(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165502
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】アンモニア分解ガス発生装置
(51)【国際特許分類】
C01B 3/04 20060101AFI20241121BHJP
B01J 23/46 20060101ALI20241121BHJP
B01J 23/755 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C01B3/04 B
B01J23/46 301M
B01J23/755 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081757
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安井 賢志
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA04
4G169BB02
4G169BC68
4G169BC70
4G169CB81
(57)【要約】
【課題】アンモニア分解ガス発生装置において、ガス設備を複雑化させずにアンモニアのリークを抑制すること。
【解決手段】アンモニア分解ガス発生装置1は、触媒を含み、反応温度下でアンモニアガスを分解して分解ガスを生成する反応器2と、反応器2に導入されるアンモニアガスが流れるアンモニアガス導入ライン3と、反応器2において生成された分解ガスが流れる分解ガス導出ライン4と、アンモニアガスの分解停止時に、アンモニアガス導入ライン3に置換ガスとして水蒸気を供給する蒸気供給部5と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒を含み、反応温度下でアンモニアガスを分解して分解ガスを生成する反応器と、
前記反応器に導入される前記アンモニアガスが流れるアンモニアガス導入ラインと、
前記反応器において生成された前記分解ガスが流れる分解ガス導出ラインと、
前記アンモニアガスの分解停止時に、前記アンモニアガス導入ラインに置換ガスとして水蒸気を供給する蒸気供給部と、を備える、
アンモニア分解ガス発生装置。
【請求項2】
前記分解ガスを前記反応器に導入される前の前記アンモニアガスと熱交換させる分解ガス熱交換器をさらに備え、
前記蒸気供給部は、前記分解ガス熱交換器を通過した前記分解ガスの熱により水蒸気を生成する、
請求項1に記載のアンモニア分解ガス発生装置。
【請求項3】
前記アンモニアガス導入ラインを開閉する第1バルブと、
前記分解ガス導出ラインを開閉する第2バルブと、をさらに備え、
前記第1バルブおよび前記第2バルブは、前記蒸気供給部による水蒸気置換後に、開弁状態から閉弁状態に切り替わる、
請求項1に記載のアンモニア分解ガス発生装置。
【請求項4】
前記分解ガス導出ラインに設けられ、アンモニアを検知するアンモニアセンサをさらに備える、
請求項1に記載のアンモニア分解ガス発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、アンモニア分解ガス発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アンモニアは、水素キャリアや、カーボンフリーな燃料としての用途が提案されている。AXガスは、アンモニアを熱分解によって生成される水素:窒素=1:3の組成のガスである。AXガスは、金属表面処理ガスとして用いられることが知られているが、水素ガス利用設備、水素ガス利用機器において燃料として利用されうる。
【0003】
特許文献1には、触媒が収容された改質器内で、ヒータによりアンモニアガスを900℃に加熱することで、水素と窒素を主成分とする改質ガスに分解する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンモニアガスの分解を停止した際に、装置内に存在するアンモニアは分解されずに残留する。アンモニアは人体に毒性を有するため、残留したアンモニアの装置外へのリークを抑制する必要がある。
【0006】
残留したアンモニアのリークを抑制する手段としては、例えば装置内のガス流通空間を置換ガス(窒素ガスや空気など)で置換することが考えられるが、置換ガスの貯留および供給に高圧ボンベを用いるなど、ガス設備が複雑になるという課題がある。アンモニア分解ガス発生装置において、ガス設備を複雑化させずにアンモニアのリークを抑制することが望まれる。
【0007】
