IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ タウンドクター株式会社の特許一覧

特開2024-165530業務支援サーバ、及び、コンピュータプログラム
<>
  • 特開-業務支援サーバ、及び、コンピュータプログラム 図1
  • 特開-業務支援サーバ、及び、コンピュータプログラム 図2
  • 特開-業務支援サーバ、及び、コンピュータプログラム 図3
  • 特開-業務支援サーバ、及び、コンピュータプログラム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165530
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】業務支援サーバ、及び、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/60 20180101AFI20241121BHJP
【FI】
G16H20/60
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081806
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】523184353
【氏名又は名称】タウンドクター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山上 慶
(72)【発明者】
【氏名】公受 裕樹
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】管理栄養士が栄養指導を行う際の栄養指導業務を支援するための業務支援技術を提供する。
【解決手段】管理栄養士が栄養指導の対象者に対して行う栄養指導業務を支援する業務支援サーバであって、前記管理栄養士が使用する端末へ、前記対象者に対して行う質問のリストを送信し、前記リストに含まれる質問に対する前記対象者による回答に基づく前記管理栄養士による前記対象者の評価情報を受信する通信手段と、前記評価情報に基づいて、前記対象者の心理レベルを判定する判定手段と、判定した前記心理レベルに基づいて、前記対象者に対する栄養指導において参照すべき指導情報を生成する生成手段とを備え、前記指導情報は前記心理レベルに応じて異なり、前記通信手段は前記指導情報を前記端末へ送信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管理栄養士が栄養指導の対象者に対して行う栄養指導業務を支援する業務支援サーバであって、
前記管理栄養士が使用する端末へ、前記対象者に対して行う質問のリストを送信し、前記リストに含まれる質問に対する前記対象者による回答に基づく前記管理栄養士による前記対象者の評価情報を受信する通信手段と、
前記評価情報に基づいて、前記対象者の心理レベルを判定する判定手段と、
判定した前記心理レベルに基づいて、前記対象者に対する栄養指導において参照すべき指導情報を生成する生成手段と、
を備え、
前記指導情報は前記心理レベルに応じて異なり、
前記通信手段は前記指導情報を前記端末へ送信する、業務支援サーバ。
【請求項2】
前記質問のリストは、前記対象者の意識の変化、行動の変化、現状把握度、現状に対する危機感、現状を改善することに対する意欲、及び、前記対象者が栄養指導や前記管理栄養士に対して強い抵抗を感じている状況にあるかどうかを判定するための質問を、それぞれ少なくとも1つ含む、請求項1に記載の業務支援サーバ。
【請求項3】
前記評価情報は、前記質問のリストに含まれる各質問について前記管理栄養士により付与された評価点を含み、
前記判定手段は、前記評価点の合計に基づき前記心理レベルを判定する、請求項2に記載の業務支援サーバ。
【請求項4】
前記評価情報により、前記対象者が栄養指導や前記管理栄養士に対して強い抵抗を感じている状況にあると評価されている場合、前記判定手段は前記評価点の合計に関わらず前記心理レベルを所定レベルと判定する、請求項3に記載の業務支援サーバ。
【請求項5】
前記判定手段は、前記対象者の心理レベルを、トランスセオレティカルモデルに基づき、レベル1からレベル4までの4段階で判定し、
前記レベル1は、前記所定レベルに対応し、前記対象者が栄養指導や前記管理栄養士に対して強い抵抗を感じている状況、又は、前記対象者が指導されたことを実行しない状態にあること指し、
レベル2は、前記対象者が前記指導されたことを実行する可能性がある状態にあること指し、
レベル3は、前記対象者が自発的に行動するが、自立していない状態にあることを指し、
