(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165542
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ベルト装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/16 20060101AFI20241121BHJP
G03G 21/12 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G21/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081820
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷家 圭介
【テーマコード(参考)】
2H134
2H200
【Fターム(参考)】
2H134GA06
2H134GB02
2H134HA01
2H134HA17
2H134HD01
2H134JA02
2H134JB02
2H134KD07
2H134KH01
2H134KH16
2H200FA02
2H200JC04
2H200JC09
2H200JC10
2H200JC12
2H200LA25
2H200LB13
2H200LB15
2H200LB17
2H200LB35
2H200MA03
2H200MA08
(57)【要約】
【課題】トナー飛散を抑制しつつベルトをクリーニング可能にするとともに、ベルトの片寄りを抑制する。
【解決手段】ベルト装置は、ベルトに当接して前記ベルトの表面をクリーニングするクリーニング部材を含むクリーニングユニット100を有する。テンションローラ63は、前記ベルトの搬送方向に交差する幅方向の一方側に、テンションローラ63の回転軸を傾動させて前記幅方向への前記ベルトの片寄りを抑制する寄り抑制機構を備える。クリーニング部材は、前記幅方向の一方側が、テンションローラ63の傾動に追従して傾動可能に設けられている。クリーニングユニット100は、前記幅方向の他方側である、前記ベルトの表面から除去したトナーの搬送方向Tの下流側に、トナーの排出口を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体と、
駆動ローラおよび従動ローラと、
前記駆動ローラおよび前記従動ローラに巻き掛けられて前記駆動ローラが回転駆動されることにより前記装置本体内で回転する無端状のベルトと、
前記ベルトに当接して前記ベルトの表面をクリーニングするクリーニング部材を含むクリーニングユニットと、を有するベルト装置であって、
前記クリーニング部材は前記従動ローラとの間に前記ベルトを挟んで配設され、
前記従動ローラは、前記ベルトの搬送方向に交差する幅方向の一方側に、前記従動ローラの回転軸を傾動させて前記幅方向への前記ベルトの片寄りを抑制する寄り抑制機構を備え、
前記クリーニング部材は、前記幅方向の一方側が前記従動ローラの傾動に追従して傾動可能に設けられ、
前記クリーニングユニットは、前記クリーニング部材が前記ベルトの表面から除去したトナーを搬送する搬送スクリューを有し、前記幅方向の他方側は前記搬送スクリューによるトナーの搬送方向の下流側であることを特徴とするベルト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のベルト装置において、
前記クリーニングユニットは、前記搬送スクリューの前記搬送方向の下流側に、搬送されたトナーを排出する排出口を備えることを特徴とするベルト装置。
【請求項3】
請求項2に記載のベルト装置において、
前記クリーニングユニットは前記ベルトの表面から除去したトナーを回収する回収容器を備え、
前記回収容器は、前記装置本体に対して着脱可能に備えられ、前記装置本体に装着された状態で前記排出口が前記回収容器内に配置されることを特徴とするベルト装置。
【請求項4】
請求項1に記載のベルト装置において、
前記従動ローラは前記駆動ローラと平行に配設され、
前記寄り抑制機構は、前記ベルトの片寄りに押されて前記従動ローラの前記回転軸の軸方向に移動する移動部材と、傾斜面を備えて前記移動部材を前記傾斜面に沿って摺動させるガイド部材とを有することを特徴とするベルト装置。
【請求項5】
請求項1に記載のベルト装置において、
