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特開2024-16555メディア伝送システム及びそのトラフィック管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016555
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】メディア伝送システム及びそのトラフィック管理方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 47/12 20220101AFI20240131BHJP
   H04L 65/61 20220101ALI20240131BHJP
   H04L 65/611 20220101ALI20240131BHJP
   H04L 47/193 20220101ALI20240131BHJP
【FI】
H04L47/12
H04L65/61
H04L65/611
H04L47/193
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118775
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蔡 豐宇
(72)【発明者】
【氏名】岩見 敬太
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 俊生
【テーマコード(参考)】
5K030
【Fターム(参考)】
5K030GA13
5K030HA08
5K030LB08
5K030LC11
5K030LD06
5K030MB02
(57)【要約】
【課題】 高度なアーキテクチャに対応しない機材を使用しても、メディア伝送経路でのトラフィック超過によるメディア伝送の破綻を回避可能とする。
【解決手段】 実施形態の放送システムは、メディアネットワークに第1及び第2の経路を介して伝送装置を接続し、前記第1及び前記第2の経路に冗長のメディアストリームを伝送するシステムであって、上位装置から制御対象のメディアストリームの伝送指示を受けた場合に、一方の経路を選択してメディアネットワークとの間で制御対象のメディアストリームを追加伝送させ、一方の経路のトラフィック超過を判定し、トラフィック超過の発生なしの判定の場合には、制御対象の伝送承諾を上位装置に通知して他方の経路に制御対象を追加伝送させ、トラフィック超過の発生ありの判定場合には、制御対象の伝送拒否を上位装置に通知し、一方の経路の制御対象のメディアストリームの伝送を停止する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディアストリームを伝送するメディアネットワークに第1の経路及び第2の経路を介してエンドポイントの伝送装置を接続し、前記第1の経路及び前記第2の経路のそれぞれに互いに冗長のメディアストリームを伝送するメディア伝送システムであって、
前記第1の経路及び前記第2の経路のそれぞれのトラフィックを監視して、各経路の伝送メディアの帯域が上限を超過するトラフィック超過の発生の有無を検出する監視手段と、
上位装置から制御対象のメディアストリームの伝送指示を受けて、前記第1の経路及び前記第2の経路のいずれか一方の経路を選択して前記メディアネットワークとの間で前記制御対象のメディアストリームを伝送させ、前記監視手段で前記一方の経路のトラフィック超過の発生が検出されなかった場合には、前記制御対象のメディアストリームの伝送の承諾を前記上位装置に通知して、他方の経路に前記制御対象のメディアストリームを伝送させ、前記監視手段で前記一方の経路のトラフィック超過の発生が検出された場合には、前記制御対象のメディアストリームの伝送の拒否を前記上位装置に通知して、前記一方の経路から前記制御対象のメディアストリームの伝送を停止するように前記伝送装置を制御する制御手段と
を具備するメディア伝送システム。
【請求項2】
前記監視手段は、前記一方の経路に追加伝送される制御対象のメディアストリームのシーケンス番号の連続性を監視し、前記シーケンス番号の連続性の異常発生の有無から前記トラフィック超過の発生の有無を判断する請求項1記載のメディア伝送システム。
【請求項3】
前記監視手段は、前記一方の経路に制御対象のメディアストリームが伝送されたときの前記一方の経路のレートを監視し、前記一方の経路のオーバーレート発生の有無から前記トラフィック超過の発生の有無を判断する請求項1記載のメディア伝送システム。
【請求項4】
