(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165505
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】建築用接合金具
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20241121BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
E04B1/58 508L
E04B1/26 G
E04B1/58 506L
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081761
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】596036692
【氏名又は名称】株式会社タツミ
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】山口 紳一郎
(72)【発明者】
【氏名】山田 塁史
(72)【発明者】
【氏名】高橋 透
【テーマコード(参考)】
2E125
【Fターム(参考)】
2E125AA04
2E125AA14
2E125AB12
2E125AC23
2E125AG03
2E125AG04
2E125AG12
2E125AG23
2E125BA41
2E125BB09
2E125BB13
2E125BB22
2E125BB33
2E125BB36
2E125BC02
2E125BD01
2E125BE02
2E125BE07
2E125BF03
2E125BF08
2E125CA32
2E125CA44
(57)【要約】
【課題】せん断力により各接合金具に回転しようとする力が生じて連結具6に2次応力が生じようとしても、係止具17に係止することにより上部と下部とで反対方向に生じる2次応力は相殺し2次応力が発生する連結具数を抑えることができ、且つ回転抑制による接合部剛性の低下が抑えられる画期的な建築用接合金具を提供すること。
【解決手段】横架材2に連結する連結用突設板部7の上縁部と下縁部とに、対向配置されることで係止具貫通間隙18が形成される係止用上縁部16と係止用下縁部19とを設け、この係止具貫通間隙18に係止具17を挿通して変形回動に対して係止させる構成とした建築用接合金具。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱または横架材と、端部を突合せて接合する横架材とにそれぞれ連結して双方を接合する建築用接合金具であって、
前記柱または前記横架材に固定具により固定する連結用基板部に、端部を突合せて接合する前記横架材の仕口部に配設され且つこの仕口部を介して挿通する連結具によりこの横架材に連結する連結用突設板部が突設されている構成とされているとともに、
この横架材の端部の前記仕口部に配設され前記連結具により連結される前記連結用突設板部には、前記連結具が貫通する孔状または切り欠き状の連結孔が一もしくは上下方向に複数設けられていて、
前記横架材の前記仕口部に配設される前記連結用突設板部の上縁部に、係止用上縁部が設けられていて、
上下に並設させる他の建築用接合金具の前記係止用上縁部と対向配置されることで前記連結具と同方向に貫通する係止具を貫通させる係止具貫通間隙が形成されることとなり、且つこの係止具貫通間隙に前記係止具を前記仕口部を介して貫通することで上下の建築用接合金具が前記係止具に係止することとなる係止用下縁部が、前記係止用上縁部と上下反対側である前記連結用突設板部の下縁部に設けられていて、
前記他の建築用接合金具を上下方向に並設させる際、前記他の建築用接合金具の前記係止用上縁部とこれと対向する前記係止用下縁部とで形成される前記係止具貫通間隙に前記係止具を前記仕口部を介して貫通することで、少なくとも前記係止用上縁部もしくは前記係止用下縁部が、上下方向に変形回動しようとする際前記係止具に係止する構成とされていることを特徴とする建築用接合金具。
【請求項2】
柱または横架材と、端部を突合せて接合する横架材とにそれぞれ連結して双方を接合する一対の建築用接合金具からなる建築用接合金具であって、
前記一対の建築用接合金具は双方ともに、前記柱または前記横架材に固定具により固定する連結用基板部に、端部を突合せて接合する前記横架材の仕口部に配設され且つこの仕口部を介して挿通する連結具によりこの横架材に連結する連結用突設板部が突設されている構成とされているとともに、
この横架材の端部の前記仕口部に配設され前記連結具により連結される前記連結用突設板部には、前記連結具が貫通する孔状または切り欠き状の連結孔が一もしくは上下方向に複数設けられていて、
前記一対の建築用接合金具の一方の建築用接合金具は、前記横架材の前記仕口部に配設される前記連結用突設板部の上縁部に、係止用上縁部が設けられていて、
前記一対の建築用金具の他方の建築用接合金具は、前記連結用突設板部の下縁部に、前記一方の建築用接合金具の上方に並設させた際前記一方の前記建築用接合金具の前記連結用突設板部の上縁部の前記係止用上縁部と対向配置されることで前記連結具と同方向に貫通する係止具を貫通させる係止具貫通間隙が形成されることとなり、且つこの係止具貫通間隙に前記係止具を前記仕口部を介して貫通することで上下の建築用接合金具が前記係止具に係止することとなる係止用下縁部が設けられていて、
