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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016549
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】プラントリスク評価方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/0635 20230101AFI20240131BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20240131BHJP
【FI】
G06Q10/06 326
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118763
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金田 昌基
(72)【発明者】
【氏名】池側 智彦
(72)【発明者】
【氏名】新間 大輔
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA06
5L049CC03
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】機器の保全方法および構成を変更した場合のフォールトツリーの変更を自動的に実施することで、プラントリスク、さらには経済性を容易に評価可能なプラントリスク評価方法および装置を提供する。
【解決手段】計算機を用いて、複数機器で構成されるプラントのリスクを評価するプラントリスク評価方法であって、プラントを構成する機器の保全方法または構成の変更を入力し、プラントを構成する機器について故障モードと故障発生確率の関係を示す部分フォールトツリーを参照して、変更がなされたときの機器の故障モードと故障発生確率を求め、複数の機器で構成されるプラントの停止リスクを求めるための全体フォールトツリーを参照して、機器について変更がなされたときのプラント停止リスクを求めることを特徴とするプラントリスク評価方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算機を用いて、複数機器で構成されるプラントのリスクを評価するプラントリスク評価方法であって、
プラントを構成する機器の保全方法または構成の変更を入力し、
プラントを構成する機器について故障モードと故障発生確率の関係を示す部分フォールトツリーを参照して、前記変更がなされたときの前記機器の故障モードと故障発生確率を求め、
複数の機器で構成されるプラントの停止リスクを求めるための全体フォールトツリーを参照して、機器について前記変更がなされたときのプラント停止リスクを求めることを特徴とするプラントリスク評価方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプラントリスク評価方法であって、
前記機器の保全方法は、時間基準保全の保全間隔、状態基準保全、事後保全であり、
前記部分フォールトツリーは、保全方法変更後の故障モードと故障発生確率を求めるものであることを特徴とするプラントリスク評価方法。
【請求項3】
請求項1に記載のプラントリスク評価方法であって、
前記機器の構成は、多重化、または仕様変更であり、前記部分フォールトツリーは、機器の構成を変更後の、部分ツリーの構造と故障発生確率を求めるものであることを特徴とするプラントリスク評価方法。
【請求項4】
請求項1に記載のプラントリスク評価方法であって、
前記プラント停止リスクに対して、当該プラントを停止した時のコストを求めることを特徴とするプラントリスク評価方法。
【請求項5】
計算機を用いて、複数機器で構成されるプラントのリスクを評価するプラントリスク評価装置であって、
プラントを構成する機器の保全方法または構成の変更を入力する入力装置と、
プラントを構成する機器について故障モードと故障発生確率の関係を示す部分フォールトツリーと、複数の機器で構成されるプラントの停止リスクを求めるための全体フォールトツリーと、
前記部分フォールトツリーを参照して、前記変更がなされたときの前記機器の故障モードと故障発生確率を求めるフォールトツリー構成部と、
前記全体フォールトツリーを参照して、機器について前記変更がなされたときのプラント停止リスクを求めるリスク計算部を備えることを特徴とするプラントリスク評価装置。
【請求項6】
請求項5に記載のプラントリスク評価装置であって、
プラント停止コストを計算するための単価を格納したコストデータベースと、
プラント停止リスクからプラント停止によるコスト期待値を計算するコスト計算部を備えることを特徴とするプラントリスク評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントのリスクを評価するプラントリスク評価方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力などの発電プラントでは、信頼性向上と保全作業の合理化を目的として、機器の保全方法の見直しが検討されている。従来は一定期間ごとに機器の点検を行う時間基準保全が中心であったが、状態監視技術の活用などによって、機器の状態に基づき必要なときに保全を行う状態基準保全の導入が検討されている。あるいは、機器が故障してもプラントへの影響が小さく、対応が容易な場合には、機器が故障してから交換、修理を行う事後保全化も考えられる。
