(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016554
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】管状体及び装飾形成方法
(51)【国際特許分類】
B32B 1/08 20060101AFI20240131BHJP
A63B 53/10 20150101ALI20240131BHJP
A01K 87/00 20060101ALN20240131BHJP
A63B 102/32 20150101ALN20240131BHJP
【FI】
B32B1/08 Z
A63B53/10 A
A63B53/10 Z
A01K87/00 630N
A63B102:32
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118774
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】592113511
【氏名又は名称】株式会社フォーティーン
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100123674
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 亮
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩之
【テーマコード(参考)】
2B019
2C002
4F100
【Fターム(参考)】
2B019AB22
2B019AB32
2B019AD05
2C002AA05
2C002CS05
2C002MM02
2C002PP05
4F100AR00C
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100DA11
4F100DD01A
4F100EJ65D
4F100GB87
4F100HB00B
4F100JN01C
4F100JN21A
4F100JN21B
4F100JN26A
4F100JN26B
(57)【要約】
【課題】外観の向上が図れると共に、耐環境性及び密着性の良好な装飾を有する管状体を提供する。
【解決手段】本発明の管状体は、第1の外観を備えた下地層21と、第1の外観と異なる外観となる第2の外観を備えた模様15を有する模様層と、模様層の上に被着されるクリア層26とを有する。下地層21の表面に、模様層を構成する模様15の輪郭よりも僅かに大きい範囲で改質領域23を形成し、模様の輪郭15aの外に改質領域23の外縁部23cを露出させ、下地層の表面を除いて、模様の表面、及び、露出した外縁部の表面にクリア層26を設けたことを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の外観を備えた下地層と、前記第1の外観と異なる外観となる第2の外観を備えた模様層と、前記模様層の上に被着されるクリア層とを有する管状体において、
前記下地層の表面に、前記模様層を構成する模様の輪郭よりも僅かに大きい範囲で改質領域を形成し、
前記模様の輪郭外に、前記改質領域の外縁部を露出させ、
前記下地層の表面を除いて、前記模様の表面、及び、前記露出した外縁部の表面に前記クリア層を設けた、
ことを特徴とする管状体。
【請求項2】
前記改質領域は、下地層の表面を粗面化処理、又は、プライマーを被着処理した処理層を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の管状体。
【請求項3】
前記外縁部の露出幅は、0.1~1.0mmの範囲で形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の管状体。
【請求項4】
前記第1の外観及び第2の外観は、艶消し色及び艶あり色の組み合わせで構成されていることを特徴とする請求項3に記載の管状体。
【請求項5】
第1の外観を備えた下地層と、前記第1の外観と異なる外観となる第2の外観を備えた模様層と、前記模様層の上に被着されるクリア層と、を有する装飾を形成する装飾形成方法において、
前記下地層の表面に、前記模様層を構成する模様の範囲よりも僅かに大きい改質領域を形成する改質領域形成工程と、
前記改質領域を前記模様の輪郭外に露出させた状態で前記模様層を形成する模様層形成工程と、
露出した改質領域以外の前記下地層をマスキングするマスキング工程と、
マスキングした表面上に前記クリア層を形成するクリア層形成工程と、
を有する装飾形成方法。
【請求項6】
前記改質領域は、下地層の表面を粗面化処理、又は、プライマーを被着処理して構成されることを特徴とする請求項5に記載の装飾形成方法。
【請求項7】
前記改質領域の露出幅は、0.1~1.0mmの範囲で形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の装飾形成方法。
【請求項8】