前記レベル4は、前記対象者が自立している状態を指す、請求項4に記載の業務支援サーバ。
【請求項6】
前記質問のリストを生成する生成手段を更に備え、
前記生成手段は、前記対象者に対する指導が初回の場合には、初回用の質問リストを生成し、
前記対象者に対する指導が2回目以降の場合には、前回の指導において判定された前記心理レベルに応じた質問のリストを生成する、請求項5に記載の業務支援サーバ。
【請求項7】
前記生成手段は、同趣旨の質問であっても、前記対象者の心理レベルに応じた表現において質問を生成する、請求項6に記載の業務支援サーバ。
【請求項8】
前記生成手段は、前記同趣旨の質問の回答に要求される情報の詳細度を前記対象者の心理レベルに応じて変更するように質問を生成する、請求項7に記載の業務支援サーバ。
【請求項9】
前記指導情報は、前記判定手段により判定された前記対象者の前記心理レベルに応じて、前記管理栄養士の前記対象者に対する接し方に関する経験や知識の不足を補う情報を含む、請求項8に記載の業務支援サーバ。
【請求項10】
コンピュータを、請求項1から9のいずれか1項に記載の業務支援サーバとして動作させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理栄養士が栄養指導業務を実行する際の業務支援を行う業務支援サーバ及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生活習慣病予備軍や生活習慣病患者は増加傾向にあり、生活習慣の改善に繋がる栄養指導のニーズは高まっており、栄養指導を行う機会が増えている。特許文献1は、栄養指導や生活習慣指導に係る情報を生成するための装置について記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-28706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、栄養指導を管理栄養士が行うような場合、管理栄養士は栄養に関する知識は十分にあるが、それを上手に伝え、対象者の行動変容を促す方法については、知識・経験が乏しく、対象者の生活習慣の改善に繋がらないケースも多々ある。また医療機関で栄養指導を行うことができる管理栄養士は約1割程度であり、現場で学ぶ機会も少ないのが現状である。
【0005】
そこで本発明は、管理栄養士が栄養指導を行う際の栄養指導業務を支援するための業務支援技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する発明の一形態は、管理栄養士が栄養指導の対象者に対して行う栄養指導業務を支援する業務支援サーバであって、
前記管理栄養士が使用する端末へ、前記対象者に対して行う質問のリストを送信し、前記リストに含まれる質問に対する前記対象者による回答に基づく前記管理栄養士による前記対象者の評価情報を受信する通信手段と、
前記評価情報に基づいて、前記対象者の心理レベルを判定する判定手段と、
判定した前記心理レベルに基づいて、前記対象者に対する栄養指導において参照すべき指導情報を生成する生成手段と、
を備え、
前記指導情報は前記心理レベルに応じて異なり、
前記通信手段は前記指導情報を前記端末へ送信する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、管理栄養士が栄養指導を行う際の栄養指導業務を支援するための業務支援技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に対応する業務支援システム10の構成の一例を示す図。
図2】実施形態に対応する業務支援サーバ100のハードウェア構成の一例を示す図。
図3】実施形態に対応する業務支援システム10における処理の一例を示すフローチャート。
図4】実施形態に対応する業務支援サーバ100が管理するテーブルのデータ構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
図1は、実施形態にかかる業務支援システム10(以下、単に「システム10」ともいう。)の構成の一例を示す図である。業務支援システム10は主に、栄養指導の対象者に対して栄養指導業務を行う管理栄養士のために業務支援を行うことを目的としたシステムである。システム10では、管理栄養士が使用する端末を栄養士端末110として、当該栄養士端末110に対し、業務支援サーバ100から業務支援に関する各種情報を提供することにより、管理栄養士の業務を支援するものである。よって、システム10は、最小限の構成として、業務支援サーバ100と栄養士端末110とがネットワーク120を介して接続されることにより構成される。図1では、栄養士端末110が1台のみ接続された状態を示しているが、これはあくまで例示で会って、ネットワーク120に多数の栄養士端末110が接続され、業務支援サーバ100からの情報提供を受けることができる。
