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特開2024-165467積層鉄心の製造装置および積層鉄心の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165467
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造装置および積層鉄心の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20241121BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20241121BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20241121BHJP
   B05D 7/14 20060101ALI20241121BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20241121BHJP
   B05D 3/12 20060101ALI20241121BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20241121BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20241121BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20241121BHJP
   H02K 15/12 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01F41/02 B
B05C5/00 101
B05C11/10
B05D7/14 P
B05D7/00 A
B05D3/12 D
B05D3/00 C
B05D3/12 C
B05D1/26 Z
H02K15/02 F
H02K15/12 A
H01F41/02 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081694
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】593020913
【氏名又は名称】株式会社ナカリキッドコントロール
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】脇本 咲
(72)【発明者】
【氏名】黒笹 広記
【テーマコード(参考)】
4D075
4F041
4F042
5E062
5H615
【Fターム(参考)】
4D075AC06
4D075AC09
4D075AC73
4D075AC84
4D075AC88
4D075AC91
4D075AC94
4D075BB05Z
4D075BB08Z
4D075CA13
4D075CA47
4D075CA48
4D075DA03
4D075DB02
4D075DC16
4D075DC19
4D075EA05
4D075EA35
4F041AA05
4F041AA12
4F041AB01
4F041BA04
4F041BA05
4F041BA10
4F041BA12
4F041BA17
4F041BA32
4F041BA34
4F042AA06
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA07
4F042BA08
4F042BA12
4F042CA01
4F042CA09
4F042CB03
4F042CB08
4F042CB19
4F042DF23
5E062AA04
5E062AA06
5E062AC03
5E062AC05
5E062AC06
5E062AC11
5H615AA01
5H615BB01
5H615PP06
5H615SS03
5H615SS05
5H615SS18
5H615SS33
(57)【要約】
【課題】省スペースとしつつ、液体を高速に塗布対象物の塗布予定位置に向けて塗布する。
【解決手段】帯状金属板Pを打ち抜いた鉄心薄板を積層接着して製造される積層鉄心の製造装置100は、帯状金属板の塗布予定位置に液体を塗布する液体塗布装置10と、帯状金属板の停止中に、間欠搬送される帯状金属板を、液体が塗布された塗布予定位置を含むように打ち抜き加工して鉄心薄板を形成し、鉄心薄板を積層して互いに固着させる金型装置102とを備える。液体塗布装置は、複数のノズル20A~20Eを備え、ノズルは、帯状金属板の搬送方向に沿った塗布予定位置の移動経路に沿って設けられ、ノズルの数は塗布予定位置の数よりも少なく、少なくとも1つのノズルは、少なくとも2つの塗布予定位置に液体を塗布し、ノズルは、帯状金属板の搬送方向への移動中に、少なくとも一つの塗布予定位置に液体を吐出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状金属板を打ち抜いた鉄心薄板を積層接着して製造される積層鉄心の製造装置であって、
前記帯状金属板の塗布予定位置に液体を塗布する液体塗布装置と、
前記帯状金属板の停止中に、前記帯状金属板を、液体が塗布された前記塗布予定位置を含むように所定の形状に打ち抜き加工して鉄心薄板を形成し、前記鉄心薄板を積層して互いに固着させる金型装置と、
前記帯状金属板を、前記液体塗布装置から前記金型装置に向かう搬送方向に沿って間欠搬送する搬送装置と、を備え、
前記液体塗布装置は、
前記帯状金属板の前記塗布予定位置に向けて液体を吐出する複数のノズルを備え、
前記ノズルは、前記帯状金属板の搬送方向に沿った前記塗布予定位置の移動経路に沿って設けられ、
前記ノズルの数は、前記塗布予定位置の数よりも少なく、複数の前記ノズルのうち少なくとも1つは、前記帯状金属板の複数の前記塗布予定位置であって、搬送方向に沿って配置される少なくとも2つの前記塗布予定位置に液体を塗布するものであり、
前記ノズルは、前記帯状金属板の搬送方向への移動中に、少なくとも一つの前記塗布予定位置に液体を吐出する、積層鉄心の製造装置。
【請求項2】
前記ノズルは、前記帯状金属板の搬送方向への移動中に、前記各塗布予定位置に液体を吐出する、請求項1に記載の製造装置。
【請求項3】
前記ノズルは、第1のノズルおよび第2のノズルを含み、
前記第1のノズルは、前記帯状金属板の搬送方向への移動中に前記塗布予定位置に液体を吐出し、
前記第2のノズルは、前記帯状金属板の搬送方向への移動の停止中に前記塗布予定位置に液体を吐出する、請求項1に記載の製造装置。
【請求項4】
前記ノズルは、第1のノズルと第3のノズルを含み、
前記第1のノズルは、前記帯状金属板の搬送方向への移動中に前記塗布予定位置に液体を吐出し、
前記第3のノズルは、前記帯状金属板の搬送方向への移動中および搬送方向への移動の停止中に前記塗布予定位置に液体を吐出する、請求項1に記載の製造装置。
【請求項5】
前記ノズルは、前記帯状金属板の搬送方向への移動中および停止中に、前記各塗布予定位置に液体を吐出する、請求項1に記載の製造装置。
【請求項6】
前記帯状金属板の複数の前記塗布予定位置と複数の前記ノズルの位置とが平面からみて重なるように、前記ノズルが配置される、請求項1に記載の製造装置。
【請求項7】
前記第1のノズルの吐出口と前記第1のノズルにより液体が塗布される前記塗布予定位置との間の距離をA、前記第2のノズルの吐出口または前記第3のノズルの吐出口と前記第2のノズルまたは前記第3のノズルにより液体が塗布される前記塗布予定位置との間の距離をBとしたときに、A<Bである、請求項3または4に記載の製造装置。
【請求項8】
前記帯状金属板には打ち抜き孔が形成されており、
前記帯状金属板を挟んで前記ノズルと反対側に、前記ノズルから吐出された液体が前記打ち抜き孔を通って飛び散るのを防止するカバーをさらに備える、請求項1から6のいずれか1項に記載の製造装置。
【請求項9】
前記カバーの上側に液体を吸引するための吸引手段をさらに備える、請求項8に記載の製造装置。
【請求項10】
前記ノズルは前記帯状金属板の下側に配置され、吐出口が鉛直方向に沿って上向きとなるように配置される、請求項1に記載の製造装置。
【請求項11】
前記ノズルは、ノズルプレート本体に、液体が収容される貯留室と、前記貯留室と連通する吐出流路と、前記吐出流路の端部に設けられ液体を吐出する吐出口と、を有するノズルプレートであり、
前記ノズルプレートは、前記吐出口を覆うように形成される液体の膜を保持し、液体の膜の広がりを制限する規制部によって囲まれる液体保持部を備え、
平面から見て、前記液体保持部の面積をS1、前記吐出口の面積をS2としたときに、S1/S2は、25より大きく、2500より小さい、請求項1に記載の製造装置。
【請求項12】
帯状金属板を打ち抜いた鉄心薄板を積層接着して製造される積層鉄心の製造方法であって、
液体塗布装置により前記帯状金属板の塗布予定位置に液体を塗布する工程と、
前記帯状金属板を、前記液体塗布装置から金型装置に向かう搬送方向に沿って間欠搬送する工程と、
前記帯状金属板の停止中に、前記金型装置により、前記帯状金属板を液体が塗布された前記塗布予定位置を含むように所定の形状に打ち抜き加工して鉄心薄板を形成し、前記鉄心薄板を積層して互いに固着させる工程とを含み、
前記液体塗布装置は、
前記帯状金属板の前記塗布予定位置に向けて液体を吐出する複数のノズルを備え、
前記ノズルは、前記帯状金属板の搬送方向に沿った前記塗布予定位置の移動経路に沿って設けられ、
前記ノズルの数は、前記塗布予定位置の数よりも少なく、複数の前記ノズルのうち少なくとも1つは、前記帯状金属板の複数の前記塗布予定位置であって、搬送方向に沿って配置される少なくとも2つの前記塗布予定位置に液体を塗布するものであり、