前記一対の建築用接合金具を上下方向に並設させる際、前記一方の建築用接合金具の前記係止用上縁部とこれと対向する前記他方の建築用接合金具の前記係止用下縁部とで形成される前記係止具貫通間隙に前記係止具を前記仕口部を介して貫通することで、少なくとも前記係止用上縁部もしくは前記係止用下縁部が、上下方向に変形回動しようとする際前記係止具に係止する構成とされていることを特徴とする建築用接合金具。
【請求項3】
前記係止具は前記連結具と同一構成であることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の建築用接合金具。
【請求項4】
前記他の建築用接合金具の前記係止用上縁部と対向する前記係止用下縁部とで形成される前記係止具貫通間隙は、前記係止具の径とほぼ合致した孔径の孔状間隙であることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の建築用接合金具。
【請求項5】
前記他の建築用接合金具の前記係止用上縁部と対向する前記係止用下縁部とで形成される前記係止具貫通間隙が、前記連結用突設板部の中央部または突設先端部寄りに形成される位置に、前記係止用上縁部および前記係止用下縁部が設けられていることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の建築用接合金具。
【請求項6】
前記横架材の前記仕口部に配設される前記連結用突設板部の前記連結用基板部寄りである基部側上部に、上部係止部が設けられていて、
上下に並設させる前記他の建築用接合金具の前記上部係止部に係止する下部係止部が、前記上部係止部と上下反対側である前記連結用突設板部の前記連結用基板部寄りの基部側下部に設けられていて、
前記他の建築用接合金具を上下方向に並設させる際、前記他の建築用接合金具の前記上部係止部と前記下部係止部とが前記連結用突設部の突設方向に並設して、少なくとも前記上部係止部の一部と前記下部係止部の一部とが、上下方向に変形回動しようとする際係止する構成とされていることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の建築用接合金具。
【請求項7】
前記上部係止部および前記下部係止部は、前記連結用突設板部の前記連結用基板部よりの板縁部に一体形成されていることを特徴とする請求項6記載の建築用接合金具。
【請求項8】
前記上部係止部および前記下部係止部の一方は、前記連結用突設板部の前記連結用基板部よりの板縁部に一体突出形成されている係止凸部であり、他方は一体凹設形成されている係止凹部であることを特徴とする請求項6記載の建築用接合金具。
【請求項9】
前記連結用突設板部が前記仕口部に配設され且つこの仕口部を介して挿通する前記連結具により連結する前記横架材の上下方向寸法に応じて、上下方向に複数並設させる上下寸法に設定されていることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の建築用接合金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の柱または横架材(梁)に、端部を突合せて他方の横架材(梁)を接合する建築用接合金具であって、たとえば、一方の柱または梁の接合側表面に連結用基板部を固定具(貫通させる止着ボルト)により固定し、端部を突合せて接合する他方の梁の端部の仕口部に前記連結用基板部に突設した連結用突設板部を挿入配設し、これに仕口部を介して連結具(ドリフトピン)を貫通させて連結し、一方の柱または梁と他方の梁とを接合する建築用接合金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、一方の柱と他方の横架材(梁)とを接合する場合、建築用接合金具が多用されている。この接合金具は、たとえば金属製の連結用基板部に平面視T状またはU状あるいはコ状に1体または2体以上の連結用突設板部を突設した金具で、たとえばこの連結用基板部を一方の柱の接合側表面に固定具(柱を貫通させる止着ボルト)で固定し、この連結用基板部から突設している連結用突設板部を他方の梁の端部の仕口部の上下貫通スリットに挿入配設し、この連結用突設板部に設けた連結孔およびこれと連通状態の梁の端部の仕口部に設けた貫通孔に連結具(ドリフトピン)を貫通して連結し、一方の柱と他方の梁とを強固に接合する接合金具である。
【0003】
このような接合金具としては、上下寸法が異なる様々なサイズのものが製造されていて、梁成(梁の上下寸法)に合ったサイズの接合金具を選択し用いている。たとえば梁成が大中小と三種類ある梁を用いる場合は、接合金具もこれに応じて大中小と三種類用意し、梁成に応じてこれらから選択し使用している。
【0004】
したがって、従来、上下寸法が異なる様々なサイズの接合金具を製作し用意しなければならず、施工者はこれらを入手し梁成に応じて選択使用しなければならず厄介であった。
【0005】
一方、梁成に応じて小さなサイズの接合金具を上下に並設するように施工することが考えられる。すなわち、このように小さなサイズの接合金具だけとし梁成に応じて上下に並設使用すれば、様々なサイズの接合金具を用意しておく必要がなくなるし、また選択使用もなく取り付け違いも生じず施工も容易となると考えられる。
【0006】
