(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165416
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】電力供給システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/32 20060101AFI20241121BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20241121BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241121BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20241121BHJP
B60L 8/00 20060101ALI20241121BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241121BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20241121BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20241121BHJP
【FI】
H02J3/32
H02J3/38 110
H02J3/38 130
H02J7/00 B
H02J7/00 302C
H02J7/02 F
B60L8/00
B60L50/60
B60L53/14
B60L58/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081599
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 二彦
(72)【発明者】
【氏名】宮川 喜一
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G066HB06
5G066HB09
5G066JB03
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503BB02
5G503CB09
5G503FA06
5H125AA01
5H125AC09
5H125AC12
5H125AC24
5H125BC05
5H125BC21
5H125BC24
5H125BE01
5H125DD02
5H125EE27
(57)【要約】
【課題】発電電力の高効率利用が可能な電力供給システムを提供する。
【解決手段】商用電力系統1、再生可能エネルギーを用いた発電装置3、定置型蓄電池4および移動体蓄電池6に直接的または間接的に接続して構成される電力供給システム100であって、定置型蓄電池4と移動体蓄電池6との合計の充放電効率が高くなるように、移動体蓄電池6への充電入力または移動体蓄電池6からの放電出力を制御することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統、再生可能エネルギーを用いた発電装置、定置型蓄電池および移動体蓄電池に直接的または間接的に接続して構成される電力供給システムであって、
前記定置型蓄電池と前記移動体蓄電池との合計の充放電効率が高くなるように、前記移動体蓄電池への充電入力または前記移動体蓄電池からの放電出力を制御する
ことを特徴とする電力供給システム。
【請求項2】
前記充電入力が予め設定された充電しきい値未満の場合は、前記定置型蓄電池への充電を行い、前記充電入力が前記充電しきい値以上の場合は、前記移動体蓄電池への充電を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項3】
前記放電出力が予め設定された放電しきい値未満の場合は、前記定置型蓄電池からの放電を行い、前記放電出力が前記放電しきい値以上の場合は、前記移動体蓄電池からの放電を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【請求項4】
前記充電しきい値を、前記移動体蓄電池を制御するための消費電力から決定する
ことを特徴とする請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項5】
前記放電しきい値を、前記商用電力系統に接続された電力負荷の電力消費状況と、前記移動体蓄電池を制御するための消費電力とから決定する
ことを特徴とする請求項3に記載の電力供給システム。
【請求項6】
前記充電しきい値を、AIが一定期間毎に設定し直す
ことを特徴とする請求項2に記載の電力供給システム。
【請求項7】
前記放電しきい値を、前記商用電力系統に接続された電力負荷の電力消費状況の変動要因に関する要因データによって学習したAIが、一定期間毎に設定し直す
ことを特徴とする請求項3に記載の電力供給システム。
【請求項8】
前記定置型蓄電池の電池容量は、前記移動体蓄電池を搭載した移動体1台当たり3.5kWh未満、または、前記移動体蓄電池の充放電を行う電力変換装置1台当たり3.5kWh未満である
ことを特徴とする請求項1に記載の電力供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化等の環境問題への対策として、再生可能エネルギーを利用した発電(例えば、太陽光発電)が注目されている。再生可能エネルギーによる発電電力は、気象条件等の自然界における諸条件によって大きく変動するため、一般的な電力供給システムでは、発電電力を貯蔵することが可能な定置型蓄電池を用いて、当該定置型蓄電池の充放電を行うことにより発電電力を消費電力に合わせて供給している。
【0003】
さらに、電気自動車(EV)の普及に伴い、電気自動車用の充放電装置を含む一般家庭用としてのV2H(Vehicle to Home)システムが浸透しつつあり、近年では、V2X(V2H、V2G(Vehicle to Grid)、V2B(Vehicle to Building)の総称)システムを組み込んだ電力供給システムが注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また近年では、地球温暖化防止とエネルギーの安定供給確保の観点から、省エネルギーへの必要性が一層高まっている。そのため、特許文献1に記載のシステムのように、発電装置、定置型蓄電池、電気自動車等の車載蓄電池に接続して構成される電力供給システムにおいても、発電電力の高効率利用が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、発電電力の高効率利用が可能な電力供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る電力供給システムは、
商用電力系統、再生可能エネルギーを用いた発電装置、定置型蓄電池および移動体蓄電池に直接的または間接的に接続して構成される電力供給システムであって、
前記定置型蓄電池と前記移動体蓄電池との合計の充放電効率が高くなるように、前記移動体蓄電池への充電入力または前記移動体蓄電池からの放電出力を制御することを特徴とする。
【0008】
前記電力供給システムは、
前記充電入力が予め設定された充電しきい値未満の場合は、前記定置型蓄電池への充電を行い、前記充電入力が前記充電しきい値以上の場合は、前記移動体蓄電池への充電を行うよう構成できる。
【0009】
前記電力供給システムは、
前記放電出力が予め設定された放電しきい値未満の場合は、前記定置型蓄電池からの放電を行い、前記放電出力が前記放電しきい値以上の場合は、前記移動体蓄電池からの放電を行うよう構成できる。
【0010】
前記電力供給システムは、
前記充電しきい値を、前記移動体蓄電池を制御するための消費電力から決定するよう構成できる。
【0011】
前記電力供給システムは、
前記放電しきい値を、前記商用電力系統に接続された電力負荷の電力消費状況と、前記移動体蓄電池を制御するための消費電力とから決定するよう構成できる。
【0012】
前記電力供給システムは、
前記充電しきい値を、AIが一定期間毎に設定し直すよう構成できる。
【0013】
前記電力供給システムは、
前記放電しきい値を、前記商用電力系統に接続された電力負荷の電力消費状況の変動要因に関する要因データによって学習したAIが、一定期間毎に設定し直すよう構成できる。
【0014】
前記電力供給システムにおいて、
前記定置型蓄電池の電池容量は、前記移動体蓄電池を搭載した移動体1台当たり3.5kWh未満、または、前記移動体蓄電池の充放電を行う電力変換装置1台当たり3.5kWh未満であるよう構成できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、発電電力の高効率利用が可能な電力供給システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る電力供給システムを示す図である。
