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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165536
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】コンパウンド落下防止器具
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20241121BHJP
   H02G 1/14 20060101ALI20241121BHJP
   H02G 15/08 20060101ALI20241121BHJP
   H01R 4/20 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H02G1/02
H02G1/14
H02G15/08
H01R4/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081813
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】591080678
【氏名又は名称】株式会社中電工
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 聡
(72)【発明者】
【氏名】近藤 文昭
(72)【発明者】
【氏名】島根 博
(72)【発明者】
【氏名】山登 陽介
【テーマコード(参考)】
5E085
5G352
5G355
5G375
【Fターム(参考)】
5E085BB11
5E085DD16
5E085GG11
5E085JJ38
5G352AB07
5G352AB09
5G352AE04
5G352AE05
5G355AA03
5G355BA14
5G355CA06
5G355CA19
5G375AA02
5G375BA26
5G375CA14
5G375CB10
5G375DB31
5G375EA17
(57)【要約】
【課題】作業者が作業箇所から離れた位置から遠隔で作業を行うことが容易であり、汎用性に優れたコンパウンド落下防止器具を提供する。
【解決手段】互いに対向して開閉可能に回動し、常時閉じ合わせる方向に付勢され、スリーブ2の外周を把持可能に構成された一対の被覆部10A,10Bと、各被覆部の回動基部から延びる操作部20A,20Bと、一方の操作部20Bに設けられた被挟持部30と、を備え、被覆部は、少なくともコンパウンド抜き孔を覆うほどの長さを有する中央被覆部11と、中央被覆部から電線延伸方向両側へ延びる端部被覆部12と、電線の径方向内側に延びる13側壁部と、回動端部に、電線の径方向外側に向かうほど、対向する被覆部と離間するように傾斜するガイド部14と、を有してスリーブの外周を被覆可能に構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の接続部を筒状のスリーブに挿通させ、電線とスリーブの間にコンパウンドを充填した状態で圧縮する圧縮接続に用いられ、スリーブに形成されたコンパウンド抜き孔の外周に取り付けられるコンパウンド落下防止器具であって、
互いに対向して開閉可能に回動し、常時閉じ合わせる方向に付勢され、スリーブの外周を把持可能に構成された一対の被覆部と、
各前記被覆部の回動基部から延びる操作部と、
一方の前記操作部に設けられた被挟持部と、を備え、
前記被覆部は、
少なくともコンパウンド抜き孔を覆うほどの長さを有する中央被覆部と、
前記中央被覆部から電線延伸方向両側へ延びる端部被覆部と、
電線の径方向内側に延びる側壁部と、
回動端部に、電線の径方向外側に向かうほど、対向する前記被覆部と離間するように傾斜するガイド部と、
を有してスリーブの外周を被覆可能に構成される、コンパウンド落下防止器具。
【請求項2】
前記側壁部は、前記中央被覆部及び前記端部被覆部の間に形成され、
前記端部被覆部は、前記側壁部の電線径方向内側の端部から延び、
前記ガイド部は、前記中央被覆部及び前記側壁部の回動端部に形成される、請求項1に記載のコンパウンド落下防止器具。
【請求項3】
前記中央被覆部は、回動基部及び回動端部において、電線延伸方向の両端部に位置する角部が面取りされている、請求項2に記載のコンパウンド落下防止器具。
【請求項4】