しかしながら、このようにした場合、各接合金具の柱との接触面積が小さくなることから(接触面積が小さくなればなるほど)、上下方向からのせん断力が加わるとそれぞれの金具に、柱に固定した固定具を起点に回転しようとする力が生じ、この上下方向に変形回動しようとする力により各ドリフトピンに水平方向の2次応力が生じ、またこの2次応力が生じるドリフトピンの数が増えることとなるため、梁成に応じて用意された大きな接合金具を用いる場合よりもせん断耐力が低下する傾向にある。そのため接合金具をこのように分割しこれを並設する(小サイズの接合金具を上下に複数並設して使用する)ことはためらわれる。
【0007】
すなわち、上下に複数並設する小サイズの接合金具を用いると、梁成に応じて用意された大きな接合金具を用いる場合よりもせん断耐力が低いため、設計応力に応じたせん断耐力を持たせるためには、より多くの小サイズの接合金具を用いなければならず、またその上下に並設した数に見合う梁成としなければならないので、コストが格段に上がってしまう。
【0008】
梁成に応じて用意された大きいサイズの接合金具でも少なからず金具自体が回転し接合金具の高さ中心から最も離れた位置の連結具(ドリフトピン)に2次応力が発生する。これは接合金具が小さいほど2次応力の影響が大きくなる(接合金具が小さいほど回転しやすい)。この2次応力は接合金具に掛ける梁の端部方向に生じ、それが連結具を貫通させる梁貫通孔からの割裂を誘発するため、最大荷重の決定要因の一つとなる。
【0009】
そのため、梁成に応じて用意された接合金具で2次応力が発生する(影響が大きい)のは、最上部と最下部の2箇所であるが、上下に並設する小サイズの接合金具は一つ一つが回転し、且つ一つ一つで2次応力が発生するため梁貫通孔からの割裂を誘発させやすく、最大荷重が伸びず、よってせん断耐力が低い傾向となってしまう。
【0010】
また接合金具が回転しやすい大きさであるため、接合部の変形が進みやすく、つまり接合部の剛性が低くなるので、これもまたせん断耐力を低下させる一つの要因となる。
【0011】
これを防止するために、たとえば単に接合金具同士を上下に並設しつつ互いをボルトナットで連結させるように構成したのでは、コスト高となるだけでなく施工性は著しく劣り実用性に乏しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような現状に鑑み、前記問題を解決したもので、様々なサイズの金具を用意せずとも、梁成に応じて必要数の接合金具を並設することで接合強度を確保でき施工性に優れるとともに、せん断力により各接合金具に回転しようとする力が生じて2次応力が生じようとしても、係止具に係止することによりこれを相殺して2次応力が発生する連結具数を抑えることができ、且つ回転抑制による接合部剛性の低下が抑えられ、そのためせん断耐力の低下を抑えることができ、しかも簡易な構成で実現できるなど極めて実用性に優れた画期的な建築用接合金具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0014】
本発明は、柱1または横架材2と、端部を突合せて接合する横架材2とにそれぞれ連結して双方を接合する建築用接合金具であって、
前記柱1または前記横架材2に固定具3により固定する連結用基板部4に、端部を突合せて接合する前記横架材2の仕口部5に配設され且つこの仕口部5を介して挿通する連結具6によりこの横架材2に連結する連結用突設板部7が突設されている構成とされているとともに、
この横架材2の端部の前記仕口部5に配設され前記連結具6により連結される前記連結用突設板部7には、前記連結具6が貫通する孔状または切り欠き状の連結孔8が一もしくは上下方向に複数設けられていて、
前記横架材2の前記仕口部5に配設される前記連結用突設板部7の上縁部に、係止用上縁部16が設けられていて、
上下に並設させる他の建築用接合金具の前記係止用上縁部16と対向配置されることで前記連結具6と同方向に貫通する係止具17を貫通させる係止具貫通間隙18が形成されることとなり、且つこの係止具貫通間隙18に前記係止具17を前記仕口部5を介して貫通することで上下の建築用接合金具が前記係止具17に係止することとなる係止用下縁部19が、前記係止用上縁部16と上下反対側である前記連結用突設板部7の下縁部に設けられていて、
前記他の建築用接合金具を上下方向に並設させる際、前記他の建築用接合金具の前記係止用上縁部16とこれと対向する前記係止用下縁部19とで形成される前記係止具貫通間隙18に前記係止具17を前記仕口部5を介して貫通することで、少なくとも前記係止用上縁部16もしくは前記係止用下縁部19が、上下方向に変形回動しようとする際前記係止具17に係止する構成とされていることを特徴とする建築用接合金具に係るものである。
【0015】
また柱1または横架材2と、端部を突合せて接合する横架材2とにそれぞれ連結して双方を接合する一対の建築用接合金具からなる建築用接合金具であって、
前記一対の建築用接合金具は双方ともに、前記柱1または前記横架材2に固定具3により固定する連結用基板部4に、端部を突合せて接合する前記横架材2の仕口部5に配設され且つこの仕口部5を介して挿通する連結具6によりこの横架材2に連結する連結用突設板部7が突設されている構成とされているとともに、
この横架材2の端部の前記仕口部5に配設され前記連結具6により連結される前記連結用突設板部7には、前記連結具6が貫通する孔状または切り欠き状の連結孔8が一もしくは上下方向に複数設けられていて、
