(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165515
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】錠装置及び収容器
(51)【国際特許分類】
E05B 13/00 20060101AFI20241121BHJP
E05B 65/02 20060101ALI20241121BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
E05B13/00
E05B65/02 B
E05B49/00 J
E05B49/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081773
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】519055788
【氏名又は名称】株式会社ビットキー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100151448
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 孝博
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100216839
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】深田 雄介
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA16
2E250FF01
2E250FF21
(57)【要約】 (修正有)
【課題】使い勝手の良い錠装置及び収容器を提供する。
【解決手段】内部に物品の収容が可能な内部空間を有する収容器において前記内部空間と外部空間とを区画するように設けられた扉に設置される錠装置であって、前記扉の前記外部空間側に少なくとも一部が露出するように構成された筐体と、前記筐体において前記外部空間側に形成された開口に対応する位置に前記開口を覆うように設置され、所定の平面に沿って移動可能に構成された遮蔽板と、前記開口に対して開く方向であって前記所定の平面に沿って前記遮蔽板を移動させるか、前記開口に対して閉じる方向であって前記所定の平面に沿って前記遮蔽板を移動させるかの少なくともいずれかを指示するための制御信号を生成するように構成されたプロセッサと、前記制御信号に基づいて前記遮蔽板を移動させるために駆動するように構成されたモータと、を含む錠装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に物品の収容が可能な内部空間を有する収容器において前記内部空間と外部空間とを区画するように設けられた扉に設置される錠装置であって、
前記扉の前記外部空間側に少なくとも一部が露出するように構成された筐体と、
前記筐体において前記外部空間側に形成された開口に対応する位置に前記開口を覆うように設置され、前記扉の前面に平行な面に沿って移動可能に構成された遮蔽板と、
前記開口に対して開く方向であって前記平行な面に沿って前記遮蔽板を移動させるか、前記開口に対して閉じる方向であって前記平行な面に沿って前記遮蔽板を移動させるかの少なくともいずれかを指示するための制御信号を生成するように構成されたプロセッサと、
前記制御信号に基づいて前記遮蔽板を移動させるために駆動するように構成されたモータと、
を含む錠装置。
【請求項2】
前記扉を前記収容器に施錠又は解錠するためのロック片をさらに含み、
前記ロック片は、前記制御信号に基づいて、前記平行な面に沿って移動する、
請求項1に記載の錠装置。
【請求項3】
前記ロック片と前記遮蔽板は同一のモータによって移動される、請求項2に記載の錠装置。
【請求項4】
前記モータの駆動により、前記遮蔽板を前記平行な面に沿って移動させるように構成された駆動伝達機構をさらに含む、請求項1に記載の錠装置。
【請求項5】
前記扉を前記収容器に施錠又は解錠するためのロック片をさらに含み、
前記駆動伝達機構は、前記ロック片の移動と前記遮蔽板の移動とを連動させるように構成された連動機構を含む、
請求項4に記載の錠装置。
【請求項6】
前記連動機構は、前記モータの駆動力によっては前記ロック片の移動と前記遮蔽板の移動とを連動させ、前記駆動力とは異なる外力によっては前記ロック片の移動と前記遮蔽板の移動とを連動させない、請求項5に記載の錠装置。
【請求項7】
前記駆動伝達機構は、前記モータの回転軸における回転方向の駆動を直線方向の駆動に変換するように構成された変換機構を含む、請求項4に記載の錠装置。
【請求項8】
前記モータの回転軸は前記平行な面に対して垂直であり、
前記モータの回転軸に設けられるギア及び当該ギアと噛み合うギアは、前記平行な面上で回転する、請求項1に記載の錠装置。
【請求項9】
前記モータの回転軸は前記平行な面に対して平行であり、
前記モータの回転軸に設けられるギアは前記平行な面に対し垂直な面上で回転し、当該ギアと噛み合うギアは前記平行な面上で回転する、請求項1に記載の錠装置。
【請求項10】
前記扉が前記収容器に対して閉じられたことを検知するためのセンサをさらに含む、請求項1に記載の錠装置。
【請求項11】
前記遮蔽板は、前記センサによって前記扉が閉じられたことを検知すると、前記開口に対して閉じる方向に移動される、請求項10に記載の錠装置。
【請求項12】
前記内部空間側から着脱自在に設置され、前記モータに電気的に接続され前記モータに電力を供給するように構成された電池をさらに含む、請求項1に記載の錠装置。
【請求項13】
前記モータの回転に応じて回転するように構成された第1駆動伝達部材と、
前記第1駆動伝達部材と共通の回転軸に沿って前記第1駆動伝達部材の回転とは連動せずに第1角度において回転し、前記第1駆動伝達部材の回転と連動して第2角度において回転し、ロック片を移動させるように構成された第2駆動伝達部材と、をさらに含む、
請求項1に記載の錠装置。
【請求項14】
前記第1駆動伝達部材及び前記第2駆動伝達部材のうちのいずれか一方は、回転方向に沿って形成された円弧状の溝部を含み、
他方は、前記溝部に挿入される突起部を含む、
請求項13に記載の錠装置。
【請求項15】
前記モータの回転に応じて回転するように構成された第1駆動伝達部材と、
前記第1駆動伝達部材と共通の回転軸に沿って前記第1駆動伝達部材の回転とは連動せずに第1角度において回転し、前記第1駆動伝達部材の回転と連動して第2角度において回転し、前記遮蔽板を移動させるように構成された第3駆動伝達部材と、をさらに含む、
請求項1に記載の錠装置。
【請求項16】
前記第1駆動伝達部材及び前記第3駆動伝達部材のうちのいずれか一方は、回転方向に沿って形成された円弧状の溝部を含み、
他方は、前記溝部に挿入される突起部を含む、
請求項15に記載の錠装置。
【請求項17】
前記遮蔽板が開く方向に移動されることによって、前記遮蔽板よりも前記内部空間側に設置され前記扉を前記収容器に施錠するためのロック片を施解錠するための物理鍵の少なくとも一部が露出される、請求項1に記載の錠装置。
【請求項18】
内部に物品の収容が可能な内部空間を形成するように構成された枠体と、
前記内部空間と外部空間とを区画するように設けられた扉と、
前記扉の前記外部空間側に少なくとも一部が露出するように前記扉に設置され、前記扉を前記枠体に施錠するように構成された請求項1~17のいずれか一項に記載の錠装置と、
を含む収容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、収容器に設置される錠装置及び当該錠装置が設置された収容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、数字等の符号が一周配置された円筒部材と当該円筒部材を回転させるダイヤルの組み合わせを複数備え、当該ダイヤルを回転させることであらかじめ決められた数字に合わせることによって施解錠することが可能なダイヤル錠や、当該ダイヤル錠によって施解錠されるロッカーが知られている。例えば、特許文献1には、解錠符号列を揃えたり崩したりするのに操作される複数個(例えば4個)のダイヤルと、ロックプレートを正逆各方向へ回動させるためのつまみを備え、当該ダイヤルは複数個の符号(0~9の数字)が一周配置された円筒部と、円筒部の一側に装着された円板状の操作部とを備え、操作部を操作して円筒部に配置された符号をあらかじめ決められた解錠符号列に揃えることにより解錠されるロッカー用錠装置及びそれが設置されたロッカーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、上記のような技術を踏まえ、本開示では、より使い勝手の良い錠装置及び収容器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、「内部に物品の収容が可能な内部空間を有する収容器において前記内部空間と外部空間とを区画するように設けられた扉に設置される錠装置であって、前記扉の前記外部空間側に少なくとも一部が露出するように構成された筐体と、前記筐体において前記外部空間側に形成された開口に対応する位置に前記開口を覆うように設置され、所定の平面に沿って移動可能に構成された遮蔽板と、前記開口に対して開く方向であって前記所定の平面に沿って前記遮蔽板を移動させるか、前記開口に対して閉じる方向であって前記所定の平面に沿って前記遮蔽板を移動させるかの少なくともいずれかを指示するための制御信号を生成するように構成されたプロセッサと、前記制御信号に基づいて前記遮蔽板を移動させるために駆動するように構成されたモータと、を含む錠装置」が提供される。
【0006】
本開示の一態様によれば、「内部に物品の収容が可能な内部空間を形成するように構成された枠体と、前記内部空間と外部空間とを区画するように構成された扉と、前記扉の前記外部空間側に少なくとも一部が露出するように前記扉に設置され、前記扉を前記枠体に施錠するように構成された錠装置と、を含む収容器」が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、より使い勝手の良い錠装置及び収容器を提供することができる。
