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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165430
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ロータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/276 20220101AFI20241121BHJP
【FI】
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081628
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐竹 康
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA06
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CA13
5H622CB05
5H622PP03
(57)【要約】
【課題】永久磁石の放熱性の低下を抑制しつつ、磁石挿入孔内に永久磁石を固定できるロータを提供する。
【解決手段】ロータ10は、磁石挿入孔11aを有する円筒状のロータコア11と、磁石挿入孔11aに挿入された永久磁石12と、磁石挿入孔11aを区画する孔区画面13と永久磁石12との間に配置された固定部材20とを備えている。固定部材20は、熱伝導率が20W/(m・K)以上の圧電材料からなる。固定部材20は、孔区画面13及び永久磁石12のそれぞれと加圧接触している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石挿入孔を有する円筒状のロータコアと、
前記磁石挿入孔に挿入された永久磁石と、
前記磁石挿入孔を区画する孔区画面と前記永久磁石との間に配置された固定部材と、
を備え、
前記固定部材は、熱伝導率が20W/(m・K)以上の圧電材料からなり、前記孔区画面及び前記永久磁石のそれぞれと加圧接触していることを特徴とするロータ。
【請求項2】
前記ロータコアの軸方向から見たとき、前記磁石挿入孔及び前記永久磁石はそれぞれ長方形状であり、
前記永久磁石は、前記永久磁石の長手方向が前記磁石挿入孔の長手方向と一致し、かつ前記永久磁石の短手方向が前記磁石挿入孔の短手方向と一致するように前記磁石挿入孔に挿入されており、
前記固定部材は、前記孔区画面のうち、前記磁石挿入孔の長手方向に沿う面と前記永久磁石の長手方向に沿う面との間に配置されるとともに、前記磁石挿入孔及び前記永久磁石の長手方向に延在している請求項1に記載のロータ。
【請求項3】
前記固定部材は、前記孔区画面のうち、前記磁石挿入孔の短手方向に沿う面と前記永久磁石の短手方向に沿う面との間にも配置されている請求項2に記載のロータ。
【請求項4】
前記永久磁石における前記固定部材と接触する面とは反対側の面は、前記孔区画面と接触している請求項1~3の何れか一項に記載のロータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の回転電機用ロータは、磁石挿入孔を有する円筒状のロータコアと、磁石挿入孔に挿入された永久磁石と、永久磁石を覆う超磁歪材料とを備えている。超磁歪材料は、テルビウム、ディスプロシウム、及び鉄からなる。特許文献1に記載の回転電機用ロータは、次のように製造される。超磁歪材料は、永久磁石とともに磁石挿入孔に挿入される。その後、永久磁石が着磁される。すると、超磁歪材料は、永久磁石の磁気によって外側に伸びるように変形する。これにより、永久磁石が磁石挿入孔内に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6311274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
