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  • 特開-水中用熱交換装置及び熱交換システム 図1
  • 特開-水中用熱交換装置及び熱交換システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016544
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】水中用熱交換装置及び熱交換システム
(51)【国際特許分類】
   F24V 50/00 20180101AFI20240131BHJP
【FI】
F24V50/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118757
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】500575972
【氏名又は名称】株式会社リビエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】今 喜代美
(72)【発明者】
【氏名】今 修一郎
(72)【発明者】
【氏名】今 祐治郎
(57)【要約】
【課題】 水中に適した熱交換器の提供と課題とする
【解決手段】本発明は、水中熱交換部211と側壁部4と水流発生部3を備え、
前記水中熱交換部211は、管21を有し、前記管21を曲げることで中央に水流通過空間となる中空部22を作ったものであり、前記管21は、熱媒体を流されることで熱交換経路24となるものであり、前記側壁部4は、前記水中熱交換部211を外から囲んでおり、前記水流発生部3は、前記側壁部4内に水流を発生させる水中用熱交換装置2とすることで課題を解決した。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中熱交換部と側壁部と水流発生部を備え、
前記水中熱交換部は、
管を有し、
前記管を曲げることで中央に水流通過空間となる中空部を作ったものであり、
前記管は、熱媒体を流されることで熱媒体経路となるものであり、
前記側壁部は、前記水中熱交換部を外から囲んでおり、
前記水流発生部は、前記側壁部内に水流を発生させる
水中用熱交換装置。
【請求項2】
さらに、制御部を備え、
前記水中熱交換部は、独立した複数の熱交換経路を備えており、
前記熱交換経路の各々は、独立した熱媒体循環装置を備えており、
前記制御部は、各々熱媒体循環装置の駆動を制御している
請求項1記載の水中用熱交換装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水中用熱交換装置を水中に沈め、
地上熱交換部を備え、
前記地上熱交換部は、前記水中熱交換部を流通した前記熱媒体と熱交換するものであることを特徴とする熱交換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海などを熱源として利用するための水中用熱交換装置及び熱交換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1のように、海水熱を利用するための装置があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-111201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、海水特有の問題、たとえば、海中生物の付着などの問題があり、海中に投入される熱交換装置の開発は遅れていた。
水、特に、海水を熱源とする水中に適した熱交換器の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題に鑑みて、本発明は、水中熱交換部と側壁部と水流発生部を備え、前記水中熱交換部は、管を有し、前記管を曲げることで中央に水流通過空間となる中空部を作ったものであり、前記管は、熱媒体を流されることで熱媒体経路となるものであり、前記側壁部は、前記水中熱交換部を外から囲んでおり、前記水流発生部は、前記側壁部内に水流を発生させる水中用熱交換装置とすることで課題を解決した。
【発明の効果】
【0006】
複数の冷熱源や温熱源を1つの熱交換器にまとめることで、利用する熱媒体や熱源を簡単に切り替え利用できるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は熱交換システムの全体図である。
