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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165500
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】充電器
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20241121BHJP
   H02J 7/10 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H02M3/28 H
H02J7/10 B
H02J7/10 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081755
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】爲永 陽樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 恒平
【テーマコード(参考)】
5G503
5H730
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA10
5G503CB13
5G503GB04
5H730AA15
5H730AS01
5H730AS17
5H730BB27
5H730BB37
5H730BB57
5H730CC04
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE13
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD21
5H730FD51
(57)【要約】
【課題】充電器の製造コストを低減する。
【解決手段】ACDC変換回路2と、コンデンサCcと、DAB回路3と、電流センサSiと、電圧センサSv1~Sv3と、ACDC変換回路2の動作を制御するとともに駆動信号S5~S12をスイッチング素子Q5~Q12に出力する制御部4とを備えて充電器1を構成し、制御部4は、電流センサSiにより検出される電流Iと電圧センサSv1により検出される電圧V1とにより求められる入力電力Pinから、電流センサSiにより検出される電流Iと電圧センサSv1~Sv3によりそれぞれ検出される電圧V1~V3とにより求められる推定損失PL^を減算した推定充電電力Pc^が目標電力Ptと一致するように駆動信号S9~S12の位相シフト量Δθを制御する。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスの1次側のブリッジ回路を構成する複数の第1スイッチング素子と、前記トランスの2次側のブリッジ回路を構成する複数の第2スイッチング素子とを備え、前記複数の第1スイッチング素子を駆動させる第1駆動信号に対する、前記複数の第2スイッチング素子を駆動させる第2駆動信号の位相差に応じた充電電力をバッテリに供給するDAB回路と、
コンデンサと、
入力される交流電力を直流電力に変換し前記コンデンサを介して前記DAB回路に出力するACDC変換回路と、
前記ACDC変換回路に入力される電流を検出する電流センサと、
前記ACDC変換回路に入力される電圧を検出する第1電圧センサと、
前記コンデンサにかかる電圧を検出する第2電圧センサと、
前記バッテリの電圧を検出する第3電圧センサと、
前記ACDC変換回路の動作を制御するとともに前記第1及び第2駆動信号を前記第1及び第2スイッチング素子に出力する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記電流センサにより検出される電流と前記第1電圧センサにより検出される電圧とにより求められる入力電力から、前記電流センサにより検出される電流と前記第1乃至第3電圧センサによりそれぞれ検出される電圧とにより求められる推定損失を減算した推定充電電力が目標電力と一致するように前記第2駆動信号の位相シフト量を制御する
充電器。
【請求項2】
請求項1に記載の充電器であって、
前記制御部は、前記電流センサにより検出される電流と前記第1乃至第3電圧センサによりそれぞれ検出される電圧と前記充電器の温度とにより、前記推定損失を求める
充電器。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充電器に関する。
【背景技術】
【0002】
充電器として、系統電源から出力される交流電力をACDC変換回路及びコンデンサにより直流電力に変換し、その直流電力をDAB(Dual Active Bridge)回路により目標電力に変換してバッテリに供給するものがある。関連する技術として、特許文献1がある。
【0003】
