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特開2024-165462移動体、移動体管理システム及び移動体の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165462
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】移動体、移動体管理システム及び移動体の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/43 20240101AFI20241121BHJP
【FI】
G05D1/02 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081685
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】池村 翔平
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA02
5H301AA10
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301GG08
5H301GG09
5H301LL08
5H301LL11
5H301LL14
5H301QQ02
(57)【要約】
【課題】大掛かりな工事を必要とせず、低いコストで、エレベータを用いた移動体による安全な階の移動を可能にする移動体等を提供する。
【解決手段】移動体40は、エレベータ20を用いて第1の階から第2の階に移動する自律走行可能な移動体であって、移動機構41aを有する本体部41と、本体部41の周辺にある障害物を検知する周辺検知センサ42と、周辺検知センサ42によって検知された障害物に基づいて移動機構41aを制御することで本体部41を自律走行させる制御部44とを備え、制御部44は、周辺検知センサ42を用いて、第1の階に到着したエレベータ20のかご21の中の混雑状況を確認し、乗車可能と判断した後に、当該移動体40等がかご21に乗車するように移動機構41aを制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータを用いて第1の階から第2の階に移動する自律走行可能な移動体であって、
移動機構を有する本体部と、
前記本体部の周辺にある障害物を検知する周辺検知センサと、
前記周辺検知センサによって検知された障害物に基づいて前記移動機構を制御することで前記本体部を自律走行させる制御部とを備え、
前記制御部は、前記周辺検知センサを用いて、前記第1の階に到着した前記エレベータのかごの中の混雑状況を確認し、乗車可能と判断した後に、当該移動体が前記かごに乗車するように前記移動機構を制御する、
移動体。
【請求項2】
前記制御部は、
前記かごの床面において人が位置することが許容されたエリアである許容エリアを示す許容エリア情報、及び、前記かごの床面及び階の床面において人が位置することが許容されていないエリアである非許容エリアを示す非許容エリア情報を記憶する記憶部を有し、
前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記許容エリア情報及び前記非許容エリア情報を参照したうえで、前記移動体が前記かごに乗車するように前記移動機構を制御する、
請求項1記載の移動体。
【請求項3】
前記制御部は、(1)当該移動体が前記かごに乗車した後に、当該移動体が前進する向きを反転させる、又は、(2)当該移動体を後進させながら前記かごに乗車させるように、前記移動機構を制御する、
請求項1記載の移動体。
【請求項4】
さらに、所定の像を投射する投射部を備え、
前記制御部は、当該移動体の前記かごへの乗車時及び前記かごからの降車時に、当該移動体の進行方向に向けて前記所定の像を投射するように、前記投射部を制御する、
請求項1記載の移動体。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1の階において他の移動体と当該移動体とが列をなして並んでいる場合に、前記他の移動体と並ぶ順を入れ換える指示を受けたときに、前記他の移動体と並ぶ順を入れ換えるように、前記移動機構を制御する、
請求項1記載の移動体。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1の階において他の移動体の後ろに当該移動体が列をなして並んでいる場合に、前記他の移動体が前記かごに乗車した後に当該移動体が前記かごに乗車するように、前記移動機構を制御する、
請求項1記載の移動体。
【請求項7】
請求項5記載の移動体と、
請求項5記載の移動体及び他の移動体と通信可能に接続された管理装置とを備え、
前記管理装置は、請求項5記載の移動体及び他の移動体のそれぞれから行先階を示す情報を取得し、取得した前記行先階を示す情報が一定の条件を満たす場合に、請求項5記載の移動体及び他の移動体に対して、並ぶ順を入れ換える指示をする、
移動体管理システム。
【請求項8】
請求項6記載の移動体と、
請求項6記載の移動体及び他の移動体と通信可能に接続された管理装置とを備え、
前記管理装置は、前記他の移動体から、前記他の移動体が前記かごに乗車したことの通
知を取得した後に、請求項6記載の移動体に対して、前記かごへの乗車を指示する、
移動体管理システム。
【請求項9】
エレベータを用いて第1の階から第2の階に移動する自律走行可能な移動体の制御方法であって、
