(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165456
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】コンクリートスラリー処理装置
(51)【国際特許分類】
B28C 7/16 20060101AFI20241121BHJP
B01D 21/18 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B28C7/16
B01D21/18 T
B01D21/18 B
B01D21/18 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081675
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】396000514
【氏名又は名称】モリ技巧株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112531
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】森 祐介
(72)【発明者】
【氏名】中畑 洋亮
(72)【発明者】
【氏名】平田 尚之
【テーマコード(参考)】
4G056
【Fターム(参考)】
4G056AA02
4G056AA07
4G056AA10
4G056CD36
4G056CD44
4G056CD47
4G056CD48
4G056CE02
4G056DA05
(57)【要約】
【課題】固形物と水との分離性能を向上させ比較的小さい水槽でも固形分を十分に沈降させられるようにし、狭い敷地の生コン工場でもこうした装置の設置を可能にする。また、コンベヤチェーンの負荷を軽減させる。
【解決手段】水槽1の底面部5から斜め上方に連なる傾斜面部6を形成し、該底面部から該傾斜面部に亘ってコンベヤチェーン51a~51dを張設し、該コンベヤチェーンを低速で駆動することで、該水槽の底面部に沈降した固形物71を該傾斜面部にゆっくり掻き揚げる一方、該水槽の一側に水切ゲート61を設けてコンクリートスラリー中の水分を流出させるようにしたコンクリートスラリー処理装置において、前記水槽の底面部を前記傾斜面部に向かって下向に緩やかに傾斜する緩傾斜面状に形成するとともに、前記コンベヤチェーンを該底面部に沿って緩やかな下向に駆動されるようにする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートスラリーが投入される平面視長方形状の水槽を形成し、該水槽の前縁に該水槽の底面部から斜め上方に連なる傾斜面部を形成し、該水槽の底面部から該水槽の傾斜面部に亘ってコンベヤチェーンを張設し、該コンベヤチェーンを低速で駆動することで、該水槽の底面部に沈降した固形物を該水槽の傾斜面部にゆっくり掻き揚げる一方、該水槽に水切ゲートを設け、コンクリートスラリー中の水分を該水切ゲートから流出させるようにしたコンクリートスラリー処理装置において、前記水槽の底面部を前記傾斜面部に向かって下向に緩やかに傾斜する緩傾斜面状に形成するとともに、前記コンベヤチェーンを該底面部に沿って緩やかな下向に駆動されるように張設したことを特徴とするコンクリートスラリー処理装置。
【請求項2】
コンクリートスラリーが投入される平面視長方形状の水槽を形成し、該水槽の前縁に該水槽の底面部から斜め上方に連なる傾斜面部を形成し、該水槽の底面部から該水槽の傾斜面部に亘ってコンベヤチェーンを張設し、該コンベヤチェーンを低速で駆動することで、該水槽の底面部に沈降した固形物を該水槽の傾斜面部にゆっくり掻き揚げる一方、該水槽に水切ゲートを設け、コンクリートスラリー中の水分を該水切ゲートから流出させるようにしたコンクリートスラリー処理装置において、前記コンベヤチェーンを前記水槽の底面部では前記傾斜面部に向かって緩やかな下向に駆動されるように張設し、該底面部が前記傾斜面部に向かって下向に緩やかに傾斜する緩傾斜面状に形成されるようにしたことを特徴とするコンクリートスラリー処理装置。
【請求項3】
