(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165443
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】テスト装置、テストシステム、テスト方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 11/36 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
G06F11/36 188
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081655
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】子安 博貴
(72)【発明者】
【氏名】菅野 康治
【テーマコード(参考)】
5B042
【Fターム(参考)】
5B042HH17
5B042HH49
(57)【要約】
【課題】通信機器のIPアドレスが変更されても、通信機器に対するテストデータの送信を通じて、通信機器の挙動を確認可能にする。
【解決手段】テスト装置10は、S125~S130で、通信部14を介してRARPリクエストを送信することによって、通信機器20のIPアドレスである機器IPアドレス32を通信機器20から取得するように構成される。S105、S135で、宛先を表すIPアドレスである宛先IPアドレスとして機器IPアドレス32を設定したテストデータd
iである送信用テストデータD
iを生成するように構成される。S110で、S105、S135により生成された送信用テストデータD
iを、通信部14を介して通信機器20に向けて送信するように構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IP(Internet Protocol)アドレス及びMAC(Media Access Control)アドレス(31)を有する通信機器(20)に、テスト用のデータ(d1~dN)を送信するためのテスト装置(10)であって、
前記通信機器と通信するための通信部(14)と、
前記通信機器の前記MACアドレスを保持するように構成される記憶部(13)と、
前記通信機器のIPアドレスである機器IPアドレス(32)を、前記通信部を介して前記MACアドレスを用いた問い合わせを行うことによって前記通信機器から取得するように構成される取得部(11、S125~S130)と、
前記機器IPアドレスを、宛先を表すIPアドレスである宛先IPアドレスとして設定した前記テスト用のデータである送信用テストデータ(D1~DN)を生成するように構成される生成部(11、S105、S135)と、
前記生成部により生成された前記送信用テストデータを、前記通信部を介して前記通信機器に向けて送信するように構成される送信部(11、S110)と、
を備える、テスト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のテスト装置であって、
前記記憶部は、前記通信機器に関する第1のIPアドレスを保持し、
前記テスト装置は、前記取得部が取得した前記機器IPアドレスである第2のIPアドレスが前記第1のIPアドレスと一致するか否かについての判定を行うように構成される判定部(11、S235)を更に備え、
前記生成部は、前記判定部により前記第2のIPアドレスが前記第1のIPアドレスと一致しないと判定された場合、前記第2のIPアドレスを前記宛先IPアドレスとして設定した前記送信用テストデータを生成する、
テスト装置。
【請求項3】
請求項2に記載のテスト装置であって、
前記判定部により前記第2のIPアドレスが前記第1のIPアドレスと一致すると判定された場合、前記取得部は、その判定以降、前記テストが完了するまで前記MACアドレスを用いた問い合わせを行わず、前記生成部は、前記第1のIPアドレスを前記宛先IPアドレスとして設定した前記送信用テストデータを生成する、
テスト装置。
【請求項4】
請求項1に記載のテスト装置であって、
前記取得部は、前記送信部が前記通信機器に向けて送信した前記送信用テストデータに対する前記通信機器からの応答を前記通信部が所定の時間受信しない場合、前記MACアドレスを用いた再度の問い合わせによって、前記機器IPアドレスを前記通信機器から再び取得する、
テスト装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のテスト装置であって、