前記塗布する工程において、前記ノズルは、前記帯状金属板の搬送方向への移動中に、少なくとも一つの前記塗布予定位置に液体を吐出する、積層鉄心の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層鉄心の製造装置および積層鉄心の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機、発電機、トランス及びリアクトルなどに使用される積層鉄心は、一般に、渦電流抑制のために電磁鋼板を素材としている。例えば図11に示すように、積層鉄心の製造装置100は、第1金型装置101、液体塗布装置103、第2金型装置102などを備えている。積層鉄心の製造工程は、おおよそ以下の通りである。まず、前半打ち抜き工程において、上金型101bおよび下金型101aを備える第1金型装置101を用い、帯状の電磁鋼板(「帯状金属板P」ともいう)にパイロット孔、スロット部等を形成するための打ち抜き加工を行い、外形を除く鉄心薄板104(図13)の基本形状を形成する。図11には、帯状金属板Pに円形の孔110を打ち抜き加工した例が示されている。次に、接着剤塗布工程を行う。帯状金属板Pは液体塗布装置103の上側に搬送され、液体塗布装置103により塗布予定位置111に接着剤が塗布される。図11では、接着剤が円形の打ち抜き孔110の周囲6つに塗布されている。そして、第2金型装置102により外形打ち抜き工程を行う。この工程では、第2金型装置102の上金型102bに取り付けられた外形打ち抜きパンチによって液体が塗布された面と反対側の面から外形が打ち抜かれ、例えば図13に示すような環状の鉄心薄板104が形成される。打ち抜かれた鉄心薄板104は、下金型102a内に順次積層され、接着剤によって互いに固着されて積層鉄心が製造される。
【0003】
帯状金属板Pに接着剤を塗布する装置として、例えば、特許文献1、2に記載のものが提案されている。特許文献1の液体塗布装置は、間欠移送される帯状金属板Pから鉄心薄板104を順次打抜く順送り金型手段の下側に配置されており、順送り金型手段により、帯状金属板Pを下金型上面に当接させた際に、帯状金属板Pの下面に液体塗布装置から吐出される接着剤を転写させている。また、特許文献2の液体塗布装置は、所定形状に打ち抜かれた磁性金属板に対して、ジェットディスペンス法により、打ち抜き方向裏面側から接着剤を塗布している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-103978号公報
【特許文献2】特開2020-89208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の発明においては、複数のノズルを備えて複数箇所に接着剤を同時塗布してもよいものであり、この場合、それぞれの塗布予定位置の直下に塗布予定位置の数と同数のノズルを設置する。しかし、ノズルを設置するためにはある程度のスペースが必要であり、ノズル間の距離を一定距離以上に近づけることはできない。例えば、図14の例では、6つの塗布予定位置111A~11Fの下に6つのノズル130A~130Fを配置しようとすると、平面からみてノズル130Fがノズル130Aと重なり、ノズル130Cがノズル130Bと重なり、ノズル130F、130Cを塗布予定位置111F、111Cの下に配置することができない。このため、帯状金属板Pの塗布予定位置の間の間隔がノズル間の距離よりも狭い場合には、ノズルを塗布予定位置の直下に配置できず、同時に塗布することができない。このため、図12に示すように、ノズル130を帯状金属板Pの塗布予定位置の移動経路上の複数箇所に分けて配置し、液体塗布工程を複数回に分けることが行われる。図12の例では、金型装置の下流側の第1の箇所に4つのノズル130A、130B、130D、130E(図12では130A、130Bは図示されていない)を配置し、第1の箇所より下流側の第2の箇所に2つのノズル130C、130Fを配置している。一度目の塗布工程で4つの塗布予定位置111A、111B、111D、111Eに接着剤を塗布し、二度目の塗布工程で残りの2つの塗布予定位置111C、111Fに接着剤を塗布している。
【0006】
しかし、図12のようにノズル130A~130Fを複数箇所に分けて配置する場合、ノズル130A~130Fを配置するために大きいスペースが必要となる。また、帯状金属板Pを停止させて複数回に分けて接着剤を塗布するため、塗布に時間がかかる。
【0007】
本発明は、上記した課題に着目してなされたものであり、省スペースとしつつ、液体を高速に塗布対象物の塗布予定位置に向けて塗布することのできる液体塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、次の項に記載の主題を包含する。
【0009】
項1:帯状金属板を打ち抜いた鉄心薄板を積層接着して製造される積層鉄心の製造装置であって、
前記帯状金属板の塗布予定位置に液体を塗布する液体塗布装置と、
前記帯状金属板の停止中に、前記帯状金属板を、液体が塗布された前記塗布予定位置を含むように所定の形状に打ち抜き加工して鉄心薄板を形成し、前記鉄心薄板を積層して互いに固着させる金型装置と、
前記帯状金属板を、前記液体塗布装置から前記金型装置に向かう搬送方向に沿って間欠搬送する搬送装置と、を備え、
前記液体塗布装置は、
前記帯状金属板の前記塗布予定位置に向けて液体を吐出する複数のノズルを備え、
前記ノズルは、前記帯状金属板の搬送方向に沿った前記塗布予定位置の移動経路に沿って設けられ、
前記ノズルの数は、前記塗布予定位置の数よりも少なく、複数の前記ノズルのうち少なくとも1つは、前記帯状金属板の複数の前記塗布予定位置であって、搬送方向に沿って配置される少なくとも2つの前記塗布予定位置に液体を塗布するものであり、
前記ノズルは、前記帯状金属板の搬送方向への移動中に、少なくとも一つの前記塗布予定位置に液体を吐出する、積層鉄心の製造装置。
【0010】
項2:前記ノズルは、前記帯状金属板の搬送方向への移動中に、前記各塗布予定位置に液体を吐出する、項1に記載の製造装置。
【0011】
項3:前記ノズルは、第1のノズルおよび第2のノズルを含み、
前記第1のノズルは、前記帯状金属板の搬送方向への移動中に前記塗布予定位置に液体を吐出し、
前記第2のノズルは、前記帯状金属板の搬送方向への移動の停止中に前記塗布予定位置に液体を吐出する、項1に記載の製造装置。
【0012】
項4:
前記ノズルは、第1のノズルと第3のノズルを含み、
前記第1のノズルは、前記帯状金属板の搬送方向への移動中に前記塗布予定位置に液体を吐出し、
前記第3のノズルは、前記帯状金属板の搬送方向への移動中および搬送方向への移動の停止中に前記塗布予定位置に液体を吐出する、項1に記載の製造装置。
【0013】
項5:前記ノズルは、前記帯状金属板の搬送方向への移動中および停止中に、前記各塗布予定位置に液体を吐出する、項1に記載の製造装置。
【0014】
項6:前記帯状金属板の複数の前記塗布予定位置と複数の前記ノズルの位置とが平面からみて重なるように、前記ノズルが配置される、項1から5のいずれかに記載の製造装置。
【0015】
項7:前記第1のノズルの吐出口と前記第1のノズルにより液体が塗布される前記塗布予定位置との間の距離をA、前記第2のノズルの吐出口または前記第3のノズルの吐出口と前記第2のノズルまたは前記第3のノズルにより液体が塗布される前記塗布予定位置との間の距離をBとしたときに、A<Bである、項3または4に記載の製造装置。
【0016】
項8:前記帯状金属板には打ち抜き孔が形成されており、
前記帯状金属板を挟んで前記ノズルと反対側に、前記ノズルから吐出された液体が前記打ち抜き孔を通って飛び散るのを防止するカバーをさらに備える、項1から7のいずれか1項に記載の製造装置。
【0017】
項9:前記カバーの上側に液体を吸引するための吸引手段をさらに備える、項8に記載の製造装置。
【0018】
項10:前記ノズルは前記塗布対象物の下側に配置され、吐出口が鉛直方向に沿って上向きとなるように配置される、項1から9のいずれか1項に記載の製造装置。
【0019】
項11:前記ノズルは、ノズルプレート本体に、液体が収容される貯留室と、前記貯留室と連通する吐出流路と、前記吐出流路の端部に設けられ液体を吐出する吐出口と、を有するノズルプレートであり、
前記ノズルプレートは、前記吐出口を覆うように形成される液体の膜を保持し、液体の膜の広がりを制限する規制部によって囲まれる液体保持部を備え、
平面から見て、前記液体保持部の面積をS1、前記吐出口の面積をS2としたときに、S1/S2は、25より大きく、2500より小さい、項1から9のいずれか1項に記載の製造装置。
【0020】
項12:帯状金属板を打ち抜いた鉄心薄板を積層接着して作製される積層鉄心の製造方法であって、
液体塗布装置により前記帯状金属板の塗布予定位置に液体を塗布する工程と、
前記帯状金属板を、前記液体塗布装置から金型装置に向かう搬送方向に沿って間欠搬送する工程と、
前記帯状金属板の停止中に、前記金型装置により、前記帯状金属板を液体が塗布された前記塗布予定位置を含むように所定の形状に打ち抜き加工して鉄心薄板を形成し、前記鉄心薄板を積層して互いに固着させる工程とを含み、
前記液体塗布装置は、
前記帯状金属板の前記塗布予定位置に向けて液体を吐出する複数のノズルを備え、
前記ノズルは、前記帯状金属板の搬送方向に沿った前記塗布予定位置の移動経路に沿って設けられ、
前記ノズルの数は、前記塗布予定位置の数よりも少なく、複数の前記ノズルのうち少なくとも1つは、前記帯状金属板の複数の前記塗布予定位置であって、搬送方向に沿って配置される少なくとも2つの前記塗布予定位置に液体を塗布するものであり、
前記塗布する工程において、前記ノズルは、前記帯状金属板の搬送方向への移動中に、少なくとも一つの前記塗布予定位置に液体を吐出する、積層鉄心の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、省スペースとしつつ、液体を高速に塗布することのできる液体塗布装置および液体塗布方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(A)~(D)は本発明の一実施形態に係る製造装置の液体塗布装置の動作を示す説明図である。
図2】(A)~(C)は本発明の他の実施形態に係る製造装置の液体塗布装置の動作を示す説明図である。
図3】(A)~(C)は本発明の他の実施形態に係る製造装置の液体塗布装置の動作を示す説明図である。
図4】本発明の製造装置の一実施形態における帯状金属板の移動中の概略構成を示す側面図である。
図5】本発明の製造装置の一実施形態における帯状金属板の停止中の打ち抜き動作時の概略構成を示す側面図である。
図6】本発明の液体塗布装置を含む製造装置の他の実施形態の概略構成を示す側面図である。
図7】液体塗布装置の断面図である。
図8】ノズルプレートの要部を拡大して示す断面図である。
図9】ノズルプレートの要部を拡大して示す底面図である。
図10】(A)~(C)は液体を吐出する工程を説明するための図であり、(A)は液体保持部に液体の膜が形成された状態を示す図、(B)は液塊が形成された状態を示す図、(C)は液塊を液滴として吐出した状態を示す図である。