【0003】
ただし、機器の保全方法の見直しは、プラントの信頼性を低下させないことが前提であり、どの機器の保全方法をどのように変えるかについて、慎重な検討が必要である。これまでの時間基準保全では、機器の劣化が進むよりも短い間隔で保全作業が行われていた。例えば、これまで2年間隔で保全作業が行われていた機器について、状態監視によって点検間隔を4年に延長した場合、これまでは発生していなかった劣化の発生により、従来よりも故障確率が増大する可能性がある。したがって、保全方法を変更する場合には、故障モードと発生確率の変化を考慮することが必要になる。
【0004】
機器の故障によるプラントリスク評価として、フォールトツリーを用いてプラント停止確率を計算することができる。それにより、ある機器の保全方法を変更した場合に、プラントへの影響を定量的に評価できる。
【0005】
一方、プラントリスクを低減させるために、機器の構成を見直すことも検討できる。例えば、信頼性の高い型式への変更や、多重化などを行って機器の故障確率を低下させ、プラント停止確率を低下させることができる。すなわち、保全方法変更と構成変更を組み合わせて、リスクが上昇しないようにしつつ、プラント停止による損失と保全費用全体でのコストを低減することが望ましい。このような評価をするために、フォールトツリーでプラント停止リスクを評価し、プラント停止損失の期待値を計算することが有効である。
【0006】
そのようなリスク評価方法として、特許文献1には、「診断エンジンが、リスク評価DB及びリスク対策DBを参照し、機器毎に故障が発生した場合のリスク推定額と、機器毎に予め対策方法を実行する場合のメンテナンス費用とを時系列に沿って算出し、リスク推定額とメンテナンス費用とを時系列に沿って加算して機器のメンテナンスの最適周期を算出する。診断エンジンが、機器に故障が発生した場合、機器の識別情報及び故障モードに基づいて故障診断DBを参照し、運用実績に基づいて経年変化以外の故障をも解析する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-182465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
フォールトツリーによるプラントのリスク評価とコストの評価は、その作業に多大の手間がかかるという問題がある。例えば、プラント設計時に炉心損傷確率などを計算するためにフォールトツリーを用いたリスク評価が行われるが、保全方法の変更まで考慮した構造にはなっていない。保全方法を変更した際には、前述のように、劣化などのこれまで考慮していなかった故障モードを反映することが必要になる。
【0009】
したがって、これらのフォールトツリーを流用しても、保全方法の変更に伴う修正が必要になる。一般的には保全方法の変更はプラントリスクを上昇させるので、機器の構成変更と組み合わせて、プラントリスクを上昇させないように様々なパターンを試行錯誤して検討する必要がある、したがって、機器の保全方法と構成の組み合わせを変更する都度フォールトツリーを修正して検討するのは現実的ではない。このような課題に対して、機器ごとに保全方法を変更した場合、構成を変更した場合の部分的なフォールトツリーを用意しておき、変更案に対して部分的にフォールトツリーを更新できれば、手間を減らすことが可能である。このような方法は特許文献1には記載されていない。
【0010】
そこで、本発明は、機器の保全方法および構成を変更した場合のフォールトツリーの変更を自動的に実施することで、プラントリスク、さらには経済性を容易に評価可能なプラントリスク評価方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上のことから本発明においては「計算機を用いて、複数機器で構成されるプラントのリスクを評価するプラントリスク評価方法であって、プラントを構成する機器の保全方法または構成の変更を入力し、プラントを構成する機器について故障モードと故障発生確率の関係を示す部分フォールトツリーを参照して、変更がなされたときの機器の故障モードと故障発生確率を求め、複数の機器で構成されるプラントの停止リスクを求めるための全体フォールトツリーを参照して、機器について変更がなされたときのプラント停止リスクを求めることを特徴とするプラントリスク評価方法」としたものである。
【0012】