前記下地層は、装飾を形成する対象物の形成素材である、ことを特徴とする請求項5に記載の装飾形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ゴルフクラブに用いられるシャフト等の管状体、及び、そのような管状体に適用可能な装飾の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記した管状体には、外観を向上するために様々な装飾が施されている。例えば、ゴルフクラブ用のシャフトでは、全体を艶消しの色彩を呈する外観とし、部分的に、文字、文字列、図形、文字列等のロゴ(以下、模様とも称する)を印刷、転写等によって形成することが行なわれている。この場合、前記模様を艶ありの外観にする、或いは、シャフト全体を艶ありの外観にしてロゴを艶消しの外観にすることで、模様と、模様が形成されていない部分との間のコントラストが向上し、意匠性の向上が図れるようになる。
【0003】
上記した装飾は、例えば、特許文献1に開示されているように、シャフトの表面を凹凸がないように処理し、その上に模様(模様層)を形成し、最終的に保護層を被着した形成方法が用いられている。すなわち、模様層を形成する前のシャフトの表面については、できるだけ凹凸が無いような表面に仕上げることが行なわれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した装飾の形成方法では、模様を凹凸のないシャフト表面に設けるため、模様の密着力に劣るという問題がある。特に、ゴルフクラブシャフトは、スイングして打球する際に撓り易く、打球時の振動が伝わるという特徴があり、模様部分が剥離する恐れがある。この場合、本体表面を予め粗面化しておき、その表面に模様を設けることによって模様の密着性は図れるものの、保護層を被着すると、本体の外観質感と模様の外観質感が略同じとなってしまい、コントラストが向上した外観が得られないという問題がある。なお、保護層を形成しないと、外観の向上は図れるものの、耐環境性及び密着力が低下するという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記した問題に基づいてなされたものであり、外観の向上が図れると共に、耐環境性及び密着性の良好な装飾を有する管状体、及び、そのような装飾の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る管状体は、第1の外観を備えた下地層と、前記第1の外観と異なる外観となる第2の外観を備えた模様層と、前記模様層の上に被着されるクリア層とを有しており、前記下地層の表面に、前記模様層を構成する模様の輪郭よりも僅かに大きい範囲で改質領域を形成し、前記模様の輪郭外に、前記改質領域の外縁部を露出させ、前記下地層の表面を除いて、前記模様の表面、及び、前記露出した外縁部の表面に前記クリア層を設けたことを特徴とする。
【0008】
上記した構成の管状体は、第1の外観を備えた下地層に、模様よりも僅かに大きい改質領域を形成し、その改質領域に第2の外観を備えた模様層を形成している。模様層は、改質領域の表面に設けられることで、密着性の向上が図れると共に、クリア層についても、模様層を構成する模様の輪郭外の露出した改質領域に設けたことでクリア層の密着性も向上する。また、クリア層は、下地層の表面を除いて設けられるので、第1の外観と第2の外観の質感が同一になるようなことはなく、外観の向上が図れる。
【0009】
また、上記した目的を達成するために、本発明に係る装飾形成方法は、第1の外観を備えた下地層と、前記第1の外観と異なる外観となる第2の外観を備えた模様層と、前記模様層の上に被着されるクリア層と、を有し、更に、前記下地層の表面に、前記模様層を構成する模様の範囲よりも僅かに大きい改質領域を形成する改質領域形成工程と、前記改質領域を前記模様の輪郭外に露出させた状態で前記模様層を形成する模様層形成工程と、 露出した改質領域以外の前記下地層をマスキングするマスキング工程と、マスキングした表面上に前記クリア層を形成するクリア層形成工程と、を有することを特徴とする。
【0010】
上記した装飾形成方法によれば、改質領域に模様層及びクリア層が被着されることで、これらの密着性の向上が図れると共に、第1の外観と第2の外観の質感が同一になるようなことはなく、外観の向上が図れる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外観の向上が図れると共に、耐環境性及び密着性の良好な装飾を有する管状体が得られ、更には、そのような装飾を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る管状体の一実施形態を示す図であり、管状体であるゴルフクラブシャフトを装着したゴルフクラブを示す図。
【
図3】(a)~(e)は、シャフトに装飾を形成する方法を順に説明する図(その1)であり、図(d)は、図(c)のA-A断面図。
【
図4】(a)~(e)は、シャフトに装飾を形成する方法を順に説明する図(その2)であり、図(e)は、図(d)のB-B断面図。
【