本明細書で開示する技術は、アンモニア分解ガス発生装置において、ガス設備を複雑化させずにアンモニアのリークを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書は、アンモニア分解ガス発生装置を開示する。アンモニア分解ガス発生装置は、触媒を含み、反応温度下でアンモニアガスを分解して分解ガスを生成する反応器と、反応器に導入されるアンモニアガスが流れるアンモニアガス導入ラインと、反応器において生成された分解ガスが流れる分解ガス導出ラインと、アンモニアガスの分解停止時に、アンモニアガス導入ラインに置換ガスとして水蒸気を供給する蒸気供給部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本明細書で開示する技術によれば、アンモニア分解ガス発生装置において、ガス設備を複雑化させずにアンモニアのリークを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施形態に係るアンモニア分解ガス発生装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0012】
<アンモニア分解ガス発生装置の構成>
図1は、実施形態に係るアンモニア分解ガス発生装置1を模式的に示す図である。アンモニア分解ガス発生装置1は、アンモニアガス(NH
3)を熱分解してアンモニア分解ガス(AXガス、以下、単に「分解ガス」という)を生成する。分解ガスは、水素(H
2)および窒素(N
2)を主成分とする混合ガスである。アンモニア分解ガス発生装置1は、生成した分解ガスを分解ガス出口41から導出する。分解ガス出口41から導出される分解ガスは、例えば水素ガス利用設備、水素ガス利用機器において燃料として利用されうる。
【0013】
アンモニア分解ガス発生装置1は、反応器2と、アンモニアガス導入ライン3と、分解ガス導出ライン4と、蒸気供給部5と、を備える。また、アンモニア分解ガス発生装置1は、分解ガス熱交換器(HEX)6、第1バルブ7、第2バルブ8およびアンモニアセンサ9をさらに備える。アンモニア分解ガス発生装置1は、制御部10により制御される。制御部10は、コンピュータシステムを含む。
【0014】
反応器2は、触媒を含み、反応温度下でアンモニアガスを分解して分解ガスを生成する。反応器2は、アンモニアガスの分解を促進する触媒を収容した反応容器である。触媒の種類は、特に限定されないが、例えばルテニウム(Ru)系、ニッケル(Ni)系など触媒が用いられる。反応温度は、アンモニアガスの分解反応が進行する温度であれば特に限定されない。一例として、反応温度は、700℃以上1000℃以下の範囲の所定温度でありうる。
【0015】
反応器2は、アンモニアガス導入ライン3および分解ガス導出ライン4とそれぞれ接続されている。反応器2は、アンモニアガス導入ライン3からアンモニアガスを受け入れ、触媒反応により生成した分解ガスを分解ガス導出ライン4へ送り出す。
【0016】
アンモニア分解ガス発生装置1は、反応器2を反応温度に加熱するヒータ21を備える。ヒータ21は、反応器2と熱的に接続されている(つまり、熱伝達可能である)。ヒータ21の構成は特に限定されないが、ヒータ21は、例えば電気ヒータである。ヒータ21は、燃料を燃焼させる燃焼器でもよい。ヒータ21が燃焼器の場合、反応器2において生成された分解ガス(つまり、水素ガス)の一部を燃料として用いてもよい。
【0017】
アンモニアガス導入ライン3は、アンモニア供給部31と反応器2とを接続し、反応器2に導入されるアンモニアガスが流れるガス流路である。分解ガス導出ライン4は、反応器2と分解ガス出口41とを接続し、反応器2において生成された分解ガスが流れるガス流路である。
【0018】
図1の例では、アンモニア供給部31は、液体アンモニアを貯留し、液体アンモニアを気化してアンモニアガス導入ライン3に供給する。アンモニア分解ガス発生装置1は、アンモニアガス導入ライン3に供給される低温のアンモニアガスを反応器2に導入される前に予熱するヒータ32をさらに備える。ヒータ32の構成は特に限定されないが、ヒータ32は、例えば電気ヒータである。ヒータ32は、アンモニアガス導入ライン3において、アンモニア供給部31と分解ガス熱交換器6との間に設けられている。アンモニア供給部31がアンモニアガスを貯留する場合などアンモニアガスの供給温度が高い場合、ヒータ32を設けなくてもよい。
【0019】
