(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165533
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】足場解体方法
(51)【国際特許分類】
E04G 3/00 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
E04G3/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081810
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】丹下 広志
(72)【発明者】
【氏名】原野 光雄
(57)【要約】
【課題】安全性を担保しつつ、効率的に足場を解体できる足場解体方法を提供すること。
【解決手段】足場解体方法は、複数の支持部材20と、異なる2つの支持部材20の間に掛け渡され、自身と支持部材20とを貫通する貫通孔8に挿通されているボルト7を介して支持部材20に固定される床板40と、を備える陣笠足場1の足場解体方法であって、貫通孔8からボルト7を抜き、抜いたボルト7の代わりに該貫通孔8にピン80を挿入する挿入工程と、床板40を吊り上げる吊り上げ具9に貫通孔8に挿入したピン80を連結させる連結工程と、吊り上げ具9を操作してピン80とともに床板40を吊り上げることで支持部材20から床板40を取り外す吊上工程と、を含む。
【選択図】
図6D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の支持部材と、異なる2つの前記支持部材の間に掛け渡され、自身と前記支持部材とを貫通する貫通孔に挿通されているボルトを介して前記支持部材に固定される床板と、を備える足場の足場解体方法であって、
前記貫通孔からボルトを抜き、抜いたボルトの代わりに該貫通孔にピンを挿入する挿入工程と、
前記床板を吊り上げる吊り上げ具に前記貫通孔に挿入した前記ピンを連結させる連結工程と、
前記吊り上げ具を操作して前記ピンとともに前記床板を吊り上げることで前記支持部材から前記床板を取り外す吊上工程と、を含む足場解体方法。
【請求項2】
前記床板は互いに隣接するように複数配置され、
前記吊上工程で前記支持部材から一の前記床板を取り外した後に、当該一の前記床板に隣接する前記床板に対する前記挿入工程を開始する請求項1に記載の足場解体方法。
【請求項3】
複数の前記床板のそれぞれには、ボルトが挿通されている複数の前記貫通孔が形成され、
前記挿入工程では、前記一の前記床板において次に取り外す前記床板側の前記貫通孔からボルトは抜かずに、前記次に取り外す前記床板とは反対側の前記貫通孔からボルトを抜いて前記ピンを挿入し、
前記連結工程の後で、前記次に取り外す前記床板側の前記貫通孔からボルトを抜く抜出工程を含む請求項2に記載の足場解体方法。
【請求項4】
前記足場は、複数の前記支持部材が接続される棒状の軸部材を更に備え、中空の構造体の建設において前記構造体の内部に配置して用いられ、
前記足場の複数の前記支持部材のそれぞれは、前記軸部材に対して直交する方向に延び、前記床板を支持可能な床板支持位置と、前記軸部材に沿って延びる非床板支持位置とに移動可能であり、
前記足場解体方法は、前記床板支持位置に移動した状態の前記支持部材に固定された全ての前記床板を前記支持部材から取り外した後に、複数の前記支持部材を前記非床板支持位置に移動させ、前記構造体の上部に設けた開口から前記軸部材及び前記支持部材を取り出す取出工程を更に含む請求項1~3の何れかに記載の足場解体方法。
【請求項5】
前記床板は、前記床板支持位置に移動した状態の前記支持部材に、互いに隣接するように複数配置され、
複数の前記床板には、前記支持部材における前記軸部材とは反対側の先端部側に前記構造体の内周面に沿って並ぶように配置される複数の第1床板と、前記支持部材における前記軸部材と前記第1床板との間で前記軸部材に直交する方向に並ぶように配置される複数の第2床板と、が存在し、
