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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016556
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ブリケットマシン
(51)【国際特許分類】
   B01J 2/22 20060101AFI20240131BHJP
   B30B 11/16 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
B01J2/22
B30B11/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118777
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】舘林 尭
(72)【発明者】
【氏名】下部 友亮
(72)【発明者】
【氏名】清家 佑介
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 博
【テーマコード(参考)】
4G004
【Fターム(参考)】
4G004MA02
(57)【要約】
【課題】設備の更新や設計変更を行うことなく、ブリケットロールの耐摩耗性を向上したブリケットマシンを提供する。
【解決手段】第1ロール10と第2ロール20との間で粉体を固形物に成型するブリケットマシンであって、第1ロール10の外周面には、第1ロール10の外周面に設けられた窪みである第1ポケット11と、第1ロール10の周方向に隣り合う第1ポケット11同士の間に位置する部分である第1バリ部12と、が第1回転軸O1の周方向に沿って交互に配置され、第2ロール20の外周面には、第2ロール20の外周面に設けられた窪みである第2ポケット21と、第2ロール20の周方向に隣り合う第2ポケット21同士の間に位置する部分である第2バリ部22と、が第2回転軸O2の周方向に沿って交互に配置され、第1ロール10と第2ロール20とが最も近接する領域において、第1バリ部12の全部又は一部が、第2ポケット21と対向する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1回転軸を中心に回転する第1ロールと、
前記第1回転軸と平行な第2回転軸を中心に回転する第2ロールと、
を備え、
前記第1ロールと前記第2ロールとの間で、粉体を固形物に成型するブリケットマシンであって、
前記第1ロールの外周面には、前記第1ロールの外周面に設けられた窪みである第1ポケットと、前記第1ロールの周方向に隣り合う前記第1ポケット同士の間に位置する部分である第1バリ部と、が前記第1回転軸の周方向に沿って交互に配置され、
前記第2ロールの外周面には、前記第2ロールの外周面に設けられた窪みである第2ポケットと、前記第2ロールの周方向に隣り合う前記第2ポケット同士の間に位置する部分である第2バリ部と、が前記第2回転軸の周方向に沿って交互に配置され、
前記第1ロールと前記第2ロールとが最も近接する領域において、前記第1バリ部の全部又は一部が、前記第2ポケットと対向する、
ブリケットマシン。
【請求項2】
前記第1回転軸を中心とした中心角であって、前記第1ポケットに対する前記第2ポケットのずれ角度を第1角度とし、
かつ、前記第1回転軸を中心とした中心角であって、前記第1ロールの全周のうち前記第1バリ部の1つが占める割合を第2角度としたときに、
前記第1角度は、前記第2角度の0.25倍を超えて2.5倍以下である、
請求項1に記載のブリケットマシン。
【請求項3】
前記粉体は石炭を含む、
請求項1又は2に記載のブリケットマシン。
【請求項4】
前記粉体は製鉄原料を含む、
請求項1又は2に記載のブリケットマシン。
【請求項5】
前記粉体はバイオマスを含む、
請求項1又は2に記載のブリケットマシン。
【請求項6】
前記粉体は鉄鋼スラグを含む、
請求項1又は2に記載のブリケットマシン。
【請求項7】
前記粉体は鉄鋼ダストを含む、
請求項1又は2に記載のブリケットマシン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリケットマシンに関する。