前記一対の建築用接合金具の一方の建築用接合金具は、前記横架材2の前記仕口部5に配設される前記連結用突設板部7の上縁部に、係止用上縁部16が設けられていて、
前記一対の建築用金具の他方の建築用接合金具は、前記連結用突設板部7の下縁部に、前記一方の建築用接合金具の上方に並設させた際前記一方の前記建築用接合金具の前記連結用突設板部7の上縁部の前記係止用上縁部16と対向配置されることで前記連結具6と同方向に貫通する係止具17を貫通させる係止具貫通間隙18が形成されることとなり、且つこの係止具貫通間隙18に前記係止具17を前記仕口部5を介して貫通することで上下の建築用接合金具が前記係止具17に係止することとなる係止用下縁部19が設けられていて、
前記一対の建築用接合金具を上下方向に並設させる際、前記一方の建築用接合金具の前記係止用上縁部16とこれと対向する前記他方の建築用接合金具の前記係止用下縁部19とで形成される前記係止具貫通間隙18に前記係止具17を前記仕口部5を介して貫通することで、少なくとも前記係止用上縁部16もしくは前記係止用下縁部19が、上下方向に変形回動しようとする際前記係止具17に係止する構成とされていることを特徴とする建築用接合金具に係るものである。
【0016】
また前記係止具17は前記連結具6と同一構成であることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の建築用接合金具に係るものである。
【0017】
また前記他の建築用接合金具の前記係止用上縁部16と対向する前記係止用下縁部19とで形成される前記係止具貫通間隙18は、前記係止具17の径とほぼ合致した孔径の孔状間隙であることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の建築用接合金具に係るものである。
【0018】
また前記他の建築用接合金具の前記係止用上縁部16と対向する前記係止用下縁部19とで形成される前記係止具貫通間隙18が、前記連結用突設板部7の中央部または突設先端部寄りに形成される位置に、前記係止用上縁部16および前記係止用下縁部19が設けられていることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の建築用接合金具に係るものである。
【0019】
また前記横架材2の前記仕口部5に配設される前記連結用突設板部7の前記連結用基板部4寄りである基部側上部に、上部係止部9が設けられていて、
上下に並設させる前記他の建築用接合金具の前記上部係止部9に係止する下部係止部10が、前記上部係止部9と上下反対側である前記連結用突設板部7の前記連結用基板部寄りの基部側下部に設けられていて、
前記他の建築用接合金具を上下方向に並設させる際、前記他の建築用接合金具の前記上部係止部9と前記下部係止部10とが前記連結用突設部7の突設方向に並設して、少なくとも前記上部係止部9の一部と前記下部係止部10の一部とが、上下方向に変形回動しようとする際係止する構成とされていることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の建築用接合金具に係るものである。
【0020】
また前記上部係止部9および前記下部係止部10は、前記連結用突設板部7の前記連結用基板部4よりの板縁部に一体形成されていることを特徴とする請求項6記載の建築用接合金具に係るものである。
【0021】
また前記上部係止部9および前記下部係止部10の一方は、前記連結用突設板部7の前記連結用基板部4よりの板縁部に一体突出形成されている係止凸部であり、他方は一体凹設形成されている係止凹部であることを特徴とする請求項6記載の建築用接合金具に係るものである。
【0022】
また前記連結用突設板部7が前記仕口部5に配設され且つこの仕口部5を介して挿通する前記連結具6により連結する前記横架材2の上下方向寸法に応じて、上下方向に複数並設させる上下寸法に設定されていることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の建築用接合金具に係るものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明は上述のように構成したから、様々なサイズの金具を用意せずとも、梁成に応じて必要数の接合金具を並設することで接合強度を確保でき施工性に優れるとともに、せん断力により各接合金具に回転しようとする力が生じて2次応力が生じようとしても、係止具に係止することによりこれを相殺して2次応力が発生する連結具数を抑えることができ、且つ回転抑制による接合部剛性の低下が抑えられ、そのためせん断耐力の低下を抑えることができ、しかも簡易な構成で実現できるなど極めて実用性に優れた画期的な建築用接合金具となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図5】実施例1の梁成に応じて上下に2体係止状態にして柱に並設状態に取り付けた状態の説明斜視図である。
【
図6】実施例1の梁成に応じて上下に2体係止状態にして柱に並設状態に取り付け、梁の仕口部に挿入した連結用突設板部を連結具で連結し、柱と梁とを接合した使用状態を示す説明側断面図である。
【
図7】実施例1の梁成に応じて上下に3体係止状態にして柱に並設状態に取り付け、梁の仕口部に挿入した連結用突設板部を連結具で連結し、柱と梁とを接合した使用状態を示す説明側断面図である。
