(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165511
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】インバータ回路
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20241121BHJP
【FI】
H02M7/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081769
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】野村 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】秋山 直輝
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770DA03
5H770DA05
5H770DA41
5H770EA30
5H770HA02Y
5H770HA03Y
(57)【要約】
【課題】直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路の低コスト化を実現する。
【解決手段】インバータ回路は、スイッチ回路、駆動アーム数決定部、スイッチ制御回路を備える。スイッチ回路は、極性アームおよび複数の駆動アームを備える。駆動アーム数決定部は、出力電圧指令および給電先情報に基づいて、動作する駆動アームの数を決定する。スイッチ制御回路は、スイッチ回路が直流電源から印加される直流電圧を交流電圧に変換するように、駆動アーム数決定部により決定された数の駆動アームおよび極性アームを動作させると共に、複数の駆動アームのうちの他の駆動アームを停止する。各駆動アームを構成するスイッチの容量は、極性アームを構成するスイッチの容量よりも小さい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性アームおよび複数の駆動アームを備えるスイッチ回路と、
前記複数の駆動アームのうちで動作する駆動アームの数を決定する駆動アーム数決定部と、
前記スイッチ回路が直流電源から印加される直流電圧を交流電圧に変換するように、前記駆動アーム数決定部により決定された数の駆動アームおよび前記極性アームを動作させるとともに、前記複数の駆動アームのうちの他の駆動アームを停止するスイッチ制御回路と、を備え、
前記極性アームは、互いに直列に接続された、前記直流電源の正極側に電気的に接続される第1のスイッチおよび前記直流電源の負極側に電気的に接続される第2のスイッチから構成され、
各駆動アームは、互いに直列に接続された、前記直流電源の正極側に電気的に接続される第3のスイッチおよび前記直流電源の負極側に電気的に接続される第4のスイッチから構成され、
前記第3のスイッチおよび前記第4のスイッチの容量は、それぞれ前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチの容量よりも小さく、
前記複数の駆動アームのうちの2以上の駆動アームを動作させるときは、前記スイッチ制御回路は、前記2以上の駆動アームの各第3のスイッチおよび前記極性アームの第2のスイッチをオン状態に駆動して第1の方向に電流を流す第1の動作状態、及び、前記2以上の駆動アームの各第4のスイッチおよび前記極性アームの第1のスイッチをオン状態に駆動して前記第1の方向と反対の第2の方向に電流を流す第2の動作状態を交互に繰り返す
ことを特徴とするインバータ回路。
【請求項2】
前記駆動アーム数決定部は、当該インバータ回路が出力する交流電圧または当該インバータ回路に接続する負荷が要求する交流電圧を表す出力電圧指令、および、想定される負荷の種別を表す給電先情報に基づいて、動作する駆動アームの数を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載のインバータ回路。
【請求項3】
前記駆動アーム数決定部は、当該インバータ回路に接続する負荷に供給される電流に基づいて、動作する駆動アームの数を決定する
ことを特徴とする請求項1に記載のインバータ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路に係わる。
【背景技術】
【0002】