前記記憶部は、前記テスト用のデータとして、第1のテスト用データ及び第2のテスト用データを保持し、
前記生成部は、前記送信用テストデータとして、第1の送信用テストデータ及び第2の送信用テストデータを生成し、
前記送信部は、前記第1の送信用テストデータ及び前記第2の送信用テストデータを順に、前記通信機器に向けて送信し、
前記取得部は、前記機器IPアドレスとして第1の機器IPアドレスを取得し、前記送信部により前記第1の送信用テストデータが送信された後、前記MACアドレスを用いた再度の問い合わせによって、第2の機器IPアドレスを前記通信機器から取得し、
前記第1の送信用テストデータは、前記第1の機器IPアドレスを前記宛先IPアドレスとして前記第1のテスト用データに設定した送信用テストデータであり、前記第2の送信用テストデータは、前記第2の機器IPアドレスを前記宛先IPアドレスとして前記第2のテスト用データに設定した送信用テストデータである、テスト装置。
【請求項6】
IP(Internet Protocol)アドレス及びMAC(Media Access Control)アドレスを有する通信機器であって、受信データに応じて、前記IPアドレスを変更するように構成される通信機器と、
前記通信機器に向けてテスト用のデータを送信するように構成される請求項1に記載のテスト装置と、
を備える、テストシステム。
【請求項7】
コンピュータによって実行される、IP(Internet Protocol)アドレス及びMAC(Media Access Control)アドレスを有する通信機器に、テスト用のデータを送信するためのテスト方法であって、
前記通信機器の前記MACアドレスを保持する記憶装置から前記MACアドレスを読み出すことと、
前記記憶装置から読み出された前記MACアドレスを含む問い合わせ信号を、前記通信機器に向けて送信することによって、前記通信機器のIPアドレスである機器IPアドレスを前記通信機器から取得することと、
取得した前記機器IPアドレスを、宛先を表すIPアドレスとして前記テスト用のデータに設定した送信用テストデータを生成することと、
生成された前記送信用テストデータを、前記通信機器に向けて送信することと、
を含むテスト方法。
【請求項8】
IP(Internet Protocol)アドレス及びMAC(Media Access Control)アドレスを有する通信機器に、テスト用のデータを送信するためのコンピュータプログラムであって、
前記通信機器の前記MACアドレスを保持する記憶装置から前記MACアドレスを読み出すことと、
前記記憶装置から読み出された前記MACアドレスを含む問い合わせ信号を前記通信機器に向けて送信することによって、前記通信機器のIPアドレスである機器IPアドレスを前記通信機器から取得することと、
取得した前記機器IPアドレスを、宛先を表すIPアドレスとして前記テスト用のデータに設定した送信用テストデータを生成することと、
生成された前記送信用テストデータを、前記通信機器に向けて送信することと、
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はテスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通信機器の挙動を確認するために、テスト対象としての通信機器にテストデータを送信するテスト装置が知られている。
例えば、特許文献1には、長い文字列や乱数等を含むテストデータをテスト対象装置に大量に与えて、テスト対象装置でエラーが発生したか否かを確認する、ファジングテスト装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
IP(Internet Protocol)ネットワークにおいて、テスト対象装置である通信機器が自身のIPアドレスを変更する機能を備えている場合がある。このとき、従来技術では、通信機器のIPアドレスが変更されると、テスト装置が送信したテストデータが通信機器に届かなくなり、通信機器の挙動を確認できなくなる課題が見出された。
【0005】
