(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165482
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 11/01 20160101AFI20241121BHJP
H02K 5/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H02K11/01
H02K5/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081723
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 孝明
(72)【発明者】
【氏名】藤田 真史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 則雄
【テーマコード(参考)】
5H605
5H611
【Fターム(参考)】
5H605AA11
5H605BB05
5H605BB17
5H605CC01
5H605DD01
5H605DD36
5H611BB01
5H611BB06
5H611UA04
5H611UA07
(57)【要約】
【課題】 フレームへの漏洩磁界を低減し、フレームを小型化できるようにする。
【解決手段】 実施形態の回転電機は、磁界を発生する界磁部を有する回転子と、前記回転子の外径側に設けられ、前記界磁部で発生する磁界と相互作用する磁界を発生する固定子コイルを有する固定子とを具備し、前記回転子は、前記界磁部の回転子軸方向両側に配置される2つの磁性シールドを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界を発生する界磁部を有する回転子と、
前記回転子の外径側に設けられ、前記界磁部で発生する磁界と相互作用する磁界を発生する固定子コイルを有する固定子と、
を具備する回転電機において、
前記回転子は、
前記界磁部の回転子軸方向両側に配置される2つの磁性シールドを備えている、
回転電機。
【請求項2】
前記2つの磁性シールドは、前記回転子の回転軸に取り付けられている、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記固定子は、金属製のフレームを備え、
前記フレームは、少なくとも前記2つの磁性シールド、前記界磁部、および前記固定子コイルを取り囲むように配置されている、
請求項1に記載の回転電機。
【請求項4】
前記フレームは、当該回転電機の軸方向両側に位置する2つのフレーム部を含み、
前記2つの磁性シールドは、前記2つのフレーム部と前記界磁部との間の空間にそれぞれ配置されている、
請求項3に記載の回転電機。
【請求項5】
前記2つの磁性シールドの各々は、回転子軸方向から見たときの形が円環形状を成す1枚のプレートで形成されている、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項6】
前記2つの磁性シールドの各々は、回転子軸方向から見たときの形が複数の扇形状もしくは四角形状を成す複数枚のプレートで形成されている、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項7】
前記2つの磁性シールドの各々は、回転子軸方向に配列された複数枚のプレートで形成されている、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回転電機。
【請求項8】
前記2つの磁性シールドの各々は、回転子軸方向に配列された複数枚のプレートで形成されている、
請求項6に記載の回転電機。
【請求項9】
前記2つの磁性シールドの各々は、中心位置から外径側端部までの径方向長さが、前記回転子の回転軸中心から外周側端部までの径方向長さの1/3倍以上で且つ1倍以下である、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機は、種々の産業分野において、小型化・軽量化が求められている。回転電機は、騒音防止や回転電機内への異物混入阻止の観点から、金属製のフレームで本体が覆われていることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ある特定の分野では、回転電機の小型化・軽量化のために、強磁界化による出力密度の増加が求められている。回転電機の強磁界化に際しては、フレームが界磁部に近いと、フレーム側へ漏洩する磁界により損失が発生しやすくなる。フレームが導電体で構成される場合は、漏洩する磁界によってフレームに渦電流が流れ、過熱が生ずることがある。