直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路は、様々な装置または設備において広く使用されている。例えば、自動車等の車両に搭載されるインバータ回路は、車載高圧バッテリから出力される直流電圧を所定の交流電圧に変換して出力する。
【0003】
インバータ回路は、例えば、Hブリッジ回路を含んで構成される。Hブリッジ回路は、互いに並列に接続された2個のアームを備える。各アームは、互いに直列に接続された2個のスイッチ(上アームスイッチおよび下アームスイッチ)から構成される。そして、各アームのスイッチを適切なタイミングで制御することにより、直流電圧から交流電圧が生成される。なお、Hブリッジ回路を備えるインバータ回路は、例えば、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路として、Hブリッジ回路を備える構成が知られている。ただし、Hブリッジ回路を用いて大きな出力電流を生成するためには、Hブリッジ回路内の各スイッチを大容量のトランジスタで構成する必要がある。ここで、一般に、大容量のトランジスタは高価である。このため、従来の技術では、大きな出力電流を生成するインバータ回路の低コスト化は困難である。
【0006】
本発明の1つの側面に係る目的は、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路の低コスト化を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様に係わるインバータ回路は、極性アームおよび複数の駆動アームを備えるスイッチ回路と、前記複数の駆動アームのうちで動作する駆動アームの数を決定する駆動アーム数決定部と、前記スイッチ回路が直流電源から印加される直流電圧を交流電圧に変換するように、前記駆動アーム数決定部により決定された数の駆動アームおよび前記極性アームを動作させるとともに、前記複数の駆動アームのうちの他の駆動アームを停止するスイッチ制御回路と、を備える。前記極性アームは、互いに直列に接続された、前記直流電源の正極側に電気的に接続される第1のスイッチおよび前記直流電源の負極側に電気的に接続される第2のスイッチから構成される。各駆動アームは、互いに直列に接続された、前記直流電源の正極側に電気的に接続される第3のスイッチおよび前記直流電源の負極側に電気的に接続される第4のスイッチから構成される。前記第3のスイッチおよび前記第4のスイッチの容量は、それぞれ前記第1のスイッチおよび前記第2のスイッチの容量よりも小さい。そして、前記複数の駆動アームのうちの2以上の駆動アームを動作させるときは、前記スイッチ制御回路は、前記2以上の駆動アームの各第3のスイッチおよび前記極性アームの第2のスイッチをオン状態に駆動して第1の方向に電流を流す第1の動作状態、及び、前記2以上の駆動アームの各第4のスイッチおよび前記極性アームの第1のスイッチをオン状態に駆動して前記第1の方向と反対の第2の方向に電流を流す第2の動作状態を交互に繰り返す。
【0008】
上記構成のインバータ回路において、負荷の消費電流が大きいときは、複数の駆動アームを使用して直流電圧が交流電圧に変換される。この場合、負荷電流は、複数の駆動アームに均等に分配される。よって、各駆動アームを構成する第3および第4のスイッチは、電流容量の小さい小型で安価な素子で実現できる。
【0009】
また、負荷の消費電流が小さいときは、複数の駆動アームのうちの一部の駆動アームのみを使用して直流電圧が交流電圧に変換される。この場合、すべての駆動アームを動作させるケースと比較して、駆動されるスイッチの個数が少なくなり、スイッチング損が小さくなるので、スイッチ回路の消費電力が少なくなる。
【0010】
なお、駆動アーム数決定部は、当該インバータ回路が出力する交流電圧または当該インバータ回路に接続する負荷が要求する交流電圧を表す出力電圧指令、および、想定される負荷の種別を表す給電先情報に基づいて、動作する駆動アームの数を決定してもよい。或いは、駆動アーム数決定部は、当該インバータ回路に接続する負荷に供給される電流に基づいて、動作する駆動アームの数を決定してもよい。
【発明の効果】
【0011】
上述の態様によれば、直流電圧を交流電圧に変換するインバータ回路の低コスト化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本発明の実施形態に係わるインバータ回路の一例を示す図である。
【
図3】駆動アーム数が1のときのインバータ回路の動作例を示す図である。
【
