ましい。この構成によれば、ねじ部の径方向の外側クリアランスW1および内側クリアランスW2がクリアランスCよりも小さく設定されていることで、駆動軸の径方向の振れを制限することができ、駆動軸の傾きを抑制することができる。
【0009】
さらに、前記弁ホルダと前記ホルダガイドとの径方向のクリアランスCL1と、前記駆動軸の前記フランジ部と前記移動規制部との径方向のクリアランスCL2と、前記駆動軸と前記被係止部との径方向のクリアランスCL3と、は、いずれも前記クリアランスCよりも大きく(C<CL1orCL2orCL3)設定されていることが好ましい。この構成によれば、駆動軸および弁ホルダに係る各部のクリアランスCL1,CL2,CL3がクリアランスCよりも大きく設定されていることで、駆動軸が傾いた場合でも各部のクリアランスCL1,CL2,CL3部分で隙間が確保できるので、駆動軸におけるフランジ部が2箇所以上の複数箇所で当接することを防いで駆動軸のロックを防止することができる。
【0010】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、前記いずれかの電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電動弁および冷凍サイクルシステムによれば、駆動軸のロックを防止して電動弁の作動性を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る電動弁を示す縦断面図である。
【
図2】前記電動弁の要部を拡大して示す縦断面図である。
【
図3】前記電動弁と従来の電動弁の作用を説明する縦断面図である。
【
図4】前記電動弁のねじ部を拡大して示す縦断面図である。
【
図5】前記電動弁の他の要部を拡大して示す縦断面図である。
【
図6】本発明の冷凍サイクルシステムの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態に係る電動弁について、
図1~
図5を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の電動弁10は、弁本体1と、弁部材としての弁体2と、駆動部としてのステッピングモータ3と、弁ポート14と、を備えている。なお、以下の説明における「上下」の概念は
図1における上下に対応する。
【0014】
弁本体1は、筒状の弁ハウジング部材1Aと、弁ハウジング部材1Aの内部に固定される弁ガイド部としての弁ガイド部材1Bと、弁ハウジング1Aの上部に固定される円筒状のケース4と、ケース4の上端開口部に固定される支持部材5と、を有している。
【0015】
弁ハウジング部材1Aは、その内部に略円筒状の弁室1Cが形成され、側面側から弁室1Cに連通する第1の継手管11が取り付けられている。また、弁ハウジング部材1Aには、弁座部13の中央部に円柱状の弁口である弁ポート14が形成されている。また、弁ハウジング部材1Aの上端部には、弁ガイド部材1Bを囲うようにリム1bが形成されている。さらに、弁ハウジング部材1Aの底面側には、内部に弁ポート14の一部を有する円筒状の円筒部15が形成されている。そして、弁室1Cに連通する第2の継手管12が、円筒部15の外周側に弁ポート14と同軸に配置され、弁ハウジング部材1Aの底部にろう付けにより取り付けられている。第1の継手管11から流体としての冷媒が流入した場合には、弁室1Cを介して第2の継手管12から冷媒が流出される。また、第2の継手管12から冷媒が流入した場合には、弁ポート14を介して弁室1Cを通過した冷媒が第1の継手管11から流出される。なお、円筒部15は、その円筒状の内周面が弁ハウジング部材1Aの弁ポート14と連続して形成され、弁ハウジング部材1Aと一体に成形されている。
【0016】
弁ガイド部材1Bは、弁ハウジング部材1Aの上部から圧入され、弁室1C内に挿通した状態で取り付けられており、この弁ガイド部材1Bには、軸線Lを中心として弁ガイド孔16が形成されている。ケース4は、弁ハウジング部材1Aのリム1bの外周に嵌合するように組み付けられ、リム1bをかしめるとともに、底部外周をろう付けすることにより弁ハウジング部材1Aに固着されている。
【0017】
支持部材5は、ケース4の上端開口部に固定金具41を介して溶接固定されている。この支持部材5の上側の中心には、弁ポート14などの軸線Lと同軸に形成された雌ねじ部5aが設けられており、下側に雌ねじ部5aの外周よりも内径の大きな円筒状のガイド孔5cが形成されている。なお、本実施形態の場合、支持部材5は、ケース4の上端開口部に固定金具41を介して溶接固定された状態で嵌合されているが、支持部材5は、ケース4に圧入されるようにしてもよい。
【0018】
