(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165543
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】操作装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/042 20060101AFI20241121BHJP
G06F 3/0354 20130101ALI20241121BHJP
G06F 3/0362 20130101ALI20241121BHJP
【FI】
G06F3/042 481
G06F3/0354 451
G06F3/0362 461
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081821
(22)【出願日】2023-05-17
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公開日: 令和5年5月10日 公開場所: 静岡市葵区追手町44-1 静岡県産業経済会館 公益財団法人静岡県産業振興財団
(71)【出願人】
【識別番号】501294560
【氏名又は名称】株式会社メタテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 実
【テーマコード(参考)】
5B087
【Fターム(参考)】
5B087BC06
5B087BC12
5B087BC13
5B087BC26
5B087BC32
(57)【要約】
【課題】設計の自由度が高く、コストを抑えた操作装置を提供する。
【解決手段】複数のスイッチが図示された操作ボード(CB)上において検出対象の座標データを検出する検出部(10)と、検出部(10)の動作を制御する制御部(20)と、を備えた操作装置(1)であって、制御部(20)は、検出部(10)によって検出された座標データに基づいて、使用者によるスイッチの操作内容を判定し、判定された操作内容に応じて操作対象となる機器に指示を伝達する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスイッチが図示された操作ボード上において検出対象の座標データを検出する検出部と、
前記検出部の動作を制御する制御部と、
を備えた操作装置であって、
前記制御部は、前記検出部によって検出された前記座標データに基づいて、使用者による前記スイッチの操作内容を判定し、判定された前記操作内容に応じて操作対象となる機器に指示を伝達する、ことを特徴とする操作装置。
【請求項2】
請求項1に記載の操作装置であって、
前記検出部は、前記操作ボードと平行な面に赤外線を照射することによって、前記操作ボード上における前記使用者の指の位置及び動きに関する座標データを検出する、ことを特徴とする操作装置。
【請求項3】
請求項2に記載の操作装置であって、
前記検出部は、前記操作ボードの表面から高さ1mm以内の範囲に前記赤外線を照射する、ことを特徴とする操作装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の操作装置であって、
前記制御部は、前記操作ボード上において前記使用者の指の位置に関する座標データを検出した後、前記複数のスイッチのうちの或るスイッチと重複する位置で前記使用者の指の動きが静止した状態で所定時間が経過した場合に、前記或るスイッチが操作されたことを判定する、ことを特徴とする操作装置。
【請求項5】
請求項1~3の何れか1項に記載の操作装置であって、
前記操作ボードには、当該操作ボード上においてスライド移動及び回転移動の少なくとも何れを行うつまみが設けられており、
前記検出部は、前記操作ボードと平行な面に赤外線を照射することによって、前記操作ボード上における前記つまみの位置及び動きに関する座標データを検出する、ことを特徴とする操作装置。
【請求項6】
請求項5に記載の操作装置であって、
前記つまみは、前記操作ボードと交差する回転軸周りを回転するダイヤルつまみであり、
前記ダイヤルつまみの外周に沿って所定の間隔を空けて配置された複数の検出突起が設けられており、
前記検出部は、複数の前記検出突起のうち少なくとも一つの前記検出突起の位置及び動きに関する座標データを検出し、
前記制御部は、前記検出突起の前記ダイヤルつまみの外周に沿った回転量及び回転方向に基づいて、前記ダイヤルつまみが操作されたことを判定する、ことを特徴とする操作装置。
【請求項7】
請求項5に記載の操作装置であって、
前記つまみは、前記操作ボード上で所定の方向に往復移動するスライドつまみであり、
前記検出部は、前記スライドつまみの位置及び動きに関する座標データを検出し、
前記制御部は、前記スライドつまみの移動方向及び移動量に基づいて、前記スライドつまみが操作されたことを判定する、ことを特徴とする操作装置。
【請求項8】
請求項1~3の何れか1項に記載の操作装置であって、
前記制御部は、或るスイッチが操作されたと判定した場合に、前記操作ボードに受付動作を行わせる、ことを特徴とする操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチボタンの押下や、回転式のダイヤルやスライド式のつまみを動かすことで、空調機器等を操作する操作装置(操作パネル)が知られている。例えば、自動車の運転席には、空調のON/OFFや風量・温度等を操作するための複数のスイッチ(ボタンやつまみ)がまとめて配置された操作パネルが設けられている。このような操作装置に関して、特許文献1には、表示パネルとカバー部と筐体と操作部とを備え、穴あけ加工等の難しい加工をすることなく表示パネルの端部まで有効に表示領域として利用できる操作装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の操作装置では、操作対象となる機器に応じてそれぞれ機械的に動作するスイッチ(ボタンやつまみ)を設ける必要があり、さらに、当該スイッチごとに入力された操作内容を操作対象となる機器へ伝達するための配線等を設計して配置する必要があった。