図5】(a)~(d)は、シャフトに装飾を形成する方法の変形例を順に説明する図。
【
図6】シャフトに装飾を形成する手順例を示したブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明に係る管状体について説明する。
なお、本実施形態では、管状体として、ゴルフクラブに用いられるシャフトを例示して説明する。本発明は、上記したように、管状体の表面に装飾を形成するに際して、装飾部分が剥離し難く耐環境性に優れ、外観を向上させることを目的としている。一般的に、ゴルフクラブ用のシャフトは、打球時に撓り易く、振動が伝わるという特性があるが、以下に説明するような装飾形成方法を用いることで、そのような特徴があるシャフトであっても、装飾部分が剥離し難く耐環境性に優れ、外観が向上した構成が得られる。
【0014】
図1は、ウッド型のゴルフクラブ1を例示しており、管状体であるシャフト3の先端側には、ヘッド5が装着され、シャフト3の基端側には、ラバー等によって形成されたグリップ7が装着されている。
【0015】
前記シャフト3は、公知のように、シートワインディング法によって形成されており、強化繊維に合成樹脂を含浸したプリプレグシートを芯金に対して巻回し、これを熱硬化して脱芯することで形成されるFRP製である。芯金に対して巻回されるプリプレグシートは、シャフト3の全長に亘って巻回されるプリプレグシート(本体シート)、及び、ヘッド装着領域やグリップ装着領域等、部分的に強度を向上するために巻回されるプリプレグシート(補強シート)を備えている。
【0016】
前記本体シート、及び、補強シートは、複数枚存在していても良く、その巻回数、強化繊維の種類や配向、樹脂含浸量等については限定されることはない。また、上記したシート以外に、軸方向の一定の長さ範囲に巻回されるプリプレグシートや全周(360°)に亘って巻回されないプリプレグシートが含まれていても良い。
【0017】
上記したシャフト3には、外観を向上するために装飾10が施されている。図に示す実施形態では、シャフト3の表面のグリップ側に、模様層を構成する模様が、ロゴ15として印刷、転写等によって形成されており、
図2に示すように、ロゴ15は、ローマ字15A、数字15B、図形15Cを組み合わせた構成となっている。
【0018】
以下、上記した装飾10の構成、及び、その形成方法について、
図2~
図4及び
図6を参照しながら説明する。また、以下の説明では、
図2に示すロゴ15の内、「F」のローマ字15A部分を取り上げて説明する。また、「ロゴ15」については、「模様15」と称することもある。
【0019】
最初に、上記したように形成された管状体(基材とも称する)の表面に全体塗装処理を行なう(
図3(a)及び
図6のステップS1)。本実施形態の基材20はFRPであり、その表面に塗装を施すことで下地層21が形成される。前記下地層21は、第1の外観として艶消し塗料(光沢度が5%以下とされる)の黒色を塗布することで構成されており、基材20に対して、例えば、吹付け塗装、刷毛塗り、シゴキ塗装等によって形成することが可能である。また、下地層21は、シャフトの全長に亘って形成されることから、艶消しのブラックシャフトとして構成されている。
なお、前記下地層21については、基材20の表面の一部に形成されたものであっても良い。また、下地層は、上記したような塗装を施すことなく、基材20そのもの(形成素材そのものの外観)で構成されていても良く、素材そのものの質感を外観にすることが可能である。
【0020】
次に、艶消し色の塗装が施された下地層21に対して、第2の外観を構成する模様15よりも僅かに大きい範囲で、表面の改質領域23の形成処理を行なう(
図3(b)及び
図6のステップS2)。本実施形態における改質領域23は、下地層21の表面を粗面化処理することで形成されており、模様を構成しているローマ字15A部分を図示すると、その輪郭よりも僅かに大きい範囲で改質領域23が形成される(
図3(c)~(e))。
ここで、僅かに大きい範囲とは、以下に詳述するように、模様を構成するロゴやクリア層の密着力の向上効果が得られると共に、外観を低下させない程度であれば良い。
【0021】
改質領域23については、例えば、レーザ彫刻機等を用い、予めデータ入力された領域にレーザ光を照射することで形成することが可能である。レーザ彫刻機を用いて形成される改質領域23は、下地層21の表面が、多少、窪んだ状態となり、その底面が凹凸23aを有する粗面化状態となる(
図3(e)の拡大図参照)。
この場合、底面の凹凸23aは、ロゴやクリア層の密着性(接着性)が良く、剥離等し難い程度に形成されていれば良い。具体的に、粗さの最大高さ(Ry)については、下地層21の塗膜の厚みの半分以下にすることで、下地層21の役割を損なうことはない。また、表面粗さ(Ra値)については、0.5μm以上あれば良い。ただし、あまり大き過ぎると、粗さの凹凸が、上層の模様層に写って見える不具合が発生することがあるため、5μm以下にすることが好ましい。
【0022】