複数の前記第1床板を前記支持部材から取り外した後に、前記支持部材の前記先端部から前記軸部材に向かって複数の前記第2床板を取り外す請求項4に記載の足場解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足場解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物等の構造物の建設に用いる足場を解体する足場解体方法が知られている。例えば引用文献1には、搬出作業エリア側の位置に足場分割点を設定して足場を複数の分割足場に区分し、分割足場単位で搬出作業エリアに近い分割足場から順次解体する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、足場を解体する場合、特許文献1のように作業者は解体対象となる足場の下にさらに設けられた足場から解体作業を行うことが多い。この方法により、作業者は安全に足場の解体を行うことができるものの、より効率的に足場を解体するという点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、安全性を担保しつつ、効率的に足場を解体できる足場解体方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明は、複数の支持部材と、異なる2つの前記支持部材の間に掛け渡され、自身と前記支持部材とを貫通する貫通孔に挿通されているボルトを介して前記支持部材に固定される床板と、を備える足場の足場解体方法であって、前記貫通孔からボルトを抜き、抜いたボルトの代わりに該貫通孔にピンを挿入する挿入工程と、前記床板を吊り上げる吊り上げ具に前記貫通孔に挿入した前記ピンを連結させる連結工程と、前記吊り上げ具を操作して前記ピンとともに前記床板を吊り上げることで前記支持部材から前記床板を取り外す吊上工程と、を含む足場解体方法に関する。
【0007】
(2) 前記床板は互いに隣接するように複数配置され、前記吊上工程で前記支持部材から一の前記床板を取り外した後に、当該一の前記床板に隣接する前記床板に対する前記挿入工程を開始する(1)に記載の足場解体方法。
【0008】
(3) 複数の前記床板のそれぞれには、ボルトが挿通されている複数の前記貫通孔が形成され、前記挿入工程では、前記一の前記床板において次に取り外す前記床板側の前記貫通孔からボルトは抜かずに、前記次に取り外す前記床板とは反対側の前記貫通孔からボルトを抜いて前記ピンを挿入し、前記連結工程の後で、前記次に取り外す前記床板側の前記貫通孔からボルトを抜く抜出工程を含む(2)に記載の足場解体方法。
【0009】
(4) 前記足場は、複数の前記支持部材が接続される棒状の軸部材を更に備え、中空の構造体の建設において前記構造体の内部に配置して用いられ、前記足場の複数の前記支持部材のそれぞれは、前記軸部材に対して直交する方向に延び、前記床板を支持可能な床板支持位置と、前記軸部材に沿って延びる非床板支持位置とに移動可能であり、前記足場解体方法は、前記床板支持位置に移動した状態の前記支持部材に固定された全ての前記床板を前記支持部材から取り外した後に、複数の前記支持部材を前記非床板支持位置に移動させ、前記構造体の上部に設けた開口から前記軸部材及び前記支持部材を取り出す取出工程を更に含む(1)~(3)の何れかに記載の足場解体方法。
【0010】
(5) 前記床板は、前記床板支持位置に移動した状態の前記支持部材に、互いに隣接するように複数配置され、複数の前記床板には、前記支持部材における前記軸部材とは反対側の先端部側に前記構造体の内周面に沿って並ぶように配置される複数の第1床板と、前記支持部材における前記軸部材と前記第1床板との間で前記軸部材に直交する方向に並ぶように配置される複数の第2床板と、が存在し、複数の前記第1床板を前記支持部材から取り外した後に、前記支持部材の前記先端部から前記軸部材に向かって複数の前記第2床板を取り外す(4)に記載の足場解体方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安全性を担保しつつ、効率的に足場を解体できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】建設対象となるサイロと、サイロの建設に用いる陣笠足場と自動昇降装置を示す断面図である。
【
図2】
図1に示す矢印Aの方向に沿って自動昇降装置を見たときの矢印図である。
【
図3】
図1に示す矢印Bの方向に沿って陣笠足場を見たときの矢印図である。
【
図4】サイロと、サイロ内に配置され、支持部材が床板支持位置に移動した状態の陣笠足場を示す断面図である。
【
図5】サイロと、サイロ内に配置され、支持部材が非床板支持位置に移動した状態の陣笠足場を示す断面図である。
【