そのため、操作装置のデザインの自由度に制限が生じやすく、コストも高くなるおそれがあった。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、設計の自由度が高く、コストを抑えた操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための主たる発明は、複数のスイッチが図示された操作ボード上において検出対象の座標データを検出する検出部と、前記検出部の動作を制御する制御部と、を備えた操作装置であって、前記制御部は、前記検出部によって検出された前記座標データに基づいて、使用者による前記スイッチの操作内容を判定し、判定された前記操作内容に応じて操作対象となる機器に指示を伝達する、ことを特徴とする操作装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、設計の自由度が高く、コストを抑えた操作装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】操作ボードCBの表側及び裏側を表す平面図である。
【
図4】制御部20の機能上の構成を示すブロック図である。
【
図5】自動車に設けられた従来型のエアコン操作装置の一例を表す図である。
【
図6】操作装置1を用いて操作対象の機器を操作する動作のフロー図である。
【
図7】検出部10が照射する赤外線の高さについて説明する図である。
【
図8】第2実施形態で使用される操作ボードCBの平面図である。
【
図9】ダイヤルつまみDPの構成について説明する図である。
【
図10】第2実施形態において操作装置1を用いて操作対象の機器を操作する動作のフロー図である。
【
図11】S205の処理で行われる移動量の検出方法の一例について説明する図である。
【
図12】スライドつまみSPの構成について説明する図である。
【
図13】変形例においてS205の処理で行われる移動量の検出方法について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
複数のスイッチが図示された操作ボード上において検出対象の座標データを検出する検出部と、前記検出部の動作を制御する制御部と、を備えた操作装置であって、前記制御部は、前記検出部によって検出された前記座標データに基づいて、使用者による前記スイッチの操作内容を判定し、判定された前記操作内容に応じて操作対象となる機器に指示を伝達する、ことを特徴とする操作装置。
【0011】
このような操作装置によれば、機械的に動作するスイッチや、当該スイッチに接続される配線を設けることなく、機器の操作を行うことが可能となる。したがって、操作装置の設計や製造にかかる手間やコストを大きく低減することができる。また、複数のアイコンが表示された操作ボードにおいて、アイコンのデザインや配置に関して制限が生じ難く、設計の自由度を高めることができる。
【0012】
かかる操作装置であって、前記検出部は、前記操作ボードと平行な面に赤外線を照射することによって、前記操作ボード上における前記使用者の指の位置及び動きに関する座標データを検出する、ことが望ましい。
【0013】
このような操作装置によれば、操作ボード上における使用者の指の位置や動きを座標データとして取得し、当該座標データに基づいて、操作内容を判定することができる。
【0014】
かかる操作装置であって、前記検出部は、前記操作ボードの表面から高さ1mm以内の範囲に前記赤外線を照射する、ことが望ましい。
【0015】
このような操作装置によれば、操作ボード上で使用者の指が実際にアイコンに触れている(押している)位置と、使用者の指が検出される位置とがずれにくくなり、操作内容を正確に判定しやすくなる。また、使用者の指先以外の異物が誤検出されてしまうことを抑制することができる。
【0016】
かかる操作装置であって、前記制御部は、前記操作ボード上において前記使用者の指の位置に関する座標データを検出した後、前記複数のスイッチのうちの或るスイッチと重複する位置で前記使用者の指の動きが静止した状態で所定時間が経過した場合に、前記或るスイッチが操作されたことを判定する、ことが望ましい。
【0017】
このような操作装置によれば、或るスイッチと重複する位置で使用者の指の動きが所定時間以上静止していたことを条件として、指の静止位置と重複する位置のスイッチが操作されたものと判定される。これにより、使用者が誤ったスイッチに一瞬だけ触れてしまう等の誤操作が抑制され、正確な機器操作を行いやすくなる。
【0018】
かかる操作装置であって、前記操作ボードには、当該操作ボード上においてスライド移動及び回転移動の少なくとも何れを行うつまみが設けられており、前記検出部は、前記操作ボードと平行な面に赤外線を照射することによって、前記操作ボード上における前記つまみの位置及び動きに関する座標データを検出する、ことが望ましい。
【0019】
このような操作装置によれば、操作ボードに機械的に動作するスイッチ(つまみ)が設けられている場合にも、各々のスイッチに配線等を設けることなく、機器の操作を行うことができる。したがって、機械的に動作するスイッチを用いる場合であっても、従来の操作装置と比較して、設計や製造にかかる手間やコストを大きく低減することができる。
【0020】
かかる操作装置であって、前記つまみは、前記操作ボードと交差する回転軸周りを回転するダイヤルつまみであり、前記ダイヤルつまみの外周に沿って所定の間隔を空けて配置された複数の検出突起が設けられており、前記検出部は、複数の前記検出突起のうち少なくとも一つの前記検出突起の位置及び動きに関する座標データを検出し、前記制御部は、前記検出突起の前記ダイヤルつまみの外周に沿った回転量及び回転方向に基づいて、前記ダイヤルつまみが操作されたことを判定する、ことが望ましい。