移動体が、移動機構を有する本体部の周辺にある障害物を検知する周辺検知センサから前記障害物に関する情報を取得する検知ステップと、
移動体が、取得した前記障害物に関する情報に基づいて前記移動機構を制御することで前記本体部を自律走行させる制御ステップとを含み、
前記制御ステップでは、前記障害物に関する情報に基づいて、前記第1の階に到着した前記エレベータのかごの中の混雑状況を確認し、乗車可能と判断した後に、当該移動体が前記かごに乗車するように前記移動機構を制御する、
移動体の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体、移動体管理システム及び移動体の制御方法に関し、特に、エレベータを用いて第1の階から第2の階に移動する自律走行可能な移動体等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人のいる施設において、運搬ロボット、掃除ロボット、警備ロボット、施設案内ロボット等の自律走行可能な移動体(つまり、モビリティ)を運用する様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、移動体がエレベータを用いて施設内を適正に運行できるように、移動体と通信する仲介サーバを設け、仲介サーバが移動体の通行の可否を制御する移動体通行管理システムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第7156749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、仲介サーバがエレベータのかごにおける混雑状況を把握する等の処理が必要とるため、システム構築の工事が大掛かりとなり、費用も高くつくという問題がある。
【0006】
そこで、本開示は、大掛かりな工事を必要とせず、低いコストで、エレベータを用いた移動体による安全な階の移動を可能にする移動体、移動体管理システム及び移動体の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の一形態に係る移動体は、エレベータを用いて第1の階から第2の階に移動する自律走行可能な移動体であって、移動機構を有する本体部と、前記本体部の周辺にある障害物を検知する周辺検知センサと、前記周辺検知センサによって検知された障害物に基づいて前記移動機構を制御することで前記本体部を自律走行させる制御部とを備え、前記制御部は、前記周辺検知センサを用いて、前記第1の階に到着した前記エレベータのかごの中の混雑状況を確認し、乗車可能と判断した後に、当該移動体が前記かごに乗車するように前記移動機構を制御する。
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の一形態に係る移動体管理システムは、上記移動体と、上記移動体及び他の移動体と通信可能に接続された管理装置とを備え、前記管理装置は、上記移動体及び他の移動体のそれぞれから行先階を示す情報を取得し、取得した前記行先階を示す情報が一定の条件を満たす場合に、上記移動体及び他の移動体に対して、並ぶ順を入れ換える指示をする。
【0009】
上記目的を達成するために、本開示の一形態に係る移動体の制御方法は、エレベータを用いて第1の階から第2の階に移動する自律走行可能な移動体の制御方法であって、移動体が、移動機構を有する本体部の周辺にある障害物を検知する周辺検知センサから前記障害物に関する情報を取得する検知ステップと、移動体が、取得した前記障害物に関する情報に基づいて前記移動機構を制御することで前記本体部を自律走行させる制御ステップと
を含み、前記制御ステップでは、前記障害物に関する情報に基づいて、前記第1の階に到着した前記エレベータのかごの中の混雑状況を確認し、乗車可能と判断した後に、当該移動体が前記かごに乗車するように前記移動機構を制御する。
【発明の効果】
【0010】
本開示により、大掛かりな工事を必要とせず、低いコストで、エレベータを用いた移動体による安全な階の移動を可能にする移動体、移動体管理システム及び移動体の制御方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態に係る移動体管理システムの構成を示す図である。
図2図2は、図1における記憶部に保持される、エレベータ近辺のエリアに関する情報の例を説明する図である。
図3図3は、移動体がエレベータを用いて階を移動する場合の移動体の動作を示すフローチャートである。
図4図4は、図3に示される動作を説明する図である。
図5図5は、2台の移動体が一緒にエレベータに乗車して階を移動する場合の移動体の動作を示すフローチャートである。
図6図6は、図5に示される主要な動作における移動体と管理装置との通信のやりとりを示す通信シーケンス図である。
図7図7は、図5及び図6に示される動作を説明する図である。
図8図8は、図3のステップS12の詳細を示すフローチャートである。
図9図9は、図8に示される動作を説明する図である。
図10図10は、エレベータのかご内の障害物に対する検知を確実にするための対策例を示す模式図である。
図11図11は、実施の形態の変形例に係る非許容エリアを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(発明者が得た知見)
特許文献1に係る移動体通行管理システムでは、仲介サーバがエレベータのかごにおける混雑状況を把握して移動体の通行の可否を制御している。本発明者は、このような制御態様が、システム構築を大掛かりな工事にしてしまう原因と考えた。
【0013】