前記クリーニング部材は、先端部が前記ベルトに当接するように配置されたクリーニングブレードであることを特徴とするベルト装置。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1つの請求項に記載のベルト装置を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ベルト装置およびそのベルト装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置には、中間転写方式を採用するものがある。中間転写方式の画像形成装置は、中間転写ベルトの周囲に複数のプロセスユニットを配置し、各プロセスユニットで形成されるトナー像を中間転写ベルト上に1次転写する。中間転写ベルト上に1次転写されたトナー像は、中間転写ベルトから記録用紙に2次転写される。
【0003】
中間転写ベルトは、駆動回転する駆動ローラおよび従動回転するローラ等に巻き掛けられて回転する無端状のベルトである。駆動ローラから中間転写ベルトに伝わる搬送力を増加させるため、駆動ローラの巻き付き角を増やすためのアイドルローラが設けられたり、中間転写ベルトにテンションを付与するテンションローラが設けられたりすることもある。この種のベルト装置においては、各ローラの回転軸の軸方向にベルトが片寄ることがあり、片寄りが生じるとベルトの端部が破損してしまうおそれがある。そのため、ベルトの片寄りを規制する規制部材や片寄りを調整する蛇行調整機構が設けられる(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、中間転写ベルトからトナー像が記録用紙上に転写される際、中間転写ベルトの表面にトナーが残留することがある。残留したトナーは、良好な画像形成を妨げるおそれがあるので、前記ベルト装置には、残留したトナーを除去および回収するためのクリーニング部材が設けられることが好ましい。クリーニング部材としては、例えばクリーニングブレードが用いられている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-40705号公報
【特許文献2】特開2013-97263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献2では、ベルトをクリーニングするクリーニングブレードがベルトのステアリング部材に連動し、クリーニングブレードが除去したトナーを回収するように固定された回収容器に、トナーの飛散を抑制する封止部材を設けることが提案されている。
【0007】
しかしながら、クリーニングブレードをステアリング部材に連動させて支持する一方で、回収容器を装置本体に固定して支持しているので、傾斜させるクリーニングブレードと傾斜せずに固定されたままの回収容器との間に隙間ができてしまい、トナーの飛散が起きやすい。封止部材は回収容器に屈曲した状態で設けられ、クリーニングブレードの傾斜状態に合わせて変形させることから、封止するのに必要な力がステアリング動作への負荷となり、ステアリング部材の負荷が大きくなって、動作不良を招くといった問題もある。
【0008】
本開示は、上記のような問題点にかんがみてなされたものであり、その目的とするところは、ステアリング動作への負荷を大きくすることなくトナーの飛散を抑制してクリーニング可能とするとともに、ベルトの片寄りも抑制することが可能なベルト装置およびそのベルト装置を備える画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するための本開示の解決手段は、装置本体と、駆動ローラおよび従動ローラと、前記駆動ローラおよび前記従動ローラに巻き掛けられて前記駆動ローラが回転駆動されることにより前記装置本体内で回転する無端状のベルトと、前記ベルトに当接して前記ベルトの表面をクリーニングするクリーニング部材を含むクリーニングユニットと、を有するベルト装置であって、前記クリーニング部材は前記従動ローラとの間に前記ベルトを挟んで配設され、前記従動ローラは、前記ベルトの搬送方向に交差する幅方向の一方側に、前記従動ローラの回転軸を傾動させて前記幅方向への前記ベルトの片寄りを抑制する寄り抑制機構を備え、前記クリーニング部材は、前記幅方向の一方側が前記従動ローラの傾動に追従して傾動可能に設けられ、前記クリーニングユニットは、前記クリーニング部材が前記ベルトの表面から除去したトナーを搬送する搬送スクリューを有し、前記幅方向の他方側は前記搬送スクリューによるトナーの搬送方向の下流側であることを特徴としている。
