(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165566
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】フィルタデバイス、高周波モジュール、及びフィルタデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
H03H 9/02 20060101AFI20241121BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20241121BHJP
H03H 9/54 20060101ALI20241121BHJP
H03H 3/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H03H9/02 K
H03H9/17 F
H03H9/54 Z
H03H3/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081851
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】永渡 麻衣子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 聖也
(72)【発明者】
【氏名】須藤 康之
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108AA07
5J108BB07
5J108BB08
5J108CC04
5J108EE03
5J108GG03
5J108JJ04
5J108KK04
5J108KK07
5J108MM01
(57)【要約】
【課題】インダクタンスを有し、大型化を回避することが可能なフィルタデバイス及び高周波モジュールを提供すること。
【解決手段】フィルタデバイス100は、弾性波共振子フィルタチップ20と、弾性波共振子フィルタチップ20を覆うキャップと、弾性波共振子フィルタチップ20とキャップ30との間に配置されたスペーサ40と、を備え、キャップ30は、対向する第1面30a及び第2面30bと、第1面30a及び第2面30bに交差する側面30cとを有し、キャップ30の側面30cには、弾性波共振子フィルタチップ20に電気的に接続されたインダクタンス50が形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性波共振子フィルタチップと、
前記弾性波共振子フィルタチップを覆うキャップと、
前記弾性波共振子フィルタチップと前記キャップとの間に配置されたスペーサと、を備え、
前記キャップは、対向する第1面及び第2面と、前記第1面及び前記第2面に交差する側面とを有し、
前記キャップの前記側面には、前記弾性波共振子フィルタチップに電気的に接続されたインダクタンスが形成されているフィルタデバイス。
【請求項2】
前記インダクタンスは、前記側面に形成された金属配線を含む、請求項1に記載のフィルタデバイス。
【請求項3】
前記キャップの前記側面は、
前記第1面及び前記第2面が対向する第1方向に見て、互いに交差するように配置された第1側面及び第2側面を有し、
前記インダクタンスは、前記第1側面及び前記第2側面に形成されている、請求項1に記載のフィルタデバイス。
【請求項4】
前記弾性波共振子フィルタチップは、対向する第1面及び第2面を有し、
前記キャップの前記第1面は、前記弾性波共振子フィルタチップの前記第2面と対向し、
前記キャップの前記第1面には、前記インダクタンスと電気的に接続された金属配線が形成されている、請求項3に記載のフィルタデバイス。
【請求項5】
前記弾性波共振子フィルタチップは、
入力端子と直列に接続された直列腕の共振子と、
前記入力端子と並列に接続された並列腕の共振子と、を含み、
前記キャップの前記側面に形成された前記インダクタンスは、前記並列腕の共振子と接続されたインダクタンスである、請求項1に記載のフィルタデバイス。
【請求項6】
前記弾性波共振子フィルタチップは、前記弾性波共振子フィルタチップの前記第1面及び前記第2面に交差する側面を有し、
前記弾性波共振子フィルタチップの前記側面には、第2インダクタンスが形成されている、請求項1に記載のフィルタデバイス。
【請求項7】
対向する第1面及び第2面を有する弾性波共振子フィルタチップと、
前記弾性波共振子フィルタチップの前記第2面を覆うキャップと、
前記弾性波共振子フィルタチップと前記キャップとの間に配置されたスペーサと、を備え、
前記弾性波共振子フィルタチップは、当該弾性波共振子フィルタチップの前記第1面及び前記第2面に交差する側面を有し、
前記弾性波共振子フィルタチップの前記側面には、弾性波共振子に電気的に接続されたインダクタンスが形成されているフィルタデバイス。
