(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165459
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】使用原料量演算装置、該方法および該プログラム
(51)【国際特許分類】
C22B 9/00 20060101AFI20241121BHJP
G05B 19/418 20060101ALI20241121BHJP
C22B 7/00 20060101ALI20241121BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20241121BHJP
C21C 7/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C22B9/00
G05B19/418 Z
C22B7/00 A
G06Q50/04
C21C7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081678
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】井本 考亮
(72)【発明者】
【氏名】水原 宝英
【テーマコード(参考)】
3C100
4K001
4K013
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3C100AA18
3C100AA29
3C100AA56
3C100AA57
3C100BB03
3C100BB15
3C100BB27
3C100EE10
4K001BA22
4K001BA23
4K013BA00
4K013EA18
5L049CC04
5L050CC04
(57)【要約】
【課題】本発明は、再生原料を使用する場合でも、製品の品質を満たす元原料および再生原料の各使用原料量を求め得る使用原料量演算装置、該方法および該プログラムを提供する。
【解決手段】本発明の使用原料量演算装置1000は、原料のコストを表すコスト数理モデルの目的関数を所定の制約条件で最適化することによって前記原料の使用原料量を求解する最適化処理部12と、最適化処理部12で求めた前記原料の使用原料量を外部に出力する出力処理部13とを備え、前記原料のコストは、原料単価と使用原料量との乗算によって表され、前記原料は、元々、原料である元原料と原料に再生された再生原料とを含み、前記制約条件は、製品の品質に関する品質数理モデルの制約式を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料のコストを表すコスト数理モデルの目的関数を所定の制約条件で最適化することによって前記原料の使用原料量を求解する最適化処理部と、
前記最適化処理部で求めた前記原料の使用原料量を外部に出力する出力処理部とを備え、
前記原料のコストは、原料単価と使用原料量との乗算によって表され、
前記原料は、元々、原料である元原料と原料に再生された再生原料とを含み、
前記制約条件は、製品の品質に関する品質数理モデルの制約式を含む、
使用原料量演算装置。
【請求項2】
前記再生原料は、屑を前記原料にした第1再生原料と、不良品から前記原料に再生された第2再生原料とを含み、
前記制約条件は、さらに、前記第1再生原料に関する第1再生原料数理モデルの制約式と、前記第2再生原料に関する第2再生原料数理モデルの制約式とを含む、
請求項1に記載の使用原料量演算装置。
【請求項3】
前記第1再生原料は、内部で生じた第1屑を前記原料にした第1A再生原料と、外部から購入した第2屑を前記原料にした第1B再生原料とを含み、
前記第1再生原料数理モデルの制約式は、前記第1A再生原料に関する数理モデルの制約式である、
請求項2に記載の使用原料量演算装置。
【請求項4】
前記コスト数理モデルの目的関数は、さらに、前記再生原料を管理する管理コストを含み、
前記管理コストは、管理単価と前記再生原料の管理量との乗算によって表される、
請求項1に記載の使用原料量演算装置。
【請求項5】
前記制約条件は、さらに、前記原料に関わる二酸化炭素発生量に関するCO2数理モデルの制約式を含む、
請求項1に記載の使用原料量演算装置。
【請求項6】
前記元原料は、前記元原料の生成に関わる二酸化炭素発生量の異なる複数の種類を含む、
請求項1に記載の使用原料量演算装置。
【請求項7】
原料のコストを表すコスト数理モデルの目的関数を所定の制約条件で最適化することによって前記原料の使用原料量を求解する最適化処理ステップと、
前記最適化処理ステップで求めた前記原料の使用原料量を外部に出力する出力処理ステップとを備え、
前記原料のコストは、原料単価と使用原料量との乗算によって表され、
前記原料は、元々、原料である元原料と原料に再生された再生原料とを含み、
前記制約条件は、製品の品質に関する品質数理モデルの制約式を含む、
使用原料量演算方法。
【請求項8】
コンピュータを、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の使用原料量演算装置として機能させるための使用原料量演算プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料に、元々、原料である元原料と原料に再生された再生原料とを用いる場合に、前記元原料および前記再生原料の各使用原料量を求める使用原料量演算装置、使用原料量演算方法および使用原料量演算プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製造業等では、製品を生産する場合に、一般に、生産計画が立案される。前記生産計画を立案する場合、例えば特許文献1に開示されているように、コストを最小化する観点から、前記生産計画が立案されたり、あるいは例えば特許文献2に開示されているように、品質の観点から、前記生産計画が立案されたり、これら各観点から、生産計画が立案される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-12613号公報