【背景技術】
【0002】
石炭、鉄鉱石、バイオマスなどからなる粉体を固形物に成型するために、ブリケットマシンが用いられることがある。
特許文献1では、粉体を成型するブリケットロールの耐摩耗性を向上するために、粉体と接する外層を高炭素系ハイス材としたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6678158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既存の工場設備に備えられたブリケットマシンにおいて、設備の更新や設計変更を行うことなく、ブリケットロールの耐摩耗性を向上することが求められている。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、設備の更新や設計変更を行うことなく、ブリケットロールの耐摩耗性を向上したブリケットマシンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<1>本発明の態様1に係るブリケットマシンは、第1回転軸を中心に回転する第1ロールと、前記第1回転軸と平行な第2回転軸を中心に回転する第2ロールと、を備え、前記第1ロールと前記第2ロールとの間で、粉体を固形物に成型するブリケットマシンであって、前記第1ロールの外周面には、前記第1ロールの外周面に設けられた窪みである第1ポケットと、前記第1ロールの周方向に隣り合う前記第1ポケット同士の間に位置する部分である第1バリ部と、が前記第1回転軸の周方向に沿って交互に配置され、前記第2ロールの外周面には、前記第2ロールの外周面に設けられた窪みである第2ポケットと、前記第2ロールの周方向に隣り合う前記第2ポケット同士の間に位置する部分である第2バリ部と、が前記第2回転軸の周方向に沿って交互に配置され、前記第1ロールと前記第2ロールとが最も近接する領域において、前記第1バリ部の全部又は一部が、前記第2ポケットと対向する。
【0007】
この発明によれば、第1ロールと第2ロールとが最も近接する領域において、第1バリ部の全部又は一部が、第2ポケットと対向する。つまり、第1ロールと第2ロールとが最も近接する領域において、第1バリ部と第2バリ部とは、完全には重ならない。これにより、第1バリ部と第2バリ部とが完全に重なることによって過大な粉圧が発生することを抑えることができる。よって、第1バリ部及び第2バリ部の摩耗を抑え、第1ロール及び第2ロールの寿命を長くすることができる。
上記態様は、既存の設備において、第1ロールと第2ロールとの角度を調整することのみによって実施することができる。したがって、新たな設計等は不要である。よって、設備を更新することなく、必要最小限の費用で、上述した作用効果を享受することができる。
【0008】
<2>本発明の態様2に係るブリケットマシンは、態様1に係るブリケットマシンにおいて、前記第1回転軸を中心とした中心角であって、前記第1ポケットに対する前記第2ポケットのずれ角度を第1角度とし、かつ、前記第1回転軸を中心とした中心角であって、前記第1ロールの全周のうち前記第1バリ部の1つが占める割合を第2角度としたときに、前記第1角度は、前記第2角度の0.25倍を超えて2.5倍以下である。
【0009】
この発明によれば、第1角度は、第2角度の0.25倍を超えて2.5倍以下である。これにより、第1ロール及び第2ロールの摩耗を十分に抑えることができる。粉体の成型性も十分に担保することができる。
【0010】
<3>本発明の態様3に係るブリケットマシンは、態様1又は態様2に係るブリケットマシンにおいて、前記粉体は石炭を含む。
【0011】
この発明によれば、粉体は石炭を含む。よって、粉体状の石炭を固形化することに寄与することができる。
【0012】
<4>本発明の態様4に係るブリケットマシンは、態様1又は態様2に係るブリケットマシンにおいて、前記粉体は製鉄原料を含む。
【0013】
この発明によれば、粉体は製鉄原料を含む。よって、粉体状の製鉄原料を固形化することに寄与することができる。
【0014】
<5>本発明の態様5に係るブリケットマシンは、態様1又は態様2に係るブリケットマシンにおいて、前記粉体はバイオマスを含む。