このようなことから、界磁部とフレームとの間に一定以上の距離を確保せざるをえず、このことがフレームの小型化を困難にしている。
【0005】
発明が解決しようとする課題は、フレームへの漏洩磁界を低減し、フレームを小型化することを可能にする回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の回転電機は、磁界を発生する界磁部を有する回転子と、前記回転子の外径側に設けられ、前記界磁部で発生する磁界と相互作用する磁界を発生する固定子コイルを有する固定子とを具備し、前記回転子は、前記界磁部の回転子軸方向両側に配置される2つの磁性シールドを備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フレームへの漏洩磁界を低減し、フレームを小型化することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る回転電機の一部の断面形状(回転軸に垂直な断面の形状)の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、同回転電機の一部の断面形状(回転軸に平行な断面の形状)の一例を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、同回転電機の回転子コイル3から発生する磁界を模式的に示す図(
図1の中に磁界を描いた図)である。
【
図3B】
図3Bは、同回転電機の回転子コイル3から発生する磁界を模式的に示す図(
図2の中に磁界を描いた図)である。
【
図4】
図4は、磁性シールド5が設けられていない回転電機の回転子コイル3から発生する磁界を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る回転電機における各部の寸法情報を示す図である。
【
図6】
図6は、磁性シールド5の回転子軸方向の設置位置によって変化する、フレーム部9c上の観測箇所での磁束密度分布を示すグラフである。
【
図7】
図7は、磁性シールド5の回転子軸方向の設置位置によって変化する、固定子コイル7上の観測箇所での磁束密度分布を示すグラフである。
【
図8】
図8は、磁性シールド5の中心から外径側端部までの径方向長さ(磁性シールド半径)R1によって変化する、フレーム部9c上の観測箇所での磁束密度分布を示すグラフである。
【
図9】
図9は、磁性シールド5の変形例1を示す回転電機の一部の断面形状(回転軸に垂直な断面の形状)の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、磁性シールド5の変形例2を示す回転電機の一部の断面形状(回転軸に平行な断面の形状)の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、2つの磁性シールド5の各々を構成するプレートの枚数によって変化する、フレーム部9c上の観測箇所での磁束密度分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0010】
(全体の構成)
図1は、実施形態に係る回転電機の一部の断面形状(回転軸に垂直な断面の形状)の一例を示す図である。また、
図2は、同回転電機の一部の断面形状(回転軸に平行な断面の形状)の一例を示す図である。なお、
図2では、図示の複雑化を避けるため、回転電機の下半分の図示を省略し、上半分のみを図示している。
図1中、一点鎖線で示すCL1は、回転電機の回転軸中心(線)を表している。また、一点鎖線で示すCL2は、回転電機の軸方向中央(面)を表している。
【0011】
図1及び
図2に示されるように、回転電機は、回転子1と、回転子1の外径側に離間して設けられる固定子6とを備える。
【0012】
(回転子1の構成)
回転子1は、回転軸2、回転子コイル(界磁部)3、回転子コイル支持部材4、および2つの磁性シールド(磁気シールド)5を含む。
【0013】
なお、本実施形態では、回転子側の界磁手段(界磁部)として、回転子コイルを採用する場合を例示するが、回転子コイルの代わりに永久磁石を採用してもよい。
