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特開2024-165418接着層用組成物、接着層、接着層付きセパレーター及び二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165418
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】接着層用組成物、接着層、接着層付きセパレーター及び二次電池
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20241121BHJP
   H01M 50/449 20210101ALI20241121BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20241121BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20241121BHJP
   H01M 50/429 20210101ALI20241121BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20241121BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20241121BHJP
   H01M 50/457 20210101ALI20241121BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20241121BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20241121BHJP
【FI】
C09J201/00
H01M50/449
H01M50/443 B
H01M50/443 E
H01M50/42
H01M50/429
H01M50/443 M
H01M50/446
H01M50/451
H01M50/457
C09J11/04
H01M50/434
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081602
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大浦 慶
【テーマコード(参考)】
4J040
5H021
【Fターム(参考)】
4J040BA032
4J040BA102
4J040DB061
4J040DF021
4J040DF031
4J040DF061
4J040DF102
4J040GA07
4J040HA136
4J040JA03
4J040KA23
4J040KA42
4J040LA02
4J040LA03
4J040NA19
5H021BB11
5H021BB13
5H021CC04
5H021CC05
5H021CC07
5H021EE06
5H021EE11
5H021EE15
5H021EE21
5H021EE23
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH04
5H021HH06
(57)【要約】
【課題】耐ブロッキング性に優れ、かつ、電池抵抗が抑制された接着層を得ることができる接着層用組成物を提供する。
【解決手段】粒子状重合体である重合体A、及び、水溶性である重合体Bを少なくとも含有し、重合体A及び重合体Bのガラス転移温度が、それぞれ独立に70℃以上であり、組成物に含まれる全粒子状重合体の合計含有量に対する重合体Aの含有量が、99.0質量%以上である接着層用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状重合体である重合体A、及び、水溶性である重合体Bを少なくとも含有し、
前記重合体A及び前記重合体Bのガラス転移温度が、それぞれ独立に70℃以上であり、
組成物に含まれる全粒子状重合体の合計含有量に対する前記重合体Aの含有量が、99.0質量%以上である接着層用組成物。
【請求項2】
前記重合体Aの粒子径が、0.2μm以上10.0μm以下である請求項1に記載の接着層用組成物。
【請求項3】
前記重合体Aは、(メタ)アクリレート単量体由来の単位、ニトリル基含有単量体由来の単位及び芳香族ビニル単量体由来の単位からなる群から選択される少なくとも1つの単位を含有し、
さらに、カルボキシル基含有単量体由来の単位及び多官能性架橋単量体由来の単位の少なくとも一方を含み、
前記カルボキシル基含有単量体由来の単位及び前記多官能性架橋単量体由来の単位の合計含有量が、0.1質量%以上10.0質量%以下である請求項1に記載の接着層用組成物。
【請求項4】
前記重合体Bが、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、ポリ(メタ)アクリルアミド、水溶性(メタ)アクリルポリマー、ポリ酸無水物、ポリスルホン酸、及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載の接着層用組成物。
【請求項5】
さらに無機粒子を含む請求項1に記載の接着層用組成物。
【請求項6】
粒子状重合体である重合体A、及び、水溶性である重合体Bを少なくとも含有し、
前記重合体A及び前記重合体Bのガラス転移温度が、それぞれ独立に70℃以上であり、
接着層に含まれる全粒子状重合体の合計含有量に対する前記重合体Aの含有量が99.0質量%以上であり、
前記重合体Aの少なくとも一部が前記重合体Bにより被覆されている接着層。
【請求項7】
前記重合体Aの粒子径が、0.20μm以上10.0μm以下である請求項6に記載の接着層。
【請求項8】
前記重合体Aは、(メタ)アクリレート単量体由来の単位、ニトリル基含有単量体由来の単位及び芳香族ビニル単量体由来の単位からなる群から選択される少なくとも1つの単位を含有し、
さらに、カルボキシル基含有単量体由来の単位及び多官能性架橋単量体由来の単位の少なくとも一方を含み、
前記カルボキシル基含有単量体由来の単位及び前記多官能性架橋単量体由来の単位の合計含有量が、0.1質量%以上10.0質量%以下である請求項6に記載の接着層。
【請求項9】
前記重合体Bが、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、ポリ(メタ)アクリルアミド、水溶性(メタ)アクリルポリマー、ポリ酸無水物、ポリスルホン酸、及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項6に記載の接着層。
【請求項10】
さらに無機粒子を含む請求項6に記載の接着層。
【請求項11】
前記重合体A、前記重合体B及び溶媒を含むスラリーを、セパレーターにおける一方又は両方の表面に塗布し、温風又は赤外線により乾燥させて得られ、
前記スラリーに含まれる全粒子状重合体の合計含有量に対する前記重合体Aの含有量が、99.0質量%以上である請求項6に記載の接着層。
【請求項12】
セパレーターと、
前記セパレーターの一方又は両方の表面に含まれる請求項6に記載の接着層と、
を含む接着層付きセパレーター。
【請求項13】
前記接着層を前記セパレーターの一方の表面に含み、かつ、前記接着層を、前記一方の表面の全面積に対して、面積基準で90%以下含むか、又は、
前記接着層を前記セパレーターの両方の表面に含み、かつ、前記接着層を、前記両方の表面のそれぞれの全面積に対して、面積基準で90%以下含み、