【0015】
この発明によれば、粉体はバイオマスを含む。よって、粉体状のバイオマスを固形化することに寄与することができる。
【0016】
<6>本発明の態様6に係るブリケットマシンは、態様1又は態様2に係るブリケットマシンにおいて、前記粉体は鉄鋼スラグを含む。
【0017】
この発明によれば、粉体は鉄鋼スラグを含む。よって、粉体状の鉄鋼スラグを固形化することに寄与することができる。
【0018】
<7>本発明の態様7に係るブリケットマシンは、態様1又は態様2に係るブリケットマシンにおいて、前記粉体は鉄鋼ダストを含む。
【0019】
この発明によれば、粉体は鉄鋼ダストを含む。よって、粉体状の鉄鋼ダストを固形化することに寄与することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、設備の更新や設計変更を行うことなく、ブリケットロールの耐摩耗性を向上したブリケットマシンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係るブリケットマシンの斜視図である。
図2】第1ロール及び第2ロールの正面図である。
図3図2のIII部の拡大図である。
図4】第1ロール及び第2ロールの外周面の展開図である。
図5図4に示す展開図において、第1ロール及び第2ロールが回転を開始した時点の状態を示す図である。
図6図4に示す展開図において、第1ロール及び第2ロールが1/2周期だけ回転した時点の状態を示す図である。
図7図4に示す展開図において、第1ロール及び第2ロールが一周期だけ回転した時点の状態を示す図である。
図8】第1ロール及び第2ロールに接している粉体の粉圧の、第1ロール及び第2ロールの回転に伴う粉圧の変化の解析結果である。
図9】第1ロール及び第2ロールに接していない粉体の粉圧の、第1ロール及び第2ロールの回転に伴う粉圧の変化の解析結果である。
図10】第1ロール及び第2ロールに接している粉体の粉圧の、一周期の最大値及び平均値である。
図11】第1ロール及び第2ロールに接していない粉体の粉圧の、一周期の最大値及び平均値である。
図12】粉圧の平均値と、第1角度と第2角度との比と、の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(ブリケットマシン100の概要)
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係るブリケットマシン100を説明する。ブリケットマシン100は、後述する第1ロール10と第2ロール20との間で、粉体Pを固形物に成型する。粉体Pは、例えば、石炭、製鉄原料、バイオマス、鉄鋼スラグ、鉄鋼ダストなどである。
図1に示すように、ブリケットマシン100は、第1ロール10と、第2ロール20と、ホッパ30と、を備える。
【0023】
第1ロール10は、第1回転軸O1を中心に回転する。第1ロール10の外周面には、図2に示すように、第1ポケット11と、第1バリ部12とが、第1回転軸O1の周方向に沿って交互に配置される。第1ポケット11は、第1ロール10の外周面に設けられた窪みである。第1バリ部12は、第1ロール10の周方向に隣り合う第1ポケット11同士の間に位置する部分である。
【0024】
第2ロール20は、第1回転軸O1と平行な第2回転軸O2を中心に回転する。第2ロール20の外周面には、図2に示すように、第2ポケット21と、第2バリ部22とが、第2回転軸O2の周方向に沿って交互に配置される。第2ポケット21は、第2ロール20の外周面に設けられた窪みである。第2バリ部22は、第2ロール20の周方向に隣り合う第2ポケット21同士の間に位置する部分である。
【0025】
本実施形態において、第1ロール10と第2ロール20との形状及び大きさは、例えば、同じである。具体的には、第1ロール10及び第2ロール20の直径は同じである。第1ポケット11及び第2ポケット21の直径は同じである。第1ポケット11及び第2ポケット21の深さは同じである。第1バリ部12の第1ロール10の周方向の長さと、第2バリ部22の第2ロール20の周方向の長さとは同じである。
【0026】