水槽の底面部は、該水槽の傾斜面部の傾斜角度よりも緩やかな傾斜角度となるように設定したことを特徴とする請求項1または2に記載したコンクリートスラリー処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートミキサー車のドラムを洗浄した際に排出される泥水状のコンクリートスラリー(セメントスラッジともいう)を適切に処理するコンクリートスラリー処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に生コン工場では、生コンを配送して工場に戻ってきたコンクリートミキサー車のドラム内を洗浄水を注入し洗浄するが、その際に、ドラム内に残っていた生コン(残コン、または、戻コンと称される)が洗浄水とともに多量に排出されることから、その廃棄処理が問題となる。
下記特許文献1および特許文献2に示された装置は、このようなコンクリートスラリーを砂利、砂等の固形分と水分とを分離させ、それぞれ有効的に利用しようとする処理装置であって、コンクリートミキサー車から排出されたコンクリートスラリーを投入するため、大きな平面視長方形状の水槽を形成し、該水槽の前縁には該水槽の底面部から斜め上方に連なる傾斜面部が形成され、該水槽の底面部から該水槽の傾斜面部に亘ってコンベヤチェーンが張設され、該コンベヤチェーンを低速で駆動することで、該水槽の底面部に沈降した固形物を該水槽の傾斜面部にゆっくり掻き揚げる一方、該水槽の一側に複数本の円筒状のパイプを横架状に段積みしてなる水切ゲートを設け、コンクリートスラリー中の水分を各パイプの隙間から流出させ、その水分は洗浄水として再利用し、コンベヤチェーンによって掻き揚げられた固形分は、セメントの水和反応で固結させることにより、路盤材等に再利用できるようにしたものである。
【0003】
また、下記特許文献3は、この装置をさらに進化させたコンクリートスラリー処理装置を示すもので、上記した水槽の幅方向略々中央に該水槽の長手方向と平行なるように間仕切板を起立状に設けて該水槽を第1域と第2域とに仕切するとともに、第2域に上記のような水切ゲートを設けることで、第1域に投入したコンクリートスラリーが該間仕切板をUターンして第2域に流れて該コンクリートスラリー中の水分が該水切ゲートから排出されるようにし、固形物が沈降するに必要十分な滞留時間が得られて固形物が水槽内に沈降し易いようにすると同時に、前記間仕切板の上方にコンベヤチェーン帰戻用のガイドレールを配設し、無端状のコンベヤチェーンを前記水槽の底面部から傾斜面部に亘ってを往路とし、前記ガイドレールを帰路とするように張設し、該コンベヤチェーンを駆動することで、固形物を該傾斜面部に掻き揚げるとともに、帰戻り中のコンベヤチェーンにより水槽内が撹拌されないようにすることで、固形分の沈殿が妨害されないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4277057号公報
【特許文献2】特許第5638487号公報
【特許文献3】特開2019-18454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、これらのコンクリートスラリー処理装置は、大きい水槽を装備する必要があり占有面積が大であるので、生コン工場内等の狭い敷地に設置することが困難な場合があった。
そこで本発明は、広い設置面積を要していた水槽の形状を見直し、固形物と水との分離性能を維持しつつも小型化が可能であると同時に、コンベヤチェーンの負荷を軽減し得る新たなコンクリートスラリー処理装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのために本発明は、コンクリートスラリーが投入される平面視長方形状の水槽を形成し、該水槽の前縁に該水槽の底面部から斜め上方に連なる傾斜面部を形成し、該水槽の底面部から該水槽の傾斜面部に亘ってコンベヤチェーンを張設し、該コンベヤチェーンを低速で駆動することで、該水槽の底面部に沈降した固形物を該水槽の傾斜面部にゆっくり掻き揚げる一方、該水槽に水切ゲートを設け、コンクリートスラリー中の水分を該水切ゲートから流出させるようにしたコンクリートスラリー処理装置において、前記水槽の底面部を前記傾斜面部に向かって下向に緩やかに傾斜する緩傾斜面状に形成するとともに、前記コンベヤチェーンを該底面部に沿って緩やかな下向に駆動されるように張設したことを特徴とする。
