(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165485
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04D 15/00 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
F04D15/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081732
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 幸栄
(72)【発明者】
【氏名】藤田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 裕大
(72)【発明者】
【氏名】豊田 耕司
【テーマコード(参考)】
3H020
【Fターム(参考)】
3H020AA03
3H020BA16
3H020BA18
3H020CA09
3H020DA22
3H020DA23
3H020EA09
3H020EA12
(57)【要約】
【課題】平滑化制御を効率的に実現すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、ポンプ装置は、複数台のポンプと、算出部と、平滑化部と、処理部とを含む。算出部は、前記複数台のポンプそれぞれについて、積算運転時間を算出する。平滑化部は、前記積算運転時間に基づいて、運転時間の平滑化制御を実行する。切替部は、前記平滑化制御の実行中において、前記複数台のポンプのうち運転中である第1ポンプの連続運転時間が閾値以上である場合、運転ポンプを前記第1ポンプから第2ポンプに切り替える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台のポンプと、
前記複数台のポンプそれぞれについて、積算運転時間を算出する算出部と、
前記積算運転時間に基づいて、運転時間の平滑化制御を実行する平滑化部と、
前記平滑化制御の実行中において、前記複数台のポンプのうち運転中である第1ポンプの連続運転時間が閾値以上である場合、運転ポンプを前記第1ポンプから第2ポンプに切り替える切替部と、
を具備するポンプ装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記複数台のポンプそれぞれについて、積算運転回数を算出し、
前記平滑化部は、前記積算運転回数に基づいて前記平滑化制御を実行する、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項3】
前記切替部は、所定の期間または所定の時間帯において前記第1ポンプの連続運転時間が閾値以上である場合、前記運転ポンプを前記第1ポンプから前記第2ポンプに運転を切り替える、請求項1に記載のポンプ装置。
【請求項4】
複数台のポンプと、
前記複数台のポンプそれぞれについて、積算運転時間を算出する算出部と、
前記積算運転時間に基づいて、運転時間の平滑化制御を実行する平滑化部と、
前記平滑化制御の実行中において、前記複数台のポンプのうち運転中である第1ポンプの連続運転時間が閾値以上であるか否かを判定する判定部と、
前記連続運転時間が閾値以上である場合、外部に信号を発報する発報部と、
を具備するポンプ装置。
【請求項5】
前記算出部は、運転中のポンプが1台である場合に、当該運転中のポンプの前記連続運転時間を算出する、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ装置の平滑化制御の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複数台のポンプを交互に駆動する交互運転および複数台のポンプを同時に駆動する並列運転を行うポンプ装置が知られている。この種のポンプ装置では、複数台のポンプを切り替えて運転するため、始動および停止の頻度、ポンプの切り替えの状態によっては、各ポンプの積算運転時間にばらつきが生じてしまう。よって、各ポンプの切り替え順序を変更することで、特定のポンプに運転を集中させず、部品の消耗を分散させる運転時間平滑化の制御が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、一般的な運転時間平滑化の制御は、ポンプ運転時に、運転時間または運転回数の少ない号機を優先的に始動させる機能であって、特定のポンプが長時間運転し続ける場合を想定していない。よって、ポンプが連続で長時間運転する場合には、運転時間平滑化の制御が効率的に実施できないという問題がある。