【0014】
回転軸2は、回転子1の中心軸として回転する軸である。
【0015】
回転子コイル3は、回転軸2と一緒に回転できるよう回転子コイル支持部材4によって支持される。回転子コイル3は、回転子コイル支持部材4の周りに矩形状に近い形に巻かれており、磁界を発生する界磁部として機能する。
【0016】
回転子コイル支持部材4は、回転軸2に固定されており、回転子コイル3を回転子1の回転による遠心力に対抗できるように安定的に支持する。回転子コイル支持部材4は、例えば磁性体で構成される。この場合、回転子コイル支持部材4は、回転子磁極として機能する。また、回転子コイル支持部材4は、非磁性の材料(非磁性体)で構成される場合もあり得る。この場合、回転子コイル3が空芯コイルとして機能する。
【0017】
図1の例では、回転子コイル支持部材4が4個で構成され、4つの磁極(2つのN極および2つのS極)を形成する場合が例示されている。但し、この例に限らず、回転子コイル支持部材4の数が4個以外の数(磁極の数が4個以外の数)となるように構成してもよい。
【0018】
(磁性シールド5)
2つの磁性シールド5は、それぞれ磁性体からなり、回転子コイル3の回転子軸方向両側に配置され、回転軸2に取り付けられる。2つの磁性シールド5の形状や寸法は同一である。本実施形態では、2つの磁性シールド5の各々は、
図1に示されるように回転子軸方向から見たときの形が円環形状を成す1枚のプレートで形成されている。円環状フレーム部は、その両面が回転軸2に対して垂直となるように配置されている。
【0019】
一般に、磁性シールドは、回転電機の外周側に漏洩する磁界を低減させるため、後述する磁性シールド8のように固定子コイル7の外径側に設けるものであるが、本実施形態ではさらに、回転電機の軸方向両側に漏洩する漏洩磁界にも着目し、そのような漏洩磁界を低減させるべく磁性シールド5を設ける。なお、磁性シールド5の設置位置や寸法の詳細については、後で述べる。
【0020】
(固定子6の構成)
固定子6は、固定子コイル7、磁性シールド8、およびフレーム9を含む。
【0021】
固定子コイル7は、回転子コイル(界磁部)3で発生する磁界と相互作用する磁界を発生する。
【0022】
磁性シールド8は、磁性体であり、固定子コイル7の外径側に離間して設けられる。この磁性シールド8は、複数枚の円環形状の電磁鋼板を回転電機の軸方向に積層して構成される。
【0023】
フレーム9は、比較的軽量な金属材料(アルミニウムなど)を用いて形成された金属製のフレームであり、2つの磁性シールド5、回転子コイル3、回転子コイル支持部材4、固定子コイル7、および磁性シールド8を取り囲むように配置される。フレーム9は、1つの円筒状のフレーム部9aと、2つの円筒状のフレーム部9bと、2つの円環状のフレーム部9cとを含む。
【0024】
円筒状のフレーム部9aは、回転電機の外径側に位置し、円筒形状を成すものである。円筒状のフレーム部9aは、その内面および外面が回転軸2に対して平行となるように配置されている。円筒状のフレーム部9aの内径は、磁性シールド8の外径よりも大きい。
【0025】
各円筒状のフレーム部9bは、回転電機の軸方向両側に位置し、円筒形状を成すものである。各円筒状のフレーム部9bの内径は、回転子1の外径よりも小さい。
【0026】
各円環状のフレーム部9cは、回転電機の軸方向両側に位置し、回転子軸方向から見たときの形が円環形状を成すものである。各円環状のフレーム部9cは、それぞれの両面が回転軸2に対して垂直となるように配置される。各円環状のフレーム部9cは、外周側が円筒状のフレーム部9aに接合されるとともに、内周側が円筒状のフレーム部9bに接合される。
【0027】
前述した2つの磁性シールド5は、2つの円環状のフレーム部9cと回転子コイル3との間の空間にそれぞれ配置される。
【0028】
(回転子コイル3および固定子コイル7の構成)
回転子コイル3および固定子コイル7は、それぞれ、回転軸2の軸方向に直線状に延びる直線部を有する。
図2の例では、回転子コイル3の直線部の長さと固定子コイル7の直線部の長さとが同等である場合が例示されているが、この例に限らず、双方の長さが異なるように構成されてもよい。
【0029】