【特許文献2】特開2012-155702号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、いわゆるカーボンニュートラルやSDGs(Sustainable Development Goals)の気運が高まり、製造業等でもこの観点での事業の実施が望まれる。このため、前記観点から、いわゆる屑や不良品を原料に再利用することが考えられる。前記屑は、生産過程(製造過程)で発生した原料のかけらや端であり、前記不良品は、生産後に所定の基準を満たさないため、製品として出荷することができなかった生産品である。しかしながら、元々、原料である元原料から製品を生産する場合に較べ、前記屑や不良品から原料に再生された再生原料から製品を生産すると、前記製品の品質に影響してしまうことがある。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、再生原料を使用する場合でも、製品の品質を満たす元原料および再生原料の各使用原料量を求め得る使用原料量演算装置、使用原料量演算方法および使用原料量演算プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる使用原料量演算装置は、原料のコストを表すコスト数理モデルの目的関数を所定の制約条件で最適化することによって前記原料の使用原料量を求解する最適化処理部と、前記最適化処理部で求めた前記原料の使用原料量を外部に出力する出力処理部とを備え、前記原料のコストは、原料単価と使用原料量との乗算によって表され、前記原料は、元々、原料である元原料と原料に再生された再生原料とを含み、前記制約条件は、製品の品質に関する品質数理モデルの制約式を含む。
【0007】
このような使用原料量演算装置は、元々、原料である元原料と原料に再生された再生原料とを含む原料のコストを表すコスト数理モデルの目的関数を、製品の品質に関する品質数理モデルの制約式を含む所定の制約条件で最適化することによって、前記元原料および前記再生原料の各使用原料量を求めるので、再生原料を使用する場合でも、製品の品質を満たす元原料および再生原料の各使用原料量を求めることができる。
【0008】
他の一態様では、上述の使用原料量演算装置において、前記再生原料は、屑を前記原料にした第1再生原料と、不良品から前記原料に再生された第2再生原料とを含み、前記制約条件は、さらに、前記第1再生原料に関する第1再生原料数理モデルの制約式と、前記第2再生原料に関する第2再生原料数理モデルの制約式とを含む。
【0009】
このような使用原料量演算装置は、屑を前記原料にした第1再生原料と、不良品から前記原料に再生された第2再生原料とを含む再生原料を使用する場合でも、製品の品質を満たす元原料および再生原料の各使用原料量を求めることができる。第1再生原料の使用には、屑の発生が必要であり、第2再生原料の使用には、不良品の発生に加えて、不良品から原料に再生する工数(処理、工程)が必要であるが、上記使用原料量演算装置は、制約条件に、第1および第2再生原料の各制約式を含めるので、このような必要事項を、元原料および再生原料の各使用原料量の演算に考慮できる。
【0010】
他の一態様では、上述の使用原料量演算装置において、前記第1再生原料は、内部で生じた第1屑を前記原料にした第1A再生原料と、外部から購入した第2屑を前記原料にした第1B再生原料とを含み、前記第1再生原料数理モデルの制約式は、前記第1A再生原料に関する数理モデルの制約式である。
【0011】
このような使用原料量演算装置は、内部で生じた第1屑を前記原料にした第1A再生原料と、外部から購入した第2屑を前記原料にした第1B再生原料とを含む再生原料を使用する場合でも、製品の品質を満たす元原料および再生原料の各使用原料量を求めることができる。
【0012】
他の一態様では、これら上述の使用原料量演算装置において、前記コスト数理モデルの目的関数は、さらに、前記再生原料を管理する管理コストを含み、前記管理コストは、管理単価と前記再生原料の管理量との乗算によって表される。好ましくは、上述の使用原料量演算装置において、前記再生原料は、屑を前記原料にした第1再生原料と、不良品から前記原料に再生された第2再生原料とを含み、前記管理コストは、第1再生原料の第1管理単価と前記第1再生原料の第1管理量との第1乗算結果と、第2再生原料の第2管理単価と前記第2再生原料の第2管理量との第2乗算結果との和で表される。好ましくは、前記第1管理量は、前記屑の発生から第1再生原料として使用可能となるまでの第1リードタイムに基づいて求められる。好ましくは、前記第2管理量は、前記不良品の発生から第2再生原料として使用可能となるまでの第2リードタイムに基づいて求められる。
【0013】
このような使用原料量演算装置は、さらに再生原料を管理する管理コストを考慮して、製品の品質を満たす元原料および再生原料の各使用原料量を求めることができる。
【0014】
他の一態様では、これら上述の使用原料量演算装置において、前記制約条件は、さらに、前記原料に関わる二酸化炭素発生量に関するCO2数理モデルの制約式を含む。
【0015】
このような使用原料量演算装置は、制約条件に、原料に関わる二酸化炭素発生量に関するCO2数理モデルの制約式を含めるので、このような原料に関わる二酸化炭素発生量を、元原料および再生原料の各使用原料量の演算に考慮できる。
【0016】
他の一態様では、これら上述の使用原料量演算装置において、前記元原料は、前記元原料の生成に関わる二酸化炭素発生量の異なる複数の種類を含む。好ましくは、上述の使用原料量演算装置において、前記元原料は、地金と、前記地金に関わる二酸化炭素発生量より少ない二酸化炭素発生量のグリーン地金とを含む。
【0017】
このような使用原料量演算装置は、二酸化炭素発生量の異なる複数の種類の元原料を用いる場合でも、製品の品質を満たす元原料および再生原料の各使用原料量を求めることができる。
【0018】
本発明の他の一態様にかかる使用原料量演算方法は、原料のコストを表すコスト数理モデルの目的関数を所定の制約条件で最適化することによって前記原料の使用原料量を求解する最適化処理ステップと、前記最適化処理ステップで求めた前記原料の使用原料量を外部に出力する出力処理ステップとを備え、前記原料のコストは、原料単価と使用原料量との乗算によって表され、前記原料は、元々、原料である元原料と原料に再生された再生原料とを含み、前記制約条件は、製品の品質に関する品質数理モデルの制約式を含む。
【0019】
このような使用原料量演算方法は、元々、原料である元原料と原料に再生された再生原料とを含む原料のコストを表すコスト数理モデルの目的関数を、製品の品質に関する品質数理モデルの制約式を含む所定の制約条件で最適化することによって、前記元原料および前記再生原料の各使用原料量を求めるので、再生原料を使用する場合でも、製品の品質を満たす元原料および再生原料の各使用原料量を求めることができる。
【0020】
本発明の他の一態様にかかる使用原料量演算プログラムは、コンピュータを、これら上述のいずれかの使用原料量演算装置として機能させるためのプログラムである。
【0021】