本開示の一局面は、通信機器のIPアドレスが変更されても、通信機器に対するテストデータの送信を通じて、通信機器の挙動を確認可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、IPアドレス及びMAC(Media Access Control)アドレス(31)を有する通信機器(20)に、テスト用のデータ(d1~dN)を送信するためのテスト装置(10)であって、通信部(14)と、記憶部(13)と、取得部(11、S125~S130)と、生成部(11、S105、S135)と、送信部(11、S110)と、を備える。通信部は、通信機器と通信するように構成される。記憶部は、通信機器のMACアドレスを保持するように構成される。取得部は、通信機器のIPアドレスである機器IPアドレス(32)を、通信部を介してMACアドレスを用いた問い合わせを行うことによって通信機器から取得するように構成される。生成部は、機器IPアドレスを、宛先を表すIPアドレスである宛先IPアドレスとして設定したテスト用のデータである送信用テストデータ(D1~DN)を生成するように構成される。送信部は、生成部により生成された送信用テストデータを、通信部を介して通信機器に向けて送信するように構成される。
【0007】
このような構成によれば、テストデータの送信前に、MACアドレスを用いた問い合わせにより機器IPアドレスを取得することから、通信機器のIPアドレスが変更されても、通信機器に対するテストデータの送信を通じて、通信機器の挙動を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】テストシステムの構成を示すブロック図である。
【
図2】送信用テストデータの生成に関する説明図である。
【
図3】第1実施形態におけるテスト処理のフローチャートである。
【
図4】RARPを用いた通信の一例を説明する図である。
【
図5】第2実施形態におけるテスト処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の例示的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す本実施形態のテストシステム1は、テスト装置10と通信機器20とを備える。テスト装置10及び通信機器20は、同一のIPネットワークに接続され、互いに通信可能に構成される。本実施形態におけるテスト装置10は、テスト対象としての通信機器20に異常なデータ(以下、異常データという。)を送信し、異常データを受信した通信機器20の挙動を確認するファジングテストを行う装置である。
【0010】
テスト装置10は、プロセッサ11と、メモリ12と、ストレージ13と、通信部14と、操作部15と、表示部16と、を備える。
プロセッサ11は、ストレージ13に記録されたコンピュータプログラムに従う処理を実行するように構成される。
【0011】
メモリ12は、プロセッサ11による処理実行時に作業領域として使用される。メモリ12の一例として、RAMがある。
ストレージ13は、コンピュータプログラムと、コンピュータプログラムに従う処理の実行時に使用されるデータと、を記録する。ストレージ13の一例として、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)がある。
【0012】
通信部14は、IPネットワークに接続された通信インタフェースを備え、IPネットワークを経由して、通信機器20と通信可能であるように構成される。
操作部15は、テスト装置10に対するユーザからの操作信号をプロセッサ11に入力するように構成される。
【0013】
表示部16は、プロセッサ11により制御され、テスト装置10を操作するユーザに向けて各種情報を表示するように構成される。表示部16の一例として、液晶ディスプレイがある。表示される各種情報の一例として、テストの結果、テストのログ、及びプロセッサ11が送受信したデータのログがある。
【0014】
通信機器20は、IPアドレス及びMACアドレスを有する機器である。通信機器20の一例として、車載ネットワークに接続されるECU(Electronic Control Unit)がある。通信機器20が接続されるIPネットワークの一例として、車載ネットワークがある。通信機器20は、異常データを受信した場合、セキュリティ機能として、自身のIPアドレスを変更するように構成される。通信機器20は、例えば、攻撃者から異常データが送信された場合、IPアドレスの変更により、変更前のIPアドレスに向けて送信される異常データを回避できる。
【0015】
[1-2.処理]
[1-2-1.送信用テストデータの生成]
図2に示すように、ストレージ13は、機器MACアドレス31と、機器IPアドレス32と、複数のテストデータで構成されるテストデータ群33と、を保持している。
【0016】
機器MACアドレス31は、通信機器20のMACアドレスである。
機器IPアドレス32は、通信機器20のIPアドレスである。