図4】駆動アーム数が2のときのインバータ回路の動作例を示す図である。
【
図5】インバータ回路の動作状態および出力電圧波形の一例を示す図である。
【
図6】3個の駆動アームを備えるインバータ回路の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、インバータ回路の一例を示す。この例では、インバータ回路50は、Hブリッジ回路を備える。Hブリッジ回路は、
図1に示すように、4個のスイッチQ51~Q54を備える。各スイッチQ51~Q54は、この例では、トランジスタにより実現される。そして、直流電源110から出力される直流電圧がHブリッジ回路に印加される。
【0014】
AC負荷120が電力を要求するときは、Hブリッジ回路を構成するスイッチQ51~Q54は、不図示の駆動回路が生成する駆動信号により制御される。このとき、スイッチQ51、Q54をオン状態に保持すると共にスイッチQ52、Q53をオフ状態に保持すると、直流電源110からスイッチQ51、AC負荷120、およびスイッチQ54を経由して直流電源110に戻る電流が流れる。また、スイッチQ51、Q54をオフ状態に保持すると共にスイッチQ52、Q53をオン状態に保持すると、直流電源110からスイッチQ53、AC負荷120、およびスイッチQ52を介して直流電源110に戻る電流が流れる。よって、この動作を所定の周期で交互に繰り返すことにより、直流電源110から印加される直流電圧が交流電圧に変換される。
【0015】
ここで、各スイッチQ51~Q54を流れる電流の最大値は、負荷電流の最大値と実質的に同じである。このため、スイッチQ51~Q54の特性は、互いに実質的に同じである。具体的には、スイッチQ51~Q54の電流容量は互いに同じである。よって、インバータ回路50に消費電流の大きい負荷が接続され得る場合は、各スイッチQ51~Q54をそれぞれ電流容量の大きいトランジスタで構成する必要がある。即ち、この場合、インバータ回路50は、電流容量の大きいトランジスタを4つ備える必要がある。ここで、一般に、電流容量の大きいトランジスタは高価である。したがって、消費電流の大きい負荷が接続され得る場合は、Hブリッジ回路を備えるインバータ回路の低コスト化は困難である。
【0016】
<実施形態>
図2は、本発明の実施形態に係わるインバータ回路の一例を示す。この実施例では、インバータ回路10は、スイッチ回路11、マイコン12、およびスイッチ制御回路13を備える。なお、
図2に示す直流電源110は、例えば、バッテリである。ただし、直流電源110は、バッテリおよびバッテリの出力電圧を所定の電圧に変換するDC/DCコンバータを含んでもよい。また、直流電源110は、バッテリ、DC/DCコンバータ、およびDC/DCコンバータの入力側および/または出力側に設けられる中間コンデンサを含んでもよい。
【0017】
スイッチ回路11は、複数のアームから構成される。この実施例では、スイッチ回路11は、2個の駆動アームDA1、DA2、および1個の極性アームPAを備える。駆動アームDA1、DA2、および極性アームPAは、互いに並列に接続されている。
【0018】
駆動アームDA1は、互いに直列に接続されるスイッチQ1、Q2から構成される。この実施例では、各スイッチQ1、Q2はトランジスタにより実現される。一例としては、各スイッチQ1、Q2は、絶縁ゲートバイポーラ型トランジスタ(IGBT)により実現される。スイッチQ1のドレインはインバータ回路10のDC側正極端子に接続されている。すなわち、スイッチQ1は、直流電源110の正極側に電気的に接続されている。スイッチQ1のソースはスイッチQ2のドレインに接続されている。スイッチQ2のソースはインバータ回路10のDC側負極端子に接続されている。すなわち、スイッチQ2は、直流電源110の負極側に電気的に接続されている。
【0019】
駆動アームD2の構成は、駆動アームDA1と実質的に同じである。すなわち、駆動アームDA2は、互いに直列に接続されるスイッチQ3、Q4から構成される。この実施例では、各スイッチQ3、Q4は、IGBT等のトランジスタにより実現される。スイッチQ3のドレインはインバータ回路10のDC側正極端子に接続されている。すなわち、スイッチQ3は、直流電源110の正極側に電気的に接続されている。スイッチQ3のソースはスイッチQ4のドレインに接続されている。スイッチQ4のソースはインバータ回路10のDC側負極端子に接続されている。すなわち、スイッチQ4は、直流電源110の負極側に電気的に接続されている。