また、上記充電器は、交流電力を直流電力に変換するために、ACDC変換回路に入力される電流を検出する電流センサ、ACDC変換回路に入力される電圧を検出する電圧センサ、及びコンデンサにかかる電圧を検出する電圧センサを備える。また、上記充電器は、DAB回路からバッテリに供給される充電電力を目標電力と一致させるために、DAB回路から出力される電流を検出する電流センサ及びDAB回路から出力される電圧を検出する電圧センサを備える。
【0004】
このように、上記充電器は、電流センサや電圧センサをそれぞれ複数備える必要があるため、製造コストの増加が懸念される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-110235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面に係る目的は、充電器の製造コストを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一つの形態である充電器は、トランスの1次側のブリッジ回路を構成する複数の第1スイッチング素子と、前記トランスの2次側のブリッジ回路を構成する複数の第2スイッチング素子とを備え、前記複数の第1スイッチング素子を駆動させる第1駆動信号に対する、前記複数の第2スイッチング素子を駆動させる第2駆動信号の位相差に応じた充電電力をバッテリに供給するDAB回路と、コンデンサと、入力される交流電力を直流電力に変換し前記コンデンサを介して前記DAB回路に出力するACDC変換回路と、前記ACDC変換回路に入力される電流を検出する電流センサと、前記ACDC変換回路に入力される電圧を検出する第1電圧センサと、前記コンデンサにかかる電圧を検出する第2電圧センサと、前記バッテリの電圧を検出する第3電圧センサと、前記ACDC変換回路の動作を制御するとともに前記第1及び第2駆動信号を前記第1及び第2スイッチング素子に出力する制御部とを備える。
【0008】
前記制御部は、前記電流センサにより検出される電流と前記第1電圧センサにより検出される電圧とにより求められる入力電力から、前記電流センサにより検出される電流と前記第1乃至第3電圧センサによりそれぞれ検出される電圧とにより推定される損失を減算した推定充電電力が目標電力と一致するように前記第2駆動信号の位相シフト量を制御する。
【0009】
これにより、DAB回路からバッテリに供給される充電電力を求めるためにDAB回路から出力される電流を検出するための電流センサを充電器に備える必要がないため、その分、充電器の製造コストを低減することができる。
【0010】
前記制御部は、前記電流センサにより検出される電流と前記第1乃至第3電圧センサによりそれぞれ検出される電圧と前記充電器の温度とにより、前記推定損失を求めるように構成してもよい。
【0011】
これにより、充電器の温度を用いずに損失を推定する場合に比べて、損失の推定精度を向上させることができるため、推定充電電力の推定精度を向上させることができ、充電処理時の制御性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、充電器の製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態における充電器の一例を示す図である。
図2】制御部の動作を示すフローチャートである。
図3】駆動信号S5~S8に対する駆動信号S9~S12の位相差と充電電力Pcとの対応関係を示す図である。
図4】駆動信号S5~S12の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0015】
図1は、実施形態における充電器の一例を示す図である。
【0016】
図1に示す充電器1は、ACDC変換回路2と、DAB回路3と、コンデンサCcと、電流センサSiと、電圧センサSv1(第1電圧センサ)と、電圧センサSv2(第2電圧センサ)と、電圧センサSv3(第3電圧センサ)と、制御部4とを備える。例えば、充電器1は、電気自動車やプラグインハイブリッド車などの車両に搭載され、系統電源Pから充電スタンドなどを介して出力される交流電力を直流電力に変換してバッテリBに供給する。また、充電器1は、バッテリBから出力される直流電力を交流電力に変換して系統電源Pに供給する。なお、バッテリBは、リチウムイオン二次電池などにより構成され、車両に搭載される走行用モータなどの負荷に電力を供給する。
【0017】
ACDC変換回路2は、いわゆる、インターリーブPFC(Power Factor Correction)回路であって、インダクタLと、スイッチング素子Q1~Q4とを備える。なお、スイッチング素子Q1~Q4は、それぞれ、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)と、IGBTに並列接続されるダイオードとにより構成される。
