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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165405
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】貝殻焼成物を含む壁紙及び靴下
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/072 20060101AFI20241121BHJP
   E04F 13/07 20060101ALI20241121BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20241121BHJP
   A41B 11/00 20060101ALI20241121BHJP
   D06M 11/76 20060101ALI20241121BHJP
   D21H 27/20 20060101ALI20241121BHJP
   D21H 27/30 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
E04F13/072
E04F13/07 B
E04F13/08 A
A41B11/00 Z
D06M11/76
D21H27/20
D21H27/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081578
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】523183910
【氏名又は名称】一般社団法人日本GEIRO協会
(74)【代理人】
【識別番号】100184767
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100098556
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々 紘造
(74)【代理人】
【識別番号】100137501
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々 百合子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 恒明
【テーマコード(参考)】
2E110
3B018
4L031
4L055
【Fターム(参考)】
2E110AA65
2E110AB04
2E110AB46
2E110BA02
2E110BA03
2E110BA04
2E110BA05
2E110GA22W
2E110GA32W
2E110GB11W
2E110GB42W
2E110GB63W
3B018AC09
3B018AD00
4L031AA02
4L031AB34
4L031BA14
4L031DA12
4L055AG04
4L055AG16
4L055AH02
4L055AJ01
4L055AJ04
4L055EA14
4L055EA32
4L055FA11
4L055FA30
4L055GA23
(57)【要約】
【課題】 壁に、漆喰塗料を塗るよりもさらに簡便に、そして天然物由来の素材で、漆喰のように抗菌機能をもたせることのできる実用品、併せて、貝殻焼成物を利用した他の実用品を提供することである。
【解決手段】
貝殻焼成物を含む抗菌壁紙であって、該抗菌壁紙は複数の層から構成されており、
該層の間に、貝殻焼成物が配された、抗菌壁紙。貝殻焼成物を含む繊維とバナナ繊維を混紡した混紡糸、からなる抗菌靴下。
本発明によれば、現場での施工が、漆喰や漆喰塗料よりも簡便でありながら、壁に、漆喰のような抗菌作用を付与できる。また、本発明によれば環境に配慮した抗菌靴下を製造できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貝殻焼成物を含む抗菌壁紙であって、
該抗菌壁紙は複数の層から構成されており、
該層の間に、貝殻焼成物が配された、抗菌壁紙。
【請求項2】
壁紙1mあたり、10~20gの貝殻焼成物を含む請求項1の壁紙。
【請求項3】
貝殻焼成物を含む繊維とバナナ繊維を混紡した混紡糸、からなる抗菌靴下。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌作用を有する貝殻焼成物含有壁紙及び靴下に関する。
【背景技術】
【0002】
貝殻の主成分である炭酸カルシウム(CaCO)は、高温焼成することにより酸化カルシウム(CaO)となる。この貝殻を高温焼成した貝殻焼成物は、抗菌作用を有する。抗菌作用が生じる理由は、水和するとCa(OH)になり、pHが上昇するからであるが、それ以外にも抗菌作用を有する要因があると考えられている(非特許文献1)。
この天然物由来で抗菌活性を有する貝殻焼成物は、水に溶解して、抗菌スプレーなどとして利用されている。さらに繊維や建材への利用も提案されている(特許文献1[請求項4],特許文献2[請求項10])。
【0003】
一方で、日本古来の建材に、漆喰壁がある。漆喰壁は、抗菌作用、調湿作用など、主成分である消石灰(水酸化カルシウム(CaOH))の効果による様々な機能を有している。この漆喰の機能を簡単な施工で壁などに持たせるべく、消石灰に樹脂を加えて塗料化したものがある(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-220227号公報
【特許文献2】WO2004/089092号公報
【非特許文献1】澤井淳ら,加熱処理した貝殻粉末の抗菌活性を応用した微生物制御,日本食品微生物学会雑誌,20(1),1-7,2003.)
