(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165429
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】部品押圧構造体
(51)【国際特許分類】
F16B 5/02 20060101AFI20241121BHJP
H05K 7/12 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F16B5/02 T
F16B5/02 A
H05K7/12 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081627
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】東川 直樹
【テーマコード(参考)】
3J001
4E353
【Fターム(参考)】
3J001FA03
3J001GA01
3J001GB01
3J001JA03
3J001KA12
3J001KB06
4E353AA01
4E353BB02
4E353CC12
4E353CC13
4E353CC16
4E353CC33
4E353CC36
4E353DD11
4E353DR02
4E353DR27
4E353DR36
4E353DR49
4E353GG29
(57)【要約】
【課題】ネジが締め付けられる際の金属異物の発生を抑制すること。
【解決手段】部品押圧構造体10は、支持端面33を有する締結台座30と、金属製のブラケット40と、支持端面33にブラケット40を固定する金属製のネジ50と、を備える。ブラケット40は、ベース部42と、部品を押圧する押圧部と、を有する。ベース部42は、ネジ50のネジ頭部51と対向する対向面45のうち、ネジ軸部52と押圧部との間の部分に、ネジ頭部51の外周縁51aに沿って延びる凹部47を有する。凹部47は、内側縁部47aと外側縁部47bとを有する。ネジ頭部51は対向面45と対向する座面53を有し、座面53は当該座面53と対向する仮想平面と有効に面接触し得る座面有効領域ERを有する。内側縁部47aがネジ頭部51の座面有効領域ERの外縁よりも内側に位置するとともに、外側縁部47bがネジ頭部51の外周縁51aよりも外側に位置する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気部品または電子部品である部品が搭載される筐体から延びる締結台座であって、先端に支持端面を有する締結台座と、
前記支持端面に固定され、前記部品を前記筐体に保持すべく前記部品を押圧する金属製のブラケットと、
ネジ頭部と当該ネジ頭部から延びるネジ軸部とを有し、前記支持端面に前記ブラケットを固定する金属製のネジと、を備える部品押圧構造体であって、
前記ブラケットは、前記支持端面上に配置されるベース部と、前記ベース部から前記部品に向かって延びるとともに前記部品を押圧する押圧部と、を有し、
前記ベース部は、前記ネジ頭部と対向する対向面を有するとともに、前記ネジ頭部の外周縁に沿って延びる凹部または孔を有し、前記凹部または孔は、前記対向面のうち、前記ネジ軸部と前記押圧部との間の部分に設けられ、
前記凹部または孔は、前記ネジの径方向において最も内側に位置する内側縁部と、前記径方向において最も外側に位置する外側縁部と、を有し、
前記ネジ頭部は前記ベース部の前記対向面と対向する座面を有し、前記座面は当該座面と対向する仮想平面と有効に面接触し得る座面有効領域を有し、
前記内側縁部が前記座面有効領域の外縁よりも前記径方向における内側に位置するとともに、前記外側縁部が前記ネジ頭部の外周縁よりも前記径方向における外側に位置する、部品押圧構造体。
【請求項2】
前記締結台座は、前記支持端面に、前記凹部または孔に沿って延びる切欠き部を有し、
前記支持端面の外周縁は、前記切欠き部と対応する箇所では、前記凹部または孔の前記内側縁部よりも前記径方向における内側に位置する、請求項1に記載の部品押圧構造体。
【請求項3】
前記凹部または孔は、前記対向面のうち、前記ネジ軸部と前記押圧部との間の部分にのみ設けられ、
前記切欠き部は、前記支持端面のうち前記凹部または孔に対応する箇所にのみ設けられる、請求項2に記載の部品押圧構造体。
【請求項4】
前記内側縁部は、前記ベース部の前記対向面と滑らかに繋がる曲面である、請求項1から3のいずれか一項に記載の部品押圧構造体。
【請求項5】