テストデータ群33は、任意のN個のテストデータd1~dN(Nは1以上の整数)で構成される。以下では、i番目に送信されるテストデータをdiとする。テストデータ群33の各テストデータは、ヘッダとペイロードとを有する。ヘッダは、テストデータについての宛先を表すIPアドレスである宛先IPアドレスを格納する領域を含む。ペイロードは、異常データを含む。
【0017】
プロセッサ11は、機器IPアドレス32と、テストデータ群33のうちの1つのテストデータdiと、をストレージ13から読み出す。プロセッサ11は、当該テストデータdiの宛先IPアドレスとして機器IPアドレス32を設定する。以下、宛先IPアドレスとして機器IPアドレス32が設定されたテストデータdiを、送信用テストデータDiという。プロセッサ11は、生成された送信用テストデータDiを通信機器20に向けて送信するよう通信部14に出力する。通信部14は、プロセッサ11から入力された送信用テストデータDiを、IPネットワークに送出する。これにより、送信用テストデータDiは、宛先IPアドレスに対応するIPネットワーク内のホスト、具体的には通信機器20に向けて送信される。
【0018】
[1-2-2.RARP処理]
プロセッサ11は、RARP(Reverse Address Resolution Protocol)に従う処理を実行する機能を有する。RARPでは、IPネットワーク内のホストがMACアドレスを含むRARPリクエストをIPネットワークに送出する。RARPリクエストは、IPアドレスの問い合わせ信号に対応する。RARPリクエストを受信したホストは、RARPレスポンスとして当該MACアドレスに対応するIPアドレスを、RARPリクエストを送出したホストに送信する。本実施形態では、プロセッサ11は、通信機器20のMACアドレスである機器MACアドレス31を含めたRARPリクエストを、通信部14を介してIPネットワークに送出することによって、通信機器20のIPアドレスである機器IPアドレス32をRARPレスポンスとして通信機器20から取得する。取得された機器IPアドレス32は、送信用テストデータDiの生成に用いられる。
【0019】
[1-2-3.テスト処理]
プロセッサ11が実行するテスト処理について、
図3及び
図4を用いて説明する。
プロセッサ11は、操作部15を通じてユーザからテストの実行指令が入力されると、
図3に示すテスト処理を開始する。
【0020】
まず、S100で、プロセッサ11は、初期値として変数iに値1を設定する。
続いて、S105で、プロセッサ11は、ストレージ13から読み出した機器IPアドレス32をテストデータdiの宛先IPアドレスとして設定して送信用テストデータDiを生成する。S105の実行時点において、ストレージ13には、あらかじめユーザから操作部15を介して入力された機器IPアドレス32が記録されている。
【0021】
続いて、S110で、プロセッサ11は、通信部14を介して、送信用テストデータDiを通信機器20に向けて送信し、送信用テストデータDiに対するレスポンスを通信機器20から受信する。プロセッサ11は、レスポンスが期待値と一致するか否かを表す情報を、テストの結果としてストレージ13に記録する。さらに、プロセッサ11は、送受信したデータのログをストレージ13に記録する。ログは、実際に通信機器20とやり取りした生データ及びタイムスタンプを含む。
【0022】
プロセッサ11は、通信機器20からのレスポンスを所定の時間受信しない場合、又は、通信機器20からのレスポンスの受信に失敗した場合、RARPリクエストをIPネットワークに送出して、通信機器20から機器IPアドレス32を取得し、送信用テストデータDiを再度生成して通信機器20に向けて送信する。そして、プロセッサ11は、通信機器20からのレスポンスを再度確認する。
【0023】
続いて、S115で、プロセッサ11は、変数iの値を1増加させる。
続いて、S120で、プロセッサ11は、変数iが値Nより大きいか否かを判定することにより、テストが完了したか否かを判定する。あるいは、プロセッサ11は、N個の送信用テストデータD1~DNに対するすべてのテストの結果が判明していた場合、テストが完了したと判定する。その他の場合、プロセッサ11は、テストが完了していないと判定する。
【0024】
プロセッサ11は、S120でテストが完了していないと判定した場合には(S120:NO)、S125へ移行する。S125で、プロセッサ11は、ストレージ13が保持する機器MACアドレス31を読み出し、通信部14を通じてRARPリクエストを通信機器20に向けて送信する。RARPリクエストには、ストレージ13が保持する機器MACアドレス31が記述される。続いて、S130で、プロセッサ11は、通信部14を通じてRARPレスポンスを受信し、それにより機器IPアドレス32を取得する。