前記接着層は、セパレーター側とは反対側からの投影図において、形状が点状又は線状である請求項12に記載の接着層付きセパレーター。
【請求項14】
請求項12又は請求項13に記載の接着層付きセパレーターを備える二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着層用組成物、接着層、接着層付きセパレーター及び二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池を中心とした非水電解液電池の開発が活発に行われている。
通常、非水電解液電池には、微多孔膜(セパレーター)が正負極間に設けられている。このようなセパレーターは、正負極間の直接的な接触を防ぎ、微多孔中に保持した電解液を通じイオンを透過させる機能を有する。
【0003】
例えば、特許文献1には、粒子状重合体および溶媒を含む非水系二次電池機能層用スラリー組成物であって、前記粒子状重合体が、コア部および前記コア部の外表面の少なくとも一部を覆うシェル部を備えるコアシェル構造を有し、そして、前記粒子状重合体は、ガラス転移温度が20℃以上であり、表面酸量が0.05mmol/g以上0.50mmol/g以下である、非水系二次電池機能層用スラリー組成物が記載されている。
【0004】
特許文献2には、粒子状重合体Aを含む非水系二次電池機能層用組成物であって、前記粒子状重合体Aは、コア部および前記コア部の外表面の少なくとも一部を覆うシェル部を備えるコアシェル構造を有し、前記コア部は、ガラス転移温度が25℃超80℃未満の重合体からなり、前記シェル部は、ガラス転移温度が-80℃以上25℃以下の重合体からなり、前記コア部と前記シェル部の合計中に占める前記コア部の割合が、30質量%以上80質量%以下である、非水系二次電池機能層用組成物が記載されている。
【0005】
特許文献3には、少なくとも片面に接着層を有する多孔性ポリオレフィンフィルムからなる接着層付セパレーターと、電極活物質および電極用結着剤を含む電極活物質層を有する電極とを、前記接着層と前記電極活物質層とが当接するように積層し、熱圧着する工程を含む、電極/セパレーター積層体の製造方法であって、前記接着層が、ガラス転移温度-50~5℃である粒子状重合体Aと、ガラス転移温度50~120℃である粒子状重合体Bおよび湿潤剤とを含み、前記粒子状重合体Aおよび前記粒子状重合体Bが、一般式(1):CH2=CR1-COOR2(式中、R1は水素原子またはメチル基を、R2はアルキル基またはシクロアルキル基を表す。)で表される化合物由来の単量体単位、ニトリル基含有単量体単位、およびカルボン酸基含有単量体単位を含むアクリル重合体であり、前記接着層の平均厚さが0.2~1.0μmであり、前記熱圧着を50~100℃で行う、電極/セパレーター積層体の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2020/175025号
【特許文献2】国際公開第2018/096975号
【特許文献3】特開2018-56142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
二次電池分野において、従来から、電極とセパレーターとを接着する接着層が用いられることが知られている。
接着層を形成する接着層用組成物としては、例えば、第1粒子と、第1粒子に接着される第2粒子又はガラス転移温度(Tg)が低い水溶性ポリマーと、を含む組成物が挙げられる。
上記第2粒子はTgが低いことが多く、粒子径も第1粒子よりも小さいことが多い。また、ガラス転移温度(Tg)が低い水溶性ポリマーは耐ブロッキングを低下させる傾向にある。
本発明者らによれば、上記のような接着層用組成物によって得られる接着層は、耐ブロッキング性及び電池抵抗がともに上昇し、電池性能の点で改善の余地がある。
すなわち、耐ブロッキング性に優れ、かつ、電池抵抗が抑制された接着層が求められている。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、耐ブロッキング性に優れ、かつ、電池抵抗が抑制された接着層を得ることができる接着層用組成物、接着層、接着層付きセパレーター及び二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の態様を含む。
<1> 粒子状重合体である重合体A、及び、水溶性である重合体Bを少なくとも含有し、前記重合体A及び前記重合体Bのガラス転移温度が、それぞれ独立に70℃以上であり、組成物に含まれる全粒子状重合体の合計含有量に対する前記重合体Aの含有量が、99.0質量%以上である接着層用組成物。
<2> 前記重合体Aの粒子径が、0.2μm以上10.0μm以下である<1>に記載の接着層用組成物。
<3> 前記重合体Aは、(メタ)アクリレート単量体由来の単位、ニトリル基含有単量体由来の単位及び芳香族ビニル単量体由来の単位からなる群から選択される少なくとも1つの単位を含有し、さらに、カルボキシル基含有単量体由来の単位及び多官能性架橋単量体由来の単位の少なくとも一方を含み、前記カルボキシル基含有単量体由来の単位及び前記多官能性架橋単量体由来の単位の合計含有量が、0.1質量%以上10.0質量%以下である<1>又は<2>に記載の接着層用組成物。
<4> 前記重合体Bが、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、ポリ(メタ)アクリルアミド、水溶性(メタ)アクリルポリマー、ポリ酸無水物、ポリスルホン酸、及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種を含む<1>~<3>のいずれか1つに記載の接着層用組成物。
<5> さらに無機粒子を含む<1>~<4>のいずれか1つに記載の接着層用組成物。
<6> 粒子状重合体である重合体A、及び、水溶性である重合体Bを少なくとも含有し、前記重合体A及び前記重合体Bのガラス転移温度が、それぞれ独立に70℃以上であり、接着層に含まれる全粒子状重合体の合計含有量に対する前記重合体Aの含有量が99.0質量%以上であり、前記重合体Aの少なくとも一部が前記重合体Bにより被覆されている接着層。
<7> 前記重合体Aの粒子径が、0.20μm以上10.0μm以下である<6>に記載の接着層。
<8> 前記重合体Aは、(メタ)アクリレート単量体由来の単位、ニトリル基含有単量体由来の単位及び芳香族ビニル単量体由来の単位からなる群から選択される少なくとも1つの単位を含有し、さらに、カルボキシル基含有単量体由来の単位及び多官能性架橋単量体由来の単位の少なくとも一方を含み、前記カルボキシル基含有単量体由来の単位及び前記多官能性架橋単量体由来の単位の合計含有量が、0.1質量%以上10.0質量%以下である<6>又は<7>に記載の接着層。
<9> 前記重合体Bが、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、ポリ(メタ)アクリルアミド、水溶性(メタ)アクリルポリマー、ポリ酸無水物、ポリスルホン酸、及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種を含む<6>~<8>のいずれか1つに記載の接着層。
<10> さらに無機粒子を含む<6>~<9>のいずれか1つに記載の接着層。
<11> 前記重合体A、前記重合体B及び溶媒を含むスラリーを、セパレーターにおける一方又は両方の表面に塗布し、温風又は赤外線により乾燥させて得られ、
前記スラリーに含まれる全粒子状重合体の合計含有量に対する前記重合体Aの含有量が、99.0質量%以上である<6>~<10>のいずれか1つに記載の接着層。