【0008】
なお、上記効果は説明の便宜のための例示的なものであるにすぎず、限定的なものではない。上記効果に加えて、又は上記効果に代えて、本開示中に記載されたいかなる効果や当業者であれば明らかな効果を奏することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の収容器10及び錠装置100の使用状態の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の錠装置100の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本開示の収容器10及び錠装置100の断面構成を概念的に示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の錠装置100の施錠状態における正面図である。
【
図5】
図5は、本開示の錠装置100の解錠状態における正面図である。
【
図6】
図6は、本開示の錠装置100の解錠状態における前方斜視図である。
【
図7A】
図7Aは、本開示の錠装置100のギアユニット129の分解状態を示す後方斜視図である。
【
図7B】
図7Bは、本開示の錠装置100の施錠状態における後方斜視図である。
【
図7C】
図7Cは、本開示の錠装置100のギアユニット129の分解状態を示す後方斜視図である。
【
図8】
図8は、本開示の錠装置100のギアユニット129の分解状態を示す後方斜視図である。
【
図9】
図9は、本開示の収容器10及び錠装置100の使用状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付図面を参照して本開示の様々な実施形態を説明する。なお、図面における共通する構成要素には同一の参照符号が付されている。
【0011】
1.収容器10の概要
図1は、本開示の収容器10及び錠装置100の使用状態の一例を示す図である。具体的には、
図1は、収容器10の一例であるロッカーに対して錠装置100が設置された場合の使用状態を示す図である。このような収容器10及び錠装置100は、一例としては下記のように利用される。まず、収容器10の利用者が所持する端末装置300は、当該利用者から当該利用者を識別したり認証したりするための識別情報や、当該収容器10の利用要求の入力を受け付ける。そして、当該入力がなされると、端末装置300は有線又は無線で接続された錠装置100に入力された識別情報や利用要求を送信する。なお、
図1に示すように収容器10が複数の区画に分割されている場合、端末装置300は、利用者が所望する区画を指定する情報の入力を受け付け、当該情報も錠装置100に送信することが可能である。また、識別情報、利用要求、区画を指定する情報等は、全て同時に送られる必要はなく、端末装置300の処理の進捗に応じて送信されてもよい。
【0012】
錠装置100は、端末装置300から識別情報、利用要求、区画を指定する情報等を受信すると、受信した情報に基づいて利用者の認証を行う。利用者が正当な権限を有する利用者であることが識別されると、錠装置100は、収容器10に対して施解錠処理を実行する。具体的には、錠装置100に含まれる錠ユニットのモータを、利用者が手を挿入するための開口を被覆している遮蔽板を開く方向に移動させるために、及び収容器10の扉を施錠するためのロック片を解錠する方向に移動させるために、駆動する。これによって、利用者は、開口内に手を挿入して収容器10の扉を例えば前方に引き出すように操作すること可能がとなる。
【0013】
また、錠装置100は、収容器10の扉が閉じたことが検出されるか、閉じたことが検出されて一定時間以上経過すると、施解錠処理を実行する。具体的には、錠装置100は、利用者が手を挿入するための開口を被覆するための遮蔽板に対して開口を閉じる方向に移動させるために、及び扉を施錠するためのロック片を施錠する方向に移動させるために、モータを駆動する。これによって、収容器10の扉が施錠される。
【0014】
なお、本開示において、収容器10は、内部に物品が収容可能な内部空間を有するものであればいずれでもよい。典型的には、収容器10はロッカーが例として挙げられるが、当然これのみには限られない。収容器10の他の例としては、住居やビル、倉庫などの建造物そのもの、住居やビル、倉庫などの建造物を構成する各部屋、自動車等の車両、金庫、収納棚、収納ボックスなど、種々のものが挙げられる。また、収容器10は、内部に物品が収容可能な内部空間を一つのみ有する場合もあれば、互いに区画された収容室を複数有する場合もある。ここでは、収容室を複数有する場合、複数の収容室を有する収容器全体を指して収容器10と呼ぶこともあれば、収容室一つ一つのことを指して収容器10と呼ぶこともある。
【0015】
また、本開示において、物品は、特定の有体物にのみには限られない。典型的には、物品は利用者の荷物が例として挙げられるが、当然これのみには限られない。物品の他の例としては、金銭、衣服、食品、宝飾品、日用品、書籍、各種装置類、車両など、種々のものが挙げられる。
【0016】
また、本開示において、内部空間及び外部空間は、両空間を区別するための設けた呼称に過ぎない。すなわち、収容器10において物品が収容される側の空間のことを内部空間とし、それ以外の空間を外部空間としたにすぎない。したがって、例えば、住居のある部屋とそれに連続する他の部屋があるとき、ある部屋の内部に物品が収容される場合はその部屋の内部が内部空間となり、それに連続する他の部屋は外部空間となる。しかし、他の部屋の内部に物品が収容される場合はその部屋が内部空間となり、ある部屋が外部空間となることもある。
【0017】
また、本開示において、扉は、内部空間と外部空間とを区画するためのものであればいずれでもよい。典型的には、ある回転軸を有し、当該回転軸を中心として開閉方向に弧を描くように開閉する開き戸が例として挙げられるが、当然これのみには限られない。扉の他の例としては、引き戸、グライドスライドドア、引込み扉、折戸、回転扉など、種々のものが挙げられる。
【0018】
2.錠装置100の構成
図2は、本開示の錠装置100の構成を示すブロック図である。
図2によると、錠装置100は、プロセッサ111、メモリ112、入力インターフェイス113、通信インターフェイス114及び錠ユニット120を含む。これらの各構成要素は、互いに、制御ライン及びデータラインを介して互いに電気的に接続される。なお、錠装置100は、
図2に示す構成要素のすべてを備える必要はなく、一部を省略して構成することも可能であるし、他の構成要素を加えることも可能である。例えば、錠装置100は、各構成要素を駆動するためのバッテリや種々の情報を利用者に表示等するための出力インターフェイス等を含むことが可能である。
【0019】
まず、プロセッサ111は、メモリ112に記憶されたプログラムに基づいて他の構成要素の制御を行う制御部として機能する。プロセッサ111は、メモリ112に記憶されたプログラムに基づいて、錠ユニット120に含まれるモータの駆動を制御するための制御信号を生成したり、利用者の認証を行ったりするための処理を実行する。具体的には、プロセッサ111は、「通信インターフェイス114を制御して端末装置300から利用者を特定するための識別情報、収容器10の利用要求及び利用者が所望する区画を指定する情報を受信するための処理」、「受信したこれら情報に基づいて正当な利用者であるかを認証するための処理」、「入力インターフェイス113で受け付けられた所定の文字列とあらかじめ決められた文字列に基づいて正当な利用者であるかを認証するための処理」、「認証の結果正当な利用者であると認証されると収容器10の外部空間側に形成された開口の少なくとも一部を閉じるように構成された遮蔽板を開く方向に移動させるための制御信号を生成する処理」、「遮蔽板及びロック片を移動させるために、モータに当該制御信号を送信し当該モータを駆動する処理」、「収容器10の扉が閉じられたことを検出するか閉じられたことを検出して所定時間が経過したことに基づいて遮蔽板を閉じる方向に移動させるための制御信号を生成する処理」などを、メモリ112に記憶されたプログラムに基づいて実行する。プロセッサ111は、主に一又は複数のCPUにより構成されるが、適宜GPUやFPGAなどを組み合わせてもよい。
【0020】
メモリ112は、RAM、ROM、不揮発性メモリ等から構成され、記憶部として機能する。メモリ112は、本実施形態に係る錠装置100の様々な制御のための指示命令をプログラムとして記憶する。具体的には、メモリ112は、「通信インターフェイス114を制御して端末装置300から利用者を特定するための識別情報、収容器10の利用要求及び利用者が所望する区画を指定する情報を受信するための処理」、「受信したこれら情報に基づいて正当な利用者であるかを認証するための処理」、「入力インターフェイス113で受け付けられた所定の文字列とあらかじめ決められた文字列に基づいて正当な利用者であるかを認証するための処理」、「認証の結果正当な利用者であると認証されると収容器10の外部空間側に形成された開口の少なくとも一部を閉じるように構成された遮蔽板を開く方向に移動させるための制御信号を生成する処理」、「遮蔽板及びロック片を移動させるために、モータに当該制御信号を送信し当該モータを駆動する処理」、「収容器10の扉が閉じられたことを検出するか閉じられたことを検出して所定時間が経過したことに基づいて遮蔽板を閉じる方向に移動させるための制御信号を生成する処理」などをプロセッサ111が実行するためのプログラムを記憶する。また、メモリ112は、当該プログラムのほかに、利用者の認証に必要な情報などを記憶する。
【0021】