【0020】
極性アームPAの構成も、駆動アームDA1と実質的に同じである。すなわち、極性アームPAは、互いに直列に接続されるスイッチQ11、Q12から構成される。この実施例では、各スイッチQ11、Q12は、IGBT等のトランジスタにより実現される。スイッチQ11のドレインはインバータ回路10のDC側正極端子に接続されている。すなわち、スイッチQ11は、直流電源110の正極側に電気的に接続されている。スイッチQ11のソースはスイッチQ12のドレインに接続されている。スイッチQ12のソースはインバータ回路10のDC側負極端子に接続されている。すなわち、スイッチQ12は、直流電源110の負極側に電気的に接続されている。
【0021】
スイッチQ1~Q4の構成および特性は互いに実質的に同じである。また、スイッチQ11~Q12の構成および特性は互いに実質的に同じである。ただし、スイッチQ1~Q4の構成および特性は、スイッチQ11~Q12の構成および特性と異なっている。具体的には、スイッチQ1~Q4の電流容量は、スイッチQ11~Q12の電流容量よりも小さい。例えば、スイッチQ1~Q4の電流容量は、スイッチQ11~Q12の電流容量の2分の1程度でよい。なお、各スイッチQ1~Q4、Q11~Q12に対して、還流ダイオードを設けてもよい。
【0022】
駆動アームDA1のAC側端子X1(すなわち、スイッチQ1とスイッチQ2との接続点)は、インバータ回路10のAC側第1端子に接続される。同様に、駆動アームDA2のAC側端子X2(すなわち、スイッチQ3とスイッチQ4との接続点)も、インバータ回路10のAC側第1端子に接続される。なお、AC側端子X1とインバータ回路10のAC側第1端子との間、及び、AC側端子X2とインバータ回路10のAC側第1端子との間に、それぞれ、
図2に示すように、電流センサAおよびインダクタを設けてもよい。
【0023】
極性アームPAのAC側端子Y(すなわち、スイッチQ11とスイッチQ12との接続点)は、インバータ回路10のAC側第2端子に接続される。なお、インバータ回路10は、AC側第1端子とAC側第2端子との間の電圧(或いは、負荷電圧)をモニタする電圧センサVを備えてもよい。
【0024】
インバータ回路10のDC側正極端子とDC側負極端子との間に直流電源110が接続される。すなわち、直流電源110の出力電圧がインバータ回路10のスイッチ回路11に印加される。また、インバータ回路10のAC側第1端子とAC側第2端子との間にAC負荷120が接続される。すなわち、インバータ回路10により生成される交流電圧がAC負荷120に供給される。
【0025】
マイコン12は、インバータ回路10の動作を制御する。すなわち、マイコン12は、スイッチ回路11に直流電圧を交流電圧に変換させるための制御信号を生成する。このとき、マイコン12は、AC負荷120が要求する交流電圧を生成するための制御信号を生成し、スイッチ制御回路13は、その制御信号に従ってスイッチ回路11を制御する。これにより、インバータ回路10は、AC負荷120が要求する交流電圧を出力する。
【0026】
また、マイコン12は、駆動アーム数決定部12aを備える。駆動アーム数決定部12aは、出力電圧指令および給電先情報に基づいて、駆動アームDA1、DA2のうちの一方の駆動アームのみを動作させるか、双方の駆動アームを動作させるかを決定する。すなわち、駆動アーム数決定部12aは、複数の駆動アームのうちで動作する駆動アームの数を決定する。この実施例では、スイッチ回路11が2個の駆動アームを備えるので、駆動アーム数決定部12aは、動作する駆動アームの数として、「1」または「2」を指定する。なお、駆動アーム数決定部12aの機能は、例えば、マイコン12を構成するプロセッサがソフトウェアプログラムを実行することで提供される。
【0027】
出力電圧指令は、インバータ回路10が使用される国または地域の商用電源の電圧またはAC負荷120が要求する電圧を表す。なお、商用電源の電圧は、国または地域により異なる。例えば、日本国内では、単相交流の電圧は、100V/200Vである。また、海外では、多くの国において220~240Vが採用されている。したがって、出力電圧指令は、インバータ回路10が使用される国または地域に応じて予め設定してもよい。
【0028】
給電先情報は、想定される負荷の種別を表す。例えば、インバータ回路10が自動車等の車両に搭載されるケースでは、給電先情報は、給電先として、車内で使用される消費電力の小さい小型電気機器を想定するか、車外で使用される消費電力の大きい大型電気機器を想定するかを表す。したがって、給電先情報は、例えば、ユーザにより指定される。