また本発明においては「計算機を用いて、複数機器で構成されるプラントのリスクを評価するプラントリスク評価装置であって、プラントを構成する機器の保全方法または構成の変更を入力する入力装置と、プラントを構成する機器について故障モードと故障発生確率の関係を示す部分フォールトツリーと、複数の機器で構成されるプラントの停止リスクを求めるための全体フォールトツリーと、部分フォールトツリーを参照して、変更がなされたときの機器の故障モードと故障発生確率を求めるフォールトツリー構成部と、全体フォールトツリーを参照して、機器について変更がなされたときのプラント停止リスクを求めるリスク計算部を備えることを特徴とするプラントリスク評価装置」としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、機器の保全方法および構成を変更した場合のフォールトツリーの変更を自動的に実施することで、プラントリスクと経済性を容易に評価可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1に係るプラントリスク評価装置の構成例を示す図。
図2】モニタの機器情報入力画面の例を示す図。
図3】全体フォールトツリーの例を示す図。
図4】弁Aに関する部分フォールトツリーの例を示す図。
図5】ポンプCに関する部分フォールトツリーの例を示す図。
図6】弁Aの保全方法を変更した場合の全体フォールトツリーの例を示す図。
図7】実施例1の時の結果出力画面の例を示す図。
図8】本発明の実施例1に係るプラントリスク評価方法の処理のフローチャート。
図9】本発明の実施例2に係るプラントリスク評価装置の構成例を示す図。
図10】本発明の実施例2に係るプラントリスク評価方法の処理のフローチャート。
図11】実施例2の時の結果出力画面の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例0016】
図1は、本発明の実施例1に係るプラントリスク評価装置の構成例を示す図である。図1のプラントリスク評価装置10は、計算機装置を用いて構成することを想定しており、入力装置1から機器変更情報D0を取得し、最終的に出力装置8である例えばモニタなどの画面に結果出力Oを行う。
【0017】
このためにプラントリスク評価装置10は、予め複数のデータベーDB1、DB2にそれぞれ全体フォールトツリーデータD1、部分フォールトツリーデータD2の情報を保有しており、計算機装置の演算部においてフォールトツリー構成部4、リスク計算部5の各機能の演算を実行している。
【0018】
図1のプラントリスク評価装置10では、ユーザが出力装置8であるモニタの画面を見ながら、機器の保全方法の変更または構成の変更の情報(以下機器変更情報という)D0を、入力装置1から入力する。
【0019】
図2には、モニタの機器情報入力画面90の例を示している。図の例ではモニタ90の画面は、機器(弁A、弁B、ポンプC)ごとに3分割して画面構成され、それぞれの機器情報の入力画面91、92、93を表示している。
【0020】
入力画面91の表示事例では、保全方法の変更の例として、弁Aは現状では2年間隔で時間基準によって保全作業が行われており、4年間隔で時間基準に行う場合と、事後保全として実施する場合の選択肢が提示されている。
【0021】
また入力画面92の表示事例では、保全方法の変更の例として、弁Bは現状では2年間隔で時間基準によって保全作業が行われており、4年間隔で時間基準に行う場合と、状態基準保全として実施する場合の選択肢が提示されている。
【0022】
さらに入力画面93の表示事例では、構成変更の例として、ポンプCは現状では型式Xが用いられており、型式Yに変更する場合と、型式Xのまま多重化構造とする場合の選択肢が提示されている。
【0023】
ユーザは、入力画面91、92、93を見ながら、今後における保全方法の変更あるいは、構成変更の場面において、時間基準(4年)、事後保全、状態基準保全、型式y、型式X多重化などを選択し、この選択情報を機器変更情報D0として入力装置から入力する。
【0024】
他方において全体フォールトツリーデータベースDB1には、プラント停止リスクを計算するための複数機器からなる全体フォールトツリーが格納されている。図3に全体フォールトツリーの例を示しており、プラントなどの設備を構成する複数機器として図2と同じ弁A、弁B、ポンプCを例示している。
【0025】
全体フォールトツリーのデータD1には、各機器の故障モードD1aとその発生確率D1bの情報を含んでいる。また全体フォールトツリーのデータD1には、各機器の故障モードD1aとその発生確率D1bから求められるプラント停止確率D1Cの情報を含んでいる。
【0026】
この例によれば、弁Aと弁Bの故障として考慮されている故障モードD1aは動作不能であり、その発生確率D1bはいずれも1.0×10-6(/h)である。動作不能になった場合には弁A、弁Bが故障であり、プラントの機能A、機能Bが喪失し、プラント停止することを示している。
【0027】
またポンプCの故障として考慮されている故障モードD1aは動作不能であり、その発生確率D1bは5.0×10-6(/h)である。動作不能になった場合にはポンプCが故障であり、プラントの機能Cが喪失し、プラント停止することを示している。
【0028】