【請求項8】
基板と、
前記基板上に実装されたフィルタデバイスと、
前記基板上に実装された高周波素子と、を備え、
前記フィルタデバイスは、
弾性波共振子フィルタチップと、
前記弾性波共振子フィルタチップを覆うキャップと、
前記弾性波共振子フィルタチップと前記キャップとの間に配置されたスペーサと、を有し、
前記キャップは、対向する第1面及び第2面と、前記第1面及び前記第2面に交差する側面とを有し、
前記キャップの前記側面には、前記弾性波共振子フィルタチップに電気的に接続されたインダクタンスが形成されている高周波モジュール。
【請求項9】
前記フィルタデバイス及び前記高周波素子は、前記基板の板厚方向である第1方向にと交差する第2方向に離れて配置され、
前記キャップの前記側面は、前記第2方向において、前記高周波素子から遠い方の側面を含む、請求項8に記載の高周波モジュール。
【請求項10】
弾性波共振子フィルタチップと、第1方向において前記弾性波共振子フィルタチップと離れて配置され、前記弾性波共振子フィルタチップと対向して配置されたキャップと、を備えるフィルタデバイスを製造する方法であって、
前記キャップとなる基板の表面及び開口の内面に金属膜を形成する工程と、
前記第1方向にスペーサを介して、前記弾性波共振子フィルタチップと前記基板とを接合する工程と、
前記基板と前記弾性波共振子フィルタチップとを、前記第1方向にダイシングすることにより、前記開口の内面に形成された前記金属膜を外部に露出させる工程と、を含む、フィルタデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタデバイス、高周波モジュール、及びフィルタデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1,2には弾性波共振子を有するフィルタデバイスが開示されている。特許文献1に記載のフィルタデバイスは、フィルタ基板と、フィルタ基板に対向するキャップと、3Dインダクタとを備える。特許文献2に記載のフィルタデバイスは、インダクタを有する多層基板と、多層基板に積層された圧電体と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2019/0132942号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/0203303号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術に係るフィルタデバイスは、立体的なインダクタンスやインダクタンスを有する多層基板を備える。本発明は、インダクタンスを有し、大型化を回避することが可能なフィルタデバイス、高周波モジュール、及びフィルタデバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係るフィルタデバイスは、弾性波共振子フィルタチップと、弾性波共振子フィルタチップを覆うキャップと、弾性波共振子フィルタチップとキャップとの間に配置されたスペーサと、を備え、キャップは、対向する第1面及び第2面と、第1面及び第2面に交差する側面とを有し、キャップの側面には、弾性波共振子フィルタチップに電気的に接続されたインダクタンスが形成されている。
【0006】
本開示に係るフィルタデバイスは、対向する第1面及び第2面を有する弾性波共振子フィルタチップと、弾性波共振子フィルタチップの第2面を覆うキャップと、弾性波共振子フィルタチップとキャップとの間に配置されたスペーサと、を備え、弾性波共振子フィルタチップは、当該弾性波共振子フィルタチップの第1面及び第2面に交差する側面を有し、弾性波共振子フィルタチップの側面には、弾性波共振子に電気的に接続されたインダクタンスが形成されている。
【0007】
本開示の高周波モジュールは、基板と、基板上に実装された弾性波共振子フィルタチップと、基板上に実装された高周波素子と、を備え、弾性波共振子フィルタチップは、弾性波共振子フィルタチップと、弾性波共振子フィルタチップを覆うキャップと、弾性波共振子フィルタチップとキャップとの間に配置されたスペーサと、を有し、キャップは、対向する第1面及び第2面と、第1面及び第2面に交差する側面とを有し、キャップの側面には、弾性波共振子フィルタチップに電気的に接続されたインダクタンスが形成されている。
【0008】