本実施形態において、第1ロール10及び第2ロール20の直径は、224mmである。第1ポケット11及び第2ポケット21の外縁部の直径は、36mmである。第1ポケット11及び第2ポケット21の深さは、7mmである。第1バリ部12及び第2バリ部22の、第1ロール10又は第2ロール20の周方向の長さは、4mmである。第1ロール10と第2ロール20との間の距離は、1mmである。
ホッパ30は、固形物に成型する前の粉体Pを貯蔵する部位である。ホッパ30は、第1ロール10及び第2ロール20の上に配置される。ホッパ30は、第1ロール10と第2ロール20との間に粉体Pを供給する。
【0027】
(ブリケットマシン100による粉体Pの成型について)
ブリケットマシン100は、ホッパ30から第1ロール10と第2ロール20との間に供給された粉体Pを、最接近部Aを通過する際に圧縮する。最接近部Aとは、図3に示すように、第1ロール10と第2ロール20とが最も近接する領域をいう。具体的には、最接近部Aは、第1ロール10と第2ロール20とが最も近接する点を基準として、上下方向にそれぞれ、第1バリ部12の第1ロール10の周方向の寸法に相当する幅を有する領域をいう。最接近部Aは、第1ロール10と第2ロール20とが最も近接する点を基準として、上下方向にそれぞれ、第2バリ部22の第2ロール20の周方向の寸法に相当する幅を有する領域としてもよい。これにより、粉体Pは固形物に成型される。具体的には、以下の通りとなる。
【0028】
上述のように配置された第1ロール10及び第2ロール20は、次のように回転する。すなわち、第1ロール10及び第2ロール20の上側に位置する第1ポケット11及び第2ポケット21が、互いに接近するように回転する。これにより、ホッパ30から供給される粉体Pは、第1ロール10と第2ロール20との間に巻き込まれるように移動する。
【0029】
第1ロール10と第2ロール20との間に供給された粉体Pは、第1ポケット11と第2ポケット21との間に移動する。粉体Pは、第1ロール10と第2ロール20との間を通過する際、第1ポケット11と第2ポケット21とが互いに対向することで形成される空間に移動する。このとき、第1ポケット11の底と第2ポケット21の底とが、第1ロール10及び第2ロール20の回転に伴って接近する。このとき、第1ポケット11と第2ポケット21との間で粉体Pが圧縮される。この圧縮力によって、粉体Pが固形物に成型される。
【0030】
(第1ロール10と第2ロール20との位置関係について)
粉体Pが第1ロール10と第2ロール20との間を通過する際、第1ポケット11と第2ポケット21とが互いに対向することで形成される空間に移動せず、第1バリ部12と第2バリ部22との間を通過することがある。このとき、粉体Pを媒介して第1ロール10と第2ロール20に付加される圧力(以下、粉圧)が第1バリ部12及び第2バリ部22に集中することによって、第1バリ部12及び第2バリ部22が摩耗することがある。これを抑えるために、第1ロール10と第2ロール20とは、次のような位置関係で配置される。
【0031】
すなわち、最接近部Aにおいて、第1バリ部12の全部又は一部が、第2ポケット21と対向する。言い換えれば、図3に示すように、最接近部Aにおいて、第1バリ部12と第2バリ部22とは、完全には重ならない。このような配置とすることで、第1バリ部12と第2バリ部22とが完全に重なることを原因とする過大な粉圧の発生を抑える。
【0032】
本実施形態において、第1バリ部12と第2バリ部22とのずれ量は、第1角度θgと第2角度θbとの比によって定義される。第1角度θgは、図3に示すように、第1回転軸O1を中心とした中心角であって、第1ポケット11に対する第2ポケット21のずれ角度である。第1角度θgは、図4に示すように、第1ロール10及び第2ロール20の外周面を展開図で示した時、第1ポケット11と第2ポケット21との周方向のずれとして示される。第2角度θbは、図3に示すように、第1回転軸O1を中心とした中心角であって、第1ロール10の全周のうち第1バリ部12の1つが占める割合である。
【0033】
このとき、第1角度θgは、第2角度θbの0.25倍以上2.5倍以下であることが好ましく、1倍以上1.5倍以下であることがより好ましい。すなわち、θg/θbの値は、0.25以上2.5以下であることが好ましく、1以上1.5以下であることがより好ましい。このような配置とすることで、第1バリ部12と第2バリ部22との間に過大な粉圧が発生することを抑えるとともに、固形物に成型性を担保する。
