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  • 特開-アンモニア分解ガス発生装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165501
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】アンモニア分解ガス発生装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/04 20060101AFI20241121BHJP
   B01J 23/46 20060101ALI20241121BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C01B3/04 B
B01J23/46 301M
B01J23/755 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081756
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 賢志
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA04
4G169BB02
4G169BC68
4G169BC70
4G169CB81
(57)【要約】
【課題】アンモニア分解ガスの生成における炭素系エネルギー消費を低減すること。
【解決手段】アンモニア分解ガス発生装置1は、触媒を含み、反応温度下でアンモニアガスを分解して分解ガスを生成する反応器2と、反応器2において生成された分解ガスの一部を燃焼させて反応器2を反応温度に加熱する燃焼器3と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒を含み、反応温度下でアンモニアガスを分解して分解ガスを生成する反応器と、
前記反応器において生成された前記分解ガスの一部を燃焼させて前記反応器を前記反応温度に加熱する燃焼器と、を備える、
アンモニア分解ガス発生装置。
【請求項2】
前記反応器において生成された前記分解ガスを前記反応器に導入する前のアンモニアガスと熱交換させる分解ガス熱交換器と、
前記燃焼器から排出される燃焼排ガスを前記アンモニアガスと熱交換させる排ガス熱交換器と、をさらに備える、
請求項1に記載のアンモニア分解ガス発生装置。
【請求項3】
前記反応器に導入される前記アンモニアガスが流れるアンモニアガス導入ラインを備え、
前記分解ガス熱交換器および前記排ガス熱交換器はそれぞれ複数の熱交換器を含み、
前記アンモニアガス導入ラインには、前記分解ガス熱交換器および前記排ガス熱交換器が配置される、
請求項2に記載のアンモニア分解ガス発生装置。
【請求項4】
前記分解ガス熱交換器が配置され、前記反応器において生成された前記分解ガスが流れる分解ガス導出ラインを備え、
前記反応器と前記分解ガス熱交換器との間の前記分解ガス導出ラインの分岐部分から分岐し、前記燃焼器に接続される燃料ラインを備え、
前記分岐部分よりも下流側の前記分解ガス導出ラインには流量調整バルブが配置され、
前記燃料ラインにはオリフィスが配置される、
請求項2または3に記載のアンモニア分解ガス発生装置。
【請求項5】
前記流量調整バルブは、前記反応器または前記分解ガスの温度に基づいて制御される、
請求項4に記載のアンモニア分解ガス発生装置。
【請求項6】
前記燃焼器は、前記分解ガスの一部を燃焼するためのバーナー部を含み、
前記バーナー部とは別個に設けられ、前記分解ガスの生成前に、前記反応器を加熱する補助加熱部をさらに備える、
請求項3に記載のアンモニア分解ガス発生装置。
【請求項7】
前記補助加熱部は、ブロワと、前記ブロワから送られるガスを加熱する電気ヒータとを含む、
請求項6に記載のアンモニア分解ガス発生装置。
【請求項8】