入力インターフェイス113は、錠装置100に対する利用者の指示入力を受け付ける入力部として機能する。入力インターフェイス113の一例としては、数字等のあらかじめ文字を入力するための文字入力キーボタンや、表示パネルに重畳して設けられ表示パネルの表示座標系に対応する入力座標系を有するタッチパネルが挙げられる。タッチパネルによる使用者の指示入力の検出方式は、静電容量式、抵抗膜式などいかなる方式であってもよい。ここでは、入力インターフェイス113を介して利用者の認証に用いられる文字列の入力を受け付ける。
【0022】
通信インターフェイス114は、有線又は無線ネットワークを介して利用者の端末装置300や他の制御装置と情報を送受信するための通信部として機能する。通信インターフェイス114の一例としては、USB、SCSIなどの有線通信用コネクタや、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、赤外線などの無線通信用送受信デバイスや、プリント実装基板やフレキシブル実装基板用の各種接続端子など、様々なものが挙げられる。ここでは、一例として通信インターフェイス114は、端末装置300から利用者を特定するための識別情報、収容器10の利用要求及び利用者が所望する区画を指定する情報を、一例としては受信する。
【0023】
錠ユニット120は、プロセッサ111等による制御を受けて、錠装置100が設置された収容器10の施錠及び解錠、錠装置100の外表面に設置された開口の少なくとも一部を被覆する遮蔽板の開閉等を行う駆動部として機能する。その具体的な構成については、後述する。
【0024】
3.収容器10の構成
図3は、本開示の収容器10及び錠装置100の断面構成を概念的に示す図である。具体的には、収容器10を水平方向に切断した場合の断面構成を示す図である。
図3によると、収容器10は、図示された3面だけでなく、上面及び底面を覆うように構成された枠体11により、略立方体状に構成される。そして、当該枠体11によって、その内部に物品が収容可能な内部空間12が形成されている。
【0025】
また、収容器10において利用者側を向く面(
図3では下方側の面)の少なくとも一部に、収容器10の内部空間12に物品を出し入れするための開口14が形成されている。当該開口14は、物品の出し入れに必要な大きさの開口であればいずれでもよく、当該面の全面に開口14が形成されていてもよいし、その一部に開口14が形成されていてもよい。開口14に対応して当該開口14を被覆可能な位置に開口14を塞いで内部空間12とそれ以外の空間である外部空間16を区画するための扉15が枠体11に設置されている。当該扉15は、枠体11の開口14側の端部において少なくとも一か所設けられた回転軸13を中心に、内部空間12方向又は外部空間16方向に回転するように構成されている。当該扉15を回転軸13が設けられた端部とは反対側の枠体11の端部と接する位置に移動させることによって、扉15は開口14を閉鎖する。
【0026】
また、収容器10において扉15の略端部に錠装置100が設置されている。当該錠装置100は、枠体11において錠装置100のロック片の位置に対向する位置に、枠体11の内部に凹む凹状に形成されたストライク(図示しない)に、当該ロック片を挿入することによって扉15を枠体11に対して施錠する。また、錠装置100は、ロック片をストライクから抜去することで扉15を枠体から解錠する。すなわち、錠装置100は扉15に設置され、扉の制解錠を制御する。
【0027】
4.錠装置100の構成
図4は、本開示の錠装置100の施錠状態における正面図である。具体的には、
図4は、錠装置100によって収容器10の扉15を施錠した状態において、当該錠装置100のみを利用者にとって正面方向(すなわち外部空間16の方向)からみた正面図である。また、
図5は、本開示の錠装置100の解錠状態における正面図である。具体的には、
図5は、錠装置100によって収容器10の扉15を解錠した状態において、当該錠装置100のみを利用者にとって正面方向(すなわち外部空間16の方向)からみた正面図である。
図4によれば、錠装置100は、正面視において、上下左右の4方向の外形を形成する筐体123を含む。当該筐体123は、正面方向の前面の少なくとも一部に開口を有し、奥行き方向(すなわち、外部空間から内部空間に向かう方向)に枠体が伸延した略直方体形状に形成される。筐体123は、その内部に錠装置100に含まれるプロセッサ等の電子部品や錠ユニット120等を収納する。
【0028】
錠装置100は、筐体123の前面の
図4で視て左側に、表示パネル124を含む。当該表示パネル124は、利用者が視認可能なように数字等の文字列が所定個数表示される。また、錠装置100は、
図4に図示はしていないものの、表示パネル124の前面には、表示パネル124を被覆するように設けられた入力インターフェイス113(例えば、タッチパネル)を含む。入力インターフェイス113によって利用者の操作入力を検出することによって表示パネル124がオンされ、当該表示パネル124に上記文字列が表示される。その後、入力インターフェイス113により利用者の操作入力を受け付けて所定個数の文字列を選択することによって当該利用者の認証が行われる。
【0029】
具体的には、表示パネル124は、上記文字列部分を透明にされつつ背景色を黒色に配色されたパネル及び当該文字の内部空間側に配置されるLED(Light Emitting Diode)を含む。LEDは、プロセッサ111によって生成された制御信号に基づいて例えば白色、青色及び赤色の光を選択的に発光することが可能な発光体である。また、表示パネル124は、図示はしないが、スピーカを含んでもよい。スピーカは、プロセッサ111によって生成された制御信号に基づいて所定の音を発生させる。
【0030】
プロセッサ111は、錠装置100の利用者によって入力インターフェイス113の任意の部分が触れられることで、操作入力の受け付けを開始する(すなわち、表示パネル124をオンにする)。このとき、プロセッサ111は、当該LEDをオンにする。すなわち、表示パネル124は、LEDから発光される白色の光をパネルにおける文字列部分から透光させる。これにより、表示パネル124は、利用者に表示パネル124がオンになったことを報知すること及び利用者に文字列の視認をさせることができる。
【0031】
また、プロセッサ111は、利用者の指が入力インターフェイス113に接触すると、スピーカによって音を発する。これにより、表示パネル124は、利用者による操作入力を受け付けたことを、聴覚によって利用者に報知することができる。
【0032】
また、プロセッサ111は、上記認証が成功(すなわち、利用者が入力した文字列が暗証番号等の認証用のコードと一致)した場合、例えば、LEDを青色に発光させつつ、スピーカから音を2回発する。一方、プロセッサ111は、上記認証が失敗(すなわち、利用者が入力した文字列が認証用のコードと不一致)した場合、例えば、LEDを赤色に発光させつつ、スピーカから音を3回発する。これにより、表示パネル124は、プロセッサ111による上記認証の結果を、視覚及び聴覚によって利用者に報知することができる。なお、上記説明では、表示パネル124がオンになったこと、利用者による表示パネル124の操作入力を受け付けたこと、及び上記認証の結果を報知することを例示的に説明した。しかしながら、当該報知のタイミングは上記に代えて、又は上記に加えていずれのタイミングであってもよい。また、各タイミングにおける報知態様は、上記は一例にすぎず、各状況や結果に応じて異なることが報知できればよく、いずれの態様であってもよい。また、表示パネル124は、プロセッサ111によって生成された制御信号に基づいて振動する振動装置を含んでもよい。振動装置は、利用者の指が入力インターフェイス113に接触する際に振動することで、利用者による操作入力を受け付けたことを、触感によって利用者に報知を行うようにすればよい。
【0033】
錠装置100は、筐体123の前面の
図4で視て右側、すなわち表示パネルに隣接する位置に開口125を形成する。
図4及び
図5の例では、当該開口125は筐体123の外部空間側であって利用者からみて正面側の面の少なくとも一部に形成されている。開口125は筐体123の外周に沿うように、長手方向が上下に位置した略長方形状に形成されている。すなわち、
図5によると、錠装置100には、開口125から、内部空間側に伸延するように挿入室144が形成されている。そして、当該開口125を介して挿入室144に利用者が手を挿入し、筐体123の内側に位置するハンドル部分(後述するハンドル142)に利用者が手を引っかけ、利用者側(すなわち外部空間方向)に錠装置100及び扉15を引き寄せることで、扉15を開くことが可能である。
【0034】
錠装置100は、開口125の少なくとも一部を被覆し、開口125から内部空間側に伸延するように形成された挿入室144を遮蔽するための遮蔽板126を含む。
図4の例では、遮蔽板126は、開口125の形状に対応するように構成され、開口125の前面を覆うように構成されるが、その少なくとも一部が覆われていれば良い。遮蔽板126は、左右方向に移動可能に構成される。つまり、プロセッサ111で生成された制御信号に基づいてモータが駆動させることで、遮蔽板126は、開口125を開く方向(左方向)又は閉じる方向(右方向)に移動させられる。
【0035】
錠装置100は、収容器10の枠体11の内部に凹むように形成されたロック片用のストライクに挿入されることで、扉15を施錠するロック片121を含む。
図4の例は、扉15が施錠された状態の錠装置100を示す図である。したがって、ロック片121は、ストライクに挿入されるようにストライクの方向に伸延するように配置される。なお、ロック片121は上記のとおり枠体11のストライクに挿入されることで扉15を施錠する。その後、利用者の指示等に基づいてロック片121がD2方向に移動されることで、ロック片121は枠体11のストライクから抜去される。これにより、ロック片121による規制が解除されることにより扉15が解錠され、利用者は扉15を開くことが可能になる。ロック片121は、左右方向に移動可能に構成される。すなわち、プロセッサ111で生成された制御信号に基づいてモータが駆動されることで、ロック片121は、扉15を施錠する方向(D1方向)、又は解錠する方向(D2方向)に移動させられる。