本開示のフィルタデバイスの製造方法は、弾性波共振子フィルタチップと、第1方向において弾性波共振子フィルタチップと離れて配置され、弾性波共振子フィルタチップと対向して配置されたキャップと、を備えるフィルタデバイスを製造する方法であって、キャップとなる基板の表面及び開口の内面に金属膜を形成する工程と、第1方向にスペーサを介して、弾性波共振子フィルタチップと基板とを接合する工程と、基板と前記弾性波共振子フィルタチップとを、第1方向にダイシングすることにより、開口の内面に形成された金属膜を外部に露出させる工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、インダクタンスを有し、大型化を回避することが可能なフィルタデバイス、及び高周波モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係るフィルタデバイスを示す断面図である。
【
図2】第1実施形態に係るフィルタデバイスを示す概略分解斜視図である。
【
図3】第2実施形態に係るフィルタデバイスのキャップを示す斜視図である。
【
図4】第2実施形態に係るフィルタデバイスのキャップを示す平面図である。
【
図5】第2実施形態に係るフィルタデバイスのキャップを示す側面図である。
【
図6】キャップにインダクタンスを形成する方法の手順を示す概略図である。
【
図7】第3実施形態に係る高周波モジュールを示す側面図である。
【
図8】第1参考形態に係る高周波モジュールを示す側面図である。
【
図9】第2参考形態に係る高周波モジュールを示す断面図である。
【
図10】第3参考形態に係る高周波モジュールを示す断面図である。
【
図11】第4参考形態に係る高周波モジュールを示す断面図である。
【
図12】実施形態に係るフィルタデバイスの等価回路を示す回路図である。
【
図13】実施形態に係る高周波モジュールを備える無線通信装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係るフィルタデバイス、高周波モジュール、及びフィルタデバイスの製造方法について、添付の図面を参照しながら説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く場合がある。
【0012】
[第1実施形態に係るフィルタデバイス]
図1及び
図2を参照して、第1実施形態に係るフィルタデバイス100について説明する。
図1は、第1実施形態に係るフィルタデバイス100を示す断面図である。
図2は、第1実施形態に係るフィルタデバイス100を示す概略分解斜視図である。
図1及び
図2には、参考のため、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸が示されている。必要に応じ、他の図においても、X軸、Y軸、及びZ軸が示される。X軸、Y軸、及びZ軸は、直交していなくてもよい。XY面は、X軸及びY軸に沿う面である。XZ面は、X軸及びZ軸に沿う面である。YZ面は、Y軸及びZ軸に沿う面である。
【0013】
図1及び
図2に示されるように、フィルタデバイス100は、BAWフィルタチップ20と、キャップ30と、ピラー40と、インダクタンス50とを備える。フィルタデバイス100は、例えばバンドパスフィルタ(BPF)でもよい。「BPF」は、「band pass filter」の略称である。バンドパスフィルタは、必要とする帯域内の周波数成分のみを通過させる。フィルタデバイス100は、直列共振子と並列共振子とをL字形に配置したラダー型フィルタでもよい。
【0014】
[BAWフィルタチップ]
BAWフィルタチップ20は、シリコン基板21と、電極22と、圧電薄膜23と、電極24と、を備える。BAWフィルタチップ20は、バルク弾性波共振子(BAW)を含む。「BAW」は、「bulk acoustic wave」の略称である。BAWフィルタチップ20は、例えばFBARフィルタである。「FBAR」は、「Film Bulk Acoustic Resonator」の略称である。
【0015】
BAWフィルタチップ20は、FBARフィルタに限定されず、SMRフィルタでもよい。「SMR」は、「Solid Mounted Resonator」の略称である。BAWフィルタチップ20は、弾性波共振子フィルタチップの一例である。弾性波共振子フィルタチップは、弾性波共振子を含む板状の部材でもよい。
【0016】
フィルタデバイス100は、BAWフィルタチップ20に代えて、SAWフィルタチップを備えるものでもよい。SAWフィルタチップは、表面弾性波共振子(SAW)を含む。「SAW」は、「Surface Acoustic Wave」の略称である。SAWフィルタチップは、弾性波共振子フィルタチップの一例である。
【0017】
シリコン基板21には、キャビティCが形成されている。シリコン基板21は、板厚方向に対向する第1面21a及び第2面21bを有する。シリコン基板21の板厚方向は、Z軸方向に沿う。キャビティCは、第2面21bに形成されている。キャビティCは、板厚方向に凹む。キャビティCを有するシリコン基板21は、例えばMEMS素子である。「MEMS」は、「Micro Electro Mechanical Systems」の略称である。