前記分解ガス熱交換器より上流の前記アンモニアガス導入ラインに準備用ガスを供給する準備用ガスラインをさらに備え、
前記分解ガスの生成前に、前記アンモニアガス導入ラインに前記準備用ガスの供給および前記補助加熱部を動作させる、
請求項6に記載のアンモニア分解ガス発生装置。
【請求項9】
前記分解ガス熱交換器が配置され、前記反応器において生成された前記分解ガスが流れる分解ガス導出ラインを備え、
前記分解ガス熱交換器は、第1分解ガス熱交換器、第2分解ガス熱交換器および第3分解ガス熱交換器を含み、
前記排ガス熱交換器は、第1排ガス熱交換器および第2排ガス熱交換器を含み、
前記アンモニアガス導入ラインには、上流側から下流側に向かって、前記第1分解ガス熱交換器、前記第1排ガス熱交換器、前記第2分解ガス熱交換器および前記第2排ガス熱交換器が順に配置され、
前記分解ガス導出ラインには、上流側から下流側に向かって、前記第2分解ガス熱交換器、前記第3分解ガス熱交換器および前記第1分解ガス熱交換器が順に配置される、
請求項3に記載のアンモニア分解ガス発生装置。
【請求項10】
前記第1分解ガス熱交換器よりも下流側の前記分解ガス導出ラインに流量調整バルブを含み、
前記反応器と前記第1分解ガス熱交換器との間の前記分解ガス導出ラインの分岐部分から分岐し、前記燃焼器に接続される燃料ラインを備え、
前記燃料ラインにはオリフィスが配置される、
請求項9に記載のアンモニア分解ガス発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、アンモニア分解ガス発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアは、水素キャリアや、カーボンフリーな燃料としての用途が提案されている。AXガスは、アンモニアを熱分解によって生成される水素:窒素=1:3の組成のガスである。AXガスは、金属表面処理ガスとして用いられることが知られているが、水素ガス利用設備、水素ガス利用機器において燃料として利用されうる。
【0003】
特許文献1には、触媒が収容された改質器内で、ヒータによりアンモニアガスを900℃に加熱することで、水素と窒素を主成分とする改質ガスに分解する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-145748号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンモニアガスの分解は吸熱反応であり、分解中、反応器に熱エネルギーを供給し続ける必要がある。反応器をヒータにより加熱する手法では、アンモニアの熱分解に炭素系エネルギーを消費するため、アンモニア分解ガスがカーボンフリーにはならない。カーボンニュートラル実現の観点から、アンモニア分解ガスの生成における炭素系エネルギー消費を低減することが望まれる。なお、本明細書において、炭素系エネルギーとは、エネルギー生成に付随して炭素化合物(主として二酸化炭素)が発生するエネルギーであり、化石燃料由来のエネルギー(燃焼熱エネルギーおよび電気エネルギー)を含む概念である。
【0006】
本明細書で開示する技術は、アンモニア分解ガスの生成における炭素系エネルギー消費を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、アンモニア分解ガス発生装置を開示する。アンモニア分解ガス発生装置は、触媒を含み、反応温度下でアンモニアガスを分解して分解ガスを生成する反応器と、反応器において生成された分解ガスの一部を燃焼させて反応器を反応温度に加熱する燃焼器と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本明細書で開示する技術によれば、アンモニア分解ガスの生成における炭素系エネルギー消費を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るアンモニア分解ガス発生装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0011】