【0029】
駆動アーム数決定部12aは、特に限定されるものではないが、例えば、以下のポリシに従って駆動アーム数(すなわち、複数の駆動アームのうちで動作する駆動アームの数)を決定する。
(1)出力電圧指令が200V以上であるときは、駆動アーム数は2である。
(2)出力電圧指令が200Vより小さい(例えば、100V)ケースでは、給電先としてユーザが小型電気機器を選択したときには駆動アーム数は1であり、給電先としてユーザが大型電気機器を選択したときには駆動アーム数は2である。
【0030】
スイッチ制御回路13は、駆動信号を生成するための回路および増幅器等を備え、マイコン12により生成される制御信号に基づいてスイッチ回路11を制御する。具体的には、スイッチ制御回路13は、駆動信号D1~D4およびD11~D12を生成する。駆動信号D1~D4は、それぞれスイッチQ1~Q4のゲートに与えられ、駆動信号D11~D12は、それぞれスイッチQ11~Q12のゲートに与えられる。なお、各スイッチQ1~Q4およびQ11~Q12は、例えば、ゲートにHレベル信号が与えられたときにオン状態を保持し、ゲートにLレベル信号が与えられたときにオフ状態を保持するものとする。このように、スイッチ制御回路13は、マイコン12により生成される制御信号に基づいて、スイッチQ1~Q4およびQ11~Q12をオン状態またはオフ状態に制御することができる。
【0031】
ただし、スイッチ制御回路13は、駆動アーム数決定部12aにより決定された駆動アームの数に応じてスイッチ回路11を制御する。具体的には、駆動アーム数決定部12aが1個の駆動アームを動作させることを決定したときには、スイッチ制御回路13は、駆動アームDA1または駆動アームDA2のうちのいずれか一方のみを動作させる。なお、以下の記載では、駆動アーム数決定部12aが1個の駆動アームを動作させることを決定したときには、スイッチ制御回路13は、駆動アームDA1を選択して動作させるものとする。
【0032】
よって、駆動アーム数が1のときは、スイッチ制御回路13は、駆動信号D1~D2およびD11~D12を生成してスイッチQ1~Q2およびQ11~Q12を駆動する。このとき、スイッチ制御回路13は、駆動アームDA2を停止する。具体的には、スイッチ制御回路13は、駆動信号D3~D4を常時Lレベルに設定することで、スイッチQ3~Q4を常時オフ状態に制御する。これに対して、駆動アーム数が2のときには、スイッチ制御回路13は、駆動信号D1~D4およびD11~D12を生成してスイッチQ1~Q4およびQ11~Q12を駆動する。
【0033】
図3は、駆動アーム数が1のときのインバータ回路10の動作例を示す。駆動アーム数が1のときには、スイッチ制御回路13は、
図3(a)に示す第1の動作状態および
図3(b)に示す第2の動作状態を交互に繰り返す。なお、この実施例では、駆動アーム数が1のときは、スイッチ制御回路13は、駆動アームDA1を動作させ、駆動アームDA2を停止するものとする。
【0034】
第1の動作状態においては、スイッチ制御回路13は、駆動信号D1および駆動信号D12をHレベルに制御すると共に、駆動信号D2および駆動信号D11をLレベルに制御することで、スイッチQ1およびスイッチQ12を駆動する。これにより、
図3(a)に示すように、直流電源110の正極端子からスイッチQ1、AC負荷120、およびスイッチQ12を介して直流電源110の負極端子に流れる電流が生成される。また、第2の動作状態においては、スイッチ制御回路13は、駆動信号D2および駆動信号D11をHレベルに制御すると共に、駆動信号D1および駆動信号D12をLレベルに制御することで、スイッチQ2およびスイッチQ11を駆動する。これにより、
図3(b)に示すように、直流電源110の正極端子からスイッチQ11、AC負荷120、およびスイッチQ2を介して直流電源110の負極端子に流れる電流が生成される。このとき、駆動アームDA2を構成するスイッチQ3、Q4は、常時オフ状態に保持されている。
【0035】
図4は、駆動アーム数が2のときのインバータ回路10の動作例を示す。駆動アーム数が2のときには、スイッチ制御回路13は、
図4(a)に示す第1の動作状態および
図4(b)に示す第2の動作状態を交互に繰り返す。
【0036】