永久磁石が高温になると、例えば、回転電機のトルクが低下したり、永久磁石の磁気が減磁したりするおそれがある。このため、永久磁石の熱をロータコアに放熱させる必要がある。しかしながら、特許文献1のように超磁歪材料により磁石挿入孔内に永久磁石を固定する構成では、永久磁石の熱は超磁歪材料を介してロータコアに放熱されるため、永久磁石の放熱性が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するためのロータは、磁石挿入孔を有する円筒状のロータコアと、前記磁石挿入孔に挿入された永久磁石と、前記磁石挿入孔を区画する孔区画面と前記永久磁石との間に配置された固定部材と、を備え、前記固定部材は、熱伝導率が20W/(m・K)以上の圧電材料からなり、前記孔区画面及び前記永久磁石のそれぞれと加圧接触していることを要旨とする。
【0006】
上記構成によれば、ロータコアの孔区画面と永久磁石との間に配置される固定部材は、圧電材料からなる。このため、磁石挿入孔に永久磁石及び固定部材を挿入する際には、固定部材に負方向の電圧を印加することにより固定部材を収縮させることで、孔区画面と永久磁石との間に固定部材を配置することができる。その後、固定部材に印加する電圧をゼロにすることにより、固定部材を収縮状態から収縮前の状態に戻すことで、固定部材は、孔区画面及び永久磁石のそれぞれと加圧接触する。このとき、永久磁石は、孔区画面のうち、固定部材と接触する面とは反対側の面に向かって押し付けられる。これにより、磁石挿入孔内に永久磁石が固定される。
【0007】
永久磁石の熱は、固定部材を介してロータコアに放熱される。固定部材は、熱伝導率が20W/(m・K)以上である圧電材料からなる。固定部材の熱伝導率は、テルビウム、ディスプロシウム、及び鉄からなる超磁歪材料の熱伝導率である13W/(m・K)よりも高い。このため、永久磁石の熱が超磁歪材料を介してロータコアに放熱される場合と比較して、永久磁石の放熱性の低下が抑制される。
【0008】
固定部材と永久磁石とは加圧接触しているため、固定部材と永久磁石との間の接触熱抵抗が低減される。このため、永久磁石の熱は、固定部材に伝わりやすい。また、固定部材と孔区画面とは加圧接触しているため、固定部材と孔区画面との間の接触熱抵抗が低減される。このため、永久磁石から固定部材に伝わった熱は、ロータコアに伝わりやすい。
【0009】
よって、永久磁石の放熱性の低下を抑制しつつ、磁石挿入孔内に永久磁石を固定できる。
上記ロータにおいて、前記ロータコアの軸方向から見たとき、前記磁石挿入孔及び前記永久磁石はそれぞれ長方形状であり、前記永久磁石は、前記永久磁石の長手方向が前記磁石挿入孔の長手方向と一致し、かつ前記永久磁石の短手方向が前記磁石挿入孔の短手方向と一致するように前記磁石挿入孔に挿入されており、前記固定部材は、前記孔区画面のうち、前記磁石挿入孔の長手方向に沿う面と前記永久磁石の長手方向に沿う面との間に配置されるとともに、前記磁石挿入孔及び前記永久磁石の長手方向に延在していてもよい。
【0010】
上記構成によれば、固定部材は、孔区画面のうち、磁石挿入孔の長手方向に沿う面と永久磁石の長手方向に沿う面との間に配置されている。固定部材は、磁石挿入孔及び永久磁石の長手方向に延在している。このため、固定部材が、孔区画面のうち、磁石挿入孔の短手方向に沿う面と永久磁石の短手方向に沿う面との間にのみ配置されている場合と比較して、固定部材と孔区画面との接触面積及び固定部材と永久磁石との接触面積が大きくなる。したがって、永久磁石の放熱性が向上する。
【0011】
上記ロータにおいて、前記固定部材は、前記孔区画面のうち、前記磁石挿入孔の短手方向に沿う面と前記永久磁石の短手方向に沿う面との間にも配置されていてもよい。
上記構成によれば、固定部材は、孔区画面のうち、磁石挿入孔の短手方向に沿う面と永久磁石の短手方向に沿う面との間にも配置されている。このため、永久磁石の熱は、永久磁石の長手方向に沿う面に加えて永久磁石の短手方向に沿う面からも固定部材を介してロータコアに放熱される。したがって、永久磁石の放熱性が向上する。
【0012】
上記ロータにおいて、前記永久磁石における前記固定部材と接触する面とは反対側の面は、前記孔区画面と接触していてもよい。