【
図8】係止用上縁部を設けた建築用接合金具と係止用下縁部を設けた建築用接合金具とからなる一組の建築用接合金具に係る実施例2の斜視図である。
【
図9】実施例2の梁成に応じて上下に2体係止状態にして柱に並設状態に取り付けた状態の説明斜視図である。
【
図10】実施例2の梁成に応じて上下に2体係止状態にして柱に並設状態に取り付け、梁の仕口部に挿入した連結用突設板部を連結具で連結し、柱と梁とを接合した使用状態を示す説明側断面図である。
【
図11】上部係止部および下部係止部のない建築用接合金具に係る実施例3の斜視図である。
【
図12】実施例3の梁成に応じて上下に2体係止状態にして柱に並設状態に取り付けた状態の説明斜視図である。
【
図13】実施例1の係止具貫通間隙(1)と形状が異なる別実施例(2)、(3)を示す説明側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の最適な実施形態を図面に基づいて本発明の作用を示し簡単に説明する。
【0026】
一方の柱1または横架材2(梁)と、他方の横架材2(梁)とを接合する際、この一方の柱1または横架材2に、固定具3(たとえば貫通させる止着ボルト)により連結用基板部4を取り付け固定するとともに、端部を突合せて接合する他方の横架材2(梁)の仕口部5に連結用突設板部7を配設し連結具6(ドリフトピン)を挿通してこの他方の横架材2に連結用突設板部7を連結し両者を接合する。
【0027】
すなわち、本発明は、この横架材2の端部の前記仕口部5に配設し前記連結具6により連結する本接合金具の前記連結用突設板部7には、この連結具6が貫通する孔状または切り欠き状の連結孔8が一または複数設けられていて、前記横架材2の端部の仕口部5には、この連結孔8と連通する梁貫通孔13が設けられている構成とし、一方の柱1または横架材2(梁)の連結側表面に固定した連結用基板部4から突設している連結用突設板部7は、梁貫通孔13を介してこれと連通状態の連結孔8に連結具6(ドリフトピン)を挿通することで他方の横架材2の仕口部5に連結される構成としている。
【0028】
このような建築用接合金具において、本発明は、同一構成の建築用接合金具を上下に並設して使用する構成としてもよいし、異なる形状の建築用接合金具を上下に並設して使用する構成としてもよいが、並設した際に本発明では、連結用突設板部7の上縁部の係止用上縁部16と他の建築用接合金具の下縁部の係止用下縁部19とが対向配置されることで、前記連結具6と同方向に貫通する係止具17を貫通させる係止具貫通間隙18が形成される構成としている。たとえば同一構成の建築用接合金具を上下に並設する場合は、前記連結用突設板部7の上縁部に、係止用上縁部16を設けるとともに、上下に並設させる他の建築用接合金具のこの係止用上縁部16と対向配置される係止用下縁部19を、前記係止用上縁部16と上下反対側である前記連結用突設板部7の下縁部に設けた構成として、上下方向にこの接合金具を並設した際に、この下側の接合金具の係止用上縁部16と上側の接合金具の係止用下縁部19とが対向配置されることで、前記連結具6と同方向に貫通する係止具17を貫通させる係止具貫通間隙18が形成されることとなり、この係止具貫通間隙18に前記係止具17を前記仕口部5を介して貫通することで上下のこの接合金具がこの係止具17に係止することとなる構成としている。
【0029】
したがって、本発明は、梁成(端部を突き合わせる梁2の上下幅)に応じて前記他の本接合金具を上下方向に必要数並設させる場合、前記他の建築用接合金具の前記係止用上縁部16とこれと対向する前記係止用下縁部19とで形成される前記係止具貫通間隙18に前記係止具17を前記仕口部5を介して貫通することで、少なくとも前記係止用上縁部16もしくは前記係止用下縁部19が、上下方向にせん断力が加わり上下方向に変形回動しようとした際に前記係止具17に係止することとなるように取り付けことができることとなる。
【0030】
ゆえに、たとえ前記他方の横架材2(端部を突き合わせる梁2)に上部から下方へのせん断力が加わる場合や下部から上方にせん断力が加わる場合に、各接合金具の上下寸法が比較的小さいために各接合金具に、固定具3を起点として下方や上方に回転しようとする力が生じることで梁2の長さ方向(水平方向)に2次応力が生じようとしても、前記係止用上縁部16とこれと対向する前記係止用下縁部19とが(前記係止具貫通間隙18が)前記係止具17に係止することによりこれを受け止める(この回転しようとする力に対抗し、2次応力を相殺する)こととなる、すなわち変形回動しようとすることで接合金具の上部と下部とで反対方向に生じる2次応力が相殺される構成となるから、連結具6(たとえばドリフトピン)に生じようとする2次応力は抑えられて、回転しにくくなり結果せん断耐力が向上し、且つ接合部剛性の低下が抑制できるので、せん断耐力は低下しない接合となる。
【0031】
すなわち、上下寸法の異なる接合金具を梁成に応じて複数種用意しなくても、梁成に応じて柱1に比較的上下寸法が小さい本接合金具を必要数上下に並設して取り付けることで接合強度が確保でき、また施工性も向上することとなる。
【0032】