【0018】
電極22及び電極24は、Z軸方向に離れて配置されている。圧電薄膜23は、電極22と電極24との間に配置されている。電極22は、例えば下部電極であり、電極24は、例えば上部電極である。電極24は、シリコン基板21の第2面21bに形成されている。電極22は、圧電薄膜23の下側に形成されている。圧電薄膜23は、ピエゾ素子を含む。ピエゾ素子は、窒化アルミニウム(AlN)製でもよく、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)製でもよく、酸化亜鉛(ZnO)製でもよい。電極22、圧電薄膜23、電極24、及びキャビティCは、Z軸方向に見て、重なるように配置されている。
【0019】
BAWフィルタチップ20では、電極22と電極24との間に、高周波信号を印加すると、圧電薄膜23が電極22と電極24との間で振動する。これにより、BAWフィルタチップ20では、Z軸方向と交差する方向に、定在波が生じる。BAWフィルタチップ20では、この定在波の振動特性をバルク弾性波共振子のフィルタの通過帯域として利用することができる。
【0020】
BAWフィルタチップ20は、Z軸方向に対向する第1面及び第2面を有する。シリコン基板21の第1面21aは、BAWフィルタチップ20の第1面の一例である。シリコン基板21の第2面21bは、BAWフィルタチップ20の第2面の一例である。BAWフィルタチップ20の第2面は、圧電薄膜23の下面、及び電極22の下面を含んでもよい。圧電薄膜23の下面、及び電極22の下面は、Z軸方向において、シリコン基板21の第2面21bから遠い方の面でもよい。Z軸方向は、第1方向の一例である。
【0021】
[キャップ]
キャップ30は、Z軸方向において、BAWフィルタチップ20と対向するように配置されている。キャップ30は、例えばシリコン製の基板でもよい。キャップ30は、所定の厚さを有する。キャップ30の板厚方向は、Z軸方向に沿う。
【0022】
キャップ30は、Z軸方向に対向する第1面30a及び第2面30bを有する。第1面30aは、Z軸方向において、BAWフィルタチップ20に近い方の面である。第2面30bは、Z軸方向において、BAWフィルタチップ20から遠い方の面である。Z軸方向において、BAWフィルタチップ20とキャップ30との間には、隙間が形成されている。
【0023】
キャップ30には、Z軸方向に貫通するビア38が形成されている。キャップ30の第2面30bには、金属配線32及びパッド33が形成されている。パッド33には、はんだバンプ34が形成されている。
【0024】
[ピラー]
ピラー40は、Z軸方向において、BAWフィルタチップ20とキャップ30との間に配置されている。ピラー40は、Z軸方向において、シリコン基板21の第2面21bと、キャップ30の第1面30aとの間に配置されている。複数のピラー40は、X軸方向において、圧電薄膜23の両側に配置されている。複数のピラー40は、シリコン基板21及びキャップ30に連結されている。ピラー40は、例えばCuピラーである。
図2に示されるように、複数のピラー40は、X軸方向及びY軸方向に離れて配置されている。ピラー40は、スペーサの一例である。
【0025】
[インダクタンス]
インダクタンス50は、BAWフィルタチップ20に電気的に接続されている自己インダクタンスLである。インダクタンス50は、キャップ30の側面30cに形成されている。キャップ30は、例えばYZ面に沿う側面30cを有する。側面30cは、Z軸方向に所定の幅を有する。側面30cは、Y軸方向に所定の長さを有する。
【0026】
インダクタンス50は、側面30cに形成されたミアンダパターンを含む。インダクタンス50は、側面30cに形成された金属配線を含む。インダクタンス50は、複数の部分51~53を含む。複数の部分51は、Z軸方向に延びる直線部分である。複数の部分51は、Y軸方向に離れて配置されている。複数の部分52,53は、Y軸方向に延びる直線部分である。複数の部分52,53は、Y軸方向に隣り合う部分51と連結されている。部分52は、Z軸方向において、第2面30bに近い方に配置されている。部分53は、Z軸方向において、第1面30aに近い方に配置されている。部分52と部分53は、Y軸方向において、交互に配置されている。
【0027】
インダクタンス50の配置は、特に限定されない。インダクタンス50は、その他の部分を含んでもよい。インダクタンス50は、曲線部分を含んでもよい。インダクタンス50は、Z軸方向に対して傾斜する部分を含んでもよく、Y軸方向に対して傾斜する部分を含んでもよい。また、インダクタンス50は、側面30c以外に形成された部分と連結されていてもよい。インダクタンス50は、例えば、第1面30aに形成された部分、及び第2面30bに形成された部分に連結されていてもよい。