またプラント停止確率D1Cは、機器全体(この例では弁A、弁B、ポンプC)での停止確率の和であり、7.0×10-6(/h)となる。なおこの例は説明のために簡略化したものであり、実際には、多数の機器、故障モードのANDまたはOR条件が複雑に関係している。なおANDの場合には確率は積で計算される。
【0029】
部分フォールトツリーデータベースDB2には、単一の機器に関する部分的なフォールトツリーが格納されている。部分フォールトツリーのデータD2には、各機器の故障モードD2aとその発生確率D2bの情報が、現状と将来の変更対策種別ごとに分けて保持されている。
【0030】
図4図5に部分フォールトツリーの例を示す。図4は弁Aに関する部分フォールトツリーである。この場合の部分フォールトツリーは、現状と将来に分けて把握されている。まず現状に関して、2年間隔の時間基準保全の場合、想定される故障モードD2aは動作不能になることであり、その発生確率D2bは1.0×10-6(/h)である。
【0031】
これに対して将来について検討すると、将来の変更対策種別を、この弁Aを4年間隔での時間基準保全や、壊れたときに保全を実施する事後保全にした場合には、2年間隔ではほとんど起きなかった部品の摩耗による新たな故障モードD2aとしてリークが発生する可能性があり、このリークの発生確率D2bとして、新たに2.0×10-7(/h)が考慮される。したがって、将来時点における弁Aの故障確率は、故障モードD2aが動作不能であるときと、故障モードD2aがリークであるときの発生確率の和で計算され、1.2×10-6(/h)に上昇する。図4で示した弁Aの上記故障確立の上昇傾向は弁Bについてもいえることである。
【0032】
図5はポンプCに関する部分フォールトツリーである。この場合の部分フォールトツリーも、現状と将来に分けて把握されている。まず現状として型式Xのポンプの場合、想定される故障モードD2aは動作不能になることであり、その発生確率D2bは5.0×10-6(/h)である。これに対し、将来の対策として、このポンプを信頼性の高い型式Yに交換した場合、発生確率D2bは2.0×10-6(/h)に低下する。あるいは、将来の対策として型式XのポンプCを増設してポンプC1とポンプC2に多重化した場合、ポンプC1とポンプC2の同時故障の場合にのみポンプCとしての機能が失われることになるので、故障発生確率D2bは動作不能確率の積で計算され、2.5×10-11(/h)に低下する。部分フォールトツリーはあらかじめ考えられる故障モードや機器構成のパターンを登録しておく。また、経年劣化などの情報蓄積に伴い更新することが望ましい。
【0033】
図1に戻りフォールトツリー構成部4では、入力装置1から入力した機器変更情報(機器の保全方法の変更または構成の変更)を入力し、全体フォールトツリーデータベースDB1から全体フォールトツリーを入力し、部分フォールトツリーデータベースDB2から部分フォールトツリーを入力し、全体フォールトツリーのうち、保全方法の変更または構成の変更があった機器について、部分フォールトツリーで更新する。
【0034】
例えば、図3の全体フォールトツリーのうち、弁Aの保全方法を4年間隔の時間基準保全に変更した場合、全体フォールトツリーは図6のようになる。このケースでは、弁Aの故障確率D2bは、従来は動作不能のみであったものが、保全方法の変更によりリークも考慮する必要性が生じ、この結果動作不能とリークの発生確率の和で計算され、1.2×10-6(/h)に上昇することになる。
【0035】
このように機器の保全方法は、時間基準保全の保全間隔、状態基準保全、事後保全であり、部分フォールトツリーは、保全方法変更に対して故障モードと故障発生確率を求める。また機器の構成は、多重化、または仕様変更であり、部分フォールトツリーは、機器の構成変更に対して部分ツリーの構造と故障発生確率を求める。
【0036】
図1に戻り、結果出力装置8では、フォールトツリー構成部4の計算結果を画面などに出力する。図7に結果出力の例を示す。図7図2と比較すると、弁BとポンプCの取り扱いは従前のままとして、弁Aのみを4年間隔の時間基準保全に変更した場合のプラント停止確立が結果出力としてモニタに表示されることを示している。
【0037】
図8は、実施例1のプラントリスク評価方法による処理を説明するフローチャートの例である。
【0038】
ステップS101では、入力装置1により、機器の保全方法の変更または構成の変更を入力する。ステップS102では、全体フォールトツリーデータベースDB1から、全体フォールトツリーを入力する。ステップS103では、部分フォールトツリーデータベースDB2から、部分フォールトツリーを入力する。
【0039】
ステップS104では、フォールトツリー構成部4により、全体フォールトツリーのうち、保全方法の変更または構成の変更があった機器について、部分フォールトツリーで更新する。ステップS105では、リスク計算部5により、更新されたフォールトツリーを用いてプラントの停止リスクを計算する。ステップS106では、コストデータベースDB3からプラント停止の単価を入力する。
【0040】
ステップS107では、コスト計算部7により、プラント停止によるコスト期待値を計算する。ステップS108では、結果出力装置8により、計算結果を出力する。
【0041】