図2図2は水中用熱交換装置2の説明図であり、図2(A)は水中用熱交換装置2の斜視図であり、図2(B)は図2(A)に付したA-A間の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0009】
以下の実施例は、海水を熱源とする例に関する。また、本明細書で熱源という場合、温熱源と冷熱源の双方を意味する。熱資源も同様であり、熱資源は温熱資源と冷熱資源の双方を意味する。例えば、海水は、冬季に温熱源となり得るし、夏季には冷熱源となり得る。本明細書では、どちらの場合も単に熱源ということとする。
【0010】
(実施例)
図1は熱交換システム1の全体図である。熱交換システム1は、大きく分けて水中熱交換部211と地上熱交換部15で構成される。水中熱交換部211と地上熱交換部15は、水中熱交換部211で熱交換された熱媒体を地上熱交換部15へと運ぶ熱回収管11と熱交換を終えて地上熱交換部15から熱媒体を戻す戻し管12で繋がれている。水中熱交換部211の詳細な構造は後述するが、水中熱交換部211は、モータで駆動するプロペラから成る水流発生部3が設けられており、海水と熱媒体の熱交換を促進している。
【0011】
(熱媒体)
熱回収管11と戻し管12を循環する熱媒体は、不凍液などであり、万が一漏れても環境への影響が少ない材料が選ばれている。海水を直接汲み上げる従来の装置では、汲み上げ管内部にゴミが詰まったり、腐食したり、場合によっては塩分が析出して塞ぐなどメンテナンスのコストが高くなる。実施例の熱媒体は、腐食性がなく安全性の高い不凍液が用いられているため、熱回収管11、戻し管12、水中熱交換部211などの熱媒体と接触する部材の内部にトラブルが起きにくい。
【0012】
(施設)
図1に図示された実施例の施設8は、比較的海岸から近い場所に建設された大きなホテルなどを想定している。施設8は、簡単に海水を熱資源として利用できる立地にあるなら、どのような施設8であってもよい。
施設8は、大きくなると、それに比例して大量の熱資源を必要とする。海水は、季節の影響を受けやすく、一定の水温を保つ地下水と比較して熱資源の質としては劣るものの、熱資源の量は無限に近い。熱資源を大量に必要とする施設8にとって、海水は利用価値の高い熱資源となり得る。
また、大量の熱資源を必要とする、道路や駐車場などの施設8の消雪においもて、海水の利用価値は高い。
特に、寒冷地では冬季に大量の熱資源を求めることが難しい。実施例の水中用熱交換装置2は、外気温が0℃以下となるような寒冷地であっても、海底付近の海水が0℃以下とならないという特性に注目し、外気温より高い無限に近く存在する海水を熱資源として利用できる。
【0013】
(地上熱交換部)
実施例の地上熱交換部15は、ヒートポンプとなっている。海水の熱を運ぶ熱媒体は、熱回収管11で地上熱交換部15(ヒートポンプ)まで運ばれ、施設8内を巡る別の熱媒体を所定の温度まで加熱するための熱源として使用される。施設8内には、熱利用機器81があり、施設内を巡る熱媒体を通して、最終的に熱が消費される。さらに、不凍液などの海水の熱を運ぶ熱媒体を施設内の熱利用機器81に直接送り、そこで熱交換を行ってもよい。特に夏季など、気温が非常に高いとき、海底近くの海水温は低く、水中用熱交換装置2で冷却された熱媒体をそのまま冷房として使うことも可能となる。
【0014】
(制御部)
制御部5は、熱回収管11と戻し管12内の熱媒体を循環させるポンプP(熱媒体循環装置)、水中用熱交換装置2及び水流発生部3、地上熱交換部15、熱利用機器81などと接続されており、流路の切り替えやモータなどの駆動を制御する。
【0015】
(熱回収管と戻し管)
熱回収管11は海水から冷熱または温熱を受け取り、地上熱交換部15まで熱媒体を運ぶ管である。熱回収管11から熱が逃げないように、熱回収管11は断熱材で包まれていることが好ましい。他方、戻し管12は、断熱材で包まれている必要はなく、地上から水中用熱交換装置2まで熱媒体が戻る間に、海水から冷熱または温熱を受け取ることができる。
また、水中用熱交換装置2をメンテナンスのため地上に引き上げることがあるため、熱回収管11と戻し管12は、柔軟な材料で作られていることが好ましい。
【0016】
(水中熱交換部)