【0036】
錠装置100は、収容器10の枠体11の内部に凹むように形成されたラッチ用のストライクに挿入されることで、扉15が枠体11に対して閉じられた状態を保持するためのラッチ122を含む。ラッチ122は、内部に設けられた図示しない付勢部材(例えば、バネ)によって収容器10の枠体方向(D7方向)に付勢されている。ラッチ用のストライクは、ラッチ122の先端部分を受け入れる凹部である。すなわち、扉15が枠体11に対して閉じる方向に回転させられると、ラッチ122の一部が枠体11に当接する。その後、続けて扉15を閉じる方向に回転させるに連れて、ラッチ122は付勢方向に反して、当接する枠体11によって錠装置100の内部方向に押し戻される。そして、扉15が閉じられた位置に達すると、ラッチ122は、枠体11において当該ラッチ122に対応する位置に設けられたストライクの凹部に、付勢部材によって押圧される。扉15が閉じられた位置(閉状態)に達すると、枠体11のストライクの凹部にラッチ122が引っかかるように押圧されることで、扉15が枠体11に対して自由に開くように移動するのを規制する。なお、ストライクのような凹部が枠体11に形成されていなくてもよい。
【0037】
錠装置100は、収容器10の枠体11に対して扉15が閉じられた位置に達した閉状態となることを検出するためのセンサ122aを含む。具体的には、扉15が閉じる方向に回転させるに連れてラッチ122が錠装置100の内部方向に押し戻されると、ラッチ122がセンサ122aに接触する。これを受けて、センサ122aは、オン信号を生成し、プロセッサ111にオン信号を送信する。
【0038】
プロセッサ111は、センサ122aによってオン信号が受信されると、扉15が閉じられたと判断する。これにより、プロセッサ111は遮蔽板126及びロック片121を移動させるための制御信号を生成する。そして、プロセッサ111によって生成された当該制御信号に基づいてモータが駆動され、遮蔽板126が閉じる方向に移動させられるとともに、ロック片121が施錠方向に移動させられる。
【0039】
なお、上記では扉15が閉じられたと判断するとすぐに遮蔽板126及びロック片121の移動をさせるための制御信号が生成されるとしたが、必ずしもこれのみには限らない。例えば、プロセッサ111は、扉15が閉じられたと判断されてから所定時間経過後に当該制御信号を生成するようにしてもよい。また、上記のように、扉15が閉じられたと判断した場合に制御信号を生成するか否かや、その生成のタイミングは、あらかじめ管理者等による設定を受け付け、当該設定に基づいてプロセッサが処理するようにしてもよい。
【0040】
また、プロセッサ111は、メモリ112に扉15が開閉されたことを履歴として記憶させるとよい。このような扉15の開閉の履歴をメモリ112に記憶させることで、プロセッサ111は、例えば単位時間あたりに所定回数以上開閉していることを判断すると、いたずら及び錠装置100の異常等を判断することができる。
【0041】
また、上記ではラッチ122がセンサ122aに接触することでプロセッサ111にオン信号が送信される場合について説明した。しかし、これに限らず、ラッチ122がストライク内に挿入されることで、ラッチ122とセンサ122aの接触が検出されなくなることで、プロセッサ111にオン信号が送信されるようにしてもよい。
【0042】
また、上記ではラッチ用のストライクは、一例として、枠体11に形成され、ラッチ122の先端部分を受け入れる凹部として説明した。しかし、これに限らず、ストライクは、枠体11から突出する凸部でもよい。具体的には、ストライクが枠体11から突出する凸部である場合、ラッチ122は、先端部分が枠体11に沿って移動した後、凸部に接触する。このとき、さらに扉15が閉じる方向(D3方向)に押圧されると、凸部が枠体11から突出する高さに相当する距離、錠装置100の内部方向に押し戻される。その後、ラッチ122は、先端部分が凸部の頂点を越えると、錠装置100の外部方向に押圧されることで枠体11に接触する。すなわち、ラッチ122が凸部に接触したあと、扉15が閉じる方向(D3方向)及び開く方向(D4方向)に押圧することでラッチ122が凸部を通過する。換言すると、扉15が閉じる方向(D3方向)及び開く方向(D4方向)に移動することを制限することができる。
【0043】
本開示に係る錠装置100は、上記のとおり、収容器10の利用要求を受信したプロセッサ111によって生成される制御信号によって、ロック片121による施錠が制御される。しかし、例えば、ロック片121や遮蔽板126の移動を制御するモータ115の不調や制御信号の送受信におけるエラーなど、種々の事情によりロック片121の回転ができない場合がある。このような場合に、制御信号に依らずにロック片121を回転させるために、錠装置100はロック片121を回転させるための物理鍵128及び端子128aを含む。当該物理鍵128及び端子128aは、
図5に示す通り、筐体123の内部であって、挿入室144の奥壁145の少なくとも一部に形成された孔に配置される。すなわち、物理鍵128及び端子128aは、筐体123の外表面に形成された開口125を介して利用者又は管理者が操作可能な位置に配置される。これによって、遮蔽板126が開いた状態となり開口125から内部が視認可能な状態になると、物理鍵128及び端子128aが利用者に露出される。
【0044】
利用者又は管理者は、物理鍵128に対応するキーを挿入してロック片121の施錠方向又は解錠方向に回転することで、ロック片121を施錠方向又は解錠方向に強制的に移動させることが可能である。本開示においては、物理鍵128は、詳細は後述するが、所謂ヘクスローブネジの頭部であり、キーは、当該ヘクスローブネジの頭部に対応するドライバである。なお、物理鍵128は、ヘクスローブネジに代えて、六角ネジやプラスネジでもよく、対応する専用の工具でのみ回転可能な溝を有するネジであれば、どのような形態であっても良い。また、物理鍵128は、キーシリンダとしてもよい。この場合、キーは、キーシリンダに対応する鍵とすればよい。
【0045】
端子128aは、モータ115と電気的に接続された端子である。具体的には、端子128aは、所謂角形電池(006P型電池ともいう)の電極に接触されると、当該角形電池から電力が供給され、モータ115に電力を供給する。これにより、端子128aは、当該角形電池から供給される電力によりモータを駆動して、ロック片121を移動させることができる。したがって、利用者又は管理者は、端子128aに当該角形電池の電極を当ててモータ115を駆動させることで、ロック片121を施錠方向又は解錠方向に強制的に移動させることが可能である。なお、角形電池を用いることを説明したが、例えば円筒型の電池及びボタン電池でもよく、電力を供給することができればよい。また、上記説明では、端子128aは、モータ115と電気的に接続された構成として説明したが、プロセッサ111等の制御回路を介して接続するようにしてもよい。
【0046】
また、図示はしないが、物理鍵128の頭部及び端子128aは、カバーによって覆われる。これにより、物理鍵128及び端子128aは、カバーを外さなければ視認されないため、いたずら等による操作を抑制することができる。なお、物理鍵128及び端子128aを覆うカバーは、一体に形成してもよく、別体であってもよい。
【0047】
図6は、本開示の錠装置100の解錠状態における前方斜視図である。
図6によると、表示パネル124から利用者とは相対する方向、すなわち収容器10の内部空間方向に伸延するように、錠装置100は略直方体状に形成されている。筐体123は、利用者と対向する方向に配置された表面枠140を含む。筐体123は、その大部分が扉15に形成された開口に嵌入し、表面枠140が扉15の外表面に対して外部空間側に突出するように設置される。逆に言えば、筐体123は、表面枠140のみが扉15の外表面から露出し、その他の部分は施錠状態において利用者が視認困難な状態で扉15の前面の内部に嵌入される。
【0048】
また、錠装置100において、プロセッサ111により生成されたロック片121を解錠するため及び遮蔽板126を開く方向に移動させるための制御信号に基づいてモータが駆動させる。これにより、当該モータの回転軸に直接又は間接的に連結されたロック片121は、解錠位置になるように移動される。また、当該モータの回転軸に直接又は間接的に連結された遮蔽板126は、開く方向(D4方向)に移動される。これを受けて、被覆されていた開口125の少なくとも一部が露出し、遮蔽板126によって覆われていた挿入室144が外部空間方向に露出する。この露出された開口125を介して利用者がその挿入室144に手を挿入することによって、当該錠装置100をいわば扉15を開くための取っ手として利用することが可能となる。
【0049】
具体的には、挿入室144は、開口125に沿って内部空間に向かって延びるように形成される。さらに、挿入室144は、遮蔽板126より内部空間側がD4方向に延びるように形成される。すなわち、開口125のD4側の側部には、外部空間側から視て挿入室144の一部を覆うハンドル142が形成される。したがって、ハンドル142が利用者によって取っ手として利用されることで、錠装置100は、利用者によって扉15を開くことを容易にすることができる。
【0050】
また、遮蔽板126は、扉15が閉じられ閉状態となったことがラッチ122及びセンサ122aによって検知されるか、当該検知から所定時間が経過すると、プロセッサ111は、遮蔽板126を閉じるための制御信号を生成する。モータ115は、当該制御信号を受信することにより駆動され、遮蔽板126を閉じる方向(D3方向)に移動させる。これによって、再び開口125は遮蔽板126によって閉鎖される。
【0051】