そこで、本発明者は、移動体自体が、エレベータのかごにおける混雑状況を把握し、自らの判断で、安全に階を移動する機能を備える制御態様を考案した。これにより、エレベータの混雑状況を把握するためのセンサ等の複雑な設備を必要とすることなく、エレベータを用いた移動体による安全な階の移動が可能になり、その結果、システム構築に大掛かりな工事を必要とせず、コストを抑えることができると本発明者は考えた。
【0014】
より詳しくは、本開示の第1態様に係る移動体は、エレベータを用いて第1の階から第2の階に移動する自律走行可能な移動体であって、移動機構を有する本体部と、前記本体部の周辺にある障害物を検知する周辺検知センサと、前記周辺検知センサによって検知された障害物に基づいて前記移動機構を制御することで前記本体部を自律走行させる制御部とを備え、前記制御部は、前記周辺検知センサを用いて、前記第1の階に到着した前記エレベータのかごの中の混雑状況を確認し、乗車可能と判断した後に、当該移動体が前記かごに乗車するように前記移動機構を制御する。
【0015】
また、本開示の第9態様に係る移動体の制御方法は、エレベータを用いて第1の階から第2の階に移動する自律走行可能な移動体の制御方法であって、移動体が、移動機構を有する本体部の周辺にある障害物を検知する周辺検知センサから前記障害物に関する情報を
取得する検知ステップと、移動体が、取得した前記障害物に関する情報に基づいて前記移動機構を制御することで前記本体部を自律走行させる制御ステップとを含み、前記制御ステップでは、前記障害物に関する情報に基づいて、前記第1の階に到着した前記エレベータのかごの中の混雑状況を確認し、乗車可能と判断した後に、当該移動体が前記かごに乗車するように前記移動機構を制御する。
【0016】
これらの態様により、移動体の制御部は、周辺検知センサを用いて、到着したエレベータのかごの中の混雑状況を確認し、乗車可能と判断した後に、移動体がかごに乗車するように移動機構を制御する。よって、エレベータの混雑状況を把握するためのセンサ等の複雑な設備を必要とすることなく、エレベータを用いた移動体による安全な階の移動が可能になり、その結果、システム構築に大掛かりな工事を必要とせず、コストを抑えることができる。
【0017】
また、本開示の第2態様に係る移動体は、前記制御部は、前記かごの床面において人が位置することが許容されたエリアである許容エリアを示す許容エリア情報、及び、前記かごの床面及び階の床面において人が位置することが許容されいないエリアである非許容エリアを示す非許容エリア情報を記憶する記憶部を有し、前記制御部は、前記記憶部に記憶された前記許容エリア情報及び前記非許容エリア情報を参照したうえで、前記移動体が前記かごに乗車するように前記移動機構を制御する、第1態様に係る移動体である。
【0018】
これにより、移動体の制御部は、かごの床面において人が位置することが許容された許容エリアを示す許容エリア情報、及び、かごの床面及び階の床面において人が位置することが許容されていない非許容エリアを示す非許容エリア情報を参照したうえで、移動体がかごに乗車するように移動機構を制御する。よって、周辺検知センサによる検知が、エリアに関する複数のレベルで制御され、移動体がエレベータに乗車する際の安全性及び円滑化が確保される。
【0019】
また、本開示の第3態様に係る移動体は、前記制御部は、(1)当該移動体が前記かごに乗車した後に、当該移動体が前進する向きを反転させる、又は、(2)当該移動体を後進させながら前記かごに乗車させるように、前記移動機構を制御する、第1又は第2態様に係る移動体である。
【0020】
これにより、エレベータからの降車においては、移動体は、後進ではなく、前進する向きで降車するので、移動体の降車時の安全性及び円滑化が確保される。
【0021】
また、本開示の第4態様に係る移動体は、さらに、所定の像を投射する投射部を備え、前記制御部は、当該移動体の前記かごへの乗車時及び前記かごからの降車時に、当該移動体の進行方向に向けて前記所定の像を投射するように、前記投射部を制御する、第1~第3態様のいずれかに係る移動体である。
【0022】
これにより、移動体は、所定の像を投射しながら進行するので、周りの人が移動体の存在及び進行方向に気づき易くなり、移動体による移動の安全性及び円滑化が確保される。
【0023】
また、本開示の第5態様に係る移動体は、前記制御部は、前記第1の階において他の移動体と当該移動体とが列をなして並んでいる場合に、前記他の移動体と並ぶ順を入れ換える指示を受けたときに、前記他の移動体と並ぶ順を入れ換えるように、前記移動機構を制御する第1~第4態様のいずれかに係る移動体である。また、本開示の第7態様に係る移動体管理システムは、上記移動体と、上記移動体及び他の移動体と通信可能に接続された管理装置とを備え、前記管理装置は、上記移動体及び他の移動体のそれぞれから行先階を示す情報を取得し、取得した前記行先階を示す情報が一定の条件を満たす場合に、上記移
動体及び他の移動体に対して、並ぶ順を入れ換える指示をする。
【0024】
これらの態様により、移動体は、待機場所において、他の移動体と並ぶ順を入れ換えることができるので、移動体及び他の移動体が同時にエレベータに乗車した後の降車順を考慮した円滑な乗降が実現される。
【0025】
また、本開示の第6態様に係る移動体は、前記制御部は、前記第1の階において他の移動体の後ろに当該移動体が列をなして並んでいる場合に、前記他の移動体が前記かごに乗車した後に当該移動体が前記かごに乗車するように、前記移動機構を制御する、第1~第5態様のいずれかに係る移動体である。また、本開示の第8態様に係る移動体管理システムは、上記移動体と、上記移動体及び他の移動体と通信可能に接続された管理装置とを備え、前記管理装置は、前記他の移動体から、前記他の移動体が前記かごに乗車したことの通知を取得した後に、上記移動体に対して、前記かごへの乗車を指示する。