<12> セパレーターと、前記セパレーターの一方又は両方の表面に含まれる<6>~<11>のいずれか1つに記載の接着層と、を含む接着層付きセパレーター。
<13> 前記接着層を前記セパレーターの一方の表面に含み、かつ、前記接着層を、前記一方の表面の全面積に対して、面積基準で90%以下含むか、又は、前記接着層を前記セパレーターの両方の表面に含み、かつ、前記接着層を、前記両方の表面のそれぞれの全面積に対して、面積基準で90%以下含み、前記接着層は、セパレーター側とは反対側からの投影図において、形状が点状又は線状である<12>に記載の接着層付きセパレーター。
<14> <12>又は<13>に記載の接着層付きセパレーターを備える二次電池。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、耐ブロッキング性に優れ、かつ、電池抵抗が抑制された接着層を得ることができる接着層用組成物、上記接着層用組成物によって得られる接着層、接着層付きセパレーター及び二次電池を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施できる。
なお、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いる。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書における基(原子団)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0012】
≪接着層用組成物≫
本実施形態の接着層用組成物は、粒子状重合体である重合体A、及び、水溶性である重合体Bを少なくとも含有し、重合体A及び重合体Bのガラス転移温度が、それぞれ独立に70℃以上であり、組成物に含まれる全粒子状重合体の合計含有量に対する重合体Aの含有量が、99.0質量%以上である。
【0013】
本発明者らは、鋭意検討の結果、粒子状重合体である重合体A、及び、水溶性である重合体Bを含み、かつ、上述の各要件を満たす本実施形態の接着層用組成物によれば、耐ブロッキング性に優れ、かつ、電池抵抗が抑制された接着層を得ることができることを見出した。
また、本実施形態の接着層用組成物によって得られる接着層は、接着層としての十分な剥離強度も備える傾向にある。
【0014】
従来は、接着層を形成する接着層用組成物としては、第1粒子と、第1粒子に接着される第2粒子又はガラス転移温度(Tg)が低い水溶性ポリマーと、を含む組成物が用いられる場合があった。このような接着層用組成物によって得られる接着層は、耐ブロッキング性及び電池抵抗がともに上昇し、電池性能の点で改善の余地があった。
【0015】
上記のような接着層用組成物において、一般的に、第1粒子に接着される第2粒子及びガラス転移温度(Tg)が低い水溶性ポリマーは、得られる接着層の剥離強度を向上させることを目的として用いられる。そのため、第1粒子に接着される第2粒子及びガラス転移温度(Tg)が低い水溶性ポリマーを含まない接着層用組成物については、剥離強度の低下が懸念される。
これに対し、本発明者らは、ガラス転移温度が70℃以上であり水溶性である重合体Bを用いることを検討した。その結果、上述の各構成を含む本実施形態の接着層用組成物であれば、第1粒子に接着される第2粒子及びガラス転移温度(Tg)が低い水溶性ポリマーを含まない場合であっても、耐ブロッキング性及び電池抵抗の抑制に加えて、さらに接着層としての十分な剥離強度を備える傾向にあることを見出した。
【0016】
また、本実施形態の接着層用組成物は、剥離強度(特にWET接着力)に優れるため、電池の変形、膨張等を長期的に維持することができる。そのため、電池の容量維持率に優れ、電池抵抗の増加を抑制することができる。
【0017】
<重合体A>
接着層用組成物は、粒子状重合体である重合体Aを含む。これによって、得られる接着層の接着性を向上させることができる。
粒子状とは、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察において、個々のポリマーが輪郭を有する形状を指す。その際、観察される粒子は、細長形状、球状、多角形状等の形状であってもよい。
【0018】
(粒子径)
重合体Aの粒子径は、0.20μm以上10.0μm以下であることが好ましい。重合体Aの粒子径が上記範囲内であることで、WET接着力に優れる。WET接着力とは、電解液中におけるセパレーターへの接着層の接着力を意味する。
上記の観点から、重合体Aの粒子径は、0.20μm以上6.0μm以下であることがより好ましく、0.25μm以上4.0μm以下であることがさらに好ましい。
【0019】
重合体Aの粒子径は、重合体Aを含む水分散液をイオン交換水で希釈して、固形分濃度1%の測定試料を作製し、レーザー回折・光散乱方式粒度分布測定装置を用いて測定し、体積平均粒子径D50として得られる粒子径である。
【0020】
本実施形態の接着層用組成物は、組成物に含まれる全粒子状重合体の合計含有量に対する重合体Aの含有量が、99.0質量%以上であり、100質量%であることが好ましい。
【0021】
重合体Aは、粒子状重合体であれば、材料に特に制限はない。
重合体Aは、共重合体であることが好ましい。
共重合体に含まれる単量体単位としては、(メタ)アクリレート単量体由来の単位、ニトリル基含有単量体由来の単位、芳香族ビニル単量体由来の単位、カルボキシル基含有単量体由来の単位、多官能性架橋単量体由来の単位等が挙げられる。
「単量体単位」とは、共重合体中の、単量体に由来する構成単位をいう。
共重合体における各構成単位について、下記にて説明する。
【0022】
((メタ)アクリレート単量体由来の単位)
共重合体が(メタ)アクリレート単量体由来の単位を含むことにより、耐酸化性がより向上する傾向にある。(メタ)アクリレート単量体は、ニトリル基含有単量体、芳香族ビニル単量体、カルボキシル基含有単量体、多官能性架橋単量体とは異なる単量体である。
【0023】
(メタ)アクリレート単量体としては、特に限定されないが、例えば、エチレン性不飽和結合を1つ有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。より具体的には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、n-ヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレートなどのアルキル基を有する(メタ)アクリレート(より好ましくはアルキル基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート);ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレートなどの芳香環を有する(メタ)アクリレート(より好ましくは芳香環と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート)が挙げられる。これらの中では、電極(電極活物質)との密着性向上の観点から、炭素数6以上のアルキル基と(メタ)アクリロイルオキシ基とを有する(メタ)アクリレート単量体が好ましい。より具体的には、2-エチルヘキシルアクリレートが好ましい。これら(メタ)アクリレート単量体は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0024】