図6A】本発明の一実施形態に係る足場解体方法の流れを説明するための図であり、挿入工程前の床板及び支持部材を示す平面図である。
【
図6B】本発明の一実施形態に係る足場解体方法の流れを説明するための図であり、挿入工程後の床板及び支持部材を示す平面図である。
【
図6C】本発明の一実施形態に係る足場解体方法の流れを説明するための図であり、抜出工程後の床板及び支持部材を示す平面図である。
【
図6D】本発明の一実施形態に係る足場解体方法の流れを説明するための図であり、吊上工程における作業の様子を示す斜視図である。
【
図7】陣笠足場の床板と支持部材を貫通する貫通孔にボルトが挿通されている状態を示す拡大断面図である。
【
図8】陣笠足場の床板と支持部材を貫通する貫通孔にボルトの代わりにピンが挿通されている状態を示す拡大断面図である。
【
図9A】本発明の一実施形態に係る足場解体方法において、支持部材から床板を取り外す順序を説明するための図であり、3枚の第1床板を取り外した状態を示す平面図である。
【
図9B】本発明の一実施形態に係る足場解体方法において、支持部材から床板を取り外す順序を説明するための図であり、8枚の第1床板を取り外した状態を示す平面図である。
【
図9C】本発明の一実施形態に係る足場解体方法において、支持部材から床板を取り外す順序を説明するための図であり、1枚の第2床板を取り外した状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本実施形態に係る足場解体方法は、建物等の構造物の建設に用いる足場を解体するための方法である。本実施形態では、中空の構造体としてのサイロ100の建設に用いる陣笠足場1を解体し、サイロ100内から撤去する場合を例に説明する。
【0015】
まず、本実施形態の足場解体方法が適用される陣笠足場1について
図1~
図5を参照しながら説明する。
図1は、建設対象となるサイロ100と、サイロ100の建設に用いる陣笠足場1と自動昇降装置5を示す断面図である。
図2は、
図1に示す矢印Aの方向に沿って自動昇降装置5を見たときの矢印図である。
図3は、
図1に示す矢印Bの方向に沿って陣笠足場1を見たときの矢印図である。
図4は、サイロ100と、サイロ100内に配置され、支持部材20が床板支持位置に移動した状態の陣笠足場1を示す断面図である。
図5は、サイロと、サイロ100内に配置され、支持部材20が非床板支持位置に移動した状態の陣笠足場1を示す断面図である。なお、
図4では、陣笠足場1を解体するために陣笠足場1の下方にさらに仮設した足場6を破線で示している。
【0016】
陣笠足場1は、サイロ100の建設時に用いる足場である。陣笠足場1は、サイロ100の建設時に自動昇降装置5とともにサイロ100の内部に配置して用いられる。
【0017】
サイロ100は、例えばバイオマス等の固体燃料を貯蔵するタンクである。サイロ100は、下側に中空の略逆円錐形状に形成される円錐部110と、円錐部110の上端から延び、円筒形状に形成される円筒部120と、円筒部120の上端に形成される開口(図示省略)を塞ぐ蓋部(図示省略)とを備える。
【0018】
サイロ100の建設では、サイロ100の円錐部110が建設された後に、建設した円錐部110内に陣笠足場1が仮設され、円筒部120を建設するための自動昇降装置5が陣笠足場1の上部に仮設される。
【0019】
自動昇降装置5は、円筒部120を建設する作業者が乗る足場である。自動昇降装置5は、陣笠足場1の上部に接続可能な基部51と、基部51から放射状に延びる複数(3つ)のデッキ52と、デッキ52によって支持され、デッキ52の基部51とは反対側の端部(以下、先端部)からデッキ52に直交する方向に移動可能な建設用足場(図示省略)と、を備える。
【0020】
自動昇降装置5は、建設用足場が上下方向Yに移動可能となるように円筒部120の内部に配置される。具体的には、
図1及び
図2に示すように、自動昇降装置5は、基部51が陣笠足場1の後述する軸部材10の上端に接続され、3つのデッキ52がサイロ100の周方向Cに略等しい間隔でサイロの径方向Rに延びるようにサイロ100の内部に仮設される。作業者は、サイロ100の内周面101に沿って上下方向Yに移動可能な建設用足場に乗って、下方から順にサイロ100の内側から円筒部120を建設する。なお、上下方向Yとはサイロ100の軸方向でもある。また、周方向Cとは平面視においてサイロ100の内周面101に沿う方向を意味し、径方向Rとは円錐部110又は円筒部120の半径方向を意味する。自動昇降装置5は、その下部に仮設された陣笠足場1によって支持される。