【
図2】放電出力に対する移動体蓄電池の充放電効率を示す図である。
【
図3】放電出力に対する移動体蓄電池の充放電効率および移動体蓄電池の放電比率を示す図である。
【
図4】放電出力の1分平均値に対する移動体蓄電池の累計放電出力と移動体蓄電池の放電比率(累計比率)とを示す図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る電力供給システムを示す図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る電力供給システムを示す図である。
【
図7】放電出力に対する蓄電池(移動体蓄電池、定置型蓄電池)の充放電効率と放電比率とを示す図であって、(A)は放電しきい値を200Wに設定した場合の図、(B)は放電しきい値を300Wに設定した場合の図である。
【
図8】放電出力に対する蓄電池(移動体蓄電池、定置型蓄電池)の充放電効率と放電比率とを示す図であって、(A)は放電比率が低出力側に変化した場合の図、(B)は放電比率が高出力側に変化した場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る電力供給システムの実施形態について説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図1に、本発明の第1実施形態に係る電力供給システム100を示す。電力供給システム100は、一般家庭(例えば、一戸建てまたは集合住宅)、オフィスビル、工場、商業施設等の少なくとも1つを含む任意のエリアに適用できる。
【0019】
電力供給システム100は、商用電力系統1、電力負荷2、少なくとも1つの発電装置3、少なくとも1つの定置型蓄電池4、少なくとも1台の移動体5(移動体蓄電池6)に、直接的または間接的に接続される。直接的に接続とは、電力供給システム100と接続相手(商用電力系統1、電力負荷2、発電装置3、定置型蓄電池4または移動体5)とを、他のシステムや他の装置を介さずに、有線接続および/または無線接続すること意味する。間接的に接続とは、電力供給システム100と接続相手とを、他のシステムや他の装置を介して、有線接続および/または無線接続することを意味する。なお、他のシステムや他の装置は、周知技術の範囲のものである。
【0020】
商用電力系統1は、商用電力系統1と電力供給システム100とを接続する系統電力線Lに、交流の系統電力を供給する交流電力源である。系統電力線Lは、三相3線式の電力線でもよいし、単相3線式の電力線でもよいし、単相2線式の電力線でもよいし、他の方式の電力線でもよい。電力供給システム100を一般家庭に適用した場合、商用電力系統1は、例えば、三相3線式の高圧の電力線、柱上トランス、単相3線式の低圧(AC100/200V)の電力線を介して、電力供給システム100に接続される。
【0021】
電力負荷2は、系統電力線Lに接続される。電力負荷2とは、電力を消費する機器の総称である。電力供給システム100を一般家庭に適用した場合、電力負荷2には、例えば、冷蔵庫、エアコン、洗濯機、パソコン、テレビ等の電化製品が含まれ、これらの電力負荷2は、例えば、単相3線式の電力線に接続される。
【0022】
発電装置3は、再生可能エネルギーを用いて発電を行う装置であり、直流または交流の発電電力を生成するよう構成される。再生可能エネルギーは、例えば、太陽光、太陽熱、風力、地熱、海洋エネルギー等の少なくとも1つを含む。本実施形態では、再生可能エネルギーは太陽光を含み、発電装置3は少なくとも1つの太陽光発電装置(太陽光パネル)を含む。太陽光パネルは、複数の太陽電池セルで構成される。
【0023】
定置型蓄電池4は、所定の場所に設置して用いる蓄電地である。例えば、電力供給システム100を一般家庭に適用した場合、定置型蓄電池4は一般家庭の敷地に設置され、電力供給システム100を工場に適用した場合、定置型蓄電池4は工場の敷地に設置される。定置型蓄電池4は、充放電可能に構成された少なくとも1つの二次電池を含む。二次電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池が用いられるが、リチウムイオン二次電池以外の二次電池を用いてもよい。また、定置型蓄電池4は、二次電池を管理するバッテリーマネジメントシステムを含む。
【0024】
移動体5は、移動体蓄電池6を搭載し、移動体蓄電池6の電力で移動可能に構成される。移動体5としては、電気自動車(EV)が一般的であるが、電気自動車(EV)に限定されず、例えば、ハイブリッド車、電動バス、電動トラック、燃料電池車を含み、蓄電池を搭載する車両であればよい。また、工場等で用いられる産業車両(フォークリフト、天井クレーンなど)、自動倉庫で用いられる電動移動体(無人搬送車など)、電動の建設用機器(クレーン、ブルドーザー、シャベルローダなど)、電動農機具(トラクターなど)であってもよい。
【0025】
移動体蓄電池6は、充放電可能に構成された少なくとも1つの二次電池と、当該少なくとも1つの二次電池を管理するバッテリーマネジメントシステムとを含む。二次電池としては、例えば、リチウムイオン二次電池が用いられるが、リチウムイオン二次電池以外の二次電池を用いてもよい。バッテリーマネジメントシステムは、二次電池の充放電を管理するため、移動体蓄電池6の充放電時にも電力を消費する。以下では、バッテリーマネジメントシステムが消費する電力を、バッテリーマネジメント電力という。バッテリーマネジメント電力は、移動体蓄電池6を制御するための消費電力に含まれる。
【0026】
電力供給システム100は、電力変換部110と制御部120とで構成される。なお、この構成に限定されるものではなく、例えば、電力変換部110は、複数の電力変換部で構成されていてもよし、制御部120も、複数の制御部で構成されていてもよい。
【0027】
電力変換部110は、商用電力系統1、電力負荷2、発電装置3、定置型蓄電池4、移動体5(移動体蓄電池6)に直接的または間接的に接続され、これらの接続相手間で電力の授受を行うよう構成される。電力変換部110は、例えば、少なくとも1つのAC/DCインバータと、少なくとも1つのDC/DCコンバータとを組み合わせて構成される。AC/DCインバータは、片方向の電力変換動作を行うものでもよいし、双方向の電力変換動作を行うものでもよい。同様に、DC/DCコンバータは、片方向の電力変換動作を行うものでもよいし、双方向の電力変換動作を行うものでもよい。
【0028】
発電装置3と電力変換部110との関係では、電力変換部110には、発電装置3から直流または交流の発電電力が入力される。電力変換部110は、制御部120の制御下で、発電電力を所望の交流電力または直流電力に変換して出力する。電力変換部110は、例えば、変換後の交流電力を電力負荷2および/または商用電力系統1に供給したり、変換後の直流電力を定置型蓄電池4および/または移動体蓄電池6に供給したりする。
【0029】
定置型蓄電池4と電力変換部110との関係では、電力変換部110は、制御部120の制御下で、定置型蓄電池4に対する充電動作および放電動作を行う。充電動作時の電力変換部110は、定置型蓄電池4に直流の充電電力を供給し、放電動作時の電力変換部110は、定置型蓄電池4から直流の放電電力を取り出す。電力変換部110は、例えば、定置型蓄電池4の放電電力を、所望の交流電力に変換して電力負荷2および/または商用電力系統1に供給したり、所望の直流電力に変換して移動体蓄電池6に供給したりする。
【0030】
移動体5(移動体蓄電池6)と電力変換部110との関係では、電力変換部110は、制御部120の制御下で、移動体蓄電池6に対する充電動作および放電動作を行う。充電動作時の電力変換部110は、移動体蓄電池6に直流の充電電力を供給し、放電動作時の電力変換部110は、移動体蓄電池6から直流の放電電力を取り出す。電力変換部110は、例えば、移動体蓄電池6の放電電力を、所望の交流電力に変換して電力負荷2および/または商用電力系統1に供給したり、所望の直流電力に変換して定置型蓄電池4に供給したりする。
【0031】
電力変換部110は、図示しない検出部を備えていてもよい。検出部は、制御部120の制御に必要な電流値および/または電圧値を検出するものである。検出部は、例えば、系統電力線Lに対する入出力を検出するためのセンサと、発電装置3からの発電出力を検出するためのセンサと、定置型蓄電池4への充電入力および定置型蓄電池4からの放電出力を検出するためのセンサと、移動体蓄電池6への充電入力および移動体蓄電池6からの放電出力を検出するためのセンサとを含む。上記各センサは、例えば、電流センサおよび/または電圧センサである。検出部の検出結果(電流値および/または電圧値)は、所定の周期で制御部120に送信される。
【0032】