前記凹部または孔は、前記ネジの周方向において、90度以上の角度範囲にわたって延びる、請求項1から3のいずれか一項に記載の部品押圧構造体。
【請求項6】
前記押圧部は前記部品に接触する接触部を含み、
前記接触部は前記部品に向かって凸となる湾曲面を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の部品押圧構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品押圧構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、支持台と、電子部品であるスイッチング素子を支持台に保持すべくスイッチング素子を支持台に押し付ける支持具と、支持台に支持具を固定するビスと、を含む部品押圧構造体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1において、支持具は、ビスによって支持台上に固定されるベース部を有する弾性部材である。ビスが締め付けられる前の状態において、換言すれば、スイッチング素子が支持具によって押圧されていない状態において、ベース部はビスの軸線と直交する面に対して傾斜している。そのため、支持具のベース部を支持台に固定するべくビスを締め付ける際に、ビスの頭部がベース部に片当たりし、その結果、頭部の外周縁とベース部との間で強い擦れが生じる。その擦れによって、頭部およびベース部の一方が他方によって削られるため、金属異物が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する部品押圧構造体は、磁気部品または電子部品である部品が搭載される筐体から延びる締結台座であって、先端に支持端面を有する締結台座と、前記支持端面に固定され、前記部品を前記筐体に保持すべく前記部品を押圧する金属製のブラケットと、ネジ頭部と当該ネジ頭部から延びるネジ軸部とを有し、前記支持端面に前記ブラケットを固定する金属製のネジと、を備える部品押圧構造体であって、前記ブラケットは、前記支持端面上に配置されるベース部と、前記ベース部から前記部品に向かって延びるとともに前記部品を押圧する押圧部と、を有し、前記ベース部は、前記ネジ頭部と対向する対向面を有するとともに、前記ネジ頭部の外周縁に沿って延びる凹部または孔を有し、前記凹部または孔は、前記対向面のうち、前記ネジ軸部と前記押圧部との間の部分に設けられ、前記凹部または孔は、前記ネジの径方向において最も内側に位置する内側縁部と、前記径方向において最も外側に位置する外側縁部と、を有し、前記ネジ頭部は前記ベース部の前記対向面と対向する座面を有し、前記座面は当該座面と対向する仮想平面と有効に面接触し得る座面有効領域を有し、前記内側縁部が前記座面有効領域の外縁よりも前記径方向における内側に位置するとともに、前記外側縁部が前記ネジ頭部の外周縁よりも前記径方向における外側に位置する。
【0006】
ネジ頭部と対向するブラケットの対向面には、凹部または孔が形成されている。凹部または孔は、ネジが締め付けられる際に、ネジ頭部の外周縁がブラケットに接触することを回避する。したがって、ネジ頭部の外周縁とブラケットとの間の擦れに起因する金属異物の発生を抑制できる。
【0007】
上記部品押圧構造体について、前記締結台座は、前記支持端面に、前記凹部または孔に沿って延びる切欠き部を有し、前記支持端面の外周縁は、前記切欠き部と対応する箇所では、前記凹部または孔の前記内側縁部よりも前記径方向における内側に位置してもよい。
【0008】
凹部または孔は、例えば、ベース部の対向面にプレス加工を通じて形成され得る。その際、ベース部の対向面とは反対側の面には、凹部に対応する凸部、または孔の周縁に沿って延びる凸部が形成され得る。締結台座の支持端面に設けられた切欠き部は、ブラケットに形成される凸部が支持端面に干渉することを回避する。
【0009】
上記部品押圧構造体について、前記凹部または孔は、前記対向面のうち、前記ネジ軸部と前記押圧部との間の部分にのみ設けられ、前記切欠き部は、前記支持端面のうち前記凹部または孔に対応する箇所にのみ設けられてもよい。
【0010】
上記部品押圧構造体について、前記内側縁部は、前記ベース部の前記対向面と滑らかに繋がる曲面であってもよい。
上記部品押圧構造体について、前記凹部または孔は、前記ネジの周方向において、90度以上の角度範囲にわたって延びてもよい。
【0011】
