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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165565
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】覆工板および覆工板支持構造
(51)【国際特許分類】
   E01C 9/08 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
E01C9/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081850
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000133294
【氏名又は名称】株式会社ダイクレ
(71)【出願人】
【識別番号】390007607
【氏名又は名称】大鉄工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100140338
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓之
(72)【発明者】
【氏名】山本 渓太
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 靖
(72)【発明者】
【氏名】柴原 豊和
(72)【発明者】
【氏名】清水 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】田中 信介
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AF12
2D051AG11
2D051DA12
2D051DA16
2D051DB11
2D051DB15
(57)【要約】
【課題】覆工板を固定したり固定解除したりする作業時間を短くする。
【解決手段】覆工板10は、上板11および下板12を有し長手方向および幅方向に広がる板本体と、板本体を支持材21に分離可能に固定するロック手段とを備える。ロック手段は、下板12に設けられる面ファスナ14を含み、面ファスナ14は支持材21の上面に設けられる面ファスナ22に剥離可能に貼着される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面を有し、長手方向および幅方向に広がる板本体と、
前記板本体を支える支持材に、前記板本体を分離可能に固定するロック手段とを備え、
前記ロック手段は、
前記下面に設けられる本体面ファスナを含み、前記本体面ファスナは前記支持材の上面に設けられる相手面ファスナに剥離可能に貼着される第1ロック手段、および/または、
前記上面に形成される操作穴、および前記操作穴の穴底に設けられる係合部材を含み、前記係合部材は前記操作穴から操作されて、前記板本体から前記長手方向または前記幅方向に突出して前記支持材に係合する係合位置と、前記支持材に係合しない非係合位置とに選択的にされる第2ロック手段を含む、覆工板。
【請求項2】
前記板本体が前記支持材に固定されていることを表示するインジケータをさらに備え、
前記インジケータは、
前記第1ロック手段にあっては、前記板本体に形成されて板厚方向に貫通する貫通孔と、前記貫通孔内を進退動するピンとを有し、前記面ファスナ同士の貼着される場合に前記ピンの下端が前記支持材に当接して前記ピンの上端が前記上面に接近し、貼着されない場合に前記ピンが下降して前記ピンの上端が前記上面から下方へ沈み込むよう構成され、
前記第2ロック手段にあっては、前記係合部材に連動する指標を有する、請求項1に記載の覆工板。
【請求項3】
請求項1に記載の覆工板および支持材を含み、
前記支持材は、上側の前記覆工板と下側の受け材との間に介在して前記覆工板を支持する支持板と、上側を頭部とし下側を軸部として前記軸部が前記支持板に設けられる雌ネジ孔と螺合するとともに前記軸部の先端が前記受け材に接触する高さ調整ボルトとを有する、覆工板支持構造。
【請求項4】
請求項1に記載の覆工板および支持材を含み、
前記支持材は、上側の前記覆工板と下側の受け材との間に介在して前記覆工板を支持する支持板と、上側を頭部とし下側を軸部として前記軸部が前記支持板に形成される貫通孔を貫通するとともに前記軸部の先端部分が受け材に設けられる雌ネジ孔に螺合するボルトとを有する、覆工板支持構造。