図1は、実施形態に係るアンモニア分解ガス発生装置1を模式的に示す図である。
【0012】
<アンモニア分解ガス発生装置の全体構成>
アンモニア分解ガス発生装置1は、アンモニアガス(NH)を熱分解してアンモニア分解ガス(AXガス、以下、単に「分解ガス」という)を生成する。分解ガスは、水素(H)および窒素(N)を主成分とする混合ガスである。アンモニア分解ガス発生装置1は、生成した分解ガスを分解ガス出口22から導出する。分解ガス出口22から導出される分解ガスは、例えば水素ガス利用設備、水素ガス利用機器において燃料として利用されうる。
【0013】
アンモニア分解ガス発生装置1は、反応器2と、燃焼器3とを備える。また、アンモニア分解ガス発生装置1は、分解ガス熱交換器(HEX1、3、5)および排ガス熱交換器(HEX2、4)を備える。また、アンモニア分解ガス発生装置1は、アンモニアガス導入ライン11と、分解ガス導出ライン12と、助燃ガスライン13と、排ガス導出ライン14と、を備える。アンモニア分解ガス発生装置1は、制御部5により制御される。制御部5は、コンピュータシステムを含む。
【0014】
反応器2は、触媒を含み、反応温度下でアンモニアガスを分解して分解ガスを生成する。反応器2は、アンモニアガスの分解を促進する触媒を収容した反応容器である。触媒の種類は、特に限定されないが、例えばルテニウム(Ru)系、ニッケル(Ni)系などの触媒が用いられる。反応温度は、アンモニアガスの分解反応が進行する温度であれば特に限定されない。一例として、反応温度は、700℃以上1000℃以下の範囲の所定温度でありうる。
【0015】
反応器2は、アンモニアガス導入ライン11および分解ガス導出ライン12とそれぞれ接続されている。反応器2は、アンモニアガス導入ライン11からアンモニアガスを受け入れ、触媒反応により生成した分解ガスを分解ガス導出ライン12へ送り出す。
【0016】
アンモニアガス導入ライン11は、アンモニア供給部21と反応器2とを接続し、反応器2に導入されるアンモニアガスが流れるガス流路である。分解ガス導出ライン12は、反応器2と分解ガス出口22とを接続し、反応器2において生成された分解ガスが流れるガス流路である。本実施形態では、分解ガス導出ライン12は、分岐流路である。すなわち、アンモニア分解ガス発生装置1は、反応器2と分解ガス熱交換器(HEX5)との間の分解ガス導出ライン12の分岐部分23から分岐し、燃焼器3に接続される燃料ライン15を備えている。
【0017】
燃焼器3は、反応器2において生成された分解ガスの一部を燃焼させて反応器2を反応温度に加熱する。燃焼器3は、反応器2と熱的に接続されている(つまり、熱伝達可能である)。燃焼器3は、分解ガス導出ライン12の燃料ライン15、助燃ガスライン13、および、排ガス導出ライン14と、それぞれ接続されている。燃焼器3は、分解ガスの一部を燃焼するためのバーナー部3aを含む。燃焼器3は、燃料ライン15から受け入れた分解ガス中の水素と、助燃ガスライン13から受け入れた助燃ガスとの混合ガスを、バーナー部3aにより燃焼させる。助燃ガスは、燃焼を維持するための酸素(酸化剤)を含有するガスであり、本実施形態では空気である。
【0018】
助燃ガスライン13は、助燃ガス供給部24と燃焼器3とを接続し、燃焼器3に導入される助燃ガス(空気)が流れるガス流路である。排ガス導出ライン14は、燃焼器3と排ガス出口25とを接続し、燃焼器3における燃焼後の高温の燃焼排ガスが流れるガス流路である。
【0019】
<熱交換器>