【0010】
また、前記構成を有するベルト装置において、前記クリーニングユニットは、前記搬送スクリューの前記搬送方向の下流側に、搬送されたトナーを排出する排出口を備えることが好ましい。
【0011】
また、前記構成を有するベルト装置において、前記クリーニングユニットは前記ベルトの表面から除去したトナーを回収する回収容器を備え、前記回収容器は、前記装置本体に対して着脱可能に備えられ、前記装置本体に装着された状態で前記排出口が前記回収容器内に配置されることが好ましい。
【0012】
また、前記構成を有するベルト装置において、前記従動ローラは前記駆動ローラと平行に配設され、前記寄り抑制機構は、前記ベルトの片寄りに押されて前記従動ローラの前記回転軸の軸方向に移動する移動部材と、傾斜面を備えて前記移動部材を前記傾斜面に沿って摺動させるガイド部材とを有することが好ましい。
【0013】
また、前記構成を有するベルト装置において、前記クリーニング部材は、先端部が前記ベルトに当接するように配置されたクリーニングブレードであることが好ましい。
【0014】
また、前記の各解決手段に係るベルト装置を備える画像形成装置も本開示の技術的思想の範疇である。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、トナーの飛散を抑制しつつベルトをクリーニング可能にするとともに、ベルトの片寄りを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の実施形態に係る画像形成装置を示す断面説明図である。
【
図2】前記画像形成装置に備えられる転写装置を示す斜視図である。
【
図3】前記転写装置の一部を破断して示す断面斜視図である。
【
図4】前記転写装置に備えられる寄り抑制機構を示す断面図である。
【
図5】前記転写装置の一部を前面側から見て示す正面図である。
【
図6】前記転写装置のクリーニングユニットおよびテンションローラの前面側を模式的に示す説明図である。
【
図7】前記転写装置のクリーニングユニットおよびテンションローラの前面側を模式的に示す説明図である。
【
図8】参考例に係る転写装置のクリーニングユニットおよびテンションローラの前面側を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本開示に係るベルト装置および画像形成装置の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
図1は、実施形態に係る画像形成装置1を示す断面説明図である。画像形成装置1は、例えばカラー画像およびモノクロ画像を読み取り印刷を行うものであり、画像を記録用紙に印刷するプリント機能、原稿の画像を読み取るスキャナ機能、および原稿の画像を読み取って原稿の画像を記録用紙に印刷する複写機能等を有している。
【0019】
なお、図面中の矢印Fは前面側(正面側)を示し、矢印Bは後面側(背面側)を示し、矢印Rは右方を示し、矢印Lは左方を示し、矢印Uは上方を示し、矢印Dは下方を示している。これらの矢印は説明の便宜上付すものであって、画像形成装置1の設置形態および使用形態を限定するものではない。
【0020】
画像形成装置1は、原稿読取装置2、原稿搬送装置3、プロセスユニット4、転写装置6、給紙カセット7、および用紙搬送装置8を備えている。プロセスユニット4、転写装置6、給紙カセット7、および用紙搬送装置8は、装置本体9に収容されている。原稿読取装置2および原稿搬送装置3は、装置本体9の上部に搭載されている。装置本体9の前面側には、図示しない操作パネル等の操作部も設けられている。
【0021】
原稿読取装置2は、第1および第2走査部33、34を相互に所定の速度関係を維持しつつ移動させ、第1走査部33の光源33aにより原稿載置ガラス32上の原稿を照明し、第1および第2走査部33、34の各ミラー33b、34bによって原稿からの反射光を結像レンズ36へと導き、結像レンズ36によって原稿の画像をCCD(Charge Coupled Device)37上に結像する。CCD37は、原稿の画像を主走査方向に繰り返し読み取り、原稿の画像を示す画像データを出力する。
【0022】
原稿搬送装置3は、原稿読取装置2に軸支されて、前面側が開閉可能とされている。原稿搬送装置3が開かれると、原稿読取装置2の原稿読取ガラス31および原稿載置ガラス32が開放され、原稿載置ガラス32上に原稿を載置することができる。