図11】従来技術の説明図である。
図12】従来技術の説明図である。
図13】鉄心薄板の平面図である。
図14】従来技術の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(全体構成)
本発明の実施形態を図面を参照して説明する。本発明の積層鉄心の製造装置100は、帯状金属板Pを打ち抜いて作成される鉄心薄板104(図13)を積層接着して積層鉄心を製造するものであり、例えば図4図5に示すように、金型装置として、第1金型装置101、第2金型装置102、を備え、さらに、液体塗布装置10、搬送装置(図示せず)を備えている。
【0024】
第1金型装置101、第2金型装置102は、下金型(ダイ)101a、102aに帯状金属板Pを固定し、上金型(パンチ)101b、102bを下降させて帯状金属板Pをせん断するものであり、打ち抜き方向は上から下に向かう方向である。第1金型装置101は、帯状金属板Pの停止中に、帯状金属板Pにパイロット孔、スロット部等の打ち抜き孔110を形成するための前半打ち抜き工程を行うためのものである。第2金型装置102は、帯状金属板Pの停止中に、帯状金属板Pを、液体が塗布された塗布予定位置を含むように所定の形状に打ち抜き加工して鉄心薄板を形成する外形打ち抜き工程を行い、鉄心薄板を積層して互いに固着させるものである。搬送装置は、例えば、駆動ローラおよび従動ローラ、搬送ベルト等から構成されて、帯状金属板Pを、第1金型装置101、液体塗布装置10、第2金型装置102に向けて搬送方向に沿って間欠搬送するものである。また、前半打ち抜き工程における前半打ち抜き動作、外形打ち抜き工程における外形打ち抜き動作を区別する必要のないときは単に「打ち抜き動作」ともいう。
【0025】
なお、第1金型装置101の動作と第2金型装置102の動作とは帯状金属板Pの停止中に同時に行われる。搬送装置が帯状金属板Pを間欠的に搬送する間欠搬送とは、帯状金属板Pが搬送方向に沿って移動すること、帯状金属板Pが第1金型装置101および第2金型装置102で停止すること、を交互に繰り返すことをいう。
【0026】
また、製造装置100は、制御部(図示せず)を備え、第1金型装置101、液体塗布装置10、第2金型装置102、搬送装置の動作を制御している。制御部は各部の動作に必要なプログラムが予め記憶されたメモリやCPUや等からなり、CPUが各種プログラムを実行することで各部の動作を制御する。例えば、制御部は、第1金型装置101、第2金型装置102の上金型101b、102bの移動の動作、搬送装置の駆動ローラの動作、液体塗布装置10のアクチュエータ18(後述)、液体供給部70の電磁バルブ72等(後述)の動作を制御する。第1金型装置101、第2金型装置102、搬送装置、制御部については、既知の構成のものが用いられるため、説明を省略する。
【0027】
第1金型装置101、液体塗布装置10、第2金型装置102は、帯状金属板Pの搬送方向に沿って、上流側から下流側に向けて、第1金型装置101、液体塗布装置10、第2金型装置102の順に配置される。
【0028】
帯状金属板Pは、第1金型装置101、第2金型装置102の上金型101b、102bと下金型101a、102aとの間に搬送され、液体塗布装置10は帯状金属板Pの下側に配置されている。
【0029】
(帯状金属板P)
塗布対象物は、例えば積層鉄心の製造に用いられる帯状金属板Pであり、電磁鋼板、パーマロイ板、アモルファス金属板、その他の磁性を有する金属材料を帯状に成形したものなどが挙げられるが、これらに限定されるものではなく、製造される積層鉄心の要求特性を満足するものであればよい。また、帯状金属板Pの厚みは、例えば0.1mm程度であるが、特に限定されるものではなく、製造する積層鋼板の用途や目的に応じて適宜選択される。帯状金属板Pには、金型装置による抜き打ち加工において作成された抜き打ち孔110の周囲に接着剤が塗布される。帯状金属板Pの下面であって、接着剤が塗布される予定の位置を塗布予定位置111という。
【0030】
以下、本発明の液体塗布装置10によって接着剤が塗布される帯状金属板Pとして、図1(A)~(D)に示すものを例として本発明を説明する。帯状金属板Pは前半打ち抜き工程において円形の打ち抜き孔110が形成される。抜き打ち孔110の周囲には、6つの塗布予定位置111A~111F(区別する必要のないときは、「塗布予定位置111」ともいう。)が設定されている。塗布予定位置111A~111Fは打ち抜き孔110の中心点を中心とした仮想の正六角形の頂点に配置されている。
【0031】
図1(A)~(D)において、左側から右側に向かう方向、すなわち、液体塗布装置10から第2金型装置102に向かう方向が帯状金属板Pが搬送装置により搬送される方向(「搬送方向」ともいう。)であり、左側が上流側、右側が下流側である。塗布予定位置111Aと塗布予定位置111Eとは平面からみて搬送方向に直交する方向に沿って配置されており、側面からみた場合には搬送方向に沿って位置が揃っている。塗布予定位置111Bと塗布予定位置111Dとは平面からみて搬送方向に直交する方向に沿って配置されており、側面からみた場合には搬送方向に沿って位置が揃っている。上流側から下流側に向けて、塗布予定位置111F、塗布予定位置111A、111E、塗布予定位置111B、111D、塗布予定位置111Bの順に位置している。帯状金属板Pの塗布予定位置111A、111Bは同一の移動経路112Aに沿って移動し、塗布予定位置111C、111Fは同一の移動経路112Bに沿って移動し、塗布予定位置111D、111Eは同一の移動経路112Cに沿って移動する。移動経路112A~112Cを区別する必要のないときは、「移動経路112」ともいう。
【0032】
なお、帯状金属板Pに抜き打ち加工される孔やスロットの形状、位置、塗布予定位置111の数や位置等は上記の実施形態に限定されず、製造する積層鋼板の用途や目的に応じて適宜設定される。なお、図1図3図11図13においては、帯状金属板Pの下面の塗布予定位置に塗布された接着剤を塗りつぶしにより示している。
【0033】
(液体塗布装置10)
液体塗布装置10は、帯状金属板Pの塗布予定位置111に液体である接着剤を塗布するためのものである。液体塗布装置10は、液体を吐出する複数のノズル20A~20C(区別する必要のないときは、「ノズル20」ともいう)を備える。複数のノズル20のうち少なくとも1つは、搬送される帯状金属板Pの下面に設定された複数の塗布予定位置111であって、搬送方向と平行に配置される少なくとも2つの塗布予定位置111に液体の接着剤を塗布するものである。液体塗布装置10は帯状金属板Pの下側に配置されるため、ノズル20は、吐出口22dが鉛直方向に沿って上向きとなるように配置され、液体、主に接着剤は鉛直方向に沿って飛翔する。なお、ノズル20は必ずしも鉛直方向に沿う必要はなく、任意の方向に配置可能である。
【0034】
図1(A)~(D)に示すように、ノズル20は、帯状金属板Pの搬送時の塗布予定位置111の移動経路112A~112Cに沿って設けられ、帯状金属板Pの搬送方向への移動中に塗布予定位置111に液体を吐出する。ノズル20の数は、塗布予定位置111の数よりも少ない。図1(A)~(D)の例では、塗布予定位置111A~111Fは6つ、ノズル20A~20Cの数は3つである。ノズル20Aとノズル20Cとは平面からみて帯状金属板Pの搬送方向に直交する方向に沿って配置され、液体塗布装置10を側面からみて搬送方向に沿って位置が揃っている。ノズル20Bは搬送方向に直交する方向に沿ってノズル20A、20Cの間の中心位置であって、ノズル20A、20Cよりも搬送方向に沿って上流側の位置に配置されている。ノズル20Aは、帯状金属板Pの塗布予定位置111A、111Bが移動する移動経路112Aに沿って設けられている。ノズル20Bは塗布予定位置111C、111Fが移動する移動経路112Bに沿って設けられている。ノズル20Cは塗布予定位置111D、111Eが移動する移動経路112Cに沿って設けられている。
【0035】
また、ノズル20Bとノズル20A、20Cとの間の搬送方向に沿った距離L1は、塗布予定位置111B、111Dと塗布予定位置111Fとの間の搬送方向に沿った距離L2よりも小さく設定される。また、距離L1は、塗布予定位置111A、111Eと塗布予定位置111Fとの間の搬送方向に沿った距離L3よりも大きく設定されている。
【0036】
なお、本明細書において、ノズル20が搬送方向に直交する方向に沿っているとは、ノズル20の吐出口22dが搬送方向に直交する方向に沿っていることをいい、また、ノズル20の位置が揃っているとは、ノズル20の吐出口22dの位置が揃っていることをいう。ノズル20間の距離とはノズル20の吐出口22dの中心点間の距離をいう。塗布予定位置111間の距離とは塗布予定位置111の中心(重心)間の距離をいう。塗布予定位置111がノズル20に到達するとは、塗布予定位置111がノズル20の吐出口22dに到達することをいう。
【0037】
液体の接着剤として、金属同士を接着するため嫌気性接着剤が好ましく用いられる。しかし、加工された鉄心薄板104同士が強固に接着されて積層鉄心を製造できるものであれば、例えば、加熱硬化性接着剤、二液混合硬化性接着剤も用いることができ、接着剤の種類は特に限定されるものではない。
【0038】
(製造装置100による積層鉄心の製造方法)
(第1金型装置101による前半打ち抜き動作)
製造装置100による積層鉄心の製造方法は以下のとおりである。まず、第1金型装置101の上金型101b、下金型101aの間に帯状金属板Pが搬送され、停止する。第1金型装置101により、帯状金属板Pにパイロット孔、スロット部等の打ち抜き孔110を形成するための前半打ち抜き工程が行われる。前半打ち抜き動作時には、図5に示すように、帯状金属板Pは上金型101bにより下金型101aに向けて押し下げられるため、打ち抜き動作時の帯状金属板Pの上下方向の高さ位置(「停止時の高さ位置H2」ともいう。は搬送時の高さ位置H1(図4)よりも下となる。前半打ち抜き工程が終了すると、帯状金属板Pは搬送装置により上方向に移動し、搬送時の高さ位置H1に戻される。搬送時の高さ位置H1とは、帯状金属板Pが搬送方向に移動するときの高さ位置である。なお、第1金型装置101の動作は第2金型装置102の動作と同時に、帯状金属板Pの停止中に行われる。
【0039】