制御部120は、電力変換部110を制御するよう構成される。制御部120は、例えば、電力変換部110の各種制御を行う処理部と、メモリ等で構成された記憶部とを含む。また、制御部120は、定置型蓄電池4および/または移動体5と通信を行う通信部を含んでもよい。制御部120は、例えば、マイクロコントローラやDSP等を使用したデジタル回路で構成されていてもよいし、デジタル回路とアナログ回路とを組み合わせた回路で構成されていてもよい。
【0033】
制御部120は、電力変換部110による発電電力の電力変換時の制御を行う。当該制御は、例えば、最大電力点追従(MPPT:Maximum Power Point Tracking)制御を含んでもよい。MPPT制御は、公知の制御であるため、ここではその説明を省略する。また、制御部120は、発電電力の供給先および電力配分に関する制御を行ってもよい。当該制御は、例えば、予め設定された優先順位、または、ユーザが設定した優先順位に基づいて、発電電力の供給先および電力配分を決定する。
【0034】
制御部120は、電力変換部110による定置型蓄電池4の充放電動作時の制御と、電力変換部110による移動体蓄電池6の充放電動作時の制御とを行う。すなわち、制御部120は、定置型蓄電池4への充電入力、定置型蓄電池4からの放電出力、移動体蓄電池6への充電入力、移動体蓄電池6からの放電出力の制御を行う。これらの制御において、定置型蓄電池4への充電入力は、定置型蓄電池4に入力される電力、電圧および電流の少なくとも1つを含み、定置型蓄電池4からの放電出力は、定置型蓄電池4から出力される電力、電圧および電流の少なくとも1つを含み、移動体蓄電池6への充電入力は、移動体蓄電池6に入力される電力、電圧および電流の少なくとも1つを含み、移動体蓄電池6からの放電出力は、移動体蓄電池6から出力される電力、電圧および電流の少なくとも1つを含む。
【0035】
制御部120は、定置型蓄電池4と移動体蓄電池6との合計の充放電効率(以下、「総合充放電効率」という)が高くなるように、移動体蓄電池6への充電入力または移動体蓄電池6からの放電出力を制御する。
【0036】
ここで、(1)定置型蓄電池4の充放電効率、(2)移動体蓄電池6の充放電効率、(3)総合充放電効率は、それぞれ以下のように定義される。
(1)定置型蓄電池4の充放電効率=(定置型蓄電池4の放電量/定置型蓄電池4の充電量)×100
(2)移動体蓄電池6の充放電効率=(移動体蓄電池6の放電量/移動体蓄電池6の充電量)×100
(3)総合充放電効率=((定置型蓄電池4の放電量+移動体蓄電池6の放電量)/(定置型蓄電池4の充電量+移動体蓄電池6の充電量))×100
なお、これらの定義は、バッテリーマネジメント電力が異なる複数の蓄電池(複数の定置型蓄電池4および/または複数の移動体蓄電池6)に対しても適用できる。
【0037】
総合充放電効率が高くなる制御とは、定置型蓄電池4および/または移動体蓄電池6の充放電時に、総合充放電効率が定置型蓄電池4の充放電効率または移動体蓄電池6の充放電効率よりも高くなる制御である。例えば、充放電電力の所定の領域において、定置型蓄電池4と移動体蓄電池6のうちの充放電効率が高い方に対して充放電を行う制御が、総合充放電効率が高くなる制御の一例である。
【0038】
本実施形態に係る電力供給システム100では、制御部120が、総合充放電効率が高くなるように移動体蓄電池6への充電入力または移動体蓄電池6からの放電出力を制御する(もしくは、定置型蓄電池4への充電入力または定置型蓄電池4からの放電出力を制御する)。この制御により、発電装置3の発電電力を用いた定置型蓄電池4および/または移動体蓄電池6の充放電を行う場合、本実施形態に係る電力供給システム100では、充放電時の損失が低減されるので、発電電力の高効率利用が可能となる。
【0039】
(第1実施形態の第1実施例)
次に、総合充放電効率が高くなる制御の一例として、移動体蓄電池6のバッテリーマネジメント電力を考慮した制御について説明する。
【0040】
図2(A)に、移動体蓄電池6からの放電出力に対する、移動体蓄電池6の充放電効率曲線を示す。
図2(A)に示すように、放電出力に対する移動体蓄電池6の充放電効率は、低出力領域(
図2(A)では、500W以下の領域)では放電出力が小さくなるほど小さい値となる。これは、後述するように、低出力領域ではバッテリーマネジメント電力の影響が大きくなるためである。
【0041】
放電時の移動体蓄電池6では、移動体蓄電池6から電力変換部110へ出力される放電電力に加えて、バッテリーマネジメント電力が消費される。すなわち、移動体蓄電池6から所定の放電電力を出力するためには、移動体蓄電池6の充電量が、充電量≧当該所定の放電電力+バッテリーマネジメント電力を満たす必要がある。
図2(A)では、バッテリーマネジメント電力を約150Wとしているため、例えば、放電出力が150Wの時の充放電効率は約50%となるが、バッテリーマネジメント電力が異なれば充放電効率も異なる。
図2(B)に、バッテリーマネジメント電力が異なる場合の、放電出力に対する移動体蓄電池6の充放電効率曲線を示す。
図2(B)において、Aはバッテリーマネジメント電力が150W、Bはバッテリーマネジメント電力が100W、Cはバッテリーマネジメント電力が200Wの場合の充放電効率曲線である。例えば、Bの場合は放電出力が100Wの時に充放電効率が約50%となり、Cの場合は放電出力が200Wの時に充放電効率が約50%となる。なお、
図2の充放電効率において、移動体蓄電池6の内部抵抗損は除く(考慮しない)ものとする。これ以降の図でも同様とする。
【0042】
定置型蓄電池4でも放電時にバッテリーマネジメント電力が消費されるため、定置型蓄電池4の放電出力に対する定置型蓄電池4の充放電効率は、低出力領域(例えば、500W以下の領域)では放電出力が小さくなるほど小さい値となる。しかしながら、定置型蓄電池4のバッテリーマネジメント電力は、移動体蓄電池6のバッテリーマネジメント電力よりもはるかに小さい。本実施形態の場合、移動体蓄電池6のバッテリーマネジメント電力が約150Wであるのに対して、定置型蓄電池4のバッテリーマネジメント電力は約20Wである。このため、定置型蓄電池4は、移動体蓄電池6よりもバッテリーマネジメント電力の影響が小さくなり、低出力領域における充放電効率の低下も小さくなる。
【0043】
なお、上記のバッテリーマネジメント電力の値は、あくまで一例である。移動体蓄電池6のバッテリーマネジメント電力は、バッテリーマネジメントシステムの構成、移動体蓄電池6の二次電池の構成、移動体5の構成等によって異なり、定置型蓄電池4のバッテリーマネジメント電力は、バッテリーマネジメントシステムの構成、定置型蓄電池4の二次電池の構成等によって異なる。しかしながら、これらの構成にかかわらず、相対的に、移動体蓄電池6のバッテリーマネジメント電力は定置型蓄電池4のバッテリーマネジメント電力よりも大きくなる。
【0044】
放電出力に対する移動体蓄電池6の充放電効率は、バッテリーマネジメント電力の影響が小さくなる高出力領域では、ほぼ一定の値(リチウムイオン二次電池では、例えば95%)となる。放電出力に対する定置型蓄電池4の充放電効率も、バッテリーマネジメント電力の影響が小さくなる高出力領域では、ほぼ一定の値(リチウムイオン二次電池では、例えば97%)となる。これらの値は、二次電池の種類によって異なり、同じ種類でも充放電方法や二次電池の状態等によって異なる。しかしながら、二次電池の種類や状態等にかかわらず、充放電効率に対するバッテリーマネジメント電力の影響(充放電効率の低下)は、低出力領域になるほど大きくなり、高出力領域になるほど小さくなる。
【0045】
第1実施形態の第1実施例では、制御部120は、移動体蓄電池6の放電出力の低出力領域において、放電しきい値を設定するよう構成される。制御部120は、移動体蓄電池6の放電出力が放電しきい値未満となる場合は、電力変換部110に移動体蓄電池6の放電を行わせることなく、電力変換部110に定置型蓄電池4の放電を行わせる。移動体蓄電池6の放電出力が放電しきい値以上となる場合、制御部120は、電力変換部110に移動体蓄電池6の放電を行わせる。
【0046】
放電しきい値は、制御部120にデフォルト値として予め設定されていてもよいし、その設定値をユーザが制御部120で任意に変更できるように構成されていてもよいし、AIが一定期間毎に設定し直すように構成されていてもよい。例えば、放電しきい値は、定置型蓄電池4と移動体蓄電池6の各バッテリーマネジメント電力から、目標とする充放電効率が得られるように設定する。また、放電出力の低出力領域の範囲は、制御部120にデフォルト値(例えば、500W以下)として予め設定されていてもよいし、ユーザが制御部120で任意に変更できるように構成されていてもよい。例えば、放電出力の低出力領域の範囲は、その範囲内に放電しきい値が設定された場合に、目標とする充放電効率が得られるように設定する。
【0047】