本発明は、運転時間平滑化を効率的に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係るポンプ装置は、複数台のポンプと、算出部と、平滑化部と、処理部とを含む。算出部は、前記複数台のポンプそれぞれについて、積算運転時間を算出する。平滑化部は、前記積算運転時間に基づいて、運転時間の平滑化制御を実行する。切替部は、前記平滑化制御の実行中において、前記複数台のポンプのうち運転中である第1ポンプの連続運転時間が閾値以上である場合、運転ポンプを前記第1ポンプから第2ポンプに切り替える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、平滑化制御を効率的に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る管理システムの一例を示す図。
【
図2】本実施形態に係るポンプ装置を示すブロック図。
【
図3】本実施形態に係るポンプ装置の平滑化制御の動作例を示すフローチャート。
【
図4】本実施形態に係る端各ポンプ号機の運転データの一例を示すテーブル。
【
図5】本実施形態に係るポンプ装置の運転テーブルの一例を示すテーブル。
【
図6】本実施形態に係る平滑化テーブルの一例を示すテーブル。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら実施形態に係るポンプ装置について説明する。なお、以降、説明済みの要素と同一または類似の要素には同一または類似の符号を付し、重複する説明については基本的に省略する。例えば、複数の同一または類似の要素が存在する場合に、各要素を区別せずに説明するために共通の符号を用いることがあるし、各要素を区別して説明するために当該共通の符号に加えて枝番号を用いることもある。
【0009】
図1は、本実施形態に係る管理システム100を例示するブロック図である。
図1に示すように、管理システム100は、管理サーバ1、複数のポンプ装置5-nおよび複数の端末3-n(nはインデックス)を含む。
図1では、nが2である場合の構成を示しているが、これに限定する必要はなく、nは1以上であれば幾つでもよい。以下、特に区別しないときは単にポンプ装置5および端末3と記載することとする。管理システム100では、ポンプ装置5に関して測定されるポンプ情報などを管理サーバ1で用いて管理するコンピュータシステムである。ポンプ情報は、ポンプ部の運転情報を含む。運転情報は、ポンプの運転に関する複数のパラメータを含む。運転情報に含まれるパラメータとしては、例えば、電源からポンプ装置5の制御盤に供給される電圧、電流、電力、圧力センサにより計測された圧力値(揚程)、流量センサにより計測された流量、積算運転時間、運転回数、液面(電極)情報が挙げられる。液面情報は、例えば、満水、減水、渇水、異常無しといった液面の水位の情報である。なお、運転情報として、加速時間、減速時間、PI制御設定値、運転周波数、最大運転周波数、最小運転周波数といった制御設定値を含んでもよい。また、運転情報として、例えば故障が発生した日時、故障個所、原因などの故障情報を含めてもよい。
【0010】
図1に示すように、管理サーバ1とポンプ装置5と端末3とは、ネットワークNWを介して、4G、5Gといった携帯通信網や、Wimaxなどの比較的遠距離の無線通信手段により接続される。また、ポンプ装置5と端末3とは、上述した無線通信回線に加え、Wi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Filed Communication)、赤外線通信といった比較的近距離の無線通信手段により接続されることを想定する。なお、ポンプ装置5と端末3とは、USBやケーブルによるLAN接続といった有線通信回線を介して接続されてもよい。