これによれば、使用原料量演算プログラムが提供でき、この使用原料量演算プログラムは、これら上述の使用原料量演算装置と同様な作用効果を奏する。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる使用原料量演算装置および使用原料量演算方法は、再生原料を使用する場合でも、製品の品質を満たす元原料および再生原料の各使用原料量を求めることができる。本発明によれば、使用原料量演算プログラムが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態における使用原料量演算装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】一例として、前記使用原料量演算装置の演算対象となるプラントの各物品の流れを説明するための図である。
【
図3】一例として、前記使用原料量演算装置に入力、記憶および利用される日程情報テーブルを示す図である。
【
図4】一例として、前記使用原料量演算装置に入力、記憶および利用されるチャージ情報テーブルを示す図である。
【
図5】一例として、前記使用原料量演算装置に入力、記憶および利用されるリードタイム情報テーブルを示す図である。
【
図6】一例として、屑情報を説明するための図である。
【
図7】一例として、不良品情報を説明するための図である。
【
図8】一例として、購入屑を説明するための図である。
【
図9】一例として、グリーン地金情報を説明するための図である。
【
図10】一例として、地金情報を説明するための図である。
【
図11】前記使用原料量演算装置の動作を示すフローチャートである。
【
図12】一例として、一実施例の結果を説明するための図である。
【
図13】
図12に用いられた制約式の制約値およびその計算結果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0025】
実施形態における使用原料量演算装置は、原料に、元々、原料である元原料と原料に再生された再生原料とを用いる場合に、前記元原料および前記再生原料の各使用原料量を求める装置である。この使用原料量演算装置は、原料のコストを表すコスト数理モデルの目的関数を所定の制約条件で最適化することによって前記原料の使用原料量を求解する最適化処理部と、前記最適化処理部で求めた前記原料の使用原料量を外部に出力する出力処理部とを備える。前記原料のコストは、原料単価と使用原料量との乗算によって表され、前記原料は、元々、原料である元原料と原料に再生された再生原料とを含み、前記制約条件は、製品の品質に関する品質数理モデルの制約式を含む。以下、このような使用原料量演算装置、ならびに、これに実装された使用原料量演算方法および使用原料量演算プログラムについて、より具体的に説明する。
【0026】
図1は、実施形態における使用原料量演算装置の構成を示すブロック図である。
図2は、一例として、前記使用原料量演算装置の演算対象となるプラントの各物品の流れを説明するための図である。
図3は、一例として、前記使用原料量演算装置に入力、記憶および利用される日程情報テーブルを示す図である。
図4は、一例として、前記使用原料量演算装置に入力、記憶および利用されるチャージ情報テーブルを示す図である。
図5は、一例として、前記使用原料量演算装置に入力、記憶および利用されるリードタイム情報テーブルを示す図である。
図6は、一例として、屑情報を説明するための図である。
図7は、一例として、不良品情報を説明するための図である。
図8は、一例として、購入屑を説明するための図である。
図9は、一例として、グリーン地金情報を説明するための図である。
図10は、一例として、地金情報を説明するための図である。
【0027】
実施形態における使用原料量演算装置1000は、例えば、
図1に示すように、制御処理部1と、記憶部2と、入力部3と、出力部4と、インターフェース部(IF部)5とを備える。
【0028】
実施形態における使用原料量演算装置1000は、上述したように、原料に、元々、原料(自然から採取された資源から生成された本来的な原料)である元原料と原料に再生された再生原料とを用いる場合に、前記元原料および前記再生原料の各使用原料量を求める装置である。これら元原料と再生原料とを用いる事業であれば、任意の事業に、実施形態における使用原料量演算装置1000を用いることが可能であるが、ここでは、その一例として、製造業、より具体的には、
図2に示す金属プラントに、実施形態における使用原料量演算装置1000が適用される。この金属プラントでは、原料から上工程で半製品が製造され、この製造した半製品からその他工程で製品が製造される。前記原料には、前記元原料と前記再生原料とが含まれる。前記再生原料には、屑を前記原料にした第1再生原料と、不良品から前記原料に再生された第2再生原料とが含まれる。前記屑は、上述したように、生産過程(製造過程)で発生した原料のかけらや端であり、前記不良品は、生産後に所定の基準を満たさないため、製品として出荷することができなかった生産品である。前記第1再生原料は、内部で生じた第1屑(内部発生屑、自社屑)を前記原料にした第1A再生原料と、外部から購入した第2屑(購入屑)を前記原料にした第1B再生原料とが含まれる。
図2に示す例では、第1A再生原料は、
図2に示す金属プラントで生じた第1屑を原料にしたものであり、第1B再生原料は、
図2に示す金属プラント外で生じた第1屑を購入して原料にしたものである。前記元原料には、前記元原料の生成に関わる二酸化炭素発生量の異なる複数の種類が含まれ、
図2に示す例では、前記元原料には、地金と、前記地金に関わる二酸化炭素発生量より少ない二酸化炭素発生量のグリーン地金(G地金)とを含む。
【0029】
図1に戻って、入力部3は、制御処理部1に接続され、例えば、演算の開始を指示するコマンド等の各種コマンド、および、日程情報等の後述の各データ等の、使用原料量演算装置1000を動作させる上で必要な各種データを前記使用原料量演算装置1000に入力する機器であり、例えば、キーボード、マウス、および、所定の機能を割り付けられた複数の入力スイッチ等である。出力部4は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って、入力部3から入力されたコマンドやデータ、および、演算結果の各使用原料量等を出力する機器であり、例えばCRTディスプレイ、LCD(液晶表示装置)および有機ELディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。
【0030】