弁体2は、下側先端にニードル部21が設けられた軸部としてのロッド軸22と、ロッド軸22の上端部を保持する弁ホルダ6と、を有している。ロッド軸22は、弁ガイド部材1Bの弁ガイド孔16内に軸線L方向に摺動可能に挿入されている。また、ロッド軸22の上端部には、フランジ部23が形成されている。なお、ロッド軸22に設けられたニードル部21は、弁体2が最下方に移動した全閉状態時に弁座部13に着座するニードル部21の着座面部21aに連なって、その先端側に向かうに従い縮径するように形成されている。なお、弁体2は、最下方に移動した全閉状態時(すなわち、弁座部13に最も近接した状態時)であっても、ニードル部21を弁座部13に接触させないことで微小な開度が得られるように設定してもよい。
【0019】
弁ホルダ6は、筒状の円筒部61の下端にボス部(弁支持部)62が固着されるとともに、円筒部61内にバネ受け63、圧縮コイルバネ64、ワッシャ65、およびスペーサ部67を備えている。そして、弁ホルダ6は、ボス部62の嵌装孔62a内にロッド軸22の上端部が挿通されるとともに、ロッド軸22のフランジ部23をボス部62に当接させてロッド軸22の上端部を保持している。さらに、弁ホルダ6は、支持部材5のホルダガイドとしてのガイド孔5cに挿通され、軸線L方向に摺動可能に支持されている。つまり、弁ホルダ6は、弁ポート14側の一端に、弁体2が吊り下げられた状態で設けられ、弁体2とバネ受け63とを離間する方向に付勢する圧縮コイルバネ(圧縮ばね)64を収容している。また、弁ホルダ6の他端には、駆動軸としての後述するロータ軸32が連結されている。弁体2またはロータ軸32のうち、少なくとも一方が、弁ホルダ6に対して抜け止めされた状態で、当該弁ホルダ6の内部に進退移動可能に連結されている。
【0020】
本実施形態の場合、ロータ軸32のフランジ部32cの厚みは、弁ホルダ6内におけるワッシャ65とバネ受け63との間に配置されるスペーサ部67に形成されたフランジ部32cが収容される窪み部67aの高さよりも薄くなっている。つまり、フランジ部32cは、スペーサ部67の窪み部67aに収容された状態で隙間が設けられる。したがって、弁開状態時には、圧縮コイルバネ64の付勢力がロータ軸32には伝わらず、弁ホルダ6がロータ軸32にぶら下がった状態になる。そして、弁閉状態になって初めてバネ受け63を介してロータ軸32に圧縮コイルバネ64の付勢力が作用する構造になっている。これにより、弁ホルダ6は、ロータ軸32と支持部材5との間のガタの影響を受けにくくなる。その上、弁体2は、弁ガイド部材1Bにガイドされているので、弁体2が弁座13に傾くことなく着座しやすくなる。すなわち、弁体2が弁座13に着座してから、ロータ軸32がスペーサ部67の窪み部67aにおけるフランジ部32cとの隙間分移動し、前述した圧縮コイルバネ64の付勢力が作用し始める。これにより、弁漏れが低減できる。なお、スペーサ部67とバネ受け63とを一体に形成してもよい。
【0021】
さらに、弁ホルダ6は、支持部材5のガイド孔5cに挿通され、軸線L方向に案内される。つまり、支持部材5のガイド孔5cの下側は、弁ホルダ6を案内するホルダガイド部5dとして機能する。なお、ホルダガイド部5dは、支持部材5と一体に設けるようにしてもよいし、支持部材5とは別体に設けるようにしてもよい。
【0022】
駆動部としてのステッピングモータ3は、キャン7と、キャン7内に設けられたマグネットロータ31と、駆動軸としてのロータ軸32と、不図示のステータコイルと、ステッピングモータ3の回転ストッパ機構8と、を有している。
【0023】
キャン7は、ケース4の上端に溶接などによって気密に固定され、支持部材5およびマグネットロータ31を収納している。マグネットロータ31は、その外周部が多極に着磁されており、その中心にロータ軸32が固定されている。ロータ軸32は、弁閉状態において、その下端部が、弁ホルダ6の円筒部61の上端部を貫通し、バネ受け63の上面に当接するとともに、抜け止め用のフランジ部32cが、ワッシャ65を介して円筒部61内に保持されている。また、ロータ軸32は、その中間部の上側表面に雄ねじ部32aが形成されている。この雄ねじ部32aは、支持部材5の雌ねじ部5aに螺合され、これらの雄ねじ部32aおよび雌ねじ部5aによって、駆動部のねじ送り機構17が構成されている。ねじ送り機構17は、ステッピングモータ3の回転運動をロータ軸32の直線運動に変換し、これにより弁体2が軸線L方向に進退駆動されるようになっている。ステータコイルは、キャン7の外周に配設されており、このステータコイルにパルス信号が与えられることにより、そのパルス数に応じてマグネットロータ31が回転されてロータ軸32が回転するようになっている。
【0024】
