(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165457
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】塗膜転写具
(51)【国際特許分類】
B43L 19/00 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
B43L19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081676
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000134589
【氏名又は名称】株式会社トンボ鉛筆
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100087893
【弁理士】
【氏名又は名称】中馬 典嗣
(72)【発明者】
【氏名】牧野 端慶
(57)【要約】
【課題】小型化されても、成型しやすい塗膜転写具を提供する。
【解決手段】本発明の塗膜転写具1は、供給リール4と、巻取リール5と、供給リール4の回転を巻取リール5に伝達する回転伝達機構10、供給リール4または巻取リール5と同軸の円周に沿って等間隔で複数設けられた係合歯51,72と、係合歯51,72と係合可能である係合爪84,85と、を備え、係合歯51,72または係合爪84,85の一方は、供給リール4または巻取リール5の一方のリールの回転とともに回転可能で、係合歯51,72と係合爪84,85との係合によりリールの一方向または両方向の回転が制止される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体の内部に配置可能な、
転写テープが巻装された供給リールと、
転写後の前記転写テープを巻き取る巻取リールと、
前記供給リールが回転したときに、その回転を前記巻取リールに伝達する回転伝達機構と、
前記供給リールまたは前記巻取リールと同軸の円周に沿って等間隔で複数設けられた係合歯と、
前記係合歯と係合可能である係合爪と、を備え、
前記係合歯または前記係合爪の一方は、前記供給リールまたは前記巻取リールの一方のリールの回転とともに回転可能で、
前記係合歯と前記係合爪との係合により前記リールの一方向または両方向の回転が制止される塗膜転写具であって、
前記係合爪は複数並んで配置される
塗膜転写具。
【請求項2】
前記係合歯と前記係合爪との係合は、複数並んで配置される前記係合爪のそれぞれの同じ側を向いた側面が前記係合歯と同時に係合することがない、
請求項1に記載の塗膜転写具。
【請求項3】
隣接する前記係合歯の間のピッチは、隣接する前記係合爪の間のピッチよりも長い、
請求項1に記載の塗膜転写具。
【請求項4】
隣接する前記係合歯の間のピッチは、複数並んで配置された前記係合爪のうちの、一方の端に位置する前記係合爪の頂部と他方の端に位置する前記係合爪の頂部との間の距離よりも長い、
請求項1に記載の塗膜転写具。
【請求項5】
前記係合爪は、1本のアームに複数並んで配置される、
請求項1に記載の塗膜転写具。
【請求項6】
前記係合歯は、一方の側面が歯側急斜面で、他方の側面が歯側緩斜面で、
前記係合爪は、前記歯側急斜面と噛み合う側面が爪側急斜面で、前記歯側緩斜面と噛み合う側面が爪側緩斜面で、
前記歯側急斜面と前記爪側急斜面とが当接することにより、前記供給リールまたは前記巻取リールの一方向の回転が制止される
請求項1~5のいずれか1項に記載の塗膜転写具。
【請求項7】
前記歯側急斜面と前記爪側急斜面とが当接することにより、前記供給リールまたは前記巻取リールの正転が制止される、
請求項6に記載の塗膜転写具。
【請求項8】
前記歯側急斜面と前記爪側急斜面とが当接することにより、前記供給リールまたは前記巻取リールの逆転が制止される、
請求項6に記載の塗膜転写具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貼着用又は修正用等の転写テープの塗膜を被転写面に転写する塗膜転写具に関する。
【背景技術】
【0002】
塗膜転写具として、前端に開口部を有する筐体内に供給リールと巻取リールを配置し、開口部より転写ヘッドを突出させ、供給リールから繰り出した転写テープを転写ヘッドの先端で反転させて巻取リールに巻き取らせる塗膜転写具がある。このような塗膜転写具において、供給リールや巻取リールの回転を制止する回転制止機構が設けられているものがある。このような回転制止機構は、一般的に、円周上に並んだ複数の係合歯と、その係合歯に係合する係合爪とを有し、一方向の相対回転のみ可能な構造を有している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、塗膜転写具が小型化されると、係合歯が形成される円周の径が小さくなる。また、係合歯と係合爪との係合ピッチを小さくしようとすると、係合歯の数が多くなる。そうすると係合歯が小さくなるので、部品の成型性が悪くなる。
【0005】
本発明は、小型化されても、成型しやすい塗膜転写具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下のものを提供する。
筐体と、前記筐体の内部に配置可能な、転写テープが巻装された供給リールと、転写後の前記転写テープを巻き取る巻取リールと、前記供給リールが回転したときに、その回転を前記巻取リールに伝達する回転伝達機構と、前記供給リールまたは前記巻取リールと同軸の円周に沿って等間隔で複数設けられた係合歯と、前記係合歯と係合可能である係合爪と、を備え、前記係合歯または前記係合爪の一方は、前記供給リールまたは前記巻取リールの一方のリールの回転とともに回転可能で、前記係合歯と前記係合爪との係合により前記リールの一方向または両方向の回転が制止される塗膜転写具であって、前記係合爪は複数並んで配置される塗膜転写具。
【0007】
前記係合歯と前記係合爪との係合は、複数並んで配置される前記係合爪のそれぞれの同じ側を向いた側面が前記係合歯と同時に係合することがなくてもよい。
【0008】
隣接する前記係合歯の間のピッチは、隣接する前記係合爪の間のピッチより長くてもよい。
【0009】
