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特開2024-165452フィルム搬送装置およびこれを用いた樹脂封止装置並びにフィルム搬送方法
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  • 特開-フィルム搬送装置およびこれを用いた樹脂封止装置並びにフィルム搬送方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165452
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】フィルム搬送装置およびこれを用いた樹脂封止装置並びにフィルム搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 23/198 20060101AFI20241121BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B65H23/198
H01L21/56 T
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081668
(22)【出願日】2023-05-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-07-23
(71)【出願人】
【識別番号】501184434
【氏名又は名称】アサヒ・エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】石井 正明
【テーマコード(参考)】
3F105
5F061
【Fターム(参考)】
3F105AA04
3F105AB00
3F105BA02
3F105CA02
3F105CA06
3F105CB01
3F105DA42
3F105DB11
3F105DC11
3F105DC20
5F061AA01
5F061CA21
5F061CB13
5F061DA01
5F061DD02
(57)【要約】
【課題】低コストでフィルムを一定の張力により安定して搬送することが可能なフィルム搬送装置およびこれを用いた樹脂封止装置並びにフィルム搬送方法の提供。
【解決手段】離型フィルムFを巻回した巻出しロール4Aから離型フィルムFを巻き出し、巻取りロール4Bへ巻き取ることにより、樹脂封止成形を行う金型面2Cに張設する離型フィルムFを搬送するフィルム搬送装置3であって、巻取りロール4Bに巻き取られた離型フィルムFの径を計測する計測部6と、計測部6により計測された径に基づいて離型フィルムFの張力が一定となるように巻取りロール4Bを駆動するモータ5Bまたは巻出しロール4Aを駆動するモータ5Aの少なくともいずれか一方を制御する制御部7とを含むフィルム搬送装置3である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型フィルムを巻回した巻出しロールから前記離型フィルムを巻き出し、巻取りロールへ巻き取ることにより、樹脂封止成形を行う金型に張設する離型フィルムを搬送するフィルム搬送装置であって、
巻取りロールに巻き取られた前記離型フィルムの径を計測する計測部と、
前記計測部により計測された径に基づいて前記離型フィルムの張力が一定となるように前記巻取りロールを駆動するモータまたは前記巻出しロールを駆動するモータの少なくともいずれか一方を制御する制御部と
を含むフィルム搬送装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記モータのトルクを制御するものである請求項1記載のフィルム搬送装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記離型フィルムの張力が前記金型により樹脂封止成形する成型品に応じて設定された張力となるように前記トルクを制御するものである請求項2記載のフィルム搬送装置。
【請求項4】
前記離型フィルムのメーカ、品番、幅、巻き長さ、厚み、ロール径の少なくともいずれか一つの特性情報と、前記金型により樹脂封止成形する成型品の型式情報とに対応する前記離型フィルムの張力を含む設定テーブルを記憶する記憶部を含み、
前記制御部は、前記設定テーブルを参照することにより前記離型フィルムの張力を決定するものである
請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルム搬送装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルム搬送装置を備えた樹脂封止装置。
【請求項6】
請求項4記載のフィルム搬送装置を備えた樹脂封止装置。
【請求項7】
離型フィルムを巻回した巻出しロールから前記離型フィルムを巻き出し、巻取りロールへ巻き取ることにより、樹脂封止成形を行う金型に張設する離型フィルムを搬送するフィルム搬送方法であって、