【0028】
インダクタンス50は、例えばバンドパスフィルタにおいて、減衰帯域における減衰特性の改善の機能、及び、インピーダンス整合の機能を有する。
【0029】
[第1実施形態に係るフィルタデバイスの作用効果]
第1実施形態に係るフィルタデバイス100は、第1方向であるZ軸方向に対向する第1面30a及び第2面30bを有するBAWフィルタチップ20と、Z軸方向において、BAWフィルタチップ20と離れて配置され、BAWフィルタチップ20の第2面30bを覆うキャップ30と、Z軸方向において、BAWフィルタチップ20とキャップ30との間に配置されたピラー40と、を備える。キャップ30は、Z軸方向に沿う側面30cを有する。キャップ30の側面30cには、インダクタンス50に電気的に接続されたインダクタンス50が形成されている。
【0030】
このようなフィルタデバイス100によれば、インダクタンス50が設けられていることにより、バンドパスフィルタにおいて、減衰帯域における減衰特性の改善を図ることができ、且つ、インピーダンスを整合させることができる。フィルタデバイス100によれば、キャップ30の側面30cにインダクタンス50が設けられていることにより、従来技術に係るフィルタデバイスと比較して、小型化を図ることができる。従来技術の構造については、後述する。また、側面30cに形成されたインダクタンス50は、Z軸方向と交差するXY面に配置された素子とは異なる方向に磁場を形成する。そのため、磁場の相互干渉を低減することができる。磁気干渉の低減については後述する。
【0031】
また、フィルタデバイス100では、インダクタンス50を形成するスペースとして、キャップ30の側面30cを有効活用することができる。
【0032】
[インダクタンス]
次に、
図2を参照して、BAWフィルタチップ20に形成されたインダクタンス60について説明する。フィルタデバイス100は、BAWフィルタチップ20の側面21cに形成されたインダクタンス60を備えていてもよい。インダクタンス60は、第2インダクタンスの一例である。インダクタンス60は、BAWフィルタチップ20の高周波素子に電気的に接続された自己インダクタンスLである。BAWフィルタチップ20のシリコン基板21は、YZ面に沿う側面21cを有する。側面21cは、Z軸方向に所定の幅を有する。側面21cは、Y軸方向に所定の長さを有する。
【0033】
インダクタンス60は、側面21cに形成されたミアンダパターンを含む。インダクタンス60は、側面21cに形成された金属配線を含む。
【0034】
フィルタデバイス100は、インダクタンス60を備えていてもよく、インダクタンス60を備えていなくてもよい。フィルタデバイス100は、インダクタンス50を備えず、インダクタンス60を備えていてもよい。
【0035】
フィルタデバイス100において、シリコン基板21の側面21cにインダクタンス60が形成されていてもよい。シリコン基板21の側面21cにインダクタンス60が形成されていることにより、インダクタンス60以外のインダクタンスの寸法を小さくすることができる。また、フィルタデバイス100は、インダクタンス60を備えることにより、インダクタンスの設計の自由度を向上させることができる。
【0036】
[第2実施形態に係るフィルタデバイス]
次に
図3~
図5を参照して、第2実施形態に係るフィルタデバイス100Bについて説明する。
図3は、第2実施形態に係るフィルタデバイス100Bのキャップ30Bを示す斜視図である。
図4は、第2実施形態に係るフィルタデバイス100Bのキャップ30Bを示す平面図である。
図5は、第2実施形態に係るフィルタデバイス100Bのキャップ30Bの側面図である。
図3~
図5に示されるフィルタデバイス100Bが、第1実施形態に係るフィルタデバイス100と違う点は、キャップ30及びインダクタンス50に代えて、キャップ30B及びインダクタンス50Bを備える点である。なお、第2実施形態の説明において、第1実施形態と同様の説明は省略する。
【0037】
[キャップの側面]
フィルタデバイス100Bは、キャップ30B及びインダクタンス50Bを備える。キャップ30Bは、側面30c,30d,30e,30fを有する。側面30cは、YZ面に沿う面である。側面30d,30fは、XZ面に沿う面である。側面30d,30fは、Y軸方向に対向する。側面30eは、YZ面に沿う面である。Z軸方向に見て、側面30c,30d,30e,30fは、凹凸形状を成す。側面30d,30e,30fは、凹部を形成する。側面30d,30e,30fは、Z軸方向に見て、側面30cよりもキャップ30Bの中央に近い位置に配置されている。側面30eは、Y軸方向において、側面30dと側面30fとの間に形成されている。側面30d,30fは、第1側面の一例である。側面30eは、第2側面の一例である。
