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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165539
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】画像処理装置および画像処理方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/407 20060101AFI20241121BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H04N1/407
G06T1/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081817
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】福留 正一
(72)【発明者】
【氏名】山中 久志
(72)【発明者】
【氏名】青木 礼至
(72)【発明者】
【氏名】福西 俊樹
【テーマコード(参考)】
5B057
5C077
【Fターム(参考)】
5B057AA11
5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB01
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CC03
5B057CE02
5B057CE17
5B057DA17
5B057DC23
5B057DC25
5C077LL02
5C077MP08
5C077PP21
5C077PP25
5C077PP32
5C077PP37
5C077PP44
5C077PP52
5C077TT06
(57)【要約】
【課題】裏写りの有無を精度良く判定することができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像処理装置は、原稿を読み取って得られた画像データに裏写りが存在するかどうかを判定する裏写り判定部61と、裏写り判定部61の判定結果に基づいて、画像データに処理を施す処理部62とを備える。裏写り判定部61は、画像データにおける赤色、緑色、および青色でのそれぞれの階調に基づいて、裏写りであると判定する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を読み取って得られた画像データに裏写りが存在するかどうかを判定する裏写り判定部と、
前記裏写り判定部の判定結果に基づいて、前記画像データに処理を施す処理部とを備える画像処理装置であって、
前記裏写り判定部は、前記画像データにおける赤色、緑色、および青色でのそれぞれの階調に基づいて、裏写りであると判定すること
を特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記裏写り判定部は、前記画像データにおける赤色と青色とでの階調の差分が差分閾値を超えている場合、裏写りであると判定すること
を特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記裏写り判定部は、前記階調から算出した彩度が彩度閾値より低い場合、裏写りであると判定すること
を特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記裏写り判定部は、前記階調から算出した濃度が濃度閾値より低い場合、裏写りであると判定すること
を特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記裏写り判定部は、前記画像データにおける下地を特定し、前記下地での階調に基づいて、前記画像データ全体での階調を正規化すること
を特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の画像処理装置であって、
前記裏写り判定部は、下地であると特定した部分に対し、赤色、緑色、および青色での階調を揃えるように正規化し、前記画像データにおける赤色での階調が青色での階調よりも小さい部分を裏写りであると判定すること
を特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記処理部は、前記画像データの裏写りに対し、濃度を薄くすること
を特徴とする画像処理装置。
【請求項8】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記処理部は、前記画像データの裏写りに対し、周囲の色に合わせる処理をすること
を特徴とする画像処理装置。