なお、入力部3および出力部4は、タッチパネルより構成されてもよい。このタッチパネルを構成する場合において、入力部3は、例えば抵抗膜方式や静電容量方式等の操作位置を検出して入力する位置入力装置であり、出力部4は、表示装置である。このタッチパネルでは、表示装置の表示面上に位置入力装置が設けられ、表示装置に入力可能な1または複数の入力内容の候補が表示され、ユーザが、入力したい入力内容を表示した表示位置に触れると、位置入力装置によってその位置が検出され、検出された位置に表示された表示内容がユーザの操作入力内容として使用原料量演算装置1000に入力される。このようなタッチパネルでは、ユーザは、入力操作を直感的に理解し易いので、ユーザにとって取り扱い易い使用原料量演算装置1000が提供される。
【0031】
IF部5は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って、例えば、外部の機器との間でデータを入出力する回路であり、例えば、シリアル通信方式であるRS-232Cのインターフェース回路、Bluetooth(登録商標)規格を用いたインターフェース回路、および、USB規格を用いたインターフェース回路等である。また、IF部5は、例えば、データ通信カードや、IEEE802.11規格等に従った通信インターフェース回路等の、外部の機器と通信信号を送受信する通信インターフェース回路であってもよい。
【0032】
記憶部2は、制御処理部1に接続され、制御処理部1の制御に従って、各種の所定のプログラムおよび各種の所定のデータを記憶する回路である。前記各種の所定のプログラムには、例えば、制御処理プログラムが含まれ、前記制御処理プログラムには、例えば、制御プログラム、最適化処理プログラムおよび出力処理プログラム等が含まれる。前記制御プログラムは、使用原料量演算装置1000の各部2~5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御するプログラムである。前記最適化処理プログラムは、原料のコストを表すコスト数理モデルの目的関数を所定の制約条件で最適化することによって前記原料の使用原料量を求解するプログラムである。前記出力処理プログラムは、前記最適化処理プログラムで求めた前記原料の使用原料量を外部に出力するプログラムである。前記各種の所定のデータには、例えば、日程情報、チャージ情報、リードタイム情報(LT情報)および原料情報等の、これら各プログラムを実行する上で必要なデータが含まれる。
【0033】
このような記憶部2は、例えば不揮発性の記憶素子であるROM(Read Only Memory)や書き換え可能な不揮発性の記憶素子であるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等を備える。そして、記憶部2は、前記所定のプログラムの実行中に生じるデータ等を記憶するいわゆる制御処理部1のワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等を含む。また、記憶部2は、比較的記憶容量の大きいハードディスク装置を備えて構成されてもよい。
【0034】
記憶部2は、日程情報、チャージ情報、LT情報および原料情報それぞれを記憶するために、日程情報記憶部21、チャージ情報記憶部22、リードタイム情報記憶部(LT情報記憶部)23および原料情報記憶部24を機能的に備える。
【0035】
日程情報記憶部21は、日程情報を記憶するものである。前記日程情報は、当該使用原料量演算装置1000が適用される金属プラントにおいて、再生原料の流通状況を表す情報である。
図2に示す金属プラントでは、再生原料は、上述したように、屑を原料にした第1再生原料と、不良品から原料に再生された第2再生原料とを含むので、この日程情報は、屑の発生日(発生時点)およびその発生量、不良品の発生日(発生時点)およびその発生量、ならびに、前記不良品を原料に再生する共有設備の空き時間(使用可能時間)およびその処理能力である。
【0036】
この日程情報は、本実施形態では、テーブル形式で日程情報記憶部21に記憶されている。この日程情報を登録する日程情報テーブルTB1は、例えば、
図3に示すように、日付dを登録する日付フィールド101と、前記日付フィールド101に登録された日dにおける共用設備番号i(この例ではi=1)の共用設備の空き時間F
1d[Hr]を登録する共用設備空き時間フィールド102と、前記日付フィールド101に登録された日dにおける不良品番号k(この例ではk=1)の不良品に対する共用設備番号i(この例ではi=1)の共用設備の処理能力A
11d[Hr/Ton]を登録する不良品処理能力フィールド103と、前記日付フィールド101に登録された日dにおける屑番号j(この例ではj=1)の屑に対する屑(第1屑)の発生量SQ
1d[Ton]を登録する屑発生量フィールド104と、前記日付フィールド101に登録された日dにおける不良品番号k(この例ではk=1)の不良品に対する不良品の発生量dQ
1d[Ton]を登録する不良品発生量フィールド105とを備え、日ごとレコードを持つ。前記共用設備番号は、共用設備を特定し識別するための識別子(ID)の一例である。前記不良品番号は、不良品を特定し識別するための識別子(ID)の一例である。前記屑番号は、屑(第1屑)を特定し識別するための識別子(ID)の一例である。
【0037】
チャージ情報記憶部22は、チャージ情報を記憶するものである。チャージは、金属プラントにおいて、金属の製造工程での最小生産単位をいい、前記チャージ情報は、当該使用原料量演算装置1000が適用される金属プラントにおいて、前記上工程で製造する半製品の生産計画を表す情報であり、本実施形態では、さらに、前記半製品を製造する際の制約条件の制約値を含む。
図2に示す金属プラントでは、このチャージ情報は、チャージ番号、前記チャージ番号のチャージを溶解(処理)する溶解日(処理日)およびその溶解量(処理量)、ならびに、その二酸化炭素コスト(CO2コスト)の上限値CCO
mおよび品質コストの上限値CS
mである。物品のCO2コストは、前記物品に関わる二酸化炭素発生量であり、前記CO2コストCCO
mは、チャージ番号mのチャージにおける、物品のCO2コストの総量の上限値である。前記チャージ番号は、チャージを特定し識別するための識別子(ID)の一例である。
【0038】
このチャージ情報は、本実施形態では、テーブル形式でチャージ情報記憶部22に記憶されている。このチャージ情報を登録するチャージ情報テーブルTB2は、例えば、
図4に示すように、チャージ番号mを登録するチャージ番号フィールド111と、チャージ番号フィールド111に登録されたチャージ番号mのチャージを溶解する溶解日CD