上記部品押圧構造体について、前記押圧部は、前記部品に接触する接触部を含み、前記接触部は前記部品に向かって凸となる湾曲面を有してもよい。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、ネジが締め付けられる際の金属異物の発生が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係る部品押圧構造体の斜視図。
【
図6】
図1の部品押圧構造体において、ネジの締め付け途中の部分断面図。
【
図7】比較例の部品押圧構造体において、ネジの締め付け途中の部分断面図。
【
図8】第2実施形態に係る部品押圧構造体が有するブラケットの斜視図。
【
図9】
図8のブラケットを有する部品押圧構造体の部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、部品押圧構造体の第1実施形態を
図1~
図6にしたがって説明する。
<部品押圧構造体の構成>
図1~
図5に示すように、部品押圧構造体10は、筐体20から延びる締結台座であるボス30と、ボス30に固定される金属製のブラケット40と、ボス30にブラケット40を固定する金属製のネジ50と、を備える。筐体20には、磁気部品または電子部品である部品70が搭載される。部品70は、例えば磁気部品であるコアまたは電子部品であるMOSFETである。ボス30は、例えば筐体20の底面から延びる。ブラケット40は、部品70を筐体20に保持すべく部品70を押圧する。例えば、ブラケット40は板ばね等の弾性部材である。
【0015】
ネジ50を用いてブラケット40がボス30に固定されることによって、ブラケット40が部品70の上面を押圧する。部品70は、ブラケット40によって押圧されることにより、筐体20上の所定の位置に保持および固定される。部品70は、例えば筐体20に搭載される回路基板80上の所定の位置に搭載される。回路基板80は、例えば1つ以上のネジ90により筐体20に固定される。ブラケット40は、部品70を回路基板80又は筐体20に対して押し付ける。
【0016】
ボス30の周囲には1つ以上の位置決め突起22が配置される。位置決め突起22は、例えばブラケット40の幅方向における両側に配置される。位置決め突起22は、ブラケット40に形成された位置決め凹部41に係合することによって、ブラケット40をネジ50の周方向において位置決めする。
【0017】
<ネジの構成>
図2~
図4に示すように、ネジ50は、ネジ頭部51と、ネジ頭部51から延びるネジ軸部52と、を有する。ネジ頭部51の下面は、ブラケット40と対向しかつブラケット40と面接触する座面53である。座面53は、ネジ50の軸線と直交する平面である。ネジ軸部52は、座面53から垂直に延びており、雄ネジ部54を有する。なお、本明細書において、「ネジ」は、頭部と、雄ネジ部を備えた軸部と、を有する任意の締結具を意味し、ボルトやビス等も含み得る。
【0018】
座面53のうち、座面53と対向する仮想平面と有効に面接触し得る領域を、座面有効領域ERと呼ぶ。座面有効領域ERは、座面53のうち、座面53と対向する仮想平面と有効に面接触し得る部分の外縁で囲まれた領域である。本実施形態において、座面53は円形であり、座面有効領域ERも実質的に円形である。円形の座面有効領域ERの直径を座面有効径dwと呼ぶ。座面53は、座面有効径dwを規定する円よりも径方向における内側の部分において、ブラケット40と有効に面接触し得る。座面53のうち、座面有効領域ERよりも径方向における外側に位置する部分は、ブラケット40と実質的に接触しない。このような非接触部分は、通常、ネジ50の製造過程において必然的に生じ得る。ネジ頭部51の外周縁51aは、座面53とネジ頭部51の外周面との間の角部を含む部分であり、座面有効径dwよりも大きい外径を有する。外周縁51aは、ネジ頭部51において最も径方向外側の部分でもある。
【0019】
<ブラケットの構成>
図2~
図5に示すように、ブラケット40は、板状である。ブラケット40は、ボス30の先端面である支持端面33上に配置されるベース部42と、ベース部42から部品70に向かって延びるとともに部品70を押圧する押圧部43と、を有する。押圧部43は、ベース部42に接続されかつベース部42に対して屈曲する屈曲部43aと、部品70の上面に接触する接触部43cと、屈曲部43aから接触部43cにまで延びる延出部43bと、部品70から離れる側に接触部43cから延びる先端部43dと、を含む。屈曲部43aは、ブラケット40の板厚方向に屈曲している。接触部43cは、延出部43bと先端部43dとを滑らかに繋ぐ湾曲部である。接触部43cは、部品70に向かって凸となる湾曲面を有する。この湾曲面が部品70に接触する。湾曲面は例えば円弧面である。