上記では、放電時について説明したが、充電時についても同様である。移動体蓄電池6および定置型蓄電池4について、充電入力(例えば、充電入力電力)に対する充放電効率は、低出力領域では充電入力が小さくなるほど小さい値となる。しかしながら、定置型蓄電池4は移動体蓄電池6よりも、バッテリーマネジメント電力の影響が小さくなり、低出力領域における充放電効率の低下も小さくなる。
【0048】
制御部120は、移動体蓄電池6の充電入力の低出力領域において、充電しきい値を設定するよう構成される。制御部120は、移動体蓄電池6への充電入力が充電しきい値未満となる場合は、電力変換部110に移動体蓄電池6の充電を行わせることなく、電力変換部110に定置型蓄電池4の充電を行わせる。移動体蓄電池6への充電入力が充電しきい値以上となる場合、制御部120は、電力変換部110に移動体蓄電池6の充電を行わせる。
【0049】
充電しきい値は、放電しきい値と同様に、制御部120にデフォルト値として予め設定されていてもよいし、その設定値をユーザが制御部120で任意に変更できるように構成されていてもよいし、AIが一定期間毎に設定し直すように構成されていてもよい。例えば、充電しきい値は、定置型蓄電池4と移動体蓄電池6の各バッテリーマネジメント電力から、目標とする充放電効率が得られるように設定する。また、充電入力の低出力領域の範囲は、制御部120にデフォルト値(例えば、500W以下)として予め設定されていてもよいし、ユーザが制御部120で任意に変更できるように構成されていてもよい。例えば、充電入力の低出力領域の範囲は、その範囲内に充電しきい値が設定された場合に、目標とする充放電効率が得られるように設定する。なお、充電しきい値は、放電しきい値と同じ値でもよいし、異なる値でもよい。充電入力の低出力領域は、放電出力の低出力領域と同じ範囲でもよいし、異なる範囲でもよい。
【0050】
第1実施形態の第1実施例では、低出力領域において、移動体蓄電池6のバッテリーマネジメント電力を考慮した制御を行う。よって、第1実施形態の第1実施例に係る電力供給システム100では、定置型蓄電池4または移動体蓄電池6の放電時において、放電出力に対する総合充放電効率(放電出力に対する定置型蓄電池4の充放電効率+放電出力に対する移動体蓄電池6の充放電効率)を向上させて、発電装置3の発電電力の高効率利用を図ることができる。同様に、第1実施形態の第1実施例に係る電力供給システム100では、定置型蓄電池4または移動体蓄電池6の充電時において、充電入力に対する総合充放電効率(充電入力に対する定置型蓄電池4の充放電効率+充電入力に対する移動体蓄電池6の充放電効率)を向上させて、発電装置3の発電電力の高効率利用を図ることができる。
【0051】
(第1実施形態の第2実施例)
次に、総合充放電効率が高くなる制御の別の一例として、移動体蓄電池6のバッテリーマネジメント電力と、移動体蓄電池6からの放電比率とを考慮した制御について説明する。なお、放電比率のデータは、電力負荷2の電力消費状況を数値化したデータの一例である。
【0052】
図3に、移動体蓄電池6からの放電出力に対する、移動体蓄電池6の充放電効率曲線と移動体蓄電池6の放電比率曲線とを示す。
図3に示す移動体蓄電池6の充放電効率は、
図2(A)と同じものである。
【0053】
図3に示す移動体蓄電池6の放電比率は、移動体蓄電池6からの放電出力に対する放電比率であって、横軸の放電出力値を下限値とした場合の比率である。例えば、
図3では放電出力0Wの時に放電比率は100%となっているが、これは、移動体蓄電池6から出力される放電出力の100%が0W以上であることを示している。また、放電出力500Wの時に放電比率は25%となっているが、これは、移動体蓄電池6から出力される放電出力の25%が500W以上であることを示しており、言い換えれば、放電出力の75%が500W未満であることを示している。
【0054】
図4を参照して、
図3に示す放電比率の算出方法の一例を説明する。
図4に、移動体蓄電池6の放電出力の1分平均値(1分間の平均値)に対する、移動体蓄電池6の累計放電出力と放電比率(累計比率)曲線とを示す。
図4は、電力供給システム100を一般家庭に適用した場合であり、電力供給システム100を別のエリア(例えば、工場等)に適用した場合、
図4のグラフの形は異なるものとなる。また、一般家庭の場合であっても、世帯人数や季節等の諸条件によって、
図4のグラフの形は変動する。
【0055】
図4では、所定期間(例えば、10月の3週間)における移動体蓄電池6の累計放電出力を棒グラフで示している。累計放電出力は、移動体蓄電池6の放電出力に頻度を掛けて60で割ることにより算出される。頻度は、移動体蓄電池6から放電出力が出力されている時間(分)である。例えば、
図4の一番左の棒グラフは、放電出力の1分平均値x[W]が0<x≦100となる累計放電出力を示している。
【0056】
図4に示す放電比率は、移動体蓄電池6の放電出力の1分平均値に対する放電比率であって、当該1分平均値を上限値とした場合の比率である。例えば、
図4では、放電出力の1分平均値が1000<x≦1100の時に放電比率は90%となっているが、これは、移動体蓄電池6から出力された放電出力(1分平均値)の90%が1100W以下であることを示している。また、放電出力の1分平均値が400<x≦500の時に放電比率は75%となっているが、これは、移動体蓄電池6から出力された放電出力(1分平均値)の75%が500W以下であることを示している。
図4から、頻度の多い出力範囲(例えば、75%を占める500W以下の範囲)での充放電効率を改善すると、その改善効果が大きいことが分かる。
図4に示す放電比率曲線を上下反転させたものが、
図3に示す放電比率曲線である。
【0057】
第1実施形態の第2実施例では、制御部120は、
図3に示す放電しきい値設定ゾーンにおいて、放電しきい値を設定するよう構成される。制御部120は、例えば、放電出力に対する移動体蓄電池6の充放電効率に関するデータと、放電出力に対する移動体蓄電池6の放電比率に関するデータとを予め記憶している。制御部120は、これらのデータを参照して、例えば、
図3に示すように充放電効率曲線と放電比率曲線との交点よりも左側(低出力側)の200~250Wの領域を放電しきい値設定ゾーンとして設定する。なお、放電しきい値設定ゾーンは適宜変更可能であり、例えば、上記交点を含む領域(交点の左右両側)に放電しきい値設定ゾーンを設定してもよいし、上記交点よりも右側に放電しきい値設定ゾーンを設定してもよい。放電しきい値設定ゾーンの幅は、適宜変更可能である。例えば、移動体蓄電池6のバッテリーマネジメント電力が約150Wの場合、放電しきい値設定ゾーンの幅は150~300Wとすることが好ましい。
【0058】
制御部120は、移動体蓄電池6の放電出力が放電しきい値未満となる場合は、電力変換部110に移動体蓄電池6から放電を行わせることなく、電力変換部110に定置型蓄電池4からの放電を行わせる。移動体蓄電池6の放電出力が放電しきい値以上となる場合、制御部120は、電力変換部110に移動体蓄電池6から放電を行わせる。
【0059】
第1実施形態の第2実施例では、制御部120は、移動体蓄電池6のバッテリーマネジメント電力と、放電出力に対する移動体蓄電池6からの放電比率とを考慮した制御を行う。よって、第1実施形態の第2実施例に係る電力供給システム100では、定置型蓄電池4または移動体蓄電池6の放電時において、移動体蓄電池6からの放電比率を考慮しつつ、充放電効率の改善効果が大きい低出力領域で放電出力に対する総合充放電効率を向上させて、発電装置3の発電電力の高効率利用を図ることができる。
【0060】
なお、第1実施形態の第2実施例では、制御部120は、放電しきい値設定ゾーンを設定して放電しきい値を設定しているが、放電しきい値設定ゾーンを設定することなく放電しきい値を設定してもよい。例えば、制御部120は、放電出力に対する移動体蓄電池6の充放電効率に関するデータと、放電出力に対する移動体蓄電池6の放電比率に関するデータとに基づいて、充放電効率曲線と放電比率曲線との交点の位置またはその近傍の位置に、放電しきい値を設定することができる。
【0061】
(第1実施形態の第3実施例)
次に、上記第1実施形態の第2実施例において、制御部120が、AIを備えた実施例について説明する。AIは、例えば、放電しきい値を一定期間毎に設定し直すよう構成される。
【0062】
放電しきい値を一定期間毎に設定し直す一例として、AIは、
図3に示す放電比率に関するデータを一定期間毎に修正するよう構成される。例えば、AIは、電力負荷2の電力消費状況の変動要因に関する要因データが入力されると、所定のパラメータを有するニューラルネットワーク等の機械学習アルゴリズムを用いて、放電比率の変動スコアを生成するように機械学習された学習済みモデルを備える。
【0063】
