(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165517
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】駆動用バッテリの脱落抑制装置
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20241121BHJP
B62D 21/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B60K1/04 Z ZHV
B62D21/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081778
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100176946
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 智恵
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 直龍
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA13
3D203BA03
3D203CA25
3D203CA43
3D203CA45
3D203CB09
3D235AA06
3D235BB03
3D235CC14
3D235DD37
3D235EE14
3D235EE64
3D235FF02
3D235FF06
3D235HH26
(57)【要約】
【課題】駆動用バッテリが車両から脱落することを抑制する。
【解決手段】前記駆動用バッテリを覆うケーシング5と、車両の車幅方向にそれぞれ備えられる左側サイドレール21と右側サイドレール21と、ケーシング5と左側サイドレール21とを繋ぎ上方から下方に向け車幅方向の内側に傾斜する第1傾斜部を有する第1ブラケット6と、ケーシング5と右側サイドレール21とを繋ぎ上方から下方に向け車幅方向の内側に傾斜する第2傾斜部を有する第2ブラケットと、左側サイドレール21に取り付けられ第1ブラケット6を車幅方向の外側から覆う第1脱落抑制部90Lと、右側サイドレールに取り付けられ第2ブラケットを前記車幅方向の外側から覆う第2脱落抑制部90Rと、を備え、ケーシング5が外部衝撃により車幅方向へ移動した際に、第1傾斜部と第1脱落抑制部90L、または、第2傾斜部と第2脱落抑制部90Rとが当接する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される駆動用バッテリの脱落抑制装置であって、
前記駆動用バッテリの少なくとも一部を覆うケーシングと、
前記車両の車幅方向にそれぞれ備えられる左側サイドレールと右側サイドレールと、
前記ケーシングと前記左側サイドレールとを繋ぎ上方から下方に向け車幅方向の内側に傾斜する第1傾斜部を有する第1ブラケットと、
前記ケーシングと前記右側サイドレールとを繋ぎ前記上方から前記下方に向け前記車幅方向の内側に傾斜する第2傾斜部を有する第2ブラケットと、
前記左側サイドレールに取り付けられ前記第1ブラケットを前記車幅方向の外側から覆うように配置される第1脱落抑制部と、
前記右側サイドレールに取り付けられ前記第2ブラケットを前記車幅方向の外側から覆うように配置される第2脱落抑制部と、を備え、
前記ケーシングが外部衝撃により前記車幅方向へ移動した際に、前記第1傾斜部と前記第1脱落抑制部とが、または、前記第2傾斜部と前記第2脱落抑制部とが当接する
ことを特徴とする、駆動用バッテリの脱落抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック等の大型の電動車両に用いて好適の駆動用バッテリの脱落抑制装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、環境への負荷を低減する観点から、乗用車等の小型車両において、駆動用バッテリの電力をモータに供給することで走行する電気自動車やハイブリッド自動車や燃料電池車等の電動車両の開発が進んでいる。さらに、近年では、トラック等の大型車両の分野においても、電動車両の開発が行われている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、乗用車等の小型車両の場合、駆動用バッテリは、車体の内部に搭載されることを前提としており、車両の衝突による衝撃荷重が駆動用バッテリに直接印加されないため、駆動用バッテリの筐体の耐荷重強度を比較的低く設定することが可能である。