【0026】
これらの態様により、複数の移動体がエレベータに乗車するときには、並び順で先の移動体が乗車し終えた後に後の移動体が乗車するので、複数の移動体によるエレベータへの乗車が円滑化される。
【0027】
(実施の形態)
以下、本開示の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示す。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、各図は、必ずしも厳密に図示したものではない。各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付し、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0028】
図1は、実施の形態に係る移動体管理システム50の構成を示す図である。移動体管理システム50は、人52及び移動体40及び40aが共存する施設10において、移動体40及び40aがエレベータ20を用いて安全に階を移動することを可能にするシステムであり、管理装置30と移動体40及び40aとで構成される。移動体管理システム50は、移動体40及び40aのそれぞれが、自ら、エレベータ20のかご21における混雑状況を把握したうえで、安全に階を移動する点に特徴を有する。
【0029】
管理装置30は、エレベータ20の制御、及び、エレベータ20の利用に関する複数の移動体40及び40a間での調停を行うサーバ装置であり、例えば、エレベータ20と有線で接続され、移動体40及び40aと無線で接続される通信インタフェース等を備えるコンピュータ装置である。
【0030】
移動体40及び40aのそれぞれは、エレベータ20を用いて第1の階から第2の階に移動する自律走行可能なモビリティであり、図示されるように、本体部41、周辺検知センサ42、投射部43、及び、制御部44を備える。
【0031】
本体部41は、移動機構41aを含む筐体である。移動機構41aは、車輪、車輪を駆動するモータ、モータに電力を供給するバッテリ等を含む駆動回路、車輪を操舵する操舵制御装置等で構成され、本体部41を前進させたり、後進させたり、車輪の操舵角を変更したりする。なお、本実施の形態では、本体部41は、人が座ることが可能な椅子構造を有しており、その椅子構造に人が座った状態で人が向く方向を前進の方向として進行する。
【0032】
周辺検知センサ42は、本体部41の周辺にある障害物を検知するセンサであり、例え
ば、360度の方位にわたって周辺にある物体に対する距離を取得するLIDAR、距離及び画像を取得する測距カメラ等である。
【0033】
投射部43は、プロジェクタであり、例えば、制御部44による制御の下で、本体部41から前進の方向に所定距離(例えば、50cm)だけ離れた先の床面上に所定の像(例えば、前進の方向を示す矢印)を投射する。
【0034】
制御部44は、周辺検知センサ42を用いて、第1の階に到着したエレベータ20のかご21の中の混雑状況を確認し、乗車可能と判断した後に、当該移動体40がかご21に乗車するように移動機構41aを制御する回路であり、例えば、プログラム等を保持するメモリ、プログラムを実行するプロセッサ等で構成される。制御部44は、記憶部44a、通信部44b及び音声出力部44cを有する。
【0035】
記憶部44aは、施設10に関する地図情報(つまり、施設10の全階のフロアマップ)、エレベータ20近辺のエリアに関する情報、走行計画(例えば、1階の玄関と5階の食堂とを往復するプログラム)等を保持している。なお、記憶部44aに保持される情報は、管理装置30からダウンロードされてもよいし、管理装置30によって更新されてもよい。
【0036】
通信部44bは、制御部44が管理装置30と通信するための通信インタフェースであり、例えば、無線LAN用のインタフェースである。
【0037】
音声出力部44cは、制御部44による制御の下で音声を出力する処理部であり、例えば、音声合成回路及びスピーカ等で構成される。
【0038】
なお、移動体40及び40a、管理装置30のそれぞれに、人との対話及び操作を支援する入出力機器(例えば、タッチパネル等の操作入力機器、ディスプレイ等の出力機器)が備えられていてもよい。
【0039】
図2は、図1における記憶部44aに保持される、エレベータ20近辺のエリアに関する情報の例を説明する図である。本図には、エレベータ20のかご21の床面及びその手前の階の床面が示されている。この例では、かご21の床面には、乗車する方向から見て左右に2分する白線21aが一定間隔で描かれており、主に、白線21aよりも左の領域に人が乗車し、白線21bよりも右の領域に移動体40及び40aが乗車する運用とされている。
【0040】
記憶部44aには、かご21の床面において人が位置することが許容されたエリアである許容エリア22を示す許容エリア情報、及び、かご21の床面及び階の床面において人が位置することが許容されていないエリアである非許容エリア23を示す非許容エリア情報が記憶されている。制御部44は、記憶部44aに記憶された許容エリア情報及び非許容エリア情報を参照したうえで、移動体40がかご21に乗車するように移動機構41aを制御する。より詳しくは、制御部44は、かご21に乗車するときには、かご21の床面のうち、非許容エリア23に属するエリアを乗車エリア24とし、移動体40が乗車エリア24内に乗車するように、移動機構41aを制御する。