【0021】
次に陣笠足場1の構成について
図3~
図5、
図6A、
図7を参照しながら説明する。
図6Aは、支持部材20に固定された床板40の一例を示す平面図である。
図7は、陣笠足場1の支持部材20及び床板40を貫通する貫通孔8にボルト7が挿通されている状態を示す拡大断面図である。
【0022】
陣笠足場1は、サイロ100の建設時に円錐部110の内部に仮設される。陣笠足場1は、軸部材10と、複数の支持部材20と、移動機構30と、複数の床板40と、を備える。
【0023】
軸部材10は、棒状の部材であり、移動機構30を介して複数の支持部材20が接続される。軸部材10には、その長さ方向に作業者が移動するための梯子(図示省略)と、その長さ方向に所定の間隔を空けて配置される踊り場11とが設けられる。
図1及び
図4示すように、軸部材10は、サイロ100の建設時において、上下方向Yに延びるようにサイロ100の円錐部110の内部に仮設される。軸部材10の上端には、自動昇降装置5の基部51が取り付けられる。
【0024】
支持部材20は、軸部材10から延び、床板40を支持する部位である。本実施形態の陣笠足場1は、12本の支持部材20を備える。各支持部材20は、その一端部(以下、基端部)23が移動機構30を介して軸部材10に接続される。
【0025】
支持部材20は、移動機構30によって、軸部材10に対して直交する方向に延び、床板40を支持可能な床板支持位置と、軸部材10に沿って延び、床板40を支持しない非床板支持位置とに移動可能である。支持部材20は、床板支持位置では
図3又は
図4に示すように軸部材10から径方向Rに延び、非床板支持位置では
図5に示すように軸部材10に沿って略上下方向Yに延びるようにサイロ100の円錐部110の内部に仮設される。
【0026】
図3に示すように複数の支持部材20のそれぞれは、床板支持位置において軸部材10に対して周方向Cに等間隔で配置される。また各支持部材20は、その他端部(以下、先端部)24、即ち床板支持位置における軸部材10と反対側の端部がサイロ100の内周面101の近傍に位置する。なお、支持部材20は、床板支持位置に移動している場合のみ、床板40を支持可能である。
【0027】
図3及び
図6Aに示すように、支持部材20は、床板支持位置において軸部材10からサイロ100の内周面101の近傍まで延びる棒状の本体部21と、本体部21の周方向Cの両側から本体部21から離れる方向に延出する平板状の固定部22と、を有する。固定部22は、床板40が固定される位置に形成される。固定部22には、その厚み方向に貫通し、ボルト7が螺合可能な複数の貫通孔221が形成される。
【0028】
移動機構30は、関節部33と、スライド部31と、複数の受骨部32とを有し、支持部材20を床板支持位置と非床板支持位置に移動させる。
【0029】
関節部33は、軸部材10と支持部材20との間に介在する部材である。関節部33は、支持部材20の基端部23に固定されるとともに、軸部材10に回転自在に接続される。この構成により、支持部材20が関節部33を支点として回転可能となる。
【0030】
スライド部31は、軸部材10に沿って軸部材10の長さ方向にスライド移動可能に軸部材10に取り付けられる。スライド部31は、軸部材10における関節部33の上方に取り付けられる。
【0031】
複数の受骨部32のそれぞれは、棒状であり、支持部材20とスライド部31を連結する。具体的には、受骨部32は、その一端がスライド部31に接続され、他端が支持部材20における長さ方向の略中央部に接続される。
【0032】
移動機構30によれば、例えば
図4の状態からスライド部31の上方へのスライド移動に伴い、支持部材20は受骨部32に引っ張られ、基端部23が接続された関節部33を支点に回転し、先端部24が軸部材10に近づくように移動する。反対に
図5の状態からスライド部31の下方へのスライド移動に伴い、支持部材20は受骨部32に押され、関節部33を支点に回転し、先端部24が軸部材10から離れ、サイロ100の内周面101に近づくように移動する。
【0033】
床板40は、平板状であり、床板支持位置に移動した状態の異なる2つの支持部材20の間に掛け渡され、支持部材20にボルト7を介して固定される。本実施形態では、
図3に示すように周方向Cに隣接する2つの支持部材20の間に1枚の床板40が掛け渡される。なお、床板40の上には、