【0005】
これに対して、トラック等の大型車両の場合、ラダーフレームの下方に駆動用バッテリが露出して配置されることがあり、駆動用バッテリの大きさによっては、駆動用バッテリがラダーフレームのサイドレールよりも車幅方向外側まで配置されることがある。この場合、車両側面に乗用車が衝突すると、駆動用バッテリに高い衝撃荷重が印加されうる。
【0006】
なお、駆動用バッテリがラダーフレームのサイドレールよりも車幅方向外側まで配置されない場合でも、ラダーフレームの下方に駆動用バッテリが露出している場合は、車両側面に乗用車などが衝突しサイドレール下方から駆動用バッテリに高い衝撃荷重が印加されうることも考えられる。
仮に、想定よりも大きな衝撃荷重が加えられた場合は、駆動用バッテリがラダーフレームから脱落する虞が考えられる。
【0007】
本件は、上記のような課題に着目して創案されたものであり、駆動用バッテリが車両から脱落することを抑制することができる駆動用バッテリの脱落抑制装置を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本件は上記の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現できる。
本適用例に係る駆動用バッテリの脱落抑制装置は、車両に搭載される駆動用バッテリの脱落抑制装置であって、前記駆動用バッテリの少なくとも一部を覆うケーシングと、前記車両の車幅方向にそれぞれ備えられる左側サイドレールと右側サイドレールと、前記ケーシングと前記左側サイドレールとを繋ぎ上方から下方に向け車幅方向の内側に傾斜する第1傾斜部を有する第1ブラケットと、前記ケーシングと前記右側サイドレールとを繋ぎ前記上方から前記下方に向け前記車幅方向の内側に傾斜する第2傾斜部を有する第2ブラケットと、前記左側サイドレールに取り付けられ前記第1ブラケットを前記車幅方向の外側から覆うように配置される第1脱落抑制部と、前記右側サイドレールに取り付けられ前記第2ブラケットを前記車幅方向の外側から覆うように配置される第2脱落抑制部と、を備え、前記ケーシングが外部衝撃により前記車幅方向へ移動した際に、前記第1傾斜部と前記第1脱落抑制部とが、または、前記第2傾斜部と前記第2脱落抑制部とが当接することを特徴としている。
【0009】
本適用例によれば、ケーシングが外部衝撃により前記車幅方向へ移動した際に、第1傾斜部と第1脱落抑制部とが、または、第2傾斜部と第2脱落抑制部とが当接することによって、第1脱落抑制部または第2脱落抑制部を介してケーシングが何れかのサイドレールに係止され、脱落が抑制される。
【発明の効果】
【0010】
本件によれば、第1脱落抑制部または第2脱落抑制部を介してケーシングが何れかのサイドレールに係止され、脱落が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る駆動用バッテリの支持装置の構造を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す駆動用バッテリの車体への組み付け状態を示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係る駆動用バッテリの脱落抑制装置の脱落抑制部のサイドレールへの組み付け前の状態を示す斜視図である。
【
図4】
図3に示す脱落抑制部のサイドレールへの組み付け状態を示す斜視図である。
【
図5】実施形態に係る駆動用バッテリの支持状態を車体前方から見た状態で示す模式図である。
【
図6】実施形態に係る駆動用バッテリの脱落抑制の概念を、
図5と対応させて示す模式図である。
【
図7】
図3に示す駆動用バッテリの脱落抑制装置の作用を
図5と対応させて示す要部模式図であり、(a)は一方からの側突前の状態を示し、(b)は一方からの側突後の一次状態を示し、(c)は一方からの側突後の二次状態を示す。
【
図8】
図3に示す駆動用バッテリの脱落抑制装置の作用を