【0011】
管理サーバ1は、管理サーバの一例であり、CPUなどのプロセッサ、ROMやRAMなどのメモリ、表示機器、入力機器及び通信機器を有するコンピュータである。管理サーバ1は、複数のポンプ装置5に関する各種データを管理するためのHDD、SSD、集積回路記憶装置などの大容量記憶装置を有する。当該大容量記憶装置をデータベースと呼ぶことにする。例えば、管理サーバ1は、ポンプ装置5に関する各種データをデータベースに記憶したり、各ポンプ装置5の稼働状況を管理する。なお、管理サーバ1は、オンプレミスサーバに限らず、クラウドサーバであってもよい。
【0012】
ポンプ装置5は、例えば、建物に給水する機械装置(給水装置)である。ポンプ装置5は、例えば、受水槽からの定圧給水を想定した定圧給水型給水装置であるとする。なお、水道本管に直結され、水道本管を流れる水を直接増圧し、建物に設けられた蛇口やシャワーヘッドなどの供給先に給水する、いわゆる直結増圧型給水装置でもよいし、直結直圧型でもよい。
【0013】
端末3は、点検作業員などのユーザが持ち運び可能な通信端末であり、具体例として、ノートPC、モバイル端末(スマートフォン、フィーチャーフォン、タブレット)およびスマートウォッチやゴーグルなどのウェアラブルデバイスが挙げられる。なお、端末3は、ポンプ装置5の管理専用に構成された通信デバイスであってもよい。端末3から、ポンプ装置5を制御可能としてもよく、例えば、ポンプ装置5を制御するためのアプリケーション(以下、制御アプリケーションともいう)が搭載されてもよいし、Webブラウザからポンプ装置5を制御可能としてもよい。
【0014】
次に、本実施形態に係るポンプ装置5について
図2のブロック図を参照して説明する。
ポンプ装置5は、制御盤50と、ポンプ部60とを含む。ポンプ部60のうち、互いに並列に配置された3台のポンプ61a~61cは、ここでは、説明の便宜上、左側からポンプ1号機、ポンプ2号機、ポンプ3号機と呼ぶ。なお、ポンプ61は複数台であればよく、3台に限定されない。これらポンプ61a~61cの吸込部は、例えば開閉弁62a~62cが介装された吸込管63a~63c及び分岐部64を介して、給水源、例えば受水槽などから延びる給水管に接続されている。
【0015】
またポンプ61a~61cの吐出部は、例えば逆止弁65a~65cや開閉弁66a~66cが介装された吐出管67a~67cを介して、需要側、例えばビルや集合住宅などから延びる需要管68に接続されている。これにより、3台のポンプ61a~61cが並列に接続されたポンプ部60を構成している。但し、ポンプ61a~61cの吐出側には、アキュームレータ70や流量センサ71a~71cや圧力センサ72が設けられている。また、ポンプ61a~61cのモータ(図示せず)の電源周波数を可変可能に制御するインバータ54が設けられている。インバータ54、流量センサ71a~71cおよび圧力センサ72などは、制御盤50に接続されている。
【0016】
制御盤50は、例えば、目標圧力一定制御などのポンプ制御アルゴリズムに従い、流量センサ71a~71cの流量信号、圧力センサ72の圧力信号で検出される需要具合に応じて、ポンプ61a~61cの交互運転や並列運転などを制御する。また、制御盤50は、ポンプ61a~61cの総積算運転時間および総積算運転回数を平滑化するようにポンプ61a~61cを駆動する。
【0017】
制御盤50は、
図2に示すように、制御盤50は、互いにバスを介して接続された近距離通信器51と、遠距離通信器52と、入力機器53と、インバータ54と、インタフェース55と、表示機器56と、記憶装置57と、プロセッサ58とを含む。
【0018】
近距離通信器51は、Bluetooth、Wi-FiまたはNFCなどの無線通信の規格を用いた近距離無線通信を行なう。近距離通信器51は、USBなどの有線通信の規格を用いた近距離通信を行なってもよい。近距離通信器51は、端末3との間で、近距離通信回線を介して、ポンプ装置5の運転モードの設定および各種データの送受信などを行なう。