図2は水中用熱交換装置2の説明図であり、図2(A)は水中用熱交換装置2の斜視図であり、図2(B)は図2(A)に付したA-A間の断面図である。図2は概念図であり、説明のため部材の縮尺は実際のものと異なる。また、熱交換経路24に接続される熱回収管11と戻し管12は図示されていないなど、一部の部材は省略されている。
水中用熱交換装置2は、水中熱交換部211を有しており、水中熱交換部211は管21をコイル状に曲げたものである。管21はその一端を図示していない戻し管12に接続され、その他端に熱回収管11が接続され、内部に地上に設置されたポンプP(熱媒体循環装置)から送られる熱媒体が流されている。
コイル状に形成された水中熱交換部211は、コイルを上下に貫く中空部22を有している。
実施例の水中熱交換部211は、上から観て円形となるコイルのように形成したが、中空部22ができるのであれば、上から観て四角形になるように管21を曲げたものでもよい。上から観た水中熱交換部211形状は、適宜である。
水中熱交換部211を構成する金属材料は、ステンレスやチタンなど耐腐食性の高いものが好ましい。
【0017】
(側壁部)
水中熱交換部211は、側壁部4で周囲を覆われている。側壁部4はいくつかの役割を果たす。側壁部4は基礎部7に支えられている。側壁部4は、水中熱交換部211を図示していない支持具で動かぬように支える支持する機能を有している。
また、側壁部4は、水中熱交換部211の保護を兼ねた部材である。側壁部4は、水中熱交換部211を周囲から覆っている。海中に水中用熱交換装置2を設置しようとする際横倒しになったとしても、傷つきやすく曲がりやすい水中熱交換部211が海底と直接接触することを防止する。
側壁部4と水中熱交換部211は直接接触しておらず、その間に隙間23が設けられている。そのため、設置時に側壁部4が岩と当たるなどして凹んでも、水中熱交換部211に影響が及ぶことはない。
【0018】
(水流発生部)
水流発生部3より下に記載された矢印は、代表的な水流を表している。水流発生部3は、たとえば、プロペラであり、水中熱交換部211の直上に設けられており、図示しない支持具により側壁部4に取り付けられている。水流発生部3(プロペラ)が回転すると、水中熱交換部211に向かって水流が発生する。その水流は、大きく開いた中空部22に流れ込み、図2(B)で図示されているように、水中熱交換部211を構成する管21と管21の間を通って、中空部22から隙間23へと流れ込む。
実施例の水流発生部3(プロペラ)の径は、側壁部4とほぼ同径かやや小さい。水流発生部3(プロペラ)は、その外周側から発生する水流がもっとも速く中央に行くに従い緩やかになる。そのため、側壁部4と水中熱交換部211との間にできた隙間23に強い水流が当たり、隙間23内に強い水流が生じる。また、中空部22にも水中熱交換部211に沿って水流が生じる。隙間23と中空部22内で水流速度差のある水流がコイル状の水中熱交換部211に当たることで、水流が管21と管21の間を通り熱交換が促される。また、水流が乱れることで乱流が生じ、熱交換が促される。
【0019】
水流発生部3(プロペラ)は、回転数を上げることで水流を強くし、熱交換効率を上げることができる。大量の熱資源を必要とする場合、熱媒体の循環速度を向上させると同時に、水流発生部3(プロペラ)の回転数を上げることで対応することができる。
【0020】
(変形例)
上述の実施例の水流発生部3(プロペラ)の径は、側壁部4とほぼ同径かやや小さいものとしたが、変形例の水流発生部3(プロペラ)の径は、中空部22と同径かそれより小さいものとしてもよい。水流発生部3による水流は、少なくとも側壁部内に発生させればよく、中空部22内にのみ発生させてもよい。
水流の流れやメンテナンス性を損ねない程度に、中空部22内に水中熱交換部211へと水流の向きを変える小片を設置してもよい。
実施例では、水中熱交換部211は平面視で円形であり、側壁部4の形状もそれに合わせて円形となっている。本発明の水中熱交換部211は、平面視で円形でなくてもよく、たとえば、矩形でもよい。水流発生部3は、方形に水流を流せる遠心羽根車などでもよく、適宜である。
吸引タイプの水流発生部3を側壁部4の海底側に設けてもよい。
【0021】
(水中用熱交換装置の設置位置と水流発生部の関係)
海水を温熱源や冷熱源として利用するにはかなり深い海底に水中用熱交換装置2が設置される必要がある。海水の表層は、気温の影響を受けやすいため、好ましくない。十分深い海底付近の海水は夏季には冷たく、冬季には温かい(海水は0℃以下となることはなく、数度を保つ)ため、設置位置としてふさわしい。海水は、特に外気が0℃以下となる寒冷地の熱資源として、利用価値が高い。