隣接する前記係合歯の間のピッチは、複数並んで配置された前記係合爪のうちの、一方の端に位置する前記係合爪の頂部と他方の端に位置する前記係合爪の頂部との間の距離より長くてもよい。
【0010】
前記係合爪は、1本のアームに複数並んで配置されていてもよい。
【0011】
前記係合歯は、一方の側面が歯側急斜面で、他方の側面が歯側緩斜面で、前記係合爪は、前記歯側急斜面と噛み合う側面が爪側急斜面で、前記歯側緩斜面と噛み合う側面が爪側緩斜面で、前記歯側急斜面と前記爪側急斜面とが当接することにより、前記供給リールまたは前記巻取リールの一方向の回転が制止されてもよい。
【0012】
前記歯側急斜面と前記爪側急斜面とが当接することにより、前記供給リールまたは前記巻取リールの正転が制止されてもよい。
【0013】
前記歯側急斜面と前記爪側急斜面とが当接することにより、前記供給リールまたは前記巻取リールの逆転が制止されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、小型化されても、成型しやすい塗膜転写具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態の塗膜転写具1の斜視図である。
【
図2】第1実施形態の塗膜転写具1を左前斜め上から見た分解斜視図である。
【
図3】第1実施形態の塗膜転写具1を右前斜め上から見た分解斜視図である。
【
図4】第1実施形態におけるばね部材9と、操作板8と、係合歯保持板7と、巻取リール5とを左側から見た図である。
【
図5】(a)は
図4のA1、(b)は
図4のA2の部分拡大図である。
【
図6】(a)は、
図5(a)に示す位置よりも巻取側係合爪84が1ピッチずれた位置に移動した状態を示した図であり、(b)は、
図5(b)に示す位置よりも供給側係合爪85が1ピッチずれた位置に移動した状態を示した図である。
【
図7】第2実施形態の塗膜転写具100の斜視図である。
【
図8】第2実施形態の塗膜転写具100を左前斜め上から見た分解斜視図である。
【
図9】第2実施形態の塗膜転写具100を右前斜め上から見た分解斜視図である。
【
図10】第2実施形態における筐体部材2L、操作板180、係合歯保持板130及び係合爪保持環120を有する回転機構110を右側から見た側面図である
【
図12】第2実施形態の変形例で、
図10に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態の塗膜転写具1を図面に基づいて説明する。
図1は、第1実施形態の塗膜転写具1の斜視図である。以下、使用時に右利きの使用者が塗膜転写具1を右手に持った時の左右、前後、上下を明細書中においても左右、前後、上下として説明する。
図2は、第1実施形態の塗膜転写具1を左前斜め上から見た分解斜視図である。
図3は、第1実施形態の塗膜転写具1を右前斜め上から見た分解斜視図である。
【0017】
塗膜転写具1は、筐体2と、筐体2の前側に設けられた開閉可能な蓋部21とを備える。蓋部21を開いて筐体2の前側に設けられた転写ヘッド3を露出させ、筐体2の前側の開口部2aから突出している転写ヘッド3を下方の被転写面(図示せず)に押し付けて、塗膜転写具1を後方に移動させることにより、転写ヘッド3に掛け回された転写テープ4Tの塗膜を被転写面に転写する。なお、
図1において、転写テープ4Tは図示を省略する。
図2,3において、供給リール4に巻装された転写テープ4Tは図示するが転写ヘッド3に掛け回された転写テープ4Tは図示を省略する。
【0018】
筐体2は、左右一対の筐体部材2Lと筐体部材2Rとを備える。筐体部材2Lと筐体部材2Rとの間には、塗膜転写前の転写テープ4Tが保持される供給リール4と、塗膜転写後の転写テープ4Tを巻き取る巻取リール5と、供給リール4の回転を巻取リール5に伝達する回転伝達機構10と、供給リール4の回転制御に用いられる係合歯保持板7と、供給リール4及び巻取リール5の回転制止を操作する操作板8と、操作板8を付勢するばね部材9と、ヘッド固定蓋8eとが配置されている。
【0019】
筐体部材2Rの内面には、供給リール保持軸22と、連結ギア保持軸23と、巻取リール保持軸24と、操作板保持軸25とが立設されている。供給リール保持軸22には、係合歯保持板7と、供給リール4と、供給リール用ギア11と、圧縮スプリング12と、第1スペーサ13と、回転力伝達環14と、第2スペーサ15とが回転可能に保持される。連結ギア保持軸23には、連結ギア6が回転可能に保持される。巻取リール保持軸24には、巻取リール5が回転可能に保持される。操作板保持軸25には、操作板8が回転可能に保持される。
【0020】
(供給リール4)
供給リール4は、円筒軸部の外周に塗膜転写前の転写テープ4Tが巻装される。円筒軸部の内面には、軸方向に延びるリブ状係合部4aが円周方向に一定の間隔で複数本設けられている。
【0021】
(回転伝達機構10)
回転伝達機構10は、塗膜転写時に発生した供給リール4の回転を巻取リール5に伝達する機構である。本実施形態において回転伝達機構10は、供給リール用ギア11と、圧縮スプリング12と、第1スペーサ13と、回転力伝達環14と、第2スペーサ15、連結ギア6、巻取リール用ギア5aとを備える。
【0022】
供給リール用ギア11は、端部に係合部11aを有する筒状の回転軸11bを備える。回転軸11bに、圧縮スプリング12、環状の第1スペーサ13、回転力伝達環14、第2スペーサ15が順に外嵌されている。第2スペーサ15が係合部11aに係合されることで、圧縮スプリング12、第1スペーサ13、回転力伝達環14、第2スペーサ15が抜け止めされ、供給リール用ギア11は、一体となって供給リール保持軸22に対して回転可能に保持される。
【0023】
供給リール用ギア11の回転軸11bは、外周面に形成された4箇所の平面部11cを有する。一方、第1スペーサ13及び第2スペーサ15の内面にも、平面部13a及び平面部15aが形成されている。平面部11cが平面部13a及び平面部15aと当接することにより第1スペーサ13と第2スペーサ15とが供給リール用ギア11の回転軸11bに回転不能に嵌合され、供給リール用ギア11と、第1スペーサ13と第2スペーサ15とが一体的に回転する。
【0024】