しかも本発明は、前述したように各接合金具の上下寸法が比較的小さいことから回転しようとする力が生じようとするがこれに対抗し上下で反対方向に生じる2次応力を相殺でき、そのため連結具6(ドリフトピン)に生じる前記2次応力を抑えることができ、またこの2次応力が生じる連結具6の数を減らすことができ、ゆえにせん断耐力も低下しにくく、またこれを簡易な構成で実現できる構成であるから、極めて実用性に優れた接合金具となるものである。
【実施例0033】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0034】
本実施例では、柱1と、これに端部を突合せ直交状態に接合する横架材2(梁)とを接合する建築用接合金具(梁受け接合金物)に本発明を適用したものであって、柱1の連結側表面に固定具3(この柱1の外側から柱貫通孔15を介して貫通させた止着ボルトを柱取付用貫通孔14に貫通しナット締めして固定する手段)により固定する連結用基板部4に、端部を突合せ直交状態に接合する前記横架材2(梁)の仕口部5(上下貫通スリット)に挿入配設し連結具6(ドリフトピン)を横方向から複数本打ち込み連結してこの横架材2に連結する連結用突設板部7を対向状態に一対突設した平面視U字状またはコ状の金属板製の建築用接合金具に構成している。
【0035】
すなわち、本実施例では、この横架材2の端部の前記仕口部5(上下貫通スリット)に挿入配設し前記連結具6(ドリフトピン)により連結する接合金具の一対の各連結用突設板部7には、この連結具6(ドリフトピン)が貫通する孔状および端部では切り欠き状の連結孔8を上下方向に複数設けた構成としている。
【0036】
またこの連結用基板部4に突設している一対の各連結用突設板部7に複数設けた前記連結孔8のすべてあるいはこれらから選択して、これと連通する仕口部5の梁貫通孔13を介してこの横架材2の長さ方向と直交する横方向から前記連結具6(ドリフトピン)を上下複数本挿通してこの横架材2に連結する構成としている。
【0037】
また本実施例の建築用接合金具は、前述したとおり平面視U状またはコ字状に構成されていて、前記連結用基板部4に対向状態にして一対の前記連結用突設板部7が一体形成されている構成であって、前記横架材2の上下方向寸法(梁成)に応じて、上下方向に複数(必要数)並設させる上下寸法(比較的小さなサイズ)に設定した構成としている。
【0038】
すなわち、梁成に応じてたとえば大中小と三種類の接合金具を用意せずとも、小さなサイズの接合金具を柱1の上下方向に必要数並設状態に取り付け固定する構成として、施工が容易となる上に、このように分割した金具としても接合強度が保持できる構成としている。
【0039】
そのため本実施例の建築用接合金具は、柱1に接触する面積が比較的小さなサイズとなるために、各接合金具に上下方向からせん断力が加わると、固定具3を起点にそれだけ大きな回転しようとする力が生じるおそれがあり、これにより特に先端部側の上下の連結具6(たとえばドリフトピン)に前述した大きな水平方向の2次応力が生じることとなるが、本実施例では、これを解決すべく、たとえば同一構成の建築用接合金具を上下に並設して使用する構成(実施例1、実施例3)としてもよいし、異なる形状の建築用接合金具を上下に並設して使用する構成(実施例2)としてもよいが、並設した際に、連結用突設板部7の上縁部の係止用上縁部16と他の建築用接合金具の下縁部の係止用下縁部19とが対向配置されることで、前記連結具6と同方向に貫通する係止具17を貫通させる係止具貫通間隙18が形成される構成とし、この係止具貫通間隙18に前記係止具17を前記仕口部5を介して貫通することで上下の建築用接合金具がこの係止具17に係止することとなる構成としている。
【0040】
すなわち同一構成の建築用接合金具を並設する場合の実施例1のように構成したり、係止用上縁部16を設けた建築用接合金具と係止用下縁部17を設けた建築用接合金具とからなる一組の建築用接合金具に係る実施例2のように構成して、前記2次応力に対抗し上下の接合金具で反対方向に生じる2次応力が相殺して、回転しにくくなり結果耐力を向上できるように構成している。具体的にはたとえば同一構成の接合金具を上下に並設する実施例1では、この一つの接合金具の前記連結用突設板部7の上縁部に、係止用上縁部16を設けるとともに、上下に並設させる他の建築用接合金具のこの係止用上縁部16と対向配置される係止用下縁部19を、前記係止用上縁部16と上下反対側である前記連結用突設板部7の下縁部に設けた構成として、上下方向にこの接合金具を並設した際に、この下側の接合金具の係止用上縁部16と上側の接合金具の係止用下縁部19とが対向配置されることで、前記連結具6と同方向に貫通する係止具17を貫通させる係止具貫通間隙18が形成されることとなり、この係止具貫通間隙18に前記係止具17を前記仕口部5を介して貫通することで上下の建築用接合金具がこの係止具17に係止することとなる構成としている。
【0041】
ゆえに、たとえ前記他方の横架材2(端部を突き合わせる梁2)に上部から下方へのせん断力が加わる場合や下部から上方にせん断力が加わる場合に、各接合金具の上下寸法が比較的小さいために各接合金具に、固定具3を起点として下方や上方に回転しようとする力が生じることで梁2の長さ方向(水平方向)に上下の接合金具で反対方向に2次応力が生じようとしても、前記係止用上縁部16とこれと対向する前記係止用下縁部19とが(前記係止具貫通間隙18が)前記係止具17に係止することによりこれを受け止める(この回転しようとする力に対抗し、2次応力を相殺する)こととなる、すなわち変形回動しようとすることで接合金具の上部と下部とで反対方向に生じる2次応力が相殺される構成となるから、連結具6(たとえばドリフトピン)に生じようとする2次応力は抑えられて、回転しにくくなり結果せん断耐力が向上し、且つ接合部剛性の低下が抑制でき、せん断耐力は低下しない接合となる構成としている。