【請求項5】
前記覆工板の前記上面には、板厚方向に延びて前記高さ調整ボルトまたは前記ボルトの前記頭部と整列する高さ調整用貫通孔が形成される、請求項3または4に記載の覆工板支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足元の開口を覆う覆工板に関する。
【背景技術】
【0002】
工事現場で使用される覆工板として従来、例えば特許第4880797号公報(特許文献1)および特許第7019660号公報(特許文献2)に記載のものが知られている。特許文献1に記載の覆工板は、駅のプラットホーム改修工事に利用され、等間隔に配列される受部材の上に敷き並べられ、クランパーのネジ止めによって受部材に固定される。特許文献2に記載の覆工板は、掘削工事、地下鉄工事、下水工事等の現場に使用され、凸状の位置決め部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4880797号公報
【特許文献2】特許第7019660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来のような覆工板にあっては、以下に説明するような問題を生ずる。つまり、駅のプラットホーム等は、毎日早朝から晩まで覆工板に覆われて、人の乗降や通行を可能にする。そして一日の残り時間、つまり深夜の数時間のみ、覆工板は受部材から取り外され、プラットホームの改修工事が実施される。
【0005】
特許文献1に記載されるネジ止めでは、1回の工事に伴い、工事着手前にネジ緩めによる覆工板の固定解除作業と、工事終了後のネジ締めによる覆工板の固定作業が必須になる。覆工板は多数あり、ネジ緩め作業およびネジ締め作業には時間を要する。多数の小さなネジを回す作業は、効率が悪いため、改善が望まれる。プラットホーム等の改修工事のための手持ち時間は深夜の数時間のみに限定されているので、工事着手前のネジ緩め作業および工事終了後のネジ締め作業に要する時間は、極力短い方が望ましい。地下鉄駅の改修工事や高架駅への移設工事等、都市土木工事では、工期が数千日の長期間に亘ることが多いので尚更である。
【0006】
特許文献2に記載される覆工板は、覆工板同士をネジ止めするため、上述したようにネジ緩め作業およびネジ締め作業には時間を要し、作業の改善が望まれる。また覆工板は受部材に何ら固定されてないため、人の通行中に覆工板が浮き上がったり跳ね返って来たりする可能性があり、躓きや転倒による怪我の危険がある。
【0007】
本発明は、上述の実情に鑑み、覆工板を従来よりもスピーディーに固定および固定解除することができる構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため本発明による覆工板は、上面および下面を有し、長手方向および幅方向に広がる板本体と、板本体を支える支持材に、板本体を分離可能に固定するロック手段とを備える。そしてロック手段は、覆工板の下面に設けられる本体面ファスナを含み、本体面ファスナは支持材の上面に設けられる相手面ファスナに剥離可能に貼着される第1ロック手段を含む。および/またはロック手段は、覆工板の上面に形成される操作穴、および操作穴の穴底に設けられる係合部材を含み、係合部材は操作穴から操作されて、板本体から長手方向または幅方向に突出して支持材に係合する係合位置と、支持材に係合しない非係合位置とに選択的にされる第2ロック手段を含む。
【0009】
かかる本発明によれば係合部材を操作することにより、短時間で覆工板を支持材に固定することができる。あるいは、覆工板の上面を押し下げることにより面ファスナ同士が充分に貼着するので、短時間で覆工板を支持材に固定することができる。なお、係合部材の形状および動きは特に限定されない。係合部材は例えば、操作穴を中心として揺動するレバーであり、支持材側の被係合部材は、レバーを受け入れる溝である。あるいは係合部材は、非係合位置で板本体の内部に収容され、係合位置で板本体の縁から突出するよう併進運動するよう構成されてもよい。
【0010】