【0023】
原稿搬送装置3は、ピックアップローラ41により原稿トレイ42上の原稿を引き出し、原稿搬送経路43を通じて原稿を搬送し、原稿を原稿読取ガラス31と対向ガイド板46との間に通して各排紙ローラ47から排紙トレイ48へと排出する。原稿の搬送に際し、第1走査部33の光源33aにより原稿を、原稿読取ガラス31を介して照明し、原稿からの反射光を第1および第2走査部33、34の各ミラー33b、34bで反射して結像レンズ36へと導き、結像レンズ36により原稿の画像をCCD37上に結像させ、CCD37により原稿の画像を読み取る。
【0024】
CCD37により読み取られた原稿の画像は、CCD37からアナログ信号として出力され、このアナログ信号がデジタル信号にA/D変換される。このデジタル信号(画像データ)は、種々の画像処理を施されてからプロセスユニット4の光走査装置11に入力され、プロセスユニット4で画像データによって示される画像が記録用紙に形成される。
【0025】
プロセスユニット4においては、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の各色を用いたカラー画像、または単色(例えばブラック)を用いたモノクロ画像を記録用紙に印刷するために、現像ユニット12、感光体ドラム13、ドラムクリーニング装置14、および帯電ローラ15がそれぞれ4個ずつ設けられ、ブラック、シアン、マゼンタ、およびイエローに対応付けた4つの画像形成ステーションPa、Pb、Pc、Pdが備えられている。画像形成ステーションPa、Pb、Pc、Pdの下方には、光走査装置11が設けられている。
【0026】
いずれの画像形成ステーションPa、Pb、Pc、Pdにおいても、ドラムクリーニング装置14により感光体ドラム13表面の残留トナーを除去および回収した後、帯電ローラ15により感光体ドラム13の表面を所定の電位に均一に帯電させ、光走査装置11から感光体ドラム13表面への露光を受けて、感光体ドラム13の表面に静電潜像を形成し、現像ユニット12により感光体ドラム13表面の静電潜像を現像して、感光体ドラム13表面にトナー像を形成する。これにより、各感光体ドラム13表面に各色のトナー像が形成される。
【0027】
転写装置6は、本開示のベルト装置に相当する装置であり、無端状のベルトである中間転写ベルト61、ベルト駆動ローラ62、従動ローラとしてのテンションローラ63および中間転写ローラ65を備えている。ベルト駆動ローラ62、テンションローラ63、および中間転写ローラ65は、中間転写ベルト61を張架して回転させる。中間転写ローラ65は、感光体ドラム13のトナー像を、中間転写ベルト61上に転写するための転写バイアスを与える。
【0028】
中間転写ベルト61は、各感光体ドラム13に接触するように設けられており、搬送方向Cに搬送されて、感光体ドラム13に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト61に順次的に重ねて転写し、中間転写ベルト61上にカラーのトナー像(多色トナー像)を形成する。感光体ドラム13から中間転写ベルト61へのトナー像の転写は、中間転写ベルト61の裏側に接触している中間転写ローラ65によって行われる。各感光体ドラム13上で各色に応じて形成されたトナー像は、中間転写ベルト61で積層される。
【0029】
中間転写ベルト61の回転によって、トナー像は2次転写装置23で用紙等の記録用紙上に転写される。中間転写ベルト61と2次転写装置23の転写ローラ23aとの間にはニップ域があり、用紙搬送経路Sを通じて搬送された記録用紙をニップ域に挟み込んで搬送しつつ、中間転写ベルト61上のトナー像を記録用紙上に転写する。定着装置17では、加熱ローラ18と定着ローラ19との間に記録用紙を挟み込んで加熱および加圧し、記録用紙上のトナー像を定着させる。
【0030】
例示の形態に係る転写装置6には、クリーニングユニット100が設けられている。クリーニングユニット100は、中間転写ベルト61上に残留したトナーを除去および回収する。クリーニングユニット100は、中間転写ベルト61に接触して中間転写ベルト61をクリーニングするクリーニング部材としてのクリーニングローラ170およびクリーニングブレード180を有している。
【0031】