回転力伝達環14の外周面には、係合突起14aが設けられている。一方、供給リール4の内周面には、係合突起14aが係合するリブ状係合部4aが設けられている。係合突起14aがリブ状係合部4aに係合することにより、回転力伝達環14は供給リール4と一体的に回転する。
【0025】
圧縮スプリング12は、第1スペーサ13と供給リール用ギア11との間に圧縮された状態で挟持されている。圧縮スプリング12の復元力により、第1スペーサ13は回転力伝達環14側に押圧され、回転力伝達環14は第2スペーサ15側に押圧される。供給リール4が回転すると、回転力伝達環14が回転する。そうすると、圧縮スプリング12の復元力による、回転力伝達環14と第1スペーサ13との間の摩擦力及び回転力伝達環14と第2スペーサ15との間の摩擦力により、第1スペーサ13及び第2スペーサ15が、回転力伝達環14に対して互いの間の相対回転を可能としつつ回転し、それとともに供給リール用ギア11が回転する。
【0026】
(巻取リール5)
巻取リール5は、円筒軸部の左右に一対の円輪状のフランジを有し、巻取リール保持軸24に取り付けられ、右側のフランジの右面に巻取リール用ギア5aが配置され、左側のフランジの左面には、逆転制止ギア5bが配置されている。
【0027】
(連結ギア6)
連結ギア6は供給リール用ギア11と巻取リール用ギア5aとの間に配置され、供給リール用ギア11及び巻取リール用ギア5aと噛み合っている。
【0028】
(逆転制止ギア5b)
図4は、ばね部材9と、操作板8と、係合歯保持板7と、巻取リール5とを左側から見た図である。図中操作板8を二点鎖線で示す。
図5(a)は
図4のA1、
図5(b)は
図4のA2の部分拡大図である。
図6(a)は、
図5(a)に示す位置よりも巻取側係合爪84が1ピッチずれた位置に移動した状態を示した図であり、
図6(b)は、
図5(b)に示す位置よりも供給側係合爪85が1ピッチずれた位置に移動した状態を示した図である。
【0029】
巻取リール5の逆転制止ギア5bは、周方向に沿って、径方向外側に向かって突出した巻取側係合歯51を一定の間隔で複数備える。巻取側係合歯51の側面は、正転方向R1の前側が歯側緩斜面51gで、後側が歯側急斜面51sである。
【0030】
また、互いに隣接する巻取側係合歯51は、周方向に一定の間隔を開けて等間隔に配置されており、巻取側係合歯51と巻取側係合歯51との間には、円弧に沿って延びる平坦部52が設けられている。巻取側係合歯51と平坦部52とは交互に配置されている。互いに隣接する巻取側係合歯51の間のピッチ(巻取側係合歯51の頂部と頂部との間の周方向の距離)は、後述する2つの巻取側係合爪84の間のピッチ(巻取側係合爪84の頂部と頂部との間の周方向の距離)よりも長い。実施形態で互いに隣接する巻取側係合歯51のそれぞれの頂部と巻取側係合歯51の円周の中心とを結ぶ2本の線の間の角度θ1は、互いに隣接する巻取側係合爪84の、巻取側係合歯51と係合した状態におけるそれぞれの頂部と巻取側係合歯51の円周の中心を結ぶ2本の線の間の角度θ2の2倍である。この関係により、巻取側係合歯51間のピッチは、2つの巻取側係合爪84間のピッチの略2倍である。
【0031】
本実施形態では、後述のとおり巻取側係合爪84は2つであるが、実施形態とは異なり巻取側係合爪が3つ以上であっても良い。ここで、隣接する巻取側係合歯の間のピッチは、複数並んで配置された巻取側係合爪のうちの、一方の端に位置する前記係合爪の頂部と他方の端に位置する前記係合爪の頂部との間の距離よりも長いことが好ましい。
このような関係とすることで、複数並んで配置される係合爪のそれぞれ同じ側を向いた側面が係合歯とが同時に係合することなく、必要最小限の係合爪の数で係合爪と係合歯との係合ピッチを小さくすることができる。
【0032】
(係合歯保持板7)
係合歯保持板7は、供給リール4の左面に取り付けられる円板部材である。係合歯保持板7の中央には開口部7aが設けられ、開口部7aの側面は右側に延び、その端部には凹部7bが形成されている。凹部7bは、供給リール4のリブ状係合部4aに差し込まれ、供給リール4と係合歯保持板7とは一体となって相対回転不能となる。
【0033】
係合歯保持板7の左側、すなわち操作板8側の面には、外周に沿って円環部71が設けられ、円環部71の内面には、内径側に突出した供給側係合歯72が設けられている。供給側係合歯72は山形で、供給側係合歯72の側面は、正転方向R1の前側が略径方向に延びる歯側急斜面72sで、後側が歯側緩斜面72gである。
【0034】
供給側係合歯72は、周方向に一定の間隔を開けて等間隔に配置されており、供給側係合歯72と供給側係合歯72との間には、円弧に沿って延びる平坦部73が設けられている。供給側係合歯72と平坦部73とは交互に配置されている。互いに隣接する供給側係合歯72の間のピッチは、後述する2つの供給側係合爪85の間のピッチよりも長い。実施形態で互いに隣接する供給側係合歯72のそれぞれの頂部と供給側係合歯72の円周の中心とを結ぶ2本の線の間の角度γ1は、互いに隣接する供給側係合爪85の、供給側係合歯72と係合した状態におけるそれぞれの頂部と供給側係合歯72の円周の中心を結ぶ2本の線の間の角度γ2の2倍である。この関係により、供給側係合歯72間のピッチは、2つの供給側係合爪85間のピッチの略2倍である。
【0035】
(操作板8)
操作板8は、筐体部材2Lの内面側に配置されている。操作板8は、前端に設けられたヘッド保持溝8aと、ヘッド保持溝8aの後部に設けられた回転中心筒部8bと、略中央部に設けられた開口部8cとを備える。操作板8の後部は、係合歯保持板7の外周側にまで延びている。
【0036】
(ヘッド保持溝8a)
ヘッド保持溝8aには、転写ヘッド3の後部に設けられた保持軸31が差し込まれる。そして、転写ヘッド3の保持軸31をヘッド保持溝8aに挿入した状態で、ヘッド固定蓋8eをヘッド保持溝8aに被せると、転写ヘッド3がヘッド保持溝8aに保持される。
【0037】
(回転中心筒部8b)
回転中心筒部8bは、ヘッド保持溝8aの後側において、右側の筐体部材2R側に延びる。回転中心筒部8bには、操作板保持軸25が挿入される。操作板保持軸25を中心として操作板8は所定の角度回転可能である。
【0038】
(開口部8c)