前記制御手段は、IGMP(Internet Group Management Protocol)のJoinメッセージによって前記メディアストリームの伝送を指示し、IGMPのLeaveメッセージによってメディアストリームの伝送の停止を指示する請求項1乃至3のいずれかに記載のメディア伝送システム。
【請求項5】
メディアストリームを伝送するメディアネットワークに第1の経路及び第2の経路を介してエンドポイントの伝送装置を接続し、前記第1の経路及び前記第2の経路のそれぞれに互いに冗長のメディアストリームを伝送するメディア伝送方法であって、
上位装置から制御対象のメディアストリームの伝送指示を受けて、前記第1の経路及び前記第2の経路のいずれか一方の経路を選択して前記メディアネットワークとの間で前記制御対象のメディアストリームを伝送させ、
前記一方の経路のトラフィックを監視して前記一方の経路の伝送メディアの帯域が上限の帯域を超過するトラフィック超過の発生の有無を検出し、
前記一方の経路のトラフィック超過の発生が検出されなかった場合には、前記制御対象のメディアストリームの伝送の承諾を前記上位装置に通知して、選択されなかった他方の経路に前記制御対象のメディアストリームを伝送させ、
前記一方の経路のトラフィック超過の発生が検出された場合には、前記制御対象のメディアストリームの伝送の拒否を前記上位装置に通知して、前記一方の経路から前記制御対象のメディアストリームの伝送を停止するように前記伝送装置を制御する
メディア伝送方法。
【請求項6】
前記一方の経路に追加伝送される制御対象のメディアストリームのシーケンス番号の連続性を監視し、前記シーケンス番号の連続性の異常発生の有無から前記トラフィック超過の発生の有無を判断する請求項5記載のメディア伝送方法。
【請求項7】
前記一方の経路に制御対象のメディアストリームが伝送されたときの前記一方の経路のレートを監視し、前記一方の経路のオーバーレート発生の有無から前記トラフィック超過の発生の有無を判断する請求項5記載のメディア伝送方法。
【請求項8】
前記メディアストリームの伝送を、IGMP(Internet Group Management Protocol)のJoinメッセージによって指示し、前記メディアストリームの伝送の停止をIGMPのLeaveメッセージによって指示する請求項5乃至7のいずれかに記載のメディア伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、メディア伝送システム及びそのメディア伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IP(Internet Protocol)利用のメディア伝送システムでは、メディアストリーム(以下、メディアと略す)を伝送するメディアネットワークにエンドポイントとする送信装置、受信装置等の伝送装置を接続し、伝送装置間でメディアネットワークを通じてメディア伝送を行う。この際、個々の伝送装置とメディアネットワークとを接続するメディア伝送経路でのトラフィック超過によるメディア伝送の破綻を回避する必要があるため、従来では、NMOS IS-06(Network Media Open Specifications Interface Specification Number 6)相当の高度なアーキテクチャが提唱されている。ただし、このような高度なアーキテクチャを採用する場合には、メディア伝送経路におけるトラフィック管理にNMOS IS-06に対応する比較的高価な機材を使用する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-6068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上述べたように、従来のIP利用のメディア伝送システムでは、メディアネットワークと伝送装置とを接続するメディア伝送経路における適切なトラフィック管理にNMOS IS-06相当の高度なアーキテクチャが提唱されているが、その採用に際して、当該アーキテクチャに対応する比較的高価な機材の使用が要求されるため、ネットワークの規模の拡大に伴って技術面と費用面でのハードルが高くなるという課題がある。
【0005】