筐体123に形成された開口125から錠装置100の内部に向かって凹部を形成するために、錠装置100は、開口125に連結された挿入室144を含む。挿入室144は、開口125と相対する位置に配置された奥壁145と、挿入室144の底面を形成する底壁146と、奥壁145と開口125とを連結する一対の側壁147により形成され、水平方向に縦長に形成された略直方体形状を有する。
【0052】
錠装置100は、プロセッサ111によって生成された制御信号を受信して、遮蔽板126を開方向又は閉方向及びロック片121を施錠方向又は解錠方向に移動させるためのモータ115、制御基板130、及び表示パネル124の駆動源となる電池127aが収容される電池収容孔127を含む。
【0053】
電池収容孔127は、錠装置100における内部空間側に形成される。電池収容孔127は、内部空間側に開口しており、当該開口から電池127aを内部に収容可能である。また、開口125の例えば上端には、図示はしないがリボンの一端が固定されている。また、当該リボンは、電池127aと電池収容孔127の外部空間側の面とで挟まれつつ、他端が、開口125の下端から露出する。また電池収容孔127における内部空間側の開口は、電池蓋127bによって閉止される。錠装置100は、扉15を開放した状態で電池蓋127bを電池収容孔127から取り外すことで、電池127aを交換することができる。また、錠装置100は、当該リボンの他端を引くことで、電池127aを電池収容孔127から容易に取り出すことができる。電池収容孔127に収容された電池127aは、電気的に接続されたモータ115等の各種電子部品と電気的に接続されて、各種電子部品に駆動源となる電力を供給する。なお、電池127aは、外部電源と接続して充電可能な二次電池で構成してもよい。
【0054】
錠装置100は、外部から供給される電力を各種電子部品に供給するための電源コネクタ、外部と通信するための通信コネクタ、及び管理者がメンテナンスするためのメンテナンスコネクタが、筐体123の側面から露出されるように設けられる(いずれも不図示)。これらコネクタは、例えばひとつのカバーによって覆われており、当該カバーを外すことで露出される。なお、カバーは、コネクタ毎に設けるようにしてもよい。
【0055】
すなわち、錠装置100は、電源コネクタに電源用のケーブルが接続されることで、外部から供給される電力で稼働することができる。また、錠装置100は、通信インターフェイス114の一例である通信コネクタに通信用のケーブルが接続されることで、外部と有線で通信をすることが可能となる。また、錠装置100は、メンテナンスコネクタが、例えば管理者が所有する端末と通信用のケーブルを介して接続されることで、メモリ112に記憶されたプログラムを更新すること及び修正すること等のメンテナンスが可能となる。なお、錠装置100は、電源コネクタ、通信コネクタ、及びメンテナンスコネクタのすべてを備える必要はなく、いずれかひとであってもよく、いずれのコネクタも含まない構成で合ってもよい。
【0056】
図7A、
図7C及び
図8は、本開示の錠装置100のギアユニット129の分解状態を示す後方斜視図である。具体的には、
図7A、
図7C及び
図8は、錠装置100のうち筐体123を省略し筐体123の内部にあるギアユニット129の構成の一部を示した後方斜視図である。また、
図7Bは、本開示の錠装置100の施錠状態における後方斜視図である。
図7Aによれば、錠装置100は、錠装置100において利用者に相対する方向に設けられた表示パネル124の背面側に制御基板130を含む。当該制御基板130には、プロセッサ111、メモリ112、入力インターフェイス113、通信インターフェイス114等の少なくとも一部が配置され、モータ115などの他の構成要素と電気的に連結されている。
【0057】
錠装置100は、モータ115、ギアユニット129、ロック片121及び遮蔽板126を含む。モータ115は、プロセッサ111によって生成された制御信号に基づいて回転軸131を回転駆動させる電気モータである。モータ115の回転軸131は、扉の前面に平行な面(以下、所定の平面という。)に対し垂直方向に延びる。
【0058】
ギアユニット129は、モータ115の駆動力をロック片121及び遮蔽板126に伝達する駆動伝達機構である。具体的には、ギアユニット129は、モータギア132、第1駆動ギア133(連動機構、第1駆動伝達部材)、第2駆動ギア134(連動機構、第2駆動伝達部材)、第3駆動ギア135(連動機構、第3駆動伝達部材)、施解錠ギア137、開閉ギア138及び手動ギア139を含む。
【0059】
モータギア132は、モータ115の回転軸131に固定される、平板円形状のギアである。すなわち、モータギア132は、モータ115の駆動により回転軸131を軸にして回転する。また、回転軸131が所定の平面に対し垂直方向に延びるため、モータギア132は、所定の平面上で回転する。以下、説明の便宜上、モータギア132が回転する平面を第1平面と称する。
【0060】
第1駆動ギア133は、回転軸C1を軸にして回転可能な平板円形状のギアである。具体的には、第1駆動ギア133は、回転軸C1に沿って延びるシャフト部材(不図示)により回転可能に支持されている。回転軸C1は、第1平面に対し垂直方向に延びる軸である。また、第1駆動ギア133は、第1平面上に位置する。また、第1駆動ギア133は、外周に形成された歯がモータギア132の外周に形成された歯と噛み合う。すなわち、第1駆動ギア133は、モータギア132と連動し、第1平面上で回転する。
【0061】
第1駆動ギア133には、第1溝部133a及び第1突起部133bが形成される。第1溝部133aは、第1駆動ギア133における外周と回転軸C1との間に形成される。この第1溝部133aは、内部空間側から視て、回転軸C1を中心にした円の円弧を描くように形成される。また、第1溝部133aは、第1駆動ギア133における内部空間側の面から外部空間方向V2(つまりは、第3駆動ギア135に相対する方向)に延び、第1駆動ギア133を貫通するよう形成される。第1突起部133bは、第1駆動ギア133における内部空間側の面から内部空間方向V1(つまりは、第2駆動ギア134に相対する方向)に延びるよう形成される突起である。一例としては、第1突起部133bは、例えば第1駆動ギア133における内部空間側の面に穴を形成し、当該穴にピンを嵌入するようにして形成される。
【0062】
第2駆動ギア134は、回転軸C1を軸にして回転可能な平板円形状のギアである。具体的には、第2駆動ギア134は、第1駆動ギア133と同様に、回転軸C1に沿って延びるシャフト部材(不図示)により回転可能に支持されている。換言すると、第2駆動ギア134は、第1駆動ギア133と同じ回転軸C1上で回転する。また、第2駆動ギア134は、第1駆動ギア133の内部空間側に位置し、第1平面と平行な第2平面上に設置される。すなわち、第2駆動ギア134は、第2平面上で回転する。
【0063】
第2駆動ギア134には、第2溝部134aが形成される。第2溝部134aは、第2駆動ギア134における外周と回転軸C1との間に形成される。この第2溝部134aは、内部空間側から視て、回転軸C1を中心にした円の円弧を描くように形成される。また、第2溝部134aは、第2駆動ギア134における内部空間側の面から外部空間方向V2(つまりは、第1駆動ギア133に相対する方向)に延び、第2駆動ギア134を貫通するよう形成される。
【0064】
第2溝部134aは、第1突起部133bに対応する位置に形成される。具体的には、第2溝部134aは、第1駆動ギア133が回転軸C1を軸にして回転した際に第1突起部133bによって描かれる円の円弧に沿って形成される。この円弧の中心角は、第1角度(例えば180°)である。また、第2溝部134aは、第1突起部133bに遊嵌される。
【0065】
これにより、第1駆動ギア133が回転し、第1突起部133bが円弧状の第2溝部134aを移動する間、第2駆動ギア134は第1駆動ギア133とは連動して回転することはない。また、第1駆動ギア133が回転し、第1突起部133bが第2溝部134aの端部に当接することによって、第1突起部133bが当該端部を押圧することになる。当該押圧の間、第2駆動ギア134は、第1駆動ギア133と連動して回転する。
【0066】
第3駆動ギア135は、回転軸C1を軸にして回転可能な平板円形状のギアである。具体的には、第3駆動ギア135は、第1駆動ギア133及び第2駆動ギア134と同様に、回転軸C1に沿って延びるシャフト部材(不図示)により回転可能に支持されている。換言すると、第3駆動ギア135は、第1駆動ギア133及び第2駆動ギア134と同じ回転軸C1上で回転する。また、第3駆動ギア135は、第1駆動ギア133の外部空間側に位置し、第1平面及び第2平面と平行な第3平面上に設置される。すなわち、第3駆動ギア135は、第3平面上で回転する。
【0067】
第3駆動ギア135には、第3突起部135aが形成される。第3突起部135aは、第3駆動ギア135における内部空間側の面から内部空間方向V1(つまりは、第1駆動ギア133に相対する方向)に向かって延びるよう形成される突起である。一例としては、第3突起部135aは、例えば第3駆動ギア135における内部空間側の面に穴を形成し、当該穴にピンを嵌入するようにして形成される。
【0068】
第3突起部135aは、第1溝部133aに対応する位置に形成される。換言すると、第1溝部133aは、第3駆動ギア135が回転軸C1を軸にして回転した際に第3突起部135aによって描かれる円の円弧に沿って形成される。この円弧の中心角は、第2角度(例えば第1角度と同様に180°)である。また、第1溝部133aは、第3突起部135aに遊嵌される。
【0069】
これにより、第1駆動ギア133が回転し、第3突起部135aが円弧状の第1溝部133aを相対的に移動する間、第3駆動ギア135は第1駆動ギア133とは連動して回転することはない。また、第1駆動ギア133が回転することで第3突起部135aが第1溝部133aの端部に当接することによって、第1溝部133aの端部が第3突起部135aを押圧することになる。当該押圧の間、第3駆動ギア135は、第1駆動ギア133と連動して回転する。