上記構成によれば、永久磁石における固定部材と接触する面とは反対側の面は、孔区画面と接触している。つまり、固定部材は、永久磁石の片側にのみ配置されている。このため、永久磁石における固定部材と接触する面とは反対側の面では、永久磁石の熱は、固定部材を介さずにロータコアに直接放熱される。上述したように、永久磁石は、孔区画面のうち、固定部材と接触する面とは反対側の面に向かって押し付けられている。このため、永久磁石における固定部材と接触する面とは反対側の面は、孔区画面と加圧接触することにより、永久磁石における固定部材と接触する面とは反対側の面と孔区画面との間の接触熱抵抗が低減されている。したがって、永久磁石の熱はロータコアに伝わりやすい。よって、固定部材が永久磁石の両側に配置されている場合と比較して、永久磁石の放熱性が向上する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、永久磁石の放熱性の低下を抑制しつつ、磁石挿入孔内に永久磁石を固定できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態におけるロータを示す平面図である。
図2図2は、実施形態におけるロータの一部を示す拡大平面図である。
図3図3は、実施形態におけるロータの製造方法を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、ロータを具体化した一実施形態を図1図3にしたがって説明する。なお、本明細書における「加圧接触」とは、面圧がかかった状態で接触していることを指す。
<ロータの構成>
図1に示すように、ロータ10は、円筒状のロータコア11と、複数の永久磁石12とを備えている。ロータコア11は、複数の磁石挿入孔11aを有している。複数の磁石挿入孔11aは、ロータコア11の周方向において等間隔に配置されている。各磁石挿入孔11aは、ロータコア11を軸方向に貫通している。各永久磁石12は、磁石挿入孔11aに挿入されている。したがって、複数の永久磁石12は、ロータコア11の周方向において等間隔に配置されている。各永久磁石12は、ロータコア11の軸方向に延在している。ロータ10は、磁石挿入孔11aを区画する孔区画面13と永久磁石12との間に配置された固定部材20を備えている。固定部材20は、ロータコア11の軸方向に延在している。固定部材20の詳細については後述する。
【0016】
図2に示すように、本実施形態の磁石挿入孔11aは、ロータコア11の軸方向から見たとき長方形状である。孔区画面13は、第1~第4区画面13a~13dを有している。第1区画面13a及び第2区画面13bはそれぞれ、磁石挿入孔11aの短手方向に沿う面である。第1区画面13a及び第2区画面13bは、磁石挿入孔11aの長手方向において互いに向かい合っている。第3区画面13c及び第4区画面13dはそれぞれ、磁石挿入孔11aの長手方向に沿う面である。第3区画面13c及び第4区画面13dは、磁石挿入孔11aの短手方向において互いに向かい合っている。
【0017】
本実施形態の永久磁石12は、ロータコア11の軸方向から見たとき長方形状である。永久磁石12の長手方向の寸法は、磁石挿入孔11aの長手方向の寸法よりも小さい。永久磁石12の短手方向の寸法は、磁石挿入孔11aの短手方向の寸法よりも小さい。
【0018】
永久磁石12は、第1~第4面12a~12dを有している。第1面12a及び第2面12bは、永久磁石12の短手方向に沿う面である。第2面12bは、永久磁石12の長手方向において第1面12aの反対側に位置している。第3面12c及び第4面12dは、永久磁石12の長手方向に沿う面である。第4面12dは、永久磁石12の短手方向において第3面12cの反対側に位置している。
【0019】
永久磁石12は、永久磁石12の長手方向が磁石挿入孔11aの長手方向と一致し、かつ永久磁石12の短手方向が磁石挿入孔11aの短手方向と一致するように磁石挿入孔11aに挿入されている。永久磁石12の第1面12aは、孔区画面13の第1区画面13a側に位置するとともに、永久磁石12の第2面12bは、孔区画面13の第2区画面13b側に位置している。永久磁石12の第3面12cは、孔区画面13の第3区画面13c側に位置するとともに、永久磁石12の第4面12dは、孔区画面13の第4区画面13d側に位置している。