【0011】
業務支援サーバ100は、栄養士端末110において管理栄養士が栄養指導業務を遂行するために必要な画面情報を栄養士端末110に対して送信し、管理栄養士による入力内容に応じた処理を実行する。栄養士端末110は管理栄養士が使用する端末であり、管理栄養士は、栄養指導の対象者(以下、単に「対象者」という)に対して、業務支援サーバ100から栄養士端末110に提供される情報に従って対象者に対して栄養指導を行っていく。
【0012】
ネットワーク120は、業務支援サーバ100と栄養士端末110とを接続するための通信手段であり、例えばインターネットであってもよい。或いは、イントラネットのように特定の組織内においてのみ接続可能なネットワークであってもよい。
【0013】
次に図2を参照して、業務支援サーバ100のハードウェア構成の一例を説明する。図2は、業務支援サーバ100のハードウェア構成の一例を示す図である。業務支援サーバ100は、例えば、CPU201、ROM202と、RAM203、バス204、入出力インタフェース205、出力部206、入力部207、記憶部208、通信部209、ドライブ210を含んで構成することができる。
【0014】
CPU201は、ROM202に記録されているプログラム、又は、記憶部208からRAM203にロードされたプログラムを実行して、本実施形態に対応する各種の処理を実行する。RAM203は、CPU201のワークエリアとして機能し、CPU201が各種の処理を実行するために必要なデータ等も適宜記憶される。CPU201、ROM202及びRAM203は、バス204を介して相互に接続されている。バス204には、入出力インタフェース205も接続されており、入出力インタフェース205を介して、出力部206、入力部207、記憶部208、通信部209及びドライブ210が更に接続されている。
【0015】
出力部206は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、各種情報を画像や音声として出力する。入力部207は、キーボード、マウス、タッチパネル等で構成され、各種情報を入力することができる。記憶部208は、ハードディスクやDRAM等で構成され、本実施形態に対応する処理のプログラムを含む各種データを記憶する。記憶部208には、図3から図5との関連で後述する、栄養指導の対象者の情報を登録した対象者テーブル、質問リストを登録したテーブル400、指導情報を登録したテーブル410の情報が登録されている。通信部209は、ネットワーク120を介して他の装置(図1の例では栄養士端末110)との間で通信を行う。
ドライブ210には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリ等よりなる記憶媒体211が適宜装着される。ドライブ210によって記憶媒体211から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部208にインストールされる。また、記憶媒体211は、記憶部208に記憶されている各種データを、記憶部208と同様に記憶することができる。
【0016】
なお、栄養士端末110も図2に示すハードウェア構成と同等の構成を有することができる。
【0017】
次に、図3を参照して、本実施形態に対応する処理の流れを説明する。図3は、本実施形態に対応する業務支援システム10における処理の流れを示すタイミングチャートである。当該処理は、業務支援サーバ100と栄養士端末110とがそれぞれ対応する処理プログラムをCPUが実行することにより、或いは、CPUが図2に示す出力部206、入力部207、記憶部208、通信部209等の機能ブロックの動作を制御することにより実現される。
【0018】
栄養指導において、栄養指導の対象者の行動変容を達成するためには、対象者に対して知識を単に与えれば十分というわけではない。対象者の姿勢、意欲を対話の中から対象者の精神状態を適切に評価し、それに合わせた手法でアプローチしつつ、正しい情報を共有し、行動変容を促していくことが重要となる。しかし、現場での経験が乏しい管理栄養士の場合、対象者の姿勢や意欲を必ずしも適切に評価できるとは限らず、誤ったアプローチを採るおそれもある。アプローチを誤ると、対象者の生活習慣病予防や治療の離脱を招く可能性がある。糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病は、食生活の乱れや運動不足などが原因で引き起こされ、命に関わる合併症を発症する危険性もあり、早急に対応しなければならない疾患である。よって、管理栄養士が対象者に対して適切なアプローチを行い、対象者が生活習慣病予防や治療を継続するよう導くことが重要である。