また、回転子コイル3および固定子コイル7は、それぞれ、上記直線部を有するほか、その軸方向の両外側にそれぞれ存在し別の直線部と接続する端部を有する。当該端部は、固定子コイル7においては、コイルエンド部と呼ばれる部分に相当し、軸方向に延びる直線部のコイル部分から軸方向両側に延出している。また、当該端部は、回転子コイル3においては、軸方向に延びる直線部のコイル部分と回転方向に延びるコイル部分とを連続的に繋ぐコイル部分に相当し、回転子コイル支持部材4から軸方向両側にはみ出した位置にある。
【0030】
(回転子コイル3および固定子コイル7の作用)
図3Aおよび
図3Bに、実施形態に係る回転電機の回転子コイル3から発生する磁界を模式的に示す。
図3Aは、
図1の中に磁界を描いた図であり、
図3Bは、
図2の中に磁界を描いた図である。ここでは、図示の複雑化を避けるため、
図3Aにおいては、
図3A中の磁極1極分が発生する磁界のみを図示しており、
図3Bにおいては、回転子コイル3全体のうち
図3B中の左側の一部から発生する磁界のみを図示している。
図3A中のHは、電力やトルクに起因する磁界を表しており、
図3B中のH’は、電力やトルクに起因しない磁界を表している。
【0031】
回転する回転子コイル3によって発生する磁界Hは、回転電機が発電機として動作する場合には、固定子6側の固定子コイル7に電磁誘導によって電力を発生させ、回転電機がモータとして動作する場合には、固定子6側の固定子コイル7に流れる電流の作る磁界との間の相互作用によってトルクを生じさせ、回転子1を回転させる。
【0032】
(磁性シールド5の作用)
一般的な回転電機では、漏洩磁界を低減させるため、回転電機の周方向を覆うように磁性シールド8を設ける。しかしながら、回転子コイル3のコイルエンド部では磁界H’が発生し、フレーム部9c側へ漏洩してしまう。本実施形態では、この点に着目し、磁性シールド8を設けるだけでなく、磁性シールド5も設けている。
【0033】
本実施形態では、
図3Bに示されるように、磁性シールド5が磁界H’の一部を吸引する。磁性シールド5及びその近傍では、磁性シールド5が吸引する磁界が集中する。その結果、フレーム部9c側に漏洩する磁界H’が低減され、漏洩磁界のフレーム部9cへの影響が小さくなる。したがって、フレーム部9cを回転子コイル3に近づけやすくなることから、フレーム9の回転子軸方向のサイズを小さくすることができ、フレーム9を小型化することが可能になる。
【0034】
図4に、磁性シールド5が設けられていない回転電機の回転子コイル3から発生する磁界を模式的に示す。
【0035】
磁性シールド5が設けられていない回転電機では、フレーム部9c側に漏洩する磁界は殆ど低減されない。
図4のようにフレーム部9cから回転子コイル3までの距離を
図3Bと同じにすると、漏洩磁界のフレーム部9cへの影響は
図3Bよりも大きくなる。従って、この場合はフレーム部9cと回転子コイル3との間に一定以上の距離を確保しなければならず、フレーム9の回転子軸方向のサイズを大きくせざるをえない。
【0036】
(各部の寸法情報)
図5に、実施形態に係る回転電機における各部の寸法情報を示す。寸法情報には、R、L1、D1、D2、D3、X、L2がある。ただし、
図5では、構成を理解しやすいものとするため、図示される各部の寸法の一部を実際のものよりも大きくしたり小さくしたりしている。そのため、図示される各部の寸法の大小関係は、実際のものとは異なる。
【0037】
Rは、回転子1の半径を表し、具体的には、回転子1の回転軸中心CL1から回転子1の外周側端部までの径方向距離(ロータ半径)を表す。
【0038】
R1は、磁性シールド5の中心から外径側端部までの径方向長さ(磁性シールド半径)を表す。R1の値は、ロータ半径Rを1とした場合のp.u.値で表現されるものとする。
【0039】
L1は、漏洩磁界を観測するための第1の観測箇所(フレーム部9c上の観測箇所)を表し、具体的には、回転軸中心CL1上の0点からのフレーム部9cの内面に沿った径方向距離を表す。L1の値は、ロータ半径Rを1とした場合のp.u.値で表現されるものとする。
【0040】
D1は、回転電機の軸方向中央CL2から回転子コイル3端部までの軸方向距離を表す。
【0041】
D2は、回転電機の軸方向中央CL2からフレーム部9cまでの軸方向距離を表す。ここでは、D2は、D1を1とした場合のp.u.値が、2(p.u.)であるものとする。
【0042】
D3は、回転電機の軸方向中央CL2から固定子コイル7の軸方向端部までの軸方向距離を表す。ここでは、D3は、D1を1とした場合のp.u.値が、1.495(p.u.)であるものとする。