(液体塗布装置10の液体塗布動作)
次に、液体塗布装置10の帯状金属板Pへの液体塗布方法(塗布動作)について説明する。図1に示す実施形態においては、液体塗布動作は帯状金属板Pが搬送方向に移動している間に行われる。第1金型装置101による前半打ち抜き動作の終了後、搬送装置により帯状金属板Pの打ち抜き孔110を含む領域は液体塗布装置10に向けて搬送される。まず、帯状金属板Pの下面の塗布予定位置111Cがノズル20B付近に到達し、ノズル20Bは帯状金属板Pの下面の塗布予定位置111Cに向けて液体を塗布する(図1(A))。以下の図1図3では、接着剤が塗布された塗布予定位置111を塗りつぶしにより示している。
【0040】
帯状金属板Pは搬送装置により搬送方向に所定の速度で移動しており、ノズル20Bは移動中の帯状金属板Pの塗布予定位置111Cに向けて接着剤を吐出する。塗布予定位置111Cがノズル20Bよりも若干上流側に到達したときにノズル20Bから接着剤が吐出されることで、接着剤が位置ずれせずに塗布予定位置111Cに確実に到達する。ノズル20Bから接着剤が吐出されるタイミングは帯状金属板Pの移動速度に応じて適宜設定される。塗布予定位置111Cへの塗布と同様に、以下に説明する塗布予定位置111A、111B、111D~111Fへの接着剤の塗布においても、移動中の帯状金属板Pの塗布予定位置111A、111B、D~111Fに向けて接着剤の塗布が行われる。このとき、ノズル20Bから接着剤が吐出されるタイミングも帯状金属板Pの移動速度に応じて適宜設定される。
【0041】
移動中の帯状金属板Pの最高移動速度は、例えば、0.02m/s以上、2m/s以下に設定されるが、これに限定されるものではない。接着剤は、帯状金属板Pの塗布予定位置111、底面からみて直径約50mmの円形状に塗布されるが、塗布される接着剤の量や大きさは特に限定されるものではなく、製造される積層鋼板の用途や大きさに応じて設定される。なお、帯状金属板Pは第1金型装置101、第2金型装置102で打ち抜き動作が行われる際には停止しており、停止した状態から液体塗布装置10に向けて加速して移動し、減速して停止する。この間の最も速い速度を、「最高移動速度」という。
【0042】
次に、帯状金属板Pが搬送方向に沿って移動し、帯状金属板Pの下面の塗布予定位置111Bがノズル20A付近に到達し、塗布予定位置111Dがノズル20C付近に到達する。ノズル20A、20Cは帯状金属板Pの下面の塗布予定位置111B、111Dに向けてそれぞれ接着剤を吐出し、塗布予定位置111B、111Dに接着剤が塗布される(図1(B))。
【0043】
さらに、帯状金属板Pが搬送方向に沿って移動し、帯状金属板Pの下面の塗布予定位置111Fがノズル20B付近に到達する。ノズル20Bは帯状金属板Pの下面の塗布予定位置111Fに向けてそれぞれ接着剤を吐出し、塗布予定位置111Fに接着剤が塗布される(図1(C))。
【0044】
さらに、帯状金属板Pが搬送方向に沿って移動し、帯状金属板Pの下面の塗布予定位置111Aがノズル20A付近に到達し、塗布予定位置111Eがノズル20C付近に到達する。ノズル20A、20Cは帯状金属板Pの下面の塗布予定位置111A、111Eに向けてそれぞれ接着剤を吐出し、塗布予定位置111A、111Eに接着剤が塗布される(図1(D))。上記の動作により、塗布予定位置111A~111F全てに接着剤が塗布される。
【0045】
(第2金型装置102による外形打ち抜き動作)
そして、帯状金属板Pの接着剤が塗布された塗布予定位置111A~111Fを含む領域が第2金型装置102の上金型102bと下金型102aとの間に搬送される。第2金型装置102により鉄心薄板を形成するための外形打ち抜き工程が行われる。打ち抜き動作時には、帯状金属板Pは上金型102bにより下金型102aに向けて押し下げられ、前半打ち抜き工程の時と同じ停止時の高さ位置H2に位置する。この外形の打ち抜き動作により、図13に示すような鉄心薄板104が形成される。この鉄心薄板104は下金型102a内で前の打ち抜き動作により作成された鉄心薄板104上に重ねられて、接着剤によって互いに固着されて積層鉄心が製造される。
【0046】
なお、塗布動作において、上記の実施形態では帯状金属板Pの移動中に各ノズル20は接着剤を吐出しているが、一部の塗布予定位置111への吐出時に帯状金属板Pが停止した状態であってもよい。
【0047】
上記構成によれば、塗布対象物である帯状金属板Pの塗布予定位置111のうち、少なくとも2つの塗布予定位置111は搬送方向(移動経路112に沿った方向)と平行であり、ノズル20は塗布対象物の搬送時の塗布予定位置111の移動経路112上に設けられている。このため、同じノズル20で2つの塗布予定位置111に液体を塗布することができ、ノズル20の数を塗布予定位置111よりも減らすことができ、省スペースとなる。
【0048】
また、従来のようにそれぞれの塗布予定位置111の直下となるようにノズル20を配置して同時塗布する場合、ノズル20の設置にはある程度のスペースが必要であるため、ノズル20間の距離を一定距離以上に近づけることはできない。このため、帯状金属板Pの塗布予定位置111の間の距離を小さくすることができなかった。しかし、本実施形態においては、帯状金属板Pを移動させて1つのノズル20で複数の塗布予定位置111に液体を塗布することが可能であるため、塗布予定位置111が互いに近くても液体を塗布することができる。
【0049】
また、帯状金属板Pは間欠搬送されるが、帯状金属板Pの移動中、すなわち塗布対象物が移動している間にノズル20から液体を塗布しており、液体の塗布時に帯状金属板Pが停止していないため、塗布にかかる時間を短縮することができる。
【0050】
(液体塗布装置10および塗布動作の他の実施形態)
図2に液体塗布装置10および塗布動作の他の例を示す。図2の例では、塗布予定位置111は6つ、ノズル20の数は5つである。ノズル20は、帯状金属板Pの移動中に塗布予定位置111C、111F(「第1の塗布予定位置111C、111F」ともいう。)に液体を吐出するノズル20B(「第1のノズル20B」ともいう。)と、帯状金属板Pの停止中に塗布予定位置111A、111B、111D、111E(「第2の塗布予定位置111A、111B、111D、111E」ともいう。)に液体を吐出するノズル20A、20D、20E、20C(「第2のノズル20A、20D、20E、20C」ともいう。)とに分けられる。帯状金属板Pの塗布予定位置111A、111Bは同一の移動経路112Aに沿って移動し、ノズル20A、20Dは移動経路112Aに沿って設けられている。帯状金属板Pの塗布予定位置111C、111Fは同一の移動経路112Bに沿って移動し、ノズル20Bは移動経路112Bに沿って設けられている。帯状金属板Pの塗布予定位置111D、111Eは同一の移動経路112Cに沿って移動し、ノズル20C、20Eは移動経路112Cに沿って設けられている。
【0051】
ノズル20Aとノズル20Cとは平面からみて帯状金属板Pの搬送方向に直交する方向に沿って配置され、液体塗布装置10を側面からみて搬送方向に沿って位置が揃っている。ノズル20Dとノズル20Eとは平面からみて帯状金属板Pの搬送方向に直交する方向に沿って配置され、液体塗布装置10を側面からみて搬送方向に沿って位置が揃っている。ノズル20A~20Eは、上流側から下流側に向けて、ノズル20B、ノズル20A、20C、ノズル20D、20Eとの順に、搬送方向に沿って異なった位置に配置されている。また、側面からみて、ノズル20D、20Eとノズル20Bとの間の搬送方向に沿った距離L11は、塗布予定位置111B、111Dと塗布予定位置111Fとの間の搬送方向に沿った距離L12よりも大きく設定されている。また、ノズル20A、20Cとノズル20D、20Eとの間の搬送方向に沿った距離L13は、塗布予定位置111A、111Eと塗布予定位置111B、111Dとの間の搬送方向に沿った距離L14と等しく設定されている。ノズル20A、20D、20E、20Cは、その位置が平面からみて塗布予定位置111A、111B、111D、111Eの位置と重なることができるように配置されている。
【0052】
図4に示すように、帯状金属板Pの下面の塗布予定位置111が第1のノズル20Bの吐出口22dの直上に位置したとき、言い換えると、帯状金属板Pの面に直交する直線上に、塗布予定位置111と第1のノズル20Bの吐出口22dとが位置したとき、塗布予定位置111と第1のノズル20Bの吐出口22dとの間の距離をAとする。帯状金属板Pの塗布予定位置111が第2のノズル20A、20D、20E、20Cの吐出口22dの直上に位置したとき、言い換えると、帯状金属板Pの面に直交する直線上に、塗布予定位置111と第1のノズル20Bの吐出口22dとが位置したときに、塗布予定位置111と第2のノズル20A、20D、20E、20Cの吐出口22dとの間の距離をBとする。このとき、A<Bとなるように第1のノズル20B、第2のノズル20A、20D、20E、20Cが配置されている。帯状金属板Pは、搬送時の高さ位置H1と、前半打ち抜き工程、外形打ち抜き工程の間の停止時の高さ位置H2さが異なっているため、距離A、Bは、帯状金属板Pの搬送時と停止時(打ち抜き動作時)とで異なっている(図4図5)。
【0053】
帯状金属板Pと第1、第2の各ノズル20との間の距離A、Bはそれぞれ適切な範囲があり、近すぎると吐出した接着剤がノズル20から離れないうちに帯状金属板Pの塗布予定位置111に到達してしまい、所望の量の接着剤が塗布されない場合がある。また、距離A、Bが大きすぎると、接着剤が塗布予定位置111に到達せず、位置ずれする場合がある。本実施形態では、第1のノズル20Bは帯状金属板Pの移動中に接着剤を吐出するため、接着剤の位置ずれを防ぐために所望の量の接着剤が塗布される範囲で距離Aをできるだけ小さく設定している。距離Aは、帯状金属板Pの停止中に接着剤を吐出する第2のノズル20A、20D、20E、20Cと帯状金属板Pの塗布予定位置111との距離Bよりも短く設定されている。例えば、帯状金属板Pの停止中(打ち抜き動作時)においては、距離Aは1mm以上、23mm以下、距離Bは、3mm以上、25mm以下となり、帯状金属板Pの移動中(搬送時)においては、距離Aが3mm以上、25mm以下、距離Bが5mm以上、27mm以下となるようにノズル20が設けられる。他の構成は図1に示す実施形態と同様であるため、対応する構成に同一の符号を付すことで詳細な説明は省略する。