【0020】
ベース部42には、ネジ50が挿通される挿通孔44が形成される。挿通孔44は、ブラケット40の板厚方向に延びている。上記位置決め凹部41は、ベース部42の外縁であってブラケット40の幅方向における両側に形成される。ブラケット40の幅方向は、ブラケット40の板厚方向及びブラケット40の長手方向の両方に直交する方向である。ブラケット40の長手方向は、ベース部42から押圧部43に向かう方向である。ベース部42は、ネジ頭部51に対向する対向面である第1の面45と、第1の面45とは反対側の第2の面46と、を有する。ネジ頭部51の座面53が第1の面45に接触する。
【0021】
ベース部42は、ネジ頭部51の外周縁51aに沿って延びる凹部47を有する。凹部47は、例えば外周縁51aに沿って円弧状に延びる。凹部47は、第1の面45のうち、ネジ軸部52と押圧部43との間の部分に設けられる。凹部47は、第1の面45が凹部47を有しないと仮定した場合において、ネジ50が締め付けられる際にネジ頭部51の外周縁51aが接触し得る第1の面45の部分のうちの少なくとも一部にわたって延びる。例えば、凹部47は、ネジ50の周方向において、90度以上の角度範囲にわたって延びる。例えば、凹部47は、ネジ50の周方向において、180度以下の角度範囲にわたって延びる。凹部47は、ネジ50の径方向において最も内側に位置する内側縁部47aと、径方向において最も外側に位置する外側縁部47bと、を有する。内側縁部47aは、ベース部42の第1の面45と滑らかに繋がる曲面である。内側縁部47aは、例えば断面円弧状をなす。外側縁部47bもまた、ベース部42の第1の面45と滑らかに繋がる曲面である。外側縁部47bは、例えば断面円弧状をなす。内側縁部47aは、ネジ50の座面有効径dwを規定する円よりも径方向における内側に位置する。換言すれば、内側縁部47aは、座面有効領域ERに接触し得るように、座面有効領域ERの外縁よりも径方向における内側に位置する。外側縁部47bは、ネジ頭部51の外周縁51aよりも径方向における外側に位置する。
【0022】
ベース部42の第2の面46には、凹部47に対応する凸部48が形成される。凸部48は、例えば、ベース部42の第1の面45にプレス加工を通じて凹部47を形成する際に形成される。凸部48は、凹部47に対応して、ネジ50の周方向に延びる。凸部48は、例えばネジ50の周方向に円弧状に延びる。
【0023】
<ボスの構成>
図2~
図4に示すように、ボス30には、ネジ50のネジ軸部52が挿入されるネジ孔31が設けられる。ネジ孔31は、ネジ50の雄ネジ部54に螺合する雌ネジ部32を有する。ボス30の支持端面33は、ボス30の先端に設けられる平面であり、ネジ孔31の軸線に対して直交する。ボス30は、支持端面33に、凹部47に沿って延びる切欠き部34を有する。切欠き部34は、例えば凹部47に沿って円弧状に延びる。支持端面33の外周縁33aは、切欠き部34と対応する箇所では、凹部47の内側縁部47aよりもネジ50の径方向における内側に位置する。換言すれば、支持端面33の外周縁33aは、切欠き部34と対応する箇所では、ベース部42の凸部48よりもネジ50の径方向における内側に位置する。したがって、凸部48は支持端面33に干渉しない。切欠き部34は、支持端面33のうち、凹部47に対応する箇所にのみ、換言すれば凸部48に対応する箇所にのみ設けられる。すなわち、切欠き部34は、ボス30の周方向において、凹部47または凸部48と実質的に同じ位置でかつ凹部47または凸部48と実質的に同じ角度範囲に亘って設けられる。「実質的に同じ位置」は、公差及び組み付け性の観点による両者の位置ずれを許容するものである。「実質的に同じ角度範囲」は、公差及び組み付け性の観点による両者の角度範囲の差を許容するものである。公差、及び組み付け性の観点から、切欠き部34の角度範囲は、凹部47または凸部48の角度範囲よりも広く設定され得る。
【0024】
[本実施形態の作用]
本実施形態の作用を説明する。
ネジ頭部51と対向するブラケット40の第1の面45には、凹部47が形成されている。凹部47の内側縁部47aがネジ50の座面有効領域ERの外縁よりも径方向における内側に位置するとともに、凹部47の外側縁部47bがネジ頭部51の外周縁51aよりも径方向における外側に位置する。