ところで特許文献1に記載のクランパーは、ネジ止めに覆工板の下面板を把持して受部材に固定するところ、ネジが十分なトルクで締め込まれているかどうか目視で確認することはできない。またクランパーは覆工板の上面板に覆われており、覆工板の上を通行する人からクランパーによる固定が確実に行われているか確認することができない。そこで本発明の一局面として、板本体が支持材に固定されていることを表示するインジケータをさらに備え、インジケータは、第1ロック手段にあっては、板本体に形成されて板厚方向に貫通する貫通孔と、貫通孔内を進退動するピンとを有し、面ファスナ同士の貼着される場合にピンの下端が支持材に当接してピンの上端が前記上面に接近し、貼着されない場合にピンが下降してピンの上端が上面から下方へ沈み込むよう構成される。またインジケータは、第2ロック手段にあっては、係合部材に連動する指標を有する。かかる局面によれば、目視で覆工板の固定を容易に確認することができる。
【0011】
ところで特許文献に記載の覆工板は、H形鋼を横倒しした水平な受部材の上に直接載置される。一方で、覆工板に水勾配を設ける等、高さ調整が要求される場合がある。しかしながら特許文献に記載の構造は、覆工板の高さ調整機能を有していない。そこで本発明の覆工板の支持構造は、覆工板および支持材を含み、支持材は上側の覆工板と下側の受け材との間に介在して覆工板を支持する支持板と、上側を頭部とし下側を軸部として軸部が支持板に設けられる雌ネジ孔と螺合するとともに前記軸部の先端が受け材に接触する高さ調整ボルトとを有する。かかる局面によれば、高さ調整ボルトの頭部を回動させることにより、覆工板の微細な高さ調整が可能になる。また高さ調整を一度済ませておけば、支持板の高さは変化しないので、それ以降の高さ調整は必要ない。好ましい局面として、1枚の支持板には複数の高さ調整ボルトが設けられるとよい。
【0012】
支持材は受け材に固定されるとよく、支持材を受け材に固定する手段は特に限定されない。本発明の覆工板支持構造は、覆工板および支持材を含み、支持材は、上側の覆工板と下側の受け材との間に介在して覆工板を支持する支持板と、上側を頭部とし下側を軸部として軸部が支持板に形成される貫通孔を貫通するとともに軸部の先端部分が受け材に設けられる雌ネジ孔に螺合するボルトとを有する。かかる局面によれば支持材はボルトで受け材に固定される。好ましい局面として、1枚の支持板には複数のボルトが設けられるとよい。ここでボルトは高さ調整ボルトを兼用するものであってもよい。
【0013】
本発明の一局面として覆工板の上面には、板厚方向に延びて高さ調整ボルト等の頭部と整列する高さ調整用貫通孔が形成される。かかる局面によれば、覆工板を支持材の上に敷設して固定した状態で、覆工板の上から高さ調整用貫通孔にアクセスして、覆工板の微細な高さ調整が可能になる。
【発明の効果】
【0014】
このように本発明によれば、面ファスナおよび/または係合部材によって覆工板のスピーディーな固定および固定解除が実現する。したがって覆工板の取り外しおよび取り付けの作業時間が短縮され、本来の改修工事の時間を長時間確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態を示す平面図である。
図2】第1実施形態のロック手段(第1ロック手段)を示す側面図である。
図3】第1実施形態の支持構造を示す断面図である。
図4】第1ロック手段のインジケータを示す側面図であって、(a)は非固定状態を表し、(b)は固定状態を表す。
図5】第1実施形態の支持構造を示す断面図であって、(a)が支持されていない覆工板を表し、(b)が支持された覆工板を表す。
図6】本発明の第2実施形態を示す平面図である。
図7】第2実施形態の支持構造を示す断面図である。
図8】(a)は第2実施形態のロック機構(第2ロック手段)を示す平面図であり、(b)は対応する断面図である。
図9】(a)は第2実施形態のロック機構(第2ロック手段)を示す平面図であり、(b)は対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態になる覆工板を示す平面図である。図2は、第1実施形態のロック手段(第1ロック手段)を示す側面図であり、図1中の構造を矢IIで示すように覆工板の幅方向にみた状態を表す。図3は、第1実施形態の支持構造を示す断面図であり、図1中の構造を仮想平面III-IIIで切断し、切断面を矢の方向にみた状態を表す。ここで仮想平面とは覆工板の長手方向に直角な平面をいい、矢の方向とは覆工板の長手方向をいう。
【0017】