【0025】
続いて、S135で、プロセッサ11は、受信した機器IPアドレス32をテストデータdiの宛先IPアドレスとして設定して送信用テストデータDiを生成した後、S110に戻る。S110では、S135で生成された送信用テストデータDiが、通信部14を通じてIPネットワークに送出される。
【0026】
一方、プロセッサ11は、S120でテストが完了したと判定した場合には(S120:YES)、
図3のテスト処理を終了する。
このようにして、プロセッサ11は、2番目以降のテストデータd
iに関しては、各テストデータを送信する前に、RARPリクエストをIPネットワークに送出して、通信機器20から機器IPアドレス32を取得する処理(S125,S130)を、送信用テストデータD
iの送信ごとに実行する。そして、プロセッサ11は、直前に取得した機器IPアドレス32をテストデータd
iの宛先IPアドレスとして設定することにより送信用テストデータD
iを生成し、生成した送信用テストデータD
iを通信機器20に向けて送信する(S135)。
【0027】
[1-3.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)プロセッサ11は、送信用テストデータDiを生成するとき、通信機器20の機器IPアドレス32をRARPに従う通信により取得し、取得した機器IPアドレス32をテストデータdiの宛先IPアドレスとして設定することによって送信用テストデータDiを生成する。このため、通信機器20のIPアドレスが変更されても、通信機器20に対する送信用テストデータDiの送信を通じて、通信機器20の挙動を確認することができる。
【0028】
例えば、
図4に示すように、テスト装置10が通信機器20のIPアドレスである第1の機器IPアドレス(
図4のaaa.bbb.ccc.ddd)に向けて送信用テストデータD
iを送信した後に、通信機器20のIPアドレスが第1の機器IPアドレスから第2の機器IPアドレス(
図4のaaa.bbb.ccc.eee)に変更された場合でも、テスト装置10は、第2の機器IPアドレスに向けて次の送信用テストデータD
i+1を送信できる。このため、複数の送信用テストデータを通信機器20に順番に送信する途中で通信機器20のIPアドレスが変更された場合でも、複数の送信用テストデータのそれぞれに対する通信機器20のレスポンスを適切に確認することができる。
【0029】
(1b)プロセッサ11は、送信用テストデータDiに対する通信機器20からのレスポンスを所定の時間受信しない場合、又は、通信機器20からのレスポンスの受信に失敗した場合、RARPリクエストによって通信機器20の機器IPアドレス32を再度取得する。プロセッサ11は、取得した機器IPアドレス32をテストデータdiの宛先IPアドレスとして送信用テストデータDiを生成し、通信機器20に向けて再度送信する。このため、送信用テストデータDiを送信した後に通信機器20のIPアドレスが変更された場合でも、送信用テストデータDiに対する通信機器20のレスポンスを適切に確認することができる。
【0030】
なお、第1実施形態では、テストデータd1~dNがテスト用のデータの一例に相当し、ストレージ13が記憶部の一例に相当し、RARPリクエストがMACアドレスを用いた問い合わせの一例に相当する。また、S125~S130の処理が取得部として実行される処理の一例に相当し、S105、S135の処理が生成部として実行される処理の一例に相当し、S110の処理が送信部として実行される処理の一例に相当する。
【0031】
[2.第2実施形態]
第2実施形態において、テストシステム1の基本的な構成は、第1実施形態と同様である。以下では、第2実施形態のテストシステム1が有する、第1実施形態とは異なる構成を選択的に説明する。第2実施形態において、第1実施形態と同じ符号が付された構成は、第1実施形態と同一の構成であると理解されてよい。
【0032】
第2実施形態のプロセッサ11が、
図3に示す第1実施形態のテスト処理に代えて実行するテスト処理について、
図5のフローチャートを用いて説明する。
図5におけるS200、S205、S210、S215、S220、S225、S230、S245、S250、及びS260の処理は、それぞれ
図3におけるS100、S105、S110、S115、S120、S125、S130、S110、S115、及びS135の処理と同様である。
【0033】