【0021】
このような操作装置によれば、ダイヤルつまみに設けられた検出突起の位置及び動きを検出することで、使用者によるダイヤルつまみの操作内容(ダイヤルつまみの回転量や回転方向)を正確に判定することができる。これにより、ダイヤルつまみに配線等を設けることなく、当該ダイヤルつまみの回転操作に応じて機器を操作することが可能となる。
【0022】
かかる操作装置であって、前記つまみは、前記操作ボード上で所定の方向に往復移動するスライドつまみであり、前記検出部は、前記スライドつまみの位置及び動きに関する座標データを検出し、前記制御部は、前記スライドつまみの移動方向及び移動量に基づいて、前記スライドつまみが操作されたことを判定する、ことが望ましい。
【0023】
このような操作装置によれば、スライドつまみ(支柱)の位置及び動きを検出することで、使用者によるスライドつまみの操作内容(スライドつまみの移動量や移動方向)を正確に判定することができる。これにより、スライドつまみに配線等を設けることなく、当該スライドつまみのスライド操作に応じて機器を操作することが可能となる。
【0024】
かかる操作装置であって、前記制御部は、或るスイッチが操作されたと判定した場合に、所定の受付動作を行わせる、ことが望ましい。
【0025】
このような操作装置によれば、機械的に動作しないスイッチ(アイコン等)を用いて機器の操作を行う場合であっても、所定の受付動作(例えば、発光、振動、音声発信等)が行われることにより、操作している感覚を使用者に認識させやすくすることができる。
【0026】
===第1実施形態===
<操作装置1の基本構成>
本実施形態に係る操作装置として、自動車の空調等を操作するために、自動車のダッシュボードに搭載される空調操作装置1(以下、単に「操作装置1」とも呼ぶ)を例に挙げて説明する。但し、本実施形態に係る操作装置は、空調操作用に限られるものではなく、カーナビゲーションシステムの操作や、音響設備の操作等を行うものであっても良い。また、操作装置は、自動車以外の他の乗り物や、ビルや住居等の施設に設置されるのであっても良い。
【0027】
図1は、操作装置1の全体構成を表す図である。操作装置1は、検出部10と制御部20とを有し、使用者(ユーザー)が操作ボードCBに対して行った操作を検出して、操作対象の機器(例えば、空調機器)に操作内容の指示を伝達することで、機器の操作を行う。
【0028】
図2は、操作ボードCBの表側及び裏側を表す平面図である。操作ボードCBは、操作装置1を用いて機器の操作を行う際に使用される樹脂等からなる板部材であり、互いに直交するX方向とY方向とを有している。また、操作ボードCBは、X方向及びY方向とそれぞれ直交するZ方向(
図2では不図示)に所定の厚さを有している。なお、
図2では、X方向に長い矩形状の板部材が示されているが、操作ボードCBの形状や大きさは適宜変更することが可能である。
【0029】
操作ボードCBの厚さ方向(Z方向)の一方側(表側)の面には、操作対象となる機器を操作するためのスイッチとして機能する複数のアイコンが表示されている。
図2では、空調操作を行うための図柄や記号を表す10種類のアイコンA~H2が並んで表示されており、各々のアイコンがスイッチ(ボタン)として機能する。これらのスイッチ(アイコン)A~H2は、操作ボードCBに印刷されることによって形成されていても良いし、スイッチ(アイコン)A~H2が表示されたシートを操作ボードCBの表面に貼付することによって形成されていても良い。
【0030】
本実施形態の操作装置1を操作する際には、操作ボードCBの厚さ方向(Z方向)にスイッチ(アイコン)を押し下げる動作(つまり、ボタンを押し込む動作)等は行われない。また、後述するように、本実施形態では、操作ボードCBに表示されるスイッチ(アイコン)の形状、数量、配置等を、メーカーやユーザーの好み等に応じて自在に変更することが可能である。
【0031】
一方、操作ボードCBの厚さ方向(Z方向)の他方側(裏側)の面には、スイッチ(アイコン)が設けられていない。さらに、操作ボードCBを介して入力された操作指示を操作対象の機器(空調等)に伝達するための配線等も設けられていない。但し、後述する
図6等で説明する確認動作を実現するために、操作ボードCBの裏側面に、光源や振動を生じさせるモータが設けられる場合がある。
【0032】
図3は、検出部10について説明する図である。
図3Aは、検出部10の構成について説明する図であり、
図3Bは、検出部10を用いて検出対象を検出する方法について説明する図である。検出部10は、所定の領域に赤外線を照射して、当該領域内における検出対象の座標データを検出する。本実施形態では、
図3Bに示されるように操作ボードCBのZ方向における表側、且つ、Y方向における端部側に設置され、操作ボードCBと平行な面に赤外線を照射することによって、操作ボードCB上において検出対象(例えば使用者の指)の座標データを検出する。検出部10は、赤外線照射部11と、赤外線受光部12と、接続部13とを有している。
【0033】
赤外線照射部11は、赤外線照射方向(
図3ではY方向)と直交する方向(
図3ではX方向)に並ぶ複数のエミッタ(不図示)からそれぞれ赤外線を照射することよって、平面的に赤外線を照射する部位である。
図3Bでは、操作ボードCBと平行な斜線部で示される領域(領域1及び領域2)に赤外線が照射されており、少なくともこの領域において検出対象の座標データが検出可能となっている。赤外線受光部12は、赤外線照射部11から照射された後、検出対象によって反射された赤外線を受光する部位である。赤外線受光部12は、赤外線照射方向(Y方向)と直交する方向(X方向)に並ぶ複数のレシーバ(不図示)が設けられており、検出対象によって拡散反射した赤外線を2以上のレシーバによって検出することで、当該検出対象の重心座標データを算出することができる。接続部13は、検出部10を制御部20に接続するための部位である。