要因データには、例えば、世帯人数(または居住者数)、居住者各々の年齢、居住者各々の外出時間と帰宅時間(居住者各々の在宅時間)、居住者各々の消灯(就寝)時刻と起床時刻、部屋の間取り(広さ、和洋の違いなど)、所持している電化製品等の種類、現在の季節、現在の気温と湿度、現在の天候、移動体5の使用状況(電力変換部110への接続有無)、現在の蓄電池(定置型蓄電池4、移動体蓄電池6)の容量、給湯需要等の要因が含まれる。学習済みモデルの機械学習では、上記のとおりニューラルネットワーク等の機械学習アルゴリズムを用いて、教師データを大量に入力する。教師データは、上記の要因データに所定の変動スコアを紐付けしたデータを含む。
【0064】
変動スコアとしては、例えば、放電出力の所定領域毎(例えば、
図4に示すように1分平均値100W毎)に設定される数値パラメータ(例えば、-10~+10等の数値パラメータ)を用いる。数値パラメータの設定は、人またはコンピュータが行う。例えば、要因データに含まれる要因のうち、電力負荷2の電力消費すなわち放電出力を減少させる要因については負の数値パラメータを紐付けし、電力負荷2の電力消費すなわち放電出力を増加させる要因については正の数値パラメータを紐付けする。要因データに含まれる要因と放電出力に対する放電比率(放電出力に対する電力消費量)との間には、相関関係等の一定の関係が存在することを推認できる。
【0065】
AIは、要因データに含まれる各種要因のうち、例えば、世帯人数、在宅時間、部屋の間取り、所持している電化製品等のようにユーザの個人情報に関する要因については、ユーザに直接またはインターネット経由で入力(申告)してもらうことにより、取得することができる。また、季節、気温等のように時々刻々と変化する要因については、AIは、例えば、温度センサから取得したり、天気情報等を取得するように外部からインターネット経由で取得したりすることができる。
【0066】
AIは、取得した要因データを学習済みモデルに入力することで、学習済みモデルから変動スコアを取得する。変動スコアを取得したAIは、制御部120が予め記憶している移動体蓄電池6の放電比率のデータを、変動スコアに基づいて修正する。AIは、放電比率の修正に伴い、放電しきい値設定ゾーンを設定し直し、放電しきい値を設定し直す。AIは、例えば、放電比率を
図3の左側(低出力側)にシフトさせる場合、放電しきい値設定ゾーンを低出力側にシフトさせ、放電しきい値を低出力側にシフトさせる。
【0067】
上記では、上記第1実施形態の第2実施例において、制御部120がAIを備えた実施例について説明したが、上記第1実施形態の第1実施例において、制御部120がAIを備えていてもよい。その場合、制御部120のAIは、充電しきい値を一定期間毎に設定し直すよう構成されていてもよい。充電しきい値を一定期間毎に設定し直す一例として、AIは、例えば、移動体5と通信を行い、移動体5の移動体蓄電池6の情報を取得し、取得した情報に基づいて移動体蓄電池6のバッテリーマネジメント電力を推定し、推定したバッテリーマネジメント電力に基づいて現在設定されている充電しきい値を設定し直してもよい。
【0068】
[第2実施形態]
図5に、本発明の第2実施形態に係る電力供給システム200を示す。電力供給システム200は、電力変換部210と制御部220とで構成される。
【0069】
電力供給システム200は、電力変換部210が第1電力変換部211、第2電力変換部212および第3電力変換部213で構成される点を除いて、第1実施形態に係る電力供給システム100と同じである。電力変換部210は、第1実施形態の電力変換部110の一例である。
【0070】
第1電力変換部211は、直流端および交流端を有する。直流端は発電装置3に接続され、交流端は系統電力線Lに接続される。第1電力変換部211は、制御部220の制御下で、発電装置3から入力された直流の発電電力を所望の交流電力に変換して系統電力線Lに出力する。第1電力変換部211は、AC/DCインバータで構成されるか、またはAC/DCインバータおよびDC/DCコンバータで構成される。
【0071】
第2電力変換部212は、直流端および交流端を有する。直流端は定置型蓄電池4に接続され、交流端は系統電力線Lに接続される。第2電力変換部212は、制御部220の制御下で、定置型蓄電池4に対する充電動作および放電動作を行う。充電動作時の第2電力変換部212は、定置型蓄電池4に直流の充電電力を供給し、放電動作時の第2電力変換部212は、定置型蓄電池4から直流の放電電力を取り出す。第2電力変換部212は、定置型蓄電池4の放電電力を、所望の交流電力に変換して系統電力線Lに出力する。第2電力変換部212は、双方向AC/DCインバータで構成されるか、または双方向AC/DCインバータおよび双方向DC/DCコンバータで構成される。
【0072】
第3電力変換部213は、直流端および交流端を有する。直流端は移動体5(移動体蓄電池6)に接続され、交流端は系統電力線Lに接続される。第3電力変換部213は、制御部220の制御下で、移動体蓄電池6に対する充電動作および放電動作を行う。充電動作時の第3電力変換部213は、移動体蓄電池6に直流の充電電力を供給し、放電動作時の第3電力変換部213は、移動体蓄電池6から直流の放電電力を取り出す。第3電力変換部213は、移動体蓄電池6の放電電力を、所望の交流電力に変換して系統電力線Lに出力する。第3電力変換部213は、双方向AC/DCインバータで構成されるか、または双方向AC/DCインバータおよび双方向DC/DCコンバータで構成される。
【0073】
電力変換部210(第1電力変換部211、第2電力変換部212および第3電力変換部213)は、図示しない検出部を備える。検出部は、制御部220の制御に必要な電流値および/または電圧値を検出するものである。検出部は、例えば、系統電力線Lに対する入出力を検出するためのセンサと、発電装置3からの発電出力を検出するためのセンサと、定置型蓄電池4への充電入力および定置型蓄電池4からの放電出力を検出するためのセンサと、移動体蓄電池6への充電入力および移動体蓄電池6からの放電出力を検出するためのセンサとを含む。上記各センサは、例えば、電流センサおよび/または電圧センサである。検出部の検出結果(電流値および/または電圧値)は、所定の周期で制御部220に送信される。
【0074】
制御部220は、第1実施形態の制御部120と同じ構成であり、同じ制御を行う。すなわち、制御部220は、定置型蓄電池4と移動体蓄電池6との合計の充放電効率(総合充放電効率)が高くなるように、移動体蓄電池6への充電入力または移動体蓄電池6からの放電出力を制御する(もしくは、定置型蓄電池4への充電入力または定置型蓄電池4からの放電出力を制御する)。よって、発電装置3の発電電力を用いた定置型蓄電池4および/または移動体蓄電池6の充放電を行う場合、本実施形態に係る電力供給システム200では、充放電時の損失が低減されるので、発電電力の高効率利用が可能となる。
【0075】
第1実施形態の第1~第3実施例の制御および/または構成は、本実施形態に係る電力供給システム200にも適用可能であり、後述する第3実施形態にも適用可能である。
【0076】
本実施形態では、複数の第3電力変換部213が、各1つの移動体5(移動体蓄電池6)に接続される構成であるが、第3電力変換部213が複数の充放電ケーブルを備える場合、1台の第3電力変換部213に複数台の移動体5(移動体蓄電池6)が接続される構成であってもよい。定置型蓄電池4の電池容量は、前者の場合、第3電力変換部213の1台当たり3.5kWh未満であることが好ましく、後者の場合、移動体5の1台当たり3.5kWh未満であることが好ましい。
【0077】
[第3実施形態]
図6に、本発明の第3実施形態に係る電力供給システム300を示す。電力供給システム300は、第1電力変換装置300A(例えば、パワーコンディショナ装置)と、第2電力変換装置300B(例えば、V2H装置)とで構成される。
【0078】
第1電力変換装置300Aは、AC/DC変換部311と、DC/DC変換部312と、DC/DC変換部313と、制御部321とで構成される。第2電力変換装置300Bは、DC/DC変換部314と、制御部322とで構成される。AC/DC変換部311およびDC/DC変換部312~314は、第1実施形態の電力変換部110の一例であり、制御部321、322は、第1実施形態の制御部120の一例である。
【0079】
AC/DC変換部311は、交流端および直流端を有する。交流端は系統電力線Lに接続され、直流端はDC/DC変換部312~314に接続される。AC/DC変換部311は、双方向AC/DCインバータで構成され、交流端に入力された交流電力を直流電力に変換して直流端から出力するAC/DC変換動作と、直流端に入力された直流電力を交流電力に変換して交流端から出力するDC/AC変換動作とを行う。
【0080】