【0054】
製造装置100による積層鉄心の製造方法について説明する。第1金型装置101による打ち抜き動作については、図1に示す実施形態と同様であるため説明を省略する。液体塗布装置10の液体塗布動作について説明する。搬送装置により帯状金属板Pの打ち抜き孔110を含む領域が液体塗布装置10に向けて搬送される。まず、帯状金属板Pの下面の塗布予定位置111Cが第1のノズル20B付近に到達し、ノズル20Bは搬送方向への移動中の帯状金属板Pの下面の第1の塗布予定位置111Cに向けて液体を塗布する(図2(A))。次に、帯状金属板Pが搬送方向に沿って移動し、帯状金属板Pの下面の塗布予定位置111Fが第1のノズル20B付近に到達し、第1のノズル20Bは移動中の帯状金属板Pの下面の第1の塗布予定位置111Fに向けて液体を塗布する(図2(B))。
【0055】
そして、帯状金属板Pは搬送方向に沿ってさらに移動し、帯状金属板Pの下面の第2の塗布予定位置111A、111B、111D、111Eがそれぞれ第2のノズル20A、20D、20E、20Cの上方に位置した状態で停止する。このとき、平面からみて、第2のノズル20A、20D、20E、20Cの位置と第2の塗布予定位置111A、111B、111D、111Eの位置とが重なる。帯状金属板Pが停止した状態で、第2のノズル20A、20D、20E、20Cは第2の塗布予定位置111A、111B、111D、111Eに向けて液体を塗布する(図2(C))。これにより、塗布予定位置111A~111F全てに接着剤が塗布される。
【0056】
帯状金属板Pが搬送方向への移動を停止したとき、第1金型装置101においては、次の打ち抜き孔110を形成する前半打ち抜き動作が行われ、第2金型装置102では、外形打ち抜き動作が行われる。このため、帯状金属板Pは下方向に、搬送時の高さ位置H1から停止時の高さ位置H2に移動する。また、前半打ち抜き動作、外形打ち抜き動作が終了すると、帯状金属板Pは上方向に停止時の高さ位置H2から搬送時の高さ位置H1に移動する。接着剤の塗布は、上下方向に沿った移動のいずれのタイミングで行われてもよく、帯状金属板Pが停止時の高さ位置H2にあるときに行われてもよく、下方向への移動中、上方向への移動中のいずれかに行われてもよい。
【0057】
第2金型装置102による外形打ち抜き動作については、図1に示す実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0058】
上記の構成によれば、複数の塗布予定位置111A~111Fのうち、第1の塗布予定位置111C、111Fへの塗布は第1のノズル20Bにより帯状金属板Pの搬送方向への移動中にのみ行われる。第2の塗布予定位置111A、111B、111D、111Eへの塗布は第2のノズル20A、20D、20E、20Cにより帯状金属板Pの搬送方向への移動の停止中にのみ行われる。移動中に液体を塗布する第1のノズル20Bと、停止中に液体を塗布する第2のノズル20A、20D、20E、20Cとに分けることで、塗布対象物との距離や吐出スピードなどをそれぞれのノズル20に適するように設定することができる。
【0059】
また、液体塗布装置10は、液体の吐出を行ってから次の吐出を行うまでに準備のためにある程度の時間間隔が必要となる。本実施形態では、搬送方向に沿って隣合う塗布予定位置111Aと塗布予定位置111B、搬送方向に沿って隣合う塗布予定位置111Eと塗布予定位置111Dの間隔が短い。このため、移動経路112A、112C上にそれぞれ1つしかノズル20がない場合は、帯状金属板Pの移動中に連続して接着剤の吐出を行うことができない。また、塗布予定位置111A~111Fの間隔が大きくても、帯状金属板Pの搬送速度が高速の場合には接着剤の吐出を行うことができない。このため、一部の塗布予定位置111A、111B、111D、111Eには、帯状金属板Pの停止中に塗布を行うことで、確実に全ての塗布予定位置111に塗布を行うことができる。
【0060】
また、帯状金属板Pの塗布予定位置111と第1のノズル20Bの吐出口22dとの間の距離Aは、帯状金属板Pの塗布予定位置111と第2のノズル20A、20D、20E、20Cの吐出口22dとの間の距離Bよりも小さく設定されている。このため、移動中の帯状金属板Pの塗布予定位置111に位置ずれすること無く接着剤を塗布することができる。
【0061】
(液体塗布装置10および塗布動作の他の実施形態)
図3に液体塗布装置10および塗布動作の他の例を示す。図3の実施形態では、塗布予定位置111は6つ、ノズル20の数は3つである。ノズル20は、帯状金属板Pの搬送方向への移動中または停止中に、塗布予定位置111A~111Fに接着剤を塗布する。また、ノズル20A、20Cとノズル20Bとの間の搬送方向に沿った距離L1は、塗布予定位置111B、111Dと塗布予定位置111Fとの間の搬送方向に沿った距離L4と等しく設定されている。第1のノズル20Bの吐出口22dと、第1のノズル20Bにより接着剤が塗布される帯状金属板Pの塗布予定位置111C、111Fとの間の距離をAとする。第3のノズル20A、20Cの吐出口22dと、第3のノズル20A、20Cにより接着剤が塗布される帯状金属板Pの塗布予定位置111B、111D、111A、111Eとの間の距離をBとする。このとき、A<Bと設定される。他の構成は図1に示す実施形態と同様であるため、対応する構成に同一の符号を付すことで詳細な説明は省略する。
【0062】
製造装置100による積層鉄心の製造方法について説明する。第1金型装置101による打ち抜き動作については、図1に示す実施形態と同様であるため説明を省略する。次に、液体塗布装置10の液体塗布動作について説明する。搬送装置により帯状金属板Pの打ち抜き孔110を含む領域が液体塗布装置10に向けて搬送される。まず、帯状金属板Pの下面の塗布予定位置111Cがノズル20B付近に到達し、ノズル20Bは搬送方向に移動中の帯状金属板Pの下面の塗布予定位置111Cに向けて液体を塗布する(図3(A))。次に、帯状金属板Pが搬送方向に沿って移動し、帯状金属板Pの下面の塗布予定位置111B、111D、111Fがノズル20A、20C、20Bの上方に位置した状態で搬送方向への移動を停止する。このとき、平面からみて、ノズル20A、20C、20Bの位置と塗布予定位置111B、111D、111Fの位置とが重なる。帯状金属板Pが停止した状態で、ノズル20A、20C、20Bは第3の塗布予定位置111B、111D、111Fに向けて液体を塗布する(図3(B))。
【0063】
帯状金属板Pが搬送方向への移動を停止したとき、第1金型装置101においては、次の打ち抜き孔110を形成する前半打ち抜き動作が行われ、第2金型装置102では、外形打ち抜き動作が行われるため、帯状金属板Pは下方向に、搬送時の高さ位置H1から停止時の高さ位置H2に移動する。また、前半打ち抜き動作、外形打ち抜き動作が終了すると、帯状金属板Pは上方向に停止時の高さ位置H2から搬送時の高さ位置H1に移動する。接着剤の塗布は、上下方向に沿った移動のいずれのタイミングで行われてもよいが、ノズル20Bによる塗布は帯状金属板Pの搬送方向への移動の停止から次に移動を開始するまでのできるだけ遅いタイミングで行われることが好ましく、上方向への移動中に行われることが好ましい。これは図3(A)に示す前回のノズルBによる塗布から図3(B)に示す今回の塗布までの時間をできるだけ長くするためである。また、ノズル20A、20Cによる塗布は、帯状金属板Pの搬送方向への停止後、できるだけ早いタイミングで行われることが好ましく、下方向への移動中に行われることが好ましい。これは、図3(B)に示す今回のノズル20A、20Cによる塗布から図3(C)に示す次回の塗布までの間をできるだけ長くするためである。
【0064】
次に、帯状金属板Pは再度搬送方向に沿って移動し、帯状金属板Pの下面の第3の塗布予定位置111A、111Eがノズル20A、20C付近に到達し、ノズル20A、20Cは移動中の帯状金属板Pの下面の塗布予定位置111A、111Eに向けて液体を塗布する(図3(C))。これにより、塗布予定位置111A~111F全てに接着剤が塗布される。
【0065】
第2金型装置102による外形打ち抜き動作については、図1に示す実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0066】
上記の構成によれば、ノズル20A~20Cは、帯状金属板Pの搬送方向への移動中、停止中のいずれの状態においても塗布予定位置111に接着剤を塗布する。このように、帯状金属板Pの移動中、すなわち塗布対象物が移動している間にノズル20から液体を塗布することで、塗布にかかる時間を短縮することができる。また、帯状金属板Pの複数の塗布予定位置111B、111D、111Fとすべての複数のノズル20A~20Cの位置とが平面からみて重なるようにノズル10A~20Cが配置することで、ノズル20A~20Cが占めるスペースは小さくなり、省スペースとなる。
【0067】
(液体塗布装置10および塗布動作の他の実施形態)
図1の実施形態において、ノズル20は、帯状金属板Pの搬送方向への移動中に塗布予定位置111C、111F(「第1の塗布予定位置111C、111F」ともいう。)に液体を吐出するノズル20B(「第1のノズル20B」ともいう。)と、帯状金属板Pの搬送方向への移動中および停止中に塗布予定位置111A、111B、111D、111E(「第3の塗布予定位置111A、111B、111D、111E」ともいう。)に液体を吐出するノズル20A、20C(「第3のノズル20A、20C」ともいう。)とに分けられてもよい。
【0068】
塗布動作において図1の実施形態と異なる点を説明する。ノズル20A、20Cが帯状金属板Pの下面の塗布予定位置111A、111Eに接着剤を塗布する際に(図1(D))、図1の実施形態では帯状金属板Pは移動中であったが、本実施形態では、帯状金属板Pの停止中にノズル20A、20Cにより塗布予定位置111A、111Eに接着剤が塗布される。
【0069】
上記の構成によれば、第3のノズル20A、20Cは帯状金属板Pの搬送方向への移動中および停止中に、第3の塗布予定位置111A、111B、111D、111Eに接着剤を塗布することができる。
【0070】
(液体塗布装置10の他の実施形態)