図5の要部と対応させて示す模式図であり、(a)は他方からの側突前の状態を示し、(b)は他方からの側突後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照して、本件の実施形態について説明する。以下の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。下記の実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。また、必要に応じて取捨選択でき、あるいは適宜組み合わせられる。
【0013】
[1.構成]
[1-1.全体構成]
図1に示すように、本実施形態に係る車両用バッテリパックの支持装置(単に、「支持装置」ともいう)1は、車体の骨格をなすラダーフレーム2を備えた電動トラック3に搭載される。電動トラック3は、駆動用バッテリパック(「駆動用バッテリ」、単に、「バッテリパック」ともいう)4の電力を図示しない電動モータに供給することで走行する電動車両である。電動車両には、内燃機関を装備しない純粋な電気自動車のほかに、駆動源又は発電用の内燃機関を装備したハイブリッド車や燃料電池車も電動車両に含むものとする。また、電動トラック3については、「電動車両3」又は「車両3」とも言う。
【0014】
以下、電動トラック3の前後方向を車長方向D1ともいい、電動トラック3の左右方向を車幅方向D2ともいう。また、前後方向と左右方向とのいずれにも直交する上下方向を車高方向D3ともいう。図面では、前方を「FR」で示し、後方を「RR」で示し、左方を「LH」で示し、右方を「RH」で示し、上方を「UP」で示し、下方を「DW」で示す。なお、
図4には、電動トラック3の下部構造を示しており、ラダーフレーム2の上方に配置される上部構造(ボデー)は省略している。
【0015】
ラダーフレーム2は、電動トラック3の骨格をなす部材であって、高い剛性及び強度を有する。ラダーフレーム2は、車長方向D1に延びる一対のサイドレール21と、車幅方向D2に延びてサイドレール21同士を連結する複数のクロスメンバ22とを含む。
一対のサイドレール21は、車幅方向D2に互いに離間して配置される。各サイドレール21は、車長方向D1及び車高方向D3に沿う板状のウェブ部21aと、このウェブ部21aの上縁及び下縁から車幅方向D2の内側に向けて延出する一対の板状のフランジ部21b,21cとを有するチャネル形状(断面U字状)に形成される。
複数のクロスメンバ22は、車長方向D1に互いに離間して複数配置される。ここでは、バッテリパック4と車高方向D3において重なる位置、及びバッテリパック4よりも後方の位置の二か所にそれぞれ配置された二つのクロスメンバ22を例示する。
【0016】
バッテリパック4は、例えば乗用車に用いられる汎用の高電圧バッテリパックが適用される。電動トラック3において、バッテリパック4は、一対のサイドレール21の下方に搭載され、各サイドレール21よりも車幅方向D2の外側に突出している。ここでは、車高方向D3の寸法が車長方向D1及び車幅方向D2の各寸法よりも小さい(薄い)箱型のバッテリパック4を例示する。ただし、バッテリパック4の形状は特に限定されない。
【0017】
バッテリパック4は、車幅方向D2の外側にそれぞれ向く一対のバッテリ側面41,42を有する。一対のバッテリ側面41,42は、一対のサイドレール21よりも車幅方向D2の外側にそれぞれ位置する。より具体的にいえば、右のバッテリ側面41は右のサイドレール21よりも右側に位置し、左のバッテリ側面42は左のサイドレール21よりも左側に位置する。
【0018】
バッテリパック4は、上記のようにバッテリ側面41,42がサイドレール21よりも車幅方向D2の外側に配置されることから、車幅方向D2の寸法がサイドレール21のウェブ部21a間の距離よりも大きく確保されている。これにより、バッテリパック4は大容量化が図られている。また、バッテリパック4は、電動トラック3の航続距離を確保するうえでは、前輪軸と後輪軸との間の広範囲にわたって配置されることが好ましい。比較的小型な(ホイールベースが比較的短い)電動トラック3では、一つのバッテリパック4がホイールベースのほぼ全域にわたって配置されうる。この場合、バッテリパック4の前方には前輪が近接して配置され、バッテリパック4の後方には後輪が近接して配置される。
【0019】