本実施形態は上記課題に鑑みなされたもので、NMOS IS-06相当の高度なアーキテクチャに対応しない機材を使用しても、メディア伝送経路でのトラフィック超過によるメディア伝送の破綻を回避することのできるメディア伝送システム及びそのトラフィック管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本実施形態に係るメディア伝送システムは、メディアストリームを伝送するメディアネットワークに第1の経路及び第2の経路を介してエンドポイントの伝送装置を接続し、前記第1の経路及び前記第2の経路のそれぞれに互いに冗長のメディアストリームを伝送するシステムであって、監視手段と、制御手段とを備える。前記監視手段は、前記第1の経路及び前記第2の経路のそれぞれのトラフィックを監視して、各経路の伝送帯域が上限を超過するトラフィック超過発生の有無を検出する。前記制御手段は、上位装置から制御対象のメディアストリームの伝送指示を受けて、前記第1の経路及び前記第2の経路のいずれか一方を選択して前記メディアネットワークとの間で前記制御対象のメディアストリームを伝送させ、前記監視手段で前記選択された一方の経路のトラフィック超過発生が検出されなかった場合には、前記制御対象のメディアストリームの伝送の承諾を前記上位装置に通知して、前記選択されなかった他方の経路に前記制御対象のメディアストリームを伝送させる。また、前記監視手段で前記選択された一方の経路のトラフィック超過発生が検出された場合には、前記制御対象のメディアストリームの伝送の拒否を前記上位装置に通知して、前記選択された一方の経路から前記制御対象のメディアストリームの伝送を停止するように前記伝送装置を制御する。すなわち、時間差で冗長経路の片方を利用してメディアストリームを流して、オーバーレート等のトラフィック異常の有無を検出し、トラフィック異常の有無を検出した上で制御の受け入れを決定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係るメディア伝送システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1に示すメディア伝送システムに用いられる受信装置の内部構成を示すブロック図である。
図3図3は、図1に示すメディア伝送システムのメディアパケットのフォーマットRTPヘッダ構造を示す図である。
図4図4は、図1に示すメディア伝送システムの受信装置に適用されるトラフィック管理方法の処理手順を示すフローチャートである。
図5図5は、従来方式のメディア伝送システムにおいて、2系統のメディア伝送経路で共にトラフィック超過が生じた様子を示す概念図である。
図6図6は、図1に示すメディア伝送システムにおいて、一方のメディア伝送経路を選択して指定のメディア伝送を追加したときにトラフィック超過が生じた場合の処理の様子を示す概念図である。
図7図7は、図1に示すメディア伝送システムにおいて、一方のメディア伝送経路を選択して指定のメディア伝送を追加したときにトラフィック超過が生じなかった場合の処理の様子を示す概念図である。
図8図8は、図1に示すメディア伝送システムの受信装置に適用されるトラフィック管理方法の他の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
前述したように、IPを利用したメディア伝送システムでは、ネットワーク障害による画音の破綻を防ぐために、SMPTE ST2022-7(Society of Motion Picture and Television Engineers ST2022-7)として標準化されている経路二重化方式がよく使われている。
【0009】
ところで、メディア伝送システムでは、上位装置からの伝送指示をトリガーとするメディアストリームの流入に起因して、時として、操作ミス等でネットワークの経路が許容するレートを超えるトラフィックを発生させてしまう場合がある。ネットワークにオーバーレートによるトラフィックを発生させてしまうと、その経路で伝送するストリームは軒並み影響を受け、伝送中の画音の破綻を引き起こすため、適切なトラフィック管理が不可欠である。
【0010】
ネットワークのトラフィックを適切に管理するために、NMOS IS-06が提案されている。しかしながら、NMOS IS-06のネットワークを構築するには、比較的高価なNMOS IS-06対応のネットワーク制御器と当該ネットワーク制御器に対応する機能を有するネットワークスイッチ、さらに、NMOS IS-06対応の放送制御器、LLDP対応の送信装置及び受信装置が必要となる。
【0011】
そこで、本実施形態は、高度なアーキテクチャに対応しない機材を使用しても、ネットワークのトラフィック超過によるメディア伝送の破綻を回避することのできるメディア伝送システムを提供する。
【0012】