巻取りロールに巻き取られた前記離型フィルムの径を計測すること、
前記計測された径に基づいて前記離型フィルムの張力が一定となるように前記巻取りロールを駆動するモータまたは前記巻出しロールを駆動するモータの少なくともいずれか一方を制御すること
を含むフィルム搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の樹脂封止成形におけるフィルム搬送装置およびこれを用いた樹脂封止装置並びにフィルム搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の樹脂封止成形において、成形後の成型品の離型を改善するために離型フィルム(以下、単に「フィルム」と称することもある。)を使用することが一般的に行われている。成形金型にフィルムを張設する一つの方法として、ロール状のフィルムを成形金型の一方の端から他方の端に向けて供給する方法がある。例えば、特許文献1には、モールド金型にフィルムを張設するフィルムユニットが取り付け可能な樹脂封止装置が開示されている。
【0003】
このフィルムユニットは、フィルム供給部とフィルム巻取り部とを備える。フィルム供給部には、フィルムを巻回したフィルム供給ローラと、該フィルム供給ローラより繰り出されるフィルムに一定のテンションを付与する供給側補助ローラとが設けられている。フィルム巻取り部には、フィルムを巻き取るフィルム巻取りローラと、該フィルム巻取りローラに巻き取られるフィルムに一定のテンションを付与する巻取り側補助ローラとが設けられている。
【0004】
供給側補助ローラまたは巻取り側の補助ローラには、エンコーダなどの回転数検出部をそれぞれ備えており、該回転数検出部の検出信号に応じてフィルム供給ローラまたはフィルム巻取りローラを回転駆動する供給側モータまたは巻取り側モータの回転数を制御するようになっている。これにより、ロール径が変化してもフィルムの送り量、テンションの調整が行え、フィルム安定動作を安定させる上で望ましいとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-300974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載のフィルムユニットでは、補助ローラにエンコーダを備えることでモータを制御するが、エンコーダを用いる方法が高価で複雑な制御となるという問題がある。
【0007】
また、離型フィルムは樹脂封止成形において金型のキャビティ凹部に吸着保持され、このとき金型では約180℃の高温で熱硬化性樹脂を溶融、硬化させて成形が行われる。そのため、この環境に晒された使用後の離型フィルムはキャビティ凹部の型跡が残った凸凹の状態になっており、これを巻取りロールで巻き取ると、巻取りロールは嵩張った不定の巻取り径となる。これは使用前の巻出しロール側の状態とは異なる。
【0008】
そこで、本発明においては、低コストでフィルムを一定の張力により安定して搬送することが可能なフィルム搬送装置およびこれを用いた樹脂封止装置並びにフィルム搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のフィルム搬送装置は、離型フィルムを巻回した巻出しロールから離型フィルムを巻き出し、巻取りロールへ巻き取ることにより、樹脂封止成形を行う金型に張設する離型フィルムを搬送するフィルム搬送装置であって、巻取りロールに巻き取られた離型フィルムの径を計測する計測部と、計測部により計測された径に基づいて離型フィルムの張力が一定となるように巻取りロールを駆動するモータまたは巻出しロールを駆動するモータの少なくともいずれか一方を制御する制御部とを含むものである。
【0010】
本発明のフィルム搬送方法は、離型フィルムを巻回した巻出しロールから離型フィルムを巻き出し、巻取りロールへ巻き取ることにより、樹脂封止成形を行う金型に張設する離型フィルムを搬送するフィルム搬送方法であって、巻取りロールに巻き取られた離型フィルムの径を計測すること、計測された径に基づいて離型フィルムの張力が一定となるように巻取りロールを駆動するモータまたは巻出しロールを駆動するモータの少なくともいずれか一方を制御することを含むことを特徴とする。
【0011】
これらの発明によれば、巻取りロールに巻き取られた離型フィルムの径が計測され、この計測された径に基づいて巻取りロールを駆動するモータまたは巻出しロールを駆動するモータの少なくともいずれか一方が制御され、使用後の凸凹の状態の離型フィルムが巻き取られる不定の巻取り径の巻取りロールにおいても、離型フィルムの張力が常に一定に維持される。
【0012】