分解ガス熱交換器(HEX1、3、5)は、分解ガス導出ライン12に配置され、分解ガスを高温側流体として別のガスとの熱交換を行う。分解ガス熱交換器は、反応器2から導出される高温の分解ガスを熱交換させることにより、分解ガスを冷却するとともに、アンモニアガス、助燃ガスを予熱する機能を有する。排ガス熱交換器(HEX2、4)は、排ガス導出ライン14に配置され、燃焼排ガスを高温側流体として別のガスとの熱交換を行う。排ガス熱交換器(HEX2、4)は、燃焼器3から導出される高温の燃焼排ガスを熱交換させることにより、燃焼排ガスを冷却するとともに、アンモニアガスを予熱する機能を有する。
【0020】
分解ガス熱交換器(HEX1、3、5)および排ガス熱交換器(HEX2、4)はそれぞれ複数の熱交換器を含む。
【0021】
本実施形態では、分解ガス熱交換器(HEX1、3、5)は、第1分解ガス熱交換器HEX1、第2分解ガス熱交換器HEX3、および第3分解ガス熱交換器HEX5を含む。
【0022】
第1分解ガス熱交換器HEX1および第2分解ガス熱交換器HEX3は、アンモニアガス導入ライン11に配置され、反応器2において生成された分解ガスを反応器2に導入する前のアンモニアガスと熱交換させる。第3分解ガス熱交換器HEX5は、反応器2において生成された分解ガスを燃焼器3に導入する前の助燃ガスと熱交換させる。
【0023】
分解ガス導出ライン12には、上流側から下流側に向かって、第2分解ガス熱交換器HEX3、第3分解ガス熱交換器HEX5および第1分解ガス熱交換器HEX1が順に配置されている。これにより、高温側流体としての分解ガスは、温度Td1(HEX3入口)>温度Td2(HEX5入口)>温度Td3(HEX1入口)>温度Td4(HEX1下流側)の順に冷却される。一例として、温度Td1=約629℃、温度Td2=約503℃、温度Td3=約346℃、温度Td4=約126℃である。
【0024】
本実施形態では、排ガス熱交換器は、第1排ガス熱交換器HEX2および第2排ガス熱交換器HEX4を含む。第1排ガス熱交換器HEX2および第2排ガス熱交換器HEX4は、アンモニアガス導入ライン11に配置され、燃焼器3から排出される燃焼排ガスをアンモニアガスと熱交換させる。
【0025】
排ガス導出ライン14には、上流側から下流側に向かって、第2排ガス熱交換器HEX4および第1排ガス熱交換器HEX2が順に配置されている。これにより、高温側流体としての燃焼排ガスは、温度Tc1(HEX4入口)>温度Tc2(HEX2入口)>温度Tc3(HEX2下流側)の順に冷却される。一例として、温度Tc1=約1000℃、温度Tc2=約611℃、温度Tc3=約307℃である。
【0026】
次に、低温側流体について説明する。上記のように、アンモニアガス導入ライン11には、分解ガス熱交換器および排ガス熱交換器が配置されている。すなわち、アンモニアガス導入ライン11には、上流側から下流側に向かって、第1分解ガス熱交換器HEX1、第1排ガス熱交換器HEX2、第2分解ガス熱交換器HEX3および第2排ガス熱交換器HEX4が順に配置されている。
【0027】
各熱交換器の高温側流体(分解ガスまたは燃焼排ガス)の温度の大小関係は、HEX1(温度Td3)<HEX2(温度Tc2)<HEX3(温度Td1)<HEX4(温度Tc1)の順である。このように、アンモニア分解ガス発生装置1は、アンモニアガス導入ライン11のアンモニアガスを、各熱交換器(HEX1からHEX4)における分解ガスおよび燃焼排ガスと、温度の低い順に順番に熱交換する。
【0028】
これにより、低温側流体としてのアンモニアガスは、温度Ta1(HEX1入口)<温度Ta2(HEX2入口)<温度Ta3(HEX3入口)<温度Ta4(HEX4入口)<温度Ta5(反応器入口)の順に予熱される。一例として、温度Ta1=約25℃、温度Ta2=約296℃、温度Ta3=約461℃、温度Ta4=約609℃、温度Ta5=約800℃である。アンモニアガスの段階的加熱によって、分解ガスおよび燃焼排ガスの余剰熱の利用効率が向上する。
【0029】