覆工板10は受け材100,100間に架設される。受け材100は例えば図2に示すように横倒しのH形鋼であって、上側フランジ101と、下側フランジ102と、ウェブ103を含む。受け材100が3本以上平行に延びる場合にあっては、図1に仮想線で示すように受け材100の複数の間隔毎に敷設される。隣り合う2本の受け材100,100の間隔を覆工板10の長手方向として、覆工板10は幅方向にも隙間なく敷設され、図1には幅方向に2枚の覆工板10が例示される。本実施形態の覆工板10は同形同大の矩形である。
【0018】
図3に示すように覆工板10は、上板11と、下板12と、複数の壁13,13・・・を有する。上板11の上面は、目荒し加工されたり、ゴム膜を形成されたり等、摩擦係数を高くされる。各壁13は、上板11および下板12と一体結合し、覆工板10の長手方向に延びる。また図1に示すように複数の壁13,13・・・は、覆工板10の幅方向に等しく間隔を空けて配置される。このため隣り合う壁13,13間は空洞になっている。覆工板10は繊維強化プラスチック(FRP)等の高分子材料製であり、鋼製よりも軽量であることから軽量覆工板とも呼ばれる。上板11、下板12,および壁13を覆工板10の板本体とする。覆工板10には板本体の他に、後述する第1ロック手段、第2ロック手段、インジケータ、高さ位置調整構造、等が設けられる。覆工板10は、下方から支持材21に支持される。支持材21の長さは、覆工板10の幅方向寸法と略同じである。
【0019】
図2を参照して支持材21は、受け材100の上側フランジ101と略同じ幅の板である。下板12の下面には面ファスナ14が設けられる。支持材21の上面には面ファスナ22が設けられる。一方の面ファスナ14は覆工板10の板本体に固定されることから本体面ファスナともいう。他方の面ファスナ22は相手面ファスナともいい、支持材21に固定される。覆工板10は、面ファスナ14,22同士の貼着によって、支持材21に固定される。面ファスナ14は下板12の下面に設けられる下向きの無数の突起であり、面ファスナ22は支持材21に設けられる上向きの無数の突起である。図2(a)で示すように面ファスナ14,22同士を対面させて矢で示すように下向きの外力Fを覆工板10に付与すると、図2(b)で示すように面ファスナ14,22の突起同士が係合し、覆工板10は支持材21に固定される。次に、外力Fと反対向き(上向き)の力を覆工板10に付与すると、面ファスナ14,22の突起同士の係合が解除されて図2(a)に戻り、覆工板10は支持材21から分離される。このように面ファスナ14,22の対を繰り返し貼着・剥離することによって、覆工板10の固定と固定解除が実現する。以下、面ファスナ14,22の対を覆工板10の第1ロック手段ともいう。
【0020】
支持材21は受け材100の上に敷設されて、上方の覆工板10と下方の受け材100との間に介在する。支持材21および受け材100は、覆工板10を支持する支持部材という点で共通するが、本実施形態では別々な部材であり、受け材100からみて支持材21は高さ位置を調整可能である。高さ位置の調整については後で詳細に説明する。支持材21は平坦な板材である。なお図示しない変形例として、支持材21は板以外の形状であってもよい。また支持材21は、後述する高さ調整ボルトと一体であってもよいし、受け材100と一体であってもよい。
【0021】
覆工板10と支持材21との間には緩衝材23が介在する。緩衝材23は、例えばゴム板等、覆工板10よりも柔らかい材料製であり、例えば覆工板10の四方の角部に配置される。第1実施形態の緩衝材23は、覆工板10の下板12の下面に取り付けられる。緩衝材23は、覆工板10が支持材21に衝突することを緩和する。また緩衝材23は、覆工板10と支持材21との間に面ファスナ14,22が介在するための適切な隙間幅を確保する。なお緩衝材23の設置を省略する場合であっても 、面ファスナ14,22が覆工板10と支持材21との間に介在するので、覆工板10の下面と支持材21の上面との間に隙間が生じる。
【0022】
第1実施形態によれば、図4に示すように支持材21の上に覆工板10を敷き並べ、覆工板10よりも上方にいる作業者が自分の体重等の下向きの外力Fを覆工板10に付与するのみで、容易かつ迅速に覆工板10を固定することができる。したがって支持材21が配列される工事現場において、工事終了後に覆工板10を速やかに敷設・固定することができる。覆工板10の固定を解除する場合、覆工板10よりも上方にいる作業者が支持材21と覆工板10の隙間に工具(図略)を差し込み、覆工板10を持ち上げて支持材21から分離することができる。したがって工事着手前に覆工板10を速やかに撤去することができる。そして覆工板10の取り外しおよび取り付けの作業時間が短縮され、本来の改修工事の時間を長時間確保することができる。