【請求項9】
原稿を読み取って得られた画像データに裏写りが存在するかどうかを判定する裏写り判定工程と、
前記裏写り判定工程の判定結果に基づいて、前記画像データに処理を施す処理工程とを含む画像処理方法であって、
前記裏写り判定工程では、前記画像データにおける赤色、緑色、および青色でのそれぞれの階調に基づいて、裏写りであると判定すること
を特徴とする画像処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像に処理を施す画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置には、画像読取装置が設けられており、原稿の画像を読み取って画像データを取得している。一般的に、画像読取装置では、載置された原稿を読み取るモードと、原稿を通過させて読み取るモードとの両方を備えたものが広く知られている。原稿については、様々な用紙が用いられるようになってきており、薄い用紙が用いられた場合では、用紙を通して裏面が透け、裏面に印刷された画像が読み取られる「裏写り」が生じ、画質を劣化させることがあった。そこで、裏写り画像を判別し、裏写り画像を除去・修復する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-197445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の画像処理装置は、読み取った原稿画像の濃度、エッジ強度、および濃度ムラそれぞれのデータを裏写り画像の度合いを示す基準値と比較する画質検出手段と、画質検出手段によって得られた画質検出結果に基づいて、総合的に裏写り画像を判定する裏写り判定手段と、裏写り判定手段の判定結果に従って裏写り画像を抑制する手段とを有する。画質検出手段は、裏写りの画質を有するか否かの2値で検出している。
【0005】
ところで、裏写りについては、用紙を透過して裏面の画像を読み取ることで生じている。そこで、光の透過率といった裏写りに関する固有の事項に着目し、従来の画像処理装置とは異なるアプローチによって、裏写りを判定する方法が求められている。
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、裏写りの有無を精度良く判定することができる画像処理装置および画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る画像処理装置は、原稿を読み取って得られた画像データに裏写りが存在するかどうかを判定する裏写り判定部と、前記裏写り判定部の判定結果に基づいて、前記画像データに処理を施す処理部とを備える画像処理装置であって、前記裏写り判定部は、前記画像データにおける赤色、緑色、および青色でのそれぞれの階調に基づいて、裏写りであると判定することを特徴とする。
【0008】
本開示に係る画像処理装置では、前記裏写り判定部は、前記画像データにおける赤色と青色とでの階調の差分が差分閾値を超えている場合、裏写りであると判定する構成としてもよい。
【0009】
本開示に係る画像処理装置では、前記裏写り判定部は、前記階調から算出した彩度が彩度閾値より低い場合、裏写りであると判定する構成としてもよい。
【0010】
本開示に係る画像処理装置では、前記裏写り判定部は、前記階調から算出した濃度が濃度閾値より低い場合、裏写りであると判定する構成としてもよい。
【0011】
本開示に係る画像処理装置では、前記裏写り判定部は、前記画像データにおける下地を特定し、前記下地での階調に基づいて、前記画像データ全体での階調を正規化する構成としてもよい。
【0012】
本開示に係る画像処理装置では、前記裏写り判定部は、下地であると特定した部分に対し、赤色、緑色、および青色での階調を揃えるように正規化し、前記画像データにおける赤色での階調が青色での階調よりも小さい部分を裏写りであると判定する構成としてもよい。
【0013】
本開示に係る画像処理装置では、前記処理部は、前記画像データの裏写りに対し、濃度を薄くする構成としてもよい。
【0014】
本開示に係る画像処理装置では、前記処理部は、前記画像データの裏写りに対し、周囲の色に合わせる処理をする構成としてもよい。
【0015】
本開示に係る画像処理方法は、原稿を読み取って得られた画像データに裏写りが存在するかどうかを判定する裏写り判定工程と、前記裏写り判定工程の判定結果に基づいて、前記画像データに処理を施す処理工程とを含む画像処理方法であって、前記裏写り判定工程では、前記画像データにおける赤色、緑色、および青色でのそれぞれの階調に基づいて、裏写りであると判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本開示によると、色(波長)による透過率の違いを利用し、画像データの階調を参照することで、裏写りの有無を精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の実施の形態に係る画像形成装置の概略側面図である。