開口部8cは、上下方向の径が前後方向よりやや長い略楕円形の楕円開口部81と、楕円開口部81の下部から後側に向かって延びる長方形開口部82とが連結された形状を有する。巻取リール5の逆転制止ギア5bは、楕円開口部81の内部に位置するように配置されている。
【0039】
(巻取側係合爪84)
長方形開口部82の後側から、楕円開口部81の下部に向かって巻取側回転制御アーム83が延びている。巻取側回転制御アーム83の先端には、楕円開口部81の内径側、すなわち上側に向って巻取側係合爪84が2つ並んで設けられている。巻取側係合爪84の側面は、正転方向R1の前側が爪側急斜面84sで、後側が爪側緩斜面84gである。
【0040】
(供給側係合爪85)
係合歯保持板7の外周側にまで延びる操作板8の後部には、供給側係合爪85が設けられている。供給側係合爪85は、操作板8の後部の右面に形成され、操作板8の外側、すなわち上側に向かって突となるように2つ並んで設けられ、供給側係合歯72と係合する。供給側係合爪85の側面は、正転方向R1の前側が爪側緩斜面85gで、後側が爪側急斜面85sである。
【0041】
(ばね部材9)
ばね部材9はコイル状に巻かれた円形部分から、両方の端部9aが円の接線方向に延び、一方の端部9aが操作板8に取り付けられ、他方の端部9aが筐体部材2Lの内面に取り付けられ、円形部分は回転中心筒部8bの外周に配置される。
【0042】
(使用開始時)
塗膜転写具1の使用時において転写ヘッド3が被転写面に押圧されると、操作板8は、
図4に示す位置から矢印r1の方向に、回転中心筒部8b、すなわち操作板保持軸25を中心として回転する。
【0043】
そうすると、操作板8の後側にある供給側係合爪85は、図示するように矢印r1の方向に下がる。これにより、供給側係合歯72と供給側係合爪85との係合が解除され、供給リール4が回転可能となり、供給リール4に巻装された転写テープ4Tの引き出しが可能となる。
【0044】
また、操作板8の巻取側係合爪84も、図示するように矢印r1の方向に下がる。これにより、巻取リール5の巻取側係合歯51と巻取側係合爪84との係合が解除され、巻取リール5が巻取側係合歯51と巻取側係合爪84との係合による抵抗がなく回転可能となる。なお、このとき、ばね部材9は、両方の端部9a間の間隔が狭まって付勢された状態となる。
【0045】
転写時に巻取リール5の巻取側係合歯51と巻取側係合爪84との係合が解除された状態で転写できるので、巻取側係合歯51と巻取側係合爪84とが当接するときに発する音がなく静音な状態で転写でき、さらに、転写時に必要な荷重を軽くすることができる。
なお、後述するが、巻取側係合歯51と巻取側係合爪84との係合が解除されなくても、巻取リール5は正転方向には回転可能ではある。
【0046】
(使用時)
次いで、転写作業により、転写テープ4Tが繰り出されると、供給リール4が回転する。供給リール4が回転すると、回転力伝達環14が回転する。回転力伝達環14が回転すると、圧縮スプリング12によって回転力伝達環14に対して押圧されている第1スペーサ13と第2スペーサ15も回転し、その回転力により供給リール用ギア11が回転する。供給リール用ギア11が回転すると、その回転力は、連結ギア6、巻取リール用ギア5aと伝達され、巻取リール5が回転して転写後の転写テープ4Tが巻き取られる。
【0047】
(非使用時)
(供給リール4の正転制止)
転写が終了し、転写ヘッド3を被転写面から離すと、ばね部材9の付勢力により、操作板8は、回転中心筒部8b、すなわち操作板保持軸25を中心として図中矢印r1と反対方向に回転して
図4に示す状態に戻る。
【0048】
このとき、
図5(b)に示すように係合歯保持板7の供給側係合歯72と供給側係合爪85とが係合する。この状態で、供給リール4及び係合歯保持板7が、正転方向R1に回転しようとすると、供給側係合歯72の正転方向R1の前側の歯側急斜面72sが、操作板8の供給側係合爪85の爪側急斜面85sと当接しているので、供給リール4及び係合歯保持板7の正転が制止される。
このように、被転写面への転写作業を終了すると同時に、確実に供給リール4の正転を制止することで、転写テープ4Tの塗膜の切断を良好にすることができる。
【0049】
このとき、供給リール4及び係合歯保持板7が、逆転方向に回転しようとすると、供給側係合歯72の歯側緩斜面72gが、供給側係合爪85の爪側緩斜面85gに沿って、供給側係合爪85を下方に押しながら移動する。操作板8の供給側係合爪85は、ばね部材9のばね力に抗して下方に移動し、供給側係合歯72が供給側係合爪85を乗り越えると、ばね部材9のばね力によって、操作板8の供給側係合爪85が上に上がる。つまり、非使用時における供給リール4の逆転は、供給側係合歯72と供給側係合爪85との係合によっては、妨げられない構造になっている。ただし、本実施形態では、非使用時に供給リール4を逆転方向に回転しようとしても、後述する巻取リール5の逆転防止が効いているため、供給リール4も実質的に逆転不能となる。
【0050】
ここで、供給側係合歯72は、周方向に一定の間隔を開けて等間隔に配置されており、供給側係合歯72と供給側係合歯72との間には、円弧に沿って延びる平坦部73が設けられている。供給側係合歯72と平坦部73とは交互に配置されている。そして、供給側係合歯72間のピッチは、2つの供給側係合爪85のピッチの略2倍である。
【0051】
図5(b)に示す位置において、2つ並んで配置されている供給側係合爪85のうちの一方の供給側係合爪85の爪側急斜面85sが歯側急斜面72sと当接し、これにより、係合歯保持板7すなわち供給リール4の正転を制止することができる。なお、この際、2つ並んで配置されている供給側係合爪85のうちの他方の供給側係合爪85の爪側急斜面85sは歯側急斜面72sと当接していない。
【0052】
また、供給側係合歯72が、
図5(b)に示す位置よりも供給側係合爪85が1ピッチずれた
図6(b)に示す位置に移動したとする。そうすると、2つ並んで配置されている供給側係合爪85のうちの他方の供給側係合爪85の爪側急斜面85sが歯側急斜面72sと当接し、これにより、係合歯保持板7すなわち供給リール4の正転を制止することができる。なお、この際、2つ並んで配置されている供給側係合爪85のうちの一方の供給側係合爪85の爪側急斜面85sは歯側急斜面72sと当接しなくなる。