図1及び
図4に示すような手摺25が配置される。
【0034】
図3に示すように、複数の床板40には、複数の第1床板41と、複数の第2床板42とが存在する。複数の第1床板41は、床板支持位置に移動した状態の支持部材20の先端部24側にサイロ100の内周面101に沿って並ぶように配置される。複数の第2床板42は、床板支持一に移動した状態の支持部材20における軸部材10と第1床板41との間に軸部材10に直交する方向(
図3では径方向R)に並ぶように配置される。
図3に示す例では、6つの第2床板42が、12本の支持部材20のうち2本の支持部材20の間に掛け渡されている。
【0035】
床板40の第1床板41と第2床板42で共通する構成について、
図6A及び
図7を参照しながら第1床板41を例に説明する。床板40は、その厚み方向に貫通し、ボルト7が螺合可能な複数の貫通孔401が形成され、異なる2つの支持部材20の固定部22にボルト7を介して固定される。第1床板41は、貫通孔401が、例えば
図6Aに示すように、床板40の周方向Cの両端部のそれぞれに複数形成される。複数の貫通孔401は、床板40の周方向Cの端部が固定部22に配置された状態で、貫通孔221と重なる位置に形成される。なお、第2床板42も同様に、貫通孔401が、床板40の周方向Cの両端部のそれぞれに複数形成される。
【0036】
図7に示すように、床板40と支持部材20は、貫通孔401と貫通孔221との中心軸を略一致させた状態でボルト7を挿入し、貫通孔401と貫通孔221に螺合することで固定される。なお、以降の説明において、貫通孔401と貫通孔221とが支持部材20と床板40とを貫通する1つの孔となるように、互いの中心軸が略一致させた状態の貫通孔401と貫通孔221とを合わせて貫通孔8という。即ち床板40は、自身と支持部材20とを貫通する貫通孔8に挿通されているボルト7を介して支持部材20に固定される。
【0037】
また
図6A及び
図7に示すように、床板40の各貫通孔401の近傍には、吊り上げ具9の先端部に設けられたフック91を引っ掛けることが可能な引っ掛け部402が形成される。吊り上げ具9とは、例えばクレーン等の一部であり、床板40を吊り上げるための器具である。ボルト7が抜かれた状態の床板40の引っ掛け部402にフック91を引っ掛けて吊り上げ具9を操作し、フック91を上方に移動させると、床板40が吊り上げられて支持部材20から分離される。
【0038】
ここで、サイロ100の円錐部110や円筒部120等の主な構造の建設が完了した場合、自動昇降装置5を解体してサイロ100の上部に設けられた開口部(図示省略)から撤去した後に陣笠足場1を解体する。このとき、例えば作業者が床板40上に乗った状態で該床板40からボルト7を外していくと、床板40が支持部材20からずれ落ちるおそれがある。このため、安全を考慮して解体対象となる陣笠足場1の下に
図4の破線で示すような足場6を仮設し、その足場から解体作業を行うことが多い。しかしながら、この方法では安全性は担保できるものの、足場6を仮設する手間がかかる。本実施形態に係る足場解体方法によれば、安全性を担保しつつ、より効率的に足場を解体できる。
【0039】
次に、本実施形態に係る足場解体方法について陣笠足場1を解体する場合を例に説明する。
【0040】
図6A~
図6Dは、足場解体方法の流れを説明するための図である。
図6Aは、挿入工程前の支持部材20及び床板40を示す平面図である。
図6Bは、挿入工程後の支持部材20及び床板40を示す平面図である。
図6Cは、抜出工程後の支持部材20及び床板40を示す平面図である。
図6Dは、吊上工程における作業の様子を示す斜視図である。
図8は、陣笠足場1の支持部材20及び床板40を貫通する貫通孔8にボルト7の代わりにピン80が挿通されている状態を示す拡大断面図である。
【0041】
本実施形態の足場解体方法は、挿入工程と、連結工程と、抜出工程と、吊上工程と、取出工程と、を含み、この順で陣笠足場1の解体作業が行われる。なお、床板40は、1つずつ支持部材20から取り外される。
【0042】
まず、1つの床板40を支持部材20から取り外すまでの工程、即ち挿入工程から吊上工程までの流れを、
図6A~
図6Dに示す第1床板41Gを支持部材20から取り外す場合を例に説明する。なお、
図6A~
図6Dに示す第1床板41Gの周方向Cの一端側(
図6A~
図6Dでは紙面右側)には床板40が存在せず、周方向Cの他端側(