【0043】
Xは、磁性シールド5の回転子軸方向の設置位置を表し、具体的には、磁性シールド5の回転電機の軸方向中央CL2からの軸方向距離を表す。Xの値は、D1を1とした場合のp.u.値で表現されるものとする。
【0044】
L2は、漏洩磁界を観測するための第2の観測箇所(固定子コイル7上の観測箇所)を表し、具体的には、回転電機の軸方向中央CL2上の0点(固定子コイル7の内径側の軸方向中央)からの軸方向距離を表す。L2の値は、D1を1とした場合のp.u.値で表現されるものとする。
【0045】
(磁性シールド5の設置位置と寸法)
磁性シールド5による漏洩磁界の低減効果は、回転子軸方向の設置位置や、当該磁性シールド5自体の寸法(軸方向の厚さ・磁性シールド半径R1)等の各種条件によって変わる。そこで、磁性シールド5の各種条件に応じた、漏洩磁界の低減効果の変化を調べるため、
図5中のフレーム部9c上の観測箇所および固定子コイル7上の観測箇所でそれぞれ観測される磁束密度の分布を検証した。観測箇所の空間は、非磁性空間である。検証した結果を以下に示す。
【0046】
(磁性シールド5の設置位置と、フレーム部9cにおける磁束密度Bとの関係)
図6は、磁性シールド5の回転子軸方向の設置位置によって変化する、フレーム部9c上の観測箇所での磁束密度分布を示すグラフである。
図6のグラフにおいて、横軸は、フレーム部9c上の観測箇所、すなわち、回転軸中心CL1上の0点からのフレーム部9cの内面に沿った径方向距離L1(ロータ半径Rを1とした場合のp.u.値)を表す。縦軸は、磁束密度B(T)を表す。
【0047】
磁性シールド5自体の寸法としては、磁性シールド5の軸方向の厚さ(D1を1とした場合のp.u.値)が0.0667(p.u.)、磁性シールド半径R1(ロータ半径Rを1とした場合のp.u.値)が0.933(p.u.)のものを使用した。ただし、ここで示した磁性シールド5自体の寸法は一例であって、この例に限定されるものではない。
【0048】
図6のグラフでは、磁性シールド5の回転子軸方向の設置位置、すなわち、磁性シールド5の回転電機の軸方向中央CL2からの軸方向距離X(D1を1とした場合のp.u.値)の値の例として、「X=1.20、1.40、1.60、1.80、1.867、1.933」の6種類を採用し、磁性シールド5を設けない「シールドなし」の場合も示した。
【0049】
図6のグラフに示されるように、L1が、ある値よりも小さい範囲(本例においては、磁性シールド半径R1(=0.933(p.u.))近傍よりも小さい範囲)では、「X=1.20、1.40、1.60、1.80、1.867、1.933」のいずれの場合も、「シールドなし」の場合よりも、磁束密度Bの値が小さく、漏洩磁界の低減効果が得られることがわかる。
【0050】
また、L1が、ある値よりも大きい範囲(本例においては、磁性シールド半径R1(=0.933(p.u.))近傍よりも大きい範囲)では、Xの値が小さいほど磁束密度Bの値が小さく、Xの値が大きいほど磁束密度Bの値が大きいことがわかる。これは、磁性シールド5がフレーム部9cに近いほど、磁性シールド5に集中する磁界がフレーム部9cまで影響するからである。
【0051】
本例においては、「X=1.80、1.867、1.933」の場合は、「シールドなし」の場合よりも、磁束密度Bの値が大きく、「X=1.20、1.40、1.60」の場合は、「シールドなし」の場合よりも、磁束密度Bの値が小さい。よって、本例においては、Xの値を1.60以下に設定すると、磁束密度Bの値がフレーム部9c全体にわたって小さくなり、漏洩磁界の低減効果が大きくなるといえる。
【0052】
(磁性シールド5の設置位置と、固定子コイル7における磁束密度Bとの関係)
図7は、磁性シールド5の回転子軸方向の設置位置によって変化する、固定子コイル7上の観測箇所での磁束密度分布を示すグラフである。
図7のグラフにおいて、横軸は、固定子コイル7上の観測箇所、すなわち、回転電機の軸方向中央CL2上の0点からの軸方向距離L2(D1を1とした場合のp.u.値)を表す。縦軸は、磁束密度B(T)を表す。
【0053】
磁束密度Bの値は、縦軸上の0点から上側が正の値を示し、0点から下側が負の値を示す。正の値を示す磁束密度は、固定子コイル7に有効な磁束密度である。一方、負の値を示す磁束密度は、固定子コイル7に有効ではない磁束密度である。