図5に示すテスト処理を開始すると、プロセッサ11は、まずS200で、初期値として変数iに値1を設定する。
続いて、S205で、プロセッサ11は、ストレージ13から読み出した機器IPアドレス32としての第1のIPアドレスを、テストデータd
iの宛先IPアドレスとして設定して送信用テストデータD
iを生成する。S205の実行時点において、ストレージ13には、あらかじめユーザから操作部15を介して入力された機器IPアドレス32として第1のIPアドレスが記録されている。
【0034】
続いて、S210で、プロセッサ11は、通信部14を介して、送信用テストデータDiを通信機器20に向けて送信し、送信用テストデータDiに対するレスポンスを通信機器20から受信する。プロセッサ11は、レスポンスが期待値と一致するか否かを表す情報を、テストの結果としてストレージ13に記録する。さらに、プロセッサ11は、送受信したデータのログをストレージ13に記録する。
【0035】
続いて、S215で、プロセッサ11は、変数iの値を1増加させる。
続いて、S220で、プロセッサ11は、変数iが値Nより大きいか否かを判定することにより、テストが完了したか否かを判定する。あるいは、プロセッサ11は、N個の送信用テストデータD1~DNに対するすべてのテストの結果が判明していた場合、テストが完了したと判定する。その他の場合、プロセッサ11は、テストが完了していないと判定する。
【0036】
プロセッサ11は、S220でテストが完了したと判定した場合には(S220:YES)、
図5のテスト処理を終了する。
一方、プロセッサ11は、S220でテストが完了していないと判定した場合には(S220:NO)、S225へ移行し、通信部14を通じてRARPリクエストを通信機器20に向けて送信する。続いて、S230で、プロセッサ11は、通信部14を通じてRARPレスポンスを受信し、それにより機器IPアドレス32として第2のIPアドレスを取得する。
【0037】
続いて、S235で、プロセッサ11は、受信した第2のIPアドレスが、ストレージ13が保持している機器IPアドレス32である第1のIPアドレスと一致するか否かを判定する。
【0038】
プロセッサ11は、S235で第2のIPアドレスが第1のIPアドレスと一致しないと判定した場合には(S235:NO)、S260へ移行し、受信した第2のIPアドレスをテストデータdiの宛先IPアドレスとして設定して送信用テストデータDiを生成する。そして、プロセッサ11は、ストレージ13に機器IPアドレス32として記録されている第1のIPアドレスを第2のIPアドレスに更新した後、S210に戻る。S210では、S260で生成された送信用テストデータDiが、通信部14を通じてIPネットワークに送出される。
【0039】
一方、プロセッサ11は、S235で第2のIPアドレスが第1のIPアドレスと一致すると判定した場合には(S235:YES)、S240へ移行し、第1のIPアドレスをテストデータdiの宛先IPアドレスとして設定して送信用テストデータDiを生成する。
【0040】
続いて、S245で、プロセッサ11は、通信部14を介して、送信用テストデータDiを通信機器20に向けて送信し、送信用テストデータDiに対するレスポンスを通信機器20から受信する。プロセッサ11は、レスポンスが期待値と一致するか否かを表す情報を、テストの結果としてストレージ13に記録する。さらに、プロセッサ11は、送受信したデータのログをストレージ13に記録する。
【0041】
続いて、S250で、プロセッサ11は、変数iの値を1増加させる。
続いて、S255で、プロセッサ11は、変数iが値Nより大きいか否かを判定することにより、テストが完了したか否かを判定する。あるいは、プロセッサ11は、N個の送信用テストデータD1~DNに対するすべてのテストの結果が判明していた場合、テストが完了したと判定する。その他の場合、プロセッサ11は、テストが完了していないと判定する。
【0042】
プロセッサ11は、S255でテストが完了していないと判定した場合には(S255:NO)、S240に戻る。
一方、プロセッサ11は、S255でテストが完了したと判定した場合には(S255:YES)、
図5のテスト処理を終了する。
【0043】
このようにして、プロセッサ11は、1番目の送信用テストデータを送信した後にRARPリクエストによって受信した第2のIPアドレスが、ストレージ13に保持されている第1のIPアドレスと一致するか否かを確認する。この確認により、プロセッサ11は、通信機器20が送信用テストデータの受信によってIPアドレスを変更する機能を有するか否かを判定する。プロセッサ11は、通信機器20がIPアドレスを変更する機能を有しないと判定した場合、その判定以降、テスト処理が終了するまでRARPリクエストを送信せず、第1のIPアドレスをテストデータの宛先IPアドレスとして設定して送信用テストデータを生成し、生成した送信用テストデータを通信機器20に向けて送信する。