mを登録する溶解日フィールド112と、チャージ番号フィールド111に登録されたチャージ番号mのチャージにおける溶解量CQ
m[Ton]を登録する溶解量フィールド113と、チャージ番号フィールド111に登録されたチャージ番号mのチャージにおけるCO2コストの上限値CCO
m[kg]を登録するCO2コスト上限値フィールド114と、チャージ番号フィールド111に登録されたチャージ番号mのチャージにおける品質コストの上限値CS
mを登録する品質コスト上限値フィールド115とを備え、チャージ(チャージ番号)ごとにレコードを持つ。
【0039】
LT情報記憶部23は、LT情報を記憶するものである。再生原料は、使用可能となるまで時間を要するため、LT情報は、この時間を表す情報としてLT情報記憶部23に記憶される。すなわち、前記LT情報は、本実施形態では、再生原料に関するリードタイムを表す情報であり、発生から再生原料となるまでに利用される設備ごとにリードタイムが設けられる。
図2に示す金属プラントでは、前記LT情報TB3は、
図5に示すように、屑(第1屑)の発生から溶解可能となるまでのリードタイム(屑溶解リードタイム)LT
1
S[日]、不良品の発生から共用設備で処理可能となるまでのリードタイム(不良品処理リードタイム)LT
1
D1[日]、および、共用設備で処理されてから溶解可能となるまでのリードタイム(不良品溶解リードタイム)LT
1
D2[日]、である。
【0040】
原料情報記憶部24は、原料情報を記憶するものである。前記原料情報は、原料に関する所定の情報である。
図2に示す金属プラントでは、原料は、屑(第1屑、内部発生屑)を原料にした第1A再生原料、不良品から原料に再生した第2再生原料、第2屑(購入屑)を原料にした第1B再生原料、G地金および地金であるので、前記原料情報は、これら第1A再生原料、第2再生原料、第1B再生原料、G地金および地金それぞれの各情報を含む。
【0041】
第1A再生原料の原料情報(第1A再生原料情報)は、屑(第1屑、内部発生屑)の種類、その金銭コストSCを表す金銭コスト情報、その管理コストDSCSを表す管理コスト情報、そのCO2コストSCOを表すCO2コスト情報、および、その品質コストSSを表す品質コスト情報である。この第1A再生原料情報は、本実施形態では、テーブル形式で原料情報記憶部24に記憶されている。この第1A再生原料情報を登録する第1A再生原料情報テーブルTB4は、例えば、
図6に示すように、第1屑の種類を特定し識別するための識別子の一例である所内発生屑種類番号jを登録する所内発生屑種類番号フィールド131と、所内発生屑種類番号フィールド131に登録されている所内発生屑種類番号jの第1屑における金銭コストSC
j[円/Ton]を登録する金銭コスト情報フィールド132と、所内発生屑種類番号フィールド131に登録されている所内発生屑種類番号jの第1屑における管理コストDSCS
j[円/Ton・日]を登録する管理コスト情報フィールド133と、所内発生屑種類番号フィールド131に登録されている所内発生屑種類番号jの第1屑におけるCO2コストSCO
j[kg/Ton]を登録するCO2コスト情報フィールド134と、所内発生屑種類番号フィールド131に登録されている所内発生屑種類番号jの第1屑における品質コストSS
jを登録する品質コスト情報フィールド135とを備え、第1屑の種類(所内発生屑種類番号j)ごとにレコードを持つ。
【0042】
第2再生原料の原料情報(第2再生原料情報)は、不良品の種類、その金銭コストDCを表す金銭コスト情報、その管理コストDSCDを表す管理コスト情報、そのCO2コストDCOを表すCO2コスト情報、および、その品質コストDSを表す品質コスト情報である。この第2再生原料情報は、本実施形態では、テーブル形式で原料情報記憶部24に記憶されている。この第2再生原料情報を登録する第2再生原料情報テーブルTB5は、例えば、
図7に示すように、不良品の種類を特定し識別するための識別子の一例である不良品種類番号kを登録する不良品種類番号フィールド141と、不良品種類番号フィールド141に登録されている不良品種類番号kの不良品における金銭コストDC
k[円/Ton]を登録する金銭コスト情報フィールド142と、不良品種類番号フィールド141に登録されている不良品種類番号kの不良品における管理コストDSCD
k[円/Ton・日]を登録する管理コスト情報フィールド143と、不良品種類番号フィールド141に登録されている不良品種類番号kの不良品におけるCO2コストDCO
k[kg/Ton]を登録するCO2コスト情報フィールド144と、不良品種類番号フィールド141に登録されている不良品種類番号kの不良品における品質コストDS
kを登録する品質コスト情報フィールド145とを備え、不良品の種類(不良品種類番号k)ごとにレコードを持つ。
【0043】
第1B再生原料の原料情報(第1B再生原料情報)は、第2屑(購入屑)の種類、その金銭コストPSCを表す金銭コスト情報、そのCO2コストPSCOを表すCO2コスト情報、および、その品質コストPSSを表す品質コスト情報である。なお、購入屑は、基本的に必要の都度、購入されるので、その管理コストは、省略されているが、使用日以前に事前に購入屑が購入され在庫とされる場合を勘案するために、その管理コストDSCPが第1B再生原料情報に含まれてもよい。この第1B再生原料情報は、本実施形態では、テーブル形式で原料情報記憶部24に記憶されている。この第1B再生原料情報を登録する第1B再生原料情報テーブルTB6は、例えば、
図8に示すように、第2屑の種類を特定し識別するための識別子の一例である購入屑種類番号pを登録する購入屑種類番号フィールド151と、購入屑種類番号フィールド151に登録されている購入屑種類番号pの第2屑における金銭コストPSC
p[円/Ton]を登録する金銭コスト情報フィールド152と、購入屑種類番号フィールド151に登録されている購入屑種類番号pの第2屑におけるCO2コストPSCO
p[kg/Ton]を登録するCO2コスト情報フィールド154と、購入屑種類番号フィールド151に登録されている購入屑種類番号pの第2屑における品質コストPSS
pを登録する品質コスト情報フィールド155とを備え、第2屑の種類(購入屑種類番号p)ごとにレコードを持つ。
【0044】
グリーン地金の原料情報(G地金原料情報)は、G地金の種類、その金銭コストGCを表す金銭コスト情報、および、そのCO2コストGCOを表すCO2コスト情報である。なお、G地金は、基本的に必要の都度、購入されるので、その管理コストは、省略されているが、使用日以前に事前にG地金が購入され在庫とされる場合を勘案するために、その管理コストDSCGがG地金原料情報に含まれてもよい。また、必要な品質に応じたG地金が購入されるので、その品質コストは、0で省略されている。このG地金原料情報は、本実施形態では、テーブル形式で原料情報記憶部24に記憶されている。このG地金原料情報を登録するG地金原料情報テーブルTB7は、例えば、