なお、離型フィルムの張力とは、巻出しロールから離型フィルムを巻き出し、巻取りロールへ巻き取ることにより、樹脂封止成形を行う金型面に搬送し、張設するときの離型フィルムを引っ張る力である。また、巻取りロールに巻き取られた離型フィルムの径とは、巻取りロールに巻き取られた離型フィルムを含めた巻取りロールの径である。
【0013】
制御部は、モータのトルクを制御するものであることが望ましい。これにより、巻取りロールに巻き取られた離型フィルムの径が計測され、この計測された径に基づいて巻取りロールを駆動するモータまたは巻出しロールを駆動するモータの少なくともいずれか一方のトルクが制御され、使用後の凸凹の状態の離型フィルムが巻き取られる不定の巻取り径の巻取りロールにおいても、離型フィルムの張力が常に一定に維持される。
【0014】
制御部は、離型フィルムの張力が金型により樹脂封止成形する成型品に応じて設定された張力となるようにトルクを制御するものであることが望ましい。これにより、離型フィルムの張力が成型品に応じて適切な張力に維持される。
【0015】
本発明のフィルム搬送装置は、離型フィルムのメーカ、品番、幅、巻き長さ、厚み、ロール径の少なくともいずれか一つの特性情報と、金型により樹脂封止成形する成型品の型式情報とに対応する離型フィルムの張力を含む設定テーブルを記憶する記憶部を含み、制御部は、設定テーブルを参照することにより成型品に応じた離型フィルムの張力を決定するものであることが望ましい。これにより、成型品および離型フィルムの特性に応じて離型フィルムの張力が決定され、適切な張力に維持される。
【発明の効果】
【0016】
(1)本発明によれば、巻取りロールに巻き取られた離型フィルムの径が計測され、この計測された径に基づいて巻取りロールを駆動するモータまたは巻出しロールを駆動するモータの少なくともいずれか一方が制御され、使用後の凸凹の状態の離型フィルムが巻き取られる不定の巻取り径の巻取りロールにおいても、離型フィルムの張力が常に一定に維持されるので、過剰な張力によって離型フィルムを伸ばして破れが発生することなく、また弱すぎる張力によって巻取りロールに巻き取る際に皺が発生することもなく、成型品の良品を得ることが可能となる。
【0017】
(2)制御部が、モータのトルクを制御するものであることにより、巻取りロールに巻き取られた離型フィルムの径が計測され、この計測された径に基づいて巻取りロールを駆動するモータまたは巻出しロールを駆動するモータの少なくともいずれか一方のトルクが制御され、使用後の凸凹の状態の離型フィルムが巻き取られる不定の巻取り径の巻取りロールにおいても、離型フィルムの張力が常に一定に維持されるので、過剰な張力によって離型フィルムを伸ばすことなく、またトルク不足によって巻取りロールに巻き取ることができないということがなくなり、離型フィルムの皺や破れ等の発生もなく、成型品の良品を得ることが可能となる。
【0018】
(3)制御部が、離型フィルムの張力が金型により樹脂封止成形する成型品に応じて設定された張力となるようにトルクを制御するものであることにより、離型フィルムの張力が成型品に応じて適切な張力に維持され、過剰なトルクによって離型フィルムを伸ばすことなく、またトルク不足によって巻取りロールに巻き取ることができないということがなくなり、離型フィルムの皺や破れ等の発生もなく、成型品の良品を得ることが可能となる。
【0019】
(4)離型フィルムのメーカ、品番、幅、巻き長さ、厚み、ロール径の少なくともいずれか一つの特性情報と、金型により樹脂封止成形する成型品の型式情報とに対応する離型フィルムの張力を含む設定テーブルを記憶する記憶部を含み、制御部は、設定テーブルを参照することにより成型品に応じた離型フィルムの張力を決定するものであることにより、成型品および離型フィルムの特性に応じて離型フィルムの張力が決定され、適切な張力に維持されるので、過剰な張力によって離型フィルムを伸ばして破れが発生することなく、また弱すぎる張力によって巻取りロールに巻き取る際に皺が発生することもなく成型品の良品を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施の形態における樹脂封止装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は本発明の実施の形態における樹脂封止装置の概略構成図である。
図1において、本発明の実施の形態における樹脂封止装置1は、上金型2Aよび下金型2Bから構成される金型2により形成されるキャビティ(図示せず。)内に電子部品(図示せず。)をクランプして樹脂封止成形するものである。樹脂封止装置1は、樹脂封止成形を行う金型2に張設する離型フィルムFを搬送するフィルム搬送装置3を備える。具体的には、離型フィルムFは上金型2Aの金型面2Cに張設される。
【0022】
フィルム搬送装置3は、離型フィルムFを巻き出す巻出し側のローラ部3Aと、離型フィルムFを巻き取る巻取り側のローラ部3Bとを有する。ローラ部3A,3Bは、図示しない駆動部によって上昇および下降する。駆動部は、シリンダやモータなどにより構成される。