第1の動作状態においては、スイッチ制御回路13は、駆動信号D1、D3および駆動信号D12をHレベルに制御すると共に、駆動信号D2、D4および駆動信号D11をLレベルに制御することで、スイッチQ1、Q3およびスイッチQ12を駆動する。これにより、
図4(a)に示すように、直流電源110の正極端子からスイッチQ1およびQ3、AC負荷120、およびスイッチQ12を介して直流電源110の負極端子に流れる電流が生成される。また、第2の動作状態においては、スイッチ制御回路13は、駆動信号D2、D4および駆動信号D11をHレベルに制御すると共に、駆動信号D1、D3および駆動信号D12をLレベルに制御することで、スイッチQ2、Q4およびスイッチQ11を駆動する。これにより、
図4(b)に示すように、直流電源110の正極端子からスイッチQ11、AC負荷120、およびスイッチQ2およびQ4を介して直流電源110の負極端子に流れる電流が生成される。
【0037】
第1の動作状態および第2の動作状態は、駆動アーム数によらず、
図5に示すように、所定の周期で交互に設定される。例えば、インバータ回路10が50Hzの交流電圧を生成ケースでは、スイッチ制御回路13は、20m秒ごとに1セットの第1の動作状態および第2の動作状態を設定する。
【0038】
第1の動作状態および第2の動作状態は、互いに極性の異なる電圧波形を生成する。例えば、
図5に示すように、第1の動作状態は、50Hzの正弦波の正側を表す電圧波形を生成し、第2の動作状態は、その正弦波の負側を表す電圧波形を生成する。ここで、正弦波電圧は、例えば、パルス幅変調駆動信号を使用することで生成することができる。一例としては、コンパレータを用いて50Hzの正弦波信号と数kHz~数10kHzの三角波信号とを比較することで、正弦波電圧を生成するためのパルス幅変調駆動信号が得られる。
【0039】
このように、本発明の実施形態においては、負荷の消費電流が大きいときは、2個の駆動アームの双方を使用して直流電圧が交流電圧に変換される。この場合、
図4に示すように、駆動アームDA1を流れる電流および駆動アームDA2を流れる電流の合計が負荷に供給される。すなわち、各スイッチQ1~Q4を流れる電流は、各スイッチQ11~Q12を流れる電流の約2分の1である。したがって、スイッチQ1~Q4は、スイッチQ11~Q12と比較して、電流容量の小さい小型で安価なトランジスタで実現できる。ここで、仮に、各スイッチQ1~Q4の価格が各スイッチQ11~Q12の2分の1以下であれば、本発明の実施形態に係わるインバータ回路10の製造コストは、
図1に示すHブリッジ型のインバータ回路よりも小さくなる。
【0040】
負荷の消費電流が小さいときは、2個の駆動アームのうちの一方を使用して直流電圧が交流電圧に変換される。この場合、2個の駆動アームを動作させるケースと比較して、駆動されるスイッチの個数が少なくなり、スイッチング損が小さくなるので、スイッチ回路11の消費電力が少なくなる。また、
図1に示すHブリッジ型のインバータ回路と比較した場合、駆動されるスイッチの個数は同じになるが、スイッチQ1、Q2は、
図1に示すスイッチQ51、Q52よりも小型で低消費電力のトランジスタで実現できるので、インバータ回路の消費電力が小さくなる。
【0041】
<バリエーション>
図2に示す実施例では、インバータ回路10は2個の駆動アームを備えるが、本発明の実施形態はこの構成に限定されるものではない。すなわち、本発明の実施形態に係わるインバータ回路は、3個以上の駆動アームを備える構成であってもよい。
【0042】
図6は、3個の駆動アームを備えるインバータ回路の一例を示す。この実施例では、スイッチ回路11は、3個の駆動アームDA1、DA2、DA3、および1個の極性アームPAを備える。すなわち、
図6に示すスイッチ回路11は、
図2に示す構成に駆動アームDA3を追加することで実現される。なお、駆動アームDA1、DA2、DA3、および極性アームPAは、互いに並列に接続されている。
【0043】
駆動アームD3の構成は、駆動アームDA1、DA2と実質的に同じであり、互いに直列に接続されるスイッチQ5、Q6から構成される。この実施例では、各スイッチQ5、Q6は、IGBT等のトランジスタにより実現される。スイッチQ5のドレインはインバータ回路10のDC側正極端子に接続されている。スイッチQ5のソースはスイッチQ6のドレインに接続されている。スイッチQ6のソースはインバータ回路10のDC側負極端子に接続されている。そして、スイッチQ5、Q6は、それぞれ、スイッチ制御回路13が生成する駆動信号D5、D6により駆動される。