【0034】
このような検出部10により、
図3Bの斜線部で示される検出領域において、検出対象(ユーザーの指)のX座標及びY座標を検出することができる。また、検出対象の座標データを継時的に検出することによって、XY平面上における検出対象の動きも検出することができる。なお、検出領域の位置や形状、数量等は、制御部20によって自在に設定することが可能である。例えば、
図3Bの例では、操作ボードCB上に領域1及び領域2が設定されており、領域1と領域2とでそれぞれ異なる検出対象を同時に検出することが可能である。検出部10としては、例えば、Neonode社製タッチセンサ―モジュール:NNAMC346XPC01を使用することができる。
【0035】
図4は、制御部20の機能上の構成を示すブロック図である。制御部20は、検出部10の動作を制御すると共に、検出部10で検出された座標データに基づいて使用者によって行われた操作の内容を判定し、操作対象となる機器(空調機器)に操作内容の指示を伝達する機能を有する。本実施形態の制御部20は、インターフェース21と、CPU22と、記憶部23と、操作指示伝達部24とを有している。
【0036】
インターフェース21は、制御部20を検出部10と接続して両者間でデータの送受信を行う部分であり、例えば、公知のUSBやI2Cインターフェースによって検出部10と接続可能である。CPU22は、操作装置1全体の制御を行う演算装置である。CPU22は座標データ受付部221と、領域特定部222と、操作判定部223と、確認動作部224と、を有している、各部における具体的な処理動作については後で説明する。記憶部23は、プログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものであり、RAM、EEPROM等の記憶素子によって構成される。操作指示伝達部24は、使用者(ユーザー)による操作指示を空調機器等の機器へ伝達する部位であり、任意のインターフェースを介して、操作対象となる各機器に接続される。
【0037】
<従来の操作装置について>
次に、比較例として、自動車のダッシュボード(インストルメントパネル)に設けられている従来型の操作装置について説明する。
図5は、自動車に設けられた従来型のエアコン操作装置の一例を表す図である。
図5に示されるように、従来のエアコン操作装置は、機械式の押しボタンやダイヤル等、操作対象である機器の機能にそれぞれ紐づけられた複数のスイッチが所定の領域に密集して形成されているものが一般的であった。このような操作装置では、使用者(ユーザ)が、ボタンを押し込んだり、ダイヤルを回したりすることによって、空調のON/OFFや温度変更等の操作を行っていた。
【0038】
しかしながら、
図5に示されるような従来型の操作装置は、搭載される自動車のデザインに応じて個別に設計・製造されるものであり、コスト、デザイン性、設置性等の面で問題が生じる場合があった。例えば、通常の場合、異なる種類の自動車毎に独自のデザインのボタンやダイヤルを設計して取り付けるため、操作装置の設計や製造にかかるコストが大きなものとなっていた。そして、機械的に動作する複数のスイッチを組み立て、各々のスイッチを操作対象となる機器と接続するための配線を設ける必要が生じるため、設置作業が複雑であり、一度設置された後はスイッチのデザインや配置を変更することは困難であった。さらに、配線やスペースの関係上、スイッチの大きさや配置に物理的な制限が生じるため、操作装置(操作パネル)のデザインの自由度に制限が生じていた。また、そのようにしてデザイン・製造されたボタンやダイヤルは、他の種類の自動車にそのまま転用することが難しく、自動車の種類ごとに、操作装置を設計・製造する必要が生じていた。
【0039】
<操作装置1を用いた操作方法について>
これに対して、本実施形態の操作装置1では、
図2に示されるように、複数のスイッチがアイコンとして表示された操作ボードCB上における使用者の指の動きを検出することによって、操作対象となる機器を操作することが可能である。すなわち、操作装置1では、スイッチ(ボタン等)を押し込んだり動かしたりして機械的に動作させる必要は無く、スイッチに対応するアイコンが表示されたボード等があれば、機器の操作を行うことができる。例えば、操作ボードCB上の何処にどのアイコン(スイッチ)が配置されているかが分かれば機器の操作が可能である。そのため、操作ボードCBに表示されるスイッチ(アイコン)のデザインや配置を自在に変更することも可能である。
【0040】
以下、操作装置1を用いて操作対象となる機器を操作する際の具体的な方法について説明する。操作装置1を用いた機器の操作を開始する前提として、先ず、操作ボードCB上において、検出部10が検出対象(例えば、使用者の指)を検出することが可能な範囲(検出領域)を設定しておく必要がある。ここでは、操作ボードCBの所定の位置に検出部10が設置された状態で、アイコンA~H2が表示されたそれぞれの領域について、個別に検出領域を設定するものとする(
図2,
図3参照)。例えば、
図2の様に、操作ボードCBの表側面においてアイコンA~H2によって区切られた10種類の領域の各々が検出領域として設定され、制御部20の記憶部23に記憶される。検出領域の設定は、操作装置1(操作装置1を搭載した自動車)が、流通の最終段階である消費者(使用者)の元に届けられる前に行われる。例えば、操作装置1を製造するメーカーの工場や、自動車を製造するメーカー、販売代理店等にて行われる。
【0041】
なお、検出領域の設定は、所定のプログラムや二次元コード(例えば、QRコード(登録商標))を読み取ることによって行われるようにしても良い。このようにすれば、当該プログラムや二次コードを頒布することにより、使用者(ユーザー)自身で検出領域の設定を行うことが可能となる。また、使用者の好みに応じて、スイッチ(アイコン)の配置やデザインを簡単にカスタマイズすることもできる。
【0042】