【0023】
巻出し側のローラ部3Aは、離型フィルムFを巻回した巻出しロール4Aと、巻出しロール4Aを駆動するモータ5Aと、金型面に対して離型フィルムFが平行となるようにガイドするガイドローラ9Aと、離型フィルムFに一定の保持テンションをかけるテンションローラ10Aと、離型フィルムFへエアブローすることにより除電するイオナイザ11とを有する。
【0024】
巻取り側のローラ部3Bは、離型フィルムFを巻き取る巻取りロール4Bと、巻取りロール4Bを駆動するモータ5Bと、巻取りロール4Bに巻き取られた離型フィルムFの径、すなわち、巻取りロール4Bに巻き取られた離型フィルムFを含めた巻取りロール4Bの径(以下、「離型フィルムFのロール径」と称す。)を計測する計測部6と、金型面に対して離型フィルムFが平行となるようにガイドするガイドローラ9Bと、離型フィルムFに一定の保持テンションをかけるテンションローラ10Bとを有する。
【0025】
また、フィルム搬送装置3は、計測部6による計測結果に基づいてモータ5A,5Bを制御する制御部7と、各種設定値を記憶する記憶部8とを有する。
【0026】
巻取りロール4Bは、離型フィルムFの巻取り部分が円形断面の円筒状となっている。このような巻取りロール4Bに離型フィルムFが巻き取られることにより、巻取りロール4Bの径は増大する。計測部6は、この巻取りロール4Bに巻き取られた離型フィルムFのロール径を計測する。巻取りロール4Bの離型フィルムFの巻取り部分を円形断面とすることで、計測半径(計測部6から巻取りロール4Bの表面までの距離)が一定となり、安定して正確な計測が可能となる。計測部6による計測は、例えば離型フィルムFを搬送する前または後の巻出しロール4Aおよび巻取りロール4Bが停止した状態で計測する。計測部6は、例えば、超音波センサ、レーザセンサや光電センサ等の非接触型センサの計測軸を巻取りロール4Bの回転軸と直交する方向として配置し、巻取りロール4Bに巻き取られた離型フィルムFの表面までの距離を測定することにより離型フィルムFの径を計測する。計測部6を非接触型センサとすることにより、使用済み離型フィルムFが巻き取られて満杯となった巻取りロール4Bの取外し、および新しい離型フィルムFのセッティングの交換作業の支障にならず、作業性が向上する。なお、計測部6は接触型センサとすることもできる。
【0027】
制御部7は、計測部6により計測された径に基づいて離型フィルムFの張力が一定となるようにモータ5Aまたはモータ5Bの少なくともいずれか一方のトルクを制御する。離型フィルムFの張力は金型2により樹脂封止成形する成型品に応じて予め設定されている。制御部7はこの成型品に応じて予め設定された張力となるようにモータ5A,5Bのトルクを制御する。張力の設定は、樹脂封止成形を開始する前に、成型品に対応する離型フィルムFに適した張力を、樹脂封止装置1の操作画面(図示せず。)から数値入力することが可能である。
【0028】
制御部7は、所定の時間ごと、離型フィルムFの所定の使用長さごと、または巻取りロール4Bに巻き取られた離型フィルムFの所定ロール径ごと等のタイミングでモータ5A,5Bのトルク値への反映を行う。あるいは、制御部7は計測部6により巻取りロール4Bの離型フィルムFの径を常時計測しておき、リアルタイムでトルク値を決定する構成とすることも可能である。
【0029】
記憶部8には、離型フィルムFのメーカ、品番、幅、巻き長さ、厚み、ロール径の少なくともいずれか一つの特性情報と、金型2により樹脂封止成形する成型品の型式情報とに対応する離型フィルムFの張力を含む設定テーブルが記憶されている。表1は設定テーブル(フィルム張力テーブル)の一例を示している。表1に示すように、この設定テーブルには、各フィルム1~3の成型品A~Cごとに対応する張力が設定されている。
【0030】
【表1】
【0031】
制御部7は、この記憶部8に記憶された設定テーブルを参照することにより、成型品に応じた離型フィルムFの張力Tを決定する。ここで決定した張力Tと、計測した巻取りロール4Bの径(離型フィルムFのロール径)rに基づき、離型フィルムFに応じたトルク値を決定する。トルク値は、T×rの計算式で求められる。なお、決定したトルク値を基に、モータ5A,5Bそれぞれに必要となるトルクで巻出しロール4Aおよび巻取りロール4Bを制御する構成とすることも可能である。
【0032】
制御部7により決定される張力は、樹脂封止成形を開始する前に、樹脂封止装置1の操作画面(図示せず。)に表示される設定テーブルからオペレーターが成型品と離型フィルムFの種類を選択することにより決定することが可能である。また、樹脂封止装置1が成型品と離型フィルムFの種類を、これらの形状やコード番号などで自動認識することによって決定することもできる。
【0033】