十分深い海底付近の海水は、波風の影響を受けないし、潮の流れも表層に比べて緩やかである。実施例は、熱交換を促すため水流発生部3(プロペラ)を設けた。
さらに、海水が全く動かなくなったとき、水流発生部3(プロペラ)がないと、対流による熱交換を期待する他なくなり、著しく熱交換効率が下がる。実施例の水中用熱交換装置2は、十分広い排水間隙25を設けて設置されている。そのため水流発生部3(プロペラ)で生じた排水は、勢いを保ったまま水中用熱交換装置2から排水される。熱交換を終えた海水は、水中用熱交換装置2から遠くへと送り出される。これにより、常に新鮮な海水が、水流発生部3(プロペラ)により水中熱交換部211に送られる。
【0022】
(網)
網6は、側壁部4の真下に取り付けられ、海草などのゴミを捕獲する。水流により運ばれた海草片などは、水中用熱交換装置2から排水された後、再び水流発生部3(プロペラ)により舞い上がり、中空部22内を流れることがあり得る。海草片が水中用熱交換装置2の管21に絡みついたりすると、熱交換効率が減るため、海草片などのゴミが水中用熱交換装置2に舞い戻らないようにしている。
【0023】
(メンテナンス)
水中用熱交換装置2は、海底や湖底などで使われるため、メンテナンスが定期的に必要となる。特に海底に設置した場合、フジツボや貝類などの付着生物が水中用熱交換装置2に付着し、熱交換効率を著しく妨げることが起こる。
実施例の水中用熱交換装置2は、前述したように非常にシンプルであり、分解も容易である。さらに、水中熱交換部211は、中空部22があるので付着生物を取り除くことが非常に容易にできる。
水中熱交換部211を構成する管21にフィンなどを設けることで熱交換効率を更に向上できるが、メンテナンスを妨げないようなフィンの配置にすることが好ましい。また、メンテナンス上、フィンは、簡単に曲がるようなものではなく、付着生物を除去するため強い水流を当てるなどしても変形しないような材料で作られていることが好ましい。
【0024】
(熱交換経路)
実施例の水中用熱交換装置2は、水中熱交換部211を構成する熱交換経路24が複数セット設けられている。図2(B)の熱交換経路24は、第1熱交換経路241、第2熱交換経路242および第3熱交換経路243の3セットある。これらの熱交換経路(241~243)は、各々独立した熱媒体経路と接続されており、地上熱交換部15と接続されている。
これは、水中用熱交換装置2が故障した時、海底に設置されているため簡単に修理ができない。実施例は、熱交換経路24を切り替えることで対応できる。また、厳冬期のように大量の熱資源を必要とする場合、第1~3熱交換経路(241~243)は、その全てを使うことで需要に応えることができる。
さらに、熱交換経路24内の洗浄や熱媒体の交換などのメンテナンスも、熱交換経路24を切り替えることで対応できる。
【0025】
(制御)
制御部5は、水中用熱交換装置2、地上熱交換部15、熱利用機器81などを制御する。水中用熱交換装置2及び地上熱交換部15は、全体として熱交換システム1を構成している。制御部5は、熱源から熱の消費地までの全てを制御でき、最も効率的な熱資源の運用を行うことができる。
【0026】
(熱交換システム)
前述したように、施工者は、水中用熱交換装置2を海中に沈め、地上熱交換部15を施設8近くに配置し、地上熱交換部15は、水中熱交換部211を流通した熱媒体と熱交換することで、熱交換システム1を簡単に構築することができる。
【0027】
以上、本発明に係る実施の態様を、実施例に沿って詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の態様に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、前述の各実施の態様は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 熱交換システム
11 熱回収管
12 戻し管
15 地上熱交換部(HP)
2 水中用熱交換装置
21 管
211 水中熱交換部
22 中空部
23 隙間
24 熱交換経路
241 第1熱交換経路
242 第2熱交換経路
243 第3熱交換経路
25 排水間隙
3 水流発生部(プロペラ)
4 側壁部
5 制御部
6 網
7 基礎部
8 施設
81 熱利用機器
P ポンプ(熱媒体循環装置)
図1
図2