DC/DC変換部312は、第1直流端および第2直流端を有する。第1直流端は発電装置3に接続され、第2直流端はAC/DC変換部311の直流端に接続される。DC/DC変換部312は、昇圧型のDC/DCコンバータで構成され、第1直流端に入力された直流の発電電力を所望の直流電力に昇圧して、第2直流端から出力する。
【0081】
DC/DC変換部313は、第1直流端および第2直流端を有する。第1直流端は定置型蓄電池4に接続され、第2直流端はAC/DC変換部311の直流端に接続される。DC/DC変換部313は、双方向DC/DCコンバータで構成され、定置型蓄電池4に対する充電動作および放電動作を行う。充電動作時のDC/DC変換部313は、定置型蓄電池4に直流の充電電力を供給し、放電動作時のDC/DC変換部313は、定置型蓄電池4から直流の放電電力を取り出す。
【0082】
ここで、DC/DC変換部313の双方向DC/DCコンバータは、絶縁トランスを備えていないトランスレス方式の双方向DC/DCコンバータである。トランスレス方式の双方向DC/DCコンバータは、絶縁トランスを備える絶縁トランス方式の双方向DC/DCコンバータと比較すると、電力変換効率が高くなる。トランスレス方式の双方向DC/DCコンバータとしては、例えば、チョッパ型の双方向DC/DCコンバータを用いることができる。
【0083】
AC/DC変換部311およびDC/DC変換部312、313は、図示しない検出部を備える。検出部は、制御部321の制御に必要な電流値および/または電圧値を検出するものである。検出部は、例えば、系統電力線Lに対する入出力を検出するためのセンサと、発電装置3からの発電出力を検出するためのセンサと、定置型蓄電池4への充電入力および定置型蓄電池4からの放電出力を検出するためのセンサと、AC/DC変換部311、DC/DC変換部312およびDC/DC変換部313を相互に接続する直流バスに対する入出力を検出するためのセンサとを含む。上記各センサは、例えば、電流センサおよび/または電圧センサである。検出部の検出結果(電流値および/または電圧値)は、所定の周期で制御部321に送信される。
【0084】
制御部321は、AC/DC変換部311、DC/DC変換部312およびDC/DC変換部313の電力変換動作の制御を行う。また、制御部321は、制御部322と相互に通信を行い、制御部322に対して指令信号(例えば、充放電制御の開始/停止に関する指令信号)を送ることができる。
【0085】
DC/DC変換部314は、第1直流端および第2直流端を有する。第1直流端は移動体5(移動体蓄電池6)に接続され、第2直流端はAC/DC変換部311の直流端に接続される。DC/DC変換部314は、双方向DC/DCコンバータで構成され、移動体蓄電池6に対する充電動作および放電動作を行う。充電動作時のDC/DC変換部314は、移動体蓄電池6に直流の充電電力を供給し、放電動作時のDC/DC変換部314は、移動体蓄電池6から直流の放電電力を取り出す。
【0086】
ここで、DC/DC変換部314は、絶縁トランスを備える絶縁トランス方式の双方向DC/DCコンバータである。このため、DC/DC変換部314は、トランスレス方式の双方向DC/DCコンバータで構成されたDC/DC変換部313よりも電力変換効率が低くなる。特に、低出力領域では、電力変換効率が大きく低下する。絶縁トランス方式の双方向DC/DCコンバータは、例えば、1次側スイッチング回路、高周波絶縁トランス、2次側スイッチング回路で構成され、高周波絶縁トランスを介した1次側から2次側への電力伝送(移動体蓄電池6の充電)と、高周波絶縁トランスを介した2次側から1次側への電力伝送(移動体蓄電池6の放電)とを行う。1次側スイッチング回路および2次側スイッチング回路は、例えば、複数のスイッチング素子をブリッジ接続したフルブリッジ回路またはハーフブリッジ回路等で構成される。
【0087】
DC/DC変換部314は、図示しない検出部を備える。検出部は、制御部322の制御に必要な電流値および/または電圧値を検出するものである。検出部は、例えば、第1電力変換装置300A(AC/DC変換部311の直流端)に対する入出力を検出するためのセンサと、移動体蓄電池6への充電入力および移動体蓄電池6からの放電出力を検出するためのセンサとを含む。上記各センサは、例えば、電流センサおよび/または電圧センサである。検出部の検出結果(電流値および/または電圧値)は、所定の周期で制御部322に送信される。制御部321の制御に必要な電流値および/または電圧値については、各検出部から直接または制御部322を介して、制御部321にも送信される。
【0088】
制御部322は、制御部321と通信を行うとともに、移動体5とも通信を行いつつ、DC/DC変換部314のDC/DC変換動作(充放電動作)の制御を行う。移動体5との通信は、例えば、第2電力変換装置300Bと移動体5とを接続する充放電ケーブルを介して行われる。
【0089】
制御部321および制御部322は、第1実施形態の制御部120と同じ制御を行う。すなわち、制御部321および制御部322は、定置型蓄電池4と移動体蓄電池6との合計の充放電効率(総合充放電効率)が高くなるように、移動体蓄電池6への充電入力または移動体蓄電池6からの放電出力を制御する(もしくは、定置型蓄電池4への充電入力または定置型蓄電池4からの放電出力を制御する)。よって、発電装置3の発電電力を用いた定置型蓄電池4および/または移動体蓄電池6の充放電を行う場合、本実施形態に係る電力供給システム300では、充放電時の損失が低減されるので、発電電力の高効率利用が可能となる。
【0090】
さらに、本実施形態では、定置型蓄電池4に対する充放電動作を行うDC/DC変換部313をトランスレス方式の双方向DC/DCコンバータで構成し、移動体蓄電池6に対する充放電動作を行うDC/DC変換部314を絶縁トランス方式の双方向DC/DCコンバータで構成している。トランスレス方式の双方向DC/DCコンバータは絶縁トランス方式の双方向DC/DCコンバータよりも電力変換効率が高くなる。よって、低出力領域の低出力側において、移動体蓄電池6の充放電を行うことなく定置型蓄電池4の充放電を行うことにより、より一層の、発電電力の高効率利用が可能となる。
【0091】
(第3実施形態の第1実施例)
第3実施形態の第1実施例は、余剰充電制御時の実施例である。
【0092】
制御部321は、発電電力が電力負荷2の消費電力よりも大きい場合、余剰充電制御を行う。余剰充電制御時の制御部321は、発電装置3からの発電電力を電力負荷2の消費電力に充当し、残りの電力(余剰電力W1)を定置型蓄電池4の充電電力および/または移動体蓄電池6の充電電力に充当する。定置型蓄電池4および移動体蓄電池6が満充電状態の場合、制御部321は、商用電力系統1に対して発電電力の売電を行うことができる。なお、余剰充電制御時は、定置型蓄電池4および移動体蓄電池6に対して同時に充電を行わないようにすることも可能であるが、両者の合計充電量の充電効率が最大になるように、両者に対して同時充電を行わせてもよい。但し、同時充電を行う/行わないのいずれの場合であっても、余剰電力W1が小さい場合には、移動体蓄電池6に充電することなく、定置型蓄電池4に充電する。
【0093】
制御部321は、第2電力変換装置300Bへの直流入力(余剰電力W1)のしきい値を設定する。本実施例では、しきい値を200Wに設定する。これにより、間接的に、移動体蓄電池6への充電入力の充電しきい値が200Wに設定されることになる。厳密には、DC/DC変換部314の電力変換効率の損失分を考慮すると、充電しきい値は200Wよりも若干小さな値となる。
【0094】
制御部321は、余剰電力W1が200W以下となる場合は、DC/DC変換部314に移動体蓄電池6の充電を行わせることなく、DC/DC変換部313に定置型蓄電池4の充電を行わせる。余剰電力W1が200Wを超える場合、制御部321は、制御部322に指令信号を送信して、制御部322の制御下でDC/DC変換部314に移動体蓄電池6の充電を行わせる。移動体蓄電池6が満充電状態の場合、制御部321は、定置型蓄電池4の充電を行わせる。すなわち、余剰電力W1が200Wを超える場合、制御部321は、移動体蓄電池6の充電を優先する。これにより、少なくとも低出力領域において充電時の損失が低減されるので、発電電力の高効率利用が可能となる。
【0095】
なお、制御部321は、DC/DC変換部313に定置型蓄電池4の充電を行わせている際に、余剰電力W1が200Wを超えた場合、定置型蓄電池4の充電から移動体蓄電池6の充電に切換える。この場合、しきい値を200Wに設定したままだとチャタリング等で動作が不安定になる(例えば、頻繁に切換えが生じる)ため、制御部321は、充電開始後や切換え後は、しきい値にヒステリシスを持たせることが好ましい。例えば、制御部321は、充電開始後にしきい値に20W(+10%)のヒステリシスを持たせ、余剰電力W1が220Wを超えた値を所定時間維持した場合、移動体蓄電池6の充電に切換える。切換え後の制御部321は、余剰電力W1が200W以下の値を所定時間維持した場合、定置型蓄電池4の充電に切換える。ヒステリシスの値は、適宜変更することができる。