図6は、操作装置1を用いて操作対象の機器を操作する動作のフロー図である。検出領域が設定された操作装置1を用いて機器の操作を開始すると、制御部20は、検出部10の赤外線照射部11から操作ボードCBと平行な面に赤外線を照射させる(S101)。検出部10から照射される赤外線は、少なくとも操作ボードCB上に設定されている全ての検出領域(アイコンA~H2が表示されている領域)を包含する範囲に照射される。
【0043】
この状態で、使用者(ユーザー)が操作ボードCB上に図示されている或るスイッチ(アイコン)を指で押すと、検出部10の赤外線受光部12によって当該指の重心位置のX座標及びY座標が、座標データとして検出(取得)される(S102)。検出された座標データは、制御部20の座標データ受付部221によって受け付けられ、記憶部23に一次的に保存される。なお、S102の処理では、検出領域において新たに検出された対象の座標データのみを取得するものとする。例えば、赤外線照射を開始した時点から検出領域内で検出されている対象(例えば、後述する
図9で説明する回転支柱CDP等)は考慮しないものとする。
【0044】
ここで、S102で検出される座標データは、Z方向において一定の位置(高さ)で検出される。上述したように、操作装置1の検出部10(赤外線照射部11)は、操作ボードCBと平行な平面となるように赤外線を照射することにより(
図3参照)、当該赤外線が照射される平面の高さにおいて座標データを検出することができる。但し、操作ボードCBの表面よりも過度に高い位置にて赤外線が照射されていると、使用者がスイッチ(アイコン)を押したときの指の位置座標データが誤って検出されるおそれがある。そのため、本実施形態では、操作ボードCBの表面から所定の高さ以内の範囲に赤外線が照射されるようにしている。
【0045】
図7は、検出部10が照射する赤外線の高さについて説明する図である。
図7Aは、操作ボードCBの表面から高さhの位置にて赤外線が照射された場合について表している。同
図7Aでは、使用者の指が操作ボードCBのアイコンAに触れている(押している)が、このとき、使用者の指と赤外線との重複部分dpは、Z方向に見たときにアイコンAと重複する領域に位置している。すなわち、使用者の指の座標データ(X座標及びY座標)がアイコンAの位置で検出される。これにより、使用者の指がアイコンAの位置にあることが正しく検出される。なお、
図7Aでは、説明のため、使用者の指と赤外線との重複部分域dpが、y方向に所定の長さ(幅)を有する領域として図示されているが、実際には使用者の指の重心位置が検出される。
【0046】
一方、
図7Bは、操作ボードCBの表面から高さhよりも高い位置である高さh′にて赤外線が照射された場合について表している。同
図7Bでは、使用者の指が操作ボードCBのアイコンAに触れている(押している)が、使用者の指と赤外線との重複部分dpは、Z方向に見たときにアイコンAではなくアイコンDと重複する領域に位置している。すなわち、使用者の指の座標データ(X座標及びY座標)がアイコンDの位置で検出される。この場合、後述するS103及びS104で、使用者の指がアイコンDを押していると誤判定されてしまうおそれがある。また、操作ボードCBの表面から過度に高い位置にて赤外線が照射されていた場合、アイコンを押す指以外の指(例えば親指)やその他の異物が誤検出されやすくなるおそれがある。
【0047】
そこで、本実施形態では、操作ボードCBの表面から過度に高くない位置(高さh)にて赤外線が照射されるようにすることで、使用者の指が実際にアイコンを押している位置と、指が検出される位置とがずれ難くなるようにしている。具体的には、操作ボードCBの表面から1mm以下とすることで、アイコンを押している指(指先)の位置に対応した正確な座標データを取得しやすくすることができる。また、操作する指先以外の異物が誤検出されてしまうことを抑制することができる。
【0048】
次いで、制御部20は、座標データが取得された領域を特定する(S103)。具体的に、制御部20の領域特定部222は、S102で検出された座標データが、操作ボードCB上に表示されている複数のアイコンA~H2のうち、どのアイコンの領域に属しているかを特定する。例えば、使用者の指の重心座標が、操作ボードCB上でアイコンAの領域に属している場合、検出領域としてアイコンAが特定される。なお、2つの検出領域に跨って座標データが検出された場合、例えば、アイコンAとアイコンBとの境界部に位置する座標データが検出された場合、領域特定部222は何れの領域も特定しない。すなわち、どのスイッチ(アイコン)も押されなかったものとする。
【0049】
次いで、制御部20は、S103で特定された検出領域(例えばアイコンA)において、検出対象(使用者の指)が所定時間n以上静止していたか否かを判定する(S104)。例えば、所定時間n=1秒とすると、使用者の指がアイコンAの位置で1秒以上静止していた場合に(S104がYes)、制御部20の操作判定部223は、アイコンAに対応するスイッチが操作された(押された)ものと判定する。一方、アイコンAの位置において使用者の指の静止時間が1秒未満であった場合(S104がNo)、操作判定部223は、アイコンAに対応するスイッチが操作されなかった(押されなかった)ものと判定する。
【0050】
このように、或るアイコン(スイッチ)と重複する位置で検出対象(指)の動きが所定時間n以上静止していたことを条件として、当該静止位置のアイコン(スイッチ)が操作されたと判定することによって、スイッチの誤操作を抑制しやすくすることができる。例えば、使用者がアイコンA(スイッチ)を押すために、操作ボードCB上で指を移動させる際に、他のアイコン(例えばアイコンB)に一瞬だけ触れてしまった場合に、アイコンB(スイッチ)が押されたと誤って判定されてしまうことが抑制される。また、使用者が誤ったアイコン(例えばアイコンB)を押そうとして当該アイコンBに触れた後、すぐに誤りに気付いて、正しいアイコン(アイコンA)の位置に指を移動させた場合等にも、アイコンB(スイッチ)が押されたと判定されてしまうことが抑制される。