すなわち、供給側係合爪85は複数並んで配置され、複数の供給側係合爪85のうちのいずれも、2つの爪側急斜面85sが、歯側急斜面72sと同時に当接することがない。
【0053】
(効果)
ここで、実施形態と異なり、供給側係合爪が1つで、供給側係合歯が連続して設けられ、間に平坦部が設けられていない場合、連続する供給側係合歯間のピッチが、供給側係合歯と供給側係合爪との間の係合ピッチとなる。このときの係合ピッチを第1ピッチとする。この場合、塗膜転写具1が小型化されると係合歯保持板7も小型化する。そうすると、供給側係合歯も小さくなり、係合歯保持板7の成型性が悪化する。
【0054】
しかし、実施形態のように、供給側係合爪85を2つ並べて設けると、供給側係合歯72間のピッチを2倍にしても、供給側係合歯72と供給側係合爪85との間の係合ピッチを第1ピッチのまま維持することができる。ゆえに、係合歯保持板7の成型性を悪化させることなく塗膜転写具1を小型化することができる。また、係合歯保持板7の小型化に関係なく、係合ピッチを小さくしたい場合においても、供給側係合爪85を複数並べて配置することで、供給側係合歯72間のピッチを変更することなく係合ピッチを小さくすることができる。ゆえに、係合歯保持板7の成型性を悪化させることがない。
【0055】
なお、実施形態では、互いに隣接する供給側係合歯72間のピッチが、互いに隣接する供給側係合爪85の間のピッチの略2倍であって、供給側係合爪85は2つ並んで配置されていた。しかし、これに限定されない。本発明において、互いに隣接する供給側係合歯のそれぞれの頂部と供給側係合歯の円周の中心とを結ぶ2本の線の間の角度が、互いに隣接する供給側係合爪の、供給側係合歯と係合した状態におけるそれぞれの頂部と供給側係合歯の円周の中心を結ぶ2本の線の間の角のn倍の場合、または、互いに隣接する供給側係合歯間のピッチが、互いに隣接する供給側係合爪の間のピッチの略n倍(nは2以上の整数。以下同じ。)の場合、係合爪はn以上並んで配置されていればよい。これらの場合、好ましい係合爪の数はnである。
【0056】
(巻取リール5の逆転制止)
上述のように、転写ヘッド3を被転写面から離すと、ばね部材9の付勢力により、操作板8は、回転中心筒部8b、すなわち操作板保持軸25を中心として図中矢印r1と反対方向に回転して
図4に示す状態に戻る。
【0057】
このとき、巻取リール5の巻取側係合歯51と巻取側係合爪84とが係合する。そして、巻取リール5が逆転方向に回転しようとすると、巻取側係合歯51の正転方向R1の後側の歯側急斜面51sは、操作板8の巻取側係合爪84の爪側急斜面84sに当接しているので、巻取リール5は逆転が制止される。
巻取リール5の逆転が制止されることで、輸送時等に転写ヘッドに掛け回された転写テープ4Tがたるむことを防止できる。
【0058】
転写テープ4Tにたるみが生じた場合、以下のようにして転写テープ4Tのたるみを取る。
非使用時に爪楊枝等の細い棒状なものを使用して、筐体部材2Rに開けられた円弧上の貫通穴を通して、供給リール用ギア11に円周状に設けられた複数の円形状の凹みに係合させてR1(正転)の方向(筐体部材2Rに記された矢印の方向。
図3参照)に供給リール用ギア11を回転させる。すると、連結ギア6、巻取リール用ギア5aを介して巻取リール5に正転方向の回転力が伝わる。一方、供給リール4は、供給側係合歯72の歯側急斜面72sと供給側係合爪85の爪側急斜面85sとが当接した状態であるため正転しない。
【0059】
巻取リール5が正転方向に回転しようとすると、操作板8の巻取側回転制御アーム83に設けられた巻取側係合爪84が、巻取側係合歯51の歯側緩斜面51gに沿って、巻取側回転制御アーム83を弾性変形させて、下方に移動する。巻取側係合歯51は、巻取側係合爪84を乗り越え、巻取リール5が正転する。
【0060】
このように、供給リール4の正転を制止した状態で巻取リール5を正転することができるので、たるんだ転写テープ4Tを巻取リール5に巻き取って、転写テープ4Tのたるみを解消することができる。
ただし、この場合の巻取リール5の正転は、巻取側係合爪84と巻取側係合歯51とが当接することによりカチカチ音が発生し、巻取側係合爪84が巻取側係合歯51を乗り越える際の回転抵抗がある。
【0061】
ここで、巻取側係合歯51は、周方向に一定の間隔を開けて等間隔に配置されており、巻取側係合歯51と巻取側係合歯51との間には、円弧に沿って延びる平坦部52が設けられている。巻取側係合歯51と平坦部52とは交互に配置されている。そして、巻取側係合歯51間のピッチは、2つの巻取側係合爪84のピッチの略2倍である。
【0062】
そして、
図5(a)に示す位置において、2つ並んで配置されている巻取側係合爪84のうちの一方の巻取側係合爪84の爪側急斜面84sが歯側急斜面51sと当接し、これにより、巻取リール5の逆転を制止することができる。なお、この際、2つ並んで配置されている巻取側係合爪84のうちの他方の巻取側係合爪84の爪側急斜面84sは歯側急斜面51sと当接していない。
【0063】
また、巻取側係合歯51が、
図5(a)に示す位置よりも巻取側係合爪84が1ピッチずれた
図6(a)に示す位置に移動したとする。そうすると、2つ並んで配置されている巻取側係合爪84のうちの他方の巻取側係合爪84の爪側急斜面84sが歯側急斜面51sと当接し、これにより、巻取リール5の逆転を制止することができる。なお、この際、2つ並んで配置されている巻取側係合爪84のうちの一方の巻取側係合爪84の爪側急斜面84sは歯側急斜面51sと当接しなくなる。
すなわち、巻取側係合爪84は複数並んで配置され、複数の巻取側係合爪84のうちのいずれも、2つの爪側急斜面84sが、歯側急斜面51sと同時に当接することがない。
【0064】
(効果)
ここで、実施形態と異なり、巻取側係合爪が1つで、巻取側係合歯が連続して設けられ、間に平坦部が設けられていない場合、連続する巻取側係合歯間のピッチが、巻取側係合歯と巻取側係合爪との間の係合ピッチとなる。このときの係合ピッチを第2ピッチとする。この場合、塗膜転写具1が小型化されると巻取リール5も小型化する。そうすると、巻取側係合歯51も小さくなり、巻取リール5の成型性が悪化する。