用紙搬送装置8においては、記録用紙がピックアップローラ24により給紙カセット7から引き出されて用紙搬送経路Sを通じて搬送され、2次転写装置23や定着装置17を経由し、排紙ローラ25を介して排紙トレイ39に排出される。用紙搬送経路Sには、記録用紙を一旦停止させて、記録用紙の先端を揃えた後、中間転写ベルト61と転写ローラ23a間のニップ域でのトナー像の転写タイミングに合わせて記録用紙の搬送を開始するレジストローラ27、記録用紙の搬送を促す搬送ローラ28等が配置されている。
【0032】
図2は、実施形態に係る画像形成装置1に備えられる転写装置6を示す斜視図であり、
図3は、転写装置6およびクリーニングユニット100の一部を破断して示す断面斜視図である。
【0033】
転写装置6は、
図1に示したとおり、中間転写ベルト61、ベルト駆動ローラ62、テンションローラ63、中間転写ローラ65、およびクリーニングユニット100を含む。これらのうち、ベルト駆動ローラ62、テンションローラ63、および中間転写ローラ65は、
図2に示されるように、前後一組で設けられた本体フレーム66によって前後両側から挟持するように支持されている。
【0034】
クリーニングユニット100は、中間転写ベルト61の上部に配置されている。クリーニングユニット100は、装置本体を構成する前後一組の固定フレーム67を介して、本体フレーム66に支持されている。クリーニングユニット100は、中間転写ベルト61の表面から除去された残留トナーや紙粉等(以下、単にトナーという)を、筐体110内に設けられた搬送スクリュー190によって後面側から前面側に向かう方向を搬送方向として搬送し、前面側に設けられたトナー排出部173の排出口(後述する排出口174)から排出する。
【0035】
図3に示すように、クリーニングユニット100の筐体110の内側には、クリーニングローラ170およびクリーニングブレード180が設けられている。クリーニングローラ170は、回転軸171、およびクリーニング部172を有している。クリーニング部172は、回転軸171の外側に設けられ、シリコンスポンジやウレタンなどの多孔質弾性材で構成されてもよいし、細い繊維を植毛したブラシであってもよい。
【0036】
クリーニングローラ170は、クリーニング部172が中間転写ベルト61に接するように配置されて、筐体110に回転可能に支持されている。クリーニングローラ170の回転軸171は、中間転写ベルト61の搬送方向Cに対して直交するように配置されている。クリーニングローラ170が回転することにより、中間転写ベルト61をクリーニング部172によってクリーニングし、中間転写ベルト61上に残留したトナーを除去および回収する。
【0037】
クリーニングブレード180は、クリーニングローラ170に対して中間転写ベルト61の搬送方向Cの下流側に配置され、筐体110に支持されている。クリーニングブレード180は、例えばゴム等の素材で形成されたブレード181が、板金で形成された支持部182に取り付けられてなる。ブレード181の先端部は、中間転写ベルト61の表面に当接するように配置されて、中間転写ベルト61をクリーニングし、中間転写ベルト61上に残留したトナーを除去および回収する。
【0038】
クリーニングローラ170およびクリーニングブレード180は、それぞれ、テンションローラ63との間に中間転写ベルト61を挟んで配設されている。中間転写ベルト61の搬送方向Cに交差する中間転写ベルト61の方向を幅方向Wとすると、クリーニングローラ170およびクリーニングブレード180(ブレード181)はテンションローラ63と平行に配設されるとともに、幅方向Wに平行に配設されている。テンションローラ63は、中間転写ベルト61を介してクリーニングローラ170およびブレード181に当接し、後述する付勢力によってクリーニングローラ170およびブレード181の方向に圧接されている。
【0039】
なお、クリーニングユニット100のクリーニング部材としては、中間転写ベルト61に当接するクリーニングブレード180を備えていればよく、クリーニングローラ170は必ずしも設けられなくともよい。また、クリーニングブレード180は、ブレード181の先端部とテンションローラ63との間に中間転写ベルト61を挟んで配置されていれば、必ずしも図示する位置に設けられなくともよい。
【0040】
幅方向Wの一方である後面側には、中間転写ベルト61の片寄りを抑制する寄り抑制機構70が備えられるのに対して、幅方向Wの他方である前面側に、クリーニングユニット100からのトナーの排出口174が設けられている。