【0041】
また、記憶部44aには、エレベータ20への乗車前に移動体40及び40が待機する場所として規定された待機エリア25を示す待機エリア情報も記憶されている。待機エリア25は、施設10の各階におけるエレベータ20の手前において所定台数の移動体が列をなしてエレベータ20の到着を待機するためのエリアであり、床面に描かれた白線によって1台の移動体ごとに待機場所が区画されている。
【0042】
次に、以上のように構成された本実施の形態に係る移動体管理システム50の特徴的な動作(つまり、移動体の制御方法)について説明する。
【0043】
図3は、移動体40がエレベータ20を用いて階を移動する場合の移動体40の動作を示すフローチャートである。図4は、図3に示される動作を説明する図であり、エレベータ20近辺のエリアを模式的に示している。なお、図4には、エレベータ20近辺にいる人52a~52f及び障害物54も併せて図示されている。
【0044】
まず、移動体40は、エレベータ20の前で待機する(S10)。具体的には、移動体40の制御部44は、記憶部44aに保持された待機エリア情報を参照することで、移動体40が、いまいる階の待機エリア25のうち、先頭の空き区画まで移動するように、移動機構41aを制御する。このとき、制御部44は、周辺検知センサ42によって、待機エリア25に、移動体以外のもの(つまり、人又は障害物(以下「障害物等」ともいう)、図4の例では、障害物54)があることを検知した場合には、待機エリア25に進入する手前の位置で停止し、音声出力部44cを制御することで、「モビリティの待機エリアに立ち入ったり、待機エリアに物を置いたりしないようにしてください」との警告を発する。なお、移動体40は、待機エリア25に移動体以外のもの(つまり、障害物等)があることを検知した場合に、待機エリア25における行先の区画が空いていることを確認できたときには、検知した人障害物等を迂回して行先の区画まで進行してもよい。
【0045】
次に、移動体40は、通信部44bを介して管理装置30に行先階を伝えたうえで、エレベータ20を呼び(S11)、エレベータ20が到着したら、周辺検知センサ42によってエレベータ20の扉が開いたことを確認した後に、エレベータ20に乗車する(S12)。このとき、移動体40は、扉が開いたかご21の中に空きスペースがあることを確認した後に、かご21に乗車する。具体的には、制御部44は、記憶部44aに記憶された許容エリア情報及び非許容エリア情報を参照したうえで、移動体40がかご21に乗車するように移動機構41aを制御する。より詳しくは、制御部44は、かご21の床面のうち非許容エリア23に属するエリアである乗車エリア24の中に移動体40が乗車するように、移動機構41aを制御する。移動体40の制御部44は、乗車時においては、周辺検知センサ42によって検知する周辺エリアの範囲を通常時よりも狭めることで、過度に回避行動に入る可能性を抑制し、人や物に接触することなく円滑に乗車するように、移動機構41aを制御する。
【0046】
さらに、乗車時においては、移動体40の制御部44は、当該移動体40の進行方向に所定距離(例えば、50cm)だけ離れた先の床面上に所定の像(例えば、前進の方向を示す矢印)を投射するように投射部43を制御したうえで、移動体40を進行させる。また、移動体40の制御部44は、移動体40がかご21に乗車した後に、移動機構41aを制御することで、移動体40が前進する向きを反転させる。なお、この反転に代えて、移動体40は、後進しながらかご21に乗車してもよい。乗車を完了したら、移動体40は、通信部44bを介して管理装置30に乗車を完了したことを伝える。
【0047】
その後、管理装置30によってエレベータ20の昇降が行われる(S13)。なお、昇降中において、移動体40の制御部44は、周辺検知センサ42によって人が移動体40の降車経路に侵入したことを検知した場合に、音声出力部44cを制御することで、「移動体の降車経路を塞がないようにお願いします」との警告を音声通知する。
【0048】
エレベータ20が移動体40の行先階に到着し、扉が開くと、移動体40は、エレベータ20から降車する(S14)。具体的には、移動体40の制御部44は、行先階に到着して扉が開いたことの通知を管理装置30から受けると、周辺検知センサ42によって周
りの障害物を検知し、障害物を避けて降車するように移動機構41aを制御することで、かご21から降りる。降車を完了したら、移動体40は、通信部44bを介して管理装置30に降車を完了したことを伝える。このようにして、移動体40は、自ら、エレベータ20のかご21における混雑状況を把握したうえで、安全に階を移動する。
【0049】
以上のように、本実施の形態に係る移動体40等は、エレベータ20を用いて第1の階から第2の階に移動する自律走行可能な移動体であって、移動機構41aを有する本体部41と、本体部41の周辺にある障害物を検知する周辺検知センサ42と、周辺検知センサ42によって検知された障害物に基づいて移動機構41aを制御することで本体部41を自律走行させる制御部44とを備え、制御部44は、周辺検知センサ42を用いて、第1の階に到着したエレベータ20のかご21の中の混雑状況を確認し、乗車可能と判断した後に、当該移動体40等がかご21に乗車するように移動機構41aを制御する。
【0050】