【0019】
そこで、現場経験が乏しい管理栄養士であっても対象者に対して適切なアプローチを採ることが可能となるような手法を提供する。本実施形態においては、複数の質問により、対象者の意欲、姿勢を数値化して心理レベルを判定し、判定した心理レベルに基づく対象者の精神状態に合わせてアプローチを行うものであり、これにより行動変容の実現可能性を向上させることができる。以下、本実施形態における処理の流れを図3のステップに沿って説明する。
【0020】
まず、S301において、栄養士端末110は、管理栄養士から対象者の情報の入力を受け付ける。対象者の情報には、氏名、生年月日の他、任意の個人情報が含まれる。これらの情報は当該対象者を一意に識別するための識別情報(ユーザID)と関連付けて管理される。なお、登録済みの対象者の場合には、ユーザIDを入力することにより対象者及びその情報を特定することができる。
【0021】
S302において入力された対象者の情報、或いはユーザIDは、栄養士端末110から業務支援サーバ100に送信される。業務支援サーバ100において、栄養士端末110から受信した対象者の情報に基づき、記憶部208に記憶されている対象者テーブルにおいて対象者の情報を検索する。新規の対象者の場合には情報がヒットしないので、そのままS304に進む。既登録者であれば、前回の指導結果(特には判定された心理レベルの情報)が対象者テーブルに登録されているので、その情報を読みだして処理をS304に進める。
【0022】
S304において、業務支援サーバ100において対象者への質問のリスト(質問リスト)を作成する。初めて栄養指導を受ける対象者については、初回指導の質問リストを作成し、既登録者である場合には前回指導の心理レベルの情報に基づき質問リストを作成する。業務支援サーバ100の記憶部208には質問リストのテーブル400が登録されており、初回指導用の質問リスト及び対象者のレベルに応じた質問リストを当該テーブル400から読み出して作成してもよい。
【0023】
質問リストに含まれる質問は主として意識変化、行動変化、現状把握度、危機感、意欲、不協和の6つの項目のいずれかに関連する。質問数は不協和を除く5つの項目のそれぞれについて均等とすることができる。或いは、少なくとも項目ごとの点数にばらつきが出ないように配点する。質問リストは、初回指導用の質問リストと前回判定された心理レベルに対応する質問リストとが含まれる。初回指導用の質問リストでは意識変化、行動変化は評価できないので、5つの項目の質問で、現状把握度、危機感、意欲を評価すると共に、別途不協和を評価する。本実施形態では心理レベルをレベル1からレベル4の4段階で判定するので、少なくとも5通りの質問リストが作成される。また、前回レベルが2以上であった場合の質問リストは共通としてもよい。その場合、初回指導時、前回レベル1、前回レベル2以上の3通りの質問リストが作成される。
【0024】
図4(A)のテーブル400は、質問リストテーブルのデータ構成の一例を示す。テーブル400は、リスト名401、意識変化に関する質問事項402、行動変化に関する質問事項403、現状把握度に関する質問事項404、危機感に関する質問事項405、意欲に関する質問事項406、不協和に関する質問事項407が含まれる。各質問事項は、対象者の状況、例えば初回指導であるか、或いは、判定された心理レベルに応じた内容が登録されている。
【0025】
質問リストのうち、意識変化に関する質問事項402については、例えば初回指導時であれば指導を受けることになったきっかけの質問を含み、2回目以降は前回の指導からの食生活に関する意識の変化等の心理レベルに応じた質問を含むことができる。また、行動変化に関する質問事項403については、例えば前回の指導からの食生活に関して行った行動や工夫等について、心理レベルに応じた質問を含むことができる。
【0026】
現状把握度に関する質問事項404については、例えば病歴や体重等について、心理レベルに応じた質問を含むことができる。危機感に関する質問事項405については、例えば今の状況を変えたいと思うかどうか、或いは、体重や検査結果について思うところ等について、心理レベルに応じた質問を含むことができる。意欲に関する質問事項406については、例えば管理栄養士による食事サポートを受けることを希望するかどうか、或いは、生活改善の意欲の有無等について、心理レベルに応じた質問を含むことができる。