図4は、寄り抑制機構70の構成を示す断面図である。図示するように、テンションローラ63の回転軸631の後面側の端部には寄り抑制機構70が設けられている。寄り抑制機構70は、回転軸631の前面側には設けられていない。
【0041】
テンションローラ63は、回転軸631と、図示しない中間転写ベルト61の内面に当接する胴部634とを有する。テンションローラ63は、基準位置においてベルト駆動ローラ62に対して平行に設けられている。回転軸631は、大径部632と、大径部632よりも小さい外径を有する小径部633とを有している。大径部632には規制部材64が外装されている。
【0042】
規制部材64は、回転軸631の大径部632に対して軸方向Xにスライド移動可能、かつ、回転軸631まわりに回転自在に設けられている。規制部材64は、例えば鍔状に設けられた押圧部641と、円筒部642とを有している。規制部材64では、中間転写ベルト61が軸方向Xの片側に移動して片寄りを生じたとき、中間転写ベルト61の端縁に押圧部641が押されて、その押圧力によって円筒部642が大径部632を摺動し、軸方向Xに移動する。テンションローラ63の回転軸631の前面側の端部にも、同様の規制部材64が設けられている。回転軸631の端部には軸受部635が設けられている。
【0043】
寄り抑制機構70は、回転軸631の後面側の端部に、移動部材71と、ガイド部材72と、付勢部材73とを備えて構成されている。移動部材71は、規制部材64に隣接して設けられ、回転軸631の小径部633に外装されて、小径部633に沿って軸方向Xに移動自在とされている。図示するように、移動部材71は、円筒状に形成されて小径部633に外嵌され、外周面の周方向の一部には、径方向の外側に突設された摺動突部711を有している。移動部材71は、中間転写ベルト61の片寄りに押されて移動する規制部材64を介して、テンションローラ63の回転軸631の軸方向Xに押され、軸方向Xに移動可能とされている。
【0044】
ガイド部材72は、基準面721と傾斜面722とを備えている。基準面721は、移動部材71の上方に対向して設けられた平坦面とされている。傾斜面722は、基準面721から後面側に向かって下り勾配で傾斜して形成された傾斜面とされている。移動部材71の摺動突部711は、その上端面がガイド部材72における基準面721に当接するように設けられている。
【0045】
移動部材71が軸方向Xに沿って後面側に移動するとき、摺動突部711がガイド部材72の基準面721に当接した状態から移動して、傾斜面722に沿って摺動するものとなる。摺動突部711が後面側に移動するにしたがって、移動部材71が外嵌されているテンションローラ63の回転軸631は、後面側の端部が下方に下がり、傾斜する。
【0046】
テンションローラ63の軸受部635は、転写装置6の本体フレーム66に備えられた支持部材661に支持されている。支持部材661には、軸受部635を移動可能に内嵌する長孔662が設けられている。付勢部材73は、一端部が軸受部635に係止され、他端部が支持部材661の係止部663に支持されている。軸受部635は、付勢部材73によって上方に付勢されており、その付勢力によって摺動突部711の上端面がガイド部材72の基準面721に位置するように設けられている(基準位置)。
【0047】
規制部材64からの押圧によって、移動部材71が軸方向Xにスライドし、摺動突部711がガイド部材72の基準面721を摺動した後、傾斜面722を摺動する。移動部材71は、傾斜面722を摺動するのに伴い、傾斜面722から下方成分を含む反力を受ける。軸受部635を含むテンションローラ63の端部は、移動部材71を介して下方に押し下げられ、テンションローラ63の後面側が下方に傾く。
【0048】
これにより、付勢部材73の作用で中間転写ベルト61に元の位置に戻る力が作用して、中間転写ベルト61の片寄りが補正される。規制部材64は中間転写ベルト61の押圧から解放される。軸受部635の基準位置に復帰しようとする力が、移動部材71を介した軸受部635を押し下げようとする力を上回ることから、軸受部635が基準位置に復帰するとともに移動部材71および規制部材64がそれぞれの元の位置に戻る(戻り動作)。
【0049】