(メタ)アクリレート単量体由来の単位の含有量は、重合体A100質量%に対して、好ましくは1質量%~65質量%であり、より好ましくは5質量%~60質量%であり、さらに好ましくは8~50質量%である。
(メタ)アクリレート単量体由来の単位の含有量が65質量%以下であることにより、得られる接着層の耐熱性が向上する傾向にある。
【0025】
(ニトリル基含有単量体由来の単位)
共重合体がニトリル基含有単量体由来の単位を有することにより、共重合体の耐酸化性がより向上する傾向にある。ニトリル基含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
ニトリル基含有単量体は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0026】
ニトリル基含有単量体由来の単位の含有量は、重合体A100質量%に対して、好ましくは20質量%~80質量%であり、より好ましくは25質量%~70質量%である。
【0027】
(芳香族ビニル単量体由来の単位)
共重合体が芳香族ビニル単量体由来の単位を有することにより、共重合体の耐電解液性がより向上する傾向にある。芳香族ビニル単量体としては、特に限定されないが、例えば、スチレン、ビニルトルエン及びα-メチルスチレンが挙げられる。このなかでも、スチレンが好ましい。
【0028】
芳香族ビニル単量体由来の単位の含有量は、重合体A100質量%に対して、好ましくは1質量%~95質量%であり、より好ましくは2質量%~90質量%である。
【0029】
(カルボキシル基含有単量体由来の単位)
共重合体がカルボキシル基含有単量体由来の単位を含むことにより、得られる接着層の耐熱性がより向上する傾向にある。カルボキシル基含有単量体としては、特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸のハーフエステル、マレイン酸のハーフエステル、及びフマール酸のハーフエステルなどのモノカルボン酸単量体;イタコン酸、フマール酸及びマレイン酸などのジカルボン酸単量体が挙げられる。このなかでも、得られる接着層の耐熱性向上の観点から、アクリル酸、メタクリル酸及びイタコン酸が好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましい。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0030】
カルボキシル基含有単量体由来の単位の含有量は、重合体A100質量%に対して、好ましくは0質量%~5.0質量%であり、より好ましくは0.02質量%~5.0質量%であり、さらに好ましくは1.0質量%~5.0質量%である。
カルボキシル基含有単量体由来の単位の含有量は0質量%であり得るが、カルボキシル基含有単量体由来の単位の含有量が0質量%超であることにより、得られる接着層の耐熱性がより向上する傾向にある。同様の観点から、カルボキシル基含有単量体由来の単位の含有量が0.02質量%以上であることが好ましい。
またカルボキシル基含有単量体由来の単位の含有量が5.0質量%以下であることにより、共重合体を調製する際の重合安定性がより向上する傾向にある。
【0031】
(多官能性架橋単量体由来の単位)
電解液に対する不溶分を適度な量にする観点から、共重合体が多官能性架橋単量体由来の単位を含んでもよい。
【0032】
多官能性架橋単量体としては、特に限定されないが、例えば、ジビニルベンゼン等の多官能芳香族化合物;2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、4官能(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。なかでも、少量でもより良好な耐電解液性を発現できる観点から、多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0033】
多官能(メタ)アクリレートとしては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンジアクリレート、ポリオキシエチレンジメタクリレート、ポリオキシプロピレンジアクリレート、ポリオキシプロピレンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0034】
多官能性架橋単量体由来の単位の含有量は、重合体A100質量%に対して、好ましくは0質量%~2.0質量%であり、より好ましくは0.1質量%~2.0質量%であり、さらに好ましくは0.5質量%~1.5質量%である。
多官能性架橋単量体由来の単位の含有量は0質量%であり得るが、多官能性架橋単量体由来の単位の含有量は0質量%超であってもよい。
【0035】
重合体Aは、(メタ)アクリレート単量体由来の単位、ニトリル基含有単量体由来の単位及び芳香族ビニル単量体由来の単位からなる群から選択される少なくとも1つの単位を含有し、
さらに、カルボキシル基含有単量体由来の単位及び多官能性架橋単量体由来の単位の少なくとも一方を含むことが好ましい。
【0036】
(メタ)アクリレート単量体由来の単位、ニトリル基含有単量体由来の単位及び芳香族ビニル単量体由来の単位の合計含有量が、重合体A100質量%に対して、90.0質量%以上99.9質量%以下であることが好ましく、94.0質量%以上99.9質量%以下であることがより好ましい。
カルボキシル基含有単量体由来の単位及び多官能性架橋単量体由来の単位の合計含有量が、0質量%超10.0質量%以下であることが好ましく、0.02質量%以上10.0質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上6.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0037】
(共重合体の製造方法)
共重合体は、例えば、通常の乳化重合法によって得られる。乳化重合の方法に関しては特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。例えば、水性媒体中で上述の単量体、界面活性剤、ラジカル重合開始剤、及び必要に応じて用いられる他の添加剤成分を基本組成成分とする分散系において、上記各単量体を含む単量体組成物を重合することにより共重合体が得られる。重合に際しては、供給する単量体組成物の組成を全重合過程で一定にする方法、重合過程で逐次又は連続的に変化させることによって、生成する樹脂分散体の粒子の形態的な組成変化を与える方法等、必要に応じて様々な方法が利用できる。
共重合体を乳化重合により得る場合、例えば、水と、その水中に分散した粒子状の共重合体とを含む水分散体(ラテックス)の形態で用いてもよい。
【0038】
重合体Aの含有量は、接着層用組成物中の固形分の全量に対して、好ましくは50.0質量%以上であり、より好ましくは70.0質量%以上であり、さらに好ましくは90.0質量%以上であり、特に好ましくは95.0質量%以上であり、より一層好ましくは97.0質量%以上である。
重合体Aの含有量は、接着層用組成物中の固形分の全量に対して、好ましくは99.5質量%以下であり、より好ましくは99.0質量%以下である。
また、接着層用組成物が無機粒子を含む場合は、重合体Aの含有量は、接着層用組成物中の固形分の全量に対して、好ましくは1.0質量%以上40.0質量%以下であり、より好ましくは3.0質量%以上30.0質量%以下であり、さらに好ましくは5.0質量%以上20.0質量%以下である。