なお、電動トラック3のサイズ及びバッテリパック4の個数は、本実施形態の例示に限定されない。比較的大型の(ホイールベースが比較的長い)電動トラック3では、複数のバッテリパック4が車長方向D1に並んで設けられてもよい。この場合も、ホイールベースの広範囲にわたって複数のバッテリパック4が配置されることで、バッテリパック4全体としての大容量化が図られ、航続距離を確保できる。
【0020】
支持装置1は、バッテリパック4をサイドレール21に連結し、バッテリパック4を支持する。換言すれば、バッテリパック4は、支持装置1を介してサイドレール21に支持されている。本実施形態では、車幅方向D2の中心を通り車長方向D1に延在する鉛直面を対称面として、左右対称(面対称)に構成された支持装置1を例示する。
【0021】
図2に示すように、支持装置1は、バッテリパック4を収容するバッテリ側ブラケット(ケーシング)5と、バッテリ側ブラケット5及びサイドレール21(
図4参照)を連結するフレーム側ブラケット6とを含む。バッテリ側ブラケット5は、バッテリパック4の外周に配置される外壁体であって、バッテリパック4を衝撃荷重から保護する機能をもつ。一方、フレーム側ブラケット6は、サイドレール21から車幅方向D2の外側かつ下方へ延びており、バッテリ側ブラケット5に収容されたバッテリパック4をサイドレール21から吊り下げる機能をもつ。
【0022】
本実施形態のバッテリ側ブラケット5は、バッテリパック4の前縁部を覆うように配置されるメインブラケット(前ブラケット)7Fと、バッテリパック4の後縁部を覆うように配置されるメインブラケット(後ろブラケット)7Rと、バッテリパック4の右側縁部40RHを覆うエンドクロスメンバ(右ブラケット)8Rと、バッテリパック4の左側縁部40LHを覆うエンドクロスメンバ(左ブラケット)8Lと、を有する。
【0023】
なお、一対のメインブラケット7F,7Rは互いに同様の形状であり、これらを区別しない場合は、メインブラケット7又はブラケット7とも言う。また、一対のエンドクロスメンバ8R,8Lも互いに同様の形状であり、これらを区別しない場合は、単に、エンドクロスメンバ8、側縁部ブラケット8又はブラケット8とも言う。
【0024】
一対のメインブラケット7F,7Rの概略形状は、車幅方向D2の中心を通り車長方向D1に延在する鉛直面を対称面として互いに左右対称に形成される。メインブラケット7F,7R同士も互いに面対称に形成される。
一対の各エンドクロスメンバ8R,8Lも、車長方向D1の中心を通り車幅方向D2に延在する鉛直面を対称面として互いに前後対称に形成される。エンドクロスメンバ8R,8L同士も互いに面対称に形成される。
【0025】
本実施形態の各メインブラケット7F,7R及びエンドクロスメンバ8R,8Lはいずれも、鋼板で形成されており、チャネル形状に形成されている。バッテリ側ブラケット5は、これらのメインブラケット7F,7R及びエンドクロスメンバ8R,8Lにより、バッテリパック4の四方を囲むように配置される。
【0026】
また、本実施形態では、各メインブラケット7F,7R及びエンドクロスメンバ8R,8L(即ち、バッテリ側ブラケット5)の材料には、高張力鋼が用いられている。高張力鋼板は、例えば引張強度が490MPa以上で1000MPa未満と定義される鋼材であるが、薄肉化が可能であり、耐食性があるという利点があり、これを用いることで、バッテリ側ブラケット5、延いては、支持装置1を、耐荷重強度を高めつつ軽量化することができる。なお、支持装置1に要求される耐荷重強度は、車両が衝突側面衝突や前面衝突や後面衝突したときに、支持装置1が一定の突荷重を受けても、バッテリパック4のケースを損傷させるほどには変形しない程度の強度である。
【0027】
ただし、バッテリ側ブラケット5の材料はこれに限定されるものでなく、他の鋼材、或いは、鋼材以外の材料を適用してもよい。より引張強度が高い鋼材に、例えば引張強度が1000MPa以上と定義される超高張力鋼を用いればより軽量化が図れるが、現状では、超高張力鋼は、高張力鋼に比べて加工が困難であり、コスト増も招くので、本実施形態では高張力鋼を適用している。
なお、高張力鋼や超高張力鋼は、製造メーカなどにより定義が異なる場合がある。そのため、上記の490MPa以上や1000Mpaは、数値の目安として例示的に記載しているものである。
【0028】