【0070】
すなわち、第1駆動ギア133がモータギア132によって駆動されて第1角度及び第2角度のうち最も大きい角度以上(例えば180°以上)回転すると、第2駆動ギア134及び第3駆動ギア135は、共に第1駆動ギア133と連動する。したがって、第1駆動ギア133は、一つのモータ115(同一のモータ)の駆動力により、第2駆動ギア134及び第3駆動ギア135を連動させることができる。
【0071】
施解錠ギア137は、例えばネジによりロック片121に取り付けられた所謂ラックギアである。この施解錠ギア137は、前述した第2平面上に設置される。また、施解錠ギア137は、上端にラックが形成される。ラックは、第2駆動ギア134に噛み合う。すなわち、施解錠ギア137は、第2駆動ギア134が回転すると、連動してD3方向又はD4方向に移動する。また、施解錠ギア137がD3方向又はD4方向に移動することで、ロック片121もまた施解錠ギア137と同一の方向に移動する。
【0072】
開閉ギア138は、例えばネジにより遮蔽板126の脚部126aに取り付けられた所謂ラックギアである。脚部126aは、遮蔽板126から内部空間方向V1に延びるように形成される。この施解錠ギア137は、前述した第3平面上に設置される。また、施解錠ギア137は、下端にラックが形成される。ラックは、第3駆動ギア135に噛み合う。すなわち、開閉ギア138は、第3駆動ギア135が回転すると、連動してD5方向又はD6方向に移動する。また、開閉ギア138がD5方向又はD6方向に移動することで、遮蔽板126もまた開閉ギア138と同一の方向に移動する。
【0073】
すなわち、第1駆動ギア133がモータギア132によって駆動されて第2駆動ギア134及び第3駆動ギア135が第1駆動ギア133と連動すると、施解錠ギア137及び開閉ギア138もまた連動する。施解錠ギア137及び開閉ギア138は、第1駆動ギア133と連動することでロック片121及び遮蔽板126もまた連動してD3方向又はD4方向若しくはD5方向又はD6方向に移動する。これにより、ギアユニット129は、第1駆動ギア133がモータ115によって駆動されることで、ロック片121及び遮蔽板126を移動させることができる。
【0074】
従来は、錠装置100は、ロック片121を移動させるためのモータと、遮蔽板126を移動させるためのモータとをそれぞれ設ける必要があった。すなわち、ロック片121及び遮蔽板126を移動させるためには、モータが2つ必要であった。そこで、本開示に係るギアユニット129を備えることで、錠装置100は、ひとつのモータ115のみでロック片121及び遮蔽板126を移動させることができる。特に、ギアユニット129に含まれるモータギア132、第1駆動ギア133、第2駆動ギア134、第3駆動ギア135、施解錠ギア137、開閉ギア138及び手動ギア139の位置する平面が、すべて扉の前面に平行な面である。換言すると、ギアユニット129に含まれるこれらのギアは、すべて平行関係にある。したがって、ギアユニット129は、V1-V2方向における幅を小さく構成されることができ、ひいては錠装置100のV1-V2方向における幅を小さく構成されることができる。ゆえに、錠装置100は、ギア及びモータ等の部品点数を比較的少なく構成されることができるので、錠装置100に係る費用を軽減することができる。
【0075】
また、例えば上下方向(つまり、扉の前面に平行な面上であって、D3-D4方向に対して垂直方向)を軸にして遮蔽板126を回転させ、遮蔽板126を挿入室144に収納するようにして開口125の前面を開放する構成と比較して、本開示に係る錠装置100は、遮蔽板126がD5-D6方向に移動する構成である。このため、錠装置100は、挿入室144として必要なスペースを比較的小さく形成することができる。また、本開示に係る錠装置100は、開口125の前面を開放する際に挿入室144内に遮蔽板126が位置しないため、利用者が利用可能な挿入室144のスペースを有効に確保することができる。
【0076】
上述したように、施解錠ギア137は、ネジによりロック片121に取り付けられる。換言すると、ロック片121は、当該ネジを取り外すことで施解錠ギア137から取り外すことが可能である。具体的には、
図7Bによると、錠装置100が施錠状態のとき、ロック片121を施解錠ギア137に固定するネジ121aは、内部空間側に露出される。ロック片121は、ネジ121aを取り外すことで、施解錠ギア137から取り外される。その後、複数種類のロック片121のうち、収容器10の枠体11のストライクに適合するロック片121が選択され、ネジ121aによって施解錠ギア137に固定される。
【0077】
これにより、錠装置100は、収容器10の枠体11のストライクに適合するロック片121を簡単に取り付けることができる。よって、錠装置100は、ロック片121を付け替えることで、多様な収容器10の枠体11に対応することができる。また、例えばロック片121が摩耗、変形等の劣化又は破損により交換が必要な場合であっても、ギアユニット129は、当該ネジを取り外すことで施解錠ギア137からロック片121を取り外すようにして容易に交換することができる。
【0078】
図7Aに戻り、遮蔽板126は、例えばネジにより脚部126aが開閉ギア138に取り付けられているため、当該ネジを取り外すことで開閉ギア138から取り外すことが可能である。これにより例えば遮蔽板126が劣化又は破損により交換が必要な場合であっても、ギアユニット129は、当該ネジを取り外すことで開閉ギア138から遮蔽板126を取り外すようにして容易に交換することができる。
【0079】
手動ギア139は、物理鍵128の回転軸に固定される、平板円形状のギアである。すなわち、手動ギア139は、物理鍵128の回転により回転軸を軸にして回転する。また、手動ギア139は、第1平面上に位置し、第1平面上で回転する。また、手動ギア139は、周縁の歯が第1駆動ギア133の周縁の歯に噛み合う。したがって、手動ギア139は、物理鍵128が回転軸周りで回転されることで回転して第1駆動ギア133を回転させる。
【0080】
次に、
図4、
図5、
図7A、
図7C及び
図8に沿い、錠装置100の作動態様及び作用効果を説明する。以下、説明の便宜上、内部空間側から視て時計回り方向を正回転方向R1と称し、反時計回り方向を負回転方向R2と称する。
【0081】
(A.扉15を施錠する場合)
まず、
図8によると、ロック片121をD4方向(施錠する方向)に移動させ、遮蔽板126をD5方向(閉じる方向)に移動させる場合、モータ115は、正回転方向R1にモータギア132を駆動させる。第1駆動ギア133は、モータギア132によって負回転方向R2に回転される。第2駆動ギア134は、第2溝部134aの負回転方向R2側の端部が第1突起部133bに当接し、さらに負回転方向R2に押圧されることで負回転方向R2に回転する。施解錠ギア137は、第2駆動ギア134によってロック片121とともにD4方向に移動する。すなわち、モータ115は、正回転方向R1にモータギア132を駆動させることで、
図7Aに示す通り、ロック片121をD4方向に移動させ、ロック片121により扉15を施錠することが可能である。
【0082】
また、第1駆動ギア133が負回転方向R2に回転すると、第3駆動ギア135は、第3突起部135aが第1溝部133aの正回転方向R1側の端部に当接し、さらに負回転方向R2に押圧されることで負回転方向R2に回転する。これにより、
図7Aに示す通り、開閉ギア138は、第3駆動ギア135によって遮蔽板126とともにD5方向に移動する。
【0083】
その後、
図7Aに示す状態において、モータ115は、モータギア132を負回転方向R2に所定角度(例えば250°)回転させる。モータギア132が所定角度回転することにより、第1駆動ギア133は、正回転方向R1に略第1角度(例えば180°)回転する。すなわち、モータ115は、第1駆動ギア133を正回転方向R1に第1角度回転させることで、
図7Cに示す通り、第2駆動ギア134及び第3駆動ギア135とは連動させずに第1駆動ギア133を正回転方向R1に回転する。
【0084】
具体的には、
図7Cによると、第1駆動ギア133を回転させると、第3駆動ギア135の第3突起部135aは、第1駆動ギア133の第1溝部133aにおける正回転方向R1側の端部から負回転方向R2側の端部の近傍に、相対的に移動する。すなわち、第3駆動ギア135は、第1駆動ギア133とは連動せずに正回転方向R1へ回転することが許容されるため、開閉ギア138がD6方向に移動することを許容する。したがって、モータギア132が所定角度回転されることにより、ギアユニット129は、ロック片121による扉15の施錠を維持しつつ、例えば管理者が遮蔽板126をD6方向に手動(駆動力とは異なる外力)で移動させることを許容することができる。例えば管理者は、遮蔽板126をD6方向に移動させて開口125の前面を開放させ(
図5)、物理鍵128にキーを挿入し、又は端子128aに角形電池の電極を当ててモータ115を駆動させ、ロック片121をストライクから外すことができる。
【0085】
従来は、開口125を閉じる方向に遮蔽板126を移動させたあと、当該移動後の位置を維持すべく、開口125を閉じる方向に遮蔽板126を付勢するバネを用いることが検討されていた。また、モータの回転軸にウォームギアを設けることで、開口125を開く方向に遮蔽板126を移動させた際にモータに負荷がかかることを抑制することが検討されていた。しかしながら、利用者によっては、遮蔽板126がバネによって付勢されているのか、故障により付勢されているのかが判断できない場合がある。そこで、本開示の錠装置100は、第1駆動ギア133に第1溝部133aが形成され、第3駆動ギア135に第3突起部135aが形成されたので、第3駆動ギア135が第1角度回転するまでの間、モータ115とは連動させずに遮蔽板126を移動させることができる。また、上述したように遮蔽板126をD5方向に移動させて開口125を閉じたあと、第1駆動ギア133を正回転方向R1に略第1角度(例えば180°)回転させたことで、開口125を開く方向に遮蔽板126を移動させることを許容することができる。換言すると、本開示の錠装置100は、遮蔽板126を略無負荷の状態にすることができる。