【0019】
遠距離通信器52は、携帯通信網、WimaxおよびWi-Fiなどの無線通信の規格を用いた遠距離通信を行なう。遠距離通信器52は、管理サーバ1または端末3との間で、遠距離通信回線を介して各種データの送受信を行なう。
【0020】
近距離通信器51および遠距離通信器52による無線接続の確立については、例えば、Bluetoothであれば、一般的なペアリング処理により無線接続が確立されればよく、Wi-Fiであれば、Wi-Fiのアクセスポイントに予め設定されたSSIDおよびパスワードを入力することで、無線接続が確立されればよい。なお、一度、ポンプ装置5と端末3との無線接続が確立していれば、端末3の無線機能をオンにしてポンプ装置5と接近することで、自動的に無線接続が確立されるものとする。
【0021】
入力機器53は、ユーザの指示を電気信号に変換する。入力機器53としては、例えば、操作パネルやタッチパネル、キーボード、マウス、各種スイッチなどが用いられればよい。なお、入力機器53としては、音声入力装置が用いられてもよい。入力機器53からの電気信号はバスを介してプロセッサ58に供給される。
【0022】
インバータ54は、ポンプ61a~61cを作動する動力を発生する。具体的には、インバータ54は、ポンプ61a~61cのモータ(図示せず)に所定周波数の交流電力を供給する。また、インバータ54は、プロセッサ58からインバータ制御信号を受け取る。インバータ54は、インバータ制御信号に応じて動作する。例えば、インバータ54は、運転停止信号または運転開始信号に相当するインバータ制御信号に応じて運転を停止または開始する。また、インバータ54は、回転数制御信号に相当するインバータ制御信号に応じてモータの回転数を制御する。
【0023】
具体的には、インバータ54は、図示しないコンバータ回路、平滑コンデンサ及びインバータ回路を含む。コンバータ回路は、交流電源から交流電力を取り込み整流することで直流電力に変換する。平滑コンデンサは、コンバータ回路によって出力される直流電力の電圧を平滑化し、略一定電圧の直流電力を得る。そして、インバータ回路は、平滑コンデンサによって得られた直流電力を制御盤50からのインバータ制御信号(回転数制御信号に相当)に応じた所定周波数の交流電力へと変換してモータに供給する。
【0024】
インタフェース55は、例えば、ポートなどの入出力インタフェースである。インタフェース55は、例えば、制御盤50とポンプ部60とを接続し、各種信号を送受信する。
【0025】
表示機器56は、各種データを表示する。表示機器56としては、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイなどの任意のディスプレイが用いられればよい。なお、表示機器56として、プロジェクタが用いられてもよい。
【0026】
記憶装置57は、各種データを記憶するROMやRAM、HDD、SSD(solid state drive)、集積回路記憶装置などのメモリ装置である。記憶装置57は、物理的に一つのメモリ装置により実現されてもよいし、ポンプ装置5内に物理的に分離された複数のメモリ装置により実現されてもよい。ここで、記憶装置57は、時刻毎の運転時間と運転回数を記憶する。なお、運転時間と運転回数はポンプ号機毎に記憶されることが好ましいが、メモリ容量が小さい場合にはポンプ号機毎に記憶する必要はない。記憶装置57は、時刻毎に記憶した運転時間と運転回数から、プロセッサ58が求めた1回の運転時間の平均、最大の運転時間、最低の運転時間を記憶する。曜日毎に運転傾向が異なる場合もあるため、1週間分の運転データを記憶するとよりよい。但し、これもメモリ容量が小さければ、記憶する必要はない。なお、月毎や、季節毎に異なる運転をする可能性もあるが、メモリ容量が小さい場合には、前日の、先週の運転データを元に常に以降の処理を見直せば、月毎や季節毎のデータを保持する必要はない。