【0027】
本実施形態では、心理レベルごとの質問内容で質問リストを用意するので、経験の乏しい管理栄養士であっても対象者の心理レベルに合わせた質問を行うことができる。例えば、同趣旨の質問であっても、対象者の心理レベルに応じた表現において質問する、或いは、心理レベルごとに問いかけの仕方を異ならせた方が良い場合がある。
【0028】
具体的に、食生活に関する行動を確認する趣旨の質問において、レベル1の場合には、行動を行ったかどうかについて確認するに留める一方、レベルが上がった場合には行動を継続しているか、行動の具体的内容、或いは、新たな行動を行ったかどうかなどを確認して、より確認の範囲を掘り下げていくようにすることができる。このようにしてレベルが上がるごとに、回答として期待される情報の詳細度を上げるようにすることができる。
【0029】
レベルが低い状況で詳細な回答を要求すると、その行為自体が対象者に対するプレッシャーとなり、対象者の生活習慣病予防や治療の離脱を招きかねない。質問の行為自体も経験が乏しい場合にはどこまで踏み込んで確認するべきかの判断が難しい状況も想定されるので、判定した心理レベルに応じた質問の仕方を提示することにより、誤ったアプローチを回避することが可能となる。本実施形態では、質問リストは心理レベルに応じた問いかけの仕方を含めて作成されているので、心理レベルに合ったより適切なアプローチが可能となる。
【0030】
不協和に関する質問事項407については、例えば、「普段の生活での病気を含めた懸念事項の有無に関する質問を含むことができる。当該質問事項は心理レベルに応じて変更してもよいし、共通であってもよい。不協和とは、面談を通して、対象が栄養指導や指導者に対して強い抵抗を感じている状況を指し、質問に対する回答及びそのときの態度により判定することができる。
【0031】
業務支援サーバ100は、質問リストを作成するとS305において栄養士端末110に質問リストを送信する。当該送信情報には、質問リスト及びその評価を入力する画面情報が含まれる。栄養士端末110は、質問リストを受信すると、S306において、栄養士端末110は、画面情報を用いて質問リストをディスプレイに表示する。管理栄養士は、表示された質問リストに従い対象者に対して質問を行っていくことができる。
【0032】
続くS307において、栄養士端末110は、質問の回答や回答時の態度に従い質問毎の評価点の入力を受け付けることができる。評価点は、例えば各質問毎に1点、3点、5点のいずれかを選択するようにしてもよいし、1点か5点のいずれかの点数を選択するようにしてもよい。但し、不協和については有り/無しの2択でよい。
【0033】
このとき管理栄養士は、栄養士端末110に表示される画面の内容を確認しながら対象者に対して質問を行い、その回答に従って評価点を入力することができる。画面には、質問1から質問6までの6つの質問が表示されており、それぞれの質問について評価点を入力することができる。管理栄養士による質問が終了し、評価点の入力が終わったら、入力した評価点の情報を業務支援サーバ100に送信する。
【0034】
図3の説明に戻ると、送信ボタン507のクリックに応じてS308では、栄養士端末110から業務支援サーバ100へ送信される。業務支援サーバ100では、S309において、栄養士端末110から評価点の情報を受信すると評価点の合計点及び不協和の有り/無しの結果に従い対象者の心理レベルの判定を行う。もし不協和を感ずることがあると評価された場合には、他の評価点に関係なくレベル1と判定する。不協和を感じない場合、質問リストに含まれる質問に対する評価点の合計が、例えば10点以下であればレベル1、11点から15点でレベル2、16点から20点でレベル3、21点以上でレベル4と判定することができる。ここで示すレベル判定の基準点はあくまで一例であって、質問数や合計点数、更には指導実績などに応じて変更することができる。上記のレベル判定の閾値を年齢や性別に関わらず共通とするが、年齢や性別により閾値を変動させてもよい。
【0035】
続くS310において、業務支援サーバ100では、判定されたレベルに応じた指導情報の生成を行い、S311において業務支援サーバ100から栄養士端末110へ指導情報を送信する。栄養士端末110においては、受信した指導情報をディスプレイに表示する。管理栄養士は、表示された指導情報に従い対象者に対して栄養指導を行うことができる。
【0036】