前記被挟持部は、電線延伸方向に対して交差する面を有する、請求項1又は2に記載のコンパウンド落下防止器具。
【請求項5】
一方の前記操作部が係止部、他方の前記操作部が被係止部を有し、該係止部及び該被係止部により、一対の前記被覆部を開いた状態で保持可能に構成される、請求項1から3のいずれか1項に記載のコンパウンド落下防止器具。
【請求項6】
前記被覆部内に着脱可能、且つ、前記中央被覆部及び前記端部被覆部に亘って配置されるシート材を更に備える、請求項5に記載のコンパウンド落下防止器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパウンド落下防止器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電線を接続する作業として、電線の接続端部を圧縮スリーブで覆うことにより接続する圧縮接続が知られている。例えば、特許文献1に開示されるように、圧縮接続は、円筒状のスリーブへ接続する電線の端部を挿入し、スリーブを圧縮変形させて電線を接続する。電線とスリーブとの間には、電線の電気的特性や機械的特性の向上のために、油分と導電性粒子を含むコンパウンドが充填される。
【0003】
スリーブには、余分なコンパウンドを排出するためのコンパウンド抜き孔が電線の接続部の近傍に設けられているものがある。このような特殊スリーブには、透明なプラスチック製のラベルが、コンパウンド抜き孔を覆うように外周に巻き付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4785138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電線とスリーブの間にコンパウンドが充填された状態で、スリーブを圧縮すると、コンパウンド抜き孔からコンパウンドが漏出するおそれがある。漏出したコンパウンドは、ラベルの隙間から作業者へ飛散したり、電線の下方にある構造物や自動車を汚染したりすることが問題であった。特許文献1では、このような問題に対して、コンパウンド抜き孔を設けたスリーブと、コンパウンド抜き孔を覆う粘着シートと、コンパウンド抜き孔を包囲するコンパウンド回収袋を備えた電線接続具が開示されている。
【0006】
ところで、電線の作業は、作業者の安全確保の観点から、間接活線工具と呼ばれる操作棒を用い、作業者が作業箇所から離れた位置から遠隔で作業を行うことが一般的である。そのため、作業に用いる道具は操作棒による操作が容易であることが重要であるが、特許文献1に記載された回収袋ではその点が考慮されていない。
【0007】
また、特許文献1に記載される電線接続具は粘着シートを備える。粘着シートには、コンパウンド抜き穴部間に切開部を設けてあり、切開部からコンパウンドを漏出させて、それを回収袋で受け止めることによりコンパウンドの落下を防止する。しかしながら、一般的には、スリーブにラベルが取り付けられる場合、ラベルにそのような切開部は設けられない。
【0008】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業者が作業箇所から離れた位置から遠隔で作業を行うことが容易であり、汎用性に優れたコンパウンド落下防止器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、この発明では、スリーブに形成されたコンパウンド抜き孔だけでなくその電線延伸方向両側を被覆するようにした。
【0010】
具体的には、本発明は、電線の接続部を筒状のスリーブに挿通させ、電線とスリーブの間にコンパウンドを充填した状態で圧縮する圧縮接続に用いられ、スリーブに形成されたコンパウンド抜き孔の外周に取り付けられるコンパウンド落下防止器具であって、互いに対向して開閉可能に回動し、常時閉じ合わせる方向に付勢され、スリーブの外周を把持可能に構成された一対の被覆部と、各前記被覆部の回動基部から延びる操作部と、一方の前記操作部に設けられた被挟持部と、を備える。そして、前記被覆部は、少なくともコンパウンド抜き孔を覆うほどの長さを有する中央被覆部と、前記中央被覆部から電線延伸方向両側へ延びる端部被覆部と、電線の径方向内側に延びる側壁部と、回動端部に、電線の径方向外側に向かうほど、対向する前記被覆部と離間するように傾斜するガイド部と、を有してスリーブの外周を被覆可能に構成される。
【0011】