【0039】
<水溶性である重合体B>
本実施形態の接着層用組成物は、水溶性である重合体Bを含有する。これによって、得られる接着層の接着性を向上させることができる。
重合体Bが水溶性であることで、得られる接着層において、重合体Bは重合体Aの少なくとも一部、好ましくは全部を被覆することができる。その結果、顕著に耐ブロッキング性に優れる。また、電池抵抗が抑制された接着層を得ることができ、上記接着層は十分な剥離強度を有する。
【0040】
重合体Bとしては、水溶性であれば特に制限はない。
水溶性とは、25℃における水1L当たり1g以上溶解することを指す。
【0041】
重合体Bは、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、ポリ(メタ)アクリルアミド、水溶性(メタ)アクリルポリマー、ポリ酸無水物、ポリスルホン酸、及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、ポリ(メタ)アクリルアミド、及びこれらの塩からなる群から選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0042】
重合体Bの含有量は、接着層用組成物中の固形分の全量に対して、好ましくは10.0質量%以以下であり、より好ましくは5.0質量%以下であり、さらに好ましくは3.0質量%以下である。
重合体Bの含有量は、接着層用組成物中の固形分の全量に対して、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1.0質量%以上である。
【0043】
(ガラス転移温度(Tg))
重合体A及び重合体Bのガラス転移温度は、それぞれ独立に70℃以上である。
上記Tgの範囲は、比較的高い値である。これによって、耐ブロッキング性に優れ、電池抵抗が抑制された接着層を得ることができる。また、上記接着層は十分な剥離強度を有する。
上記の観点から、重合体A及び重合体Bのガラス転移温度は、それぞれ独立に、90℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。
また、重合体A及び重合体Bのガラス転移温度は、それぞれ独立に、200℃以下であることが好ましく、180℃以下であることがより好ましく、150℃以下であることがさらに好ましい。
【0044】
ガラス転移温度は、以下の方法により示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定する。
重合体A又は重合体Bを乾燥させ、厚み1±0.1mmのフィルムを得る。このフィルムを、120℃の熱風オーブンで3時間乾燥させる。乾燥させたフィルムをサンプルとして、JIS K7121に準じて、測定温度:-100℃~180℃、昇温速度5℃/分にて、示差走査熱量分析計を用いて、重合体A又は重合体Bのガラス転移温度Tg(℃)を測定する。
【0045】
(無機粒子)
本実施形態の接着層用組成物は、さらに無機粒子を含むことが好ましい。
無機粒子としては、200℃以上の融点を有し、電気絶縁性が高く、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲で電気化学的に安定である無機粒子が好ましい。
【0046】
無機粒子としては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄などの酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素などの窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム(例えばベーマイト)、チタン酸カリウム、タルク、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂などのセラミックス;ガラス繊維等が挙げられる。
【0047】
上記の中でも、アルミナ、水酸化酸化アルミニウムなどの酸化アルミニウム化合物;カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライトなどのイオン交換能を有さないケイ酸アルミニウム化合物;炭酸カルシウムが好ましい。
このような無機粒子を用いることにより、電気化学的安定性及びセパレーターの耐熱性がより向上する傾向にある。
無機粒子は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
無機粒子の含有量は、接着層用組成物中の固形分の全量に対して、好ましくは50質量%以上100質量%未満であり、より好ましくは60~95質量%であり、さらに好ましくは80~90質量%である。
無機粒子の含有量が上記範囲内であることにより、無機粒子の結着性、セパレーターの透過性及び耐熱性等がより向上する傾向にある。
【0049】
(溶媒)
本実施形態の接着層用組成物は、溶媒を含んでもよい。
溶媒としては水が好ましい。水と併用可能な溶媒としては、例えば、エタノール、メタノール等が挙げられる。
【0050】
≪接着層≫
本実施形態の接着層は、粒子状重合体である重合体A、及び、水溶性である重合体Bを少なくとも含有し、重合体A及び重合体Bのガラス転移温度が、それぞれ独立に70℃以上であり、接着層に含まれる全粒子状重合体の合計含有量に対する重合体Aの含有量が99.0質量%以上であり、重合体Aの少なくとも一部が重合体Bにより被覆されている。
【0051】
本実施形態の接着層は、上述の本実施形態の接着層用組成物によって得られる接着層である。
粒子状重合体である重合体A及び水溶性である重合体Bの具体例、好ましい態様、好ましい含有量等の詳細は、上述の粒子状重合体である重合体A及び水溶性である重合体Bの具体例、好ましい態様、好ましい含有量等の詳細と同様である。
重合体A及び重合体Bのガラス転移温度の好ましい範囲は、上述の重合体A及び重合体Bのガラス転移温度の好ましい範囲と同様である。
接着層に含まれる全粒子状重合体の合計含有量に対する重合体Aの含有量の好ましい範囲は、上述の接着層に含まれる全粒子状重合体の合計含有量に対する重合体Aの含有量の好ましい範囲と同様である。
【0052】
本実施形態の接着層において、重合体Aの少なくとも一部が重合体Bにより被覆されており、好ましくは重合体Aの全部が重合体Bにより被覆されている。
重合体Bは、水溶性であるために、接着層用組成物中では少なくとも一部が溶解している。しかし、接着層用組成物を用いて接着層を製造する際に、重合体Aの周囲に存在する重合体Bが重合体Aの少なくとも一部を被覆する。そして、重合体Bは比較的高いTgを有している。
これらによって、得られる接着層は優れた耐ブロッキング性を有する傾向にある。
【0053】
本実施形態の接着層は、重合体A、重合体B及び溶媒を含むスラリーを、セパレーターにおける一方又は両方の表面に塗布し、温風又は赤外線により乾燥させて得られ、スラリーに含まれる全粒子状重合体の合計含有量に対する重合体Aの含有量が、99.0質量%以上であってもよい。
【0054】
(セパレーター)
セパレーターは基材のみを含んでもよく、必要に応じてさらに基材の表面にコーティング層を含んでもよい。
そのため、セパレーターの表面は基材であってもよく、コーティング層であってもよい。
【0055】
[基材]
セパレーターは基材を含む。