【0020】
<固定部材>
本実施形態のロータ10は、固定部材20として第1~第3固定部材21~23を備えている。
【0021】
第1固定部材21は、孔区画面13の第1区画面13aと永久磁石12の第1面12aとの間に配置されている。つまり、本実施形態では、固定部材20は、孔区画面13のうち、磁石挿入孔11aの短手方向に沿う面と永久磁石12の短手方向に沿う面との間に配置されている。
【0022】
第1固定部材21は、ロータコア11の軸方向から見たとき、長方形状である。第1固定部材21の長手方向は、磁石挿入孔11a及び永久磁石12の短手方向と一致している。第1固定部材21は、磁石挿入孔11a及び永久磁石12の短手方向に延在している。第1固定部材21の短手方向は、磁石挿入孔11a及び永久磁石12の長手方向と一致している。第1固定部材21は、短手方向の端面として第1端面21a及び第2端面21bを有している。第1固定部材21の第1端面21aは、孔区画面13の第1区画面13aと対向している。第1固定部材21の第2端面21bは、永久磁石12の第1面12aと対向している。
【0023】
第2固定部材22は、孔区画面13の第2区画面13bと永久磁石12の第2面12bとの間に配置されている。本実施形態では、固定部材20は、磁石挿入孔11a及び永久磁石12の長手方向において永久磁石12の両側に配置されている。
【0024】
第2固定部材22は、ロータコア11の軸方向から見たとき、長方形状である。第2固定部材22の長手方向は、磁石挿入孔11a及び永久磁石12の短手方向と一致している。第1固定部材21は、磁石挿入孔11a及び永久磁石12の短手方向に延在している。第2固定部材22の短手方向は、磁石挿入孔11a及び永久磁石12の長手方向と一致している。第2固定部材22は、短手方向の端面として第1端面22a及び第2端面22bを有している。第2固定部材22の第1端面22aは、孔区画面13の第2区画面13bと対向している。第2固定部材22の第2端面22bは、永久磁石12の第2面12bと対向している。
【0025】
第3固定部材23は、孔区画面13の第3区画面13cと永久磁石12の第3面12cとの間に配置されている。つまり、本実施形態では、固定部材20は、孔区画面13のうち、磁石挿入孔11aの長手方向に沿う面と永久磁石12の長手方向に沿う面との間に配置されている。
【0026】
第3固定部材23は、ロータコア11の軸方向から見たとき、長方形状である。第3固定部材23の長手方向の寸法は、第1固定部材21の長手方向の寸法及び第2固定部材22の長手方向の寸法のそれぞれよりも大きい。第3固定部材23の長手方向は、磁石挿入孔11a及び永久磁石12の長手方向と一致している。第3固定部材23は、磁石挿入孔11a及び永久磁石12の長手方向に延在している。第3固定部材23の短手方向は、磁石挿入孔11a及び永久磁石12の短手方向と一致している。第3固定部材23は、短手方向の端面として第1端面23a及び第2端面23bを有している。第3固定部材23の第1端面23aは、孔区画面13の第3区画面13cと対向している。第3固定部材23の第2端面23bは、永久磁石12の第3面12cと対向している。
【0027】
固定部材20は、孔区画面13の第4区画面13dと永久磁石12の第4面12dとの間には配置されていない。つまり、本実施形態では、固定部材20は、磁石挿入孔11a及び永久磁石12の短手方向において永久磁石12の片側にのみ配置されている。永久磁石12の第4面12dは、孔区画面13の第4区画面13dと対向している。
【0028】
第1~第3固定部材21~23はそれぞれ、熱伝導率が20W/(m・K)以上の圧電材料からなる。本実施形態の第1~第3固定部材21~23はそれぞれ、窒化アルミニウムからなる。窒化アルミニウムの熱伝導率は、約200W/(m・K)である。圧電材料は、電圧が印加されると伸縮する性質を有している。詳しくは、圧電材料は、正方向の電圧が印加されると膨張する。圧電材料は、負方向の電圧が印加されると収縮する。