なお、運転時間、運転回数、平均、最大および最低の運転時間、月毎や季節毎のデータは、遠距離通信器52を介して管理サーバ1に送信され、管理サーバ1に記憶されてもよい。
【0027】
プロセッサ58は、CPUやマイクロプロセッサなどの演算装置である。プロセッサ58は、ASICやFPGAなどの専用の回路により構成されてもよい。プロセッサ58は、記憶装置57に保存された各種プログラムを実行することで、例えば、通信制御部581と、算出部582と、判定部583と、平滑化部584と、切替部585と、発報部586との各機能を実現する。
【0028】
通信制御部581は、ポンプ装置5の制御盤50と、端末3との間の無線接続を確立する。例えば、Bluetoothであれば、一般的なペアリング接続により無線接続が確立されればよく、Wi-Fiであれば、Wi-Fiのアクセスポイントに予め設定されたSSIDおよびパスワードを入力することで、無線接続が確立されればよい。なお、一度、ポンプ装置5と端末3との無線接続が確立していれば、端末3の無線機能をオンにしてポンプ装置5と接近することで、自動的に無線接続が確立されるものとする。また、通信制御部581は、制御盤50と端末3との間の確立されている無線接続を解除する処理も行う。通信制御部581は、接続が確立した端末3との間、または管理サーバ1との間でデータの送受信を行う。
【0029】
算出部582は、複数台のポンプ61それぞれについて、積算運転時間を算出する。
判定部583は、運転時間の平滑化制御を実行するか否かを判定する。また、複数台のポンプ61のうち、運転中のポンプ(第1ポンプともいう)の連続運転時間が閾値以上であるか否かを判定する。
平滑化部584は、積算運転時間に基づいて、運転時間の平滑化制御を実行する。
切替部585は、平滑化制御の実行中において、第1ポンプの連続運転時間が閾値以上である場合、運転ポンプを当該第1ポンプから、他のポンプ(第2ポンプともいう)に切り替える。なお、切替部585は、運転ポンプを第1ポンプから第2ポンプに切り替えることに限らない。例えば、第1ポンプを含む複数台のポンプ号機が同時に運転している場合、第1ポンプを停止し、運転中の他のポンプの運転周波数を上げることで給水量を確保できれば、運転を切り替えずに、第1ポンプを停止するだけでもよい。
発報部586は、連続運転時間が閾値以上である場合、外部に信号を発報する。
【0030】
なお、制御盤50を構成する基板の枚数は任意に設計可能であり、各基板が近距離通信器51、遠距離通信器52、入力機器53、インバータ54、インタフェース55、表示機器56、記憶装置57及びプロセッサ58のうちの何れの機器を物理的に装備するのかも任意に設計可能である。また、通信制御部581と、算出部582と、判定部583と、平滑化部584と、切替部585と、発報部586とは、一のプロセッサ58が担うものとしたが、物理的に分離した複数のプロセッサが分担してもよい。
【0031】
次に、本実施形態に係るポンプ装置5の動作例について、
図3のフローチャートを参照して説明する。ここでは、ポンプの始動時または増台時における処理を想定する。
【0032】
ステップS301では、例えば算出部582が、平滑化テーブルを作成または更新する。具体的には、まず、算出部582が、各ポンプ号機の運転データを算出する。続いて、算出部582が、各ポンプ号機の運転データに基づき、積算運転時間などを算出してまとめた運転テーブルを算出する。さらに、算出部582は、運転テーブルに基づいて、平滑化テーブルを作成する。
なお、すでに平滑化テーブルを作成済みであれば、例えば直近1週間のポンプ稼働状況に基づいて、各ポンプ号機の積算運転時間、積算運転回数などを算出して更新すればよい。また、平滑化テーブルが作成されてから所定期間内であれば、更新処理を行わず、直近に作成された平滑化テーブルを利用してもよい。例えば、判定部583が、ポンプの始動時または増台時の時点と、直近の平滑化テーブルの更新時点の差分を算出し、当該差分が所定期間未満であるか否かを判定すればよい。当該差分が所定期間未満であれば、ステップS301の処理を行わず、当該直近の平滑化テーブルを利用すればよい。
【0033】