図6に示すように、ネジ50が締め付けられる前の状態においては、換言すれば、部品70がブラケット40によって押圧されていない状態においては、ベース部42はネジ50の軸線と直交する面に対して傾斜している。この状態からネジ50が締め付けられる際には、ネジ頭部51の座面53が凹部47の内側縁部47aに接触する一方、ネジ頭部51の外周縁51aはブラケット40に接触しない。詳細には、ネジ頭部51のうち座面有効領域ERよりも径方向における外側の部分が、ブラケット40に接触しない。特に、凹部47の内側縁部47aは、ベース部42の第1の面45と滑らかに繋がる曲面である。したがって、ネジ50が締め付けられる際、ネジ50の座面53とブラケット40との間の摩擦力が低減される。その結果、ネジ50とブラケット40との擦れに起因する金属異物の発生が抑制される。
【0025】
図7には、比較例として、凹部47を備えていないブラケット140を有する部品押圧構造体110を示す。この比較例では、ネジ150が締め付けられる際に、ネジ150のネジ頭部151の外周縁151aがブラケット140と線接触して、ブラケット140に対してせん断力が作用する。外周縁151aとブラケット140との間で強い擦れが生じることによって、外周縁151aおよびブラケット140の一方が他方によって削られるため、金属異物が発生する。
【0026】
[本実施形態の効果]
本実施形態の効果を説明する。
(1-1)本実施形態に係る部品押圧構造体10によれば、ブラケット40に形成される凹部47は、ネジ50が締め付けられる際に、ネジ頭部51の外周縁51aがブラケット40に接触することを回避する。したがって、ネジ頭部51の外周縁51aとブラケット40との間の擦れに起因する金属異物の発生を抑制できる。
【0027】
(1-2)
図7に示す比較例において、金属異物の発生を抑制するための対策の一つとして、ネジ頭部151とブラケット140との間に、ブラケット140に対する摩擦力を抑制し得るように構成されたワッシャを組み込むことが考えられる。しかしながら、ワッシャを組み込むためには手間およびコストがかかる。
【0028】
また、別の対策として、ブラケット140を加圧して弾性変形させながらネジ150の締め付けを行うことも考えられる。しかしながら、ブラケット140を加圧するための設備が必要となるとともに、筐体の形状および強度を加圧に適したものに変更する必要がある。
【0029】
これに対し、本実施形態に係る部品押圧構造体10によれば、上記のような対策よりも手間およびコストをかけずに、ブラケット40に凹部47を形成するといった簡単な対策によって、金属異物の発生を抑制できる。
【0030】
(1-3)ボス30の支持端面33には、凹部47に沿って延びる切欠き部34が設けられる。この切欠き部34は、ブラケット40に形成される凸部48がボス30の支持端面33に干渉することを回避する。
【0031】
(1-4)凹部47は、ベース部42の第1の面45のうち、ネジ軸部52と押圧部43との間の部分にのみ設けられる。ボス30の切欠き部34は、支持端面33のうち凹部47または凸部48に対応する箇所にのみ設けられる。したがって、支持端面33の外周縁33aは、切欠き部34が存在する箇所以外では、ベース部42の凸部48よりも径方向外側に位置することができる。そのため、支持端面33の外周縁33a全体が凸部48よりも径方向内側に位置する場合と比較して、凸部48との干渉を避けつつも、支持端面33の受圧面積を極力大きくすることができる。その結果、ブラケット40をボス30によって安定して支持できる。
【0032】
(1-5)凹部47の内側縁部47aは、ベース部42の第1の面45と滑らかに繋がる曲面である。したがって、ネジ50が締め付けられる際に、ネジ50の座面53とブラケット40との間の摩擦力が一層低減されるので、金属異物の発生を効果的に抑制できる。
【0033】
(1-6)ネジ50が締め付けられる際に、仮に金属異物が発生したとしても、金属異物はブラケット40の凹部47内に入って凹部47内に留まる。したがって、ネジ50の締め付けの際に発生した金属異物が、回路基板80上に飛散して悪影響を及ぼすことを抑制できる。
【0034】
(1-7)部品70に接触するブラケット40の接触部43cは、延出部43bと先端部43dとを滑らかに繋ぐ湾曲部であり、部品70に向かって凸となる湾曲面を有する。したがって、ブラケット40と部品70との間の摩擦力が低減される。その結果、ブラケット40と部品70との擦れに起因する金属異物の発生が抑制される。
【0035】
[第2実施形態]
以下、部品押圧構造体の第2実施形態を
図8および