【0018】
インダクタLの一方端子は電圧センサSv1及び電流センサSiを介して系統電源Pの一方端子に接続され、インダクタLの他方端子はスイッチング素子Q1のエミッタ端子とスイッチング素子Q2のコレクタ端子との接続点に接続されている。系統電源Pの他方端子はスイッチング素子Q3のエミッタ端子とスイッチング素子Q4のコレクタ端子との接続点に接続されている。スイッチング素子Q1、Q3のそれぞれのコレクタ端子はコンデンサCcの一方端子に接続され、スイッチング素子Q2、Q4のそれぞれのエミッタ端子はコンデンサCcの他方端子に接続されている。
【0019】
DAB回路3は、トランスTと、トランスTの1次側のブリッジ回路を構成するスイッチング素子Q5~Q8(第1スイッチング素子)と、トランスTの2次側のブリッジ回路を構成するスイッチング素子Q9~Q12(第2スイッチング素子)と、コンデンサCとを備える。なお、スイッチング素子Q5~Q12は、それぞれ、例えば、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)により構成される。
【0020】
スイッチング素子Q5、Q7のそれぞれのドレイン端子はコンデンサCcの一方端子に接続され、スイッチング素子Q6、Q8のそれぞれのソース端子はコンデンサCcの他方端子に接続されている。スイッチング素子Q5のソース端子とスイッチング素子Q6のドレイン端子との接続点はトランスTの1次コイルL1の一方端子に接続され、スイッチング素子Q7のソース端子とスイッチング素子Q8のドレイン端子との接続点は1次コイルL1の他方端子に接続されている。スイッチング素子Q9、Q11のそれぞれのドレイン端子はコンデンサCの一方端子に接続され、スイッチング素子Q10、Q12のそれぞれのソース端子はコンデンサCの他方端子に接続されている。スイッチング素子Q9のソース端子とスイッチング素子Q10のドレイン端子との接続点はトランスTの2次コイルL2の一方端子に接続され、スイッチング素子Q11のソース端子とスイッチング素子Q12のドレイン端子との接続点は2次コイルL2の他方端子に接続されている。
【0021】
コンデンサCcは、ACDC変換回路2とDAB回路3との間に接続される。
【0022】
電流センサSiは、ホール素子やシャント抵抗などにより構成され、系統電源PからACDC変換回路2に出力される電流IまたはACDC変換回路2から系統電源Pに出力される電流Iを検出し、その検出した電流Iを制御部4に送る。
【0023】
電圧センサSv1は、分圧抵抗などにより構成され、系統電源PからACDC変換回路2に出力される電圧V1またはACDC変換回路2から系統電源Pに出力される電圧V1を検出し、その検出した電圧V1を制御部4に送る。
【0024】
電圧センサSv2は、分圧抵抗などにより構成され、コンデンサCcにかかる電圧V2を検出し、その検出した電圧V2を制御部4に送る。
【0025】
電圧センサSv3は、分圧抵抗などにより構成され、バッテリBの電圧V3を検出し、その検出した電圧V3を制御部4に送る。
【0026】
制御部4は、プロセッサまたはプログラマブルデバイス(FPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device)など)により構成され、ACDC変換回路2及びDAB回路3のそれぞれの動作を制御する。なお、ACDC変換回路2の動作が制御部4とは別の制御部により制御されてもよい。この場合、制御部4は、別の制御部と協同してDAB回路3の動作を制御する。
【0027】
制御部4は、バッテリBを充電するための充電指令が外部(充電スタンドなど)から入力されることで充電処理を開始すると、系統電源Pから出力される交流電力が直流電力に変換されてバッテリBに供給されるように、ACDC変換回路2及びDAB回路3のそれぞれの動作を制御する。また、制御部4は、バッテリBに蓄積されている電力を系統電源Pに供給するための放電指令が外部から入力されることで放電処理が開始されると、バッテリBから出力される直流電力が交流電力に変換されて系統電源Pに供給されるように、ACDC変換回路2及びDAB回路3のそれぞれの動作を制御する。
【0028】
例えば、制御部4は、充電処理時、電流センサSiにより検出される電流I、電圧センサSv1により検出される電圧V1、及び電圧センサSv2により検出される電圧V2を用いて、系統電源PからACDC変換回路2に出力される交流電流の波形が正弦波に近づくように、かつ、系統電源PからACDC変換回路2に出力される交流電流と系統電源PからACDC変換回路2に出力される交流電圧との位相がゼロになるように、すなわち、力率が1に近づくように、スイッチング素子Q1~Q4の駆動を制御する。これにより、ACDC変換回路2により力率が改善された整流後の電力がコンデンサCcに供給される。そして、コンデンサCcは、ACDC変換回路2により整流された電力を平滑する。すなわち、充電処理時、ACDC変換回路2及びコンデンサCcにより系統電源Pから出力される交流電力が直流電力に変換されDAB回路3に供給される。