次に、助燃ガスライン13には、第3分解ガス熱交換器HEX5が配置されている。これにより、低温側流体としての助燃ガス(空気)は、温度Ts1(HEX5入口)<温度Ts2(燃焼器3入口)の順に予熱される。一例として、温度Ts1=約25℃、温度Ts2=約483℃である。
【0030】
このように、アンモニア分解ガス発生装置1は、アンモニアガス導入ライン11のアンモニアガスに加えて、助燃ガスライン13の助燃ガスを分解ガスと熱交換することにより、助燃ガスの余熱に利用する。また、第3分解ガス熱交換器HEX5が第1分解ガス熱交換器HEX1と第2分解ガス熱交換器HEX3との間の中間温度帯に配置されるので、第1分解ガス熱交換器HEX1と第2分解ガス熱交換器HEX3とにおける分解ガスの温度差を、アンモニアガスの段階的加熱に適した温度差にすることができる。
【0031】
<流量調整>
本実施形態のアンモニア分解ガス発生装置1は、燃料として燃焼器3へと分流される分解ガスの流量を調整するための構成を備える。具体的には、アンモニア分解ガス発生装置1は、流量調整バルブ26とオリフィス27とを備える。
【0032】
流量調整バルブ26は、分岐部分23よりも下流側の分解ガス導出ライン12に配置されている。具体的には、流量調整バルブ26は、分解ガス導出ライン12のうち、第3分解ガス熱交換器HEX5よりも下流側に配置されている。好ましくは、流量調整バルブ26は、第1分解ガス熱交換器HEX1と分解ガス出口22との間に設けられている。これにより、流量調整バルブ26が高温に曝されないように、流量調整バルブ26の通過する分解ガスの温度を十分に低下させることができる。
【0033】
流量調整バルブ26は、開度調整によって、流量調整バルブ26を通過する流体の流量を調整(つまり、流路抵抗を調整)するバルブである。オリフィス27は、反応器2と第1分解ガス熱交換器HEX1との間の分解ガス導出ライン12の分岐部分23から分岐した燃料ライン15に配置され、燃料ライン15の流路断面積を縮小する固定絞りである。
【0034】
この構成により、流量調整バルブ26が分岐部分23よりも下流側の分解ガス導出ライン12の流路抵抗を増減することによって、分岐部分23における分解ガス導出ライン12と燃料ライン15との分解ガスの分岐比が調整される。つまり、流量調整バルブ26の開度に応じて、燃料ライン15から燃焼器3へ燃料として供給する分解ガスの流量を制御することが可能である。
【0035】
流量調整バルブ26は、制御部5により、反応器2または分解ガスの温度に基づいて制御される。流量調整バルブ26は、例えば、温度が規定値よりも低下した場合には開度を下げるように制御され、その結果、燃料ライン15への分解ガスの供給量を増やし、燃焼器3の生成熱量を増大(反応器2の温度を上昇)させる。流量調整バルブ26は、例えば、温度が規定値よりも上昇した場合には開度を上げるように制御され、その結果、燃料ライン15への分解ガスの供給量を減らし、燃焼器3の生成熱量を減少(反応器2の温度を低下)させる。これにより、反応器2内が適切な反応温度に維持される。
【0036】
<始動用機器>
本実施形態のアンモニア分解ガス発生装置1は、上記の通り、反応器2で生成された分解ガスの一部を燃焼器3で燃焼させてアンモニアガスの分解反応に用いる熱エネルギーを得る。そのため、通常、分解ガスの生成前には、分解ガスの燃焼による熱エネルギー供給が行えない。
【0037】
そこで、アンモニア分解ガス発生装置1は、分解ガスの生成前に、反応器2を加熱する補助加熱部4をさらに備える。補助加熱部4は、分解ガスを燃焼させるバーナー部3aとは別個に設けられた、加熱源である。
【0038】