図9に示すように、G地金の種類を特定し識別するための識別子の一例であるG地金種類番号gを登録するG地金種類番号フィールド161と、G地金種類番号フィールド161に登録されているG地金種類番号gのG地金における金銭コストGC
g[円/Ton]を登録する金銭コスト情報フィールド162と、G地金種類番号フィールド161に登録されているG地金種類番号gのG地金におけるCO2コストGCO
g[kg/Ton]を登録するCO2コスト情報フィールド164とを備え、G地金の種類(G地金種類番号g)ごとにレコードを持つ。
【0045】
地金の原料情報(地金原料情報)TB8は、
図10に示すように、地金の金銭コストAC[円/Ton]を表す金銭コスト情報、および、そのCO2コストACO[kg/Ton]を表すCO2コスト情報である。なお、地金は、基本的に必要の都度、購入されるので、その管理コストは、省略されているが、使用日以前に事前に地金が購入され在庫とされる場合を勘案するために、その管理コストDSCAが地金原料情報に含まれてもよい。また、必要な品質に応じた地金が購入されるので、その品質コストは、0で省略されている。さらに、ここでは、地金の種類は、1個としているが例えば製造元別等で複数ある場合には、地金の種類aが地金原料情報に含まれてもよく、地金原料情報は、G地金情報と同様にテーブル形式で原料情報記憶部24に記憶されてもよい。
【0046】
なお、
図6ないし
図9に示す例では、各種類は、1個であるが、もちろん、複数であってよい。
【0047】
図1に戻って、制御処理部1は、使用原料量演算装置1000の各部2~5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、元原料および再生原料の各使用原料量を求めるための回路である。制御処理部1は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびその周辺回路を備えて構成される。制御処理部1には、前記制御処理プログラムが実行されることによって、制御部11、最適化処理部12および出力処理部13が機能的に構成される。
【0048】
制御部11は、使用原料量演算装置1000の各部2~5を当該各部の機能に応じてそれぞれ制御し、使用原料量演算装置1000の全体の制御を司るものである。
【0049】
最適化処理部12は、原料のコストを表すコスト数理モデルの目的関数を所定の制約条件で最適化することによって前記原料の使用原料量を求解するものである。前記最適化には、前記コスト数理モデル(目的関数)およびその制約条件それぞれにおける各表現形式に応じた適宜な常套手段(公知の解法)が用いられる。前記原料のコストは、原料単価と使用原料量との乗算によって表される。前記原料は、上述のように、元々、原料である元原料と原料に再生された再生原料とを含み、より具体的には、本実施形態では、上述のように、前記原料は、地金とG地金との元原料、および、第1Aおよび第1B再生原料と第2再生原料との再生原料を含む。前記制約条件は、製品の品質に関する品質数理モデルの制約式を含む。本実施形態では、再生原料が第1および第2再生原料を含むことから、前記制約条件は、さらに、前記第1再生原料に関する第1再生原料数理モデルの制約式と、前記第2再生原料に関する第2再生原料数理モデルの制約式とを含み、より詳しくは、前記第1再生原料数理モデルの制約式は、前記第1A再生原料に関する数理モデルの制約式である。本実施形態では、二酸化炭素発生量を勘案する観点から、前記制約条件は、さらに、前記原料に関わる二酸化炭素発生量に関するCO2数理モデルの制約式を含む。そして、本実施形態では、管理コストを勘案する観点から、前記コスト数理モデルの目的関数は、さらに、前記再生原料を管理する管理コストを含み、前記管理コストは、管理単価と前記再生原料の管理量との乗算によって表される。前記再生原料は、本実施形態では、上述のように、第1および第2再生原料を含むことから、前記管理コストは、第1再生原料の第1管理単価と前記第1再生原料の第1管理量との第1乗算結果と、第2再生原料の第2管理単価と前記第2再生原料の第2管理量との第2乗算結果との和で表される。前記第1管理量は、前記屑の発生から第1再生原料として使用可能となるまでの第1リードタイムに基づいて求められる。前記第2管理量は、前記不良品の発生から第2再生原料として使用可能となるまでの第2リードタイムに基づいて求められる。
【0050】
より詳しくは、前記コスト数理モデルの目的関数(評価式)OBは、式1によって表され、原料コストMCは、式1aによって表され、管理コストDSCは、式1bによって表される。すなわち、原料コストMCは、各原料ごとに求められる当該原料の金銭コスト(単価)とその使用量との各乗算結果の和であり、管理コストSDCは、各再生原料ごとに求められる当該再生原料の管理コスト(単価)とその管理量との各乗算結果の和である。前記管理量は、発生日、使用日、リードタイムおよび溶解日に基づいて求められる。
【0051】
【0052】
ここで、SCj、SUjm、SQjd、LTj
SおよびDSCSjは、それぞれ、所内発生屑種類番号jの第1屑(内部発生屑)の第1A再生原料において、その金銭コスト(単価)[円/Ton]、そのチャージ番号mの使用量[Ton]、その発生日dの発生量、その発生から溶解可能となるまでのリードタイム、および、その管理コスト(単価)[円/Ton・日]である。DCk、DUkm、DQjd、LTk
D1、LTk
D2およびDSCDjは、それぞれ、不良品種類番号kの不良品の第2再生原料において、その金銭コスト(単価)[円/Ton]、そのチャージ番号mの使用量[Ton]、その発生日dの発生量、その発生から共用設備で処理可能となるまでのリードタイム、共用設備で処理されてから溶解可能となるまでのリードタイム、および、その管理コスト(単価)[円/Ton・日]である。PSCpおよびPSUpmは、それぞれ、購入屑種類番号pの第2屑(購入屑)の第1B再生原料において、その金銭コスト(単価)[円/Ton]、および、そのチャージ番号mの使用量[Ton]である。GCgおよびGUgmは、それぞれ、G地金種類番号gのG地金において、その金銭コスト(単価)[円/Ton]、および、そのチャージ番号mの使用量[Ton]である。ACおよびAUmは、それぞれ、地金における金銭コスト(単価)[円/Ton]、および、そのチャージ番号mの使用量[Ton]である。CDmは、チャージ番号mのチャージの溶解日である。前記金銭コストは、入手にかかる費用であり、単価で表されている。前記管理コストは、管理にかかる費用であり、単価で表されている。