また、本発明は、コンクリートスラリーが投入される平面視長方形状の水槽を形成し、該水槽の前縁に該水槽の底面部から斜め上方に連なる傾斜面部を形成し、該水槽の底面部から該水槽の傾斜面部に亘ってコンベヤチェーンを張設し、該コンベヤチェーンを低速で駆動することで、該水槽の底面部に沈降した固形物を該水槽の傾斜面部にゆっくり掻き揚げる一方、該水槽に水切ゲートを設け、コンクリートスラリー中の水分を該水切ゲートから流出させるようにしたコンクリートスラリー処理装置において、前記コンベヤチェーンを前記水槽の底面部では前記傾斜面部に向かって緩やかな下向に駆動されるように張設し、該底面部が前記傾斜面部に向かって下向に緩やかに傾斜する緩傾斜面状に形成されるようにしたことを特徴とする。
なお、本発明は、上記コンクリートスラリー処理装置において、水槽の底面部は、水槽の傾斜面部の傾斜角度よりも緩やかな傾斜角度となるように設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
コンベヤチェーンはその駆動により、水槽の底面部に堆積した固形物を低速にて該水槽のより深い部位に押し沈める作用があるので、該水槽中の固形物と水分との分離が促進される。また、同時に該コンベヤチェーンは、駆動により固形物を自重により底面部の傾斜に沿って下降動させるので、コンベヤチェーンの駆動に伴う負荷が軽減される。このため、コンベヤチェーンの駆動が常にスムースに行われるようになる。また、コンクリートスラリーの投入時に水槽内が大きく撹拌されてしまうことがなくなるので、固形物と水との分離性能が向上し、設置面積が比較的小さい水槽であっても固形分を十分に沈降させられるようになり、狭い敷地の工場でもこうした装置の設置を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態を示すコンクリートスラリー処理装置の縦断面図。
【
図2】本発明の実施形態を示すコンクリートスラリー処理装置の平面図。
【
図7】本発明の実施形態を示すコンクリートスラリー処理装置のコンベヤチェーンの斜視図。
【
図8】本発明の実施形態を示すコンクリートスラリー処理装置のコンベヤチェーンの斜視図。
【
図9】本発明の実施形態を示すコンクリートスラリー処理装置のレーキの作動状態を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1、および
図3、
図4に示されるように、水槽1は、鋼板製の両側板2,3と、後側板4と、底面部5とからなる上面が開放された平面視長方形状に形成され、該底面部5の前縁5bから斜め上方に連なる傾斜面部6を形成している。該傾斜面部6は、支柱6aによって支持され、該傾斜面部6の上端部に排出口9を開設している。また、該傾斜面部6の両側縁には側壁板7,8が形成される。なお、該傾斜面部6の傾斜角度αは水平面に対して20~30度程度に設定される。そして、前記水槽1の底面部5は、前記傾斜面部6に向かって傾斜角度βにて下向に緩やかに傾斜する傾斜面状に形成する。なお、この傾斜角度βは、任意であるが、実際には、上記傾斜面部6の傾斜角度αより小さい2~10度程度の緩やかな角度に設定する。
【0010】
また、水槽1の幅方向の略々中央に鋼板からなる間仕切板10を該水槽1の長手方向と平行なるように起立状に設け、
図3に示したように該水槽1内を該間仕切板10によって第1域1aと第2域1bとに2分割している。なお、該間仕切板10は前方縁が前記傾斜面部6までは達しておらず、該間仕切板10の前方縁と傾斜面部6と間に隙間があり、該隙間を通水部11としていて、第1域1aと第2域1bとを該通水部11にて連通させている。また、該間仕切板10は地上からの高さが3m以上で該水槽1の上方空間をも該間仕切板10によって仕切るようにしている。こうして、コンクリートミキサー車80のドラムからコンクリートスラリーが勢いよく排出されても、該コンクリートスラリーが該間仕切板10に当たることで、該コンクリートスラリーは前記第1域1aに確実に投入されるようにしている。
【0011】