【0029】
また、制御部4は、充電処理時、DAB回路3からバッテリBに供給される充電電力Pcが目標電力Ptに追従するように、駆動信号S5~S8(第1駆動信号)によりスイッチング素子Q5~Q8の駆動を制御するとともに、駆動信号S9~S12(第2駆動信号)によりスイッチング素子Q5~Q12の駆動を制御する。なお、目標電力Ptは、例えば、定電流充電制御から定電圧充電制御に切り替わるときのバッテリBの電圧や定電圧充電制御が終了するときにバッテリBに流れる電流に基づいて設定される。なお、駆動信号S5~S12のデューティ比をそれぞれ50[%]とする。また、駆動信号S5、S8が互いに同一とし、駆動信号S6、S7が互いに同一とし、駆動信号S9、S12が互いに同一とし、駆動信号S10、S11が互いに同一とする。また、駆動信号S5、S8の位相と駆動信号S6、S7の位相は互いに180°異なり、駆動信号S9、S12の位相と駆動信号S10、S11の位相は互いに180°異なっているものとする。また、駆動信号S5、S6の立上りタイミング及び立下りタイミング、駆動信号S7、S8の立上りタイミング及び立下りタイミング、駆動信号S9、S10の立上りタイミング及び立下りタイミング、並びに、駆動信号S11、S12の立上りタイミング及び立下りタイミングにそれぞれデッドタイムが設けられているものとする。
【0030】
図2は、充電処理時における制御部4の動作を示すフローチャートである。なお、図2に示すフローチャートは、系統電源Pの周波数(例えば、50Hz)に応じた制御周期(例えば、20[ms])毎に実行されるものとし、DAB回路3に対する動作制御のみ示している。
【0031】
まず、制御部4は、電流センサSiにより検出される電流Iの実効値、電圧センサSv1により検出される電圧V1の実効値、電圧センサSv2により検出される電圧V2、及び電圧センサSv3により検出される電圧V3を取得する(ステップST1)。
【0032】
次に、制御部4は、ステップST1で取得した、電流Iの実効値と電圧V1の実効値との乗算値を、充電器1の入力電力Pinとして求める(ステップST2)。
【0033】
次に、制御部4は、ステップST1で取得した、電流Iの実効値、電圧V1の実効値、電圧V2、及び電圧V3に基づいて、充電器1全体で生じる推定損失PL^[W]を求める(ステップST3)。例えば、電流Iの実効値、電圧V1の実効値、電圧V2、及び電圧V3と、充電器1全体で生じる損失PLとの対応関係を示すマップを実験やシミュレーションなどにより予め求めておき、制御部4は、そのマップを参照して、電流Iの実効値、電圧V1の実効値、電圧V2、及び電圧V3に対応する損失PLを推定損失PL^とする。または、制御部4は、電流Iの実効値、電圧V1の実効値、電圧V2、及び電圧V3と、充電器1全体で生じる損失PLとの関係式に、電流Iの実効値、電圧V1の実効値、電圧V2、及び電圧V3を代入して得られる計算結果を推定損失PL^とする。
【0034】
次に、制御部4は、ステップST2で求めた入力電力PinからステップST3で求めた推定損失PL^を減算して、DAB回路3からバッテリBに供給される推定充電電力Pc^を求める(ステップST4)。
【0035】
次に、制御部4は、ステップST4で求めた推定充電電力Pc^が目標電力Ptと一致するように、前回の制御周期で生成した駆動信号S9~S12に対する駆動信号S9~S12の位相シフト量Δθを求める(ステップST5)。なお、駆動信号S9~S12の位相が位相シフト量Δθ分シフトされ、駆動信号S5~S8の位相は固定される。また、推定充電電力Pc^が目標電力Ptと一致しているとき、位相シフト量Δθはゼロまたは略ゼロになり、目標電力Ptと推定充電電力Pc^との差が大きくなるほど、位相シフト量Δθが大きくなる。
【0036】
そして、制御部4は、充電処理時、制御周期より短いスイッチング周期において、駆動信号S5~S8をスイッチング素子Q5~Q8に出力するとともに、前回の制御周期で生成した駆動信号S9~S12に対して、ステップST5で求めた位相シフト量Δθ分、位相をシフトさせた駆動信号S9~S12をスイッチング素子Q9~Q12に出力する。なお、前回の制御周期に比べて、今回の制御周期で求めた推定充電電力Pc^が目標電力Ptより小さくなる場合、制御部4は、前回の制御周期で生成した駆動信号S9~S12に対して、位相シフト量Δθ分、位相を遅らせた駆動信号S9~S12をスイッチング素子Q9~Q12に出力する。また、前回の制御周期に比べて、今回の制御周期で求めた推定充電電力Pc^が目標電力Ptより大きくなる場合、制御部4は、前回の制御周期で求めた駆動信号S9~S12に対して、位相シフト量Δθ分、位相を進ませた駆動信号S9~S12をスイッチング素子Q9~Q12に出力する。これにより、充電処理時において、DAB回路3からバッテリBに供給される充電電力Pcを目標電力Ptに近づけることができる。