上記の構成によれば、中央被覆部によってコンパウンド抜き孔を被覆するだけでなく、端部被覆部によってコンパウンド抜き孔の電線延伸方向両側を被覆可能である。コンパウンド抜き孔の側方から漏出するコンパウンドの落下も防止することが可能となり、様々なスリーブに適用できるため、本発明は汎用性に優れる。被覆部は、側壁部によってスリーブの外周にコンパウンドの収容空間を形成するため、1回使用する度に清掃する必要がなく、複数回続けて使用することが可能となる。また、一対の被覆部は、常時閉状態に付勢されるが、ガイド部が被覆部内にスリーブを受け入れ易くする。作業者は、操作棒等で被挟持部を挟持し、ガイド部をスリーブへ押し当てることにより、付勢力に抗して接続部を容易に被覆部内へ収容することができるので、操作棒等を用いた遠隔での作業性に優れる。
【0012】
一実施形態では、前記側壁部は、前記中央被覆部及び前記端部被覆部の間に形成され、前記端部被覆部は、前記側壁部の電線径方向内側の端部から延び、前記ガイド部は、前記中央被覆部及び前記側壁部の回動端部に形成されてもよい。
【0013】
圧縮接続作業において、コンパウンド落下防止器具を取り付けた後、コンパウンド落下防止器具の電線延伸方向に圧縮工具を隣接させてスリーブを圧縮する。端部被覆部において収容空間を大きくした場合、端部被覆部が圧縮工具と干渉するおそれがある。上記の構成によれば、端部被覆部を側壁部の電線径方向内側の端部に形成することで、端部被覆部においては中央被覆部よりもコンパウンドの収容空間を狭める構成とし、コンパクトな外形とした。このような構成によれば、端部被覆部が圧縮工具と干渉することを防止できるため、より作業性に優れる。
【0014】
一実施形態では、前記中央被覆部は、回動基部及び回動端部において、電線延伸方向の両端部に位置する角部が面取りされていてもよい。
【0015】
上記の構成によれば、電線延伸方向の両端部の角部が面取りされている構成とすることで、中央被覆部においても圧縮工具との干渉を防止することができるため、より作業性に優れる。
【0016】
一実施形態では、前記被挟持部は、電線延伸方向に対して交差する面を有してもよい。
【0017】
コンパウンド落下防止器具は、被挟持部を大きくすることで、操作棒により挟持しやすくなるが、電線延伸方向に並ぶ圧縮工具と干渉するおそれがある。上記の構成によれば、被挟持部は、電線延伸方向に並ぶ圧縮工具と干渉しにくくなる。被挟持部は、操作棒によって挟持しやすいように面積を大きくすることも可能となり、作業性を損なうことなく、コンパウンド落下防止器具をより扱い易くすることができる。
【0018】
一実施形態では、一方の前記操作部が係止部、他方の前記操作部が被係止部を有し、該係止部及び該被係止部により、一対の前記被覆部を開いた状態で保持可能に構成されてもよい。
【0019】
上記の構成によれば、コンパウンド落下防止器具は、2つの被覆部を開いた状態で保持可能となるため、被覆部内の清掃が容易となる。
【0020】
一実施形態では、前記被覆部内に着脱可能、且つ、前記中央被覆部及び前記端部被覆部に亘って配置されるシート材を更に備えてもよい。
【0021】
上記の構成によれば、漏出したコンパウンドはシート材に付着するため、シート材を取り換えるだけで被覆部内を清掃可能であり、コンパウンド落下防止器具の作業性に優れる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、作業者が作業箇所から離れた位置から遠隔で作業を行うことが容易であり、作業性及び汎用性に優れたコンパウンド落下防止器具を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】スリーブを取り付けた電線とコンパウンド落下防止器具を示す概略斜視図である。
図2】スリーブを取り付けた電線の概略断面図である。
図3】第1実施形態のコンパウンド落下防止器具を示す側面図である。
図4】第1実施形態のコンパウンド落下防止器具を示す正面図である。
図5】第2実施形態のコンパウンド落下防止器具を示す側面図である。
図6】第2実施形態のコンパウンド落下防止器具を示す正面図である。
図7】第2実施形態のコンパウンド落下防止器具と圧縮工具を示す正面図である。
図8】シート材を備える第2実施形態のコンパウンド落下防止器具の平面図である。
図9】シート材を備える第2実施形態のコンパウンド落下防止器具の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0025】