分解ガス熱交換器6は、分解ガスを、反応器2に導入される前のアンモニアガスと熱交換させる。分解ガス熱交換器6は、アンモニアガス導入ライン3においてアンモニア供給部31と反応器2との間に配置され、分解ガス導出ライン4において反応器2と蒸気供給部5との間に配置されている。これにより、分解ガス熱交換器6は、反応温度に加熱されて反応器2から導出された高温の分解ガスの熱により、アンモニアガスを予熱する。ヒータ32と分解ガス熱交換器6との2段階でアンモニアガスを予熱することにより、反応器2に導入されるアンモニアガスを効果的に昇温させることができる。
【0020】
蒸気供給部5は、アンモニアガスの分解停止時に、アンモニアガス導入ライン3に置換ガスとして水蒸気を供給する。なお、蒸気供給部5は、アンモニアガスの分解時には、水蒸気供給を行わない。蒸気供給部5は、水を蒸発(気化)させることにより水蒸気を生成する気化器51と、気化器51に水を供給する水供給部52と、を含む。
【0021】
気化器51は、水と高温熱源との熱交換により水蒸気を生成する熱交換器である。気化器51は、分解ガス導出ライン4を流通する分解ガスを、高温熱源として受け入れる高温側流路を有する。気化器51は、高温側流路の入口が分解ガス熱交換器6と連通し、出口が第2バルブ8に連通している。気化器51は、水供給部52からの水を受け入れる低温側流路を有する。気化器51は、低温側流路の入口が水供給部52と連通し、出口が蒸気供給ライン53と連通している。蒸気供給ライン53は、蒸気供給部5(気化器51)とアンモニアガス導入ライン3の第1バルブ7とを接続する流路である。
【0022】
気化器51は、高温側流路を流れる分解ガスの熱により、低温側流路に供給された水を蒸発させる。なお、低温側流路に水が供給されない状態(アンモニアガスの分解中)では、気化器51は、高温側流路を流れる分解ガスの熱により予熱される。アンモニアガスの分解停止時にのみ気化器51に分解ガスが供給される構成と比べると、気化器51自体が予め高温に維持されるため、アンモニアガスの分解停止時に水が供給されたとき、速やかに水を気化することができる。
【0023】
このように、アンモニア分解ガス発生装置1は、反応器2から導出された分解ガスの熱を、アンモニアガス分解中はアンモニアガスの予熱(および気化器51の予熱)に利用し、アンモニアガス分解停止時には水蒸気の生成に利用する。第1バルブ7と第2バルブ8との間の領域(反応器2、分解ガス熱交換器6および気化器51を含む領域)を、断熱材54で覆ってもよい。断熱材54は、ヒータ21や反応器2から放出される熱の通過を抑制することにより、熱を閉じ込める。閉じ込められた熱は、気化器51において水蒸気の生成に利用される。これにより、蒸気供給部5は、アンモニアガスの分解停止時に、装置内に残る余熱を利用して必要量の水蒸気を生成できる。なお、蒸気供給部5は、水蒸気を生成するための熱源として電気ヒータや燃焼器などを備えていてもよい。
【0024】
第1バルブ7は、アンモニアガス導入ライン3を開閉する。
図1の例では、第1バルブ7は三方弁であり、アンモニア供給部31と、ヒータ32と、蒸気供給部5と、に接続している。第1バルブ7は、アンモニア供給部31とヒータ32とを接続(蒸気供給部5側を遮断)する第1開弁状態と、蒸気供給部5とヒータ32とを接続(アンモニア供給部31側を遮断)する第2開弁状態と、アンモニア供給部31とヒータ32と蒸気供給部5とを相互に遮断する閉弁状態と、に切替可能である。第1開弁状態ではアンモニアガスをアンモニアガス導入ライン3に導入でき、第2開弁状態では水蒸気をアンモニアガス導入ライン3に導入できる。
【0025】
第2バルブ8は、分解ガス導出ライン4を開閉する。第2バルブ8は、蒸気供給部5(気化器51)と分解ガス出口41との間に配置されている。第2バルブ8は、分解ガス導出ライン4と分解ガス出口41との間を接続する開弁状態と、分解ガス導出ライン4と分解ガス出口41との間を遮断する閉弁状態と、に切り替え可能である。開弁状態では分解ガス出口41からガスを導出でき、閉弁状態では分解ガス導出ライン4からガスが排出されないように分解ガス導出ライン4の下流側が遮断される。
【0026】
アンモニアセンサ9は、分解ガス導出ライン4に設けられ、アンモニアを検知する。アンモニアセンサ9は、第2バルブ8と分解ガス出口41との間に配置されている。アンモニアセンサ9は、アンモニア濃度に応じた検出値を出力する。アンモニアセンサ9の検出データは、制御部10に送信される。
【0027】
制御部10は、アンモニア分解ガス発生装置1の全体の制御を行う。例えば、制御部10は、水供給部52による水の供給の開始および停止を切り替える。制御部10は、ヒータ21およびヒータ32による加熱開始および停止の制御を行う。制御部10は、第1バルブ7および第2バルブ8を制御する。制御部10は、第1バルブ7の制御により、アンモニア供給部31からのアンモニアガスの供給の開始および停止を切り替える。第1バルブ7および第2バルブ8は、制御部10の制御の下、蒸気供給部5による水蒸気置換後に、開弁状態から閉弁状態に切り替わるように動作する。制御部10は、例えばアンモニアセンサ9の検出データに基づいて第1バルブ7および第2バルブ8の開閉状態を切り替える。