図4(B)のテーブル410は、指導情報テーブルのデータ構成の一例を示す。テーブル410は、指導情報名411、指導姿勢412、指導内容413、課題414、注意点415、その他416が含まれる。指導情報には、対象者の心理レベルに応じた情報のセットが登録されている。指導情報名411には、心理レベルの4段階のいずれのレベルの指導情報であるかを示す名称が登録されている。指導情報のそれ以外の項目については、例えば以下の情報を含むことができる。
【0037】
指導姿勢412は、管理栄養士の対象者に対する態度や、生活習慣病に対する考え方や心構え、対象者に対するアプローチの心得に関する指導情報であり、対象者の心理レベルにより内容が異なる。特に、レベルが低い状態にある対象者については、今後も指導を継続的に受けてもらうためのポイントが含まれる。また、レベルが高い状態にある対象者であっても、状態が逆戻りしないようにするためのポイントが含まれる。
【0038】
指導内容413には、対象者を指導していくうえでの注意点、心構え、対象者との関係性等の情報が含まれる。
【0039】
課題414は、対象者のレベルに応じて、次回の指導までに実施すべき課題の例を提示する。レベル1では、栄養指導の継続を最優先にし、それにつながる簡単な課題を提示する。レベル2以降は、対象者の生活を大きく変えない範囲でできる、小さな課題を提示する。レベルが上がるごとに課題の負荷を徐々に上げていくことも可能。或いは、対象者の要望に合わせた課題設定を一緒に考えてもよい。
【0040】
注意点415には、対象者に対して指導を行う際に行うべきではない事項、配慮すべき事項、注意点等の情報が含まれる。例えば、レベル1の患者は一般的に良いとは言えない生活習慣や考えを発言することが多いが、それに直ちに修正すべきではなく、まずは受けいれることが重要、といった注意点がある。また、指導を行う際の管理栄養士の考え方やマインドに関する情報を含む。例えば、悪い生活習慣や考え方について、なぜそのような習慣や考え方になるのか、原因や背景を考える。また、対象者との距離感についても注意点として含む。
【0041】
その他416には、上記の指導情報412から415に含まれない他の任意の情報が含まれる。
【0042】
以上の本実施形態によれば、管理栄養士は、質問リストに含まれる質問に対する対象者からの回答、或いは、回答時の対象者の態度に従って評価点を付与し、その合計点数で心理レベルを判定することができる。
【0043】
本実施形態において心理レベルは、トランスセオレティカルモデルを参考にして設定される。トランスセオレティカルモデルとは、人の行動が変わり、それが維持されるには無関心期、関心期、準備期、実行期、維持期の5つのステージを通り、対象者が現在どのステージにいるかによって、対象者への有効な働きかけの方法が異なることを示した理論である。
【0044】
本実施形態では、心理レベルをレベル1からレベル4までの4段階で設定しており、レベル2は準備期、レベル3は実行期、レベル4は維持期に該当するが、レベル1は無関心期、関心期の両者を含む。無関心期、関心期に該当する対象者は、共通して行動変容に強い抵抗が見られるという特徴を持ち、管理栄養士の対応方法は同一であることから、まとめてレベル1としている。
【0045】
ここで、レベル1の無関心期とは、行動変容が必要なことがわかっていない、かつ、やる気がない状態を指し、関心期とは行動変容が必要なことが薄々わかっているが、やる気がない状態を指す。レベル1に該当する対象者は「言われてもやらない」状態にあり、何かを指摘されるほど、抵抗を示す傾向がある。要因として行動変容に対する重要度の低さ、自信度の低さ、指導者との信頼関係の未熟さなどが挙げられ、栄養指導の離脱リスクが最も高い。
【0046】
レベル2の準備期とは、行動変容が必要なことがわかっており、やろうと思うが、自発的には行動しない状態を指す。レベル2に該当する対象者は「言われたらやるが、自発的にはやらない」状態にあり、行動変容に対する重要度は若干あがったが、実行する自信度がまだ低い。指導者との信頼関係もすこしずつ構築し始めている段階なため、言われたらやってみようと思うが、一度挫折すると離脱する可能性が高い。
【0047】
レベル3の実行期とは、自発的に行動するが、自立はしていないためサポートが必要な状態を指す。レベル3に該当する対象者は「自発的にやるが、自立的にはできない」状態にあり、サポートがあれば、自分なりに工夫をしながらやっていけるが、サポートがなくなれば離脱する可能性が高い。自信もつきつつあり、行動変容も習慣化しつつあるが、多少のイベントにより、その習慣が揺らぎ、逆戻り(レベル低下)する可能性がある不安定な状態にある。
【0048】