【0086】
物理鍵128にキーを挿入する場合について、物理鍵128は、負回転方向R2に回動されることで、手動ギア139を負回転方向R2に回動させる。第1駆動ギア133は、手動ギア139によって正回転方向R1に回転される。第1突起部133bは、正回転方向R1に回転し、第2駆動ギア134を正回転方向R1に回転させる。これにより、施解錠ギア137は、第2駆動ギア134によってD3方向に移動するため、ロック片121がD3方向に移動する。また、端子128aに角形電池の電極を当ててモータ115を駆動させる場合について、端子128aは、負回転方向R2にモータギア132を駆動させる。第1駆動ギア133は、モータギア132によって正回転方向R1に回転される。第2駆動ギア134は、第2溝部134aの正回転方向R1側の端部が第1突起部133bに当接し、さらに正回転方向R1に押圧されることで正回転方向R1に回転する。施解錠ギア137は、第2駆動ギア134によってロック片121とともにD3方向に移動する。
【0087】
同様に、
図7Cによると、モータギア132により第1駆動ギア133を正回転方向R1に略第1角度(例えば180°)回転させると、第1駆動ギア133の第1突起部133bは、第2駆動ギア134の第2溝部134aにおける、負回転方向R2側の端部から正回転方向R1側の端部の近傍に、相対的に移動する。すなわち、第2駆動ギア134は、第1駆動ギア133とは連動せずに正回転方向R1へ回転することが許容されるため、施解錠ギア137がD3方向に移動することを許容する。したがって、モータギア132が所定角度回転されることにより、ギアユニット129は、遮蔽板126の閉扉状態を維持しつつ、例えば管理者が、ロッカーの扉15が開いた状態でロック片121をD3方向に手動(駆動力とは異なる外力)で移動させることを許容することができる。これにより、ロッカーの扉15が開いた状態でロック片121に駆動力とは異なる外力が加わっても、施解錠ギア137と第1駆動ギア133とが連動していないため、モータ115に外力が伝わらず、外力によるモータへの負荷を軽減することができる。
【0088】
(B.扉15を解錠する場合)
次に、
図7Cによると、ロック片121をD3方向(解錠する方向)に移動させ、遮蔽板126をD6方向(開く方向)に移動させる場合、モータ115は、負回転方向R2にモータギア132を駆動させる。第1駆動ギア133は、モータギア132によって正回転方向R1に回転される。第2駆動ギア134は、第2溝部134aの正回転方向R1側の端部が第1突起部133bに当接し、さらに正回転方向R1に押圧されることで正回転方向R1に回転する。施解錠ギア137は、
図8に示す通り、第2駆動ギア134によってロック片121とともにD3方向に移動する。すなわち、モータ115は、負回転方向R2にモータギア132を駆動させることで、ロック片121をD3方向に移動させ、扉15を解錠することが可能である。
【0089】
また、第1駆動ギア133が正回転方向R1に回転すると、第3駆動ギア135は、第3突起部135aが第1溝部133aの負回転方向R2側の端部に当接し、さらに正回転方向R1に押圧されることで正回転方向R1に回転する。開閉ギア138は、
図8に示す通り、第3駆動ギア135によって遮蔽板126とともにD6方向に移動する。すなわち、モータ115は、負回転方向R2にモータギア132を駆動させることで、遮蔽板126をD6方向に移動させ、開口125の前面を開放することが可能である。
【0090】
したがって、錠装置100は、モータ115によりモータギア132を正回転方向R1に回転させることで、ロック片121により扉15を施錠するとともに、遮蔽板126により開口125の前面を覆うことができる。また、錠装置100は、モータ115によりモータギア132を負回転方向R2に回転させることで、扉15を解錠するとともに、開口125の前面を開放することができる。すなわち、錠装置100は、ギアユニット129により、ロック片121及び遮蔽板126を連動させることができる。また、錠装置100は、ロック片121及び遮蔽板126を同一のモータ115によって移動させることができる。ゆえに、錠装置100は、モータ115の数を削減して錠装置100の部品点数を軽減すること及び錠装置100の稼働に係る電力を軽減することができる。
【0091】
第2駆動ギア134が回転方向に回転する一方、施解錠ギア137は、直線方向に移動する。すなわち、ギアユニット129は、第2駆動ギア134及び施解錠ギア137によって、モータ115の回転軸131における回転方向の駆動を直線方向の駆動に変換するように構成された変換機構を含むよう構成される。したがって、ギアユニット129は、第2駆動ギア134及び施解錠ギア137により、モータ115による回転駆動力をロック片121に対する直線方向の力に変換することができる。また、第3駆動ギア135が回転方向に回転する一方、開閉ギア138は、直線方向に移動する。すなわち、ギアユニット129は、第3駆動ギア135及び開閉ギア138によって、モータ115の回転軸131における回転方向の駆動を直線方向の駆動に変換するように構成された変換機構を含むよう構成される。したがって、ギアユニット129は、第3駆動ギア135及び開閉ギア138により、モータ115による回転駆動力を遮蔽板126に対する直線方向の力に変換することができる。なお、当該変換機構は、上述したような構成に限らず、ボールネジを用いてもよく、タイミングベルトを用いてもよい。
【0092】
また、上述したように、モータ115の回転軸131は、扉15の前面に平行な面(所定の平面、第1平面)に対し垂直方向に延びる。また、モータギア132は、扉15の前面に平行な面上で回転する。また、ギアユニット129は、モータギア132、第1駆動ギア133、第2駆動ギア134、第3駆動ギア135、施解錠ギア137、開閉ギア138及び手動ギア139が、扉の前面に平行な面上で回転又は移動する。すなわち、ギアユニット129を構成する複数のギアを扉15の前面に平行な面上で回転又は移動させてロック片121及び遮蔽板126を移動させる。したがって、錠装置100は、モータ115の回転軸131が延びる方向におけるギアユニット129の幅を狭めつつ、ロック片121及び遮蔽板126を移動させることができる。
【0093】
特に、扉15の前面に平行な面に沿って開閉ギア138が移動することで、遮蔽板126を扉15の前面に平行な面に沿うよう移動させることができる。したがって、錠装置100は、遮蔽板126の移動範囲を扉15の前面に沿わせるようにして、扉15の前面から外部空間方向V2に遮蔽板126が突出することを制限することができる。
【0094】
上記では、モータ115の回転軸131が扉の前面に平行な面に対し垂直方向に延びること、並びに、モータギア132及び第1駆動ギア133が、扉の前面に平行な面上で回転することを説明した。しかしながら、モータ115の回転軸131が扉の前面に平行な面上で回転する構成であってもよい。具体的には、モータ115の回転軸131が上下方向(つまり、扉の前面に平行な面上であって、D3-D4方向に対して垂直方向)に延び、モータギアが水平平面上(つまり、扉の前面に平行な面に対し垂直な面上)で回転し、モータギアと噛み合う第1駆動ギア133が扉の前面に平行な面上で回転する構成が考えられる。このような構成にすることで、ギアユニット129内のギア等の部品数を増加させることなく、モータを上下方向(つまり扉の前面に平行な面に沿う方向)で設置可能となり、錠装置100全体としてのV1-V2方向の幅を小さくすることができる。
【0095】
一例として、モータギア132及び第1駆動ギア133が互いに平行な面上で回転する場合は、モータギア132及び第1駆動ギア133は、平歯車、はすば歯車、やまば歯車、内歯車及びコニカルギア等のギア構成が考えられる。また、モータギア132が水平平面上で回転し、第1駆動ギア133が扉の前面に平行な面上で回転する場合は、モータギア132及び第1駆動ギア133は、すぐかさば歯車、まがりかさば歯車、フェースギア、ねじ歯車、ウォームギア、ハイポイドギア等のギア構成が考えられる。なお、これらギア構成に限らず、回転軸131の回転をギアユニット129に伝達できればよく、ベルトプーリー等を用いてもよい。
【0096】
ギアユニット129は、図示はしないがロック片121の位置(すなわちD3側の位置またはD4側の位置)を検出することが可能なセンサを備えている。モータ115は、モータギア132を負回転方向R2(すなわちロック片121をD3方向に移動させる方向)に所定時間回転させたあと、当該センサにより検出されるロック片121の位置がD4側の位置である場合、モータ115の駆動を停止させる。例えば、遮蔽板126により開口125の前面が覆われているときにロック片121が収容器10の枠体11のストライクに固着するような故障が発生し、ロック片121がストライクから外れないことがある。この場合、前述の通り、モータギア132が回転開始してから所定時間経過後であっても当該センサによりロック片121の位置がD4側の位置であるため、モータ115の駆動が停止する。これにより、モータ115によって消費される電力を軽減すること及びモータ115に係る負荷を軽減することができる。
【0097】
図7Cによると、このようにモータ115が回転開始してから所定時間経過後に駆動を停止させたとき、第3駆動ギア135の第3突起部135aは、第1駆動ギア133の第1溝部133aにおける負回転方向R2側の端部の近傍に位置する。すなわち、第3駆動ギア135は、正回転方向R1への回転が許容されるため、開閉ギア138がD6方向に移動することを許容する。これにより、管理者は、遮蔽板126をD6方向に手動(駆動力とは異なる外力)で移動させて開口125の前面を開放させ(