【0044】
駆動アームDA3のAC側端子X3(すなわち、スイッチQ5とスイッチQ6との接続点)は、インバータ回路10のAC側第1端子に接続される。なお、AC側端子X3とインバータ回路10のAC側第1端子との間に、電流センサAおよびインダクタを設けてもよい。
【0045】
図6に示すインバータ回路10においても、駆動アーム数決定部12aは、出力電圧指令および給電先情報に基づいて、動作する駆動アームの数を決定する。ただし、
図6に示す構成では、スイッチ回路11が3個の駆動アームを備えるので、駆動アーム数決定部12aは、動作する駆動アームの数として、「1」「2」または「3」を指定する。
【0046】
駆動アーム数決定部12aは、特に限定されるものではないが、例えば、以下のポリシに従って駆動アーム数を決定する。
(1)出力電圧指令が200V以上であり、かつ、給電先としてユーザが大型電気機器を選択したときには、駆動アーム数は3である。
(2)出力電圧指令が200V以上であり、かつ、給電先としてユーザが小型電気機器を選択したときには、駆動アーム数は2である。
(3)出力電圧指令が200Vより小さく(例えば、100V)、かつ、給電先としてユーザが大型電気機器を選択したときには、駆動アーム数は2である。
(4)出力電圧指令が200Vより小さく、かつ、給電先としてユーザが小型電気機器を選択したときには駆動アーム数は1である。
【0047】
スイッチ制御回路13は、駆動アーム数決定部12aにより決定された駆動アームの数に応じてスイッチ回路11を制御する。具体的には、駆動アーム数が1であるときは、駆動アームDA1を動作させ、駆動アームDA2、DA3を停止する。この場合、スイッチ制御回路13は、駆動信号D1、D2、D11、D12を用いてスイッチQ1、Q2、Q11、Q12を制御する。駆動アーム数が2であるときは、駆動アームDA1、D2を動作させ、駆動アームDA3を停止する。この場合、スイッチ制御回路13は、駆動信号D1、D2、D3、D4、D11、D12を用いてスイッチQ1、Q2、Q3、Q4、Q11、Q12を制御する。駆動アーム数が3であるときは、駆動アームDA1~D3を動作させる。この場合、スイッチ制御回路13は、駆動信号D1~D6、D11、D12を用いてスイッチQ1~Q6、Q11、Q12を制御する。
【0048】
このように、本発明の実施形態においては、負荷の消費電流が大きいときは、N個(
図2では2個、
図6では3個)の駆動アームを使用して直流電圧が交流電圧に変換される。この場合、駆動アームを構成する各スイッチを流れる電流は、極性アームを構成する各スイッチを流れる電流の約N分の1である。したがって、駆動アームを構成する各スイッチは、極性アームを構成するスイッチと比較して、電流容量の小さい小型で安価なトランジスタで実現できる。ここで、仮に、駆動アームを構成する各スイッチの価格が極性アームを構成する各スイッチのN分の1以下であれば、本発明の実施形態に係わるインバータ回路10の製造コストは、
図1に示すHブリッジ型のインバータ回路よりも小さくなる。
【0049】
負荷の消費電流が小さいときは、N個の駆動アームのうちの一部を使用して直流電圧が交流電圧に変換される。この場合、N個の駆動アームを動作させるケースと比較して、駆動されるスイッチの個数が少なくなり、スイッチング損が小さくなるので、スイッチ回路11の消費電力が少なくなる。
【0050】
図2または
図6に示す実施例では、駆動アーム数決定部12aは、出力電圧指令および給電先情報に基づいて、動作する駆動アームの数を決定する。ただし、本発明の実施形態はこの構成に限定されるものではない。例えば、駆動アーム数決定部12aは、AC負荷120供給される電流に基づいて駆動アーム数を決定してもよい。この場合、AC負荷120供給される電流は、
図2または
図6に示す電流センサAを用いてモニタされる。そして、駆動アーム数決定部12aは、モニタされる電流値と対応する所定の閾値とを比較することで、動作する駆動アームの数を決定する。
【0051】
図2または
図6に示すスイッチ回路11は、双方向充電器に実装されてもよい。この場合、スイッチ回路11は、直流電源から印加される直流電圧を交流電圧に変換する用途、及び、力率を改善しながら交流電圧を直流電圧に変換して直流電源を充電する用途に使用される。
【符号の説明】
【0052】
10 インバータ回路
11 スイッチ回路
12 マイコン
12a 駆動アーム数決定部
13 スイッチ制御回路
110 直流電源
120 AC負荷