なお、成形後に金型面2Cから離型フィルムFを引きはがす際に所定の力が必要となる場合は、図示しない押圧部材または圧縮エアー等により離型フィルムFを金型面2Cから押し出して引き離し、離型フィルムFの巻取りの抵抗とならないようにすることも可能である。あるいは、金型面2Cからの離型フィルムFの引きはがし力を加味したトルクとタイミングで巻取りロール4Bのモータ5Bを制御することも可能である。なお、ここで成型品とは、樹脂封止成型前のものも樹脂封止成型後のものも含む。
【0034】
次に、上記フィルム搬送装置3の動作順序について説明する。フィルム搬送装置3の動作順序は以下の通りである。
(1)金型2の離間位置(図1のローラ部3A,3Bの上昇位置)
(2)離型フィルムFの搬送を行うため、駆動部にてローラ部3A,3Bを下降させる
(3)離型フィルムFの除電のため、ローラ部3A,3Bの下降と同時に、イオナイザ11のエアブロー開始
(4)モータ5A,5B駆動により設定値分の離型フィルムF搬送(計測部6にて巻取りロール4B径計測)
(5)離型フィルムF送り動作完了と同時に、イオナイザ11のエアブロー中止
(6)離型フィルムFを金型面2Cに張設するため、駆動部にてローラ部3A,3Bを上昇させる
(7)真空機構(図示せず。)により離型フィルムFを金型2に吸着保持
(8)ローダー(図示せず。)により樹脂および成型品を金型2へ供給後、下金型2Bが上昇し型締めし、樹脂封止成形を行う
(9)樹脂硬化後、下金型2Bが下降し型開きを行う
(10)アンローダー(図示せず。)が封止された成型品の取り出しと金型の清掃を行う
(11)(1)の動作から繰り返し
【0035】
上記構成のフィルム搬送装置3では、巻取りロール4Bに巻き取られた離型フィルムFのロール径が計測され、この計測されたロール径に基づいて巻取りロール4Bを駆動するモータ5Bまたは巻出しロール4Aを駆動するモータ5Aの少なくともいずれか一方が制御され、使用後の凸凹の状態の離型フィルムが巻き取られる不定の巻取り径の巻取りロールにおいても、離型フィルムFの張力が一定に維持される。したがって、過剰な張力によって離型フィルムFを伸ばして破れが発生することなく、また弱すぎる張力によって巻取りロール4Bに巻き取る際に皺が発生することもなく、成型品の良品を得ることが可能となる。
【0036】
特に、このフィルム搬送装置3では、制御部7がモータ5A,5Bの少なくともいずれか一方のトルクを制御するため、トルク不足により離型フィルムFが巻取りロール4Bに巻き取られないということがない。したがって、本実施形態におけるフィルム搬送装置3を備えた樹脂封止装置1では、離型フィルムFの皺や破れ等の発生もなく、成型品の良品を得ることが可能で、巻取りロール4Bの巻取りトルク不足などの不具合の発生も防止できる。
【0037】
また、本実施形態におけるフィルム搬送装置3では、制御部7が、離型フィルムFの張力が金型2により樹脂封止成形する成型品に応じて設定された張力となるようにトルクを制御するため、離型フィルムFの張力が成型品に応じて適切な張力に維持され、過剰なトルクによって離型フィルムFを伸ばすことなく、またトルク不足によって巻取りロール4Bに巻き取ることができないということがなくなり、離型フィルムFの皺や破れ等の発生もなく、成型品の良品を得ることが可能である。
【0038】
また、本実施形態におけるフィルム搬送装置3では、離型フィルムFのメーカ、品番、幅、巻き長さ、厚み、ロール径の少なくともいずれか一つの特性情報と、金型2により樹脂封止成形する成型品の型式情報とに対応する離型フィルムFの張力を含む設定テーブルを記憶する記憶部8を有し、制御部7が、この設定テーブルを参照することにより成型品に応じた離型フィルムFの張力を決定するため、さらに精度良く成型品および離型フィルムFの特性に応じて離型フィルムFの張力が決定され、適切な張力に維持されるので、過剰な張力によって離型フィルムFを伸ばして破れが発生することなく、また弱すぎる張力によって巻取りロール4Bに巻き取る際に皺が発生することもなく成型品の良品を得ることが可能である。また、巻取りロール4Bの巻取りトルク不足などの不具合の発生も防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、電子部品の樹脂封止成形におけるフィルム搬送装置およびこれを用いた樹脂封止装置並びにフィルム搬送方法として有用であり、特に、低コストでフィルムを一定の張力により安定して搬送することが可能なフィルム搬送装置およびこれを用いた樹脂封止装置並びにフィルム搬送方法として好適である。
【符号の説明】
【0040】
1 樹脂封止装置
2 金型
2A 上金型
2B 下金型
2C 金型面
3A,3B ローラ部
4A 巻出しロール
4B 巻取りロール
5A,5B モータ
6 計測部
7 制御部
8 記憶部
9A,9B ガイドローラ
10A,10B テンションローラ
11 イオナイザ
図1
【手続補正書】