図6に液体塗布装置10の他の実施形態を示す。本実施形態においては帯状金属板Pを挟んでノズル20と反対側、すなわち、帯状金属板Pの上側であって、ノズル20と対応する位置に、カバー120が設けられている。カバー120は、平面からみて、少なくとも第1金型装置101により打ち抜き加工された打ち抜き孔110やスロット部等の加工部分を覆う大きさを有している。カバー120は、例えば、合成樹脂、不織布、金属等を素材として構成されるが、加工部分を覆うことができれば素材は限定されない。本実施形態では、不織布、樹脂メッシュ、金属メッシュなど通気性を有する素材から構成している。カバー120と帯状金属板Pとの間の距離は約2cmに設定されている。
【0071】
カバー120の上方には、負圧により液体を吸引するための吸引手段が設けられている。吸引手段は、例えば、吸引ファン121である。また、隣合うノズル20の間に隙間がある場合には、この隙間を覆うカバー122を備えてもよい。カバー122により、ノズル20が接着剤を吐出した際に生じる飛沫が床等に落ちるのを防ぐことができる。なお、吸引手段、カバー122は備えられていなくてもよい。吸引手段を備えていない場合は、カバー120は通気性を有さない素材から構成されてもよく、例えば、樹脂プレート、金属プレートから構成されてもよい。カバー120、吸引手段、カバー122の構成は、図1図3のいずれの実施形態の液体塗布装置10にも適用可能である。
【0072】
帯状金属板Pには、第1金型装置101により打ち抜き孔110等の貫通孔や切欠きが形成されており、ノズル20から吐出した接着剤が飛散して、打ち抜き孔110等を通って帯状金属板Pの上側に到達することがある。すると、帯状金属板Pの上側に配置された装置等に接着剤が付着したり、帯状金属板Pの上側に飛散した接着剤が付着する。本実施形態においては、カバー120を備えることで、帯状金属板Pの上側に接着剤の飛散を防ぐことができる。さらに、吸引ファン121により帯状金属板Pの加工部分を通過した接着剤をカバー120に向けて吸引することができるため、より接着剤の飛散を防ぐことができる。
【0073】
(ノズルプレート20および液体塗布装置10)
本実施形態のノズル20は、例えばノズルプレートである。以下、ノズルプレートおよびノズルに「20」の符号を付す。ノズルプレート20および加圧部11により、液体塗布装置10が構成されている。液体塗布装置10の一例を図7を参照して説明する。なお、図7においては、説明のためにノズルプレート20および加圧部11を1つずつ記載しているが、図1図6に示す実施形態の液体塗布装置10は複数のノズルプレート20および加圧部11を備えている。
【0074】
液体塗布装置10は、液体を加圧することにより液体を吐出するものであり、加圧部11の下端にノズルプレート20が設けられている。液体塗布装置10には、吐出する液体を供給するための液体供給部70に接続されている。以下の説明では、上下方向(鉛直方向)はノズルプレート20において吐出流路22cの軸方向、すなわち液体が吐出される方向に沿っており、液体は上方向に向けて吐出される。また、上下方向に直交する方向を左右方向としている。しかし、液体塗布装置10は必ずしも鉛直方向に沿って液体を吐出する必要はない。
【0075】
(液体供給部70)
液体供給部70は、例えば、液体を貯留するシリンジ71とシリンジ71に空圧を供給するエアコンプレッサ等の空圧供給源73とが、電磁バルブ72を介して接続されたものである。電磁バルブ72が開かれると、空圧供給源73からシリンジ71内に所定の空圧が供給されて液体が押し出され、液体供給管75を介して液体塗布装置10に供給される。
【0076】
(加圧部11)
図7に示すように、加圧部11は、加圧部本体12と、加圧部材13と、駆動部14と、回転規制機構15とを備えている。加圧部本体12は、上端が塞がれ下端が開口した円筒形状を呈しており、開口はベース部材16で閉鎖されている。加圧部本体12の底部12aの平面視における中央部には、加圧部材13が挿通される貫通孔12bが形成されている。底部12aの外面12cには、図示しないネジおよびネジ穴によりノズルプレート20が装着されている。底部12aの外面12cであって貫通孔12bの周囲にはOリング12eが収容される段部12dが形成されており、Oリング12eによりノズルプレート20内の液体が加圧部本体12に流れることを防いでいる。
【0077】
加圧部材13は、後述するノズルプレート20の液体流路23から凹部22に導入された液体を加圧して吐出流路22cおよび吐出口22dから吐出させるものである。加圧部材13は、円柱形状の小径部13aと、小径部13aの上端に取り付けられた四角形状の大径部13bとを有しており、断面T字形状を呈している。なお、大径部13bは円柱形状であってもよい。小径部13aの径は加圧部本体12の貫通孔12bに挿通可能に設定されており、本実施形態では貫通孔12bの径を約3.1mm、小径部13aの径を約3.0mmに設定しているが、これに限定されるものではない。小径部13aは、貫通孔12bに挿通されて、下端部が加圧部本体12の底部12aの外面12cより外側に突出し、ノズルプレート20の凹部22に収容される。小径部13aの上下方向の長さは、凹部22の貯留室21に収容された液体を加圧できる十分な長さに設定される。一方、小径部13aは加圧時に貯留室21の液体からの反力を受けて僅かに上下方向に収縮し、この収縮によりエネルギー損失が発生するが小径部13aが短いほど収縮が小さく損失も小さくなる。この観点からは、小径部13aはできるだけ短く設定される。
【0078】
大径部13bは加圧部本体12の内部に位置しており、平面視における大径部13bの大きさは、加圧部本体12の貫通孔12bから大径部13bが抜け出ない大きさに設定されている。大径部13bの下面と加圧部本体12の底部12aの上面との間には環状の皿バネ17が設けられており、後述するアクチュエータ18による加圧部材13への加圧が解除された状態で、皿バネ17は加圧部材13を下方向に付勢して第1の位置に位置させる。皿バネ17及び加圧部本体12の貫通孔12bにより、加圧部材13は加圧部本体12に着脱可能に上下方向に移動自由に支持されている。
【0079】
加圧部11の小径部13aの上端部には、ノズルプレート20の液体流路23から導入された液体を凹部22の底部22aに効率的に導入するための溝状の第1流路19(図8)が上下方向に沿って形成されている。
【0080】
回転規制機構15は、加圧部材13の中心軸回りの相対回転を規制するものである。回転規制機構15は、例えば、加圧部材13の小径部13aの外周面から突出した突出部であるピンと、加圧部本体12の底部12aの上面に設けられ上側が開放された溝とから構成される。ピンが溝に収容されることで、加圧部材13がノズルプレート20の凹部22に対して回転することが規制される。なお、回転規制機構15は本実施形態に限定されず、既知の構成であってよい。
【0081】
加圧部材13とベース部材16との間には圧電素子を含むアクチュエータ18が取り付けられている。アクチュエータ18は上下方向へ伸縮動作を行う。アクチュエータ18の上面は、皿バネ17の付勢力によりベース部材16に当接しており、ベース部材16によりアクチュエータ18の伸長時の下向きの反力が支持されている。
【0082】
アクチュエータ18は加圧部材13の大径部13bの下面に当接するが固定はされていない。アクチュエータ18の伸長時には、アクチュエータ18の上面が加圧部材13の大径部13bの上面に当接して、加圧部材13に上方向の圧力を加える。これにより加圧部材13は、皿バネ17により下方向に付勢された第1の位置から、皿バネ17の付勢力に反して上向きに第2の位置に移動する。第1の位置と第2の位置との間の移動距離は約20μmに設定されているが、これに限定されない。アクチュエータ18と皿バネ17により駆動部14が構成される。
【0083】
なお、加圧部11の構成は図7の構成に限定されず、ノズルプレート20の貯留室21に収容された液体に圧力を加えることができればいずれの構成であってもよい。
【0084】
(ノズルプレート20)
ノズルプレート20は、ノズルプレート本体24に、液体が収容される貯留室21を有する凹部22と、貯留室21に液体を導入するための液体流路23と、貯留室21に収容された液体を吐出するための吐出流路22cと、吐出流路22cの上端にある吐出口22dとを有するものである。本実施形態においては、ノズルプレート本体24は、第1部材31と、第1部材31と分離自由に接合される第2部材41と、緩衝部材50とを含む。図7に示すように、第1部材31と第2部材41とは、緩衝部材50を介して図示しないネジ等の接合手段により分離自由に接合される。
【0085】
(第1部材31)
図7に示すように、第1部材31は、平面視において矩形状であって、右側部分32は、左側部分33よりも厚み(上下方向の長さ)が小さく形成されている。右側部分32の上面は、加圧部11の加圧部本体12の底部12aの外面12cに取付けられる。第1部材31の右側部分32の厚みは、加圧部材13の小径部13aの上下方向の長さを短くするためにできるだけ薄く形成されており、本実施形態では1500μmに設定されているが、これに限定されない。左側部分33は本実施形態では3000μmに設定されているが、これに限定されない。
【0086】
左側部分33の上面には、液体供給部70と接続するためのジョイント部34が設けられている。ジョイント部34は内部に接続流路34aが形成されており、第1部材31内に上下方向に沿って設けられた導入流路35と連通している。第1部材31には、加圧部本体12の貫通孔12bに対応する位置に、凹部22を形成する凹部用貫通孔36が上下方向に沿って形成されている。凹部用貫通孔36は平面からみた形状が円形である。凹部用貫通孔36の径は、加圧部本体12の貫通孔12bの径より小さく、かつ、加圧部材13の小径部13aが挿入できるように小径部13aの径よりもわずかに大きく設定されている。
【0087】
第1部材31の上面31aには、凹部用貫通孔36と導入流路35とに連通する溝37が形成されている。溝37は断面形状が半円形状であり、溝37の下側は開放されている。本実施形態では、導入流路35と溝37と凹部用貫通孔36とは平面視において直線上に位置している。溝37は第1部材31と第2部材41とが接合された状態で開放部分が緩衝部材50および第2部材41により塞がれて液体流路23の一部となる。溝37、導入流路35、接続流路34aは液体流路23を構成する。本実施形態では、溝37の図7における左右方向の長さは約10000μm(10mm)、溝37の図7における上下方向の長さ(厚み)は約700μm、上面31aにおける溝37の左右方向長さおよび厚みに直交する方向の長さ(幅)は約1400μmに設定されているが、これに限定されるものではない。第1部材31の上面31aは、第2部材41と接合される面であり接合面31aともいう。