【0029】
電圧が印加されていないときの第1固定部材21の短手方向の寸法は、磁石挿入孔11aの長手方向の寸法から永久磁石12の長手方向の寸法を差し引いて2で割った寸法よりも僅かに大きい寸法に設定されている。また、電圧が印加されていないときの第2固定部材22の短手方向の寸法は、磁石挿入孔11aの長手方向の寸法から永久磁石12の長手方向の寸法を差し引いて2で割った寸法よりも僅かに大きい寸法に設定されている。
【0030】
このため、第1固定部材21が孔区画面13の第1区画面13aと永久磁石12の第1面12aとの間に配置されている状態において、第1固定部材21は、孔区画面13及び永久磁石12のそれぞれと加圧接触している。詳しくは、第1固定部材21の第1端面21aは、孔区画面13の第1区画面13aと加圧接触している。第1固定部材21の第2端面21bは、永久磁石12の第1面12aと加圧接触している。これにより、永久磁石12は、孔区画面13のうち、第1固定部材21と接触する面である第1区画面13aとは反対側の面である第2区画面13bに向かって押し付けられている。
【0031】
また、第2固定部材22が孔区画面13の第2区画面13bと永久磁石12の第2面12bとの間に配置されている状態において、第2固定部材22は、孔区画面13及び永久磁石12のそれぞれと加圧接触している。詳しくは、第2固定部材22の第1端面22aは、孔区画面13の第2区画面13bと加圧接触している。第2固定部材22の第2端面22bは、永久磁石12の第2面12bと加圧接触している。これにより、永久磁石12は、孔区画面13のうち、第2固定部材22と接触する面である第2区画面13bとは反対側の面である第1区画面13aに向かって押し付けられている。
【0032】
電圧が印加されていないときの第3固定部材23の短手方向の寸法は、磁石挿入孔11aの短手方向の寸法から永久磁石12の短手方向を差し引いた寸法よりも僅かに大きい寸法に設定されている。このため、第3固定部材23が孔区画面13の第3区画面13cと永久磁石12の第3面12cとの間に配置されている状態において、第3固定部材23は、孔区画面13及び永久磁石12のそれぞれと加圧接触している。詳しくは、第3固定部材23の第1端面23aは、孔区画面13の第3区画面13cと加圧接触している。第3固定部材23の第2端面23bは、永久磁石12の第3面12cと加圧接触している。これにより、永久磁石12は、孔区画面13のうち、第3固定部材23と接触する面である第3区画面13cとは反対側の面である第4区画面13dに向かって押し付けられている。
【0033】
本実施形態では、永久磁石12の第4面12dは、永久磁石12における第3固定部材23と接触する面とは反対側の面である。永久磁石12の第4面12dは、孔区画面13の第4区画面13dと加圧接触している。
【0034】
このように、第1~第3固定部材21~23が孔区画面13及び永久磁石12のそれぞれと加圧接触することにより、永久磁石12は、孔区画面13のうち、第1~第3固定部材21~23と接触する面とは反対側の面に向かって押し付けられる。これにより、磁石挿入孔11a内に永久磁石12が固定される。
【0035】
[本実施形態の作用]
本実施形態の作用について、ロータ10の製造方法とともに説明する。
まず、永久磁石12及び第1~第3固定部材21~23を磁石挿入孔11aに挿入する。このとき、電源装置30を用いて第1~第3固定部材21~23に負方向の電圧を印加することにより、第1~第3固定部材21~23を収縮させた状態とする。詳しくは、第1~第3固定部材21~23の第1端面21a~23aに電源装置30の一方の電極31を接続するとともに、第1~第3固定部材21~23の第2端面21b~23bに電源装置30の他方の電極31を接続する。そして、第1~第3固定部材21~23に負方向の電圧を印加する。これにより、第1~第3固定部材21~23は、短手方向に収縮するため、孔区画面13と永久磁石12との間に配置可能になる。第1固定部材21は、孔区画面13の第1区画面13aと永久磁石12の第1面12aとの間に配置される。第2固定部材22は、孔区画面13の第2区画面13bと永久磁石12の第2面12bとの間に配置される。第3固定部材23は、孔区画面13の第3区画面13cと永久磁石12の第3面12cとの間に配置される。