【0034】
(第1角度と第2角度との関係性の検証)
第1角度と第2角度との関係性を検証するため、第1角度θgと第2角度θbとの比の条件を変更した際の粉圧の変化について、以下の試験及び解析を実施した。本試験は、ブリケットマシン100の実機において第1角度θgと第2角度θbとの比を変更し、粉圧を測定したものである。また、粉圧を測定したブリケットマシン100をシミュレーション上で再現し、解析を実施した。
【0035】
ブリケットマシン100の実機における測定結果について説明する。表1は、ブリケットマシン100において、第1角度θgと第2角度θbとの比と、成型される固形物の成型率(%)及び線圧(N/cm)の関係の実測値を示すものである。ここで、成型率は、ブリケットマシン100の直下で採取した固形物の10mm篩上分率である。10mm篩上分率とは、目開き10mmの篩で固形物試料を篩分けしたときに、篩上に残った質量の、試料全体の質量に対する百分率である。線圧は、第1ロール10と第2ロール20との間において、第1回転軸O1又は第2回転軸O2に沿う方向において1cmあたりに付加される粉圧の大きさをいう。
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示すように、θg/θbの値が0である場合、すなわち、第1角度θgが0であり、最接近部Aにおいて、第1バリ部12と第2バリ部22とが完全に重なっている場合、成型率は90.6%であり、線圧は3083N/cmである。θg/θbの値が1である場合、すなわち、第1角度θgと第2角度θbとが等しく、最接近部Aにおいて、第1バリ部12と第2バリ部22とが完全に離れている場合、成型率は91.9%であり、線圧は1973N/cmである。
【0038】
このように、第1バリ部12と第2バリ部22とが重ならない場合は、第1バリ部12と第2バリ部22とが重なっている場合と比較して、線圧が大幅に減少している。これに対し、成型率は大きな変化がない。この結果によって、第1バリ部12と第2バリ部22とが重ならないようにすることによって、粉圧を減少させ、第1ロール10及び第2ロール20の耐摩耗性を向上することができることが確認された。
【0039】
次に、粉圧と、第1ロール10及び第2ロール20の角度と、の関係について、第1角度θgと第2角度θbの比の条件を分けて解析を行った結果について説明する。なお、粉圧は、図4に示す第1領域A1において付加されるものとして、DEM(個別要素法)による解析によって求めたものである。解析に用いた条件は、以下の通りである。
【0040】
図4に示すように、第1回転軸O1を中心とした中心角であって、第1ロール10の全周のうち、第1ポケット11のうちの1つの中心である第1ポケット第1中心11C1から、前記1つの隣に位置する第1ポケット11の中心である第1ポケット第2中心11C2までが占める割合を、ポケット間隔θpとする。
【0041】
上述したように、本実施形態において、第1ロール10と第2ロール20の形状及び大きさは同じである。このため、第2回転軸O2を中心とした中心角であって、第2ロール20の全周のうち、第2ポケット21のうちの1つの中心である第2ポケット第1中心21C1から、前記1つの隣に位置する第2ポケット21の中心である第2ポケット第2中心21C2までが占める割合も、同様にポケット間隔θpとする。
【0042】
第1ロール10及び第2ロール20は、図5図6図7に示す回転方向Dに沿って、等しい角速度で回転するものとする。本解析において、角速度は、30°/sとした。
第1ロール10及び第2ロール20が、ポケット間隔θpだけ回転する時間を、一周期時間Tとする。具体的には、一周期時間Tとは、第1ポケット第1中心11C1が最接近部Aを通過してから、第1ポケット第2中心11C2が最接近部Aを通過するまでの時間である。これに対し、最接近部Aを第1ポケット第1中心11C1が通過してからの経過時間を、回転時間tとする。これにより、回転時間tと一周期時間Tとの関係と、第1ロール10及び第2ロール20の位置の関係は、次のようになる。