また、前記水槽1の両側板2,3の外面側にそれぞれ適宜間隔でチャンネル部材からなる複数本の支柱20を適宜間隔で樹立し、該各支柱20上に横架した複数本の横架材21が前記間仕切板10の上端部上を横断し、該横架材21により樋形のルーフトレイ22を略水平であるが該水槽の後方に向けては僅かな下向きに傾斜するように支持している。該ルーフトレイ22は、
図4に示されるように、上面が開放され両側縁に側板85a,85bが形成されているとともに中仕切板86が形成され、該中仕切板86により該ルーフトレイ22内を第1域22aと第2域22bに仕切している。そして、その第1域22aと第2域22bの内底面にフラットバーからなるガイドレール23a~23dをそれぞれ該水槽1の長手方向と平行なるように敷設している。なお、
図6に示したように該水槽1の後部に樹立した支柱20によっては下向円弧状に形成された弧状ルーフトレイ24が支持され、該弧状ルーフトレイ24の内底面にそれぞれ前記各ガイドレール23a~23dの後端部と連なるように下向円弧状の転向レール24a~24dを固着している。
また、ルーフトレイ22の第2域22bの後端部に後述するように固形物を流落させるための落下口87を開設し、
図5に示したように該落下口87の下に傾斜シュート88を設け、該傾斜シュート88を前記間仕切板10に貫通させ、該傾斜シュート88の先端縁を前記水槽1の第1域1a上に延設している。
【0012】
また、水槽1の後部の両側板2,3間に支軸25を水平に横架し、該支軸25に円板状のガイドホイール26a~26dを適宜間隔で固設している。
また、
図10、
図11に示したように、水槽1の底面部5と傾斜面部6との境は緩やかに連なるように円弧面部5aが形成され、両側板2,3の該円弧面部5aと相対する部位にそれぞれガイド部材27a,27bを固設し、該ガイド部材27a,27bに形成されたガイド溝27cに横架棒29の両端部を上下方向にスライド可能に支持し、該横架棒29に扇形板31a~31dを固設し、該各扇形板31a~31dの先端部外周に円弧状の押付レール32a~32dを形成している。また、ガイド部材27a,27bの上方部位にて前記支柱20にブラケット30a,30bを固設し、該ブラケット30a,30bにネジ軸30cを貫挿し、該ネジ軸30cに螺着したナット30dとブラケット30a,30bの間にコイルばね30eを圧縮状態で配設し、該各ネジ軸30cの下方端を前記横架棒29の両端部寄りの前記扇形板31a,31dの基部外周に当接させている。このため、横架棒29,扇形板31a~31d,押付レール32a~32dは、該コイルばね30eより円弧面状底板5aに向けて弾性的に押圧される。なお、該各ネジ軸30cの上方端部にこの押圧域を制限するストッパ用ナット30fが螺合されている。このため、ネジ軸30cに対する前記ナット30dおよびナット30fの螺合部位を微調節することにより、押付レール32a~32dの高さや押圧力を調整し得るようにしている。
【0013】
また、
図1,
図2に示したように前記傾斜面部6の側壁板7,8の上端部付近に軸受34a,34bを設けることにより回転軸35を回転自在に軸支し、該回転軸35に4つのスプロケット36a~36dを適宜間隔で固設するとともに、前記側壁板7の上部に据付台38を構築し該据付台38上にモータと減速機とからなる駆動機構39を支持し、該駆動機構39の回転出力軸に固着したスプロケット40と前記回転軸35の一端部に固設したスプロケット41とに伝動チェーン42を巻掛し、該駆動機構39を作動させることで該伝動チェーン42を介して回転軸35が回転駆動され、スプロケット36a~36dが矢印の方向に低速で回転動されるようにしている。
【0014】
次に4本のコンベヤチェーン51a~51dについて
図7~
図9に従い説明する。なお
図7~