ステップS302では、判定部583が、平滑化制御の実行タイミングであるか否かを判定する。例えば、現在の時刻が平滑化テーブルに示される平滑化制御の実行時間帯であれば、平滑化制御を実行すると判定し、ステップS303に進む。一方、現在の時刻が、平滑化テーブルに示される平滑化制御の実行時間帯ではない場合、平滑化制御を実行しないと判定し、ステップS302の判定処理を継続する。
【0034】
ステップS303では、平滑化部584が、積算運転時間に基づいて、ポンプの運転時間の平滑化制御を実行する。平滑化制御は、例えば積算運転時間が最長のポンプ号機を除いた他のポンプ号機による輪番運転が実行されればよい。
【0035】
ステップS304では、判定部583が、平滑化制御の実行中において、複数台のポンプ号機のうち運転中であるポンプ号機の連続運転時間が閾値以上であるか否かを判定する。運転中のポンプ号機の連続運転時間が閾値以上である場合、ステップS305に進み、運転中のポンプ号機の連続運転時間が閾値未満である場合、当該運転中のポンプ号機の運転を継続しつつ、ステップS304の判定処理を継続する。
【0036】
ステップS305では、切替部585が、運転中のポンプ号機である第1ポンプから第2ポンプに運転を切り替える。言い換えれば、運転中のポンプ号機を停止し、停止中の他のポンプ号機を始動させる。または、運転中のポンプ号機を停止し、運転中のポンプ号機の運転周波数を増加させ、給水量を増加させてもよい。
【0037】
なお、ステップS304の平滑化制御では、時間平滑化の処理を想定するが、回数平滑化の処理と合わせて実行してもよい。具体的には、時間平滑化を実行する時間帯であれば、平滑化部584が、積算運転時間が最も少ないポンプ号機が優先的に始動するように平滑化制御を実行する。回数平滑化を実行する時間帯であれば、平滑化部584が、積算運転回数が最も少ないポンプ号機が優先的に始動するように平滑化制御を実行する。
【0038】
次に、各ポンプ号機の運転データの一例について
図4を参照して説明する。
図4は、ポンプ1号機の運転データTa、ポンプ2号機の運転データTb、及びポンプ3号機の運転データTcの各々を示すテーブルである。各ポンプ号機の運転データは、例えばポンプ装置5のプロセッサ58が、所定の時刻ごとに、1回当たりの運転時間、1回当たりの運転回数、積算運転時間および積算運転回数を記憶装置57に保存することで生成される。なお、ポンプ装置5は、定期的に、各ポンプ号機の運転データTa~Tcを管理サーバ1に送信してもよい。管理サーバ1は、受信した運転データTa~Tcをデータベース14に保存して管理する。
【0039】
次に、ポンプ装置5の運転テーブルの一例について
図5を参照して説明する。
図5に示すように、例えばポンプ装置5のプロセッサ58が、1日の所定時間帯毎に、ポンプ1号機からポンプ3号機までの各ポンプ号機の運転データ(運転データTa、運転データTb、運転データTc)に基づいて、平均運転時間、合計運転時間、合計運転回数および平均時間順位を関連付けた運転テーブルT1を作成する。具体的には、プロセッサ58が、1日の所定時間帯ごとに、各ポンプ号機毎の積算運転時間を運転データTa~Tcそれぞれで合計し、更にポンプ装置全体、すなわち合計された各運転データTa~Tcの積算運転時間を合計した合計運転時間と、前記合計運転時間と同様の方法で積算運転回数を合計した合計運転回数とを求める。また、プロセッサ58は、所定時間帯ごとに、合計運転時間と合計運転回数とに基づいて、各ポンプ号機の平均運転時間(=合計運転時間÷合計運転回数)を算出する。また、プロセッサ58は、所定時間帯ごとの平均運転時間の長い順に平均時間順位を付ける。具体的に
図5の例では、12時台は、平均運転時間が「37秒」、合計運転時間が「1871秒」、合計運転回数が「50回」、平均時間順位「1」であり、12時台の平均運転時間が最も長く、平均時間順位が1位であることがわかる。なお、所定時間帯は、ここでは1時間毎の時間帯を想定するが、これに限らず、30分毎、2時間毎など、どのような時間帯であってもよい。運転テーブルT1によれば、どの時間帯が運転時間が長いかを判定できる。
【0040】