ステッピングモータ3の回転ストッパ機構8は、キャン7の天井部にガイド支持体8Aが固定され、ガイド支持体8Aには、キャン7の天井部の中心から軸心に沿って垂下された円筒状のガイド86と、ガイド86の外周に固定された螺旋ガイド87と、螺旋ガイド87にガイドされて回転かつ上下動可能な可動スライダ88と、を備えている。可動スライダ88には、径方向外側に突出した爪部88aが設けられ、マグネットロータ31には、上方に延びて爪部88aと当接する延長部31aが設けられ、マグネットロータ31が回転すると、延長部31aが爪部88aを押すことで、可動スライダ88が螺旋ガイド87に倣って回転かつ上下するようになっている。また、円筒状のガイド86内部にはロータ軸32の上部をガイドする筒部材8Bが嵌合されている。
【0025】
螺旋ガイド87には、マグネットロータ31の最上端位置を規定する上端ストッパ87aと、マグネットロータ31の最下端位置を規定する下端ストッパ87bと、が形成されている。マグネットロータ31の正回転に伴って下降した可動スライダ88が下端ストッパ87bに当接すると、この当接した位置で可動スライダ88が回転不能となり、これによりマグネットロータ31の回転が規制され、弁体2の下降も停止される。一方、マグネットロータ31の逆回転に伴って上昇した可動スライダ88が上端ストッパ87aに当接すると、この当接した位置で可動スライダ88が回転不能となり、これによりマグネットロータ31の回転が規制され、弁体2の上昇も停止される。
【0026】
なお、電動弁10における駆動部としてのステッピングモータ3の構造は、前述した
可動スライダ88の爪部88aと当接する延長部31aが設けられる形状のものに限らず、例えば、爪部を有するコイル状の従動スライダが支持部材のガイド溝内に螺合されて構成される形状のものであってもよい。
【0027】
次に、本実施形態の駆動部のねじ送り機構17とロータ軸32による弁ホルダ6の吊り下げ構造との関係について、
図2を参照して説明する。ねじ送り機構17において、ロータ軸32の雄ねじ部32aと、支持部材5の雌ねじ部5aと、によって互いに螺合するねじ部が構成されている。このねじ部には、軸線L方向のバックラッシュがあり、このバックラッシュ量をBとする。また、弁ホルダ6において、圧縮コイルバネ64に付勢されたバネ受け(ばね受け部材)63がスペーサ部(移動規制手段)67を介してワッシャ(被係止部)65に当接した状態、すなわち、スペーサ部67によってバネ受け63の移動が規制された状態、かつ、ロータ軸32の先端32dがバネ受け63に当接した状態、におけるフランジ部32c上面とワッシャ65下面との軸線方向のクリアランスをCとする。このバックラッシュ量BとクリアランスCとの関係が、B<Cに設定されている。
【0028】
バックラッシュ量BとクリアランスCとの関係が、B<Cに設定されていることで、
図3(A)に示すように、ロータ軸32が上昇し始めて雄ねじ部32aと雌ねじ部5aとの螺合が緩み、バックラッシュ量Bに基づいてロータ軸32が軸線Lに対して傾いた場合でも、ロータ軸32のフランジ部32c上面は、
図3(A)のA1部のように、ワッシャ65に当接するものの、ロータ軸32の先端32dはバネ受け63に当接しないことから2箇所での当接が発生せず、ロータ軸32がロックされることがない。一方、バックラッシュ量BとクリアランスCとの関係が、B<Cに設定されていないと、
図3(B)に示すように、ロータ軸32のフランジ部32c上面は、
図3(B)のA2部のように、ワッシャ65に当接し、かつ、ロータ軸32の先端32dも、
図3(B)のA3部のように、バネ受け63に当接する。このような状態の2箇所での当接が発生すると、圧縮コイルバネ64 の付勢力がバネ受け63を介してロータ軸32にも作用するため、特にロータ軸32がロックされる可能性が高くなる。
【0029】
このような本実施形態の電動弁10によれば、ねじ送り機構17におけるねじ部(雄ねじ部32aおよび雌ねじ部5a)の軸線方向のバックラッシュ量Bよりも、ロータ軸32のフランジ部32cとワッシャ65との軸線方向のクリアランスCが大きく(B<C)設定されていることで、ロータ軸32が支持部材5に対して傾斜したとしても、雄ねじ部32aと雌ねじ部5aとの当接に加え、ロータ軸32のフランジ部32cが弁ホルダ6内で2箇所以上の複数箇所で当接しにくくなり、すなわち、フランジ部32cを含むロータ軸32が3箇所以上で当接しながら駆動することを抑制できる。これにより、ロータ軸32がロックすることを防止して電動弁10の作動性を良好に維持することができる。
【0030】
また、
図4に示すように、本実施形態の電動弁10において、ねじ送り機構17におけるねじ部(雄ねじ部32aおよび雌ねじ部5a)の径方向の外側クリアランスW1および内側クリアランスW2は、いずれもクリアランスCよりも小さい(W1orW2<C)に設定されていることが好ましい。この構成によれば、ねじ部の径方向の外側クリアランスW1および内側クリアランスW2がクリアランスCよりも小さく設定されていることで、ロータ軸32の径方向の振れを制限することができ、ロータ軸32の傾きを抑制することができる。
【0031】
また、