【0023】
次に、覆工板10の固定状態を表示するインジケータにつき説明する。図1を参照して、覆工板10の長手方向端部には、インジケータとしてのピン26が設けられる。図3に示すように、上板11および下板12にはそれぞれ、貫通孔24および貫通孔25が整列して形成される。ピン26は貫通孔24、25を貫通するように真っ直ぐ延び、上下方向に進退動可能である。ピン26は自重によって下方へ付勢される。そしてピン26の下端が下方の支持材21に当接する。
【0024】
ピン26の外周面には、上側リブ26bおよび下側リブ26cが設けられる。上側リブ26bは貫通孔24に当接し、ピン26の上方への移動を規制する。下側リブ26cは貫通孔25に当接し、ピン26の下方への移動を規制する。図4に矢で示すように上側リブ26bおよび下側リブ26cの間隔は、上板11および下板12の間隔よりも狭い。これによりピン26は、覆工板10の板本体に対して上下方向に相対移動可能である。
【0025】
図4はインジケータの各状態を表す断面図であり、図4(a)は覆工板10が支持材から離れた非固定状態を表し、図4(b)は覆工板10が支持材に固定された固定状態を表す。面ファスナ14,22同士の貼着が充分であるとき、図4(b)に表されるように覆工板10は支持材21に充分近接する。この場合、ピン26の上端は上板11の上面と面一になる。これに対し図4(a)に表されるように面ファスナ14,22同士が貼着されないか貼着が不充分であるとき、覆工板10は浮いた状態となって支持材21から若干離れている。この場合、ピン26は覆工板10の上板11よりも沈み込んだ位置まで下がり、ピン26の上端は上板11の上面よりも下方に位置する。
【0026】
第1実施形態によれば、覆工板10の上面に居る作業者が本実施形態のピン26を目視することで、覆工板10が確り固定されているかどうかを容易に確認することができる。
【0027】
第1実施形態の支持材21は、覆工板10の高さ位置を調整する構造を含む。図5は、高さ位置調整構造を示す断面図であり、図1中V-Vに示す仮想平面で第1実施形態を切断し、切断面を矢の方向にみた状態を表す。ここで仮想平面とは覆工板の幅方向に直角な平面をいい、矢の方向とは覆工板の幅方向をいう。図5中、第1実施形態の高さ位置調整構造は、支持材21と高さ調整ボルト27を有し、受け材100の上側フランジ101上に載置される。支持材21は、受け材100に沿って延びることから、受け材100の一部となり得る。あるいは支持材21は、各覆工板10の長手方向端部に配列されることから、覆工板10と対を成す構造となり得る。
【0028】
図1中、覆工板10の長手方向端部には高さ調整用貫通孔28が形成される。本実施形態では、覆工板10の四方の角部に高さ調整用貫通孔28が配設される。高さ調整用貫通孔28は、上板11を貫通する孔である。図5中、下板12には、高さ調整用貫通孔28と整列する開口29が形成される。開口29は高さ調整用貫通孔28よりも大きな孔である。開口29の配列は、支持材21に設けられる高さ調整ボルト27の配列に一致する。
【0029】
覆工板10は支持材21から取り外し可能であり、図5(a)に下向き矢で示すように覆工板10を下降させると、覆工板10の開口29に高さ調整ボルト27の頭部が通される。そして覆工板10は図5(b)に示すように支持材21に支持される。
【0030】
第1実施形態の支持材21は、上下方向に厚みを有し、受け材100に沿って延びる帯状鋼板である。板状の支持材21および高さ調整ボルト27は、広い意味でいえば共に支持材であるが、区別する場合には支持板およびボルトである。図3を参照して支持材21は、覆工板10の幅方向寸法に対応する。高さ調整ボルト27は、上側と頭部とし、下側を軸部として、支持材21を厚み方向に貫通する貫通孔31を貫通しつつ、支持材21の下面に溶接されるナット32と螺合する。ナットの雌ネジ孔は、高さ調整ボルト27の軸部と螺合するところ、かかる雌ネジ孔は図示しない変形として支持材21に形成されてもよい。
【0031】