【0065】
しかし、実施形態のように、巻取側係合爪84を2つ並べて設けると、巻取側係合歯51間のピッチを2倍にしても、巻取側係合歯51と巻取側係合爪84との間の係合ピッチを第2ピッチのまま維持することができる。ゆえに、巻取リール5の成型性を悪化させることなく塗膜転写具1を小型化することができる。また、巻取リール5の小型化に関係なく、係合ピッチを小さくしたい場合においても、巻取側係合爪84を複数並べて配置することで、巻取側係合歯51間のピッチを変更することなく係合ピッチを小さくすることができる。ゆえに、巻取リール5の成型性を悪化させることがない。
【0066】
なお、実施形態では、互いに隣接する巻取側係合歯51間のピッチが、互いに隣接する巻取側係合爪84の間のピッチの略2倍であって、巻取側係合爪84は2つ並んで配置されていた。しかし、これに限定されない。本発明において、互いに隣接する巻取側係合歯間のピッチが、互いに隣接する巻取側係合爪の間のピッチのn倍の場合、係合爪はn以上並んで配置されていればよい。
【0067】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態の塗膜転写具100を図面に基づいて説明する。
図7は、第2実施形態の塗膜転写具100の斜視図である。
図8は、第2実施形態の塗膜転写具100を左前斜め上から見た分解斜視図である。
図9は、第2実施形態の塗膜転写具100を右前斜め上から見た分解斜視図である。なお、以下の説明において第1実施形態と同様の部分には同様の符号を付してその説明を省略するとともに、本願の特徴部と関連性の低い部分の詳細な説明も省略する。また、第2実施形態の
図7は、転写テープ4Tが転写ヘッド3に掛け回されている状態を示すが、
図8及び
図9では転写テープ4Tの図示を省略する。
【0068】
塗膜転写具100は、筐体部材2Rと筐体部材2Lとを含む筐体2を備える。筐体部材2Rの内面の後側の下部には、ベース板回転軸2bが設けられている。筐体部材2Lの内面における、後述する係合歯保持板130の外周淵に形成された歯車133が位置する部分には、突起部104が設けられている。
【0069】
塗膜転写具100は、さらに、筐体部材2Rに取り付けられるロック部材101と、ベース板102と、ベース板102に取り付けられた回転伝達機構10と、転写ヘッド3と、蓋部21とを備える。回転伝達機構10は、供給リール用ギア111、圧縮スプリング112、回転力伝達環114、連結ギア106、巻取リール駆動ギア105を備える。また、塗膜転写具100は、筐体2に対して着脱可能な着脱ユニット100Aを備え、着脱ユニット100Aは、操作板180と、操作板180に取り付けられた供給リール4と、巻取リール5と、係合爪保持環120及び係合歯保持板130を有する回転機構110とを備える。
【0070】
(ロック部材101)
ロック部材101は、詳細な説明は省略するが、操作部101aを回転操作することによって、筐体2の開閉のロックおよびロック解除の切り替えを行うことができる。
【0071】
(ベース板102)
ベース板102の左面には、供給リール保持軸122と、連結ギア保持軸123と、巻取リール保持軸124とが立設されている。供給リール保持軸122には、供給リール用ギア111、圧縮スプリング112、回転力伝達環114が保持され、着脱ユニット100Aの供給リール4が差し込まれる。連結ギア保持軸123には、連結ギア106が回転可能に保持される。巻取リール保持軸124には、巻取リール駆動ギア105が回転可能に保持され、着脱ユニット100Aの巻取リール5が差し込まれる。
【0072】
図9に示すように、ベース板102の後部下側には、回転穴103が設けられている。回転穴103は、
図8に示す筐体部材2Rに設けられたベース板回転軸2bに挿入される。塗膜転写具100の使用時において、転写ヘッド3が被転写面に押圧されると、ベース板102は
図8の矢印r2に示すように、回転穴103、すなわちベース板回転軸2bを中心として所定角度回転する。また、転写ヘッド3を被転写面から離すと、筐体部材2Rとベース板102との間に取り付けられた
図9に示すばね部材109の付勢力により、ベース板102は、回転穴103、すなわちベース板回転軸2bを中心として回転して元の状態に戻る。
【0073】
(巻取リール5)
図10は、筐体部材2L、操作板180、係合歯保持板130及び係合爪保持環120を有する回転機構110を右側から見た側面図で、巻取リール5を二点鎖線で示す。
図11は
図10の部分拡大図で、
図11(a)は
図10のS1、
図11(b)は
図10のS2の部分拡大図である。
【0074】
巻取リール5は、
図8に示すように第1実施形態と同様に左側のフランジの左面に、逆転制止ギア5bを備える。逆転制止ギア5bの巻取側係合歯51の側面は、正転方向R1の前側が歯側緩斜面51gで、後側が歯側急斜面51sである。
【0075】
なお、本実施形態で巻取側係合歯51は、周方向に等間隔に連続して配置されており、巻取側係合歯51と巻取側係合歯51との間に平坦部は設けられていない。しかし、これに限定されず、巻取側係合歯51を、周方向に一定の間隔を開けて等間隔に配置し、巻取側係合歯51と巻取側係合歯51との間に、円弧に沿って延びる平坦部を設け、巻取側係合歯51と平坦部とを交互に配置してもよい。この場合、後述するように本実施形態で巻取側係合爪185は1つであるが、巻取側係合爪185は複数個並べて配置することが好ましい。そして、互いに隣接する巻取側係合歯51間のピッチが、互いに隣接する巻取側係合爪185の間のピッチの略n倍の場合、巻取側係合爪185はn以上並んで配置されていることが好ましい。
【0076】
(操作板180)
操作板180は、筐体部材2Lの内面側に配置されている。操作板180は、前端に設けられたヘッド保持溝181と、係合歯保持板130を保持する第1保持凹部182と、後部に設けられた巻取リール5を保持する第2保持凹部183と、を有する。
【0077】
ヘッド保持溝181は、前後に延びる溝で、転写ヘッド3が保持される。
【0078】
第1保持凹部182は円形の凹部で、中央部に第1シャフト182aが形成され、第1シャフト182aに回転機構110である係合爪保持環120と係合歯保持板130とが回転可能に保持される。