【0051】
S104で検出対象の静止時間が所定時間n未満であった場合は(S104がNo)、S101の処理に戻る。一方、検出対象の静止時間が所定時間n以上であった場合(S104がYes)、制御部20は、S103で特定された検出領域のアイコン(アイコンA)に対応するスイッチが操作されたものとして、操作内容を受け付ける(S105)。例えば、アイコンAが、自動車の空調機器において冷房・除湿機能のON/OFFを切り替えるスイッチに対応していた場合、制御部20の操作判定部223は、空調機器の冷房・除湿機能をON(OFF)する操作を受け付ける。
【0052】
次いで、制御部20は、操作が正しく受け付けられたことを使用者に知らせるための確認動作を行う(S106)。確認動作の例としては、以下の動作が挙げられる。例えば、操作ボードCBの裏側面(アイコンが表示されている面と反対側の面)に、回転軸と重心がずれた振動子を備えた振動モータを設置しておき、S105にて操作が受け付けられた場合、制御部20の確認動作部224は、当該振動モータを振動させる。また、制御部にスピーカーを設けて操作が受け付けられた場合に音声(例えばブザー音等)を発信したり、操作ボードCBのアイコンにLED等を設けて操作が受け付けられた場合にアイコンを発光させたりしても良い。このような確認動作により、使用者は操作が正しく受け付けられたことを認識することができる。
【0053】
本実施形態の操作装置1では、
図5に示されるような機械式のスイッチ(ボタン)が設けられておらず、使用者は、ボタンを押し込んだ感触等が得られないため、操作が受け付けられたことを感覚的に認識し難い。これに対して、上述したような確認動作を実施することにより、操作している感覚を使用者に認識させやすくすることができる。但し、S106の確認動作は必ずしも行われなくても良い。
【0054】
次いで、制御部20は、受け付けられた操作内容に応じて、操作対象となる機器に操作内容の指示を伝達する(S107)。上述の例では、操作指示伝達部24を介して制御部20に接続されている空調機器に対して、冷房・除湿機能をON(OFF)にする指示を行う。
【0055】
このような操作方法によれば、機械的に動作するスイッチ(ボタン等)や、当該スイッチに接続される配線を設けることなく、機器の操作を行うことが可能となる。したがって、操作装置の設計や製造にかかる手間やコストを大きく低減することができる。また、複数のアイコンが表示された操作ボードCBにおいて、各々のアイコン(スイッチ)に応じて検出領域を自在に設定することができるため、アイコンのデザインや配置に関して制限が生じ難く、設計の自由度を高めることができる。また、検出領域の設定は制御部20で自由に変更することが可能なため、使用者(ユーザー)の好みに応じて操作ボードCB上のアイコンのデザインや配置をカスタマイズすることもできる。
【0056】
<変形例>
図6のS104の処理では、検出対象の静止時間がn以上であることを条件として、スイッチが押されたか否かの判定が行われていたが、判定基準となる静止時間は、複数種類のスイッチ(アイコン)毎に異なっていても良い。例えば、
図2に示されるアイコンA~H2のうち、アイコンG1,G2は風量の調整を行うためのスイッチであり、アイコンH1,H2は温度の調整を行うためのスイッチである。風量や温度の調整を行う際には、断続的に複数回スイッチを押すよりも、連続して長時間スイッチを押し続ける方が操作を行いやすい場合がある。
【0057】
そこで、アイコンG1,G2,H1,H2における静止時間の判定基準を他のアイコンA~Fにおける静止時間の判定基準とは異なる値として設定し、制御部20に記憶しておく。例えば、アイコンG1,G2,H1,H2では、アイコンA~Fよりも長い静止時間n=2秒と設定する、
【0058】
制御部20は、S103の処理でアイコンG1,G2,H1,H2の領域が特定された場合、当該アイコンG1,G2,H1,H2が2秒以上長押しされた場合に(S104がYes)操作を受け付けつける(S105)。さらに、静止時間が1秒経過するごとにアイコンG1,G2,H1,H2が続けて押された(操作された)ものと判定するようにしても良い。例えば、温度を5度上昇させたい場合に、アイコンH1を5回押すのではなく、連続して6秒間(2秒+1秒+1秒+1秒+1秒)押し続けるようにする。制御部20の操作判定部223をこのように設定することで、使用者は、温度や風量の調整をより容易に行いやすくなる。
【0059】
===第2実施形態===
第2実施形態では、操作ボードCBにおいてスライド移動や回転移動する(すなわち、機械的に動作する)「つまみ」が設けられている場合に、操作装置1を用いて機器の操作を行う方法について説明する。
図8は、第2実施形態で使用される操作ボードCBの平面図である。同
図8に示される操作ボードCBは、
図2のアイコンH1,H2に対応する温度調整スイッチに替えて、ダイヤルつまみDPが設けられている。それ以外の構成は、第1実施形態と同様である。
【0060】
図9は、ダイヤルつまみDPの構成について説明する図である。第2実施形態で使用される操作ボードCBに設けられるダイヤルつまみDPは、操作ボードCBの表面側に設けられた回転支柱CDPと、回転支柱CDPを回転軸として回転可能に支持された円柱状の回転体RBと、回転体RBの下面側に設けられた複数の検出突起S1~S4とを有している。
【0061】
回転支柱CDPは操作ボードCBと交差する方向(Z方向)に沿って配置された軸部材であり、回転体RBは、当該回転支柱CDPを中心に回転移動する。検出突起S1~S4は、回転体RBの外周方向に沿って所定の間隔を空けて配置されており、回転体RBの下面からZ方向の下側に突出するように設けられている。なお、
図9では回転体RBの外周方向に沿って90度の間隔で4つの検出突起S1~S4が設けられているが、検出突起の数量や配置はこの限りでは無い。