図1は、スリーブを取り付けた電線とコンパウンド落下防止器具を示す概略斜視図であり、図2は、スリーブを取り付けた電線の概略断面図である。本発明のコンパウンド落下防止器具1は、電線Wの接続部を筒状のスリーブ2に挿通させ、電線Wとスリーブ2の間にコンパウンド4を充填した状態で圧縮する圧縮接続に用いられる。コンパウンド落下防止器具1は、スリーブ2に形成されたコンパウンド抜き孔2a,2aの外周に取り付けられ、スリーブ2が圧縮された際にコンパウンド抜き孔2a,2aから漏出するコンパウンド4を受け止め、落下を防止する。
【0026】
図1及び2に示すように、スリーブ2は、電線Wの延伸方向に延びる円筒状の部材である。スリーブ2は、電線Wの圧縮接続に用いられるものとして、圧縮スリーブと呼ばれることもある。スリーブ2は、電線W同士の接続部の近傍、つまり、延伸方向略中央部において、内部と外部とを連通させるコンパウンド抜き孔2a,2aが設けられる。コンパウンド抜き孔2a,2aは、電線延伸方向に間隔をあけて2つ設けられる。以下の説明において、「延伸方向」とは、電線及びスリーブの延伸方向(請求の範囲における「電線延伸方向」)を指し、「径方向」とは電線及びスリーブの径方向を指す。
【0027】
コンパウンド4は、例えばシリコングリースやひまし油等の油分と、導電性の粒子などを含む。コンパウンド4は、電線Wとスリーブ2の間に充填されることで、接続される電線の電気的特性や機械的特性を向上する。
【0028】
スリーブ2には、コンパウンド抜き孔2a覆うように、外周にプラスチック製のラベル3が巻き付けてある。ラベル3は、例えば、塩化ビニルやポリプロピレンから形成された透明で薄いフィルム状のものである。ラベル3には、スリーブ2の品番や、適用する電線の種類等が記載されている。尚、本発明のコンパウンド落下防止器具1は、ラベル3の有無に関わらず、コンパウンド抜き孔2aが設けられたスリーブ2に適用可能である。
【0029】
コンパウンド落下防止器具1は、間接活線工具と呼ばれる操作棒5によって挟持して取付け操作可能であり、作業者が作業箇所から離れた位置から遠隔で作業を行うことを可能にする。
【0030】
(第1実施形態)
図3は、第1実施形態のコンパウンド落下防止器具を示す側面図であり、図4は、第1実施形態のコンパウンド落下防止器具を示す正面図である。図3及び図4に示すように、コンパウンド落下防止器具1は、一対の被覆部10A,10B、一対の操作部20A,20B、一方の操作部20Bに設けられた被挟持部30、回動軸40及び付勢部材50を備える。
【0031】
一対の被覆部10A,10Bは、回動軸40を中心に回動し、互いに対向して開閉可能である。被覆部10A,10Bにおいて、回動軸40に近い部分を回動基部と呼び、回動軸40から離れた端部を回動端部と呼ぶ。図3において、被覆部10A,10Bを回動させた際の一方の被覆部10Aを二点鎖線で示す。被覆部10A,10Bは、付勢部材50によって常時閉じ合わせる方向に付勢される。被覆部10A,10Bは、閉じ合わせた状態でスリーブ2の外周を把持可能であるとともに、スリーブ2の外周を被覆可能に構成される。被覆部10A,10Bは、閉じ合わせた状態で挿通孔60を形成する。挿通孔60は、延伸方向にスリーブ2を挿通可能なほどに開口する。図3において、挿通孔60に挿通させたスリーブ2を二点鎖線で示す。
【0032】
具体的には、被覆部10A,10Bは、スリーブ2を周方向に覆う中央被覆部11A,11B及び端部被覆部12A,12Bと、径方向に延びる側壁部13A,13Bとで、スリーブ2の外周にコンパウンドの収容空間を形成し、ガイド部14A,14Bによってコンパウンドの収容空間へスリーブ2をガイドするように構成されている。
【0033】
中央被覆部11A,11Bは、それぞれが半円筒形状であり、閉じ合わせた状態で、スリーブ2の外周を覆う略円筒形状となる。中央被覆部11A,11Bは、延伸方向において、少なくともコンパウンド抜き孔2a,2aを覆うほどの長さを有する。図4において、スリーブ2及びラベル3を二点鎖線で示す。中央被覆部11A,11Bは、例えば、少なくとも図4中のコンパウンド抜き孔2a間の長さL1よりも長い。
【0034】