図6A~
図6Dでは紙面左側)に第1床板41Gの次に取り外す第1床板41Hが存在する。
【0043】
挿入工程において、ボルト7が支持部材20と第1床板41Gとを貫通する貫通孔8から抜かれ、
図8に示すようにこの貫通孔8にボルト7の代わりにピン80を挿入する。ピン80は、全体として細長い形状であり、貫通孔8に挿入可能な棒状部81と、棒状部81の一端に形成される環状部82と、を有する。
【0044】
棒状部81は、その外径が貫通孔8の径よりも小さく、その長さが床板40の厚みと固定部22の厚みを合わせた長さ以上である。環状部82は、その外径が貫通孔8の径よりも大きく、貫通孔8に棒状部81を挿入したピン80が貫通孔8から下方に落下しないように構成される。ピン80は、ボルト7とは異なり、貫通孔8には螺合せず、棒状部81が環状部82によって貫通孔8に離脱可能に保持されて用いられる。ピン80は、貫通孔8に挿通されている状態で床板40の水平方向への移動を規制する。このピン80をボルト7の代わりに貫通孔8に挿入することにより、貫通孔8からボルト7が抜かれた場合であっても支持部材20が床板40から外れることを防止できる。これにより、作業者は、ボルト7の代わりにピン80で支持部材20に固定され、安定した第1床板41Gの上に乗り、作業を行うことができる。
【0045】
図6Bに示すように、本実施形態の挿入工程では、第1床板41Gにおいて次に取り出す第1床板41H側の貫通孔8からボルト7を抜かずに、周方向Cにおいて第1床板41Hとは反対側の貫通孔8からボルト7を抜いてピン80を挿入する。
図6Bに示す例では、第1床板41Hとは反対側に形成される全ての貫通孔8(
図6Bでは4つの貫通孔8)からボルト7が抜かれ、これら4つの貫通孔8のうち2つの貫通孔8にピン80を挿入する。
【0046】
連結工程において、挿入工程で貫通孔8に挿入したピン80が吊り上げ具9に連結される。具体的には、
図8に示すように、吊り上げ具9のフック91をピン80側の近傍に位置する引っ掛け部402に引っ掛ける。そして、引っ掛け部402に引っ掛けられたフック91とピン80とを紐状の養生材92を介して連結する。例えば、養生材92の一端側がピン80の環状部82に巻かれ、養生材92の他端側がフック91に巻かれることで、吊り上げ具9とピン80とが連結される。このとき、作業者は、周方向Cの一端側がピン80で支持部材20に固定され、他端側がボルト7で支持部材20に固定され、安定した第1床板41Gの上に乗り、連結工程の作業を行うことができる。
【0047】
抜出工程において、第1床板41Gにおける第1床板41H側の貫通孔8からボルト7が抜かれる。具体的には作業者は、第1床板41Gに隣接し、次に支持部材20から取り外す第1床板41Hの上に乗り、貫通孔8からボルト7を抜き、該ボルト7が抜かれた貫通孔8の近傍に位置する引っ掛け部402にフック91を引っ掛ける。作業者が抜出工程中に乗る第1床板41Hはボルト7が抜かれておらず安定している。このため、作業者は足元が安定した状態で抜出工程の作業を行うことができる。
【0048】
吊上工程において、吊り上げ具9を操作してピン80とともに床板40を吊り上げることで支持部材20から床板40が取り外される。このとき、
図6Dに示すように、作業者は、ボルト7を介して支持部材20に固定され、第1床板41Hの上に乗って足元が安定した状態で吊り上げ具8を操作できる。
【0049】
他の床板40に対しても挿入工程から吊上工程までの工程を実行し、支持部材20から全ての床板40を取り外す。このとき、吊上工程で支持部材20から一の床板40を取り外した後に、支持部材20から次に取り外す床板40に対する挿入工程を開始する。次に取り外す床板40は、現時点で支持部材20からの取り外し作業が行われている床板40(以下、取り外し作業中の床板40という)に隣接する床板40であることが好ましい。
【0050】
ここで、支持部材20から床板40を取り外す順序の一例について
図9A~
図9Cを参照しながら説明する。
図9A~
図9Cは、足場解体方法における支持部材20から床板40を取り外す順序を説明するための図である。
図9Aは、3つの第1床板41を取り外した状態を示す平面図である。
図9Bは、8つの第1床板41を取り外した状態を示す平面図である。
図9Cは、1つの第2床板42を取り外した状態を示す平面図である。なお、
図9A~