高さ調整ボルト27の頭部には、六角穴や十字穴といった係合穴33が形成される。係合穴33は上方へ指向し、上方から高さ調整用貫通孔28に差し込まれる工具Tと係合する(図5(b))。工具Tによって高さ調整ボルト27が正方向に回転させられると、調整ボルト27の軸部がナット32よりも下方へ進出して、支持材21が高くされる。反対に調整ボルト27が逆方向に回転させられると、調整ボルト27の軸部がナット32よりも上方へ後退して、支持材21が低くされる。覆工板10よりも上方の作業者は、上述した工具Tを用いることで、覆工板10越しに覆工板10の微細な高さ調整が可能である。高さ調整用貫通孔28は人の足よりも充分に小さいので、歩行や車両通行の障害にならない。
【0032】
第1実施形態によれば、覆工板10を敷設して支持材21に固定した状態で、覆工板10の微細な高さ調整が可能になる。また高さ調整の完了後、覆工板10を支持材21に固定したり固定を解除したりする作業を繰り返しても、覆工板10の高さは変化しないので、高さ調整は1回のみで足りる。
【0033】
次に支持材21を受け材100に固定する構造につき説明する。図3を参照して、支持材21はボルト36およびナット37で受け材100に固定される。ボルト36は上述した高さ調整ボルトでもある。ボルト36よりも上方に位置する覆工板10の上板11には支持材固定用貫通孔34が形成される。第1実施形態では、覆工板10の長手方向端部の幅方向中央部に支持材固定用貫通孔34が配設される(図1)。図3中、下板12には、支持材固定用貫通孔34と整列する開口35が形成される。開口35は支持材固定用貫通孔34よりも大きな孔である。開口35の配列は、支持材21に設けられるボルト36の配列に一致する。
【0034】
開口35にはボルト36の頭部が通される。ボルト36の軸部は、ボルト36の頭部から下方へ延び、受け材100の上側フランジ101に穿設される貫通孔101hを通って、上側フランジ101から突出する。かかるボルト36の先端部には、ナット37が螺合する。支持材21からみて上側のボルト36頭部と、上側フランジ101からみて下側のナット37によって、支持材21は上側フランジ101に締結固定される。これにより支持材21は受け材100に固定される。
【0035】
第1実施形態によれば、覆工板10を支持材21に敷設した状態で、覆工板10の上方から支持材固定用貫通孔34に工具を差し込んで、ボルト36頭部に係合させ、ボルト36を回転させることができる。
【0036】
次に本発明の第2実施形態を説明する。図6は本発明の第2実施形態になる覆工板を示す平面図である。図7は、第2実施形態の支持構造を示す断面図であって、図6中VII-VIIで示される仮想平面で第2実施形態を切断し、切断面を矢の方向にみた状態を表す。ここで仮想平面とは覆工板の長手方向に直角な平面をいい、矢の方向とは覆工板の長手方向をいう。図8および図9は、第2実施形態に設けられるロック機構を示す断面図であって、図6中VIII-VIIIで示される仮想平面で第2実施形態を切断し、切断面を矢の方向にみた状態を表す。ここで仮想平面とは覆工板の幅方向に直角な平面をいい、矢の方向とは覆工板の幅方向をいう。第2実施形態につき、前述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、異なる構成について以下に説明する。第2実施形態の構造は、覆工板10を支持材21に固定し、当該固定を解除するロック機構41を備える。図6に示すようにロック機構41は覆工板10の長手方向両端部に配置される。またロック機構41は覆工板10の幅方向両端部に配置される。具体的にはロック機構41は覆工板10の四方の角部に配置される。上述した第1ロック手段と区別するため、ロック機構41を第2ロック手段ともいう。
【0037】
図8を参照して、ロック機構41は、係合部材42および被係合部材43を含む。係合部材42は帯板状のレバーであり、上板11および下板12と平行な姿勢とされ、係合部材42の一端がロック本体44に枢支され、係合部材42の他端がロック本体44の軸線を中心として揺動可能とされる。ロック本体44の軸線は、覆工板10の厚み方向、つまり上下方向、に延びる。ロック本体44の上端部は、上板11に形成される貫通孔15に嵌合する。かかる上端部には、係合部材42を揺動させる操作穴46が形成される。操作穴46は例えば鍵穴でありロック本体44の軸線に沿って延びる。ロック本体44の下端部は下板12に当接して支持される。下板12のうちロック本体44に近接する箇所は切り欠かれており、被係合部材43を受け入れるための切り欠き16を構成する。図8中、連続する2つの切り欠き16,16は、被係合部材43を収納する空所を画成する。また図6を参照して、ロック機構41は、隣り合う2枚の壁13,13間に収納される。