端部被覆部12A,12Bは、中央被覆部11A,11Bから延伸方向両側へ延びる。第1実施形態において、中央被覆部11A,11Bと端部被覆部12A,12Bは、一続きに形成される。スリーブ2がラベル3を有する場合、端部被覆部12A,12Bは、ラベル3の延伸方向端部よりも外側まで延びて設けられることが好ましい。端部被覆部12A,12Bは、例えば、少なくとも図4中のラベル3の長さL2よりも延伸方向外側に延びて設けられる。
【0035】
側壁部13A,13Bは、端部被覆部12A,12Bの延伸方向両端部から、径方向内側へ延びて設けられる。側壁部13A,13Bは、端部被覆部12A,12Bからスリーブ2へ向かって延びる。側壁部13A,13Bの端部は、径方向外側に向かって湾曲して凹む凹部が形成され、この凹部が、被覆部10A,10Bを閉じ合わせた状態で、スリーブ2を挿通する挿通孔60を形成する。
【0036】
回動端部において、側壁部13A,13Bが径方向外側に向かうほど、対向する被覆部における回動端部と離間するように傾斜するとともに、中央被覆部11A,11B及び端部被覆部12A,12Bが、側壁部13A,13Bの傾斜に沿って径方向外側に屈折することにより、ガイド部14A,14Bが形成される。被覆部10A,10Bは、閉じ合わせた状態であってもガイド部14A,14Bにおいて回動端部が開口しており、その開口はコンパウンドの収容空間へ通じている。
【0037】
被覆部10A,10Bの回動基部には、一対の操作部20A,20Bが延びる。操作部20A,20Bは、回動軸40を備え、回動軸40を中心に回動可能である。操作部20A,20Bの回動に伴い、被覆部10A,10Bが回動する。操作部20A,20Bの間には付勢部材50が架設される。付勢部材50が操作部20A,20Bを互いに離れる方向へ付勢することにより、被覆部10A,10Bは互いに接近する方向、つまり、閉じ合わせる方向へ付勢される。付勢部材50はどのような付勢手段であってもよいが、例えば、トーションばねや、圧縮ばねである。スリーブ2を安定して把持するには、付勢部材50に圧縮ばねを用いるのが好ましい。
【0038】
一方の操作部20Bには、被挟持部30が設けられる。被挟持部30は、被覆部10Bの略中央部から操作部20Bに亘って設けられる。より詳しくは、被挟持部30は、図4における上下方向において、中央被覆部11Bの略中央部から下方へ延び、操作部20Bの下端に亘って設けられる。被挟持部30は、延伸方向に対して交差する面を有し、その面を操作棒5によって延伸方向両側から挟み込むことができる。被挟持部30の表裏には、電線の延伸方向に突出し、延伸方向に対して交差する方向に延びる複数の凸条30aが設けられる。被挟持部30に凸条30aを設けることで、作業者が操作棒5によって被挟持部30を挟持した際に滑りにくくなるため、操作性を高めることができる。
【0039】
第1実施形態のコンパウンド落下防止器具1によれば、中央被覆部11A,11Bによってコンパウンド抜き孔2aを被覆するだけでなく、端部被覆部12A,12Bによってコンパウンド抜き孔2aの電線延伸方向両側を被覆可能である。ラベル3を有するスリーブ2に対してコンパウンド落下防止器具1を用いれば、ラベル3の側方から漏出するコンパウンドの落下も防止することが可能となる。また、コンパウンド落下防止器具1はラベル3の長さの異なる様々なスリーブに適用できるため、汎用性に優れる。被覆部10A,10Bは、側壁部13A,13Bによってスリーブ2の外周にコンパウンドの収容空間を形成するため、1回使用する度に清掃する必要がなく、複数回続けて使用することが可能となる。また、一対の被覆部10A,10Bは、常時閉状態に付勢されるが、ガイド部14A,14Bが設けられているため、被覆部10A,10B内へスリーブ2を挿入し易い。作業者は、操作棒5等で被挟持部30を挟持し、ガイド部14A,14Bをスリーブ2へ押し当てることにより、付勢力に抗して接続部を容易に被覆部内へ収容することができるので、本発明は操作棒等を用いた遠隔での作業性に優れる。
【0040】
(第2実施形態)
図5は、第2実施形態のコンパウンド落下防止器具を示す側面図であり、図6は、第2実施形態のコンパウンド落下防止器具を示す正面図である。図5及び図6に示すように、コンパウンド落下防止器具1は、一対の被覆部10A,10Bと、一対の操作部20A,20Bと、一方の操作部20Bに設けられた被挟持部30と、回動軸40及び付勢部材50を備える。
【0041】