【0054】
磁性シールド5自体の寸法は、
図6のグラフで説明したものと同じである。
【0055】
図7のグラフでは、
図6のグラフと同様に、Xの値の例として「X=1.20、1.40、1.60、1.80、1.867、1.933」の6種類を採用し、磁性シールド5を設けない「シールドなし」の場合も示した。
【0056】
図7のグラフに示されるように、L2が、ある値よりも小さい範囲(本例においては、0.9(p.u.)近傍よりも小さい範囲)では、「X=1.20、1.40、1.60、1.80、1.867、1.933」のいずれの場合も、「シールドなし」と比べると、磁束密度Bの値(正の値)はあまり変わらない。
【0057】
また、L2が、ある値よりも大きい範囲(本例においては、0.9(p.u.)近傍よりも大きい範囲)では、磁束密度Bは負の値を示す。この場合、Xの値が大きいほど、「シールドなし」の場合の値に近づき、固定子コイル7に有効ではない磁束密度Bの値(負の値)が小さく抑えられる。しかし、Xの値が小さいほど、固定子コイル7に有効ではない磁束密度Bの値(負の値)は大きくなる。これは、磁性シールド5が固定子コイル7に近いほど、負の値の磁束密度に対応する磁界を磁性シールド5が吸引する影響が大きくなるためである。よって、固定子コイル7に有効な磁束密度を維持しつつ、固定子コイル7に有効ではない磁束密度Bを小さくするためには、磁性シールド5が固定子コイル7に近づきすぎないように設置されることが望ましい。
【0058】
(磁性シールド5の軸方向の厚さ)
各磁性シールド5の軸方向の厚さは、大きければ大きいほど、磁気を吸引しやすくなり、漏洩磁界を低減する効果が大きくなるが、その一方で重さが増加する。そのため、各磁性シールド5の軸方向の厚さは、軽量化の観点から予め定めた重さの上限を満たし、かつ、一定以上の漏洩磁界低減効果が得られる値とすることが望ましい。
【0059】
(磁性シールド5の磁性シールド半径R1)
図8は、磁性シールド5の中心から外径側端部までの径方向長さ(磁性シールド半径)R1によって変化する、フレーム部9c上の観測箇所での磁束密度分布を示すグラフである。
図8のグラフにおいて、横軸は、フレーム部9c上の観測箇所、すなわち、回転軸中心CL1上の0点からのフレーム部9cの内面に沿った径方向距離L1(ロータ半径Rを1とした場合のp.u.値)を表す。縦軸は、磁束密度B(T)を表す。なお、磁性シールド5の軸方向の厚さは、
図6のグラフで説明したものと同じであるものとする。
【0060】
図8のグラフでは、磁性シールド5の磁性シールド半径R1の値(D1を1とした場合のp.u.値)の例として「0.933、0.800、0.600、0.400、0.333、0.267」の6種類を採用し、磁性シールド5を設けない「シールドなし」の場合も示した。
【0061】
図8のグラフに示されるように、L1が、ある値以下の範囲(本例においては、ロータ半径R(=1.0(p.u.))以下の範囲)では、磁性シールド半径R1の値が1.0(p.u.)に近いものほど、「シールドなし」の場合よりも磁束密度Bの値が小さくなる部分が大きく、漏洩磁界の低減効果が大きいことがわかる。
【0062】
また、磁性シールド半径R1の値が「0.333(p.u.)」以上(すなわち、ロータ半径Rの1/3倍以上)であれば、「シールドなし」の場合に比べ、磁束密度Bが一定以上低下する部分が存在し、漏洩磁界の低減効果が得られることがわかる。
【0063】
このことから、磁性シールド半径R1を、少なくともロータ半径Rの1/3倍以上で且つ1倍以下の範囲内に設定することにより、漏洩磁界を効果的に低減させることができると言える。
【0064】
このような実施形態によれば、少なくとも以下の効果が得られる。
【0065】
・磁性シールド5を設置することにより、回転電機の軸方向両側にあるフレーム部9c側へ漏洩する磁界が吸収されるため、フレーム部9cにおける損失を抑えることができる。
【0066】
・磁性シールド5の設置位置や寸法を適宜調整することにより、フレーム部9c側に漏洩する磁界の低減効果を高めることができ、また、固定子コイル7に有効な磁束密度を維持できる。
【0067】
・磁性シールド5を設置することにより、フレーム部9c側に漏洩する磁界が低減され、漏洩磁界のフレーム部9cへの影響が小さくなるため、フレーム部9cを回転子コイル3に近づけやすくなり、フレーム9の回転子軸方向のサイズを小さくすることができ、フレーム9を小型化することが可能になる。