図9Cでは、第1床板41及び第2床板42に対して支持部材20から取り外す順にその末尾にアルファベットを付している。また、
図9Aでは、既に支持部材20から取り外された3つの第1床板41A~41Cを破線で示している。
【0051】
本実施形態の足場解体方法では、陣笠足場1の床板40が
図3に示すように配置されている場合、第1床板41を取り外した後に第2床板42を支持部材20から取り外す。
【0052】
図9Aに示すように、本実施形態の足場解体方法では、まず軸部材10を挟んで第2床板42と対向する位置に配置される第1床板41Aから取り外される。第1床板41Aを取り外した後に、複数の第1床板41は、軸部材10を挟んで第1床板41Aと対向し、第2床板42Aと隣接する第1床板41Lに向かって周方向Cに沿って順に取り外される。例えば
図9Aに示すように、第1床板41B、41C、41D、41E、41Fという
図9Aにおいて右回りの順に第1床板41を取り外してもよい。第1床板41Fを取り外した後に、
図9Bに示すように、第1床板41Lから最も離れた第1床板41Gから第1床板41H、41I、41J、41Kという
図9A及び
図9Bにおいて左回りの順に第1床板を取り外してもよい。なお、第1床板41Aを支持部材20から取り外した後に、第1床板41G、41H、41I、41J、41K、41B、41DC、41D、41E、41Fという順に第1床板41を取り外してもよい。
【0053】
次いで、第1床板41Lを支持部材20から取り外し、
図9Cに示すように、第2床板42A、42B、42C、42D、42E、42Fという順に軸部材10に向かって第2床板42を取り外してもよい。この順序であれば、第2床板42F以外は、取り外し作業中の床板40に隣接する位置に、ボルト7が抜かれておらず安定した床板40が存在することになる。作業者は、このボルト7が抜かれていない床板40に乗り、足元が安定した状態で吊上工程等の作業を行うことができる。第2床板42Fを取り外す場合も、作業者は、踊り場11等が設けられた軸部材10に乗って作業を行うことができる。そして作業者は、最後の床板40を取り外す際に、地上に降りるための梯子等が設けられた軸部材10に位置することになるので、最後の床板40を取り外した後に安全かつ円滑に作業を終えることができる。
【0054】
取出工程において、床板支持位置に移動した状態の支持部材20に固定された全ての床板40が支持部材20から取り外された後に、全ての支持部材20を非床板支持位置に移動させる。そして、
図5に示す状態となった陣笠足場1をサイロ100の上部に設けた開口(図示省略)を取り出す。このこき、陣笠足場1は、支持部材20が軸部材10に沿った非床板指示位置に移動し、径方向Rへの広がりが抑えられた状態であるので、サイロ100の開口から容易に取り出すことができる。よって、サイロ100のような構造体の内部に大型の足場を設けた場合であっても、足場解体時に複数の支持部材20を軸部材10と同様にサイロ100の軸方向に延びるように変形させて取り出すので、効率的に陣笠足場1を解体し撤去することができる。
【0055】
以上説明した本実施形態に係る足場解体方法によれば、以下のような効果を奏する。
【0056】
本実施形態に係る足場解体方法は、複数の支持部材20と、異なる2つの支持部材20の間に掛け渡され、自身と支持部材20とを貫通する貫通孔8に螺合するボルト7を介して支持部材20に固定される床板40と、を備える陣笠足場1の足場解体方法であって、貫通孔8からボルト7を抜き、抜いたボルト7の代わりに該貫通孔8にピン80を挿入する挿入工程と、床板40を吊り上げる吊り上げ具9に貫通孔8に挿入したピン80を連結させる連結工程と、吊り上げ具9を操作してピン80とともに床板40を吊り上げることで支持部材20から床板40を取り外す吊上工程と、を含む。
【0057】
これにより、床板40を支持部材20に固定していたボルト7の代わりにピン80を貫通孔8に挿入するので、ボルト7を抜いた場合であっても床板40の安定した状態が維持され、該床板40の上に乗って安全に作業することができる。また、ピンが吊り上げ具9に連結されるので、貫通孔8に挿入したピン80を床板40とともに支持部材20から取り外すことができる。このため、足場を解体するためにさらに足場を仮設する必要がなく、安全に足場の解体作業を行うことができる。よって、安全性を担保しつつ、効率的に足場を解体できる。
【0058】