【0043】
t/Tの値が0のとき、すなわち、最接近部Aを第1ポケット第1中心11C1が通過した直後の状態である時、図5に示すように、第1ポケット第1中心11C1と最接近部Aとが接している。t/Tの値が0.5のとき、すなわち、第1ロール10がポケット間隔θpの半分だけ回転した時、図6に示すように、第1バリ部12と最接近部Aとが接している。t/Tの値が1のとき、すなわち、第1ロール10がポケット間隔θpだけ回転した時、図7に示すように、第1ポケット第2中心11C2と最接近部Aとが接している。
【0044】
第1領域A1の詳細は、次の通りである。すなわち、第1ロール10及び第2ロール20が上述した大きさであるとして、周長Ad1が3mm、軸長Ad2が30mm、厚さが15mmの直方体からなる領域である。周長Ad1とは、第1領域A1の、第1ロール10又は第2ロール20の周方向の寸法である。軸長Ad2とは、第1領域A1の、第1回転軸O1又は第2回転軸O2に沿う方向の寸法である。厚さとは、周長及び軸長に直交する方向、すなわち、第1ロール10又は第2ロール20の径方向の寸法である。
【0045】
第1領域A1の周長Ad1の中央は、最接近部Aに位置するものとする。第1バリ部12又は第2バリ部22は、周長Ad1の範囲内に完全に収まるものとする。つまり、第1ロール10の周方向に隣り合う第1ポケット11同士の間の寸法、及び、第2ロール20の周方向に隣り合う第2ポケット21同士の間の寸法は、周長Ad1の長さ未満であるものとする。
【0046】
図8及び図9は、縦軸を粉圧(N)、横軸をt/Tとするグラフである。ここで粉圧は、第1領域A1の中に存在する粉体が受ける力の大きさによって算出した。すなわち、第1領域A1の内側に中心の座標が位置する粒子と、その粒子に接触する別の粒子又は第1ロール10若しくは第2ロール20との接触点において作用する力の大きさの平均値を、粉圧として算出した。図8は、粉体Pのうち、特に第1ロール10及び第2ロール20に触れる位置にあるものの粉圧の変化をプロットしたものである。図8に示す粉圧の変化は、第1ロール10及び第2ロール20の摩耗に寄与するものである。図9は、粉体Pのうち、特に第1ロール10及び第2ロール20に触れない位置にあるものの粉圧の変化をプロットしたものである。図9に示す粉圧の変化は、粉体Pの成型性に寄与するものである。
【0047】
前述のとおり、図8に示す粉圧の変化は、第1ロール10及び第2ロール20の摩耗に寄与するものである。θg/θbが0~0.25であるとき、t/Tの値が0.2付近において粉圧が顕著に上昇している。θg/θbが0.76であるとき、t/Tの値が0.2付近において粉圧の上昇はあるがその程度は小さい。θg/θbの値が1.01~1.51であるとき、粉圧の上昇はさらに抑制される。θg/θbの値が2.01~3.78であるときは、横軸全体を通して、全体的に粉圧が低い結果となる。この結果によれば、θg/θbの値を1.01以上とすることで、第1ロール10及び第2ロール20が摩耗する原因となる過大な粉圧の発生を抑えることができることがわかる。
【0048】
前述のとおり、図9に示す粉圧の変化は、粉体Pの成型性に寄与するものである。θg/θbの値が2.52~3.78であるときは、横軸全体を通して、全体的に粉圧が低い結果となる。この結果によれば、θg/θbの値を2.52未満とすることで、成型性に寄与する粉圧の低減を抑え、ブリケットの著しい強度低下を抑えることができることがわかる。
【0049】
図10は、図8に示す結果に基づき、縦軸を粉圧、横軸をθg/θbとしたグラフである。図10は、図8の結果に基づき、t/Tの値が0~1の範囲のうちの最大値と平均値とをプロットしたものである。θg/θbの値が1.01以上では、粉圧の最大値及び平均値の変化が緩やかとなることがわかる。
【0050】
図12は、図9に示す結果に基づき、縦軸を粉圧、横軸をθg/θbとして、t/Tの値が0.4~0.8の範囲における粉圧の平均値を算出したものである。図12においては、粉圧の最大値及び最小値を除外して、平均値を算出した。
このとき、θg/θbの値が2.52以上では、粉圧の値が低下する。これにより、θg/θbの値が2.52以上では、粉体Pの固形物への成型性が悪化する懸念があることがわかる。