また、本実施の形態に係る移動体40等の制御方法は、エレベータ20を用いて第1の階から第2の階に移動する自律走行可能な移動体40等の制御方法であって、移動体40等が、移動機構41aを有する本体部41の周辺にある障害物を検知する周辺検知センサ42から障害物に関する情報を取得する検知ステップと、移動体40等が、取得した障害物に関する情報に基づいて移動機構41aを制御することで本体部41を自律走行させる制御ステップとを含み、制御ステップでは、障害物に関する情報に基づいて、第1の階に到着したエレベータ20のかご21の中の混雑状況を確認し、乗車可能と判断した後に、当該移動体40等がかご21に乗車するように移動機構41aを制御する。
【0051】
これにより、エレベータの混雑状況を把握するためのセンサ等の複雑な設備を必要とすることなく、エレベータ20を用いた移動体40等による安全な階の移動が可能になり、システム構築に大掛かりな工事を必要とせず、コストを抑えることができる。
【0052】
また、制御部44は、かご21の床面において人が位置することが許容されたエリアである許容エリア22を示す許容エリア情報、及び、かご21の床面及び階の床面において人が位置することが許容されていないエリアである非許容エリア23を示す非許容エリア情報を記憶する記憶部44aを有し、制御部44は、記憶部44aに記憶された許容エリア情報及び非許容エリア情報を参照したうえで、移動体40等がかご21に乗車するように移動機構41aを制御する。これにより、周辺検知センサ42による検知が、エリアに関する複数のレベルで制御され、移動体40等がエレベータ20に乗車する際の安全性及び円滑化が確保される。
【0053】
また、制御部44は、(1)当該移動体40等がかご21に乗車した後に、当該移動体40等が前進する向きを反転させる、又は、(2)当該移動体40等を後進させながらかご21に乗車させるように、移動機構41aを制御する。これにより、エレベータ20からの降車においては、移動体40等は、後進ではなく、前進する向きで降車するので、移動体の降車時の安全性及び円滑化が確保される。
【0054】
また、移動体40等は、さらに、所定の像を投射する投射部43を備え、制御部44は、移動体40等のかご21への乗車時及びかご21からの降車時に、移動体40等の進行方向に向けて所定の像を投射するように、投射部43を制御する。これにより、移動体40等は、所定の像を投射しながら進行するので、周りの人が移動体40等の存在及び進行方向に気づき易くなり、移動体40等による移動の安全性及び円滑化が確保される。
【0055】
図5は、2台の移動体40及び40aが一緒にエレベータ20に乗車して階を移動する場合の移動体40及び40aの動作を示すフローチャートである。図6は、図5に示される主要な動作における移動体40及び40aと管理装置30との通信のやりとりを示す通
信シーケンス図である。図7は、図5及び図6に示される動作を説明する図であり、エレベータ20近辺のエリアを模式的に示している。
【0056】
なお、2台の移動体40及び40aが一緒にエレベータ20に乗車して階を移動するケースであっても、移動体40及び40aのそれぞれの動作については、基本的に、図3に示されるフローチャートと同じである。ただし、このケースでは、図5のフローチャートに示されるように、図3のフローチャートに示されるステップS10~S14に、管理装置30による調停に伴うステップS20及びS21が追加される。以下、図3のフローチャートと異なる点を中心に説明する。
【0057】
いま、施設10の1F(1階)における待機エリア25において、移動体40が先頭の区画で待機し、その後ろの区画に、次の移動体40aが待機し(図5のS10)、2台の移動体40及び40aのそれぞれが管理装置30に対して行先階を伝えたとする(図5のS11)。例えば、先頭の移動体40が行先階として3F(3階)を伝え(図6のS11a)、後続の移動体40aが行先階として5F(5階)を伝えたうえで(図6のS11b)、エレベータを呼ぶ。
【0058】
すると、行先階の通知を受けた管理装置30は、2台の移動体40及び40aの現在の階と行先階とから、2台の移動体40及び40aが乗車してから円滑に降車できるように、2台の移動体40及び40aがエレベータ20に乗車する際の順番を決定し、決定した順番を移動体40及び40aに通知する(図5のS20)。具体的には、管理装置30は、行先階が5Fである移動体40aが先に(つまり、かご21の奥に)乗車し、行先階が3Fである移動体40が後に(つまり、かご21の手前に)乗車すべきと決定し(図6のS20a)、決定した乗車順を移動体40及び40aに通知する(図6のS20b及び20c)。
【0059】
管理装置30から乗車順の通知を受けた移動体40及び40aは、通知を受けた乗車順と現状の待機順とから、待機順を入れ換えるべきか否かを判断し、入れ換えるべきと判断した場合に、待機エリア25における待機順を入れ換える(図5のS21)。具体的には、2台の移動体40及び40aのそれぞれにおいて、制御部44は、自己位置、及び、周辺検知センサ42による他の移動体の存在及びその位置等の認識結果を用いることで、他の移動体と待機エリア25における並び順を入れ換えるように、移動機構41aを制御する(図6のS21a)。
【0060】