図2】両面に画像が形成された原稿の一例を示す模式平面図である。
図3】画像読取装置に読み取られる原稿を示す模式側面図である。
図4】画像読取装置および画像処理装置の概略構成図である。
図5】画像データの一例における階調をまとめた第1階調表を示す特性図表である。
図6】正規化した画像データの一例における階調をまとめた第2階調表を示す特性図表である。
図7】画像データに基づくヒストグラムの一例を示す特性図表である。
図8】画像処理装置における裏写り判定と画像処理とに関する処理フローを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示の実施の形態に係る画像形成装置について、図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本開示の実施の形態に係る画像形成装置の概略側面図である。
【0020】
画像形成装置100は、スキャナ機能、複写機能、プリンタ機能、およびファクシミリ機能等を有する複合機であり、画像読取装置によって読み取られた原稿の画像を外部に送信し(スキャナ機能に相当する)、また、読み取られた原稿の画像または外部から受信した画像をカラーもしくは単色で用紙に画像形成する(複写機能、プリンタ機能、およびファクシミリ機能に相当する)。
【0021】
画像読取装置41の上側には、画像読取装置41に対して開閉自在に支持された原稿搬送装置50(ADF)が設けられている。原稿搬送装置50が開かれると、画像読取装置41の上方の原稿載置台44が開放され、原稿を手置きで置くことができるようになっている。また、原稿搬送装置50は、載置された原稿を、画像読取装置41の上に自動で搬送する。画像読取装置41は、載置された原稿または原稿搬送装置50から搬送された原稿を読み取って画像データを生成する。画像読取装置41では、読取光源42から原稿へ光を照射しており、ミラー等を介して導かれた原稿での反射光を、撮像素子43が受光している。なお、画像読取装置41での画像の読取方法については、後述する図2および図3を参照して説明する。
【0022】
画像形成装置100は、光走査装置1、現像装置2、感光体ドラム3、ドラムクリーニング装置4、帯電器5、中間転写ベルト7、定着部12、用紙搬送路Sm、給紙カセット10、積載トレイ15等を備えている。
【0023】
画像形成装置100では、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像、または単色(例えば、ブラック)を用いたモノクロ画像に応じた画像データが扱われる。画像形成装置100には、4種類のトナー像を形成するための現像装置2、感光体ドラム3、ドラムクリーニング装置4、および帯電器5が4つずつ設けられ、それぞれがブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローに対応付けられ、4つの画像ステーションPa、Pb、Pc、Pdが構成されている。
【0024】
ドラムクリーニング装置4は、感光体ドラム3の表面の残留トナーを除去および回収する。帯電器5は、感光体ドラム3の表面を所定の電位に均一に帯電させる。光走査装置1は、感光体ドラム3の表面を露光して静電潜像を形成する。現像装置2は、感光体ドラム3の表面の静電潜像を現像して、感光体ドラム3の表面にトナー像を形成する。上述した一連の動作によって、各感光体ドラム3の表面に各色のトナー像が形成される。
【0025】
感光体ドラム3の上側には、転写ベルト装置8が設けられ、中間転写ベルト7を介して中間転写ローラ6が配置されている。中間転写ベルト7は、転写駆動ローラ21および転写従動ローラ22に張架され、矢符Cの方向へ周回移動し、ベルトクリーニング装置9によって残留トナーを除去および回収され、各感光体ドラム3の表面に形成された各色のトナー像が順次転写して重ね合わされて、中間転写ベルト7の表面にカラーのトナー像が形成される。
【0026】
2次転写部11の転写ローラ11aは、中間転写ベルト7との間にニップ域が形成されており、用紙搬送路Smを通じて搬送されて来た用紙をニップ域に挟み込んで搬送する。用紙は、ニップ域を通過する際に、中間転写ベルト7の表面のトナー像が転写されて定着部12に搬送される。
【0027】
定着部12は、用紙を挟んで回転する定着ローラ31および加圧ローラ32を備えている。定着部12は、定着ローラ31および加圧ローラ32の間にトナー像が転写された用紙を挟み込んで加熱および加圧し、トナー像を用紙に定着させる。