前記のとおり、寄り抑制機構70は後面側にだけ設けられている。ここで、例えば、ベルト駆動ローラ62の中間転写ベルト61との接触領域において、ベルト駆動ローラ62の軸方向Xの後面側の外径が、前面側の外径よりも大きく設けられている。これにより、中間転写ベルト61が回転する際には、中間転写ベルト61に対して、強制的に後面側に移動させる力が作用する。
【0050】
この場合、寄り抑制機構70は、中間転写ベルト61の後面側への強制的な移動に抗して、中間転写ベルト61を反対側の前面側に戻す作用をなす。中間転写ベルト61が回転して後面側に移動すると、寄り抑制機構70には、後面側に移動する力が加わる。寄り抑制機構70は、中間転写ベルト61の後面側に移動する力とつり合う位置で、中間転写ベルト61を前面側へ移動させるように、作用する力を反転させる。これにより、中間転写ベルト61が前面側に移動すると、強制的に中間転写ベルト61を後面側へ移動させる力が作用し、前面側へ移動する力とつり合う位置で作用する力が反転して後面側に移動するようになる。こうして、移動動作と戻り動作とが繰り返されて、中間転写ベルト61の片寄りが補正される。
【0051】
なお、後面側に設けた寄り抑制機構70のみで中間転写ベルト61の片寄りを補正する機構は、前記した構成とされるに限らず、例えばテンションローラ63の回転軸631を傾けて、あらかじめ後面側に中間転写ベルト61が片寄るようにした従来から使用されている構成(例えば特開2010-19899号公報参照)等により片寄りが補正されてもよい。
【0052】
図5は、転写装置6におけるクリーニングユニット100が設けられる左方の一部を前面側から見て示す正面図である。テンションローラ63は、回転軸631の軸受部635に付勢部材664が接続されて、図中左方に付勢されている。テンションローラ63は、中間転写ベルト61を介してクリーニングローラ170に当接し、付勢力によってクリーニングローラ170の方向に圧接されている。クリーニングブレード180も同様に圧接されている。
【0053】
テンションローラ63には中間転写ベルト61を介してクリーニングブレード180が当接しており、クリーニングブレード180は中間転写ベルト61の表面のトナーを堰き止めて掻き取る必要がある。これに対して、本実施形態では、テンションローラ63の軸受部635は、クリーニングユニット100の筐体110に設けられた凹状の保持部111に保持されており、軸受部635を含むテンションローラ63の端部の上下動(回転軸631の傾動)に追従して筐体110が動くように支持されている。このため、クリーニングユニット100は、テンションローラ63の回転軸631の傾動に応じて、軸方向Xの傾きを連動させられるように構成されている。クリーニングブレード180およびクリーニングローラ170は、テンションローラ63の回転軸631の傾動に追従して傾動可能に設けられ、中間転写ベルト61との当接状態が保持されるように設けられている。
【0054】
図6および
図7は、クリーニングユニット100およびテンションローラ63の前面側を模式的に示す説明図である。転写装置6において、後面側には寄り抑制機構70が設けられているのに対して、前面側には、中間転写ベルト61の表面から除去したトナー(残留トナー)を排出するトナー排出部173と、トナーを回収する回収容器175とが設けられている。
【0055】
前記のように、クリーニングブレード180(およびクリーニングローラ170)とテンションローラ63とは、中間転写ベルト61を介して当接されている。そして、クリーニングブレード180を含むクリーニングユニット100の前面側には、図示するように、トナー排出部173が延設されている。トナー排出部173の先端部には下方に開口された排出口174が設けられている。
【0056】
筐体110内では、クリーニングブレード180によって中間転写ベルト61の表面から除去された残留トナーや紙粉等が、搬送スクリュー190により後面側から前面側への搬送方向Tに搬送されてトナー排出部173を通じて前面側に導かれる。回収容器175は、搬送方向Tの下流側である転写装置6の前面側に着脱可能に設けられており、回収容器175が装置本体の固定フレーム67に装着されることで、トナー排出部173は回収容器175に挿入され、排出口174が回収容器175内に配置される。残留トナーや紙粉等は、トナー排出部173の前面側に設けられた排出口174から回収容器175内に排出される。
【0057】
回収容器175には、トナー排出部173が挿入される挿入孔176が開口されている。前記のとおり、クリーニングユニット100はテンションローラ63の回転軸631の傾動に追従して傾動可能に設けられているが、後面側の端部が上下動して傾斜するものであり、前面側の端部は動かない。そのため、