【0038】
[インダクタンス]
インダクタンス50Bは、キャップ30Bの側部に形成された金属配線を含む。インダクタンス50Bは、金属膜でもよく、金属板でもよい。側面30d,30e,30fには、インダクタンス50Bが形成されている。インダクタンス50Bは、側面30d,30e,30fにわたって連続している。インダクタンス50Bの一部は、第1面30a及び第2面30bに形成されていてもよい。
【0039】
インダクタンス50Bは、部分54~56を含む。部分54は、側面30dに形成されている。部分55は、側面30eに形成されている。部分56は、側面30fに形成されている。部分54,56は、XZ面でもよい。部分55は、YZ面でもよい。部分54,56は、部分55と交差するように形成されている。
【0040】
インダクタンス50Bには、部分57が電気的に接続されている。部分57は、キャップ30の第1面30aの一部に形成されている。部分57は、Y軸方向において、部分54と部分56との間に形成されている。部分57は、Y軸方向において、部分54と部分56とを連結する金属配線である。部分57は、X軸方向において、側面30cから側面30fまでの第1面30aの部分を覆うように形成されている。複数の部分57は、Y軸方向に離れて形成されている。部分57は、キャップの第1面に形成され、インダクタンスに電気的に接続された金属配線の一例である。インダクタンス50Bは、部分57を含んでもよい。
【0041】
インダクタンス50Bには、
図3及び
図5に示されるように、部分58が電気的に接続されている。部分58は、キャップ30の第2面30bの一部に形成されている。部分58は、Z軸方向において、部分57とは重ならない位置に形成されている。部分58は、Y軸方向において、部分57と部分57との間に配置されている。
【0042】
部分58は、Y軸方向において、部分54と部分56との間に形成されている。部分58は、Y軸方向において、部分54と部分56とを連結する金属配線である。部分58は、X軸方向において、側面30cから側面30fまでの第2面30bの部分を覆うように形成されている。インダクタンス50Bは、部分58を含んでもよい。
【0043】
インダクタンス50Bは、側面30cに形成された部分を含んでもよい。インダクタンス50Bは、Y軸方向において、連続して形成されていてもよく、複数に分割されていてもよい。
【0044】
[第2実施形態に係るフィルタデバイスの作用効果]
第2実施形態に係るフィルタデバイス100Bは、上記の第1実施形態に係るフィルタデバイス100と同様の作用効果を奏する。第2実施形態に係るインダクタンス50Bは、XZ面に沿う側面30d,30fに形成された部分54,56と、YZ面に沿う側面30eに形成された部分55とを含む。キャップ30Bの側部には、凹凸形状が形成されているので、互いに交差する側面30d,30e,30fに、インダクタンス50Bの部分54~56を形成することができる。フィルタデバイス100Bでは、インダクタンス50Bの設計の自由度を上げることができる。インダクタンス50Bは、第1面30aに形成された部分57、及び、第2面30bに形成された部分58を含んでもよい。
【0045】
フィルタデバイス100Bでは、キャップ30Bの側面30d,30fに形成されたインダクタンス50Bの部分54,56と、側面30eに形成された部分55とを交差させることができる。フィルタデバイス100Bでは、インダクタンス50Bが形成された配線形成面とを交差させることにより、磁場の相互干渉を緩和させることができる。
【0046】
また、フィルタデバイス100Bでは、キャップ30Bの側部に凹凸形状が形成されていることにより、インダクタンス50Bを設置可能な面積を増やすことができる。そのため、インダクタンス50Bの配置の自由度が向上されている。
【0047】
[第2実施形態に係るフィルタデバイスの製造方法]
次に、
図6を参照して、第2実施形態に係るフィルタデバイス100Bの製造方法について説明する。ここでは、キャップ30Bに、インダクタンス50Bを形成する方法について説明する。
図6は、キャップ30Bにインダクタンス50Bを形成する方法の手順を示す概略図である。インダクタンス50Bを形成する方法では、
図6(a)~
図6(f)に示される工程を順に行う。
【0048】
図6(a)は、インダクタンス50Bが形成される前のキャップ30Bを示す斜視図である。
図6(a)では、切断前の状態のキャップ30Bが図示されている。キャップ30Bには、板厚方向に凹む凹部が形成されている。例えば、キャップ30Bの第1面30aにレジストパターンを形成し、異方性ドライエッチングを行うことにより、TSV加工を行うことができる。「TSV」は、シリコン貫通電極(Through Silicon Via)の略称である。