その後、エレベータ20が1Fに到着すると、管理装置30による管理の下で、先ず、先頭で待機していた移動体40aがかご21の奥に乗車し、次に、後続で待機していた移動体40がかご21の手前に乗車し、移動体40及び40aのそれぞれは、管理装置30に乗車を完了したことを伝える(図5のS12)。具体的には、管理装置30は、先ず、先頭で待機していた移動体40aに乗車を指示し(図6のS12a)、その指示を受けた移動体40aが乗車し(図6のS12b)、移動体40aから乗車が完了したことの通知を受けると(図6の12c)、次に、後続で待機していた移動体40に乗車を指示し(図6のS12d)、その指示を受けた移動体40が乗車し(図6のS12e)、移動体40から乗車が完了したことの通知を受ける(図6の12f)。なお、移動体40の乗車(図6のS12e)では、2台目の移動体のかご21への乗車となるために、移動体40は、非許容エリア23を所定領域だけ狭めた領域内に乗車してもよい。先に乗車した移動体40aが非許容エリア23に侵入している可能性が高いからである。
【0061】
その後、管理装置30による制御の下でエレベータ20が3Fに到着して扉が開くと(図5のS13)、かご21の手前に乗車していた移動体40が降車し(図5のS14)、その後、扉を閉めた後にエレベータ20が5Fに到着して扉を開くと(図5のS13)、
かご21の奥に乗車していた移動体40aが降車する(図5のS14)。
【0062】
このようにして、1Fの待機エリア25で待機していた2台の移動体40及び40aは、管理装置30による調停の下で待機順を入れ換えた後に、一緒にエレベータ20に乗車することで、移動体40が行先階3Fに移動すること、及び、移動体40aが行先階5Fに移動することが円滑かつ効率的に行われる。
【0063】
なお、この例では、管理装置30から乗車順の通知を受けた2台の移動体40及び40aが待機順を入れ換えるべきか否かを判断したが、管理装置30が、2台の移動体40及び40aの待機エリア25での位置の通知を受けることで、2台の移動体40及び40aの待機順を入れ換えるべきか否かを判断し、入れ換えるべきと判断した場合に、待機順の入れ換えを2台の移動体40及び40aに指示してもよい。
【0064】
このように、管理装置30は、移動体40及び他の移動体40aのそれぞれから行先階を示す情報を取得し、取得した行先階を示す情報が一定の条件を満たす場合に、移動体40及び他の移動体40aに対して、並ぶ順を入れ換える指示をする。つまり、移動体40及び40aでは、制御部44は、第1の階において他の移動体40aと当該移動体40とが列をなして並んでいる場合に、他の移動体40aと並ぶ順を入れ換える指示を受けたときに、他の移動体40aと並ぶ順を入れ換えるように、移動機構41aを制御する。これにより、移動体40は、待機場所において、他の移動体40aと並ぶ順を入れ換えるので、移動体40及び他の移動体40aが同時にエレベータ20に乗車した後の降車順を考慮した円滑な乗降が実現される。
【0065】
また、管理装置30は、他の移動体40aから、他の移動体40aがかご21に乗車したことの通知を取得した後に、移動体40に対して、かご21への乗車を指示する。つまり、移動体40及び40aでは、制御部44は、第1の階において他の移動体40aの後ろに当該移動体40が列をなして並んでいる場合に、他の移動体40aがかご21に乗車した後に当該移動体40がかご21に乗車するように、移動機構41aを制御する。これにより、複数の移動体40及び40aがエレベータ20に乗車するときには、並び順で先の移動体が乗車し終えた後に後の移動体が乗車するので、複数の移動体40及び40aによるエレベータ20への乗車が円滑化される。
【0066】
次に、図3及び図5のフローチャートで示される手順における一部の詳細又は変形例について、図8図11を用いて、説明する。
【0067】
図8は、図3のステップS12(エレベータに乗車)の詳細を示すフローチャートである。図9は、図8に示される動作を説明する図であり、エレベータ20近辺のエリアを模式的に示している。
【0068】
移動体40は、エレベータ20への乗車時に、自ら乗車する前に、人の乗降が完了するのを待つ(S30)。具体的には、移動体40の制御部44は、エレベータ20が到着して扉が開いたことを確認すると、内蔵のタイマーを用いて予め設定された一定時間だけ待機する。その後、制御部44は、周辺検知センサ42を用いて、乗降する人の動きを確認し、動き量が一定値以下となるまで、一定時間の待機を繰り返す。
【0069】
次に、移動体40は、周辺検知センサ42を用いて、かご21内の許容エリア22及び非許容エリア23における障害物等の存否を確認し(S32)、その結果に応じて、エレベータ20への乗車についての処理を行う。
【0070】
具体的には、許容エリア22及び非許容エリア23のいずれにおいても人及び障害物の
存在を確認できなかった場合には(S32で「無検知」)、移動体40は、エレベータ20に乗車する(S33)。
【0071】
一方、許容エリア22において障害物等の存在を確認できた場合には(S32で「検知in許容エリア」)、移動体40は、許容エリア22にいる人が聞こえる程度の警告を発し、少しの時間だけ待った後に、エレベータ20に乗車する(S34)。具体的には、移動体40の制御部44は、音声出力部44cを用いて所定のメロディ又は「前進いたします」等のメッセージによる警告音を鳴らし、少しの時間だけ待った後に、警告音を鳴らしながら通常よりもスピードを落として乗車する。
【0072】
さらに一方、非許容エリア23において障害物等の存在を確認できた場合には(S32で「検知in非許容エリア」)、移動体40は、非許容エリア23にいる人が聞こえる程度の警告を発し、予め設定された一定時間だけ待つ(S35)。そして、移動体40は、周辺検知センサ42を用いて、障害物等が非許容エリア23から無くなったか否かを判断し(S36)、無くなったと判断した場合には(S36でYes)、エレベータ20(つまり、かご21内の乗車エリア24)に乗車し(S37)、無くなったと判断できない場合には(S36でNo)、乗車を断念する(S38)。