【0044】
このような処理によれば、通信機器20がIPアドレスを変更する機能を有しない場合、不要なRARPリクエストの送信を低減することができ、テスト処理の効率を向上させることができる。
【0045】
なお、第2実施形態では、S235の処理が判定部として実行される処理の一例に相当する。
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0046】
(2a)上記実施形態では、S105で、プロセッサ11がテストデータd1の宛先IPアドレスとして設定する機器IPアドレス32は、あらかじめユーザから操作部15を介してストレージ13に入力されていた。しかし、機器IPアドレス32は、S105の実行時点で、ユーザから操作部15を介して入力されるようにしてもよい。あるいは、S105の実行よりも前に、プロセッサ11は、RARPに従う処理を実行して取得した機器IPアドレス32をストレージ13に記録していてもよい。
【0047】
(2b)上記実施形態では、テストシステム1は、テスト装置10と通信機器20とを備えており、テスト装置10は、テスト対象として1つの通信機器20と通信を行っていた。しかし、テスト対象としての通信機器20は、1つに限定されるものではなく、複数であってもよい。また、例えば、テスト対象としての通信機器20は、車両に搭載されていてもよく、車両のイグニッションスイッチをオンにした状態で、テスト装置10は通信機器20と通信を行ってもよい。また、例えば、通信機器20に組み込まれるソフトウェアがクラウド上にアップロードされていてもよく、テスト装置10は、テスト対象としてクラウド上のソフトウェアと通信を行ってもよい。
【0048】
(2c)上記実施形態では、テストデータ群33の各テストデータにおけるペイロードは異常データを含んでいたが、異常データに限らず正常なデータを含んでいてもよい。テスト装置10が行うテストは、ファジングテストに限らず、ファジングテスト以外のアクティブテストであってもよく、アクティブテスト以外のパッシブテストであってもよい。あるいは、通信機器20の疎通確認を行うテストであってもよい。
【0049】
(2d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0050】
(2e)本開示は、前述したテスト装置の他、種々の形態で実現することができる。例えば、当該テスト装置を構成要素とするテストシステム、当該テスト装置としてコンピュータを機能させるためのコンピュータプログラム、このコンピュータプログラムを記録した半導体メモリ等の非遷移的実体的記録媒体、テスト方法等の形態で実現することができる。
【0051】
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
IP(Internet Protocol)アドレス及びMAC(Media Access Control)アドレス(31)を有する通信機器(20)に、テスト用のデータ(d1~dN)を送信するためのテスト装置(10)であって、
前記通信機器と通信するための通信部(14)と、
前記通信機器の前記MACアドレスを保持するように構成される記憶部(13)と、
前記通信機器のIPアドレスである機器IPアドレス(32)を、前記通信部を介して前記MACアドレスを用いた問い合わせを行うことによって前記通信機器から取得するように構成される取得部(11、S125~S130)と、
前記機器IPアドレスを、宛先を表すIPアドレスである宛先IPアドレスとして設定した前記テスト用のデータである送信用テストデータ(D1~DN)を生成するように構成される生成部(11、S105、S135)と、
前記生成部により生成された前記送信用テストデータを、前記通信部を介して前記通信機器に向けて送信するように構成される送信部(11、S110)と、
を備える、テスト装置。
【0052】
[項目2]
項目1に記載のテスト装置であって、
前記記憶部は、前記通信機器に関する第1のIPアドレスを保持し、
前記テスト装置は、前記取得部が取得した前記機器IPアドレスである第2のIPアドレスが前記第1のIPアドレスと一致するか否かについての判定を行うように構成される判定部(11、S235)を更に備え、