【0049】
図6(b)は、貫通孔の内面に金属配線が形成されている状態のキャップ30Bを示す斜視図である。
図6(b)に示されるように、第1面30aには、金属スパッタリング、フォトリソグラフィ(photolithography)、エッチングを行うことにより、キャップ30Bの第1面30a、側面30d,30e,30fとなる部分に、金属配線パターンを形成する。インダクタンス50Bは、金属配線パターンの一部を含む。
図6(b)に示される状態において、側面30cとなる部分は、外部に露出していない。
【0050】
インダクタンス50Bを形成する方法は、スパッタリング、フォトリソグラフィ、及びエッチングを含む。インダクタンス50Bを形成する方法は、例えば、シリコン基板の表面を精密洗浄した後に、パターニングする薄膜をコーティングすることを含む。これにより、シリコン基板の表面に薄膜を形成することができる。シリコン基板に対してスパッタリングすることにより、薄膜をコーティングすることができる。
【0051】
フォトリソグラフィは、例えば、レジスト塗布、前加熱、露光、現像、リンス、及び後加熱を含む。レジスト塗布では、薄膜の上に有機溶剤で溶かしたフォトレジスト(感光材)を塗布する。前加熱では、フォトレジスト及び薄膜が形成されたシリコン基板を加熱することにより、フォトレジストに含まれる有機溶剤を蒸発させる。これにより、フォトレジストがシリコン基板及び薄膜に対して固定される。
【0052】
露光では、シリコン基板に固定されたフォトレジストに対して、光(紫外線)を照射することにより、フォトマスクのパターンを転写する。「フォトマスク」とは、ガラス又はフィルムで作成されたパターンの原版である。
【0053】
現像では、露光したシリコン基板を現像液に浸す。これにより、シリコン基板にパターンが現れる。リンスでは、現像後に、リンス液を用いてシリコン基板をすすぐ。後加熱では、前加熱よりも高い温度に加熱することにより、リンス液を蒸発させるとともに、シリコン基板の表面にレジストを焼き付ける。
【0054】
エッチングは、例えばドライエッチングである。エッチングすることにより、薄膜のパターンが形成される。
【0055】
図6(c)は、接合されたBAWフィルタチップ20及びキャップ30を示す斜視図である。フィルタデバイス100Bを製造する方法は、BAWフィルタチップ20とキャップ30とを接合する工程を含む。
図1及び
図2に示されるピラー40を介して、BAWフィルタチップ20とキャップ30とが接合される。キャップ30Bの第1面30aとBAWフィルタチップ20の第2面とが対向するように、接合される。BAWフィルタチップ20とキャップ30とは、所定の隙間を空けて、ピラー40を介して接合される。
【0056】
また、
図6(c)に示す状態において、ビア38となる部分、及び、側面30d,30e,30fとなる部分は、外部に露出していない。
図6(c)では、第1面30aとは、反対側の面(裏面)が図示されている。また、
図6(d)~
図6(f)では、BAWフィルタチップ20の図示が省略されている。
【0057】
図6(d)は、裏面研磨後のキャップ30Bの第2面30bを示す斜視図である。フィルタデバイス100Bを製造する方法は、キャップ30Bを裏面研磨する工程を含む。裏面は、Z軸方向において、第1面30aと対向する面である。裏面を研磨することにより、第2面30bが形成され、ビア38が第2面30bに開口した状態となる。また、裏面を研磨することにより、
図3に示す側面30d,30e,30fとなる部分が、第2面30bに開口した状態となる。
【0058】
図6(e)は、第2面30bに、インダクタンス50Bの部分57が形成された状態のキャップ30Bを示す斜視図である。インダクタンス50Bを形成する方法は、スパッタリング、フォトリソグラフィ、及びエッチングを含む。上述したように、スパッタリング、フォトリソグラフィ、及びエッチングを行うことにより、第2面30bに、部分57が形成される。
【0059】
図6(f)は、ダイシング後のキャップ30を示す斜視図である。フィルタデバイス100Bを製造する方法は、ダイシングを含む。ダイシングを行うことにより、シリコン基板を切断して、側面30cを外部に露出させる。キャップ30であるシリコン基板、及びBAWフィルタチップ20を切断することにより、複数のフィルタデバイス100Bが形成される。ダイシングすることにより、開口の内面に形成された金属膜が外部に露出される。この金属膜は、インダクタンス50Bの部分54~56である。
【0060】
[第3実施形態に係る高周波モジュール]
次に