【0053】
なお、上述では、コスト数理モデルの目的関数OBには、式1が用いられたが、これに限定されるものではない。例えば、原料コストMCおよび管理コストDSCそれぞれに重みαが付与されてもよい(OB=α×MC+(1-α)×DSC)。前記重みαは、管理コストDSCに対する原料コストMCの重要性に応じて適宜に設定される。例えば、原料の在庫が所定量を超えると、外部に倉庫を借りる必要が生じるので、管理コストDSCを小さくしたいことから、α<0.5で適宜に設定される。あるいは例えば、コスト数理モデルの目的関数OBは、原料コストMCのみで定義されてもよい(OB=MC)。あるいは例えば、式1bは、残量によって定義されているが、発生量に対する使用量の割合によって定義されてもよい。
【0054】
前記製品の品質に関する品質数理モデルの制約式は、次の不等式2で表される。この不等式2は、チャージの製品を所定以上の品質にする必要があることを表しており、これは、再生原料を所定量以下で使用する、という不等式で表されている。
【0055】
【0056】
ここで、CSmは、チャージ番号mのチャージにおける品質コストの上限値である。SSjは、所内発生屑種類番号jの第1屑における品質コスト(単位量)である。DSkは、不良品種類番号kの不良品における品質コスト(単位量)である。PSSpは、購入屑種類番号pの第2屑における品質コスト(単位量)である。nMは、チャージ数である。Σは、総和を求める演算子である。前記品質コストは、再生原料1[Ton]の使用が品質に与える影響を数値化したものであり、単位量で表されている。
【0057】
前記第1再生原料に関する第1再生原料数理モデルの制約式、ここでは、前記第1A再生原料に関する数理モデルの制約式は、次の不等式3で表される。この不等式3は、第1再生原料、ここでは第1A再生原料が、第1屑の発生日Dから、前記屑溶解リードタイム後のチャージで使用可能であって、その発生量以内で使用可能であることを表している。nDは、生産計画期間の日数である。nJは、第1屑の種類数である。
【0058】
【0059】
前記第2再生原料に関する第2再生原料数理モデルの制約式は、次の不等式4-1ないし不等式4-3で表される。この不等式4-1は、共用設備が空いていない場合には、不良品を処理できない、ことを、言い換えれば、共用設備が空いている場合にのみ、不良品を処理できる、ことを表している。前記不等式4-2は、第2再生原料にかかる不良品が、その発生日Dから、前記不良品処理リードタイム後に共用設備で処理可能であって、その発生量以内で処理可能であることを表している。前記不等式4-3は、第2再生原料かかる不良品が、その共用設備での処理日nDから、前記不良品溶解リードタイム後のチャージで使用可能であって、その処理量以内で使用可能であることを表している。
【0060】
【0061】
ここで、Fidは、日dにおける共用設備番号iの共用設備の空き時間[Hr]である。Aikdは、不良品種類番号kの不良品に対する日dにおける共用設備番号iの共用設備の不良品処理能力[Hr/Ton]である。DPikdは、不良品種類番号kの不良品に対する日dにおける共用設備番号iの共用設備の処理量[Ton]である。DQkdは、日dにおける不良品種類番号kの不良品の発生量[Ton]である。nIは、共用設備数である。nKは、不良品の種類数である。
【0062】
前記原料に関わる二酸化炭素発生量に関するCO2数理モデルの制約式は、次の不等式5で表される。この不等式5は、チャージの製品を所定以下の二酸化炭素コスト以下にする必要があること(チャージの製品に関わる二酸化炭素の発生量を所定以下に抑える必要があること)を表している。
【0063】
【0064】
ここで、SCOjは、所内発生屑種類番号jの第1屑におけるCO2コスト(単位発生量)[kg/Ton]である。DCOkは、不良品種類番号kの不良品におけるCO2コスト(単位発生量)[kg/Ton]である。PSCOjは、購入屑種類番号pの第2屑におけるCO2コスト(単位発生量)[kg/Ton]である。GCOgは、G地金種類番号gのG地金におけるCO2コスト(単位発生量)[kg/Ton]である。ACOは、地金のCO2コスト(単位発生量)[kg/Ton]である。
【0065】
そして、本実施形態では、これら上述の不等式2ないし不等式5で表される制約条件に加え、次の不等式6で表される制約式の制約条件も付加されている。この不等式6は、各チャージの製品には所定量の各原料が投入されることを表している。
【0066】
【0067】
出力処理部13は、前記最適化処理部12で求めた前記元原料および前記再生原料の各使用原料量を外部に出力するものである。本実施形態では、出力処理部13は、各使用原料量を出力部4に出力する。出力処理部13は、必要に応じてIF部5を介して外部の機器に各使用原料量を出力してもよい。
【0068】
ここで、式1および不等式2ないし不等式6において、各式内で指定していない限り、Σは、i、j、k、p、g、m、dに対し、次の範囲で総和を求める。nPは、第2屑の種類数であり、nGは、G地金の種類数である。
i=1、2、・・・、nI、j=1、2、・・・、nJ、k=1、2、・・・、nK、p=1、2、・・・、nP、g=1、2、・・・、nG、m=1、2、・・・、nM、d=1、2、・・・、nD。
【0069】
これら制御処理部1、記憶部2、入力部3、出力部4およびIF部5は、例えば、デスクトップ型やノート型等のコンピュータによって構成可能である。
【0070】
次に、本実施形態の動作について説明する。
図11は、前記使用原料量演算装置の動作を示すフローチャートである。
図12は、一例として、一実施例の結果を説明するための図である。
図12Aは、各チャージごとの地金、G地金、第2再生原料、第1B再生原料および第1A再生原料それぞれの各使用原料量(各投入量)を示し、
図12Bは、共用設備の処理状況を示す。
図13は、
図12に用いられた制約式の制約値およびその計算結果を説明するための図である。
【0071】
このような構成の使用原料量演算装置1000は、その電源が投入されると、必要な各部の初期化を実行し、その稼働を始める。制御処理部1には、その制御処理プログラムの実行によって、制御部11、最適化処理部12および出力処理部13が機能的に構成される。
【0072】
まず、ユーザ(オペレータ)は、各データを入力部3あるいはIF部5から使用原料量演算装置1000に入力する。例えば、