上記したように、改質領域23は、そこに形成される模様(ロゴの輪郭)よりも僅かに大きい範囲で形成される。例えば、「F」のローマ字15Aであれば、その周囲の輪郭15aよりも僅かに大きい「F」の文字で形成される。このため、
図3(e)に示すように、ローマ字15Aの周囲の輪郭15aの外方(輪郭外)に、改質領域23の外縁部23bが露出した状態となっている。具体的には、その露出幅(粗面化されている幅;僅かに大きい範囲に該当)Wについては、上記した効果が得られるように、0.1~1.0mmの範囲で形成されていれば良い。
【0023】
前記露出幅Wについては、できるだけ小さいことが好ましいが、あまり小さすぎると、周囲に外縁部23bを残した状態でロゴを取着する作業性が困難となり、逆に大きすぎると、ロゴの縁取り(外枠)が見えすぎてしまい、模様として外観を低下させてしまう可能性がある。現実的には、作業性及び見栄えを考慮すると、0.1~0.5mmの範囲であれば良く、更には、0.2~0.3mmの範囲にすることが好ましい。
【0024】
また、本実施形態では、模様を構成するロゴ(Fのローマ字)に対応して、その輪郭よりも僅かに大きい改質領域23を形成したが、改質領域については、ロゴ15を構成するローマ字15A、数字15B、図形15Cのそれぞれに対応して形成しても良いし、これらの文字を一体化してシール状に構成し、そのシールの輪郭外に改質領域の外縁部が露出するように形成しても良い。なお、改質領域23の外縁部23bは、ロゴの輪郭の周囲に均等に露出させるのが好ましいが、位置によって露出幅が異なっていても良いし、一部において露出しない部分が存在しても良い。
【0025】
次に、改質領域23が形成された下地層21に対して、第2の外観となる模様(模様層)の形成処理を行なう(
図3(c)~(e)及び
図6のステップS3)。本実施形態の模様15は、上記したように複数のロゴ(文字、数字、図形が一体となった組み合わせ)で構成されており、前記第1の外観(下地層21の外観)とは異なる外観の第2の外観、例えば、銀色の光輝色のように、艶ありの色彩で構成されている。すなわち、装飾10については、艶消しのブラックを背景にして、光輝性のある銀色で模様を形成しており、艶消し色と艶あり色を組み合わせることによって、艶あり部分が強調され、外観が向上するようにしている。なお、逆に、下地層21を艶あり色にして、模様を艶消し色で構成しても良い。
【0026】
前記ロゴ(模様)15は、例えば、鏡面ロゴシールを貼り付けたり、パット印刷、熱転写、水転写等の光沢転写、或いは、インクジェット印刷等によって形成することが可能である。
また、改質領域23上に模様を設けるに際しては、上記したように、模様を構成する各ロゴ15A~15Cの輪郭外の改質領域23の外縁部23bを露出幅Wで露出させるようにする。
【0027】
次に、露出した改質領域23以外の前記下地層21に対して、例えば、マスキングシートを貼り付けたり、インクジェット印刷することでマスキング処理する(
図4(a)(b)及び
図6のステップS4)。マスキングによる被膜25は、前記模様15及び改質領域23の外縁部23b以外の部分で被着されることから、前記改質領域23の外縁部23bは、露出幅Wで露出した状態となる(
図4(b))。
【0028】
次に、その表面からクリア層26の形成処理を行なう(
図4(c)及び
図6のステップS5)。クリア層26は、アクリル系、ウレタン系、シリコン系、フッ素系の樹脂を手吹き塗装、吹付け塗装、シゴキ塗装、インクジェット等によって形成することが可能であり、無色の透明層、有色の透明層で構成される。
【0029】
そして、上記したマスキングによる被膜25の剥離処理を行ない、その後、クリーニング処理(
図6のステップS6,S7)をすることで、
図4(d)(e)で示すような装飾10が形成される。
【0030】
上記した構成のシャフト3は、第1の外観である艶消しの黒色による下地層21に、第2の外観である艶ありの模様15を備えた模様層を形成している。模様層は、改質領域23の表面に設けられることで、密着性の向上が図れると共に、クリア層26についても、模様15の輪郭外の露出した改質領域(外縁部23bの表面)に設けたことで密着性も向上する。また、クリア層26は、下地層21の表面を除いて設けられるので、第1の外観と第2の外観の質感が同一になるようなことはなく、両者の区分けが明確となって、外観の向上が図れるようになる。
【0031】
さらに、クリア層26は、
図4(b)(e)に示すように、ロゴの輪郭15aと上記したように形成された改質領域23の内壁23cとの間に入り込むことから、マスキングによる被膜25を剥離した際、輪郭15aの側面を覆う状態にすることができ、これにより、ロゴを、より剥離し難くすることが可能となる。
【0032】
上記したように形成される装飾10は、
図1に示したように、ゴルフクラブのシャフト3のグリップ側の表面(グリップ先より100~150mm程度離れた位置)に形成されている。この位置は、ゴルフクラブをコース上で使用するにあたって、カートに積まれたキャディバックから出し入れする際、キャディバックの開口部との間で擦れ(摩擦)が起きやすい部分でもある。本実施形態では、そのような位置に、上記したような方法で装飾10を形成したことで、模様15がダメージを受け難くなり、剥がれ難くすることが可能となる。また、ゴルフクラブのシャフト3では、