【0068】
(磁性シールド5の変形例1)
次に、磁性シールド5の変形例1について説明する。
【0069】
図9は、磁性シールド5の変形例1を示す回転電機の一部の断面形状(回転軸に垂直な断面の形状)の一例を示す図である。
【0070】
前述の
図1及び
図2では、磁性シールド5が、回転子軸方向から見たときの形が円環形状を成す1枚のプレートで形成されている場合の例を示した。これに対し、この変形例1では、
図9に示されるように、磁性シールド5が、回転子軸方向から見たときの形が複数の扇形状を成す複数枚のプレートで形成されている。磁性シールド5を構成する各プレートは、回転子軸方向から見たときに、各磁極の回転子コイル3の領域が各プレートの領域に収まるように構成される。
【0071】
なお、ここでは、磁性シールド5を構成する各プレートが扇形状を成す場合の例を示しているが、扇形状に限らず、代わりに四角形状を成すものとしてもよい。
【0072】
このように構成することにより、磁性シールド5が円環形状を成す1枚のプレートである場合に比べ、磁性シールド5に使用する材料の量が減るため、回転電機をより軽量化することができる。また、大型で円環形状での製造や設置が困難な回転電機の場合に有効となる。
【0073】
(磁性シールド5の変形例2)
次に、磁性シールド5の変形例2について説明する。
【0074】
図10は、磁性シールド5の変形例2を示す回転電機の一部の断面形状(回転軸に平行な断面の形状)の一例を示す図である。
【0075】
前述の
図1及び
図2では、2つの磁性シールド5の各々が、回転子軸方向から見たときの形が円環形状を成す1枚のプレートで形成されている場合の例を示した。これに対し、この変形例2では、
図10に示されるように、2つの磁性シールド5の各々が、回転子軸方向に配列された複数枚のプレートで形成されている。この場合、変形例2の磁性シールド5は、
図1及び
図2で説明した磁性シールド5と同じ重量を有するものとする。磁性シールド5は、
図1及び
図2で示したものと同じ重量になるように各プレートの厚さが調整されている。なお、
図10の例では、各磁性シールド5につき、プレートを2枚とした場合が例示されているが、この例に限らず、3枚以上としてもよい。このように回転子軸方向に複数枚のプレートを配列させる構成は、
図1で示した円環形状のプレートに限らず、
図9で示した扇形状のプレートにも適用することができる。
【0076】
図11は、2つの磁性シールド5の各々を構成するプレートの枚数によって変化する、フレーム部9c上の観測箇所での磁束密度分布を示すグラフである。
図11のグラフにおいて、横軸は、フレーム部9c上の観測箇所、すなわち、回転軸中心CL1上の0点からのフレーム部9cの内面に沿った径方向距離L1(ロータ半径Rを1とした場合のp.u.値)を表す。縦軸は、磁束密度B(T)を表す。
【0077】
図11のグラフでは、各磁性シールド5を構成するプレートが
図1及び
図2で説明したように1枚である場合(「磁性シールド1枚」の場合)と、
図10の変形例2で説明したように2枚である場合(「磁性シールド2枚」の場合)のそれぞれの磁束密度分布を示し、磁性シールド5を設けない「シールドなし」の場合の磁束密度分布も示した。
【0078】
図11のグラフに示されるように、L1が、ある値以下の範囲(本例においては、0.9(p.u.)近傍以下の範囲)では、「磁性シールド1枚」の場合に比べ、「磁性シールド2枚」の場合の方が、小さくなっている。これは、磁性シールド5を複数に分けることで、磁性シールド5の磁界を吸引する箇所が増え、磁界が複数に分散されて吸引されるためである。
【0079】
このように構成することにより、各磁性シールド5が1枚のプレートである場合に比べ、フレーム部9c側の所定の領域における磁束密度を小さくし、漏洩磁界を低減させることが可能になる。
【0080】
以上詳述したように、実施形態によれば、フレームへの漏洩磁界を低減し、フレームを小型化することができる。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
1…回転子、2…回転軸、3…回転子コイル(界磁部)、4…回転子コイル支持部材、5…磁性シールド、6…固定子、7…固定子コイル、8…磁性シールド、9…フレーム、9a…円筒状のフレーム部、9b…円筒状のフレーム部、9c…円環状のフレーム部。