【0096】
制御部321は、マンマシーンインターフェイスを備えていてもよい。この場合、ユーザは、マンマシーンインターフェイスを介して、上記のしきい値を設定および/または変更することができる。
【0097】
制御部321が移動体蓄電池6のバッテリーマネジメント電力の電力値を取得している場合、制御部321は、バッテリーマネジメント電力に基づいて(充放電効率に対するバッテリーマネジメント電力の影響の大きさを考慮して)、上記のしきい値を設定および/または変更してもよい。
【0098】
制御部321が、移動体蓄電池6への充電入力に対する移動体蓄電池6の充放電効率に関するデータと、定置型蓄電池4への充電入力に対する定置型蓄電池4の充放電効率に関するデータとを予め記憶している場合、制御部321は、これらのデータに基づいて、充電入力に対する総合充放電効率が高くなるように、上記のしきい値を設定および/または変更してもよい。
【0099】
例えば、移動体蓄電池6への充電入力に対する移動体蓄電池6の充放電効率(第1充放電効率)と、定置型蓄電池4への充電入力に対する定置型蓄電池4の充放電効率(第2充放電効率)とは、充電入力が低出力になるほど、両者の差が大きくなる(第1充放電効率<第2充放電効率)。そこで、制御部321は、第2充放電効率と第1充放電効率との差分が予め設定した設定値(%)となる時の余剰電力W1(充電入力)の値を上記のしきい値に設定してもよい。制御部321が第1実施形態の第3実施例で説明したAIを備える場合は、AIが上記のしきい値を一定期間毎に設定し直してもよい。
【0100】
(第3実施形態の第2実施例)
第3実施形態の第2実施例は、放電制御時の実施例である。
【0101】
放電制御時の制御部321は、発電電力が電力負荷2の消費電力よりも小さい場合、発電電力の不足分を、定置型蓄電池4の放電電力および/または移動体蓄電池6の放電電力により充当する。それでも足りない場合、制御部321は、商用電力系統1の系統電力により充当する。なお、放電制御時は、定置型蓄電池4および移動体蓄電池6に対して同時に放電を行わないようにすることも可能であるが、両者の合計放電量の放電効率が最大になるように、両者に対して同時放電を行わせてもよい。但し、同時放電を行う/行わないのいずれの場合であっても、後述する不足電力W2が小さい場合には、移動体蓄電池6から放電することなく、定置型蓄電池4から放電する。
【0102】
以下では、商用電力系統1から系統電力を購入することなく、電力負荷2の消費電力を電力供給システム300からの供給電力により充当する際に、発電電力が電力負荷2の消費電力よりも小さく発電電力だけでは不足する場合に、不足電力を定置型蓄電池4または移動体蓄電池6のいずれかの放電電力で充当するケースにつき説明する。なお、後述するしきい値の設定がなければ、定置型蓄電池4に優先して移動体蓄電池6から放電するものとする。ここで、AC/DC変換部311の交流出力電力(電力負荷2の消費電力)からDC/DC変換部312の直流出力電力(昇圧後の発電電力)を差し引いた電力を、不足電力W2とする。
【0103】
制御部321は、不足電力W2を移動体蓄電池6からの放電電力により充当する際に限り不足電力W2のしきい値を設定する。本実施例では、しきい値を200Wに設定する。これにより、間接的に、移動体蓄電池6からの放電出力の放電しきい値が200Wに設定されることになる。厳密には、DC/DC変換部314の電力変換効率の損失分を考慮すると、移動体蓄電池6からの放電出力の放電しきい値は、200Wよりも若干大きな値となる。
【0104】
制御部321は、不足電力W2が200W以下となる場合は、DC/DC変換部314に移動体蓄電池6の放電を行わせることなく、DC/DC変換部313に定置型蓄電池4の放電を行わせる。不足電力W2が200Wを超える場合、制御部321は、制御部322に指令信号を送信して、制御部322の制御下でDC/DC変換部314に移動体蓄電池6の放電を行わせる。充電量不足等により移動体蓄電池6の放電ができない場合、制御部321は、定置型蓄電池4の放電を行わせる。すなわち、不足電力W2が200Wを超える場合、制御部321は、移動体蓄電池6の放電を優先する。これにより、少なくとも低出力領域において放電時の損失が低減されるので、発電電力の高効率利用が可能となる。
【0105】
なお、制御部321は、DC/DC変換部313に定置型蓄電池4の放電を行わせている際に、不足電力W2が200Wを超えた場合、定置型蓄電池4の放電から移動体蓄電池6の放電に切換える。この場合、しきい値を200Wに設定したままだとチャタリング等で動作が不安定になる(例えば、頻繁に切換えが生じる)ため、制御部321は、放電開始後や切換え後は、しきい値にヒステリシスを持たせることが好ましい。例えば、制御部321は、放電開始後にしきい値に20W(+10%)のヒステリシスを持たせ、不足電力W2が220Wを超えた値を所定時間維持した場合、移動体蓄電池6の放電に切換える。切換え後の制御部321は、不足電力W2が200W以下の値を所定時間維持した場合、定置型蓄電池4の放電に切換える。ヒステリシスの値は、適宜変更することができる。
【0106】
制御部321は、マンマシーンインターフェイスを備えていてもよい。この場合、ユーザは、マンマシーンインターフェイスを介して、上記のしきい値を設定および/または変更することができる。
【0107】
制御部321が移動体蓄電池6のバッテリーマネジメント電力の電力値を取得している場合、制御部321は、バッテリーマネジメント電力に基づいて(充放電効率に対するバッテリーマネジメント電力の影響の大きさを考慮して)、上記のしきい値を設定および/または変更してもよい。
【0108】
制御部321が、移動体蓄電池6からの放電出力に対する移動体蓄電池6の充放電効率に関するデータと、定置型蓄電池4からの放電出力に対する定置型蓄電池4の充放電効率に関するデータとを予め記憶している場合、制御部321は、これらのデータに基づいて、放電出力に対する総合充放電効率が高くなるように上記のしきい値を設定および/または変更してもよい。
【0109】
例えば、移動体蓄電池6からの放電出力に対する移動体蓄電池6の充放電効率(第3充放電効率)と、定置型蓄電池4からの放電出力に対する定置型蓄電池4の充放電効率(第4充放電効率)とは、放電出力が低出力になるほど、両者の差が大きくなる(第3充放電効率<第4充放電効率)。そこで、制御部321は、第4充放電効率と第3充放電効率との差分が予め設定した設定値(%)となる時の不足電力W2(放電出力)の値を上記のしきい値に設定してもよい。
【0110】
さらに、
図3に示すような移動体蓄電池6の放電比率に関するデータを予め記憶している場合、制御部321は、移動体蓄電池6の放電比率を考慮して(放電比率の高い領域で効率が改善されるように)、上記のしきい値を設定および/または変更してもよい。制御部321が第1実施形態の第3実施例で説明したAIを備える場合は、AIが上記のしきい値を一定期間毎に設定し直してもよい。
【0111】
[変形例]
以上、本発明に係る電力供給システムの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0112】
本発明に係る電力供給システムは、商用電力系統、再生可能エネルギーを用いた発電装置、定置型蓄電池および移動体蓄電池に直接的または間接的に接続して構成される電力供給システムであって、定置型蓄電池と移動体蓄電池との合計の充放電効率が高くなるように、移動体蓄電池への充電入力または移動体蓄電池からの放電出力を制御するのであれば、適宜構成を変更することができる。
【0113】
例えば、第3実施形態では、第1電力変換装置300Aに対して複数台の第2電力変換装置300Bが並列に接続されていてもよいし、第2電力変換装置300Bが複数の充放電ケーブルを備える場合は、1台の第2電力変換装置300Bに複数台の移動体5(移動体蓄電池6)が接続される構成であってもよい。定置型蓄電池4の電池容量は、前者の場合、第2電力変換装置300Bの1台当たり3.5kWh未満であることが好ましく、後者の場合、移動体5の1台当たり3.5kWh未満であることが好ましい。この3.5kWhの値は、例えば、下記の「設備制約」を根拠としたものであり、定置型蓄電池4の電池容量を3.5kWh未満とした場合には、下記の「運用制約」を考慮することが好ましい。
【0114】
(設備制約)
定置型蓄電池4のkWh単価は、移動体蓄電池6のkWh単価よりも高い。このため、設置容量(定置型蓄電池4の電池容量)をできるだけ小さくし、移動体蓄電池6の電力をできるだけ多く有効に利用する方が、本システムの導入コストを安くできる。
【0115】