【0028】
給紙カセット10は、画像形成に使用する用紙を蓄積しておくためのカセットであり、光走査装置1の下側に設けられている。用紙は、用紙ピックアップローラ16によって給紙カセット10から引き出されて、用紙搬送路Smを通じて搬送され、2次転写部11や定着部12を経由し、排紙ローラ17を介して積載トレイ15へと搬出される。用紙搬送路Smには、用紙を一旦停止させて、用紙の先端を揃えた後、中間転写ベルト7と転写ローラ11aとの間のニップ域でのカラーのトナー像の転写タイミングに合わせて用紙の搬送を開始する用紙レジストローラ14、用紙の搬送を促す搬送ローラ13、および排紙ローラ17が配置されている。
【0029】
また、用紙の表面だけでなく、裏面に画像形成を行う場合は、用紙を排紙ローラ17から用紙反転経路Srへと逆方向に搬送する。用紙反転経路Srでは、反転ローラ18を通じて用紙の表裏を反転させ、用紙を用紙レジストローラ14へと再度導く。その後、表面と同様にして裏面に画像形成を行い、用紙を積載トレイ15へと搬出する。
【0030】
次に、両面に画像が形成された原稿と、それを読み取った際に生じる裏写りとについて、図2および図3を参照して説明する。
【0031】
図2は、両面に画像が形成された原稿の一例を示す模式平面図である。
【0032】
図2では、両面に画像が形成された原稿GEについて、表面から見た状態であって、裏面を透視した状態を示している。原稿GEの表面には、表面画像FGが形成(印刷)されており、原稿GEの裏面には、裏面画像RGが形成されている。以下では説明のため、原稿GEのうち、表面および裏面のいずれにも画像が形成されておらず、原稿GE自体が見えている部分を下地SRと呼ぶことがある。
【0033】
図3は、画像読取装置に読み取られる原稿を示す模式側面図である。なお、図3では、原稿に形成(印刷)された画像を強調するため、これをハッチングしている。
【0034】
上述したように、画像読取装置41では、原稿GEの表面に対して、読取光源42から光を照射しており、原稿GEでの反射光を撮像素子43が受光している。画像を読み取る際には、原稿GEを移動させるか、読取光源42等を移動させることで、原稿GE全体に光を照射するようにしている。その結果、表面画像FGが形成された部分(図3では、左側)に光が照射された際には、表面画像FGに応じた反射光(第1反射光HK1)を撮像素子43が受光している。
【0035】
ところで、裏面画像RGが形成された部分(図3では、右側)に光が照射された際、本来は、原稿GEの表面で光が反射され、下地SRに応じた反射光が生じるのだが、一部の光が原稿GEを透過することがあった。そして、原稿GEを透過した光は、裏面画像RGに応じた反射光(第2反射光HK2)となり、撮像素子43に受光される。このようにして、原稿GEの裏面に印刷された画像(裏面画像RG)を読み取る裏写りが生じる。
【0036】
光の透過率は、波長が長くなるほど透過率が高くなっており、赤外線、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の順番で透過しやすい。本実施の形態では、赤色、緑色、および青色での透過率の差分を利用することにより、裏写りが存在するかどうかを判定している。
【0037】
画像読取装置41では、読み取った画像データにおいて、各画素での色を赤色、緑色、および青色での階調を用いて特定している。以下では説明のため、赤色、緑色、および青色を併せて、三原色と呼ぶことがあり、それぞれを区別する際、赤色をRと略し、緑色をGと略し、青色をBと略すことがある。本実施の形態において、三原色の階調について、0~255の数値で表している。画素の色は、三原色のそれぞれでの階調の組み合わせによって決定されており、階調の数値が高くなるほど対応する色が明るくなっていく。例えば、画素が白色の場合の階調は、「R=255、G=255、B=255」となり、画素が黒色の場合の階調は、「R=0、G=0、B=0」となる。
【0038】
図4は、画像読取装置および画像処理装置の概略構成図である。
【0039】
上述したように、画像読取装置41は、読取光源42および撮像素子43を備える。なお、図4では、画像読取装置41の一部を抜き出して示しており、他の部材を適宜備えていてもよい。
【0040】
画像処理装置60は、原稿GEを読み取って得られた画像データに裏写りが存在するかどうかを判定(裏写り判定)する裏写り判定部61と、裏写り判定部61の判定結果に基づいて、画像データに処理を施す処理部62とを備える。なお、裏写り判定部61による裏写り判定と、処理部62による画像処理とについては、後述する図8を参照して説明する。