【0062】
このようなダイヤルつまみDPに対して、
図9の斜線部で示される検出領域DPAが設定される。すなわち、Z方向から見たときに、回転体RBの面積の少なくとも半分の領域が検出領域DPAとして設定される。そして、検出部10によって赤外線が照射されると、当該検出領域DPA中で、1以上の検出突起及び回転支柱CDPが検出される。
図9の状態では、検出突起S1及び検出突起S2と回転支柱CDPの座標データ(X座標及びY座標)が検出可能である。
【0063】
なお、
図9の状態では、検出突起S4も検出領域DPAの範囲内に含まれているが、検出部10(赤外線照射部11)と検出突起S4との間に回転支柱CDPが配置されているため、該回転支柱CDPが障害となって検出突起S4の座標データは検出されない。また、回転支柱CDPの位置は検出領域DPA内で固定されており、常時同じ座標データが検出される(座標データが変動しない)ため、ダイヤルつまみDPの動作を検出するうえで不要なデータとなる。したがって、制御部20において、回転支柱CDPの座標データは検出しないように設定しても良い。
【0064】
図10は、第2実施形態において操作装置1を用いて操作対象の機器を操作する動作のフロー図である。動作開始後、S201及びS202の処理は、第1実施形態のS101及びS102の処理と略同様である。すなわち、検出部10の赤外線照射部11から操作ボードCBと平行な面に赤外線が照射され(S201)、検出対象の座標データが検出部10の赤外線受光部12によって検出される。但し、第2実施形態のS201及びS202では、使用者の指が検出されない場合であっても、
図9で説明した検出領域DPAに赤外線が照射され、当該検出領域DPAにおいてダイヤルつまみDPの検出突起S1~S4のいずれかが必ず検出される。
【0065】
次いで、S201で検出された座標データが検出領域DPAで検出されたものか否かを判定する(S203)。制御部20の領域特定部22は、検出された座標データが検出領域DPAと重複するものであれば(S203がYes)、次のS204に処理を進める。一方、検出された座標データが検出領域DPAと重複しないものであれば(S203がNo)、S208に処理を進める。第2実施形態では、上述したように、検出領域DPAと重複する領域にてダイヤルつまみDPの検出突起S1~S4が必ず検出されるため、S204の処理に進む。また、検出突起S1~S4が検出されるのとは別に、使用者が指でアイコンA~Gのいずれかを押した場合、すなわち、2か所以上の座標データ(検出突起S1~S4、及び、使用者の指の座標)が検出された場合には、別途S208の処理にも進む。
【0066】
検出された座標データが検出領域DPAと重複するものである場合(S203がYes)、当該座標データが検出領域DPA内を移動したか否かが判定される(S204)。制御部20の操作判定部223は、ダイヤルつまみDPが支柱CDPを中心として回転することによって、検出突起S1~S4の座標データが所定時間内に変動したか否かを検出し、当該検出突起S1~S4の移動を判定する。そして、座標データが変動していなかった場合には(S204がNo)、検出領域DPA内で検出対象(検出突起S1~S4)が移動していなかったものとして、すなわち、ダイヤルつまみDPが操作されなかったとして、S201の処理に戻る。一方、座標データが変動していた場合には(S204がYes)、当該検出対象の移動量を検出する処理が行われる(S205)。
【0067】
図11は、S205の処理で行われる移動量の検出方法の一例について説明する図である。
図11Aは、ダイヤルつまみDPが回転操作されることにより、検出突起S1が、
図9における操作前の位置(OFFと表示されている位置)から回転支柱CDPを中心として時計回り方向に角度θ1だけ回転した位置に移動した場合について表している。この場合、操作判定部223は、操作後における検出突起S1の座標データ(
図11A)と、操作前における検出突起S1の座標データ(
図9)とから検出突起S1の移動方向(時計回り方向)及び移動量(角度θ1)を算出し、ダイヤルつまみDPがHeat側(時計回り方向)へ回転操作されたことを検出する。
【0068】
同様に、
図11Bは、ダイヤルつまみDPが回転操作されることにより、検出突起S2が、
図9における操作前の位置(Heatと表示されている位置)から回転支柱CDPを中心として反時計回り方向に角度θ2だけ回転した位置に移動した場合について表している。この場合、操作判定部223は、操作後における検出突起S2の座標データ(
図11B)と、操作前における検出突起S2の座標データ(
図9)とから検出突起S2の移動方向(反時計回り方向)及び移動量(角度θ2)を算出し、ダイヤルつまみDPがCool側(反時計回り方向)へ回転操作されたことを検出する。
【0069】
なお、
図11Bの場合、ダイヤルつまみDPの回転角度(θ2)が大きいため、検出突起S1は検出領域DPAの範囲外に移動しており、検出部10によって検出することができなくなる。しかしながら、上述したように、検出領域DPAの範囲内で少なくとも2つの検出突起が検出されていれば、当該検出突起の動作を逐次検出することによって、ダイヤルつまみDPの回転方向及び回転量(移動量)を検出することが可能である。例えば、ダイヤルつまみDPが180度以上回転する場合には、検出対象となる検出突起S1~S4を順次変更しながら移動方向及び移動量を検出することにより、ダイヤルつまみDP全体としての動作を検出することができる。
【0070】
S205で検出対象である検出突起S1~S4の移動量が検出されると、制御部20は、ダイヤルつまみDPが所定角度だけ回転操作されたものとして、回転量(移動量)に応じた操作内容を受け付ける(S206)。ここでは、エアコンを操作して、所定の温度だけ高くする(暖房)動作や、所定の温度だけ低くする(冷房)動作を受け付ける。
【0071】