図9は2本のコンベヤチェーン51a,51bだけを示すが、コンベヤチェーン51c,51dも構成は同じである。該各コンベヤチェーン51a~51dは、多数のリンク45をそれぞれローラー46を間に介して連鎖することにより無端状(環状)に形成され、多数のリンク45の内の長手方向に一定個数の間隔にて外方にL字状に屈曲した取付片45aが一体に形成されたリンクを介在させている。そして、該取付片45aを利用して該コンベヤチェーン51a~51dに先端縁52a′,先端縁52b′がその環状の外周向になるように複数のレーキ52a,52bを適宜間隔で取着するとともに、先端縁90a′,先端縁90b′が環状の内周向になるように複数のスクレーパ90a,90bを止着している。レーキ52a,52bは長方形板状であって、取付金具53aに座板58とボルト・ナット59により固定されている。また、スクレーパ90a,90bは、前記レーキ52a,52bよりも小幅な板状であって、コンベヤチェーン51a,51bの間に位置する長方形状のものと、それぞれコンベヤチェーン51a,51bの外側に位置する小さな略正方形板状のものとからなり、いずれも先端縁90a′,先端縁90b′が前記レーキ52a,52b程には突出しない小幅な寸法に形成されている。そして、該各スクレーパ90a,90bは取付金具91aに座板92とボルト・ナット93により固定され、前記取付金具53aと該取付金具91aとを前記取付片45aに対しボルト45bを貫挿することにより取着される。
【0015】
そして、該各コンベヤチェーン51a~51dを前記ガイドホイール26a~26dの外周および
図11に示したように前記押付レール32a~32dの下側に通すことにより、該コンベヤチェーン51a~51dを水槽1の底面部5から傾斜面部6に亘って張設するとともに、該各コンベヤチェーン51a~51dを前記スプロケット36a~36dに巻掛し、該コンベヤチェーン51a~51dを
図4,
図5に示したようにさらに前記ルーフトレイ22のガイドレール23a~23d上および前記転向レール24a~24d上にそれぞれ前記ローラー46が摺接するように支持する。そしてさらに前記転向レール24a~24dに沿って該コンベヤチェーン51a~51dを下降させて水槽1中の前記ガイドホイール26a~26dの外周に巻き掛け、水槽1の底面部5に沿うようにすることで該コンベヤチェーン51a~51dを大きな環状に巻掛する。
【0016】
これにより、前記駆動機構39を作動させたとき、コンベヤチェーン51a~51dはスプロケット36a~36dによって牽引されて水槽1の底面部5と傾斜面部6に亘って
図1の矢印に示した方向に移動し、レーキ52a,52bを該底面部5から該傾斜面部6に沿って低速度でゆっくりと移動させる。そして該スプロケット36a~36dによって上方に転方したコンベヤチェーン51a~51dはガイドレール23a~23d上に支持されて後方へ帰戻し、転向レール24a~24dに沿って下向きに方向転換されて水槽1内に入り、ガイドホイール26a~26dの外周に摺接することで再び底面部5に沿って前方に進行し巡回する。このようにコンベヤチェーン51a~51dは、水槽1の底面部5から傾斜面部6に亘ってが往路となり前記ガイドレール23a~23d上が帰路となるように大きな環状に張設される。
【0017】
なお、コンベヤチェーン51a,51bは水槽1の前記第1域1aを傾斜面部6に向けて進行し、コンベヤチェーン51c,51dは水槽1の前記第2域1bを傾斜面部6に向けて進行する。該コンベヤチェーン51aとコンベヤチェーン51bとに亘っては前記したようにレーキ52aが固着され、コンベヤチェーン51cとコンベヤチェーン51dとに亘ってはレーキ52bを固着しているので、一方のレーキ52aは第1域1aの底面を擦りつつ傾斜面部6に向けて移動し、他方のレーキ52bは第2域1bの底面を擦りつつ傾斜面部6に向けて移動する。
また、コンベヤチェーン51a,51bが前記ルーフトレイ22上に支持されて帰戻する際に、
図4に示したように、前記スクレーパ90aは、該ルーフトレイ22の第1域22aの底面を擦りつつ後方に向けて移動し、前記スクレーパ90bは、第2域22bの底面を擦りつつ後方に向けて移動するようになる。
【0018】
一方、水槽1における前記第2域1bの前記通水部11から離れた部位であって側板3の端に、
図5,