図2に示すように、フレーム側ブラケット6は、メインブラケット7及びエンドクロスメンバ8が互いに重なり結合された重合部51の上部に、それぞれの下部が固定される。また、フレーム側ブラケット6は、
図1に示すように、サイドレール21のウェブ部21aに固定される。フレーム側ブラケット6は、電動トラック3の左右(各サイドレール21の車幅方向D2の外側)に二つずつ(合計四つ)設けられる。
【0029】
図3に示すように、各フレーム側ブラケット6は、バッテリ側ブラケット(ケーシング)5とサイドレール21とを繋ぐもので、バッテリ側ブラケット5に結合される第1部材61と、フレーム側のサイドレール21に結合される第2部材62と、第1部材61と第2部材62との間に介装されるインシュレータ63とからなる。
【0030】
第1部材61は、重合部51にボルト及びナット64で締結されるベースプレート部61aと、ベースプレート部61aの上方に形成されてインシュレータ63の一側を収容する断面略コ字状のインシュレータ当接部61bとを備えており、例えば板金を屈曲形成することで形成することができる。インシュレータ当接部61bのベースプレート部61aと接続する部分には、上方から下方に向け車幅方向の内側に傾斜する平面状の傾斜部61cが備えられる。
【0031】
また、第1部材61のベースプレート部61aと傾斜部61cとの間の空間内の両端部(車両前後方向両端部)には、補強プレート61dが介装される。インシュレータ当接部61bの傾斜部61cの上方の断面略コ字状の空間内の両端部(車両前後方向両端部)には、補強プレート61eが介装される。
【0032】
第2部材62は、インシュレータ63の他側を収容するボックス状のインシュレータ当接部62aと、インシュレータ当接部62aの両側に突設しサイドレール21にボルト及びナット65で結合されるフランジ状部62bとを備えており、例えば板金を屈曲形成することで形成することができる。
【0033】
なお、第1部材61のベースプレート部61aは、車幅方向外側2点、車幅方向内側1点の3点で、それぞれボルト及びナット64で重合部51に締結される。ただし、締結用のボルト及びナット64の数や位置はこれに限定されない。例えば、車幅方向内側1点のボルト及びナット64は、ベースプレート部61aと傾斜部61cとからなる空間内の奥にあり、締結作業性が悪く締結作業の自動化が困難なため、省略することも考えられる。
【0034】
また、第2部材62の各フランジ状部62bは、上下方向に並んだ複数(ここでは4本)のボルト及びナット65でサイドレール21のウェブ部21aに縦横に規則的に並んで設けられた車両部品取付用孔21dを利用してそれぞれ締結される。ただし、締結用のボルト及びナット65の数や位置はこれに限定されない。
【0035】
図5は、フレーム側ブラケット6による両サイドレール21,21へのバッテリパック4の取付構造を模式化して示すものである。図示するように、バッテリパック4は、両サイドレール21,21の各外側(車幅方向外側)において、フレーム側ブラケット6を介して取り付けられる。つまり、両サイドレール21,21の外側から各フレーム側ブラケット6で挟み込むようにして取り付けられている。なお、
図5及び後述の
図6~8では、フレーム側ブラケット6の第2部材62を省略している。
【0036】
したがって、この支持構造によれば、フレーム側ブラケット6の第1部材61と第2部材62との間に介装されるインシュレータ63が変形しながら、車両3の振動のバッテリパック4への伝達を抑制する効果がある。しかし、この一方で、車両の側突時(側面衝突時)には、インシュレータ63が変形してフレーム側ブラケット6がサイドレール21から脱落する虞がある。
【0037】
ただし、
図6に示すように、左右のフレーム側ブラケット6の一方がサイドレール21から脱落しても、他方がサイドレール21に係止されていれば、バッテリパック4について一定の安全性を確保することができる。これに対して、全てのフレーム側ブラケット6がサイドレール21から脱落してしまうと、バッテリパック4が車両3から離れてしまうため、バッテリパック4についての安全性を確保することがでない。
そこで、車両3の側突時に、少なくとも
図6に示すように、何れかのフレーム側ブラケット6がサイドレール21に係止され易くするために、本車両3には、駆動用バッテリの脱落抑制装置9が装備される。
【0038】
[1-2.駆動用バッテリの脱落抑制装置]