【非特許文献2】赤須ら,漆喰塗料の機能性に関する研究,表面技術,72(5),276-281,2021.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、壁に、漆喰塗料を塗るよりもさらに簡便に、そして天然物由来の素材で、漆喰のように抗菌機能をもたせることのできる実用品、併せて、貝殻焼成物を利用した他の実用品を提供することである。本発明のさらなる目的は、より抗菌効果を持続できる実用品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するために種々検討の結果、貝殻焼成物を壁紙に応用することに想到し、さらには、貝殻焼成物をできるだけ封じ込めるように配し剥離しにくくして、効果を長持ちさせることを考え、本発明に到達した。加えて、貝殻焼成物を靴下に応用することにも想到した。
すなわち本発明は以下のとおりである。
1.貝殻焼成物を含む抗菌壁紙であって、
該抗菌壁紙は複数の層から構成されており、
該層の間に、貝殻焼成物が配された、抗菌壁紙。
2.壁紙1mあたり、10~20gの貝殻焼成物を含む前記1の壁紙。
3.貝殻焼成物を含む繊維とバナナ繊維を混紡した混紡糸、からなる抗菌靴下。
【発明の効果】
【0007】
本発明の貝殻焼成物を含む壁紙によれば、現場での施工が、漆喰や漆喰塗料よりも簡便でありながら、壁に、漆喰のような抗菌作用を付与できる。また、本発明によれば貝殻焼成物を含む靴下を製造できる。
さらに、本発明によれば、壁に付与された抗菌効果が長持ちする可能性がある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0009】
1.貝殻焼成物について
貝殻焼成物は、ホタテ貝、北寄貝、牡蠣などの貝の貝殻を粉砕し、これを高温焼成したものであり、主成分は酸化カルシウム(CaO)で、抗菌作用を有する。資源の有効利用という観点からは、養殖が盛んに行われているホタテ貝の貝殻を用いるのがより好ましい。焼成は700℃~1300°で8時間以上焼成するのがより好ましい。貝殻焼成物としては、例えば、既製品の貝殻焼成物粉末(株式会社日研化学研究所 シェルナチュレパウダー(SIAAコード:JP0111083A0001Q))やこれをマスターバッチにしたもの(同社、シェルナチュレパウダーMB(マスターバッチ)SIAAコード:JP0121083A0001R))を用いることができる。
【0010】
2.貝殻焼成物を含む壁紙
本発明の壁紙は2層以上からなり、壁紙の層と層の間に、貝殻焼成物が配されている。層と層の間に貝殻焼成物を封じ込めることで、貝殻焼成物が剥離しにくくなり抗菌作用をより持続させられる可能性がある。もちろん、併せて、両表面にも貝殻焼成物を配することを排除するものではない。
壁紙の層を構成する平面体は、布帛、不織布などの布、樹脂、紙、いずれを素材としてもよい。層と層の間に貝殻焼成物を配するには、層を構成する平面体を、それぞれ、貝殻焼成物と樹脂を混合したコーティング剤でコーティングしたり、貝殻焼成物を混合した樹脂をフィルム化しこれでラミネートししたりすればよい。層を構成する平面体が、合成繊維を使用した布帛、又は樹脂であれば、合成繊維、又は樹脂を製造する際に、貝殻焼成物を混合してもよい。
貝殻焼成物を含むことで、壁紙に漆喰のように抗菌作用を付与することが出来る。さらに、貝殻焼成物を層と層の間に封じ込めることで、抗菌作用を長持ちさせることができる可能性がある。
【0011】
貝殻焼成物の含有量はより好ましくは壁紙1mあたり10~20gである。
【0012】
3.貝殻焼成物を含む靴下
貝殻焼成物の実用品への応用をさらに考えたところ、貝殻焼成物を含む繊維を、天然素材繊維であるバナナ繊維と混紡し、できた混紡糸で靴下を製造することに思い至った。貝殻焼成物は廃棄物である貝殻、バナナ繊維は大量に廃棄されるバナナの茎から製造されるので、これらを原料に用いることで、環境に配慮した抗菌靴下を製造することができる。
貝殻焼成物を含む繊維は、ポリエステルなどの合成繊維であればこれを製造する際に貝殻焼成物を混合すればよい。また綿などの天然繊維であれば紡糸前の綿(わた)の状態で貝殻焼成物を含む水溶液に漬ける吸尽法により、貝殻焼成物を含ませることが出来る。効果の持続性という観点からは、貝殻焼成物を練りこむことのできる合成繊維の方が優れているのでこちらを使用するのがより好ましいが、天然物を原料に使うという観点からは、貝殻焼成物を含む綿等を原料に使用することも考えられる。
バナナ繊維は、単独では強度が劣るので、綿などと混紡して使われる。
上記貝殻焼成物を含む繊維とバナナ繊維を混合紡糸すれば、抗菌作用を有する混紡糸を製造することが出来る。また、貝殻焼成物を含む繊維とバナナ繊維を混紡した混紡糸とは、少なくともこれらの繊維を含むことを意味し、その他の繊維を含んでいてもよい。例えば、抗菌加工していない通常の綿などの天然繊維も含めて、混紡してもよい。
バナナ繊維の強度補強、効果の持続性、天然繊維を使うことのバランスを考えて、バナナ繊維、貝殻焼成物を含む合成繊維、綿などの天然繊維、の3種類の繊維で混合紡糸して、混紡糸を製造するとより好ましい。混合割合としては、バナナ繊維が20~40重量%、貝殻焼成物を含む合成繊維が30~40重量%、綿などの天然物繊維が30~40重量%、であればより好ましい。バナナ繊維の強度の観点から、バナナ繊維は20~40重量%にとどめ、60~80重量%は他の繊維を加えた方がより好ましい。
また使用する貝殻焼成物の量は、効果の観点からは多い方が好ましいが、加えすぎるとできた混紡糸の強度が低下する恐れがある。靴下としたときに、1mあたり10~20gの貝殻焼成物を含んでいるとより好ましい。
靴下を製造する際は、本発明の混紡糸を主な原料とするが、当然ながら、染色剤など他の副次的な原料を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明によれば貝殻焼成物の用途が拡大するので、養殖ホタテなどの貝殻リサイクルに取り組んでいる業界、さらには環境に配慮した抗菌壁紙や抗菌靴下を製造できるので、建材業界、衣料品業界に有用である。