【提出日】2023-09-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型フィルムを巻回した巻出しロールから前記離型フィルムを巻き出し、巻取りロールへ巻き取ることにより、樹脂封止成形を行う金型に張設する離型フィルムを搬送するフィルム搬送装置であって、
前記巻取りロールに巻き取られた使用後の離型フィルムの表面までの距離を測定することにより前記使用後の離型フィルムの径を計測する計測部と、
前記計測部により計測された径に基づいて前記離型フィルムの張力が一定となるように前記巻取りロールを駆動するモータまたは前記巻出しロールを駆動するモータの少なくともいずれか一方を制御する制御部と
を含むフィルム搬送装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記モータのトルクを制御するものである請求項1記載のフィルム搬送装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記離型フィルムの張力が前記金型により樹脂封止成形する成型品に応じて設定された張力となるように前記トルクを制御するものである請求項2記載のフィルム搬送装置。
【請求項4】
前記離型フィルムのメーカ、品番、幅、巻き長さ、厚み、ロール径の少なくともいずれか一つの特性情報と、前記金型により樹脂封止成形する成型品の型式情報とに対応する前記離型フィルムの張力を含む設定テーブルを記憶する記憶部を含み、
前記制御部は、前記設定テーブルを参照することにより前記離型フィルムの張力を決定するものである
請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルム搬送装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルム搬送装置を備えた樹脂封止装置。
【請求項6】
請求項4記載のフィルム搬送装置を備えた樹脂封止装置。
【請求項7】
離型フィルムを巻回した巻出しロールから前記離型フィルムを巻き出し、巻取りロールへ巻き取ることにより、樹脂封止成形を行う金型に張設する離型フィルムを搬送するフィルム搬送方法であって、
前記巻取りロールに巻き取られた使用後の離型フィルムの表面までの距離を測定することにより前記使用後の離型フィルムの径を計測すること、
前記計測された径に基づいて前記離型フィルムの張力が一定となるように前記巻取りロールを駆動するモータまたは前記巻出しロールを駆動するモータの少なくともいずれか一方を制御すること
を含むフィルム搬送方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型フィルムを巻回した巻出しロールから前記離型フィルムを巻き出し、巻取りロールへ巻き取ることにより、高温で熱硬化性樹脂を溶融、硬化させて樹脂封止成形を行う金型に張設する離型フィルムを搬送するフィルム搬送装置であって、
前記巻取りロールに巻き取られた使用後の離型フィルムであり前記樹脂封止成形の高温環境に晒されて前記金型のキャビティ凹部の型跡が残った凸凹の状態の離型フィルムの表面までの距離を測定することにより前記使用後の凸凹の状態の離型フィルムが巻き取られて不定の巻取り径となった巻取りロールの径を計測する計測部と、
前記計測部により計測された径に基づいて前記巻出しロールから離型フィルムを巻き出し使用後の凸凹の状態の離型フィルムを前記巻取りロールへ巻き取るときの離型フィルムを引っ力が一定となるように前記巻取りロールを駆動するモータのトルクを制御する制御部と
を含むフィルム搬送装置。
【請求項2】
前記離型フィルムのメーカ、品番、幅、巻き長さ、厚み、ロール径の少なくともいずれか一つの特性情報を含む設定テーブルを記憶する記憶部を含み、
前記制御部は、前記設定テーブルを参照することにより前記離型フィルムを引っ力を決定するものである
請求項記載のフィルム搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフィルム搬送装置を備えた樹脂封止装置。
【請求項4】
離型フィルムを巻回した巻出しロールから前記離型フィルムを巻き出し、巻取りロールへ巻き取ることにより、高温で熱硬化性樹脂を溶融、硬化させて樹脂封止成形を行う金型に張設する離型フィルムを搬送するフィルム搬送方法であって、
前記巻取りロールに巻き取られた使用後の離型フィルムであり前記樹脂封止成形の高温環境に晒されて前記金型のキャビティ凹部の型跡が残った凸凹の状態の離型フィルムの表面までの距離を測定することにより前記使用後の凸凹の状態の離型フィルムが巻き取られて不定の巻取り径となった巻取りロールの径を計測すること、
前記計測された径に基づいて前記巻出しロールから離型フィルムを巻き出し使用後の凸凹の状態の離型フィルムを前記巻取りロールへ巻き取るときの離型フィルムを引っ力が一定となるように前記巻取りロールを駆動するモータのトルクを制御すること
を含むフィルム搬送方法。