【0042】
さらにいえば、梁成(端部を突き合わせる梁2の上下幅)に応じて前記他の接合金具を上下方向に必要数並設させる場合、前記他の建築用接合金具の前記係止用上縁部16とこれと対向する前記係止用下縁部19とで形成される前記係止具貫通間隙18に前記係止具17を前記仕口部5を介して貫通することで、少なくとも前記係止用上縁部16もしくは前記係止用下縁部19が前記係止具17に変形した際に係止状態となるように取り付ける構成とし、上下いずれの方向からのせん断力を受け回転しようとする力が生じ、水平方向に2次応力が生じようとしても、これに対抗し相殺して回転しにくくなり結果耐力が向上できる構造としている。
【0043】
またこのように同一構成の建築用接合金具を上下に並設して使用する構成としてもよいが、前述したように異なる形状の建築用接合金具を上下に並設して使用する構成(実施例2)としてもよく、少なくとも連結用突設板部7の上縁部に前記係止用上縁部16を設けた一方の建築用接合金具と、連結用突設板部7の下縁部に前記係止用下縁部19を設けた他方の建築用接合金具との一組からなる建築用接合金具に構成、すなわち上下に並設して使用することで前記係止具貫通間隙18が形成されることとなる一対の建築用接合金具からなる構成としてもよい。
【0044】
さらに実施例1,2では、前記連結用突設板部7の基部側の上下端部に係止部9、10を設けて、上下に本接合金具を並設する際にこの係止部により係止状態(かみ合い状態)に並設でき、回転しようとする力にさらに対抗できる構造としている。(この構造を有しない構成(実施例3)としてもよい)
【0045】
具体的には、本実施例では、この連結用突設板部7の前記連結用基板部4寄りである基部側上部に、上部係止部9を設けるとともに、上下に並設させる他の接合金具の前記上部係止部9に係止する下部係止部10を、前記上部係止部9と上下反対側である前記連結用突設板部7の前記連結用基板部4寄りの基部側下部に設けた構成としている。
【0046】
すなわち、他の接合金具を上下方向に並設させる際、他の接合金具の前記上部係止部9と、本接合金具の前記下部係止部10とが前記連結用突設部7の突設方向に並設して、前記上部係止部9の一部(たとえば係止凸部とした場合は前記連結用突設部7の先端部側外側面)と、前記下部係止部10の一部(たとえば係止凹部とした場合は前記連結用突設部7の先端部側内側面)とが突き合い、変形回動しようとした際に係止状態となるように構成している。
【0047】
また本実施例では、前記係止凸部をT字状の係止凸部とし、これが係合する係止凹部は逆T字状の係止凹部として、前記上部係止部9と前記下部係止部10とがかみ合い係合する形状に構成している。
【0048】
さらに説明すると、本実施例では、前記他の建築用接合金具の前記係止用上縁部16と対向する前記係止用下縁部19とで形成される前記係止具貫通間隙18は、前記係止具17の径とほぼ合致した孔径の孔状間隙となるように構成している。
【0049】
具体的には、前記連結用突設板部7の上縁部に、凹設縁を形成して前記係止用上縁部16を設け、下縁部にもこれと対向配置されることで孔状間隙が形成されることとなる凹設縁を形成して前記係止用下縁部19を設けた構成としている。
【0050】
なお、実施例1,2,3のように、前記係止用上縁部16と前記係止用下縁部19とで形成される前記係止具貫通間隙18が、前記係止具17とほぼ同径の丸孔状間隙となるように形成してもよいし、
図13に示す別例のように、角孔状間隙に形成してもよいし、また上縁部と下縁部とに対向配置されることとなる段差縁部を設けて前記係止用上縁部16および前記係止用下縁部19を設け、この左右に位置する段差縁部と上下の縁部とで囲まれる間隙が前記係止具貫通間隙18となるように構成してもよい。
【0051】
また本実施例では、前記係止具17を前記連結具6と同じ構成すなわち同じドリフトピンとしてもよいし、別構成(別形状)の挿通具としてもよく、また前記他の建築用接合金具の前記係止用上縁部16と対向する前記係止用下縁部19とで形成される前記係止具貫通間隙18が、前記連結用突設板部7の中央部または突設先端部寄りに形成されるように、前記係止用上縁部16および前記係止用下縁部19を設けた構成とし、連結具6とともに梁貫通孔13を介して同じドリフトピンである係止具17も貫通係止して各接合金具がこの係止具17に変形回動に際して係止する構成としている。
【0052】
また本実施例の前記上部係止部9および前記下部係止部10は、前記連結用突設板部7の前記連結用基板部4寄り位置の板縁部に一体形成した構成とし、さらに本実施例の前記上部係止部9は、板状のT字状の係止凸部として上縁部上方に一体突出形成した構成とし、前記下部係止部10は、上部係止部9に一部が係合する形状の係止凹部として下縁部に一体凹設形成した構成としている。
【0053】
すなわち、本実施例では、この各連結用突設板部7の連結用基板部4に近い基端部寄りの上縁部に前記上部係止部9として板状の係止凸部を一体突出形成し、これと上下反対の基端部寄りの下縁部に前記下部係止部10として切り欠き凹状の係止凹部を一体凹設形成し、この係止凸部と係止凹部とがかみ合い配置されることで、係止凸部および係止凹部の梁長さ方向の突き合い部側面同士(係止凸部の連結用突設板部7の先端部側外面と係止凹部の連結用突設板部7の先端部側内面)が係止状態となる構成としている。