【0037】
ここで、今回の制御周期の時刻t1において、目標電力Ptが変化することで目標電力Ptが推定充電電力Pc^より大きくなる場合、または、入力電力Pinもしくは推定損失PL^が変化することで推定充電電力Pc^が目標電力Ptより小さくなる場合を想定する。なお、図3に示す二次元座標の横軸は駆動信号の位相を示し、縦軸は電力を示し、実線は駆動信号S5~S8に対する駆動信号S9~S12の位相差とDAB回路3からバッテリBに供給される充電電力Pcとの対応関係を示す情報Dを示している。また、図4(a)~図4(d)のそれぞれの二次元座標の横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示している。また、図4(a)に示す実線は駆動信号S5、S8を示し、図4(b)に示す実線は駆動信号S6、S7を示し、図4(c)に示す実線は駆動信号S9、S12を示し、図4(d)に示す実線は駆動信号S10、S11を示している。また、時刻t1より前の制御周期において、推定充電電力Pc^と目標電力Ptとが互いに一致しているものとする。また、駆動信号S5~S8に対する駆動信号S9~S12の位相差が0°であるとき、充電電力Pcは最小になり、駆動信号S5~S8に対する駆動信号S9~S12の位相差が90°であるとき、充電電力Pcは最大になるものとする。
【0038】
このような場合、今回の制御周期の時刻t1において、まず、制御部4は、図3に示す情報Dを参照して、目標電力Ptに対応する位相θtを求めるとともに、推定充電電力Pc^に対応する位相θcを求める。次に、制御部4は、位相θtから位相θcを減算して位相シフト量Δθを求める。
【0039】
そして、次回の制御周期の時刻t2以降において、制御部4は、図4(c)に示すように、前回の制御周期で生成した駆動信号S9、S12の位相を位相シフト量Δθ分遅延させた駆動信号S9、S12を生成するとともに、図4(d)に示すように、前回の制御周期で生成した駆動信号S10、S11の位相を位相シフト量Δθ分遅延させた駆動信号S10、S11を生成する。
【0040】
これにより、時刻t1において推定充電電力Pc^が目標電力Ptと一致しなくなったとしても、時刻t2以降において推定充電電力Pc^を目標電力Ptに近づけることができる。
【0041】
このように、本実施形態の充電器1では、電流センサSiにより検出される電流Iと電圧センサSv1により検出される電圧V1とにより求められる入力電力Pinから、電流センサSiにより検出される電流Iと電圧センサSv1~Sv3によりそれぞれ検出される電圧V1~V3とにより求められる推定損失PL^を減算した推定充電電力Pc^が目標電力Ptと一致するように位相シフト量Δθを制御する構成である。
【0042】
これにより、DAB回路3からバッテリBに供給される充電電力Pcを求めるためにDAB回路3から出力される電流を検出するための電流センサを充電器1に備える必要がないため、その分、充電器1の製造コストを低減することができる。
【0043】
なお、本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【0044】
<変形例1>
制御部4は、電流I及び電圧V1、V2などによりACDC変換回路2で生じる推定損失PL1^を求めるとともに、電流I及び電圧V2、V3などによりDAB回路3で生じる推定損失PL2を求め、推定損失PL1^と推定損失PL2^との合計値を充電器1全体で生じる推定損失PL^とするように構成してもよい。
【0045】
<変形例2>
充電器1は、サーミスタなどの温度センサをさらに備え、制御部4は、電流I及び電圧V1~V3の他に、さらに、温度センサにより検出される、充電器1の温度を用いて、推定損失PL^を求めるように構成してもよい。
【0046】
これにより、充電器1の温度を用いずに推定損失PL^を求める場合に比べて、推定損失PL^の推定精度を向上させることができるため、推定充電電力Pc^の推定精度を向上させることができ、充電処理時の制御性能を向上させることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 充電器
2 ACDC変換回路
3 DAB回路
4 制御部
P 系統電源
Si 電流センサ
Sv1~Sv3 電圧センサ
Cc、C コンデンサ
L インダクタ
Q1~Q12 スイッチング素子
T トランス
B バッテリ
図1
図2
図3
図4