以上のように、θg/θbの値が0.25を超えると、第1ロール10及び第2ロール20が摩耗する原因となる過大な粉圧の発生が抑制でき、特にθg/θbの値が1.01以上では顕著に紛圧を抑えることができることがわかる。
【0051】
上述の考察結果をまとめたものを、表2に示す。表2は、図12に基づき、θg/θbの値に対する粉圧の最大値及び平均値をまとめたものである。なお、表2に示す△の評価は、過大な粉圧の抑制の効果が得られないか、粉体Pの固形物への成型性が悪化した場合を示すものである。〇の評価は、粉圧の抑制が見られ、かつ、成型性の悪化がみられない場合を示す。◎の評価は、粉圧の抑制が顕著に見られ、かつ、成型性の悪化がみられない場合を示す。
【0052】
【表2】
【0053】
表2に示すように、θg/θbの値は、0.25を超えて2.5以下であることが好ましく、概ね1以上1.5以下であることがより好ましい。すなわち、上述したように、第1角度θgは、第2角度θbの0.25倍を超えて2.5倍以下であることが好ましく、1倍以上1.5倍以下であることがより好ましいことが確認された。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係るブリケットマシン100によれば、第1ロール10と第2ロール20とが最も近接する領域において、第1バリ部12の全部又は一部が、第2ポケット21と対向する。つまり、第1ロール10と第2ロール20とが最も近接する領域において、第1バリ部12と第2バリ部22とは、完全には重ならない。これにより、第1バリ部12と第2バリ部22とが完全に重なることによって過大な粉圧が発生することを抑えることができる。よって、第1バリ部12及び第2バリ部22の摩耗を抑え、第1ロール10及び第2ロール20の寿命を長くすることができる。
上記態様は、既存の設備において、第1ロール10と第2ロール20との角度を調整することのみによって実施することができる。したがって、新たな設計等は不要である。よって、設備を更新することなく、必要最小限の費用で、上述した作用効果を享受することができる。
【0055】
また、第1角度θgは、第2角度θbの0.25倍を超えて2.5倍以下である。これにより、第1ロール10及び第2ロール20の摩耗を十分に抑えることができる。粉体Pの成型性も十分に担保することができる。
【0056】
また、粉体Pは石炭を含む。よって、粉体状の石炭を固形化することに寄与することができる。
【0057】
また、粉体Pは製鉄原料を含む。よって、粉体状の製鉄原料を固形化することに寄与することができる。
【0058】
また、粉体Pはバイオマスを含む。よって、粉体状のバイオマスを固形化することに寄与することができる。
【0059】
また、粉体Pは鉄鋼スラグを含む。よって、粉体状の鉄鋼スラグを固形化することに寄与することができる。
【0060】
また、粉体Pは鉄鋼ダストを含む。よって、粉体状の鉄鋼ダストを固形化することに寄与することができる。
【0061】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、第1ロール10及び第2ロール20の直径は、224mmであると説明したがこれに限らない。第1ロール10及び第2ロール20の直径は、224mm未満であってもよいし、224mm超であってもよい。最接近部Aの周長Ad1を3mmとして説明したが、第1ロール10及び第2ロール20の直径に合わせて別途定義してもよい。
第1ロール10と第2ロール20との形状及び大きさは同じであると説明したが、例えば、粉体Pの固形化をすることができれば、第1ロール10と第2ロール20との形状及び大きさはそれぞれ任意の形状及び大きさであってもよい。
【0062】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0063】
10 第1ロール
11 第1ポケット
12 第1バリ部
20 第2ロール
21 第2ポケット
22 第2バリ部
100 ブリケットマシン
O1 第1回転軸
O2 第2回転軸
P 粉体
θb 第2角度
θg 第1角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12