図5)、物理鍵128にキーを挿入してロック片121をストライクから外すことができる。
【0098】
このように、ギアユニット129は、第1駆動ギア133が第2駆動ギア134及び第3駆動ギア135の回転を許容することができる。具体的には、第1駆動ギア133を180°以上回転させることで、錠装置100は、ロック片121を筐体123からD4方向に突出させつつ開口125の前面を覆うよう遮蔽板126を位置させる状態となり、又は、ロック片121を筐体123の内部に収容しつつ開口125の前面を開放させる位置に遮蔽板126を位置させた状態となる。また、上記の状態から第1駆動ギア133を180°回転させることで、ギアユニット129は、ロック片121及び遮蔽板126の利用者及び管理者の手動による移動を許容することができる。すなわち、錠装置100は、ロック片121を筐体123からD4方向に突出させつつ開口125の前面を開放させる位置に遮蔽板126を手動で移動させた状態となることができ、又は、開口125の前面を覆うよう遮蔽板126を位置させつつ、ロック片121を筐体123の内部に手動で移動させた状態となることができる。したがって、ギアユニット129は、ロック片121及び遮蔽板126の一方のみを移動させることができる。
【0099】
上述した扉15を施錠する場合において、
図8に示す状態から、
図7Aに示すようにロック片121をD4方向に移動させ、遮蔽板126をD5方向に移動させ、次いで
図7Cに示すようにモータ115が第1駆動ギア133を正回転方向R1に略第1角度(例えば180°)回転させることを説明した。しかしながら、このように第1駆動ギア133を回転させることなく(
図7Aの状態から
図7Cの状態)、扉15の施錠に係るモータ115の稼働(つまり
図7Aの状態)を終了してもよい。これによれば、第3駆動ギア135の第3突起部135aは、第1駆動ギア133の第1溝部133aにおける正回転方向R1側の端部の近傍に位置する。すなわち、第3駆動ギア135は、正回転方向R1へ回転することが制限されるため、開閉ギア138がD6方向に移動することを制限する。したがって、ギアユニット129は、遮蔽板126をD6方向に手動(駆動力とは異なる外力)で移動させることを制限することができる。
【0100】
以上、本開示によれば、より使い勝手の良い錠装置及び収容器を提供することができる。より具体的には、収容器10の錠装置100は、外部空間側に形成された開口125に対応する位置に開口125を覆うように設置され、扉15の前面に平行な面に沿って移動可能に構成された遮蔽板126を有する。これにより、収容器10の錠装置100は、プロセッサ111で生成された制御信号に基づいて遮蔽板126の開閉を制御することによって、利用者に利用可能な収容器10を知覚させたり錠装置100を取っ手として利用可能にするだけでなく、意匠的に優れた錠装置100を提供することができる。
【0101】
5.その他
図1~
図8の例では、収容器10と当該収容器10を施解錠するための錠装置100により構成される場合について説明した。具体的には、
図1~
図8の例では、錠装置100の施解錠のために、有線又は無線で接続された利用者の端末装置300から解錠要求又は施錠要求を受信し、錠装置100で利用者の認証や制御信号を生成する場合について説明した。しかし、これに限らず、例えば端末装置300と有線又は無線で接続された制御装置200を介して制御するようにしてもよい。
【0102】
図9は、本開示の収容器10及び錠装置100の使用状態の一例を示す図である。具体的には
図9は、収容器10の一例であるロッカーに対して錠装置100が設置された場合の使用状態を示す図である。このような収容器10及び錠装置100は、一例としては下記のように利用される。まず、収容器10の利用者が所持する端末装置300は、当該利用者から当該利用者を識別したり認証したりするための識別情報や、当該収容器10の利用要求の入力を受け付ける。そして、当該入力がなされると、端末装置300は有線又は無線で接続された制御装置200に入力された識別情報や利用要求を送信する。なお、
図1に示すように収容器10が複数の区画に分割されている場合、端末装置300は、利用者が所望する区画を指定する情報の入力を受け付け、当該情報も制御装置200に送信することが可能である。また、識別情報、利用要求、区画を指定する情報等は、全て同時に送られる必要はなく、端末装置300の処理の進捗に応じて送信されてもよい。
【0103】
制御装置200は、端末装置300から識別情報、利用要求、区画を指定する情報等を受信すると、受信した情報に基づいて利用者の認証を行う。利用者が正当な権限を有する利用者であることが識別されると、制御装置200は、有線又は無線で接続された錠装置100に対して制御信号を送信する。制御装置200は、利用者が収容器10の利用を要求しているため、錠装置100に対して収容器10を施錠するロック片を解錠するための開信号を制御信号として送信する。しかし、これに限らず、錠装置100に対して収容器10を施錠するための閉信号を制御信号として送信することも可能である。
【0104】
錠装置100は、制御装置200から制御信号を受信すると、収容器10に対して施解錠処理を実行する。以下、錠装置100の動作は
図1~
図8の例と同様である。
【0105】
また、
図1~
図8の例では、扉15はその一端に設けられた回転軸を中心として、内部空間方向又は外部空間方向に回転するように開く場合について説明した。しかし、扉15は、このような開き戸に限らず、引き戸、グライドスライドドア、引込み扉、折戸、回転扉などであっても同様に本開示に係る錠装置100を適用することが可能である。
【0106】
また、
図1~
図8の例では、遮蔽板126はD3方向又はD4方向に移動する場合について説明した。しかし、この例に限らず、遮蔽板126は長辺方向に設けられた回転軸に沿って内部空間方向又は外部空間方向に回転するものであってもよいし、折りたたまれて収納されるものであってもよい。
【0107】
また、錠装置100は、遮蔽板126及びロック片121を上下方向に移動させる構成にしてもよい。また、錠装置100は、所定の面に沿って遮蔽板126及びロック片121を回動させる構成にしてもよい。さらには、
図1~
図8の例では、扉15の前面に平行な面を所定の面としたが、所定の面は、例えば扉15の前面に平行な面を左右方向を軸に所定角度傾けた面及び表示パネル124の表面のような、扉15の前面以外の面に平行な面であってもよい。
【0108】
また、上記では、錠装置100のギアユニット129について、複数のギアを含む具体的な構成を説明したが、当該具体的は一例であり、当該複数のギアのすべてを用いる必要はなく、また、当該ギアユニット129の構成に限られない。例えば、第1駆動ギア133、第2駆動ギア134及び第3駆動ギア135は、それぞれに形成された突起部に代えて対応する溝部を形成し、溝部に代えて対応する突起部を形成してもよい。また、第1駆動ギア133に形成された第1溝部133aは、第1駆動ギア133を貫通するよう説明したが、第1駆動ギア133における第3駆動ギア135側の面に形成される溝(すなわち第1駆動ギア133を貫通しない構成)であってもよい。第2駆動ギア134の第2溝部134aについても同様である。また、複数のギアは、例えば、ベベルギアを用いてもよく、マグネットギアを用いてもよい。また、ギアユニット129は、複数のギアに代えて、例えば、ベルトプーリーを用いてもよく、シャフトを用いてもよい。すなわち、ギアユニット129は、モータ115の駆動力を遮蔽板126及びロック片121に伝達することができればよい。
【0109】
また、本開示における利用者の認証は、TOTP(Time-based One-time Password)を用いてもよい。具体的には、プロセッサ111は、例えばメモリ112及びプロセッサ111によって記憶及び計時される時刻情報と、予めメモリ112に記憶されるハッシュ値とを用いて、所謂ワンタイムパスコードを生成する。また、端末装置300は、プロセッサ111と同様に、時刻情報及びハッシュ値を用いて、ワンタイムパスコードを生成する。これにより、利用者が入力インターフェイス113に操作入力した、端末装置300が生成したワンタイムパスコードと、プロセッサ111が生成したワンタイムパスコードとを照合することで、プロセッサ111は、利用者の認証を行うことができる。
【0110】
また、上述した制御装置200は、所謂タブレット端末を備えてもよく、当該タブレット端末のカメラによって撮像される顔認証又は二次元バーコードを用いて認証を行ってもよい。また、上述した制御装置200は、ICカードリーダを備えてもよく、利用者及び管理者が所有するICカード又はICカードと同様の機能を有する端末(スマートフォンやスマートウォッチ等等)がかざされた際に読み取る識別情報を用いて認証を行ってもよい。また、上述した制御装置200は、指紋、静脈、声紋及び網膜等の生体情報を読み取ることが可能な装置を備え、当該生体情報を用いて認証してもよい。すなわち、制御装置200は、あらゆる認証方法で利用者の認証を行い、錠装置100を制御するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0111】
10 収容器
12 内部空間
15 扉
16 外部空間
100 錠装置
111 プロセッサ
115 モータ
121 ロック片
122a センサ
123 筐体
125 開口
126 遮蔽板
127a 電池
128 物理鍵
129 ギアユニット(駆動伝達機構)
131 回転軸(モータの回転軸)
133 第1駆動ギア(連動機構、第1駆動伝達部材)
133a 第1溝部(溝部)
133b 第1突起部(突起部)
134 第2駆動ギア(連動機構、第2駆動伝達部材)
135 第3駆動ギア(連動機構、第3駆動伝達部材)
137 施解錠ギア(変換機構)
138 開閉ギア(変換機構)