【0079】
第2保持凹部183は円形の凹部で、中央部に第2シャフト183aが形成され、第2シャフト183aに巻取リール5が回転可能に保持される。第2保持凹部183の外淵の内周面から、第2保持凹部183の略径方向内側に向かって略長方形の開口部が設けられ、開口部の内部に、開口部の長辺と平行に延びる巻取側回転制御アーム184が設けられている。
【0080】
図11(a)に示すように、巻取側回転制御アーム184の先端には、第2保持凹部183に巻取リール5が保持されたときに、逆転制止ギア5bと当接する巻取側係合爪185が形成されている。巻取側係合爪185の側面は、巻取リール5が正転方向R1に回転したときの前側となる側が爪側急斜面185sで、後側が爪側緩斜面185gとなっている。なお、本実施形態において巻取側係合爪185は1つであるが、上述のようにこれに限定されない。
【0081】
(巻取リール5の逆転制止)
巻取リール5が、正転方向R1に対して逆転しようとすると、逆転制止ギア5bの巻取側係合歯51の歯側急斜面51sと、巻取側回転制御アーム184の巻取側係合爪185の爪側急斜面185sとが当接するので、巻取リール5の逆転が制止される。これにより、この第2実施形態では非使用時及び使用時のいずれにおいても巻取リール5が逆回転することを制止し、転写テープ4Tのたるみ発生を防止している。
【0082】
なお、巻取リール5が、正転方向R1に回転しようとすると、逆転制止ギア5bの巻取側係合歯51の歯側緩斜面51gが、巻取側回転制御アーム184の巻取側係合爪185の爪側緩斜面185gに沿って、巻取側回転制御アーム184を弾性変形させて、外側に押しながら移動する。つまり、巻取リール5の正転は妨げられない。
【0083】
(係合爪保持環120)
係合爪保持環120は供給リール4に対して回転不能に保持され、すなわち供給リール4とともに回転する。係合爪保持環120は円板状で、外周に沿って、円弧状に1本の供給側回転制御アーム125が延びている。供給側回転制御アーム125は、正転方向R1と逆側に向かって延びている。供給側回転制御アーム125の先端には、径方向外側に突出するとともに、先端が尖った供給側係合爪126が2つ並んで設けられている。それぞれの供給側係合爪126の側面は、供給リール4が正転方向R1に回転したときの前側となる側が爪側緩斜面126gで、後側が爪側急斜面126sとなっている。
【0084】
(係合歯保持板130)
係合歯保持板130は円板状で、外周に歯車133が形成されている。係合歯保持板130の右面には、所定径の円環状突起131が設けられている。
図11(b)に示すように、円環状突起131の内側面には、内径側に突出した供給側係合歯132が設けられている。供給側係合歯132の側面は、供給リール4が正転方向R1に回転したときの前側となる側が歯側急斜面132sで後側が歯側緩斜面132gとなっている。
【0085】
供給側係合歯132は、周方向に一定の間隔を開けて等間隔に配置されており、供給側係合歯132と供給側係合歯132との間には、円弧に沿って延びる平坦部132hが設けられている。供給側係合歯132と平坦部132hとは交互に配置されている。互いに隣接する供給側係合歯132の間のピッチは、2つの供給側係合爪126の間のピッチよりも長い。実施形態で供給側係合歯132間のピッチは、2つの供給側係合爪126間のピッチの略2倍である。
【0086】
(供給リール4の回転制御)
供給リール4(係合爪保持環120)が正転方向R1に逆転しようとすると、円環状突起131の供給側係合歯132の歯側急斜面132sと、供給側回転制御アーム125の供給側係合爪126の爪側急斜面126sとが当接するので、供給リール4の係合歯保持板130に対する逆転が制止される。
【0087】
供給リール4が、正転方向R1に回転しようとすると、円環状突起131の供給側係合歯132の歯側緩斜面132gが、供給側回転制御アーム125の供給側係合爪126の爪側緩斜面126gに沿って、供給側回転制御アーム125を外側に押しながら(弾性変形させながら)移動する。つまり、供給リール4の係合歯保持板130に対する正転は妨げられない。
【0088】
(自動テープ送り機構)
(使用開始時)
使用開始時において使用者が筐体2を把持し、転写ヘッド3を被転写面に当接させると、ベース板102とともに、転写ヘッド3と一体となった着脱ユニット100Aが、ばね部材109の付勢力に抗して筐体部材2Rの後方のベース板回転軸2bを中心に、筐体2に対して移動する。
【0089】
このとき、着脱ユニット100Aに含まれる係合歯保持板130も筐体部材2Lに対して移動する。そうすると、係合歯保持板130は筐体部材2Lに対して上方に移動する。これにより突起部104と歯車133との係合位置が、係合歯保持板130からみたときに下方に移動し、係合歯保持板130が回転する。
しかし、係合歯保持板130が回転したときに、供給リール4とともに回転する係合爪保持環120にとって回転方向は順方向である。ゆえに、係合爪保持環120と係合歯保持板130とは相対回転が可能で、係合歯保持板130のみ空回りして係合爪保持環120及び供給リール4に回転は伝わらない。
【0090】
(使用時)
被転写面への押圧状態が維持されたまま、使用者が筐体2を被転写面に対して後方に移動させると、転写テープ4T表面の塗膜が被転写面に転写される。また、送られた転写テープは、回転伝達機構10によって回転が伝達され、巻取リール5に巻き取られる。
【0091】
(使用終了時)
使用者が使用を終了して筐体2を被転写面から離すと、着脱ユニット100Aが筐体2と係合されたばね部材109の付勢力により、非使用時の方向に移動する。
それと同時に着脱ユニット100Aから見たときに突起部104と歯車133との係合位置が上に上がるので係合歯保持板130が回転する。この回転は、係合爪保持環120と係合歯保持板130とにとって相対的に逆転である。ゆえに係合爪保持環120と係合歯保持板130との相対回転はできず、係合歯保持板130と係合爪保持環120とは一体となって回転する。これにより供給リール4が回転(正転)し、転写テープ4Tが一定量搬送される。
【0092】