図1では、補助加熱部4は、ブロワ4aと、ブロワ4aから送られるガスを加熱する電気ヒータ4bとを含む。ブロワ4aが送り出すガスは、本実施形態では空気である。ブロワ4aが送り出すガスは、熱媒体として利用可能であればよく、窒素ガスなどの不活性ガスでもよい。ブロワ4aの吐出口が、電気ヒータ4bを介して燃焼器3に接続されている。ブロワ4aは、分解ガスの生成前に、燃焼器3に向けて空気を供給する。電気ヒータ4bは、燃焼器3がバーナー部3aにより分解ガスを燃焼させた場合と同等の熱エネルギーをガスに付与して、温度上昇させたガス(以下、加熱ガスと呼ぶ)を燃焼器3へ供給する。これにより、燃焼器3は、分解ガスの生成前に、補助加熱部4から供給された加熱ガスにより、反応器2を反応温度に加熱する。
【0039】
加熱ガスは、分解ガスの燃焼排ガスと同じ経路で、燃焼器3から排ガス導出ライン14へ送り出される。補助加熱部4は、燃焼器3を通過した加熱ガスを、第2排ガス熱交換器HEX4と、第1排ガス熱交換器HEX2とに、順番に供給した後、排ガス出口25へ送り出す。この結果、分解ガスの生成前の始動時において、第2排ガス熱交換器HEX4および第1排ガス熱交換器HEX2が、分解ガスの生成中の定常運転時と同等の温度(温度Tc1、温度Tc2に相当する温度)まで予熱される。
【0040】
さらに、本実施形態では、アンモニア分解ガス発生装置1は、分解ガス熱交換器(HEX1)より上流のアンモニアガス導入ライン11に準備用ガスを供給する準備用ガスライン16をさらに備える。準備用ガスライン16は、一端が準備用ガス供給部28に接続し、他端がアンモニアガス導入ライン11のうち、アンモニア供給部21と第1分解ガス熱交換器HEX1との間に接続している。
【0041】
準備用ガスは、本実施形態では空気である。準備用ガスは、熱媒体として利用可能であればよく、窒素ガスなどの不活性ガスでもよい。準備用ガス供給部28は、例えば、空気を送り出すブロワを有する。
【0042】
これにより、アンモニア分解ガス発生装置1は、分解ガスの生成前に、アンモニアガス導入ライン11を通じて、準備用ガスを反応器2まで送り出す。さらに、アンモニア分解ガス発生装置1は、反応器2を通過した準備用ガスを、分解ガス導出ライン12を通じて分解ガス出口22まで送り出す。
【0043】
この結果、分解ガスの生成前の始動時には、第1排ガス熱交換器HEX2および第2排ガス熱交換器HEX4において、加熱ガスと、反応器2への導入前の準備用ガスとで熱交換が行われる。さらに、第1分解ガス熱交換器HEX1および第2分解ガス熱交換器HEX3において、反応器2を通過した後の高温の準備用ガスと、反応器2へ供給される前の低温の準備用ガスとで熱交換が行われる。また、第3分解ガス熱交換器HEX5が、反応器2を通過した後の高温の準備用ガスによって予熱される。
【0044】
このように、アンモニア分解ガス発生装置1は、分解ガスの生成前に、アンモニアガス導入ライン11に準備用ガスの供給および補助加熱部4を動作させる。アンモニア分解ガス発生装置1は、反応器2、燃焼器3および各熱交換器(HEX1からHEX5)の温度が安定するまで、補助加熱部4による加熱ガスの供給と、準備用ガスライン16からの準備用ガスの供給とを継続する。これにより、アンモニアガスの導入開始の時点で、各部の温度を、予め分解ガスの生成中の動作温度まで上昇させておくことが可能である。
【0045】
<アンモニア分解ガス発生装置の動作>
次に、アンモニア分解ガス発生装置1の動作について説明する。
【0046】
まず、準備工程において、制御部5は、補助加熱部4により燃焼器3へ加熱ガス(空気)を供給する。また、制御部5は、準備用ガス供給部28により準備用ガス(空気)をアンモニアガス導入ライン11に供給する。制御部5は、図示しない温度センサの検出値を監視し、反応器2、燃焼器3および各熱交換器(HEX1からHEX5)の温度を、分解ガスの生成中の動作温度まで上昇させる。制御部5は、反応器2、燃焼器3および各熱交換器(HEX1からHEX5)の温度が所定値に到達するまで、補助加熱部4および準備用ガス供給部28の動作を継続させる。
【0047】