以下、実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態に係るメディア伝送システムの構成を示すブロック図である。図1において、11はNMOS IS-04及びNMOS IS-05対応の放送制御器、12,13はそれぞれ放送制御器11の被制御対象であって、エンドポイントとするNMOS IS-04及びNMOS IS-05対応の送信装置、受信装置である。また、142A,142B,143A,143Bは、放送制御器11、送信装置12、受信装置13をそれぞれA系(経路1)とB系(経路2)の2重経路を介してメディアネットワーク15に接続するためのネットワークスイッチである。
【0013】
本実施形態では、放送制御器11が、エンドポイントの受信装置13に対し、エンドポイントの送信装置12にメディアストリームを出力させ、メディアネットワーク15を介して、エンドポイントの受信装置13に受信するように制御する。
【0014】
図1に示すメディア伝送システムは、IPを利用したネットワーク構成であるが、ST2022-7におけるNMOS IS-06を必要としない構成であるため、ネットワーク制御のためのネットワークスイッチにNMOS IS-06に非対応の機器を用い、低コストでシンプルな構成となっている。本実施形態は、受信装置13に監視機能と制御機能を実装することで、トラフィック異常を検知し、メディア伝送の破綻を防止する。
【0015】
図2は本実施形態に用いられる受信装置13の内部構成を示すブロック図、図3は、図1に示すメディア伝送システムのメディアパケットのフォーマットRTPヘッダ構造を示す図である。
【0016】
図2において、外部制御部131は、上位装置の放送制御器11との通信を行い、メディア伝送の制御を受けると、その制御情報をマルチキャスト(以下、MC)制御部132へ渡し、トラフィック情報に基づく制御承諾/拒否情報を放送制御器11へ通知する等の制御を行う。MC制御部132は、外部制御部131からの制御情報により、経路1あるいは経路2を通して、ネットワークスイッチ143A,143Bへマルチキャストグループに対するJoinメッセージ(Multicast Group Join)あるいはマルチキャストグループに対するLeaveメッセージ(Multicast Group Leave)を送信する。
【0017】
レート監視部133は、経路1及び経路2に流れる複数のメディア伝送それぞれの帯域幅(伝送レート)を監視し、各メディア伝送の帯域情報を解析部136へ通知する。
【0018】
第1受信処理部1341及び第2受信処理部1342は、それぞれ経路1及び経路2を通じて伝送されるメディアパケットを受信し、受信したメディアパケットのRTPヘッダ情報からシーケンス番号(Sequence Number)を検出し、その連続性情報を解析部136へ通知する。また、受信したメディアパケットを冗長制御部135へ渡す。
【0019】
冗長処理部135は、二つの受信処理部1341,1342から届いたメディアパケットを整列させ、正しいメディアパケットを後段へ渡す。
【0020】
解析部136は、受信処理部1341,1342からの連続性情報またはレート監視部133からの帯域情報を解析し、異常(例:トラフィック異常、パケット毎のシーケンス番号不連続、オーバーレート)があるかを判断し、結果を外部制御部131へ通知する。
【0021】
上記構成において、図4を参照して本実施形態のトラフィック管理方法を説明する。
図4は、本実施形態に係るメディア伝送システムの受信装置13におけるトラフィック管理方法を示すフローチャートである。受信装置13において、まず、上位装置の放送制御器11からメディアストリームの受信要求が外部制御部131に届くと(ステップS11)、外部制御部131がMC制御部132へMC伝送制御を指示し(ステップS12)、MC制御部132が片方の経路(本実施形態では経路2)を通してネットワークスイッチ143Bへマルチキャストグループに対するJoinメッセージを送信する(ステップS13)。これにより、メディアネットワーク15から指定のメディアストリームが経路2経由で受信装置13に流れ込まれ、第2受信処理部1342が経路2経由で流れ込まれたメディアストリームの受信処理を実行し、受信処理されたメディアストリームを冗長処理部135へ出力する(ステップS14)。
【0022】