次に、平滑化テーブルの一例について
図6を参照して説明する。
プロセッサ58は、運転テーブルT1に基づいて、平滑化テーブルT2を作成する。例えば、プロセッサ58は、前述した所定時間帯ごとの平均運転時間のうち、当該平均運転時間の長い順に少なくとも1つの第1時間帯を選択する。第1時間帯は、時間平滑化制御を行う時刻の範囲であり、時間平滑化時刻の名称と、時間帯を示す範囲とにより示される。具体的に
図6の例では、プロセッサ58の算出部582は、運転テーブルT1内の平均時間順位の高い順に5つの第1時間帯を選択する。これにより、プロセッサ58は、平均時間順位が1位から4位までの各々と、時間平滑化時刻の名称と、時刻の値の範囲とを関連付けて平滑化テーブルT2の1乃至5行目を作成する。但し、平均時間順位「1位」には、有効フラグ「1」(有効)が関連付けられ、平均時間順位「2位」「3位」「4位」には、有効フラグ「0」(無効)が関連付けられる。つまり、平均時間順位の高い時間帯にポンプ号機を運転させることで、1回の運転時間を長くとることができる。平滑化テーブルT2において平滑化制御を実行する時間帯については、有効フラグを「1」に設定すればよい。
【0041】
一方、プロセッサ58は、運転テーブルT1に基づいて、所定時間帯ごとの平均運転時間のうち、当該平均運転時間の短い順に少なくとも1つの第2時間帯を選択する。第2時間帯は、回数平滑化制御を行う時刻の範囲であり、回数平滑化時刻の名称と、時間帯を示す範囲とにより示される。具体的に
図6の例では、プロセッサ58の算出部582は、運転テーブルT1内の平均時間順位の低い順から3つの第2時間帯を選択する。これにより、プロセッサ58は、平均時間順位が22位乃至24位の各々と、回数平滑化時刻の名称と、時刻の値の範囲とを関連付けて平滑化テーブルT2の4乃至6行目を作成する。また同様に、平均時間順位「24位」には、有効フラグ「1」(有効)が関連付けられ、平均時間順位「22位」には、有効フラグ「0」(無効)が関連付けられる。このように、プロセッサ58は、運転モード、有効フラグ、平均時間順位、名称及び範囲を関連付けた平滑化テーブルT2を作成できる。つまり、平均時間順位が低い時間帯は、1回の運転時間が短いため、運転回数を稼ぐことができる。なお、平滑化テーブルT2において時間平滑化および回数平滑化の制御を実行する時間帯については、有効フラグを「1」に設定すればよい。
【0042】
図6に示す1時間帯の個数(5つ)及び第2時間帯の個数(3つ)は、それぞれ一例であり、これに限定されず、第1時間帯および第2時間帯の個数は、
図6の例よりも少なくてもよいし、多くともよい。
【0043】
なお、
図3に示す本実施形態に係るポンプ装置5の平滑化制御において、平滑化制御が進まない場合、すなわち、各ポンプ号機の積算運転時間が同等程度とならない場合、平滑化制御を強めるように設定してもよい。例えば平滑化部584は、平滑化制御の実行を開始した時点の複数のポンプ61について積算運転時間の最大値と最小値との差分(第1差分)を算出しておく。平滑化部584は、平滑化制御の実行を開始してから1週間後といった所定期間後に、同様に積算運転時間の最大値および最小値の差分(第2差分)を算出する。平滑化部584は、第1差分と第2差分とを比較し、第2差分が大きい場合、平滑化制御が進んでいないと判定できる。
【0044】
この場合、例えば平滑化テーブルT2の平均時間順位「2」の時間平滑化時刻に関連付けた有効フラグを「1」に更新する。これにより、時間平滑化制御を行う時間帯の範囲が1時間増加するので、時間平滑化制御の効果が増すことを期待できる。もちろん、平均時間順位の順に1つずつ有効フラグを立てていくことに限らず、平均時間順位「2」および「3」を一度に有効として、時間平滑化制御を行う時間帯を2時間増加させてもよいし、時間平滑化制御を実行可能な時間をすべて有効としてもよい。
同様に、積算運転回数を平滑化する場合は、回数平滑化時刻について、有効フラグを設定する数を増やせばよい。
上述のように平滑化制御を強めた結果、平滑化が進んだ場合は、平滑化制御を強めた状態のまま、平滑化制御を行う時間帯を維持してもよいし、デフォルトの設定値に戻してもよい。