次に、分解ガス生成工程において、制御部5は、アンモニアガス導入ライン11への準備用ガス(空気)の供給を停止し、アンモニア供給部21によりアンモニアガス導入ライン11へアンモニアガスを供給する。また、制御部5は、助燃ガス供給部24により助燃ガスライン13へ助燃ガス(空気)を供給する。アンモニアガスは、第1分解ガス熱交換器HEX1、第1排ガス熱交換器HEX2、第2分解ガス熱交換器HEX3および第2排ガス熱交換器HEX4で順番に加熱(予熱)され、反応器2に導入される。反応器2は、加熱ガスが供給された燃焼器3によって反応温度に維持された状態で、触媒反応によってアンモニアガスを分解して分解ガスを生成する。
【0048】
反応器2で生成された分解ガスは、分解ガス導出ライン12を通って分解ガス出口22へ到達する過程で、第2分解ガス熱交換器HEX3、第3分解ガス熱交換器HEX5および第1分解ガス熱交換器HEX1で順番に放熱し、アンモニアガスおよび助燃ガス(空気)を予熱する。また、反応器2で生成された分解ガスの一部が、分解ガス導出ライン12から燃料ライン15を通じて燃焼器3へ供給される。
【0049】
燃焼器3は、燃料ライン15から受け入れた分解ガス中の水素と、助燃ガスライン13から受け入れた助燃ガスとの混合ガスを、バーナー部3aにより燃焼させる。燃焼器3は、分解ガスの燃焼により発生した熱によって、反応器2を反応温度に維持する。制御部5は、分解ガスの燃焼が開始されると、補助加熱部4による燃焼器3への加熱ガスの供給を停止する。また、制御部5は、反応器2または分解ガスの温度に基づき流量調整バルブ26の開度を制御することによって、燃焼器3へ供給する分解ガスの流量を調整する。
【0050】
分解ガスの燃焼によって発生した燃焼排ガスは、燃焼器3から排ガス導出ライン14を通って排ガス出口25へ到達する過程で、第2排ガス熱交換器HEX4および第1排ガス熱交換器HEX2で順番に放熱し、アンモニアガスを予熱する。
【0051】
このようにして、アンモニア分解ガス発生装置1による分解ガスの生成が行われる。
【0052】
<効果>
以上説明したように、実施形態において、アンモニア分解ガス発生装置1は、触媒を含み、反応温度下でアンモニアガスを分解して分解ガスを生成する反応器2と、反応器2において生成された分解ガスの一部を燃焼させて反応器2を反応温度に加熱する燃焼器3と、を備える。
【0053】
実施形態によれば、アンモニアガスの分解に必要な熱エネルギー供給に、アンモニアガスを分解して生成した分解ガスの燃焼熱を利用するので、アンモニアガスの分解中に熱エネルギー供給のために炭素系エネルギー(電力、化石燃料の燃焼など)を消費することがない。そのため、アンモニア分解ガスの生成における炭素系エネルギー消費を低減することができる。
【0054】
実施形態によれば、分解ガス熱交換器(HEX1、HEX3)により、反応器2において生成された分解ガスを反応器2に導入する前のアンモニアガスと熱交換し、排ガス熱交換器(HEX2、HEX4)により、燃焼器3から排出される燃焼排ガスをアンモニアガスと熱交換する。アンモニアガスを予熱できるので、燃焼器3から反応器2に供給する熱エネルギー量を低減できる。また、例えば反応器2からの分解ガスを外部供給用の温度まで冷却するために冷却機構を用いる場合と比べて、熱の利用効率を向上でき、アンモニアの高効率な分解が可能となる。さらに、実施形態では、アンモニアガス導入ライン11に、それぞれ複数の分解ガス熱交換器(HEX1、HEX3)および排ガス熱交換器(HEX2、HEX4)が配置されるので、熱の利用効率がさらに向上する。
【0055】
また、実施形態によれば、分岐部分23よりも下流側の分解ガス導出ライン12には流量調整バルブ26が配置され、燃料ライン15にはオリフィス27が配置される。これにより、流量調整バルブ26の開度調整によって燃料ライン15に供給する分解ガスの流量(分岐比)を調整できる。流量調整バルブ26を分解ガス熱交換器(HEX1、HEX3、HEX5)よりも下流側に配置することで、流量調整バルブ26を温度低下した分解ガスと接触させることができ、高温による流量調整バルブ26の劣化を防止できる。さらに、実施形態では、流量調整バルブ26は、反応器2または分解ガスの温度に基づいて制御される。これにより、反応器2において生成された分解ガスを燃焼させて反応器2を加熱する構成においても、反応器2を適正温度に維持できる。