本脱落抑制装置9は、
図1及び
図3に示すように、左側サイドレール21に連結され傾斜部(第1傾斜部)61cを有するフレーム側ブラケット(第1ブラケット)6と、右側サイドレール21に連結され傾斜部(第2傾斜部)61cを有するフレーム側ブラケット(第2ブラケット)6と、左側サイドレール21に取り付けられ第1ブラケット6を車幅方向の外側から覆うように配置される脱落抑制部材(第1脱落抑制部)90Lと、右側サイドレール21に取り付けられ第2ブラケット6を車幅方向の外側から覆うように配置される脱落抑制部材(第2脱落抑制部)90Rと、を備えている。
【0039】
脱落抑制部材(第1脱落抑制部)90Lと脱落抑制部材(第2脱落抑制部)90Rとは、左右対称であるが同一構造であるので、左側サイドレール21に取り付けられる脱落抑制部材90Lを例に説明する。以下、脱落抑制部材の左右を区別せずに、符号90を用いて説明する。
【0040】
図3及び
図4に示すように、脱落抑制部材90は、平面視でハット型形状を有し、フレーム側ブラケット6を覆うように配置されるコ字状部91と、コ字状部91の基端から左右(車両前後方向)に突出するフランジ型部92とをそなえている。
フランジ型部92には、ボルト孔92a,92aが形成され、車両部品取付用孔21dを利用してそれぞれボルト及びナット93でサイドレール21のウェブ部21aに締結される。
【0041】
コ字状部91には、下方に垂下した延設部91aが設けられ、延設部91aには、
図3に示すように、脱落抑制部材90をサイドレール21に取り付けた状態で、フレーム側ブラケット6の傾斜部61cに向けて水平に突出する突起部94が突設されている。突起部94の先端94aは、一旦拡径したのちテーパ状に縮径しており、拡径する手前の部分94bは釣り針の返しのような形状(返し状)に形成されている。
【0042】
また、第1部材61の傾斜部61cにおいて、突起部94の先端94aに対向する箇所には、突起部94の先端94aが進入可能な孔部95が形成されている(
図7(a)参照)。フレーム側ブラケット6が突起部94に接近する方向に変位していくと、突起部94の先端94aが孔部95内に進入し、進入後は、突起部94が孔部95から離脱する方向に第1部材61が移動しようとしても、突起部94の返し状の部分94bが孔部95の周縁に係合して、突起部94の先端94aの孔部95内からの離脱が抑制されるようになっている。
【0043】
なお、本実施形態では、延設部91aはコ字状部91と一体に形成されるが、延設部91aをコ字状部91と別体に形成し、コ字状部91に固定してもよい。また、本実施形態では、突起部94は、ピン状に形成され、延設部91aを固定されているが、延設部91aの一部を屈曲形成して板状の突起部として形成してもよい。
【0044】
また、
図1に示すように、本実施形態では、駆動用バッテリパック4の平面視で対角線上の2つのフレーム側ブラケット6のみに、脱落抑制部材90が装備されている。ただし、脱落抑制部材90は、駆動用バッテリパック4の平面視で四隅のフレーム側ブラケット6の全てに装備してもよく、車両前方の左右のフレーム側ブラケット6のみにフレーム側ブラケット6を装備してもよく、車両後方の左右のフレーム側ブラケット6のみにフレーム側ブラケット6を装備してもよい。
【0045】
また、本実施形態では、
図2に示すように、バッテリ側ブラケット5(駆動用バッテリパック4)の車幅方向変位を規制するストッパ10が各フレーム側ブラケット6に対応するように4か所にそれぞれ設けられている。
【0046】
なお、
図7(a)に示すように、脱落抑制部材90のコ字状部91と、第1部材61のインシュレータ当接部61bとの対抗面同士の距離d1は、ストッパ10のストッパ面とこのストッパ面が当接するサイドレール21のフランジ部の先端縁部との距離d2と同程度に設定されている。
さらに、突起部94の先端94aと第1部材61の傾斜部61cの孔部95との距離d3は、距離d1,d2よりも僅かに短く設定されている。
【0047】
[2.作用及び効果]
本実施形態に係る脱落抑制装置9は、上記のように構成されているので、以下のような作用及び効果を得ることができる。
【0048】
図7は、車両が右側方(
図7中では左側)からの側突で、
図7(a)の状態から、
図7(b)に矢印A1で示すように変位した場合や、