基材を構成する樹脂としては、例えばポリエチレン(polyethylene),ポリプロピレン(polypropylene)等に代表されるポリオレフィン(polyolefin)系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate),ポリブチレンテレフタレート(polybutylene terephthalate)等に代表されるポリエステル(Polyester)系樹脂、PVDF、フッ化ビニリデン(VDF)-ヘキサフルオロプロピレン(HFP)共重合体、フッ化ビニリデン-パーフルオロビニルエーテル(par fluorovinyl ether)共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene)共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン(trifluoroethylene)共重合体、フッ化ビニリデン-フルオロエチレン(fluoroethylene)共重合体、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロアセトン(hexafluoroacetone)共重合体、フッ化ビニリデン-エチレン(ethylene)共重合体、フッ化ビニリデン-プロピレン(propylene)共重合体、フッ化ビニリデン-トリフルオロプロピレン(trifluoro propylene)共重合体、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene)-ヘキサフルオロプロピレン(hexafluoropropylene)共重合体、フッ化ビニリデン-エチレン(ethylene)-テトラフルオロエチレン(tetrafluoroethylene)共重合体等を挙げることができる。
【0056】
[コーティング層]
セパレーターは、さらに、基材の表面に配置されるコーティング層を含んでもよい。
コーティング層は、無機粒子と、バインダとを含んでもよい。
コーティング層に用いられる無機粒子としては、高い耐熱性を有する無機粒子が好ましい。
【0057】
コーティング層に用いられる無機粒子としては、例えば、上述の無機粒子の具体例が挙げられる。
また、無機粒子の具体例としては、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、チタンの酸化物及びこれらの水酸化物が挙げられる。
これらのうち、無機粒子としては、特に高い耐熱性を有し、かつ、水分量(含水量)が少ないアルミナとベーマイトのいずれか一方または両方が特に好ましい。このような特性を有する無機粒子をコーティング層に含めることで、リチウムイオン二次電池のサイクル特性が改善される。無機粒子の粒径は特に制限されず、リチウムイオン二次電池10に使用される無機粒子の粒径であれば特に制限されない。
【0058】
バインダは、無機粒子をコーティング層内、すなわちセパレーター内に保持することができる。
バインダは、カルボキシル基含有アクリルモノマーとアクリル酸誘導体モノマーとを必須モノマーとし、且つ、これらの必須モノマーを20/80~80/20のモル比で重合させたアクリル樹脂(以下、「共重合アクリル樹脂」と記載する。)を含んでもよい。
このような共重合アクリル樹脂をコーティング層用のバインダとして用いることで、セパレーター40の耐熱性及び基材とコーティング層40bとの間の密着性が向上する。
また、本実施形態では、上記共重合アクリル樹脂をバインダとして用いコーティング層を形成することによって、セパレーターと電極(正極及び負極)との間の密着強度が向上する。これによりリチウムイオン二次電池の安全性及びサイクル寿命が向上する。
【0059】
カルボキシル基含有モノマーとアクリル酸誘導体モノマーとの配合比は、モル比で、30/70~70/30であることが好ましく、40/60~60/40であることがさらに好ましく、40/60~50/50であることが最も好ましい。これによって、セパレーターの耐熱性及び基材とコーティング層との間の密着性、及び、セパレーターと電極(正極及び負極)との間の密着強度をさらに大きく向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態のコーティング層におけるバインダの主成分となる上記共重合アクリル樹脂は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよい。
カルボキシル基含有アクリルモノマーが重合したポリマー主鎖に、ニトリル基含有アクリルモノマーが重合したポリマー側鎖がグラフトしたグラフト共重合体であることが好ましい。これによって、セパレーターの耐熱性及び基材とコーティング層との間の密着性、及び、セパレーターと電極(正極及び負極)との間の密着強度を更に大きく向上させることができる。この場合、セパレーターに含まれる水分量をさらに低減することができる。
【0061】
溶媒の具体例、好ましい態様等の詳細は、上述の溶媒の具体例、好ましい態様等の詳細と同様である。
【0062】
重合体A、重合体B及び溶媒を含むスラリーを、セパレーターにおける一方又は両方の表面に塗布する際、溶媒としては、水が好ましい。
スラリーをセパレーターに塗布する際に、スラリーがセパレーターの内部にまで入り込んでしまうと、重合体A及び重合体Bが、セパレーターの孔の表面及び内部を閉塞して、透過性が低下しやすくなる。
溶媒として水を用いる場合には、セパレーターの内部にスラリーが入り込み難くなり、重合体A及び重合体Bは主にセパレーターの外表面上に存在しやすくなる。これによって、過性の低下をより効果的に抑制できる。
【0063】
スラリーの塗布方法については、所望の層厚、塗布面積等を実現できる方法であれば特に限定はなく、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、及びスプレー塗布法が挙げられる。
【0064】
スラリーをセパレーターにおける一方又は両方の表面に塗布する前に、セパレーター表面に表面処理を施してもよい。
これによって、スラリーをより塗布しやすくなると共にセパレーターと熱可塑性ポリマーとの接着性が向上する傾向にある。
表面処理の方法は、特に限定はなく、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ処理法、機械的粗面化法、溶剤処理法、酸処理法、紫外線酸化法等が挙げられる。
【0065】
塗布されたスラリーを温風又は赤外線により乾燥させることで、スラリーの溶媒を除去することができる。
スラリーの溶媒を除去する方法としては、特に限定はない。
例えば、セパレーターを固定しながらその融点以下の温度にて乾燥する方法、低温で減圧乾燥する方法、共重合体に対する貧溶媒に浸漬して重合体を凝固させると共に溶媒を抽出する方法等が挙げられる。
【0066】
≪接着層付きセパレーター≫
接着層付きセパレーターは、上記セパレーターと、上記セパレーターの一方又は両方の表面に含まれる本実施形態の接着層と、を含む。
【0067】
セパレーターの表面における接着層の配置割合は、任意に調整できる。
本実施形態の接着層付きセパレーターは、接着層をセパレーターの一方の表面に含み、かつ、接着層を、一方の表面の全面積に対して、面積基準で90%以下含むか、又は、
接着層をセパレーターの両方の表面に含み、かつ、接着層を、両方の表面のそれぞれの全面積に対して、面積基準で90%以下含むことが好ましい。
【0068】
セパレーターの表面に接着層が配置される際、接着層は、セパレーター側とは反対側からの投影図において、形状が点状又は線状であってもよい。
【0069】
(用途)