図5に示すように、本実施形態の電動弁10において、弁ホルダ6とガイド孔(ホルダガイド)5cとの径方向のクリアランスCL1と、ロータ軸32のフランジ部32cとスペーサ部67との径方向のクリアランスCL2と、ロータ軸32とワッシャ65との径方向のクリアランスCL3と、は、いずれもクリアランスCよりも大きく(C<CL1orCL2orCL3)設定されていることが好ましい。この構成によれば、ロータ軸32および弁ホルダ6に係る各部のクリアランスCL1,CL2,CL3がクリアランスCよりも大きく設定されていることで、ロータ軸32が傾いた場合でも各部のクリアランスCL1,CL2,CL3部分で隙間が確保できるので、ロータ軸32におけるフランジ部32cが2箇所以上の複数箇所で当接することを防いでロータ軸32のロックを防止することができる。
【0032】
次に、本発明の冷凍サイクルシステムを
図6に基づいて説明する。
図6は、本発明の冷凍サイクルシステムの一例を示す図である。
図6において、符号100は前述した実施形態の電動弁10を用いた膨張弁であり、200は室外ユニットに搭載された室外熱交換器、300は室内ユニットに搭載された室内熱交換器、400は四方弁を構成する流路切換弁、500は圧縮機である。電動弁100、室外熱交換器200、室内熱交換器300、流路切換弁400、および圧縮機500は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成している。なお、アキュムレータ、圧力センサ、温度センサ等は図示を省略してある。
【0033】
冷凍サイクルの流路は、流路切換弁400により冷房運転時の流路と暖房運転時の流路の2通りに切換えられる。冷房運転時には、
図6に実線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は流路切換弁400から室外熱交換器200に流入され、この室外熱交換器200は凝縮器として機能し、室外熱交換器200から流出された液冷媒は膨張弁100を介して室内熱交換器300に流入され、この室内熱交換器300は蒸発器として機能する。
【0034】
一方、暖房運転時には、
図6に破線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は流路切換弁400から室内熱交換器300、膨張弁100、室外熱交換器200、流路切換弁400、そして、圧縮機500の順に循環され、室内熱交換器300が凝縮器として機能し、室外熱交換器200が蒸発器として機能する。膨張弁100は、冷房運転時に室外熱交換器200から流入する液冷媒、または暖房運転時に室内熱交換器300から流入する液冷媒を、それぞれ減圧膨張し、さらにその冷媒の流量を制御する。なお、
図6においては、冷房運転時に室外熱交換器200から液冷媒が膨張弁100の第1の101に流入し、暖房運転時には、室内熱交換器300からの液冷媒が膨張弁100の第2の継手管102に流入するように冷凍サイクルに膨張弁100を設けているが、これに限らず、冷房運転時に室外熱交換器200からの液冷媒が膨張弁100の第2の継手管102に流入し、暖房運転時には室内熱交換器300からの液冷媒が膨張弁100の第1の継手管101に流入するように膨張弁100を冷凍サイクルに設けてもよい。
【0035】
以上の本発明の冷凍サイクルシステムによれば、前述したように、膨張弁100として用いられる電動弁10が、ロータ軸32のロックが防止されて良好に作動するので、不具合が生じ難い冷凍サイクルシステムとすることができる。
【0036】
なお、本発明の冷凍サイクルシステムの具体的な構成は、前述した実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更も本発明に含まれる。例えば、前述した実施形態では、電動弁10を、冷凍サイクルシステムの膨張弁として使用したが、これに限定されず、例えば、ビル用のマルチエアコン等の室内機側の絞り装置等、他のシステムにも適用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 弁本体
1C 弁室
2 弁体(弁部材)
21 ニードル部
3 ステッピングモータ(駆動部)
32 ロータ軸(駆動軸)
32a 雄ねじ部
32c フランジ部
5 支持部材
5a 雌ねじ部
5c ガイド孔(ホルダガイド)
6 弁ホルダ
62 ボス部(弁支持部)
63 バネ受け(ばね受け部材)
65 ワッシャ(被係止部)
67 スペーサ部(移動規制手段)
10 電動弁
13 弁座部
14 弁ポート
17 ねじ送り機構
100 膨張弁
200 室外熱交換器(凝縮器、蒸発器)
300 室内熱交換器(凝縮器、蒸発器)
400 流路切換弁
500 圧縮機
B バックラッシュ量
C クリアランス
CL1,CL2,CL3 クリアランス
W1 外側クリアランス
W2 内側クリアランス