【0045】
また、切替部585は、例えば深夜の時間帯や、店舗および工場の休業日などの所定の期間または所定の時間帯において、運転ポンプである第1ポンプ号機の連続運転時間が閾値以上である場合、運転ポンプを第1ポンプ号機から他の第2ポンプ号機に切り替えてもよい。これにより、ポンプ号機が連続運転する可能性が低い場合に、ポンプ号機が連続運転している状況は、メカニカルシールからの漏水など、何らかの異常が発生していると想定できる。よって、連続運転時間を監視することで、異常検知を行うこともできる。
【0046】
また、配管漏水時を想定した長時間連続運転の運転ポンプの号機切り替えは、ポンプ装置の二次側圧力変動を出来る限り抑えた状態で行う必要があるため、複数台並列運転状態ではなく、1台運転(単独運転)の場合に限定して連続運転時間を計測する。すなわち一例としては、判定部583が、運転ポンプ号機の切り替え時に圧力変動を少なくするために運転パラメータに関する条件が設定されている場合であって、かつ運転ポンプである第1ポンプの連続運転時間が閾値以上であると判定した場合、切替部585は、運転ポンプを第1ポンプ号機から他の第2ポンプ号機に切り替えを実行してもよい。運転パラメータに関する条件としては、例えば、「運転台数=1台 and 平均運転周波数<A[Hz] or 負荷率(消費電力など)<B[%]」(ここでは、Aは1以上の任意の実数,Bは0以上100未満の実数)といった条件が挙げられる。
【0047】
なお、発報部586は、判定部583により連続運転時間が閾値以上である場合、外部に異常を通知する信号を発報してもよい。また、発報部586は、近距離通信器51または遠距離通信器52を介して、当該信号を端末3に送信してもよい。これにより、メンテナンス員などがポンプ装置5の異常に気付くことができる。
【0048】
以上に示した本実施形態によれば、平滑化制御の実行中に、運転中の第1ポンプの連続運転時間が閾値以上であるか否かを判定し、当該第1ポンプの連続運転時間が閾値以上である場合、運転ポンプを第1ポンプから第2ポンプに切り替える。
これにより、1つのポンプ号機が長時間連続して動き続けるような現場環境においても、平滑化制御を効率的に実現できる。
【0049】
上記各実施形態の処理の少なくとも一部は、例えば汎用のコンピュータに搭載されたプロセッサを基本ハードウェアとして用いることでも実現可能である。上記処理を実現するプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納して提供されてもよい。プログラムは、インストール可能な形式のファイルまたは実行可能な形式のファイルとして記録媒体に記憶される。記録媒体としては、磁気ディスク、光ディスク(CD-ROM、CD-R、DVD、Blu-ray(登録商標)Discなど)、光磁気ディスク(MOなど)、半導体メモリなどである。記録媒体は、プログラムを記憶でき、かつ、コンピュータが読み取り可能であれば、何れであってもよい。また、上記処理を実現するプログラムを、インターネットなどのネットワークに接続されたコンピュータ(サーバ)上に格納し、ネットワーク経由でコンピュータ(クライアント)にダウンロードさせてもよい。
【0050】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0051】
1・・・管理サーバ、3,3-1,3-2・・・端末、5,5-1,5-2・・・ポンプ装置、51・・・近距離通信器、52・・・遠距離通信器、53・・・入力機器、54・・・インバータ、55・・・インタフェース、56・・・表示機器、57・・・記憶装置、58・・・プロセッサ、60・・・ポンプ部、61a~61c・・・ポンプ、62a~62c,66a~66c・・・開閉弁、63a~63c・・・吸込管、64・・・分岐部、65a~65c・・・逆止弁、67a~67c・・・吐出管、70・・・アキュームレータ、71a~71c・・・流量センサ、72・・・圧力センサ、581・・・通信制御部、582・・・算出部、583・・・判定部、584・・・平滑化部、585・・・切替部、586・・・発報部。