本実施形態の接着層用組成物、接着層用組成物によって得られる接着層及び接着層付きセパレーターは、蓄電デバイス、リチウムイオン二次電池などの用途に好適に用いることができる。例えば、本実施形態の二次電池は、本実施形態の接着層付きセパレーターを備える。
【実施例0070】
以下、本実施形態について、具体的な実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明は、以下の実施例及び比較例に限定されるものではない。すなわち、当業者は以下に示す実施例に様々な変更を加えて本発明を実施することができる。
なお、以下において特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
実施例及び比較例において、粒子径及びガラス転移温度の測定方法は、上述の(粒子径)及び(ガラス転移温度(Tg))に記載の通りである。
【0071】
本実施例における各成分の詳細は下記の通りである。
【0072】
[重合体A]
<粒子状重合体A-1の調製>
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水100部、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.1部、および過流酸ナトリウム0.3部を、それぞれ添加し気相部を窒素ガスで置換し、70℃に昇温した。
【0073】
別の容器でイオン交換水100部、乳化剤であるラウリル硫酸ナトリウム0.3部、シクロヘキシルメタクリレート35.0部、2-エチルヘキシルアクリレート10.0部、スチレン4.0部、メタクリル酸5.0部、アクリロニトリル45.0部、エチレングリコールジアクリレート1.0部を混合した乳化液を作製し、これを2時間かけて上記反応器に連続的に添加して重合を行った。添加中は、70℃で反応を行った。添加終了後、さらに80℃で2時間撹拌して反応を終了し、粒子状重合体A-1を含む水分散液を製造した。
得られた粒子状重合体A-1のガラス転移温度Tgを測定したところ、観測されるガラス転移温度Tgは1点のみであり、+88℃であることを確認した。
得られた粒子状重合体A-1の体積平均粒子径D50は0.31μmであった。
【0074】
<粒子状重合体A-2の調製>
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水100部、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.1部、および過流酸ナトリウム0.3部を、それぞれ添加し気相部を窒素ガスで置換し、70℃に昇温した。
別の容器でイオン交換水100部、乳化剤であるラウリル硫酸ナトリウム0.3部、シクロヘキシルメタクリレート50.0部、2-エチルヘキシルアクリレート18.0部、メタクリル酸4.0部、アクリロニトリル27.0部、エチレングリコールジアクリレート1.0部を混合した乳化液を作製し、これを2時間かけて上記反応器に連続的に添加して重合を行った。添加中は、70℃で反応を行った。添加終了後、さらに80℃で2時間撹拌して反応を終了し、粒子状重合体A-2を含む水分散液を製造した。
得られた粒子状重合体A-2のガラス転移温度Tgを測定したところ、観測されるガラス転移温度Tgは1点のみであり、+70℃であることを確認した。
得られた粒子状重合体A-2の体積平均粒子径D50は0.31μmであった。
【0075】
<粒子状重合体A-3の調製>
撹拌機を備えた反応器に、イオン交換水100部、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.05部、および過流酸ナトリウム0.3部を、それぞれ添加し気相部を窒素ガスで置換し、70℃に昇温した。
別の容器でイオン交換水100部、乳化剤としてラウリル硫酸ナトリウム0.1部、2-エチルヘキシルアクリレート10.0部、スチレン90.0部を混合した乳化液を作製し、これ2時間かけて反応器に連続的に添加して重合を行った。添加中は、70℃で反応を行った。添加終了後、さらに80℃で2時間撹拌して反応を終了し、シード粒子を得た。
次に、このシード粒子を使用し重合を行った。イオン交換水100部、乳化剤であるラウリル硫酸ナトリウム0.1部、2-エチルヘキシルアクリレート9.7部、スチレン87.3部を混合した乳化液を作製し、ここにシード粒子を固形分で1.5部添加した。過流酸ナトリウム0.3部を添加し、気相部を窒素ガスで置換し、70℃に昇温し2時間反応させた。2時間後、さらに80℃で2時間撹拌して反応を終了させた。得られた粒子状重合体A-3の体積平均粒子径D50は5.20μmであった。
【0076】
<粒子状重合体A-4の調製>
シード粒子を使用して重合を行う際、2-エチルヘキシルアクリレート9.9部、スチレン89.1部を混合した乳化液を作製し、ここにシード粒子を固形分で1.0部添加したこと以外は、<粒子状重合体A-3の調製>に記載の調製方法と同様の方法で、粒子状重合体A-4を調製した。
得られた粒子状重合体A-4の体積平均粒子径D50は10.0μmであった。
【0077】
<粒子状重合体A-5の調製>
シード粒子を使用して重合を行う際、2-エチルヘキシルアクリレート9.3部、スチレン24.6部、メタクリル酸0.1部、アクリロニトリル60.0部を混合した乳化液を作製し、ここにシード粒子を固形分で6.0部添加したこと以外は、<粒子状重合体A-3の調製>に記載の調製方法と同様の方法で、粒子状重合体A-5を調製した。
得られた粒子状重合体A-5の体積平均粒子径D50は2.50μmであった。
【0078】
<粒子状重合体A-6の調製>
シード粒子を使用して重合を行う際、シクロヘキシルメタクリレート33.95部、2-エチルヘキシルアクリレート9.70部、スチレン3.88部、メタクリル酸4.85部、アクリロニトリル43.65部、エチレングリコールジアクリレート0.97部を混合した乳化液を作製し、ここにシード粒子として、上記粒子状重合体A-1を固形分で3.00部添加したこと以外は、<粒子状重合体A-3の調製>に記載の調製方法と同様の方法で、粒子状重合体A-6を調製した。
得られた粒子状重合体A-6の体積平均粒子径D50は3.50μmであった。
【0079】
<粒子状重合体A-7の調製>
粒子状重合体A-1の乳化液作成の際、シクロヘキシルメタクリレート50.0部、2-エチルヘキシルアクリレート20.0部、メタクリル酸4.0部、アクリロニトリル25.0部、エチレングリコールジアクリレート1.0部を混合した乳化液を作製したこと以外は<粒子状重合体A-1の調製>に記載の調製方法と同様の方法で、粒子状重合体A-7を調製した。
得られた粒子状重合体A-7の体積平均粒子径D50は0.31μmであった。
【0080】
<粒子状重合体A-8の調製>
粒子状重合体A-1の乳化液作成の際、シクロヘキシルメタクリレート30.0部、2-エチルヘキシルアクリレート30.0部、スチレン10.0部、メタクリル酸4.0部、アクリロニトリル25.0部、エチレングリコールジアクリレート1.0部を混合した乳化液を作製したこと以外は<粒子状重合体A-1の調製>に記載の調製方法と同様の方法で、粒子状重合体A-8を調製した。
得られた粒子状重合体A-8の体積平均粒子径D50は0.31μmであった。
【0081】
<粒子状重合体A-9の調製>
撹拌機を備えた反応器に添加する乳化剤であるラウリル硫酸ナトリウムの量を、0.1部から0.3部へ変更したこと以外は、<粒子状重合体A-1の調製>に記載の調製方法と同様の方法で、粒子状重合体A-9を調製した。