【0041】
次に、画像読取装置41によって読み取った画像データの一例について、図5を参照して説明する。
【0042】
図5は、画像データの一例における階調をまとめた第1階調表を示す特性図表である。
【0043】
図5では、画像読取装置41によって読み取った画像データの一例において、一部の画素での階調をまとめた第1階調表TB1を示している。第1階調表TB1において、「下地」の欄は、原稿GEの下地SRに対応する画素の階調を示しており、「裏写り」の欄は、原稿GEの裏面画像RGに対応する画素の階調を示しており、「黒文字」の欄は、原稿GEの表面画像FGに対応する画素の階調を示している。
【0044】
第1階調表TB1について、波長の差が大きい赤色(R)と青色(B)とでの階調に着目すると、「下地」は、RとBとが略同じ値となっており、「黒文字」は、R>Bとなっているが、「裏写り」は、R<Bとなっている。つまり、原稿GEの表面(表面画像FG)と裏面(裏面画像RG)とでは、色によって画素における階調が異なる傾向になっている。そこで、裏写り判定部61は、画像データにおける赤色と青色とでの階調の差分が差分閾値を超えている場合、裏写りであると判定する。このように、色(波長)による透過率の違いを利用し、画像データの階調を参照することで、裏写りの有無を精度良く判定することができる。さらに、波長による透過率の差が大きい赤色と青色とに着目することで、判定の精度を向上させることができる。
【0045】
上述したように、画像読取装置41での読取結果をそのまま参照して、裏写り判定を行ってもよいが、これに限定されず、読取結果を正規化してから裏写り判定を行ってもよい。
【0046】
図6は、正規化した画像データの一例における階調をまとめた第2階調表を示す特性図表である。
【0047】
図6では、図5に示す第1階調表TB1と同じ画像データについて、正規化した後の階調をまとめた第2階調表TB2を示している。本実施の形態における正規化では、「下地」と「黒文字」とについて、赤色、緑色、および青色でのそれぞれの階調を一様な値とし、それ以外の部分について、所定の計算式に基づいて値を変換する。本実施の形態では、「下地」は、R=G=B=250とし、「黒文字」は、R=G=B=50としている。正規化した結果、第2階調表TB2における「裏写り」では、RとBとの差分が大きくなっている。つまり、裏写り判定の際には、下地であると特定した部分について、赤色、緑色、および青色での階調を揃えるように正規化し、R<Bとなる部分を裏写りであると判定してもよい。このように、一様な色合いとなっている下地SRを基準として正規化することで、階調の値の差がより顕著になり、裏写りが存在するかどうかを判定しやすくなる。
【0048】
画像処理装置60では、正規化するに当たって、画像データにおける下地SRを特定する工程を実施してもよい。本実施の形態では、画像データに基づくヒストグラムから下地SRを特定している。次に、画像データに基づくヒストグラムについて、図7を参照して説明する。
【0049】
図7は、画像データに基づくヒストグラムの一例を示す特性図表である。
【0050】
図7に示すヒストグラムにおいて、横軸は、階調を示しており、右へ向かうにつれて階調の値が大きくなっていく。また、縦軸は、度数を示しており、上へ向かうにつれて画像データにおける画素数が増えていく。画像処理装置60では、画像データにおける各画素での階調に基づいて、対応する画素数をカウントし、ヒストグラムを作成すればよい。
【0051】
ヒストグラムでは、原稿GEにおいて画像が印刷された部分と下地SRが露出している部分との分布が分かればよく、画像のサイズを縮小して、画素数を低減させてもよい。このようにして画素数を減らすことで、処理の高速化を図ることができる。
【0052】
図7に示すヒストグラムでは、度数が増加している3つの山(ピーク)が存在している。具体的に、階調が低い第1ピークPe1と、階調が高い第2ピークPe2および第3ピークPe3とが存在している。第1ピークPe1は、第2ピークPe2および第3ピークPe3との階調の差が大きく、原稿GEにおける「黒文字」に対応している。第3ピークPe3は、第2ピークPe2よりも階調が高く、度数も大きくなっており、原稿GEにおける「下地」に対応している。第2ピークPe2は、第3ピークPe3よりも少し階調が低く、最も度数が小さいピークとなっており、原稿GEにおける「裏写り」に対応している。
【0053】
ヒストグラムを参照して、各画素がどのピークに含まれるかを確認し、「下地」、「黒文字」、および「裏写り」に対応する画素を特定すればよい。また、第1ピークPe1に対応する画素の階調に基づいて、「黒文字」の平均濃度を算出してもよく、第3ピークPe3に対応する画素の階調に基づいて、「下地」の平均濃度を算出してもよい。