【0038】
説明を図8に戻すと、被係合部材43は、支持材21に沿って延びるスリット45を両側に有する金具である。紙面右側のスリット45は、紙面手前から奥に向かって延び、紙面右側の係合部材42に対応する。紙面左側のスリットは、紙面奥から手前に向かって延びるため図面に現れないが、紙面左側の係合部材42に対応する。このようにスリット45は、覆工板10の厚み方向と交差する方向に延びる。被係合部材43は溶接等によって支持材21の上面に固定される。
【0039】
次にロック機構41の使用方法につき説明する。図8に示すように係合部材42は、被係合部材43と係合しない非係合位置で、被係合部材43から後退する。これに対応して、長穴状の操作穴46は覆工板10の幅方向と並行な姿勢にされる。したがって操作穴46はインジケータとして機能し、覆工板10よりも上方に居る作業者は、操作穴46の姿勢をみれば、ロック機構41が非固定状態であることを容易に知ることができる。また覆工板10は、支持材21に対して上げ下ろし可能とされる。
【0040】
ロック機構41を固定状態にする場合、切り欠き16,16内に被係合部材43が収容されるように覆工板10を整然と敷き並べる。そして操作穴46に鍵を差し込み、図8(a)に示すように正方向(例えば時計方向)に90°程度回動させるとよい。かかる操作により、図9に示すように係合部材42がスリット45に進入し、係合位置にされる。係合位置で係合部材42は被係合部材43によって上下方向の変位を禁止される。これにより覆工板10は、厚み方向の移動を拘束され、支持材21に固定される。これに対応して、長穴状の操作穴46は覆工板10の長手方向と並行な姿勢にされる。したがって覆工板10よりも上方に居る作業者は、インジケータとして機能する操作穴46の姿勢をみれば、ロック機構41が固定状態であることを容易に知ることができる。
【0041】
覆工板10の固定を解除する場合、上述した操作と反対の操作を実行し、操作穴46を逆方向に90°回動させるとよい。これにより覆工板10は支持材21から分離され得る。なお操作穴46は、鍵特有の特定の溝配列のみを受け入れる場合にのみ回動してもよいが、それ以外の場合であっても回動可能であってもよい。操作穴46は例えばマイナスドライバーの先端を差し込まれて回動可能であってもよい。
【0042】
第2実施形態のロック機構41によれば、90°程度の回動操作によって、覆工板10の迅速な固定ないし固定解除が実現する。したがって覆工板10の取り外しおよび取り付けの作業時間が短縮され、本来の改修工事の時間を長時間確保することができる。また操作穴46は係合部材42の延在方向と並行する長孔であり、係合部材42に連動する指標である。これにより操作穴46は覆工板10の固定ないし非固定を表示するインジケータとして機能する。
【0043】
以上、図面を参照して本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、本発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。例えば上述した1の実施形態から一部の構成を抜き出し、上述した他の実施形態から他の一部の構成を抜き出し、これら抜き出された構成を組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、建設現場において有利に利用される。
【符号の説明】
【0045】
10 覆工板、 11 上板(上面)、 12 下板(下面)、
13 壁、 14 面ファスナ(第1ロック手段)、
21 支持材(支持板)、 22 面ファスナ(第2ロック手段)、
26 ピン(インジケータ)、 27 高さ調整ボルト、
28 高さ調整用貫通孔、 36 ボルト、 37 ナット、
41 ロック機構(第2ロック手段)、 42 係合部材、
43 被係合部材、 46 操作穴(インジケータ)、 100 受け材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9