以上の手順により、機器の保全方法および構成を変更した場合のフォールトツリーの変更を自動的に実施することで、プラントリスクを容易に評価可能なプラントリスク評価方法および装置を提供できる。
【実施例0042】
図9は、本発明の実施例2に係るプラントリスク評価装置の構成例を示す図である。実施例2のプラントリスク評価装置10は、実施例1にさらにコストデータベースDB3にコストデータD3の情報を保有しており、計算機装置の演算部においてフォールトツリー構成部4、リスク計算部5の処理に続いてコスト計算部7の機能の演算を実行する。コスト計算部7では、プラント停止のコスト期待値の計算を行う。それ以外の処理は実施例1と同じである。
【0043】
図9のリスク計算部5では、フォールトツリー構成部4から更新されたフォールトツリーを入力し、プラントの停止リスクを計算する。図6の例では、弁Aの発生確率が保全方法の変更により1.0×10-6(/h)から1.2×10-6(/h)に上昇した結果として、プラント停止確率は7.0×10-6(/h)から7.2×10-6(/h)に上昇されたことを表している。
【0044】
図9のコストデータベースDB3には、プラント停止コストを計算するための単価が格納されている。例えば、1回のプラント停止による損失を10億円とする。ここでは説明のため単純化しているが、故障機器や故障モードによってプラント復旧までの期間は異なるため、故障機器や故障モードごとに単価を設定してもよい。
【0045】
図9のコスト計算部7では、リスク計算部5からプラントの停止リスクを入力し、コストデータベースDB3からプラント停止の単価を入力し、プラント停止によるコスト期待値を計算する。
【0046】
図3の従前の例ではコスト期待値は例えば7000(円/h)であり、図6の将来の4年間隔の時間基準保全に変更した場合の例では例えば7200(円/h)である。この例では、弁Aの保全方法を見直したことにより、プラント停止確率とそのコスト期待値は上昇してしまうことがわかる。
【0047】
本発明の使用方法としては、弁Aの保全見直しとポンプCの型式変更などを併用して、プラント停止確率が上昇しないような組み合わせを検討することが望ましい。この際、保全見直しによる故障モードの変化などがフォールトツリーに自動的に反映されるため、比較検討を容易にすることができる。
【0048】
出力装置8では、コスト計算部7の計算結果を画面などに出力する。図7に結果出力の例を示す。図7図2と比較すると、弁BとポンプCの取り扱いは従前のままとして、弁Aのみを4年間隔の時間基準保全に変更した場合のプラント停止確立と、コスト期待値(7200円/h)とが結果出力としてモニタに表示されることを示している。
【0049】
なお、フォールトツリー構成部4、リスク計算部5、コスト計算部7は計算機のプログラムとして実施してもよい。また、全体フォールトツリーデータベースDB1、部分フォールトツリーデータベースDB2、コストデータベースDB3を計算機内に含めた構成としてもよい。
【0050】
図10は、実施例2のプラントリスク評価方法による処理を説明するフローチャートの例である。図10では、ステップS101では、入力装置1により、機器の保全方法の変更または構成の変更を入力する。ステップS102では、全体フォールトツリーデータベースDB1から、全体フォールトツリーを入力する。ステップS103では、部分フォールトツリーデータベースDB2から、部分フォールトツリーを入力する。
【0051】
ステップS104では、フォールトツリー構成部4により、全体フォールトツリーのうち、保全方法の変更または構成の変更があった機器について、部分フォールトツリーで更新する。ステップS105では、リスク計算部5により、更新されたフォールトツリーを用いてプラントの停止リスクを計算する。ステップS108では、結果出力装置8により、計算結果を出力する。
【0052】
出力装置8では、コスト計算部7の計算結果を画面などに出力する。図11に結果出力の例を示す。図11図2と比較すると、弁BとポンプCの取り扱いは従前のままとして、弁Aのみを4年間隔の時間基準保全に変更した場合のプラント停止確立と、コスト期待値(7200円/h)とが結果出力としてモニタに表示されることを示している。
【0053】
以上の手順により、機器の保全方法および構成を変更した場合のフォールトツリーの変更を自動的に実施することで、プラントリスクと経済性を容易に評価可能なプラントリスク評価方法および装置を提供できる。
【0054】
この結果として、この提示を受けたユーザは、さらなる機器の保全方法および構成の変更により、より望ましい提案にたどり着くことが可能となる。
【0055】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1:入力装置
4:フォールトツリー構成部
5:リスク計算部
7:コスト計算部
8:出力装置
DB1:全体フォールトツリーデータベース
DB2:部分フォールトツリーデータベース
DB3:コストデータベース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11