【0036】
そして、第1~第3固定部材21~23に対する電圧の印加を停止する。つまり、第1~第3固定部材21~23に印加する電圧をゼロにする。これにより、第1~第3固定部材21~23は、収縮状態から元の状態に戻る。つまり、第1~第3固定部材21~23は、短手方向に膨張する。
【0037】
第1固定部材21の短手方向の寸法が孔区画面13の第1区画面13aと永久磁石12の第1面12aとの隙間よりも大きくなると、第1固定部材21は、孔区画面13の第1区画面13a及び永久磁石12の第1面12aのそれぞれと加圧接触する。第2固定部材22の短手方向の寸法が孔区画面13の第2区画面13bと永久磁石12の第2面12bとの隙間よりも大きくなると、第2固定部材22は、孔区画面13の第2区画面13b及び永久磁石12の第2面12bのそれぞれと加圧接触する。これにより、永久磁石12は、第1固定部材21によって第2区画面13bに向かって押し付けられるとともに、第2固定部材22によって第1区画面13aに向かって押し付けられるため、磁石挿入孔11a内に固定される。
【0038】
また、第3固定部材23の短手方向の寸法が孔区画面13の第3区画面13cと永久磁石12の第3面12cとの隙間よりも大きくなると、第3固定部材23は、孔区画面13の第3区画面13c及び永久磁石12の第3面12cと加圧接触する。これにより、永久磁石12は、第3固定部材23によって第4区画面13dに向かって押し付けられるため、第4面12dが孔区画面13の第4区画面13dと加圧接触するとともに磁石挿入孔11a内に固定される。
【0039】
[本実施形態の効果]
本実施形態の効果を説明する。
(1)ロータ10は、磁石挿入孔11aを区画する孔区画面13と永久磁石12との間に配置された固定部材20を備えている。固定部材20は、圧電材料からなる。このため、磁石挿入孔11aに永久磁石12及び固定部材20を挿入する際には、固定部材20に負方向の電圧を印加することにより固定部材20を収縮させることで、孔区画面13と永久磁石12との間に固定部材20を配置することができる。その後、固定部材20に印加する電圧をゼロにすることにより、固定部材20を収縮状態から収縮前の状態に戻すことで、固定部材20は、孔区画面13及び永久磁石12のそれぞれと加圧接触する。このとき、永久磁石12は、孔区画面13のうち、固定部材20と接触する面とは反対側の面に向かって押し付けられる。これにより、磁石挿入孔11a内に永久磁石12が固定される。
【0040】
永久磁石12の熱は、固定部材20を介してロータコア11に放熱される。固定部材20は、熱伝導率が20W/(m・K)以上である圧電材料からなる。固定部材20の熱伝導率は、テルビウム、ディスプロシウム、及び鉄からなる超磁歪材料の熱伝導率である13W/(m・K)よりも高い。このため、永久磁石12の熱が超磁歪材料を介してロータコア11に放熱される場合と比較して、永久磁石12の放熱性の低下が抑制される。
【0041】
固定部材20と永久磁石12とは加圧接触しているため、固定部材20と永久磁石12との間の接触熱抵抗が低減される。このため、永久磁石12の熱は、固定部材20に伝わりやすい。また、固定部材20と孔区画面13とは加圧接触しているため、固定部材20と孔区画面13との間の接触熱抵抗が低減される。このため、永久磁石12から固定部材20に伝わった熱は、ロータコア11に伝わりやすい。
【0042】
よって、永久磁石12の放熱性の低下を抑制しつつ、磁石挿入孔11a内に永久磁石12を固定できる。