図3ないし
図10に示す各数値の各データが使用原料量演算装置1000に入力される。
図11において、使用原料量演算装置1000は、制御処理部1の制御部11によって、この入力部3あるいはIF部5で各データの入力を受け付け、この受け付けた各データを記憶部2における日程情報記憶部21、チャージ情報記憶部22、リードタイム情報記憶部23および原料情報記憶部24それぞれに記憶する(S1)。
【0073】
続いて、使用原料量演算装置1000は、制御処理部1の最適化処理部12によって、処理S1で受け付けて記憶した各データを上述の式1(式1a、式1b)、および、不等式2ないし不等式6それぞれに代入し、目的関数および各制約式を、数値により数式化する(S2)。
【0074】
続いて、使用原料量演算装置1000は、最適化処理部12によって、処理S2で数値により数式化した目的関数を、処理S2で数値により数式化した各制約式の各制約条件の下に最適化することによって、元原料(本実施形態では地金およびG地金)および再生原料(本実施形態では第1A再生原料、第2再生原料および第1B再生原料)における各使用原料量を求める(S3)。この目的関数の最適化には、例えば、IBM社製の「CPLEX Optimizer」(CPLEXは登録商標)が用いられた。
【0075】
そして、使用原料量演算装置1000は、処理S3で求めた元原料および再生原料の各使用原料量を例えば出力部4に出力し(S4)、本処理を終了する。
【0076】
図12および
図13には、
図3ないし
図10に示す各データを用いた場合における演算結果が示されている。
図13から分かるように、チャージ番号1、2の各チャージについて、必要投入量が満たされており、品質コストおよびCO2コストは、それぞれ、制約条件の上限値までに達していることがわかる。なお、端数は、計算処理上の丸め誤差である。
【0077】
チャージ番号1のチャージでは、
図12Aを参照すると、内部発生屑および不良品が使用されていない。これは、チャージ番号1のチャージが生産計画の第1日目で溶解されるため、その
図5に示すリードタイムから、間に合わないためである。このため、
図12Aを参照すると、他の原料の購入屑、地金およびG地金のうち、金銭コストの最も小さい購入屑が不等式2の制約式における上限値まで使用され、次に、品質コストが0である原料の中で金銭コストの最も小さい地金が不等式5の制約式を優先して使用され、不等式6の制約式に不足する分が地金よりCO2コストの小さいG地金で補填されるように、購入屑、地金およびG地金の各使用原料量が算出されており、したがって、最適化ができている。
【0078】
チャージ番号2のチャージでは、
図12Aを参照すると、金銭コストの小さい内部発生屑および不良品が最大限使用されつつ、不等式5の制約式と不等式2の制約式が上限値かつ不等式6の制約式を満たす各使用原料量が算出されており、したがって、最適化ができている。なお、チャージ番号2のチャージは、第5日目に溶解されるため、
図3に示す第1日目から第4日目までに発生する不良品4.8[Ton](=1.2+1.2+1.2+1.2)が、
図12Bを参照すると共用設備で4.8[Ton](=0+1.2+0.6+0+3)処理されて使用可能であり、
図12Aを参照すると、不良品が4.8[Ton]使用されており、所内発生屑に比べ、品質コストが低い不良品が所内発生屑と比較し優先されて使用されている。
【0079】
以上説明したように本実施形態における使用原料量演算装置1000ならびにこれに実装された使用原料量演算方法および使用原料量演算プログラムは、元原料と再生原料とを含む原料のコストを表すコスト数理モデルの目的関数を、製品の品質に関する品質数理モデルの制約式を含む所定の制約条件で最適化することによって、前記元原料および前記再生原料の各使用原料量を求めるので、再生原料を使用する場合でも、製品の品質を満たす元原料および再生原料の各使用原料量を求めることができる。したがって、上記使用原料量演算装置1000、使用原料量演算方法および使用原料量演算プログラムは、再生原料を使用しても、所定の品質を満たす製品を製造できる。
【0080】
上記使用原料量演算装置1000、使用原料量演算方法および使用原料量演算プログラムは、屑を前記原料にした第1再生原料と、不良品から前記原料に再生された第2再生原料とを含む再生原料を使用する場合でも、製品の品質を満たす元原料および再生原料の各使用原料量を求めることができる。第1再生原料の使用には、屑の発生が必要であり、第2再生原料の使用には、不良品の発生に加えて、不良品から原料に再生する工数(処理、工程)が必要であるが、上記使用原料量演算装置1000、使用原料量演算方法および使用原料量演算プログラムは、制約条件に、第1および第2再生原料の各制約式を含めるので、このような必要事項を、元原料および再生原料の各使用原料量の演算に考慮できる。
【0081】
上記使用原料量演算装置1000、使用原料量演算方法および使用原料量演算プログラムは、内部で生じた第1屑を前記原料にした第1A再生原料と、外部から購入した第2屑を前記原料にした第1B再生原料とを含む再生原料を使用する場合でも、製品の品質を満たす元原料および再生原料の各使用原料量を求めることができる。
【0082】
上記使用原料量演算装置1000、使用原料量演算方法および使用原料量演算プログラムは、さらに再生原料を管理する管理コストを考慮して、製品の品質を満たす元原料および再生原料の各使用原料量を求めることができる。
【0083】
上記使用原料量演算装置1000、使用原料量演算方法および使用原料量演算プログラムは、制約条件に、原料に関わる二酸化炭素発生量に関するCO2数理モデルの制約式を含めるので、このような原料に関わる二酸化炭素発生量を、元原料および再生原料の各使用原料量の演算に考慮できる。したがって、カーボンニュートラルに取り組んで事業が実施できる。
【0084】
上記使用原料量演算装置1000、使用原料量演算方法および使用原料量演算プログラムは、二酸化炭素発生量の異なる複数の種類の元原料を用いる場合でも、製品の品質を満たす元原料および再生原料の各使用原料量を求めることができる。したがって、カーボンニュートラルに取り組んで事業が実施できる。
【0085】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0086】
1000 使用原料量演算装置
1 制御処理部
2 記憶部
3 入力部
4 出力部
5 インターフェース部(IF部)
11 制御部
12 最適化処理部
13 出力処理部
21 日程情報記憶部
22 チャージ情報記憶部
23 リードタイム情報記憶部
24 原料情報記憶部