図7(c)に矢印A2で示すように一層変位した場合を示す。これらの場合には、突起部94の先端94aが第1部材61の傾斜部61cの孔部95内に進入し、その後、脱落抑制部材90のコ字状部91と、第1部材61のインシュレータ当接部61bとが当接すると共に、ストッパ10のストッパ面とこのストッパ面が当接するサイドレール21のフランジ部の先端縁部とが当接する。
この結果、例えば、突起部94の先端94aの返し状の部分94bが、孔部95の縁部に係止され突起部94の孔部95からの離脱が抑制される。したがって、フレーム側ブラケット6は、脱落抑制部材90を通じてサイドレール21に係止されることになり、フレーム側ブラケット6のサイドレール21からの脱落が抑制され、駆動用バッテリパック4の車両3からの脱落が抑制される。
【0049】
図8は、車両が左側方(
図8中では右側)からの側突で、
図8(a)の状態から、
図8(b)に矢印A3で示すように変位した場合を示す。この場合には、突起部94の先端94aが傾斜部61cの外面を下方から支持し、コ字状部91が変形したインシュレータ当接部61bの外面を下方から支持する。
この結果、フレーム側ブラケット6のサイドレール21からの脱落が抑制され、駆動用バッテリパック4の車両3からの脱落が抑制される。
【0050】
[3.その他]
上記実施形態の構成は一例であって、本件発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
例えば、上記実施形態では、駆動用バッテリの支持装置をトラックに適用した例を説明したが、本件の駆動用バッテリの支持装置は、トラック以外の車両に適用してもよい。
また、上記実施形態では、駆動用バッテリの支持装置をサイドレール21に連結してサイドレール21に支持させているが、サイドレール21以外の車両の構造要素に連結して支持させてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、駆動用バッテリ4及び駆動用バッテリの支持装置1がサイドレール21に対し車幅方向外側まで配置される例を説明したが、本件の駆動用バッテリと駆動用バッテリの支持装置は、左右のサイドレール21間に収まっていても構わない。駆動用バッテリと駆動用バッテリの支持装置がサイドレール21よりも下方に突出している場合、側面衝突した乗用車などがサイドレール21の下方から駆動用バッテリの支持装置に衝撃を与えた場合などにも本発明は駆動用バッテリへの衝撃を抑制する効果を有する。
【符号の説明】
【0052】
1 駆動用バッテリの支持装置(支持装置)
2 ラダーフレーム
3 電動トラック(電動車両、車両)
4 駆動用バッテリパック(駆動用バッテリ、バッテリパック)
5 バッテリ側ブラケット(ケーシング)
6 フレーム側ブラケット(第1ブラケット、第2ブラケット)
7F,7 メインブラケット(前ブラケット)
7R,7 メインブラケット(後ろブラケット)
8R,8 エンドクロスメンバ(右ブラケット)
8L,8 エンドクロスメンバ(左ブラケット)
9 脱落抑制装置
10 ストッパ
21 サイドレール(右側サイドレール、左側サイドレール)
21a サイドレール21のウェブ部
21b,21c サイドレール21のフランジ部
21d 車両部品取付用孔
22 クロスメンバ
41,42 バッテリ側面
51 重合部
61 フレーム側ブラケット6の第1部材
61a ベースプレート部
61b インシュレータ当接部
61c 傾斜部(第1傾斜部、第2傾斜部)
61d補強プレート
61e 補強プレート
62 フレーム側ブラケット6の第2部材
62a インシュレータ当接部
62b フランジ状部
63 インシュレータ
64,65 ボルト及びナット
90 脱落抑制部材
90L 脱落抑制部材(第1脱落抑制部)
90R 脱落抑制部材(第2脱落抑制部)
91 コ字状部
91a 延設部
92 フランジ型部
92a ボルト孔
93 ボルト及びナット
94 突起部
94a 突起部94の先端
94b 返し状の部分
95 孔部
d1 コ字状部91とインシュレータ当接部61bとの距離
d2 ストッパ10とサイドレール21のフランジ部の先端縁部との距離
d3 突起部94の先端94aと傾斜部61cの孔部95との距離
D1 車長方向
D2 車幅方向
D3 車高方向
FR 前方
RR 後方
LH 左方
RH 右方
UP 上方
DW 下方