レベル4の維持期とは、自発的に行動し、自立しているため実質は栄養指導を終了可能な状態を指す。レベル4に該当する対象者は「自発的にやり、かつ自立している」状態にあり、サポートがなくても、自走できる状態である。レベル4の段階では結果も出ており、行動変容はいつの間にか習慣化していることが多い。
【0049】
以上に説明したように、本実施形態では、対象者に生活習慣改善の提案を行うに際して、まず対象者の心理レベルを判定し、判定された心理レベルに応じた指導情報を提供するので、対象者の状態に応じて対象者の行動変容を促すように接することが可能となる。当該指導情報は、管理栄養士の対象者に対する接し方に関する経験や知識の不足を補うようことができるので、管理栄養士による栄養指導をより効率的に対象者の生活習慣の改善に繋げて、栄養指導の回数を経るごとにステップアップする形で対象者の行動変容を促していくことが可能となる。また、対象者の生活習慣病予防や治療からの離脱を防ぎ、行動変容の実現可能性を高めることができる。
【0050】
<実施形態のまとめ>
上記実施形態は以下の業務支援サーバ及びコンピュータプログラムを少なくとも開示する。
(1) 管理栄養士が栄養指導の対象者に対して行う栄養指導業務を支援する業務支援サーバであって、
前記管理栄養士が使用する端末へ、前記対象者に対して行う質問のリストを送信し、前記リストに含まれる質問に対する前記対象者による回答に基づく前記管理栄養士による前記対象者の評価情報を受信する通信手段と、
前記評価情報に基づいて、前記対象者の心理レベルを判定する判定手段と、
判定した前記心理レベルに基づいて、前記対象者に対する栄養指導において参照すべき指導情報を生成する生成手段と、
を備え、
前記指導情報は前記心理レベルに応じて異なり、
前記通信手段は前記指導情報を前記端末へ送信する、業務支援サーバ。
(2) 前記質問のリストは、前記対象者の意識の変化、行動の変化、現状把握度、現状に対する危機感、現状を改善することに対する意欲、及び、前記対象者が栄養指導や前記管理栄養士に対して強い抵抗を感じている状況にあるかどうかを判定するための質問を、それぞれ少なくとも1つ含む、(1)に記載の業務支援サーバ。
(3) 前記評価情報は、前記質問のリストに含まれる各質問について前記管理栄養士により付与された評価点を含み、
前記判定手段は、前記評価点の合計に基づき前記心理レベルを判定する、(1)または(2)に記載の業務支援サーバ。
(4) 前記評価情報により、前記対象者が栄養指導や前記管理栄養士に対して強い抵抗を感じている状況にあると評価されている場合、前記判定手段は前記評価点の合計に関わらず前記心理レベルを所定レベルと判定する、(3)に記載の業務支援サーバ。
(5) 前記判定手段は、前記対象者の心理レベルを、トランスセオレティカルモデルに基づき、レベル1からレベル4までの4段階で判定し、
前記レベル1は、前記所定レベルに対応し、前記対象者が栄養指導や前記管理栄養士に対して強い抵抗を感じている状況、又は、前記対象者が指導されたことを実行しない状態にあること指し、
レベル2は、前記対象者が前記指導されたことを実行する可能性がある状態にあること指し、
レベル3は、前記対象者が自発的に行動するが、自立していない状態にあることを指し、
前記レベル4は、前記対象者が自立している状態を指す、(1)から(4)のいずれか1つに記載の業務支援サーバ。
(6) 前記質問のリストを生成する生成手段を更に備え、
前記生成手段は、前記対象者に対する指導が初回の場合には、初回用の質問リストを生成し、
前記対象者に対する指導が2回目以降の場合には、前回の指導において判定された前記心理レベルに応じた質問のリストを生成する、(1)から(5)いずれか1つに記載の業務支援サーバ。
(7) 前記生成手段は、同趣旨の質問であっても、前記対象者の心理レベルに応じた表現において質問を生成する、(6)に記載の業務支援サーバ。
(8) 前記生成手段は、前記同趣旨の質問の回答に要求される情報の詳細度を前記対象者の心理レベルに応じて変更するように質問を生成する、(6)または(7)に記載の業務支援サーバ。
(9) 前記指導情報は、前記判定手段により判定された前記対象者の前記心理レベルに応じて、前記管理栄養士の前記対象者に対する接し方に関する経験や知識の不足を補う情報を含む、(1)から(8)のいずれか1つに記載の業務支援サーバ。
(10) コンピュータを、(1)から(9)のいずれか1つに記載の業務支援サーバとして動作させるためのプログラム。
【0051】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。
【符号の説明】
【0052】
100:業務支援サーバ、110:栄養士端末、120:ネットワーク
図1
図2
図3
図4