前記生成部は、前記判定部により前記第2のIPアドレスが前記第1のIPアドレスと一致しないと判定された場合、前記第2のIPアドレスを前記宛先IPアドレスとして設定した前記送信用テストデータを生成する、
テスト装置。
【0053】
[項目3]
項目2に記載のテスト装置であって、
前記判定部により前記第2のIPアドレスが前記第1のIPアドレスと一致すると判定された場合、前記取得部は、その判定以降、前記テストが完了するまで前記MACアドレスを用いた問い合わせを行わず、前記生成部は、前記第1のIPアドレスを前記宛先IPアドレスとして設定した前記送信用テストデータを生成する、
テスト装置。
【0054】
[項目4]
項目1から項目3までのいずれか一項に記載のテスト装置であって、
前記取得部は、前記送信部が前記通信機器に向けて送信した前記送信用テストデータに対する前記通信機器からの応答を前記通信部が所定の時間受信しない場合、前記MACアドレスを用いた再度の問い合わせによって、前記機器IPアドレスを前記通信機器から再び取得する、
テスト装置。
【0055】
[項目5]
項目1から項目4までのいずれか一項に記載のテスト装置であって、
前記記憶部は、前記テスト用のデータとして、第1のテスト用データ及び第2のテスト用データを保持し、
前記生成部は、前記送信用テストデータとして、第1の送信用テストデータ及び第2の送信用テストデータを生成し、
前記送信部は、前記第1の送信用テストデータ及び前記第2の送信用テストデータを順に、前記通信機器に向けて送信し、
前記取得部は、前記機器IPアドレスとして第1の機器IPアドレスを取得し、前記送信部により前記第1の送信用テストデータが送信された後、前記MACアドレスを用いた再度の問い合わせによって、第2の機器IPアドレスを前記通信機器から取得し、
前記第1の送信用テストデータは、前記第1の機器IPアドレスを前記宛先IPアドレスとして前記第1のテスト用データに設定した送信用テストデータであり、前記第2の送信用テストデータは、前記第2の機器IPアドレスを前記宛先IPアドレスとして前記第2のテスト用データに設定した送信用テストデータである、テスト装置。
【0056】
[項目6]
IP(Internet Protocol)アドレス及びMAC(Media Access Control)アドレスを有する通信機器であって、受信データに応じて、前記IPアドレスを変更するように構成される通信機器と、
前記通信機器に向けてテスト用のデータを送信するように構成される項目1から項目5までのいずれか一項に記載のテスト装置と、
を備える、テストシステム。
【0057】
[項目7]
コンピュータによって実行される、IP(Internet Protocol)アドレス及びMAC(Media Access Control)アドレスを有する通信機器に、テスト用のデータを送信するためのテスト方法であって、
前記通信機器の前記MACアドレスを保持する記憶装置から前記MACアドレスを読み出すことと、
前記記憶装置から読み出された前記MACアドレスを含む問い合わせ信号を、前記通信機器に向けて送信することによって、前記通信機器のIPアドレスである機器IPアドレスを前記通信機器から取得することと、
取得した前記機器IPアドレスを、宛先を表すIPアドレスとして前記テスト用のデータに設定した送信用テストデータを生成することと、
生成された前記送信用テストデータを、前記通信機器に向けて送信することと、
を含むテスト方法。
【0058】
[項目8]
IP(Internet Protocol)アドレス及びMAC(Media Access Control)アドレスを有する通信機器に、テスト用のデータを送信するためのコンピュータプログラムであって、
前記通信機器の前記MACアドレスを保持する記憶装置から前記MACアドレスを読み出すことと、
前記記憶装置から読み出された前記MACアドレスを含む問い合わせ信号を前記通信機器に向けて送信することによって、前記通信機器のIPアドレスである機器IPアドレスを前記通信機器から取得することと、
取得した前記機器IPアドレスを、宛先を表すIPアドレスとして前記テスト用のデータに設定した送信用テストデータを生成することと、
生成された前記送信用テストデータを、前記通信機器に向けて送信することと、
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【符号の説明】
【0059】
1…テストシステム、10…テスト装置、13…記憶部、14…通信部、20…通信機器、31…機器MACアドレス、32…機器IPアドレス、d1~dN…テストデータ、D1~DN…送信用テストデータ。