図6に示したように、複数本のパイプ60a~60gを一鉛直面内にて水平横架状なるように段積してなる水切ゲート61を設け、該水切ゲート61が該水槽1の第2域1bの側板3の一部をなすようにしている。該水切ゲート61は、具体的には、適宜間隔で樹立したチャンネル部材からなる支柱62a,62b間に横架柱62cを設けることで門形に形成し、該支柱62a,62bの間に複数本のパイプ60a~60gの両端部を遊嵌することで該パイプ60a~60gを互いに線接触状態にして鉛直に段積し、該横架柱62cに止着した棒材64およびバネ65によって押圧部材66を下向きに付勢し、該押圧部材66を最上段のパイプ60aの上面に当接させて該パイプ60a~60gを弾性的に押し下げている。そして、該パイプ60aの下に位置するパイプ60b~60gの外周面にレバー67b~67gを突設し、前記横架柱62cに支持した流体圧シリンダ68b~68gの作動杆を該レバー67b~67gの先端部にピンを介して連結し、該流体圧シリンダ68b~68gを伸縮作動させることにより、該各パイプ60b~60gが自転するようにしている。なお、該パイプ60b~60gの両端部寄りの外周面にそれぞれクサビ状の突起69を固着し、パイプ60b~60gを自転させたときに該突起69が該パイプ60a~60g間に介入することで該各パイプ60a~60g間の隙間が適宜拡大され、目詰まりが解消されるようにしている。なお、70は水槽1の後側板4に設けられたオーバーフロー樋である。
【0019】
このように構成したコンクリートスラリー処理装置では、
図2に示したように、コンクリートミキサー車80が水槽1の横に前記第1域1aと相対するように停車され、該コンクリートミキサー車80から泥水状のコンクリートスラリーが該第1域1aに投入される。なお、間仕切板10は背高に形成されていることから、コンクリートミキサー車80から放出されたコンクリートスラリーが直接第2域1bに入るのが防がれる。そして第1域1aに投入されたコンクリートスラリーは、
図3に破断線の矢印で示したように、第1域1aを間仕切板10に沿って通水部11の方に流れ、該通水部11にてUターンして第2域1bに流れ、該第2域1bの終端部に設けられた水切ゲート61に至る。このようにコンクリートスラリーが間仕切板10をUターンして流れることで、コンクリートスラリーが水切ゲート61に到達するまでの時間が長くなり、コンクリートスラリー中の砂利,砂等の固形分が沈降するのに十分な滞留時間が得られる。
【0020】
そして、駆動機構39を作動させコンベヤチェーン51a~51dを巡回動させることにより、レーキ52a,52bが底面部5に堆積した固形物71を傾斜面部6に向けてゆっくりと押して行く。このとき、底面部5は傾斜面部6に向かって下向に緩やかに傾斜する緩傾斜面状に形成されているとともに、該コンベヤチェーン51a~51dは該底面部5に沿って緩やかな下向に駆動されることから、該底面部5に堆積した固形物を低速にて該水槽のより深い部位に押し沈める作用があるので、該水槽中の固形分と水分との分離が促進されると同時に、該コンベヤチェーン51a~51dは、駆動により固形物を自重により底面部5の傾斜に沿って下降動させるので、該コンベヤチェーン51a~51dの駆動に伴う前記機構39の負荷が軽減され、該コンベヤチェーン51a~51dが常にスムースに動き、駆動用モータ等に必要なパワー、消費電力等も軽減される。
【0021】
そして、このコンベヤチェーン51a~51dの駆動により、該固形物71が傾斜面部6に掻き揚げられ、該固形物71が傾斜面部6上をゆっくり上方に移動することで、該固形物71に付着していた水分の多くは該傾斜面部6上を流下し水槽1に戻る。このように固形物71を傾斜面部6の上方まで移動させることで水切がよくなり、水分割合が小さい固形物71が排出口9より排出される。なお、排出口9より排出された固形物71は、セメントの水和反応により硬い塊状に固まるので、安定廃棄物として処分、或いは路盤材として再利用される。
【0022】
なお、第2域1bに設けられている水切ゲート61まで流れ来た水は、該水切ゲート61のパイプ60a~60gの隙間から水槽外に排出され、排出された水はタンク(図示せず)に一時的に貯留した後、コンクリートミキサー車80を洗浄する際の洗浄水等として再利用される。該水切ゲート61は、複数本のパイプ60a~60gが線接触するように段積され、該パイプ60a~60gを上方から押圧部材66によって弾性的に押し下げていることから、該水切ゲート61まで流れ来ても未だ残っていたコンクリートスラッジ中の微砂等の固形物は該パイプ60a~60gによって堰き止められる一方、水分は該各パイプ60a~60g間の僅かな隙間から水槽外へ流出する。そして、適当な時期に前記シリンダ68b~68gを伸縮作動させることによっては、パイプ60b~60gが自転し、突起69が該各パイプ60a~60gの間に挟入し、該各パイプ60a~60gの隙間を拡大し得る。