第2実施形態のコンパウンド落下防止器具1は、主に被覆部10A,10Bの形態が第1実施形態と異なる。以下の第2実施形態の説明において、第1実施形態と異なる構成要素について詳細に説明し、同様の構成要素については説明を省略する。また、以下の第2実施形態の説明において、第1実施形態の構成要素に対応する構成要素は、第1実施形態と同じ名称及び同じ符号を付す。
【0042】
第2実施形態の被覆部10A,10Bは、スリーブ2を周方向に覆う中央被覆部11A,11B及び径方向に延びる側壁部13A,13Bが、スリーブ2の外周にコンパウンドの収容空間を形成し、中央被覆部11A,11B及び側壁部13A,13Bに設けられたガイド部14A,14Bによってコンパウンドの収容空間へスリーブ2をガイドするように構成されている。
【0043】
中央被覆部11A,11Bは、それぞれが半円筒形状であり、閉じ合わせた状態で、スリーブ2の外周を覆う略円筒形状となる。中央被覆部11A,11Bは、延伸方向において、少なくともコンパウンド抜き孔2a,2aを覆うほどの長さを有する。図6において、スリーブ2及びラベル3を二点鎖線で示す。中央被覆部11A,11Bは、例えば、少なくとも図6中のコンパウンド抜き孔2a間の長さL1よりも長い。中央被覆部11A,11Bは、回動基部及び回動端部において、電線延伸方向の両端部に位置する角部が面取りされた面取り部110が形成されている。言い換えれば、中央被覆部11A,11Bは、面取り部110が形成されることで、回動基部及び回動端部における電線延伸方向の長さが短く、コンパクトに形成されている。
【0044】
側壁部13A,13Bは、中央被覆部11A,11B及び端部被覆部12A,12Bの間に形成される。側壁部13A,13Bは、中央被覆部11A,11Bの延伸方向両端部から、径方向内側へ延びて設けられる。側壁部13A,13Bは中央被覆部11A,11Bからスリーブ2へ向かって延びる。側壁部13A,13Bの端部は、径方向外側に向かって湾曲して凹む凹部が形成され、この凹部が、被覆部10A,10Bを閉じ合わせた状態で、スリーブ2を挿通する挿通孔60を形成する。図6において、被覆部10A,10Bを回動させた際の一方の被覆部10Aと、挿通孔60に挿通させたスリーブ2を二点鎖線で示す。
【0045】
端部被覆部12A,12Bは、側壁部13A,13Bの径方向内側の端部から、延伸方向両側へ延びる。端部被覆部12A,12Bは、それぞれが半円筒形状であり、閉じ合わせた状態で、スリーブ2の外周を覆う略円筒形状となる。第2実施形態において、端部被覆部12A,12Bは、中央被覆部11A,11Bよりもスリーブ2の外周に近接し、外形がコンパクトに形成される。スリーブ2がラベル3を有する場合、端部被覆部12A,12Bは、ラベル3の延伸方向端部よりも外側まで延びて設けられることが好ましい。端部被覆部12A,12Bは、例えば、少なくとも図6中のラベル3の長さL2よりも延伸方向外側に延びて設けられる。
【0046】
ガイド部14A,14Bは、中央被覆部11A,11B及び側壁部13A,13Bの回動端部に形成される。具体的には、回動端部において、側壁部13A,13Bが径方向外側に向かうほど、対向する被覆部における回動端部と離間するように傾斜するとともに、中央被覆部11A,11Bが側壁部13A,13Bの傾斜に沿って径方向外側に屈折することによりガイド部14A,14Bが形成される。被覆部10A,10Bは、閉じ合わせた状態であってもガイド部14A,14Bにおいて回動端部が開口し、その開口はコンパウンドの収容空間へ通じている。
【0047】
被覆部10A,10Bの回動基部には、一対の操作部20A,20Bが延びる。操作部20A,20Bは、回動軸40を備え、回動軸40を中心に回動可能である。操作部20A,20Bの回動に伴い、被覆部10A,10Bが回動する。操作部20A,20Bの間には付勢部材50が架設される。付勢部材50が、操作部20A,20Bを互いに離れる方向へ付勢することにより、被覆部10A,10Bは互いに接近する方向、つまり、閉じ合わせる方向へ付勢される。
【0048】
一方の操作部20Bは回動端部に係止部60Bを有し、他方の操作部20Aは回動端部に被係止部60Aを有する。係止部と被係止部は、一対の操作部20A,20Bを引き寄せて係止可能な形態であればどのようなものを用いてもよいが、例えば本実施形態においては、略半円状の係止部60Bが、鉤状の被係止部60Aに係止される。このような係止部60B及び被係止部60Aにより、一対の被覆部10A,10Bを開いた状態で保持可能に構成される。
【0049】
(使用手順)