例えば、移動体蓄電池6の利用を前提とした定置型蓄電池4の電池容量は、定置型蓄電池4から放電電力130Wで夜間23時~7時の8時間放電を行う(これ以外の放電は移動体蓄電池6から行う)とし、発電電力を用いた充電ができない日を連続2日(この間は系統電力による充電は行わない)とし、定置型蓄電池4の劣化係数を0.6(電池容量の60%)とした場合、次のようになる。
定置型蓄電池4の電池容量=130W×8h/日×2日/0.6≒3470Wh
条件(放電電力値、放電時間、充電ができない日数、劣化係数など)によっては、さらに電池容量の小さい定置型蓄電池4を用いることができる。以上のことから、定置型蓄電池4は電池容量3.5kWh未満でよいことが分かる。なお、移動体蓄電池6は、定置型蓄電池4よりも大容量であり、例えば、定置型蓄電池4の10倍以上の電池容量を有するものも存在する。
【0116】
(運用制約)
移動体蓄電池6の放電比率と移動体蓄電池6の充放電効率は、相反する関係にある(例えば、
図3参照)。定置型蓄電池4は、移動体蓄電池6と比較すると、バッテリーマネジメント電力が小さく、放電出力に対する充放電効率が高くなる。しかし、定置型蓄電池4の電池容量が移動体蓄電池6の電池容量よりも小さい(例えば、1/10以下)ため、全放電量に対する移動体蓄電池6からの放電量を一定比率以上にしないと、定置型蓄電池4の充電量がゼロになり(その結果、低出力領域において移動体蓄電池6を放電させることになり)、充放電効率の低下を招く。
【0117】
例えば、電力負荷2の1年当たりの消費電力が4500kWh/年ならば、1日当たりの消費電力は12.3kWh/日となる。定置型蓄電池4の電池容量を3.47kWhとし、3.47kWhを定置型蓄電池4の2日分の放電量とし、発電装置3の直接給電比率(全発電電力のうち直接電力負荷2に供給される発電電力の割合)を45%とすると、全放電量に対する定置型蓄電池4からの供給比率は、次のようになる。
定置型蓄電池4からの供給比率=((3.47kWh/2日)/(12.3kWh/日×0.55/日))×100≒26%
この場合、全放電量に対する移動体蓄電池6からの供給比率は、74(=100-26)%となる。すなわち、全放電量の74%は移動体蓄電池6から供給する必要がある。以上のことから、全放電量に対する移動体蓄電池6からの放電量を一定比率以上(上記の例では、74%以上)にしつつ、総合充放電効率が高くなる制御を行うことが好ましい。
【0118】
また、第3実施形態において、充電しきい値(余剰電力W1のしきい値)を第1充電しきい値(余剰電力W1の第1しきい値)とした場合、制御部321は、第1充電しきい値(余剰電力W1の第1しきい値)よりも大きな値の第2充電しきい値(余剰電力W1の第2しきい値)を設定できるように構成されていてもよい。余剰電力W1<第1しきい値の場合、制御部321は、移動体蓄電池6の充電を行わせることなく、定置型蓄電池4の充電を行わせる。第1しきい値≦余剰電力W1<第2しきい値の場合、制御部321は、定置型蓄電池4の充電を行わせることなく、移動体蓄電池6の充電を行わせる。第2しきい値≦余剰電力W1の場合、制御部321は、移動体蓄電池6または定置型蓄電池4の充電を行わせる(同時充電が可能な場合は、同時充電を行わせてもよい)。なお、第2充電しきい値(余剰電力W1の第2しきい値)は、充電入力に対する移動体蓄電池6の充放電効率(第1充放電効率)と、充電入力に対する定置型蓄電池4の充放電効率(第2充放電効率)との差分が小さくなる(ほぼ一定値となる)高出力領域において設定することが好ましい。
【0119】
同様に、第3実施形態において、放電しきい値(不足電力W2のしきい値)を第1放電しきい値(不足電力W2の第1しきい値)とした場合、制御部321は、第1放電しきい値(不足電力W2の第1しきい値)よりも大きな値の第2放電しきい値(不足電力W2の第2しきい値)を設定できるように構成されていてもよい。不足電力W2<第1しきい値の場合、制御部321は、移動体蓄電池6の放電を行わせることなく、定置型蓄電池4の放電を行わせる。第1しきい値≦不足電力W2<第2しきい値の場合、制御部321は、定置型蓄電池4の放電を行わせることなく、移動体蓄電池6の放電を行わせる。第2しきい値≦不足電力W2の場合、制御部321は、移動体蓄電池6または定置型蓄電池4の放電を行わせる(同時放電が可能な場合は、同時放電を行わせてもよい)。なお、第2放電しきい値(不足電力W2の第2しきい値)は、放電出力に対する移動体蓄電池6の充放電効率(第3充放電効率)と、放電出力に対する定置型蓄電池4の充放電効率(第4充放電効率)との差分が小さくなる(ほぼ一定値となる)高出力領域において設定することが好ましい。
【0120】
図7を参照し、第1実施形態の第2実施例において、放電しきい値を200Wに設定した例(
図7(A))、放電しきい値を300Wに設定した例(
図7(B))を説明する。
図7において、移動体蓄電池6の充放電効率曲線および放電比率曲線は、
図3と同じものであり、定置型蓄電池4の充放電効率曲線は、バッテリーマネジメント電力を約20Wとした場合のものである。
【0121】
図7(A)に示すように、放電しきい値を200Wに設定した場合、制御部120は、放電出力が200W未満となる領域では、電力変換部110に定置型蓄電池4からの放電を行わせる一方、放電出力が200W以上となる領域では、電力変換部110に移動体蓄電池6からの放電を行わせる。換言すれば、制御部120は、移動体蓄電池6の放電比率が約76%以上となる領域において、移動体蓄電池6からの放電を行わせるかわりに、定置型蓄電池4からの放電を行わせる。その結果、放電出力が放電しきい値(200W)未満となる領域(放電比率が約76%以上となる領域)において、総合充放電効率が高くなる。
【0122】
図7(B)に示すように、放電しきい値を300Wに設定した場合、制御部120は、放電出力が300W未満となる領域では、電力変換部110に定置型蓄電池4からの放電を行わせる一方、放電出力が300W以上となる領域では、電力変換部110に移動体蓄電池6からの放電を行わせる。換言すれば、制御部120は、移動体蓄電池6の放電比率が約55%以上となる領域において、移動体蓄電池6からの放電を行わせるかわりに、定置型蓄電池4からの放電を行わせる。その結果、放電出力が放電しきい値(300W)未満となる領域(放電比率が約55%以上となる領域)において、総合充放電効率が高くなり、
図7(A)と比較した場合には、全体的に総合充放電効率が高くなる。
【0123】
しかしながら、放電しきい値を300Wに設定した場合、全放電量に対する定置型蓄電池4からの放電量が増加するため、
図7(A)よりも大きな電池容量(例えば、約2倍の電池容量)の定置型蓄電池4が必要になる。したがって、単に総合充放電効率を高めるのであれば、放電しきい値を300Wに設定した方が有利であるが、充放電効率を高めつつ、本システムの導入コストを安くするのであれば、放電しきい値を200Wに設定した方が有利になる。
【0124】
図8を参照し、第1実施形態の第2実施例において、移動体蓄電池6の放電比率曲線が変化した場合(電力負荷2の電力消費状況が変化した場合)の例について説明する。
図8において、移動体蓄電池6の充放電効率曲線と、移動体蓄電池6の放電比率曲線(放電比率A)と、定置型蓄電池4の充放電効率曲線は、
図7(A)と同じものである。
【0125】
図8(A)に、放電比率が低出力側(AからB)に変化した場合を示す。この場合、制御部120は、放電しきい値を低出力側にシフト(ここでは、200Wから160Wに変更)させる。これにより、移動体蓄電池6からの放電比率を維持しつつ、充放電効率の改善効果が大きい低出力領域(ここでは、放電比率が約76%以上の領域)で放電出力に対する総合充放電効率を向上させて、発電装置3の発電電力の高効率利用を図ることができる。
【0126】
図8(B)に、放電比率が高出力側(AからC)に変化した場合を示す。この場合、制御部120は、放電しきい値を高出力側にシフト(ここでは、200Wから240Wに変更)させる。これにより、移動体蓄電池6からの放電比率を維持しつつ、充放電効率の改善効果が大きい低出力領域(ここでは、放電比率が約76%以上の領域)で放電出力に対する総合充放電効率を向上させて、発電装置3の発電電力の高効率利用を図ることができる。
【0127】
本発明に係る電力供給システムは、電力供給システム100、200、300のいずれかを2つ以上含んだシステムであってもよい。例えば、本発明に係る電力供給システムは、電力供給システム200を複数含み、かつ電力供給システム300を複数含んだシステムであってもよい。
【符号の説明】
【0128】
1 商用電力系統
2 電力負荷
3 発電装置
4 定置型蓄電池
5 移動体
6 移動体蓄電池
100、200、300 電力供給システム
110、210 電力変換部
120、220 制御部
211 第1電力変換部
212 第2電力変換部
213 第3電力変換部
300A 第1電力変換装置
300B 第2電力変換装置
311 AC/DC変換部
312、313、314 DC/DC変換部
321、322 制御部