【0023】
また、コンベヤチェーン51a~51dが固形物71を傾斜面部6に掻き上げる際に、該コンベヤチェーン51a~51dに一部の固形物が付着したまま前記ルーフトレイ22上に来ることで、該固形物が該ルーフトレイ22上に持ち込まれるが、前記スクレーパ90aが該ルーフトレイ22の第1域22aの底面を摺動し、該固形物を後方の弧状ルーフトレイ24を経て水槽1の第1域1aの後部に流落させるとともに、前記スクレーパ90bは第2域22bの底面を摺動し、第2域22bに持ち込まれた固形物を前記落下口87から傾斜シュート88に落下させ、さらに該傾斜シュート88の先端から該固形物を該水槽1の第1域1aの後部に流落させる。このように、コンベヤチェーン51a~51dがルーフトレイ22上に持ち込んだ固形物は、いずれも水槽1の第1域1aの後部に流落する。このため、水切ゲート61の近くにこうした固形物が落下することなく、水切ゲート61に直に固形物が帰来することによる目詰まり等の不都合がおきるおそれがない。
【0024】
また、水槽1に間仕切板10を設け、コンクリートミキサー車80等から第1域1aにコンクリートスラリーが投入されるようにしたことによっては、コンクリートスラリーが投入された際の該水槽1内のコンクリートスラリーの流動が該間仕切板10によって止められ、コンクリートスラリー投入時に第2域1bまで含めて水槽1全体が攪拌されることがないとともに、該コンクリートスラリーは第1域1aから該間仕切板10をUターンして第2域1bに流れ、水切ゲート61に達するので、コンクリートスラリーが該水槽1内に長時間滞留し、その間により多くの固形物71が底面部5に沈降し、水切ゲート61からは上澄水をスムースに排出させることができる。
【0025】
また、水槽1の底面部5は緩やかな傾斜面状に形成され、該水槽1の後方は水深が前方よりも浅くなるので、コンクリートスラリーをこの水深の浅い後方部に投入するようにすれば、投入時の衝撃により水槽内が大きく撹拌されてしまうことが無くなり、固形物71の沈降、上澄水の生成が妨害され難くなり、固形物と水との分離性能が向上する。このため、比較的小さい水槽でも固形分を十分に沈降させることができるようになり、占有設置面積が小さくできるので、狭い敷地しかないような生コン工場にもこうした装置の設置を可能にする。
【0026】
なお、以上の図示した実施形態では、水槽1の底面部5を担う鉄板を傾斜面状に形成したが、水槽底面部の鉄板は水平のままとし、コンベヤチェーン51a~51dを該底面部では傾斜面部に向かって緩やかな下向に駆動されるように張設するだけでも、レーキ52a,52bが接触しない部分ではコンクリート堆積物が該コンベヤチェーン51a~51dの移動方向に沿って傾斜状に固まることから、その底面部は自然と緩やかな傾斜面状に形成される。従って、本発明では、水槽の底面部を移動するコンベヤチェーン51a~51dが緩やかな下向になるように、例えば上記実施形態における上記ガイドホイール26a~26dの高さを設定することによっても構成することができる。なお、その際も、上記傾斜角度βは上記傾斜角度αよりも緩やかな傾斜角度となるように設定するのが好適である。
【0027】
なお、この実施形態ではパイプ60a~60gを段積してなる水切ゲートを設けたが、第2域1bに設ける水切ゲートは必ずしもこうした構造のものでなくても、従来からの濾過装置、脱水装置等を設けてもよい。
また、この実施形態では、間仕切板10によって水槽1を仕切した例、および、スクレーパ90aがルーフトレイ22上を帰戻りする構造の装置を示したが、水槽をこのように仕切していない装置、或いは、ルーフトレイ、ガイドレール等を有しない装置にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 水槽
5 底面部
6 傾斜面部
23a~23d ガイドレール
36a~36d スプロケット
39 駆動機構
51a~51d コンベヤチェーン
52a,52b レーキ
61 水切ゲート
71 固形物
80 コンクリートミキサー車
α 傾斜面部の傾斜角度
β 底面部の傾斜角度