得られた粒子状重合体A-9の体積平均粒子径D50は0.2μmであった。
【0082】
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
2-EHA:2-エチルヘキシルアクリレート
Stylene:スチレン
MAA:メタクリル酸
AN:アクリロニトリル
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート
【0083】
[重合体B]
CMC-Na:カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩
XG:キサンタンガム
PAAm:ポリアクリルアミド
PAA共重合体:ポリアクリル酸共重合体
スチレンブタジエン:スチレンブタジエンポリマー(旭化成株式会社製、グレード名:L1571、粒子径:200nm、ガラス転移温度:0℃)
PVA:ポリビニルアルコール(株式会社クラレ製のポバール(グレード名:クラレポバール28-98))
【0084】
[添加物]
・無機粒子
アルミナ
ベーマイト
・ラテックス
SBラテックス:スチレンブタジエンラテックス
【0085】
<CMC-Naの調製>
カルボキシメチルセルロースとしてCMC1350(株式会社ダイセル製,CMC1350)をイオン交換水に溶解して使用した。50℃のイオン交換水を撹拌しながら1質量%になるようにCMC粉末を添加し、2時間の撹拌を行った。#325メッシュ(目開き43μmのメッシュ)を通過させてCMC溶液を調製した。
【0086】
(実施例1~14、比較例1~4)
<スラリー組成物の調製>
表1~表4に記載の種類及び量(固形分相当)の重合体Aと、表1~表4に記載の種類及び量の重合体Bと、固形分濃度が10%となる量のイオン交換水と、表1~表4に記載の種類及び量の添加材と、溶媒と、を混合した。これにより、接着層用スラリー組成物を調製した。
【0087】
<接着層付きセパレーターの製造>
ポリエチレン製の基材とコーティング層とを有するセパレーターを用意した。セパレーター基材の片面に、上述の方法で作製したスラリー組成物を、片面の厚み及び目付が表1~表4に記載の通りになるように一方のドット上に塗布し、40℃で10分間、温風乾燥させた。これにより接着層付セパレーターを得た。
目付は、単位面積当たりの重さである。例えば、無機粒子が含まれる場合は無機粒子及び他の成分を合わせて目付を求める。
厚みは、特に制限なく調整することができる。厚みは、目付を基準として調整してもよい。例えば、10μmの粒子が少量だけ含まれていた場合、目付は低いが厚みは10μm以上であり得る。
なお、得られた接着層付セパレーターにおいて、接着層をセパレーターの一方の表面に含み、かつ、接着層を、一方の表面の全面積に対して、面積基準で90%以下含んでいた。
また、接着層は、セパレーター側とは反対側からの投影図において、形状が点状又は線状であった。
また、実施例に係る接着層付きセパレーターにおいて、重合体Aの表面の全部が重合体Bにより被覆されていた。
【0088】
[評価]
(WET接着力)
負極と片面に接着層を塗工したセパレーターとを、それぞれ、10mm×100mmの短冊状に切り出した。そして、セパレーターの接着層の表面に負極の負極合材層を合わせて固定した。この積層体を試験片とした。
この試験片を、電解液約400μLと共にラミネート包材に入れた。5時間経過後、試験片をラミネート包材ごと50℃、圧力1.5MPaで5分間プレスした。
電解液としては、EC、DECの混合溶媒(EC/DEC(25℃における体積混合比)=60/40)に対し、支持電解質としてLiPF6を1mol/Lの濃度で溶かした電解液を用いた。
その後、試験片を取り出し、表面に付着した電解液を拭き取った。この試験片を、負極の集電体側の表面を下にして、負極の集電体側の表面にセロハンテープを貼り付けた。この際、セロハンテープとしては、JIS Z1522に規定されるものを用いた。また、セロハンテープは、水平な試験台に固定しておいた。そして、試験片におけるセパレーターの一端を鉛直上方に引張り速度100mm/分で引っ張って剥がした際の応力を測定した。この測定を5回行い、応力の平均値をピール強度として求め、下記の基準で評価した。評価結果を表に示す。
ピール強度が大きいほど、電解液中におけるセパレーターの接着性が優れており、セパレーターと電極(負極)とが強固に接着していることを示す。
〔評価基準〕
A:ピール強度が2.1N/m以上であった。
B:ピール強度が1.0N/m以上2.1N/m未満であった。
C:ピール強度が0.3N/m以上1.0N/m未満であった。
D:ピール強度が0.3N/m未満であった。
【0089】
(耐ブロッキング)
実施例及び比較例で作製したセパレーターを、幅5cm×長さ5cmの正方形に切って試験片とする。これら試験片について、塗工面を対向させて重ね合わせたサンプル(未プレスの状態のサンプル)と、重ね合わせた後に45℃、1.0MPaの加圧下に置いたサンプル(プレスしたサンプル)とを作製した。
これらのサンプルを、それぞれ24時間放置した。24時間放置後のサンプルにおいて、塗工面を対向させて重ね合わせたセパレーター同士の接着状態(ブロッキング状態)を目視で確認し、下記基準で評価した。評価結果を表に示す。
〔評価基準〕
A:プレスしたサンプルにおいて、セパレーター同士がブロッキングしなかった。
B:プレスしたサンプルにおいて、セパレーター同士がブロッキングするが片方を持ち上げた時点で剥がれた。
C:プレスしたサンプルにおいて、セパレーター同士がブロッキングし持ち上げても剥がれなかった。
D:未プレスの状態のサンプルにおいて、セパレーター同士がブロッキングした。
【0090】
(剥離強度)
実施例及び比較例で作製したセパレーターを、幅1cm×長さ7cmの長方形に切って試験片とする。剥離強度を測定するため、金属板とセパレーターの塗工面とを両面テープで接着させ、セパレーターの一端を鉛直上方に引張り速度100mm/分で引っ張って剥がした際の応力を測定した。この測定を5回行い、応力の平均値をピール強度として求め、下記の基準で評価した。評価結果を表に示す。
ピール強度が大きいほど、水溶性である重合体Bが粒子状重合体Aとセパレーターとを強固に接着させていることを示す。
〔評価基準〕
A:ピール強度が4.0N/m以上であった。
B:ピール強度が0.5N/m以上4.0N/m未満であった。
C:ピール強度が0.1N/m以上0.5N/m未満であった。
D:ピール強度が0.1N/m未満であった。
【0091】
【表1】
【0092】
【表2】
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
表1~表4に記載される通り、粒子状重合体である重合体A、及び、水溶性である重合体Bを少なくとも含有し、重合体A及び重合体Bのガラス転移温度が、それぞれ独立に70℃以上であり、組成物に含まれる全粒子状重合体の合計含有量に対する重合体Aの含有量が、99.0質量%以上である接着層用組成物を用いた実施例は、耐ブロッキング性に優れ、かつ、電池抵抗が抑制された接着層を得ることができた。
一方、重合体Bのガラス転移温度が70℃以上でない比較例1及び4は、耐ブロッキング性に劣っていた。重合体Aのガラス転移温度が70℃以上でない比較例2及び3は、耐ブロッキング性に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の接着層用組成物は、蓄電デバイス、リチウムイオン二次電池などの用途において、産業上の利用可能性を有している。