【0054】
したがって、せん断力により本接合金具が下方へ回転しようとする力が働き変形しようとする際、前記係止用上縁部16とこれと対向する前記係止用下縁部19とが(前記係止具貫通間隙18が)前記係止具17に係止することにより、すなわち接合金具の上部で生じる2次応力と下部で生じる反対方向となる2次応力とが対抗し相殺して回転しにくくなり結果せん断耐力が向上するとともに、上部係止部9(係止凸部)が下部係止部10(係止凹部)による係止によっても受け止め、この変形しようとする力にさらに対抗し2次応力を相殺するように突き合い(かみ合い)係止状態となるため、各連結具6(ドリフトピン)に生じる2次応力が抑えられ、且つ接合金具の回転による接合部剛性の低下を抑制することとなることで、せん断耐力が向上する構成としている。
【0055】
ゆえに、梁2に上部から下方へのせん断力が加わった場合や下部から上方にせん断力(逆せん断力)が加わった場合でも、各接合金具に下方や上方に回転しようとする力が生じることで梁2の長さ方向に2次応力が生じようとしても、前記係止用上縁部17と前記係止用下縁部19とが(前記係止具貫通間隙18が)前記係止具17に係止することおよび前記上部係止部9と下部係止部10との係止によってもこれを受け止め、回転しようとする力に対抗し、二次応力が相殺されることで回転しにくくなり、連結具6に生じる2次応力は抑えられ、また2次応力が生じる連結具6の数が増加せずせん断耐力は低下しない接合構成となるものである。
【0056】
すなわち、上下寸法の異なる接合金具を梁成に応じて複数種用意しなくても、梁成に応じて柱1に比較的上下寸法が小さい本接合金具を必要数並設して取り付けることで、施工が容易となる上に、接合強度が確保できることとなり、しかも、前述したとおり、各接合金具の上下寸法が比較的小さいことからそれだけ大きな回転しようとする力が生じようとするが、係止具17に係止することなどによりこれを相殺して2次応力が発生する連結具数を抑えることができ、且つ回転抑制による接合部剛性の低下が抑えられ、そのためせん断耐力の低下を抑えることができることから、せん断耐力も低下しにくく、またこれを簡易な構成で実現できる構成となるなど極めて実用性に優れた接合金具となるものである。
【0057】
また本実施例では、このような係止具17を貫通させる係止具貫通間隙18や上部係止部9と下部係止部10による係止構造を、縁部の形状設定や一体突出形成した係止凸部と切り欠き状に一体凹設形成した係止凹部のかみ合い構造により実現した構成としたから、製作容易でコスト高とならず量産性に優れ、またかみ合わせて(係合するように)並設配置させるだけでよいから、施工性にも優れるなど極めて実用性に優れた構成となる。
【0058】
またこの係止具17と係止具貫通間隙18との係止構造は、中央部または突設端部寄りに設けたため、対抗強度が確保され、また上部係止部9と下部係止部10とのかみ合い係止構造は、連結用基板部4寄りに設けたため、変形変位が小さい位置での係止構造となるから、この係止状態が維持されやすい(この係止が変形しても外れにくい)構成となり、一層優れた構成となる。
【0059】
また本実施例では、連結用基板部4に、柱1の位置決め凹部11に係合する位置決め凸部12を設けて、本接合金具を容易に位置決め状態で並設でき、施工性に一層優れた構成としている。また柱1とはこの位置決め凸部12と固定具3との接合となることから1か所の固定具3止めであっても回り止め作用を有し、これにより梁2の上に乗ったときに梁2が横転しないので、作業者の転落防止機能を果たす。
【0060】
またこの位置決め凸部12の下方に複数設けた柱取付用貫通孔14を選択して固定具3の止着ボルトを貫通させる構成としていて、たとえば柱1の異なる2側面に2本の梁2を接合させる場合に、この2側面に本接合金具を固定具3で取り付けることとなるが、この際前記位置決め凸部12を位置決め凹部11に係合して柱1の所定位置に位置決めた状態に取り付けるとともに、この連結用基板部4のいずれかの柱取付用貫通孔14を選択して止着ボルトを貫通させ柱1に固定するように施工することで、この止着ボルトが交差干渉しないように容易に取り付けでき、一層施工性に優れた構成としている。
【0061】
また上部係止部9と下部係止部10の構成を予め係止連結できる構造とすれば、複数連結一体化した状態で、前述したとおり固定具3で柱1に取り付け固定でき一層施工性に優れることとなる。このように係止部の構成(係止構造)は適宜設計し得るものである。
【0062】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、請求項1記載の発明の実施例1のように同一構成の建築用接合金具を上下に複数並設する構成としてもよいし、請求項2記載の発明の実施例2のように係止用上縁部16を設けた建築用接合金具と係止用下縁部17を設けた建築用接合金具とからなる一組の建築用接合金具のように構成して上下に並設する構成としてもよいし、前記上部係止部9および下部係止部10による係止構造は実施例3のように設けなくてもよいなど、前記係止構造の形状位置を含め各構成要件の具体的構成は、適宜設計し得るものである。