また本実施形態に係る足場解体方法において、床板40は互いに隣接するように複数配置され、吊上工程で支持部材20から一の床板40を取り外した後に、当該一の床板40に隣接する床板40に対する挿入工程を開始する。
【0059】
これにより、取り外し作業中の床板40の隣にボルト7が抜かれておらず安定した床板40が存在することになるので、作業者はボルト7が抜かれていない床板40の上に乗り解体作業を行うことができる。
【0060】
また本実施形態に係る足場解体方法において、複数の床板40のそれぞれには、ボルト7が挿通されている複数の貫通孔8が形成され、挿入工程では、一の床板40において次に取り外す床板40側の貫通孔8からボルト7は抜かずに、次に取り外す床板40とは反対側の貫通孔8からボルト7を抜いてピン80を挿入し、連結工程の後で、次に取り外す床板40側の貫通孔8からボルト7を抜く抜出工程を含む。
【0061】
これにより、例えば作業者は少なくとも次に取り外す床板40側がボルト7で固定されている取り外し作業中の床板40に乗りながら、吊り上げ具9にピン80を連結した後に、次に取り外す床板40に乗って、取り外し作業中の床板40の残りのボルト7を抜くことができる。このため、ボルト7を抜きピン80を挿入する工程の手間を減らしつつ、安全かつより効率的に足場を解体できる。
【0062】
また本実施形態に係る足場解体方法において、陣笠足場1は、複数の支持部材20が接続される棒状の軸部材10を更に備え、中空のサイロ100の建設においてサイロ100の内部に配置して用いられ、陣笠足場1の複数の支持部材20のそれぞれは、軸部材10に対して直交する方向に延び、床板40を支持可能な床板支持位置と、軸部材10に沿って延びる非床板支持位置とに移動可能であり、足場解体方法は、床板支持位置に移動した状態の支持部材20に固定された全ての床板40を支持部材20から取り外した後に、複数の支持部材20を非床板支持位置に移動させ、サイロ100の上部に設けた開口から軸部材10及び支持部材20を取り出す取出工程を更に含む。
【0063】
これにより、サイロ100のような構造体の内部に大型の足場を設けた場合であっても、足場の解体時に複数の支持部材20を軸部材10に沿って延びる細長い形状に足場全体を変形できるので、効率的に足場を撤去できる。
【0064】
また本実施形態に係る足場解体方法において、床板40は、床板支持位置に移動した状態の支持部材20に、互いに隣接するように複数配置され、複数の床板40には、支持部材20における軸部材10とは反対側の先端部24側にサイロ100の内周面101に沿って並ぶように配置される複数の第1床板41と、支持部材20における軸部材10と第1床板41との間で軸部材10に直交する方向に並ぶように配置される複数の第2床板42と、が存在し、複数の第1床板41を支持部材20から取り外した後に、支持部材20の先端部24から軸部材10に向かって複数の第2床板42を取り外す。
【0065】
これにより、作業者はサイロ100の内周面101側の床板40を撤去した後に、上下方向Yに移動可能な軸部材10に向かって順番に床板40を取り外し、最後の床板40を取り外す際に軸部材10に位置することになる。よって、余分な足場を設けずに安全かつより効率的に足場を撤去できる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく適宜変更が可能である。
【0067】
上記実施形態では、挿入工程では、取り外し作業中の床板40において次に取り外す床板40側の貫通孔8からボルト7は抜かずに、抜出工程でボルト7を抜いていたが、抜出工程を行わずに、挿入工程で次に取り外す床板40側の貫通孔8からもボルト7を抜き、次に取り外す床板40側の貫通孔8にもピン80を挿入してもよい。
【0068】
上記実施形態では、陣笠足場1の第1床板41を取り外した後に第2床板42を支持部材20から取り外していたが、第2床板42を取り外した後に第1床板41を支持部材20から取り外してもよい。
【0069】
また例えば、第1床板41Lに周方向Cにおいて隣接する第1床板41Fから
図9Aで左周りの順又は第1床板41Kから
図9Aで右周りの順に第1床板41を取り外し、第1床板Lを取り外した後に、第1床板41Lから軸部材10に向かって順に第2床板42を取り外してもよい。これにより、一筆書きの要領で床板40を取り外すことができるので、より効率的に足場の解体作業を行うことができる。
【符号の説明】
【0070】
1 陣笠足場
7 ボルト
8 貫通孔
20 支持部材
40 床板
80 ピン