(2)ロータ10は、第3区画面13cと永久磁石12の第3面12cとの間に配置されるとともに、磁石挿入孔11a及び永久磁石12の長手方向に延在する第3固定部材23を備えている。つまり、固定部材20は、孔区画面13のうち、磁石挿入孔11aの長手方向に沿う面と永久磁石12の長手方向に沿う面との間に配置されている。このため、固定部材20が、孔区画面13のうち、磁石挿入孔11aの短手方向に沿う面と永久磁石12の短手方向に沿う面との間にのみ配置されている場合と比較して、固定部材20と孔区画面13との接触面積及び固定部材20と永久磁石12との接触面積が大きくなる。したがって、永久磁石12の放熱性が向上する。
【0043】
(3)ロータ10は、第1区画面13aと永久磁石12の第1面12aとの間に配置される第1固定部材21と、第2区画面13bと永久磁石12の第2面12bとの間に配置される第2固定部材22を備えている。つまり、固定部材20は、孔区画面13のうち、磁石挿入孔11aの短手方向に沿う面と永久磁石12の短手方向に沿う面との間にも配置されている。このため、永久磁石12の熱は、永久磁石12の長手方向に沿う面に加えて永久磁石12の短手方向に沿う面からも固定部材20を介してロータコア11に放熱される。したがって、永久磁石12の放熱性が向上する。
【0044】
(4)永久磁石12の第3面12cは、第3固定部材23と接触している。永久磁石12の第4面12dは、孔区画面13と接触している。つまり、固定部材20は、磁石挿入孔11a及び永久磁石12の短手方向において永久磁石12の片側にのみ配置されている。このため、永久磁石12の第4面12dでは、永久磁石12の熱は、固定部材20を介さずにロータコア11に直接放熱される。永久磁石12は、第3固定部材23によって第4区画面13dに向かって押し付けられている。このため、永久磁石12の第4面12dは、第4区画面13dと加圧接触することにより、永久磁石12の第4面12dと第4区画面13dとの間の接触熱抵抗が低減されている。したがって、永久磁石12の熱はロータコア11に伝わりやすい。よって、固定部材20が磁石挿入孔11a及び永久磁石12の短手方向において永久磁石12の両側に配置されている場合と比較して、永久磁石12の放熱性が向上する。
【0045】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施できる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0046】
○ 固定部材20の材料は、窒化アルミニウムに限定されない。固定部材20の材料は、熱伝導率が20W/(m・K)以上の圧電材料であればよい。熱伝導率が20W/(m・K)以上の圧電材料としては、例えば、ニオブ酸リチウム、酸化亜鉛、ガリウム砒素などが挙げられる。ニオブ酸リチウムの熱伝導率は38W/(m・K)である。酸化亜鉛の熱伝導率は25W/(m・K)である。ガリウム砒素の熱伝導率は55W/(m・K)である。
【0047】
○ 磁石挿入孔11a、永久磁石12、及び固定部材20の形状は、適宜変更されてもよい。
○ 第1~第3固定部材21~23は、一体形成されていてもよい。つまり、第1~第3固定部材21~23で1つの固定部材20を構成していてもよい。この場合、電源装置30は1つでよい。
【0048】
○ 磁石挿入孔11a内に配置される固定部材20の数及び磁石挿入孔11a内における固定部材20の位置はそれぞれ、適宜変更されてもよい。
例えば、ロータ10は、第1~第3固定部材21~23に加えて、孔区画面13の第4区画面13dと永久磁石12の第4面12dとの間に配置される固定部材20を備えていてもよい。つまり、固定部材20は、永久磁石12を取り囲むように配置されていてもよい。
【0049】
例えば、ロータ10は、第1~第3固定部材21~23のうち、1つの固定部材20のみを有していてもよいし、任意の組み合わせの2つの固定部材20を有していてもよい。なお、固定部材20が磁石挿入孔11a及び永久磁石12の長手方向において永久磁石12の片側にのみ配置される場合、永久磁石12における固定部材20と接触する面とは反対側の面は、孔区画面13と加圧接触する。
【符号の説明】
【0050】
10…ロータ、11…ロータコア、11a…磁石挿入孔、12…永久磁石、13…孔区画面、20…固定部材。
図1
図2
図3