ここで、第2受信処理部1342が、流れ込まれている、ステップS11で要求されたメディアストリームのヘッダ情報からシーケンス番号(Sequence Number)を抽出し、受信処理情報の解析を行って連続性の正常・異常を判別する(ステップS15)。ステップS15において、第2受信処理部1342に流れ込まれているメディアストリームにシーケンス番号の異常が発生する場合、解析部136がトラフィック異常と判断して、外部制御部131に異常を通知する(ステップS16)。これを受けて、外部制御部131がMC制御部132へマルチキャスト伝送制御指示を出す(ステップS17)。指示を受けたMC制御部132が経路2を通じてネットワークスイッチ143Bへマルチキャストグループ(MCG)に対するLeaveメッセージを送信し(ステップS18)、第2受信処理部1342が経路2経由で流れ込まれたメディアストリームの受信処理を停止し(ステップS19)、外部制御部131が上位装置の放送制御器11へメディア制御拒否を通知する(ステップS20)。
【0023】
一方、ステップS15において、第2受信処理部1342に流れ込まれているメディアストリームにシーケンス番号(Sequence Number)に異常が発生していない場合、解析部136がトラフィック正常と判断し、外部制御部131に正常を通知する(ステップS21)。これを受けて、外部制御部131がMC制御部132へマルチキャスト伝送制御指示を出す(ステップS22)。指示を受けたMC制御部132がもう片方の経路(本実施形態では経路1)を通してネットワークスイッチ143Aへマルチキャストグループ(MCG)に対するJoinメッセージを送信する(ステップS23)。これにより、メディアネットワーク15から指定のメディアストリームが経路1経由で受信装置13に流れ込まれ、第1受信処理部1341が流れ込まれたメディアストリームの受信処理を実行し(ステップS24)、上位装置の放送制御器11へ制御承諾を通知して(ステップS25)、一連のメディア制御を完了する。
【0024】
上記トラフィック管理方法について、図1に示すメディア伝送システムのトラフィック超過の回避を従来と比較して説明する。ここでは、ST2022-7に準拠するように、2つの経路(経路1、経路2)に対し、同じ帯域のストリームが流されている前提とする。
【0025】
図5は、従来方式のメディア伝送システムにおいて、2系統のメディア伝送経路で共にトラフィック超過が生じた様子を示す概念図で、(a)は経路1のメディア追加前の伝送状態、(b)は経路2のメディア追加前の伝送状態、(c)は経路1のメディア追加後の伝送状態、(d)は経路2のメディア追加後の伝送状態を示しており、図中、M1~M5が伝送中のメディア、M6が放送制御器11から新規に要求された追加メディアである。
【0026】
従来方式では、図5(a)、(b)に示すように、経路1、経路2において、共にメディアM1~M5を帯域内で伝送している状態で、メディアM6の受信要求を受けると、経路1及び経路2で同時に追加メディアM6の伝送を開始する。このため、メディアM6の占有帯域が伝送中のメディアM1~M5の帯域と合わせて伝送帯域の上限を超えると、図5(c)、(d)に示すように、経路1、経路2で共にトラフィック超過を生じて全メディアM1~M6が破綻してしまう。
【0027】
このように、従来の方法では、経路1、経路2が同時に制御対象のメディアM6を受けると、本来受けている制御対象以外のメディア伝送M1~M5が受けられなくなり、画音の破綻に至ってしまう。
【0028】
これに対して、本実施形態のトラフィック管理方法では、経路1、経路2で同時にメディアを受信するのではなく、時間差をつけて、片方の経路にマルチキャストグループに対するJoinメッセージを送信して制御対象のメディアのストリームを受けてトラフィック状態の正常・異常の判断を行って、全てのストリームが正常であれば制御受け入れ可を決定し、1つのメディアでも異常であれば制御受け入れ不可を決定する。制御受け入れ可を決定した場合は、経路1でマルチキャストグループに対するJoinメッセージを送信して制御対象のメディアを受信する。一方、制御受け入れ不可を決定した場合は、経路2でマルチキャストグループに対してLeaveメッセージを送り、制御対象のメディアのストリームの受信を拒否する。
【0029】
具体的には、図6及び図7に示すように処理される。図6は、図1に示すメディア伝送システムにおいて、経路2を選択して指定のメディアM6の伝送を追加したときにトラフィック超過が生じて異常を検出した場合の処理の様子を示す概念図で、(a),(b)はそれぞれ経路2にメディアM6を追加伝送した時点での経路1、経路2の伝送状態、(c),(d)はそれぞれ経路2に追加伝送したメディアM6によってトラフィック超過が生じて追加伝送制御が拒否された時点での経路1、経路2の伝送状態を示している。
【0030】