【0088】
第1部材31は、金属、セラミック等の剛性の高い素材から構成されることが好ましい。本実施形態ではステンレスから構成されているが、これに限定されず、アルミナ、ジルコニア等のセラミックから構成されていてもよい。
【0089】
(第2部材41)
第2部材41は長方形状であって、下面41aは緩衝部材50を介して第1部材31の下面と接合する接合面41aである。第2部材41の接合面41aには、第1部材31の凹部用貫通孔36に対応する位置に、凹部22を形成する凹部用穴42が形成されている。凹部用穴42は、平面からみた形状が円形であり、凹部用穴42の径は凹部用貫通孔36の径と同じに設定されている。第1部材31の凹部用貫通孔36および第2部材41の凹部用穴42から構成される凹部22には、加圧部本体12の貫通孔12bを貫通した加圧部材13の小径部13aの下端部が収容される。本実施形態では、加圧部材13の小径部13aの外周面13cと凹部22の内面22bとの間の最短の距離は約5μmに設定されているが、これに限定されない。加圧部材13の底面13dと凹部用穴42の底部22aとの間に、液体が収容される貯留室21が形成される。
【0090】
図8に示すように、凹部用穴42の底部22aには、凹部22の貯留室21に収容された液体を吐出するための吐出流路22cが形成されている。吐出流路22cは平面視において円形であり、上に向かうほど内径が小さい先細り形状を呈している。吐出流路22cは、平面視において凹部22の重心位置Pからずれた位置であって、図8において加圧部材13の第1流路19や凹部22の内面22bに形成された液体流路23の開口とは重心位置Pを中心にして反対側の位置に形成されている。本実施形態においては、平面視において凹部22は円形状であるため、円形の中心点が重心位置Pになる。これにより加圧部材13の第1流路19から供給された液体は貯留室21全体に供給され、貯留室21内にエアだまりが発生しにくく、吐出不良が防がれる。なお、吐出流路22cの位置は本実施形態に限定されず、凹部22の底部22aのいずれの位置であってもよい。
【0091】
第2部材41の厚み、すなわち、上下方向の長さは、液体吐出動作時に加圧部材13により貯留室21に収容された液体が加圧された際に、この加圧により第2部材41に撓みが生じない程度の厚みに設定される。一方、加圧部材13の小径部13aをできるだけ短くする観点から、第2部材41の厚みはできるだけ薄く設定される。
【0092】
第2部材41は、金属、セラミック等の剛性の高い素材から構成されることが好ましい。本実施形態ではステンレスから構成されているが、これに限定されず、アルミナ、ジルコニア等のセラミックから構成されていてもよい。また、第1部材31と同じ素材から構成されることが好ましい。
【0093】
(液体保持部60)
第2部材41の上面41bには、液体保持部60が形成されている。液体保持部60は、吐出流路22cの下端に位置する吐出口22dを覆うように形成される液体の膜Mを保持するものであり、液体の膜Mの広がりを制限する規制部61によって囲まれている。液体保持部60は、平面からみた形状が円形であって、液体保持部60の周囲の位置(すなわち第2部材41の上面41b)から上方向に陥入した窪み部である。液体保持部60の底面60aの平面視における中央には、平面からみた形状が円形の吐出口22dが開口している。本実施形態の場合、規制部61は窪み部の端部、すなわち、窪み部の外側の側面60b(周壁)である。平面からみて、液体保持部60の底面60aの面積をS1、吐出口の面積をS2としたときに、S1/S2は、25より大きく、2500より小さく設定され、好ましくは、100より大きく、625より小さく設定される。なお、S1/S2の算出においては、液体保持部60の底面60aの面積S1は液体保持部60の内径L1を直径とする円の面積であり、吐出口の面積S2を含んでいる。
【0094】
液体保持部60には、少なくとも帯状金属板に対して液体を吐出する工程(「液体吐出動作」ともいう。)の直前において、図8に示すように液体の膜Mが保持されている。液体の膜Mは、表面張力により液体保持部60の底面60aおよび規制部61に付着して保持される。液体の膜Mの厚みdは、吐出口22dの径bの1倍以上、5倍以下となるように設定される。液体の膜Mの厚みdとは、吐出口22dの中央を通る上下方向に沿った液体の膜Mの長さである。言い換えると、吐出口22dの中央と膜の外面との間の長さの最小値である。液体を吐出する工程とは、いわゆる捨て打ち吐出(試し打ち吐出ともいわれる)と言われる、一回当たりの吐出量C1(体積)を確認するための吐出を含まず、帯状金属板等の塗布対象物に対して予め定められた一回当たりの吐出量C1で液体を吐出する動作を行うことをいう。
【0095】
液体の膜Mが形成されたときの膜Mに含まれる液体の体積(「液体の膜Mの体積」ともいう)C2は、液体の種類、所望の液体の一回当たりの吐出量C1(体積)等に応じて定められる。本実施形態の液体塗布装置10により吐出される液体は、特に限定されないが、液体保持部60に膜Mとして保持されたときに所定の時間が経過しても粘度が変化しにくいものが好ましい。少なくとも液体吐出動作の間、粘度が0.001Pa・s以上、2Pa・s以下の範囲である液体が好ましく用いられ、液体の例として、嫌気性接着剤、熱硬化性接着剤、シリコーンオイル等が挙げられる。また、予め定められる液体の一回当たりの吐出量C1は1ナノリットル(1×10-12立方メートル)以上、200ナノリットル以下に設定される。なお、吐出する液体は、液体吐出動作時に粘度が上記の範囲内であればよい。例えば、室温では上記の範囲外の粘度を有する液体であっても、ノズルプレート20にヒーターを備えて液体を加熱し、液体吐出動作時に液体を所定の温度とすることで、粘度が上記の範囲内となる液体を用いてもよい。
【0096】
液体の一回当たりの吐出量(体積)をC1、液体の膜Mの体積をC2としたときに、C2/C1は、20以上、900以下に設定されることが好ましく、より好ましくは30以上、300以下である。
【0097】
液体保持部60の深さL2(上下方向の長さ)は所望の液体の膜Mの体積C2に応じて設定され、液体保持部60の内径L1に対する液体保持部60の深さL2、すなわちL2/L1は、0.01以上、0.1以下に設定される。
【0098】
本実施形態においては、吐出口22dの内径を200μm、液体の膜Mの厚みdを200μm、液体保持部60の内径L1を3mm、液体保持部60の深さL2を0.05mm、1回当たりの吐出量(体積)C1を30ナノリットル(30×10-12立方メートル)、液体の膜Mの体積C2を1500ナノリットルと設定している。
【0099】
液体の膜Mの作成方法は、例えば、捨て打ちによる方法、液体供給部70からの供給による方法がある。捨て打ちによる方法は、帯状金属板に対する液体吐出動作の前に、捨て打ち吐出を数回から数十回行うものである。通常の液体吐出動作においては、液体供給部70からは吐出毎に液体の一回当たりの吐出量C1の液体が貯留室21に供給されるが、液体の膜Mを作成する際には、捨て打ち吐出毎に、吐出量C1より多い量の液体を貯留室21に供給する。すると、貯留室21からあふれた液体は吐出口22dから出で吐出口22dの周囲に保持される。この状態で捨て打ち吐出を行うと、貯留室21から出た液体の一部と吐出口22dの周囲に保持された液体の一部とが合わさって液滴として吐出されるが、吐出口22dの周囲に保持された液体全てが液滴として吐出されるのではなく、吐出口22dの周囲には液体が残る。捨て打ち吐出と液体供給部70からの液体の供給を繰り返すことで、吐出口22dの周囲に保持される液体の量は徐々に多くなり、表面張力によって液体保持部60の底面60aに沿って保持されつつ広がる。液体が規制部61まで到達すると、液体は規制部61に沿って上下方向に厚くなり、液体保持部60に液体の膜Mを形成する。液体の膜Mを形成するために必要な液体供給部70からの液体の供給量、捨て打ち吐出の回数は、液体保持部60の内径L1や深さL2、所望の液体の膜Mの体積C2、液体の膜Mの厚みdによって定まり、制御部により制御される。
【0100】
液体供給部70からの供給による方法は、液体供給部70から貯留室21内に液体を供給することにより、貯留室21にすでに存在している液体や液体供給部70から供給された液体を吐出口22dから漏れ出させて、液体の膜Mを形成するものである。液体の膜Mを形成するために必要な液体供給部70による液体の供給量は、液体保持部60の内径L1や深さL2、液体の膜Mの体積C2によって定まり、制御部により制御される。
【0101】
(緩衝部材50)
図7に示すように、第1部材31および第2部材41は、その間に緩衝部材50を介して接合される。第1部材31と第2部材41とが分離自由に接合されるとは、緩衝部材50を介して接合されることを含む。緩衝部材50は、シート状であって、平面視において第1部材31および第2部材41に対応する形状および大きさであり、素材としてPET(ポリエチレンテレフタレート)が用いられ、厚み50μmに設定されており、可撓性を有する。図7に示すように、緩衝部材50には、第1部材31の凹部用貫通孔36および第2部材41の凹部用穴42に対応する位置に凹部用貫通孔51が形成されている。緩衝部材50は、少なくとも第1部材31の接合面31aに対向する上面が離型処理されている。離型処理とは、緩衝部材50が少なくとも第1部材31からはがれやすくなる処理を行うことであり、例えば、面に離型剤を塗布する処理である。
【0102】
緩衝部材50の素材として、本実施形態では、剛性のある樹脂シートとして、PET(ポリエチレンテレフタレート)を用いたが、低付着性の良好なものとしてPP(ポリプロピレン)も好ましく用いられる。また、例えばステンレス、アルミニウムなどの金属も使用でき、その場合、可撓性の観点より、厚み10μm~30μmが好ましく用いられる。第1部材31と第2部材41との間に緩衝部材50を備えることにより、第1部材31と第2部材41との間に液体が進入して固化し、第1部材31と第2部材41とが固着して分離できなくなるのを防いでいる。なお、本実施形態において、緩衝部材50を備えていない構成であってもよい。
【0103】