【0073】
このようにして、移動体40は、かご21内のエリアを、人が位置することが許容された許容エリア22と人が位置することが許容されていない非許容エリア23とに分けて管理し、エレベータ20の乗車時に、許容エリア22に人がいるケースと、非許容エリア23に人がいるケースとで異なる処理を行うことで、同じかご21に乗車している人のことを考慮した適切な乗車を行うことができる。
【0074】
図10は、エレベータ20のかご21内の障害物に対する検知を確実にするための対策例を示す模式図である。本図では、かご21の中に設けられた到着位置検知用マーク26a~26c、及び、かご21の中に存在する障害物54aの例が示されている。
【0075】
到着位置検知用マーク26a~26cは、エレベータ20に乗車する時に移動体40が障害物を誤検知してしまうことを回避するための目印であり、例えば、特定色(例えば、黄色)に塗られた特定形状(例えば、円形)のシール等である。本図の例では、到着位置検知用マーク26a~26cは、それぞれ、かご21の正面壁における、床から所定の高さ(例えば、1m)の位置、かご21の床面における乗車エリア24のうち乗車方向に向かって左側の境界に近い位置、乗車エリア24のうち乗車方向に向かって最も手前の位置に設けられている。
【0076】
障害物54aは、かご21の正面壁に沿った水平方向に延びる長い障害物である。移動体40は、エレベータ20に乗車する時に、かご21の正面壁に設けられた到着位置検知用マーク26aを検知することで、障害物54aをかご21の正面壁と誤認識してしまうことを回避できる。また、移動体40は、エレベータ20に乗車する時に、人及び障害物だけでなく、かご21の床面の所定位置に設けられた到着位置検知用マーク26b及び26cを検知することで、人及び障害物を誤認識してエレベータ20の扉等に衝突してしまう等を回避できる。
【0077】
図11は、実施の形態の変形例に係る非許容エリア23aを示す図である。実施の形態に係る図4と比較して分かるように、本変形例では、エレベータ20の入口における左右の両サイドに壁等の障害物54c及び54dが設けられている。そのために、本変形例における非許容エリア23aは、図11に示されるように、曲がった経路に沿った変形形状のエリアに設定されている。移動体40は、記憶部44aに記憶された非許容エリア情報を参照し、このような変形形状の非許容エリア23aを通行してかご21に乗車すること
で、障害物54c及び54dへの衝突を回避して乗車できる。このように、記憶部44aに記憶させる非許容エリア情報を、現場に合った情報に設定しておくことで、同じ移動制御によって、移動体40は、エレベータ20への乗降を行うことができる。
【0078】
なお、記憶部44aに記憶させる非許容エリア情報は、施設10の全ての階について共通であってもよいし、階ごとに現場に合った内容に設定されていてもよい。
【0079】
以上、本開示に係る移動体、移動体管理システム及び移動体の制御方法について、実施の形態及び変形例に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態及び変形例に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態及び変形例に施したものや、実施の形態及び変形例における一部の構成要素を組み合わせて構築される別の形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0080】
例えば、上記実施の形態では、移動体40及び40aは、人が座ることが可能な椅子構造を有していたが、このような形態に限られず、無人で移動するロボット等であってもよい。
【0081】
また、上記実施の形態では、移動体管理システム50は、1台又は2台の移動体40及び40aを管理したが、3台以上の移動体を管理してもよい。具体的には、エレベータ20のかご21に3台以上の移動体が乗車できるスペースが確保されていてもよいし、待機エリア25が3台以上の移動体に対応していてもよい。
【0082】
また、本開示は、移動体、移動体管理システム及び移動体の制御方法だけでなく、本開示に係る移動体の制御方法に含まれるステップをコンピュータに実行させるプログラム、及び、そのプログラムが記録されたDVD等のコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本開示に係る移動体及び移動体管理システムは、運搬ロボット、掃除ロボット、警備ロボット、施設案内ロボット等の自律走行可能な移動体及びその管理システムとして、特に、大掛かりな工事を必要とせず、低いコストで、エレベータを用いた移動体による安全な階の移動を可能にする移動体及び移動体管理システムとして、利用できる。
【符号の説明】
【0084】
10 施設
20 エレベータ
21 かご
22 許容エリア
23、23a 非許容エリア
24 乗車エリア
25 待機エリア
26a~26c 到着位置検知用マーク
30 管理装置
40、40a 移動体
41 本体部
41a 移動機構
42 周辺検知センサ
43 投射部
44 制御部
44a 記憶部
44b 通信部
44c 音声出力部
50 移動体管理システム
52、52a~52f 人
54、54a~54c 障害物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11