このように、使用終了後に転写テープ4Tが一定量送られることにより、転写後の塗膜が転写ヘッドに対して後退した位置で切れてしまった場合でも、塗膜位置が転写ヘッドに対し前進した状態になるため、次回の転写時に使用者が狙った位置から塗膜を転写することが可能となる。
【0093】
本実施形態では、供給リール4と一体的に回転する係合爪126が設けられ、係合する係合歯132により供給リール4の逆転が制止された状態で、係合歯側(係合歯保持板130)を回転させることで供給リール4を正転して転写テープ4Tを一定量搬送している。
【0094】
本実施形態とは異なり、供給リールに一体的に回転する係合歯を設け、係合する係合爪により供給リールの逆転が制止された状態で、係合爪側を回転(移動)させることで供給リールを正転して転写テープ4Tを一定量搬送してもよい。
【0095】
そして、
図11(b)に示す位置において、2つ並んで配置されている供給側係合爪126のうちの一方の供給側係合爪126の爪側急斜面126sが歯側急斜面132sと当接し、これにより、係合爪保持環120すなわち供給リール4の係合歯保持板130に対する逆転を制止することができる。なお、この際、2つ並んで配置されている供給側係合爪126のうちの他方の供給側係合爪126の爪側急斜面126sは歯側急斜面132sと当接していない。
【0096】
また、供給側係合歯132が、図示する位置よりも供給側係合爪126の1ピッチずれた位置に相対移動したとする。そうすると、2つ並んで配置されている供給側係合爪126のうちの他方の供給側係合爪126の爪側急斜面126sが歯側急斜面132sと当接し、これにより、係合爪保持環120すなわち供給リール4の係合歯保持板130に対する逆転を制止することができる。なお、この際、2つ並んで配置されている供給側係合爪126のうちの一方の供給側係合爪126の爪側急斜面126sは歯側急斜面132sと当接しなくなる。
すなわち、供給側係合爪126は複数並んで配置され、複数の供給側係合爪126のうちのいずれも、2つの爪側急斜面126sが、歯側急斜面132sと同時に当接することがない。
【0097】
(効果)
ここで、実施形態と異なり、供給側係合爪が1つで、供給側係合歯が連続して設けられ、間に平坦部が設けられていない場合、連続する供給側係合歯間のピッチが、供給側係合歯と供給側係合爪との間の係合ピッチとなる。このときの係合ピッチを第3ピッチとする。この場合、塗膜転写具100が小型化されると係合爪保持環120すなわち供給リール4も小型化する。そうすると、供給側係合歯132も小さくなり係合歯保持板130の成型性が悪化する。
【0098】
しかし、実施形態のように、供給側係合爪126を2つ並べて設けると、供給側係合歯132間のピッチを2倍にしても、供給側係合歯132と供給側係合爪126との間の係合ピッチを第3ピッチのまま維持することができる。ゆえに、係合歯保持板130の成型性を悪化させることなく塗膜転写具100を小型化することができる。また、塗膜転写具100の小型化に関係なく、係合ピッチを小さくしたい場合においても、供給側係合爪126を複数並べて配置することで、供給側係合歯132間のピッチを変更することなく係合ピッチを小さくすることができる。ゆえに、係合歯保持板130の成型性を悪化させることがない。
【0099】
なお、実施形態では、互いに隣接する供給側係合歯132間のピッチが、互いに隣接する供給側係合爪126の間のピッチの略2倍であって、供給側係合爪126は2つ並んで配置されていた。しかし、これに限定されない。本発明において、互いに隣接する供給側係合歯間のピッチが、互いに隣接する供給側係合爪の間のピッチの略n倍の場合、係合爪はn以上並んで配置されていればよい。
【0100】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、これに限定されず、種々の変更が可能である。例えば、転写テープ4Tを被転写面に当接し、そのままの位置で上から下に押圧することで、塗膜を転写するスタンプ型の塗膜転写具において、係合歯と係合爪との係合ピッチは一定のまま、係合爪を複数並べて配置することで、互いに隣接する係合歯の間のピッチを、係合爪が1つの場合に比べて大きくする構造を用いてもよい。
【0101】
また、第2実施形態においては、係合爪保持環120に1本の供給側回転制御アーム125が設けられていたが、これに限定されない。
図12は第2実施形態の変形例で、
図10に対応する図である。図示するように係合爪保持環120に2本の供給側回転制御アーム125を設けてもよい。
【0102】
この変形例においては、一方の供給側回転制御アーム125の先端には供給側係合爪126が2つ並んで設けられ、他方の供給側回転制御アーム125の先端の供給側係合爪126は1つである。この場合、供給側係合爪126が2つ並んでいる供給側回転制御アーム125は1ピッチごとに供給側係合歯132と噛み合うが、供給側係合爪126が1つの供給側回転制御アーム125は2ピッチに1度、供給側係合歯132と噛み合う。
【0103】
なお、本変形例において、係合爪保持環120に2本の供給側回転制御アーム125を設け、それぞれに複数の供給側係合爪126を設けてもよい。
【0104】
さらに別の変形例として、例えば第1実施形態において、供給側係合爪85の両方の側面を急斜面とし、さらに供給側係合歯72の両方の側面を急斜面とすることで、両者の係合により供給リール4の正転・逆転両方向の回転を制止する構造としてもよい。
【符号の説明】
【0105】
1,100 塗膜転写具
2 筐体
4 供給リール
4T 転写テープ
5 巻取リール
5b 逆転制止ギア
6 連結ギア
7 係合歯保持板
8 操作板
10 回転伝達機構
51 巻取側係合歯、51g 歯側緩斜面、51s 歯側急斜面
72 供給側係合歯、72g 歯側緩斜面、72s 歯側急斜面
83 巻取側回転制御アーム
84 巻取側係合爪、84g 爪側緩斜面、84s 爪側急斜面
85 供給側係合爪、85g 爪側緩斜面、85s 爪側急斜面
100A 着脱ユニット
120 係合爪保持環
125 供給側回転制御アーム
126 供給側係合爪、126g 爪側緩斜面、126s 爪側急斜面
130 係合歯保持板
132 供給側係合歯、132g 歯側緩斜面、132s 爪側急斜面
184 巻取側回転制御アーム
185 巻取側係合爪、185g 爪側緩斜面、185s 爪側急斜面