【0054】
次に、画像処理装置60における裏写り判定と画像処理とに関する処理フローについて、図8を参照して説明する。
【0055】
図8は、画像処理装置における裏写り判定と画像処理とに関する処理フローを示すフロー図である。
【0056】
ステップS01では、画像読取装置41によって、原稿GEの画像を読み取る。なお、画像形成装置100での画像データの取得方法は、画像読取装置41での画像の読み取りだけに限定されず、外部から画像データを受け取ってもよい。
【0057】
ステップS02では、裏写り判定部61によって、下地SRおよび有効部を識別する。ここで、有効部は、原稿GEに印刷された文字や写真であって、表面画像FGに対応する部分に相当する。下地SRおよび有効部については、単に画素における階調に基づいて識別してもよいし、図8に示すヒストグラムを作成して識別してもよい。
【0058】
ステップS03では、裏写り判定部61によって、読取結果を正規化する。なお、これに限定されず、ステップS03を省略してステップS04へ進んでもよい。
【0059】
ステップS04では、裏写り判定部61によって、画像に裏写りが存在するかどうかを判定する。ここで、裏写り判定部61は、画像データにおける赤色、緑色、および青色でのそれぞれの階調に基づいて、それぞれの画素について、裏写りであるかどうかを判定すればよい。
【0060】
また、裏写り判定については、赤色と青色とでの階調の差分だけでなく、彩度および濃度を考慮してもよい。裏写りは、原稿GEの裏面に印刷されており、彩度および濃度が低くなるので、低彩度および低濃度であれば裏写りの可能性が高いと判断できる。
【0061】
彩度については、赤色、緑色、および青色での互いの階調の差分を算出すればよい。例えば、「R=120、G=214、B=119」とのように、いずれかの階調が高い場合には、設定された彩度閾値よりも彩度が高くなる。このようにして算出した彩度が彩度閾値より低い場合、裏写りであると判定される。
【0062】
濃度については、画素での赤色、緑色、および青色の階調の平均値に基づいて算出すればよく、本実施の形態では、階調が白色に近いと低濃度とされ、階調が黒色に近いと高濃度とされている。このようにして算出した濃度が濃度閾値より低い場合、裏写りであると判定される。
【0063】
このように、複数の条件を設定した際、赤色と青色とでの階調の差分、彩度、および濃度について、全ての条件を満たした場合に裏写りであると判定される。
【0064】
ステップS05では、処理部62によって、裏写りを除去する。具体的に、処理部62は、画像データの裏写りに対し、濃度を薄くする(下げる)。裏写りと判定された部分について、濃度を薄くして下地SRに色合いを近づけることで、裏写りを除去することができる。また、異なる処理方法として、裏写りと判定された部分について、周囲の色に合わせる処理を施してもよい。つまり、隣接する画素の階調に近づけるように、値を変動させればよい。このように、周囲の色に合わせて目立たないようにすることで、適切に裏写りを除去することができる。
【0065】
画像全体に対して、裏写り判定と画像処理とが完了すると、処理を終了する。
【0066】
上述したように、本開示の形態に係る画像処理方法では、原稿GEを読み取って得られた画像データに裏写りが存在するかどうかを判定する裏写り判定工程と、裏写り判定工程の判定結果に基づいて、画像データに処理を施す処理工程とを含む画像処理方法であって、裏写り判定工程では、画像データにおける赤色、緑色、および青色でのそれぞれの階調に基づいて、裏写りであると判定する構成とされている。
【0067】
画像処理装置60では、裏写りであると判定した部分に基づいて、原稿GEの裏面に対応する画像データを作成してもよい。上述したように、裏写りは、原稿GEの裏面画像RGに対応するので、ここから原稿GEの裏面に対応する画像データを作成することができる。従って、原稿GEの表面を読み取るのと同時に、原稿GEの裏面を併せて読み取ることができる。
【0068】
なお、今回開示した実施の形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本開示の技術的範囲は、上記した実施の形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0069】
41 画像読取装置
42 読取光源
43 撮像素子
60 画像処理装置
61 裏写り判定部
62 処理部
100 画像形成装置
図1
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図8