【0056】
また、実施形態において、アンモニア分解ガス発生装置1は、分解ガスの生成前に、反応器2を加熱する補助加熱部4を備えるので、分解ガスの生成開始時に限り、補助加熱部4によってアンモニアガスの分解に必要な熱エネルギーを反応器2に供給できる。そのため、炭素系エネルギー消費を極力低減できる。実施形態によれば、補助加熱部4は、ブロワ4aと、ブロワ4aから送られるガスを加熱する電気ヒータ4bとを含む。これにより、例えば燃焼器3内にヒータを設置する場合と異なり、分解ガスの一部を燃焼する定常運転中にヒータが高温に曝されることがないため好ましい。
【0057】
また、実施形態によれば、分解ガスの生成前に、アンモニアガス導入ライン11に準備用ガスの供給および補助加熱部4を動作させる。分解ガスの生成前の準備工程で、分解ガス熱交換器(HEX1、HEX3、HEX5)および排ガス熱交換器(HEX2、HEX4)を昇温できる。アンモニアガスの導入を開始する際に、アンモニア分解ガス発生装置1の温度分布が不安定な過渡状態が発生しないので、分解ガスの生成開始時点から分解ガスの品質を安定させることができる。
【0058】
また、実施形態によれば、アンモニアガス導入ライン11には、上流側から下流側に向かって、第1分解ガス熱交換器HEX1、第1排ガス熱交換器HEX2、第2分解ガス熱交換器HEX3および第2排ガス熱交換器HEX4が順に配置される。各熱交換器において、低温側のアンモニアガスの温度と、高温側のガス(分解ガスまたは燃焼排ガス)の温度差を小さくして段階的に加熱できる。そのため、熱交換効率を効果的に向上させることができる。また、分解ガス導出ライン12には、上流側から下流側に向かって、第2分解ガス熱交換器HEX3、第3分解ガス熱交換器HEX5および第1分解ガス熱交換器HEX1が順に配置される。これにより、分解ガスの熱の利用効率を効果的に向上させることができる。
【0059】
<変形例>
実施形態では、3つの分解ガス熱交換器(HEX1、HEX3、HEX5)と2つの排ガス熱交換器(HEX2、HEX4)とを設けた例を示したが、分解ガス熱交換器と排ガス熱交換器とは、1つでも複数でもよい。また、分解ガス熱交換器と排ガス熱交換器との一方又は両方を設けなくてもよい。
【0060】
実施形態では、補助加熱部4がブロワ4aと電気ヒータ4bとを含む例を示したが、これに代えて、補助加熱部4が燃焼器3に始動用燃料を供給する始動用供給ラインを含んでもよい。始動用燃料は、例えばLNG(液化天然ガス)などでもよい。また、補助加熱部4が予め準備された始動用の水素ガスを燃焼器3に供給してもよい。
【0061】
実施形態では、準備用ガスライン16を設けた例を示したが、準備用ガスライン16を設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…アンモニア分解ガス発生装置、2…反応器、3a…バーナー部、3…燃焼器、4…補助加熱部、4a…ブロワ、4b…電気ヒータ、5…制御部、11…アンモニアガス導入ライン、12…分解ガス導出ライン、13…助燃ガスライン、14…排ガス導出ライン、15…燃料ライン、16…準備用ガスライン、21…アンモニア供給部、22…分解ガス出口、23…分岐部分、24…助燃ガス供給部、25…排ガス出口、26…流量調整バルブ、27…オリフィス、28…準備用ガス供給部、HEX1…第1分解ガス熱交換器(分解ガス熱交換器)、HEX2…第1排ガス熱交換器(排ガス熱交換器)、HEX3…第2分解ガス熱交換器(分解ガス熱交換器)、HEX4…第2排ガス熱交換器(排ガス熱交換器)、HEX5…第3分解ガス熱交換器(分解ガス熱交換器)。
図1