また、図7は、図1に示すメディア伝送システムにおいて、経路2を選択して指定のメディアM7の伝送を追加したときにトラフィック超過が生じなかった場合の処理の様子を示す概念図で、(a),(b)はそれぞれ経路2にメディアM7を追加伝送した時点での経路1、経路2の伝送状態、(c),(d)はそれぞれ経路2にメディアM7を追加伝送してもトラフィックが正常であり、追加伝送制御が承諾された後での経路1、経路2の伝送状態を示している。
【0031】
すなわち、本実施形態のトラフィック管理方法では、放送制御器11からメディアM6の受信要求があると、図6(a)に示すように、経路1で本来のメディアM1~M5を正しく受信している状態で、経路2でマルチキャストグループに対するJoinメッセージを送信して制御対象のメディアM6を受信する。ここで、図6(b)に示すように、メディアM1~M6の何れかが伝送帯域の上限を超えてしまった場合には、トラフィック状態が異常を判断される。このため、制御受け入れ不可と決定され、経路2でマルチキャストグループに対してLeaveメッセージが送られる。これにより、図6(d)に示すように、経路2のメディアM6の伝送が停止され、制御対象のメディアM6の受信(メディア制御)が拒否され、上位の放送制御器11にメディア制御拒否が通知される。
【0032】
また、放送制御器11からメディアM7の受信要求があると、図7(a)に示すように、経路1で本来のメディアM1~M5を正しく受信している状態で、経路2でマルチキャストグループに対するJoinメッセージを送信して制御対象のメディアM7を受信する。ここで、図7(b)に示すように、全メディアM1~M5、M7が伝送帯域の上限を超えない場合には、トラフィック状態が正常を判断される。このため、制御受け入れ可と決定され、経路1でマルチキャストグループに対してJoinメッセージが送られる。これにより、図7(c)に示すように、経路1でメディアM7の伝送が開始され、制御対象のメディアM7の受信(メディア制御)が実行され、上位の放送制御器11にメディア制御承諾が通知される。
【0033】
以上ように、本実施形態に係るメディア伝送システムは、時間差で冗長経路を利用してメディアストリームを流し、冗長経路でトラフィック異常の有無を検出し、トラフィック異常を検出した上で制御の受け入れを決定するようにしているので、NMOS IS-06相当の高度なアーキテクチャに対応しない機材を使用しても、トラフィック超過によるメディア伝送の破綻を回避することができる。
【0034】
なお、上記実施形態では、図4に示すステップS15で、第2受信処理部1342の受信処理結果からトラフィックの正常・異常を判断するようにしたが、レート監視部133のレート監視結果によって正常・異常を判断することも可能である。
【0035】
図8は、図1に示すメディア伝送システムの受信装置13において、レート監視によるトラフィック管理方法を示すフローチャートである。なお、図8において、図4と同一部分には同一符号を付して示し、ここでは重複する説明を省略する。
【0036】
図8において、第2受信処理部1342が経路2経由のメディアストリームを受信すると(ステップS14)、解析部136がレート監視部133のレート監視結果からオーバーレートか否かを判断する(ステップS26)。ここで、オーバーレートであれば、トラフィック異常となるので、放送制御器11へのメディア制御拒否を通知させる(ステップS16~S20)。また、オーバーレートでなければ、放送制御器11へメディア制御承諾を通知させる(ステップS21~S25)。
【0037】
なお、ステップS15またはS26で正常と判断された場合に、ステップS25の上位の放送制御器11へのメディア制御承諾の通知処理をステップS21~S24の経路1のメディア追加伝送処理と並列に行うようにしてもよい。さらに、上記実施形態では、受信装置を適用対象として説明したが、送信装置についても同様に適用可能である。
【0038】
その他、本発明は上記実施形態をそのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0039】
11…放送制御器(NMOS IS-04及びNMOS IS-05対応NMOS IS-04及びNMOS IS-05対応)、
12…送信装置(NMOS IS-04及びNMOS IS-05対応)、
13…受信装置(NMOS IS-04及びNMOS IS-05対応)、131…外部制御部、132…マルチキャスト制御部、133…レート監視部、136…解析部、135…冗長制御部、1341…第1受信処理部、1342…第2受信処理部、
142A,142B,143A,143B…ネットワークスイッチ、
15…メディアネットワーク。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8