そして、制御部20は、受け付けられた操作内容に応じて、操作対象となる機器に操作内容の指示を伝達する(S207)。上述の例では、操作指示伝達部24を介して制御部20に接続されている空調機器に対して、温度を上昇/下降させる指示を行う。
【0072】
なお、S205~S207の処理において、使用者が実際にダイヤルつまみDPを回転させる操作を行った場合、操作が正しく受け付けられたことを使用者に知らせるための確認動作(第1実施形態のS106に相当する処理)は必ずしも行われなくても良い。使用者は、ダイヤルつまみDPを実際に回転させることによって、操作している感覚を物理的に認識することができるからである。もちろん、第1実施形態のS106に相当する確認動作が行われるようにしても良い。
【0073】
図10に戻って、S203の処理で、検出された座標データが検出領域DPAと重複していない座標データである場合には(S203がNo)、当該座標データがどの検出領域で検出されたのかが特定される(S208)。S208の処理は、第1実施形態のS103の処理と同様である。すなわち、検出された座標データが、
図8に示される操作ボードCB上に表示されているアイコンA~G2のうち、どのアイコンの領域に属しているかが特定される。
【0074】
次いで、S209~S212の処理が順次行われる。S209~S212の各処理は、それぞれ第1実施形態におけるS104~S107の各処理とほぼ同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0075】
第2実施形態の操作方法によれば、機械的に動作しないスイッチ(
図8のアイコンA~G2)と機械的に動作するスイッチ(
図8のダイヤルつまみDP)とを備えた操作ボードCBを用いた場合であっても、機器の操作を行うことができる。すなわち、操作装置1では、機械的に動作するスイッチの動作を検出することも可能であり、また、当該スイッチに配線等を設けることなく、機器の操作を実現することができる。したがって、操作装置の設計や製造にかかる手間やコストを大きく低減することができる。
【0076】
<変形例>
上述の例では、操作ボードCB上に、回転することによって操作を行う「ダイヤルつまみ」が設けられる例について説明したが、ダイヤルつまみ以外に機械的に動作する「つまみ」が設けられていても良い。例えば、操作ボードCB上で所定の方向に往復移動する「スライドつまみ」が設けられていても良い。
【0077】
図12は、スライドつまみSPの構成について説明する図である。スライドつまみSPは、操作ボードCBに設けられたスライド支柱CSPと、スライド支柱CSPによって所定の方向に摺動可能に支持された摺動体SBとを有している。
【0078】
スライド支柱CSPは操作ボードCBと交差する方向(Z方向)に沿って配置された軸部材であり、摺動体SBは、当該スライド支柱CSPに支持された状態で、操作ボードCB上を所定の方向(
図12ではX方向)にスライド移動(摺動)する。そして、スライドつまみSPに対して、
図12の斜線部で示される検出領域SPAが設定される。すなわち、少なくともスライド支柱CSPがX方向にスライド移動可能な範囲を包含する領域が検出領域SPAとして設定される。検出部10によって赤外線が照射されると、当該検出領域SPA中で、スライド支柱CSPが検出される。
図12の状態では、X方向の左側端部にてスライド支柱CSPの座標データ(X座標及びY座標)が検出される。
【0079】
本変形例では、操作ボードCB上に
図12のようなスライドつまみSPが設けられている場合にも、
図10で説明したフローに基づいて、操作装置1を用いて操作対象となる機器を操作することができる。
図10におけるS201~S212の各フローは上述の場合と略同様であるが、S205の移動量検出処理等、一部の処理が異なっている。
【0080】
図13は、変形例においてS205の処理で行われる移動量の検出方法について説明する図である。
図13では、スライドつまみSPがX方向にスライド操作されることにより、スライド支柱CSPが、
図12における操作前の位置(OFFと表示されている位置)からX方向に距離L1だけ移動した場合について表している。この場合、操作判定部223は、操作後におけるスライド支柱CSPの座標データ(
図13)と、操作前におけるスライド支柱CSPの座標データ(
図12)とからスライド支柱CSPの移動方向(X方向)及び移動量(距離L1)を算出し、スライド支柱CSPがHeat側(X方向)へスライド操作されたことを検出する。
【0081】
そして、検出対象であるスライド支柱CSPの移動量が検出されると、制御部20は、スライドつまみSPが所定距離だけスライド操作されたものとして、移動量に応じた操作内容を受け付ける(S206)。例えば、エアコンを操作して、所定の温度だけ高くする(暖房)動作を受け付ける。
【0082】
このような変形例の場合でも、機械的に動作しないスイッチ(アイコン)と機械的に動作するスイッチ(
図12のスライドつまみSP)とを備えた操作ボードCBを用いて機器の操作を行うことができる。すなわち、機械的に動作するスイッチが設けられている場合であっても、当該スイッチに配線等を設けることなく、機器の操作を実現することができる。したがって、操作装置の設計や製造にかかる手間やコストを大きく低減することができる。
【0083】
===その他の実施形態について===
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0084】
1 操作装置、
10 検出部、
11 赤外線照射部、12 赤外線受光部、13 接続部、
20 制御部、
21 インターフェース、
22 CPU、
221 座標データ受付部、222 領域特定部、223 操作判定部、
224 確認動作部、
23 記憶部、
24 操作指示伝達部、
CB 操作ボード、
DP ダイヤルつまみ、S1~S4検出突起、
SP スライドつまみ、CSP スライド支柱