図1に示す部分にキックポイントKPが存在しており、この位置では、シャフトが最も撓り易いという特徴がある。このため、この位置付近に装飾10を設けても同様な効果を得ることが可能となる。
【0033】
上記した装飾10を形成したゴルフクラブのシャフト3について、デザイン性、ロゴの密着性、ロゴの耐変色性、ロゴの耐傷性について、比較例1,2との間で評価を実施したしたところ、以下のような結果が得られた。
ここで、比較例1は、本実施形態と同様、下地層21に艶消しの黒色を塗布し、改質領域23を形成することなく、
図2と同様、表面に銀色の光輝色のロゴシートを取着し、クリア層を形成しない構成である。また、比較例2は、本実施形態と同様、下地層21に艶消しの黒色を塗布し、ロゴと同じ大きさの改質領域23を形成してロゴシートを取着し、その上にロゴと下地層を覆うクリア層を形成した構成である。
【0034】
評価は、各項目について4段階(◎、〇、△、×)で行なった。この場合、デザイン性については、5名の評価者が3つのシャフトのロゴ部分の見栄えについて、それぞれ1点から4点の4段階評価で行ない、18点以上を◎、15点以上を〇、12点以上を△、11点以下を×で評価した。また、ロゴの密着性については、JIS規格で定めるクロスカット法(JIS K 5600―5-6)によるテープ密着テストにより密着性の評価を行ない、剥離のし易さで評価した。また、ロゴの耐変色性については、耐候性試験機を使用した劣化促進試験により、変色や見た目の不具合の評価を行ない、色の変化の度合いで評価した。また、ロゴの耐傷性については、TABER社製のリニア摩耗試験機5750を使用して耐摩耗性の評価を行ない、表面に付いた傷の状態で評価した。
【0035】
【0036】
上記した比較例2,本実施形態の評価結果から明らかなように、表面にクリア層を設けることで、ロゴの密着性、ロゴの耐変色性、ロゴの耐傷性については、良好な結果が得られるものの、クリア層が、ロゴに加え下地層を覆う比較例2の構成では、そのデザイン性が劣るという結果となった。これは、ロゴ部分と下地層部分の質感が略同一になってしまい境界があいまいになったことが原因である。また、本実施形態のように、改質領域の外縁部23b(露出幅W)にクリア層26が被着されることで、クリア層そのものも剥離し難くすることができ、良好なロゴの密着性、ロゴの耐変色性、ロゴの耐傷性を長期に亘って維持することが可能となる。
【0037】
図5は、シャフトに装飾を形成する方法の変形例を順に説明する図である。
この変形例では、下地層21の表面の改質領域23Aを、インクジェット印刷等によってプライマー28を被着処理することで形成している(
図5(a))。このような改質領域23Aは、上記した実施形態と同様、形成される模様15の輪郭15aよりも僅かに大きい範囲で形成しており(
図5(b))、その露出幅Wについては、0.1~1.0mmの範囲で形成されている。なお、1.0mmより大きくすると高貴感が出ることから、本発明では、必ずしも1.0mm以下で限定されることはなく、模様の大きさや対象物にもよるが、2.0mm以下の範囲で形成することが好ましい。
【0038】
このようにプライマー28上に模様15を設けた後は、模様15及び露出する改質領域23の外縁部23B以外の部分の下地層21上に、マスキングによって被膜25を形成する(
図5(c))。そして、その後、その表面にクリア層26の形成処理、被膜25の剥離処理、クリーニング処理を行なうことで、
図5(d)で示すような装飾10が形成される。
【0039】
このような装飾形成方法でも、上記した実施形態と同様な効果が得られる。また、このように形成される模様15は、プライマー28によって多少盛り上がった状態になり、その側面もクリア層で覆われることから、剥離等が生じ難く、立体的な外観を得ることが可能となる。
【0040】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々、変形することが可能である。
上記した管状体は、ゴルフクラブのシャフト以外にも、釣竿、スキー等で用いられるストック、テニスやバトミントンのラケット、自転車のフレーム等であっても良い。また、装飾を形成する対象物については、管状体以外にも、ゴルフクラブのヘッド、各種の釣具やスポーツ用品等であっても良く、第1の外観となる下地層については、基材そのものであっても良い。また、基材は、上記したFRP以外にも、金属、プラスチック等で構成されていても良く、そのような基材に対して、色彩やクリア塗装等を施しておいても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 ゴルフクラブ
3 シャフト(管状体)
10 装飾
15 模様(ロゴ)
20 基材
21 下地層
23,23A 改質領域
26 クリア層