図6に示すように、テンションローラ63が上方に傾くのに追従してクリーニングユニット100(および図示しないクリーニングブレード180)が上方に傾いても、クリーニングユニット100の前面側の傾動は小さいものであり、トナー排出部173は回収容器175内に安定的に配置されている。また、
図7に示すように、テンションローラ63が下方に傾くのに追従してクリーニングユニット100(および図示しないクリーニングブレード180)が下方に傾く場合にも同様に、クリーニングローラ170の前面側の傾動は小さく、トナー排出部173は回収容器175内に安定的に配置されたままとなる。
【0058】
ここで、
図8に示す参考例としての転写装置90のように、テンションローラ901を、後面側を固定し、前面側に設けた図示しない軸受部において傾動させる構成とすると、テンションローラ901の前面側が例えば下方に傾動するとき、後面側は上方に傾動する。クリーニングユニット902は、中間転写ベルト903を介してテンションローラ901の傾動に追従する。クリーニングユニット902では、固定された後面側に対して、前面側の傾動が大きくなる。そのため、トナー排出部904と回収容器905の挿入孔906との隙間が
図6および
図7に比べて大きくなり、回収した残留トナーや紙粉等が隙間から飛散するおそれがある。これに対して、
図6および
図7に示す本実施形態に係る転写装置6では、トナー排出部173と、回収容器175の挿入孔176との隙間を小さくすることができるので、そのような飛散のおそれを格段に低減することができる。
【0059】
したがって、本開示に係る転写装置6および画像形成装置1では、クリーニングユニット100によって回収されるトナー等の飛散を抑制しつつ、中間転写ベルト61をクリーニングすることが可能であるとともに中間転写ベルト61の片寄りを抑制することが可能であり、従来の問題点が解消されて、良好な画像形成が可能となる。また、回収されるトナー等の飛散を抑制することに伴うテンションローラ63のステアリング動作への負荷が大きくなるような問題は起こらず、動作不良の発生も抑制することができる。
【0060】
また、このように構成される転写装置6では、クリーニングブレードに対向させて中間転写ベルトを介して当接するように設けられる対向ローラと、中間転写ベルトの駆動ローラの反対側に対向して設けられる従動ローラと、中間転写ベルトにテンションを付与するテンションローラとの複数のローラが個別に設けられることが多いが、本開示に係る転写装置6では、これらの複数のローラの機能を1つのテンションローラ63に集約させることができ、装置の小型化およびコストの低減を図ることが可能となる。
【0061】
なお、画像形成装置1としては、外部から伝達される画像データや原稿読取装置2などによる原稿からの画像データに応じて、記録媒体に多色または単色の画像を形成することができる複合機を例に挙げて示したが、本開示の画像形成装置はこれに限定されない。
【0062】
本開示は前記の各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術的思想に含まれる技術的事項のすべてが本開示の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能であり、そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
1 画像形成装置
6 転写装置(ベルト装置)
61 中間転写ベルト(ベルト)
62 ベルト駆動ローラ(駆動ローラ)
63 テンションローラ(従動ローラ)
631 回転軸
632 大径部
633 小径部
634 胴部
635 軸受部
64 規制部材
641 押圧部
642 円筒部
65 中間転写ローラ
66 本体フレーム
661 支持部材
662 長孔
663 係止部
664 付勢部材
67 固定フレーム
70 寄り抑制機構
71 移動部材
711 摺動突部
72 ガイド部材
721 基準面
722 傾斜面
73 付勢部材
9 装置本体
100 クリーニングユニット
110 筐体
111 保持部
170 クリーニングローラ
171 回転軸
172 クリーニング部
173 トナー排出部
174 排出口
175 回収容器
176 挿入孔
180 クリーニングブレード
190 搬送スクリュー