図9にしたがって説明する。第1実施形態と同じ構成については詳細な説明を割愛する。
【0036】
第2実施形態では、
図8および
図9に示すように、ブラケット60のベース部42に、凹部47に代えて、ベース部42を貫通する孔61が形成される。孔61は、ブラケット60の板厚方向に延びている。孔61は、ネジ頭部51の外周縁51aに沿って延びる。孔61は、例えば外周縁51aに沿って円弧状に延びる。孔61は、ベース部42のうち、ネジ軸部52と押圧部43との間の部分に設けられる。孔61は、ベース部42が孔61を有しないと仮定した場合において、ネジ50が締め付けられる際にネジ頭部51の外周縁51aが接触し得る第1の面45の部分のうちの少なくとも一部にわたって延びる。例えば、孔61は、ネジ50の周方向において、90度以上の角度範囲にわたって延びる。例えば、孔61は、ネジ50の周方向において、180度以下の角度範囲にわたって延びる。
【0037】
孔61は、ネジ50の径方向において最も内側に位置する内側縁部61aと、径方向において最も外側に位置する外側縁部61bと、を有する。内側縁部61aは、ベース部42の第1の面45と滑らかに繋がる曲面である。内側縁部61aは、例えば断面円弧状をなす。外側縁部61bもまた、ベース部42の第1の面45と滑らかに繋がる曲面である。外側縁部61bは、例えば断面円弧状をなす。内側縁部61aは、ネジ50の座面有効径dwを規定する円よりも径方向における内側に位置する。換言すれば、内側縁部61aは、座面有効領域ERに接触し得るように、座面有効領域ERの外縁よりも径方向における内側に位置する。外側縁部61bは、ネジ頭部51の外周縁51aよりも径方向における外側に位置する。
【0038】
ベース部42の第2の面46には、孔61の周縁に沿って延びる凸部62が形成される。凸部62は、例えば、ベース部42にプレス加工を通じて孔61を形成する際に形成される。すなわち、プレス加工において、ベース部42に対し、第1の面45から第2の面46に向かって打ち抜き加工を施すと、第2の面46には孔61の周縁に沿って延びる凸部62が形成される。
【0039】
この第2実施形態によれば、(1-6)の効果を除いて第1実施形態と同様の効果が得られる。
[変更例]
上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0040】
○凹部47または孔61は、ブラケット40,60の強度が確保される場合は、ネジ50に対して押圧部43と反対側まで延びてもよい。例えば、凹部47は、360度の角度範囲にわたって延びてもよい。
【0041】
○ボス30が有する切欠き部34は、支持端面33についてブラケット40,60を保持するために十分な面積が確保できる場合は、凹部47または孔61に対応する箇所を超えて延びてもよい。例えば、切欠き部34は、凹部47または孔61が延びる角度範囲にかかわらず、360度の角度範囲にわたって延びてもよい。
【0042】
○ブラケット40に形成される凸部48,62がボス30の支持端面33に干渉するおそれがない場合は、ボス30は切欠き部34を有しなくてもよい。
○内側縁部47a,61aは、ベース部42の第1の面45と滑らかに繋がる曲面でなくてもよい。同様に、外側縁部47b,61bは、ベース部42の第1の面45と滑らかに繋がる曲面でなくてもよい。
【0043】
○ネジ頭部51の座面53は、円形に限らず、例えば多角形等の非円形であってもよい。
○部品押圧構造体10は、ブラケット40,60とネジ頭部51との間に配置されるワッシャを含んでいてもよい。この場合、ワッシャはネジ頭部51の一部とみなし得る。したがって、ワッシャの下面がネジ頭部51の座面とみなされ、ワッシャの外周縁がネジ頭部51の外周縁とみなされる。さらに、ワッシャの下面のうち当該下面と対向する仮想平面と有効に面接触し得る領域が、ネジ50の座面有効領域ERとみなされる。
【0044】
○ブラケット40,60を加圧して弾性変形させながらネジ50の締め付けを行ってもよい。
【符号の説明】
【0045】
10…部品押圧構造体、20…筐体、30…ボス、33…支持端面、33a…外周縁、34…切欠き部、40,60…ブラケット、42…ベース部、43…押圧部、43a…屈曲部、43b…延出部、43c…接触部、43d…先端部、45…対向面、47…凹部、47a…内側縁部、47b…外側縁部、50…ネジ、51…ネジ頭部、51a…外周縁、52…ネジ軸部、53…座面、61…孔、61a…内側縁部、61b…外側縁部、70…部品、ER…座面有効領域。