【0028】
<アンモニア分解ガス発生装置の動作>
次に、アンモニア分解ガス発生装置1の動作について説明する。
【0029】
まず、分解ガス生成工程において、制御部10は、第1バルブ7を第1開弁状態にして、アンモニア供給部31を分解ガス導出ライン4に接続する。制御部10は、第2バルブ8を開弁状態にして、分解ガス導出ライン4を分解ガス出口41に接続する。制御部10は、ヒータ21およびヒータ32を作動させるとともに、アンモニア供給部31によりアンモニアガス導入ライン3にアンモニアガスを導入する。
【0030】
アンモニアガスは、例えば、アンモニア供給部31の出口において-34℃でアンモニアガス導入ライン3に導入され、ヒータ32により25℃に昇温され、分解ガス熱交換器6により920℃に昇温されて、反応器2に導入される。反応器2は、ヒータ21により例えば反応温度930℃でアンモニアガスを分解する。反応器2から分解ガス導出ライン4へ導出された分解ガスは、例えば930℃で分解ガス熱交換器6に導入されてアンモニアガスを昇温する。
【0031】
分解ガス熱交換器6を通過した分解ガスは、気化器51を通過することで、気化器51を昇温する。分解ガス生成工程では、蒸気供給部5による水蒸気の供給は行われないので、水供給部52から気化器51に水は供給されない。そのため、気化器51は、分解ガス生成工程において、水蒸気を生成可能な温度に予熱される。分解ガスは、第2バルブ8、アンモニアセンサ9を通過して、分解ガス出口41へ送り出される。分解ガス出口41における分解ガス温度は、例えば198℃である。
【0032】
アンモニア分解ガス発生装置1を停止させる場合、制御部10は、分解ガス生成工程の後に置換工程を実行する。
【0033】
置換工程では、制御部10は、第1バルブ7を第2開弁状態にして、蒸気供給部5(蒸気供給ライン53)をアンモニアガス導入ライン3に接続し、アンモニア供給部31をアンモニアガス導入ライン3から遮断する。また、制御部10は、ヒータ21およびヒータ32を停止させる。この時点で、アンモニアガス導入ライン3の第1バルブ7から反応器2までの間にアンモニアガスが存在し、分解ガス導出ライン4には分解ガスが存在する。
【0034】
制御部10は、蒸気供給部5によりアンモニアガス導入ライン3への水蒸気の供給を開始する。すなわち、制御部10は、水供給部52により気化器51の低温側流路に水を供給する。気化器51は、供給された水を気化させて水蒸気を生成し、生成した水蒸気を置換ガスとして蒸気供給ライン53へ送り出す。なお、気化器51に供給する熱エネルギー量を確保するために、置換工程の少なくとも一部の期間でも、ヒータ21およびヒータ32の一方又は他方の動作を継続してもよい。
【0035】
水蒸気は、蒸気供給ライン53、第1バルブ7を介してアンモニアガス導入ライン3に導入される。水蒸気は、アンモニアガス導入ライン3に存在するアンモニアガスを下流側へ押し出す。その結果、水蒸気の導入を継続することで、アンモニアガスが反応器2を通過して分解ガス導出ライン4へ移動し、さらに分解ガス出口41まで送り出される。なお、分解ガス出口41から排出されるアンモニアガスは、例えば、バブリング処理によって回収される。バブリング処理は、水槽(図示せず)に貯留した水中にガスを放出する処理であり、アンモニアガスが水槽中の水に溶けることでアンモニアを水溶液として回収できる。
【0036】
アンモニアガスがアンモニアセンサ9を通過し、その後、置換ガスである水蒸気がアンモニアセンサ9を通過するので、アンモニアセンサ9の検出値が低下する。制御部10は、例えば、アンモニアセンサ9の検出値が所定の閾値よりも低下した場合に、蒸気供給部5からの水蒸気の供給を停止して置換工程を終了する。
【0037】
具体的には、制御部10は、水供給部52による気化器51への水の供給を停止する。制御部10は、第1バルブ7および第2バルブ8を閉弁状態に切り替える。これにより、第1バルブ7と第2バルブ8との間のアンモニアガス導入ライン3および分解ガス導出ライン4(反応器2、分解ガス熱交換器6および気化器51の各流路を含むガス流通空間)が外部から遮断されて閉鎖空間となる。
【0038】