なお、ノズルプレート20は本実施形態には限定されず、液体供給部70と接続され、液体供給部70から供給された液体が貯留室21に導入され、吐出口22dから吐出され、液体保持部60を備えることができれば、既知のノズルであってよい。例えば、ノズルプレート20は第1部材31および第2部材41に分離されておらず、1つの部材として構成されていてもよく、緩衝部材50が設けられていなくてもよい。
【0104】
(液体塗布装置10による液体吐出方法)
本実施形態の液体塗布装置10による液体吐出方法について説明する。準備工程として、液体供給部70から貯留室21への液体供給動作が行われる。制御部により液体供給部70の電磁バルブ72が開かれ、空圧供給源73からシリンジ71内に所定の空圧が供給されてシリンジ71から液体が押し出され、液体供給管75を介して液体塗布装置10のノズルプレート20の液体流路23を通って凹部22の貯留室21に液体が流れる。所定量の液体が貯留室21へ供給されると、制御部は電磁バルブ72を閉じる。また、制御部はアクチュエータ18を動作させて加圧部材13を第1の位置に位置させる。
【0105】
次に、液体保持部60に液体の膜Mを形成して保持する工程を行う。捨て打ちによる方法の場合、後述する液体を吐出する工程、すなわち帯状金属板に対する液体吐出動作の前に、捨て打ち吐出を数回から数十回行う。これにより、表面張力により吐出口22dを覆うように液体保持部60に液体の膜Mが形成される。このとき、制御部は液体の膜Mの厚みdが吐出口22dの径bの5倍以下となるよう、捨て打ち吐出の回数および吐出量を制御することが好ましい。図10(A)は、液体保持部60に保持された液体の膜Mを示す。また、液体供給部70からの供給による方法の場合、液体供給部70から貯留室21内に液体を供給することにより、貯留室21にすでに存在している液体や液体供給部70から供給された液体を吐出口22dから漏れ出させて液体の膜Mを形成する。液体の膜Mは表面張力により制御部は液体の膜Mの厚みdが吐出口22dの径bの5倍以下となるよう、液体供給部70が供給する液体の量を調整することが好ましい。液体供給部70からの供給による方法の場合は、上述の準備工程と同時に液体の膜Mを形成して保持する工程が行われてもよい。液体保持部60の面積をS1、吐出口22dの面積をS2としたときに、S1/S2は、25より大きく、2500より小さく設定されており、液体の膜Mは液体保持部60の底面60aに広がり、吐出口22dを覆うように形成される。
【0106】
そして、液体を吐出する工程を行う。アクチュエータ18により加圧部材13を第1の位置から上方向に第2の位置まで移動させる。これにより、加圧部材13により貯留室21に収容された液体が押圧され、吐出流路22cを通って吐出口22dからアクチュエータ18の移動量に応じた量の液体が出る。このときに吐出口22dから出る液体の量は、予め定められた液体の吐出量C1よりも少ない。液体の膜Mに吐出口22dから出た液体が加わると、液体の膜Mを液体保持部60に保持できなくなり、図10(B)に示すように上向きに液塊B1が形成される。液塊B1は、液体が吐出口22dから出る前に予め液体保持部60に保持されていた液体の膜Mの一部と吐出口22dから出た液体の一部とが合わさったものである。そして、図10(C)に示すように、液塊B1は液滴B2として液体の膜Mから離れて吐出される。本実施形態においては、液体保持部60の面積をS1、吐出口22dの面積をS2としたときに、S1/S2は、25より大きく、2500より小さく、液体保持部60に保持される液体の膜Mの厚みdは、吐出口の径の5倍以下となるように、液体保持部60に保持される液体の膜Mの体積C2が設定される。出願人は、このように設定することにより、吐出される液滴B2の体積は、予め定められた液体の一回当たりの吐出量(体積)C1と等しくなることを見出した。なお、吐出される液滴B2の体積が予め定められた液体の一回当たりの吐出量C1と等しくなるとは、液滴B2の体積(実際に吐出される一回当たりの液体の体積)が体積C1の90%以上、110%以下である場合を含む。
【0107】
液体の膜Mの体積C2は液体の一回当たりの吐出量(体積)C1よりも十分に大きく設定されており、液滴B2が吐出されたときに、液体保持部60に保持された液体の膜Mは全て液滴B2として吐出されるのではなく、その一部のみが液滴B2として吐出される。このため、液体の膜Mから液塊B1が離れて液滴B2が吐出されたときに、液体保持部60には液体の膜Mが保持された状態を保っており、吐出口22dは液体の膜Mで覆われている。
【0108】
アクチュエータ18は、貯留室21に収容された液体が押圧されて吐出口22dから液体が出始めた直後に収縮し始め、加圧部材13は皿バネ17の付勢力により押し下げられて第1の位置に戻る。吐出口22dは液体の膜Mで覆われているため、加圧部材13が押し上げられても、吐出口22dから吐出流路22cに空気が混入しない。
【0109】
上記の液体を吐出する工程後、次に吐出する量C1と同量の液体を、液体供給部70から貯留室21へ供給する液体供給工程が行われる。液体供給工程は、準備工程における液体供給動作と同じ動作である。液体供給動作により供給された液体の一部は貯留室21に貯留される。残りの液体は吐出口22dから漏れ出して液体の膜Mの一部となり、液体の膜Mの厚みdは前記の液体を吐出する工程の直前の液体の膜Mの厚みdとほぼ同じとなる。すなわち、液体の膜Mは図10(A)に示す状態に戻る。液体を吐出する工程と液体供給工程とは交互に繰り返される。
【0110】
本実施形態において、液体を吐出する工程において、例えば、アクチュエータ18により加圧部材13を第1の位置から下方向に第2の位置まで移動させることで、吐出口22dから予め定められた液体の吐出量の半分の量(C1/2)の液体が出るとする。すると、吐出口22dから出たC1/2の量の液体と、液体が吐出口22dから出る前に予め液体保持部60に保持されていた液体の膜Mの一部であってC1/2の量の液体とが合わさってC1の量の液滴B2となって吐出される。次に、液体供給工程において、液体供給部70から貯留室21へC1の量の液体が供給されると、C1/2の量の液体は貯留室21に貯留され、残りのC1/2の量の液体は吐出口22dから漏れ出て液体の膜Mの一部となる。このように、液体を吐出する工程と液体供給工程と繰り返すことで、C1の量の液体が液滴B2として吐出される。
【0111】
本実施形態においては、吐出口22dを覆うように液体保持部60に液体の膜Mを形成している。そして、液体保持部60の面積をS1、吐出口22dの面積をS2としたときに、S1/S2は、25より大きく、2500より小さく設定している。また、液体吐出動作の直前の液体の膜Mの厚みdは吐出口22dの径bの5倍以下となるように設定されている。出願人は、この構成により、液滴B2が吐出されたときに、液体保持部60に保持された液体の膜Mは全て液滴B2として吐出されるのではなく、液体の膜Mの一部が吐出口22dから出た液体の一部と合わさって液滴B2として吐出されることを見出した。このため、液滴B2が吐出されたときに、液体保持部60には残った液体により液体の膜Mが保持された状態を保ち、吐出口22dは液体の膜Mで覆われたままである。したがって、液滴B2が吐出された直後に、吐出口22dの周囲には空気が存在せず、加圧部材13が上方向の第1の位置に移動する際に加圧部材13が空気を吸い込むことが防がれ、安定した液体の吐出が可能となる。
【0112】
また、従来技術においては、通常、吐出口22dの周囲は液体が残らないことが望ましい。一般的に、液体吐出装置において液体吐出動作を行う場合、液切れ不良により吐出口22dの周りに液体が付着する。液切れ不良とは吐出口22dから吐出された液体が吐出口22dから飛び出すものの、その一部が吐出口22dから完全に離れて落ちずに吐出口22dの周囲に残ることをいう。液体吐出動作を繰り返すことで吐出口22dの周囲に付着した液体の量は徐々に多くなる。吐出口22dの周囲に液体が付着していると、吐出口22dから飛び出た液体はこの付着した液体に当たって、下方向に飛ばすに斜め方向に飛んだり、液体が割れて飛び散るなどの吐出不良が生じることがある。このため、通常は、所定の回数の吐出毎に液体吐出動作を停止して吐出口22dの周囲の清掃を行い、付着した液体を汚れとして除去している。
【0113】
一方、本実施形態においては、液体を吐出する工程において吐出口22dが液体の膜Mで覆われているため、従来技術のように、吐出口22dの周囲に液体が汚れとして付着するということがない。このため、液滴は上下方向に沿って吐出され、液体が飛び散ることが防止され、安定した液体の吐出が可能となる。
【0114】
また、貯留室21と液体供給部70との水頭圧の差により、貯留室21にある液体が吐出口22dから自然と漏れ出てくる場合がある。従来技術においては、液体吐出動作後、次の液体吐出動作までの間が例えば5秒程度と長い場合には、吐出口22dから漏れ出る液体の量が多くなり、吐出口22dの周囲に付着する液体の量が多くなる。多くの液体が付着した後に液体吐出動作を行うと、吐出口22dから出た液体が吐出口22dの周囲に付着している液体と合わさって液滴B2となって吐出するため、予め定められた一回当たりの吐出量C1よりも液滴B2の体積が多くなることがある。しかし、本実施形態によれば、液体保持部60は常に液体の膜Mが保持された状態を保っており、液体吐出動作後、次の液体吐出動作までの間に漏れ出た液体は液体の膜Mの一部となる。漏れ出た液体が加わることで液体の膜Mの体積C2は大きくなるものの、既にある液体の膜Mにさらに漏れ出た液体が加わるために液体の膜Mの体積C2が増える割合は小さい。このため、従来技術に比べて、吐出される液滴B2の体積は吐出口22dから漏れ出た液体の影響を受けにくく、液滴B2の体積が大きく増えることがない。
【0115】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0116】
10 液体塗布装置
20(20A~20E) ノズル(ノズルプレート)
22d 吐出口
100 製造装置
101 第1金型装置
102 第2金型装置
101a、102a 下金型
101b、102b 上金型
110 打ち抜き孔
111(111A~111F) 塗布予定位置
112(112A~112C) 移動経路
120 カバー
121 吸引ファン
122 カバー
P 帯状金属板
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