ここで、本発明のコンパウンド落下防止器具1の使用手順について説明する。コンパウンド落下防止器具1は、電線Wの接続端部がスリーブ2で覆われるとともにスリーブ2と電線Wの間にコンパウンド4が充填された状態であって、スリーブ2を圧縮する前に取り付けられる。作業者は、被挟持部30を操作棒5によって挟み込み、ガイド部14A,14Bをスリーブ2へ押し当てるだけで、コンパウンド落下防止器具1をスリーブ2へ取り付けることができる。ガイド部14A,14Bがスリーブ2へ押し当てられると、スリーブ2がガイド部14A,14Bによって挿通孔60へガイドされることで、スリーブ2がガイド部14A,14Bを押し開き、付勢部材50の付勢力に抗して被覆部10A,10Bが互いに離れる方向へ回動する。スリーブ2が挿通孔60内に収まり、コンパウンド落下防止器具1が取り付けられると、作業者は操作棒5を被挟持部30から離す。
【0050】
図7は、第2実施形態のコンパウンド落下防止器具と圧縮工具を示す正面図である。スリーブ2へコンパウンド落下防止器具1を取り付けた後、作業者は圧縮工具6へ持ち替え、圧縮工具6によってスリーブ2を圧縮する。圧縮工具6は、電線の接続部を覆うスリーブ2の外周を圧縮する。スリーブ2は、延伸方向の複数箇所において圧縮工具6に圧縮される。圧縮工具6は、スリーブ2を圧縮する圧縮部6aを有し、圧縮部6aは基部6bに設けられる。図7に示すように、基部6bは圧縮部6aよりも延伸方向に拡張している。
【0051】
被挟持部30を大きく広げれば、被挟持部30を操作棒5により挟持しやすくなるが、被挟持部30が電線延伸方向に沿うような面を有する場合、被挟持部30が圧縮工具6と干渉するおそれがある。本発明では、被挟持部30が電線延伸方向に対して交差する面を有するように構成したため、延伸方向に隣接させた圧縮工具との干渉を防ぐことができる。また、被挟持部30を操作棒5によって挟持しやすいように大きく広げることも可能となり、圧縮接続の作業性を損なうことなく、コンパウンド落下防止器具をより扱い易くすることができる。
【0052】
第2実施形態のコンパウンド落下防止器具では、端部被覆部12A,12Bを側壁部13A,13Bの径方向内側の端部に形成することで、端部被覆部12A,12Bにおいて中央被覆部11A,11Bよりもコンパウンドの収容空間を狭め、コンパクトな外形とした。そのため、第2実施形態のコンパウンド落下防止器具は、電線延伸方向両側において圧縮工具6を様々な角度から隣接させても、端部被覆部12A,12Bが圧縮工具6と干渉し難いという利点がある。更に、第2実施形態では、中央被覆部11A,11Bは、回動基部及び回動端部において、電線延伸方向の両端部に位置する角部が面取りされているため、中央被覆部11A,11Bにおいても圧縮工具6との干渉を更に防止することができる。
【0053】
図8は、シート材を備える第2実施形態のコンパウンド落下防止器具の平面図であり、図9は、シート材を備える第2実施形態のコンパウンド落下防止器具の側面図である。本発明のコンパウンド落下防止器具1は、シート材70を更に備えてもよい。
【0054】
シート材70は、薄いフィルム状又はシート状の部材であり、例えば、ポリプロピレン製や塩化ビニル製のものである。シート材70は、接着部80によって被覆部10A,10B内に着脱可能である。接着部80は、例えば両面が接着可能な接着テープ等である。接着部80がガイド部14A,14Bや挿通孔60の内側に取り付けられて、シート材70は、中央被覆部11A,11B及び端部被覆部12A,12Bに亘って配置される。シート材70を被覆部10A,10B内に設置した状態で、コンパウンド落下防止器具をスリーブに取り付ければ、漏出したコンパウンドはシート材70に付着するため、シート材70を取り換えるだけで被覆部10A,10B内を清掃可能であり、作業性に優れる。
【符号の説明】
【0055】
1 コンパウンド落下防止器具
2 スリーブ
2a コンパウンド抜き孔
3 ラベル
4 コンパウンド
5 操作棒
6 圧縮工具
10A,10B 被覆部
11A,11B 中央被覆部
12A,12B 端部被覆部
13A,13B 側壁部
14A,14B ガイド部
20A,20B 操作部
30 被挟持部
40 回動軸
50 付勢部材
60 挿通孔
70 シート材
80 接着部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9