閉鎖空間は、置換ガスである水蒸気が充填された状態となる。時間経過に伴って閉鎖空間内の温度が低下すると、水蒸気の一部が凝縮して閉鎖空間内の圧力が低下するため、閉鎖空間内が外部(大気圧)に対して負圧になる。そのため、置換しきれなかったアンモニアが閉鎖空間内に残留したとしても、閉鎖空間の外部へのリークが防止される。
【0039】
このようにして、アンモニア分解ガス発生装置1による分解ガスの生成および停止時の動作が行われる。
【0040】
<効果>
以上説明したように、実施形態において、アンモニア分解ガス発生装置1は、触媒を含み、反応温度下でアンモニアガスを分解して分解ガスを生成する反応器2と、反応器2に導入されるアンモニアガスが流れるアンモニアガス導入ライン3と、反応器2において生成された分解ガスが流れる分解ガス導出ライン4と、アンモニアガスの分解停止時に、アンモニアガス導入ライン3に置換ガスとして水蒸気を供給する蒸気供給部5と、を備える。
【0041】
これにより、アンモニアガスの分解停止時に水蒸気によってアンモニアガスを置換できる。水を蒸発させることで水蒸気を生成できるので、置換ガスの供給のために高圧ボンベや高圧ガスを扱う設備を設けずに済む。水蒸気による置換後、アンモニア分解ガス発生装置1の各部の温度が低下すると水蒸気が凝縮して大きく体積減少するので、仮に置換後にアンモニアが残留したとしても、アンモニア分解ガス発生装置1から外部へのアンモニアのリークを効果的に抑制できる。その結果、ガス設備を複雑化させずにアンモニアのリークを抑制することができる。
【0042】
実施形態によれば、蒸気供給部5は、分解ガス熱交換器6を通過した分解ガスの熱により水蒸気を生成する。これにより、反応器2で生成された分解ガスの熱を、アンモニアガスの予熱と水蒸気の生成とに利用できるので、エネルギー利用効率を向上させることができる。さらに、反応器2、分解ガス熱交換器6および蒸気供給部5(気化器51)を含む装置内を断熱材54で覆ってもよい。分解ガスの余熱だけでなく、反応器2の余熱などアンモニアガスの分解に伴う装置内の熱エネルギーを水蒸気生成に利用できる。その結果、水蒸気生成に要するエネルギー消費を低減できるか、エネルギー消費なしで(余熱のみで)水蒸気生成可能となり、エネルギー利用効率がさらに向上する。
【0043】
実施形態によれば、アンモニアガス導入ライン3を開閉する第1バルブ7と、分解ガス導出ライン4を開閉する第2バルブ8とが、蒸気供給部5による水蒸気置換後に、開弁状態から閉弁状態に切り替わる。これにより、水蒸気置換後に、第1バルブ7と第2バルブ8との間を、水蒸気で満たした閉鎖空間にできる。アンモニア分解ガス発生装置1の温度が低下すると閉鎖空間の内部が負圧になる。その結果、アンモニアが閉鎖空間内に残留しても、負圧によってアンモニアの外部へのリークを防ぐことができる。
【0044】
実施形態において、アンモニア分解ガス発生装置1は、アンモニアを検知するアンモニアセンサ9を備える。これにより、水蒸気置換によってガス流路(アンモニアガス導入ライン3および分解ガス導出ライン4)中のアンモニアが減少したことを確認できる。さらに、アンモニアセンサ9の検出値が閾値よりも低下した場合に水蒸気置換を停止して第1バルブ7と第2バルブ8とを閉弁状態に切り替えれば、アンモニア分解ガス発生装置1の内部の残留アンモニアを効果的に低減でき、より確実にアンモニアのリークを抑制できる。
【0045】
<変形例>
実施形態では、1つの分解ガス熱交換器6を設けた例を示したが、分解ガス熱交換器6を複数設けてもよく、その場合、アンモニア分解ガス発生装置1のエネルギー効率を向上させることができる。また、分解ガス熱交換器6を設けなくてもよい。
【0046】
実施形態では、第1バルブ7を三方弁とした例を示したが、第1バルブ7はアンモニアガス導入ライン3を開閉できればよく、二方弁でもよい。実施形態では、第1バルブ7および第2バルブ8を設けた例を示したが、第1バルブ7および第2バルブ8を設けなくてもよい。
【0047】
実施形態では、アンモニアセンサ9を設けた例を示したが、アンモニアではなく、置換ガスとしての水蒸気を検出してもよい。また、アンモニアセンサ9を設けなくてもよい。第1バルブ7および第2バルブ8の切替は、水蒸気供給開始からの経過時間等に基づいて行ってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…アンモニア分解ガス発生装置、2…反応器、3…アンモニアガス導入ライン、4…分解ガス導出ライン、5…蒸気供給部、6…分解ガス熱交換器、7…第1バルブ、8…第2バルブ、9…アンモニアセンサ、10…制御部、21…ヒータ、31…アンモニア供給部、32…ヒータ、41…分解ガス出口、51…気化器、52…水供給部、53…蒸気供給ライン、54…断熱材。