図7を参照して、第3実施形態に係る高周波モジュール110について説明する。
図7は、第3実施形態に係る高周波モジュール110を示す側面図である。
図7に示されるように、高周波モジュール110は、基板112と、フィルタデバイス100と、RF素子111とを備える。なお、第3実施形態の説明において、上記のフィルタデバイス100と同様の説明は省略する。高周波モジュール110は、フィルタデバイス100Bを備えていてもよい。「RF」は、高周波(Radio Frequency)の略称である。
【0061】
基板112には、フィルタデバイス100及びRF素子111が実装されている。RF素子111は、高周波素子である。RF素子111は、高周波回路を含む。高周波回路は、高周波の増幅、発振、及び、同調などを行う回路を含む。フィルタデバイス100は、例えば上記の第1実施形態に係るフィルタデバイス100である。フィルタデバイス100は、上述したように、BAWフィルタチップ20、キャップ30、及びピラー40を備える。
図7では、ピラー40及びはんだバンプ34の図示が省略されている。
【0062】
フィルタデバイス100は、X軸方向において、RF素子111と離れて配置されている。キャップ30は、X軸方向に対向する側面30c及び側面30gを含む。側面30cは、X軸方向において、RF素子111から遠い方の側面である。側面30gは、X軸方向において、RF素子111に近い方の側面である。側面30cには、インダクタンス50が形成されている。側面30gには、インダクタンス50は形成されていない。X軸方向は、第2方向の一例である。第2方向は、X軸方向に限定されず、Y軸方向でもよく、XY面内のその他の方向でもよい。
【0063】
高周波モジュール110の動作時において、磁場HA、磁場HB、及び磁場HCが発生する。磁場HAは、RF素子111による磁場である。磁場HBは、BAWフィルタチップ20に含まれるRF素子による磁場である。磁場HCは、インダクタンス50による磁場である。
【0064】
[第3実施形態に係る高周波モジュールの作用効果]
RF素子111のRF信号面は、例えばXY面に沿う。RF信号面は、磁場が発生する主要な面でもよい。BAWフィルタチップ20の信号面は、例えばXY面に沿う。インダクタンス50が形成された側面30cは、YZ面に沿う。
【0065】
一般的に直線の配線に電流Iを流すと、アンペールの法則により配線を取り囲むように磁場Hが形成される。磁場Hは、下記式(1)により表現される。
【0066】
H=I/2πr・・・(1)
上記の「r」は、配線からの距離である。
【0067】
磁場Hの大きさは、配線からの距離rに反比例する。磁場Hの大きさは、配線から離れるほど、小さくなる。また、配線形成面と直交する方向に磁束が形成される。磁束は磁場が集中する箇所である。RF信号面、及びインダクタンス50が形成された側面30cは、配線形成面である。ここでいう「配線」は、RF素子111における配線、BAWフィルタチップ20における配線、及び、インダクタンス50における配線を含む。
【0068】
磁場Hは、配線が形成するインダクタンスLの根源であるが、一方で配線の周辺のRF素子と相互干渉を引き起こす。ここでいう「RF素子」は、RF素子111と、BAWフィルタチップ20のRF素子との両方を含む。
【0069】
第3実施形態に係る高周波モジュール110では、インダクタンス50の配線は、YZ面に沿う側面30cに形成されている。これにより、RF素子111のRF信号面、及びBAWフィルタチップ20のRF信号面と同一のXY面に、インダクタンスの配線が形成されている場合と比較して、インダクタンス50とRF信号面とを離すことができる。高周波モジュール110では、インダクタンス50による磁束の方向をX軸方向とすることができる。高周波モジュール110では、BAWフィルタチップ20のRF素子によるRF信号面と、インダクタンス配線面(側面30c)とを直交させることができる。そのため、RF信号面とオバーラップする磁場Hが相対的に小さくなる。その結果、磁場の相互干渉を小さくできる。
【0070】
また、高周波モジュール110において、フィルタデバイス100及びRF素子111は、X軸方向に離れて配置され、キャップ30の側面30cは、X軸方向において、RF素子111から遠い方の側面を含む。
【0071】
この構成の高周波モジュール110によれば、X軸方向において、RF素子111から遠い方の側面30cに、インダクタンス50が形成されているので、RF素子111による磁場HAと、インダクタンス50による磁場HCとの相互干渉を低減することができる。
【0072】
[第1参考形態に係る高周波モジュール]
次に
図8を参照して、第1参考形態に係る高周波モジュール120について説明する。
図8は、第1参考形態に係る高周波モジュール120を示す側面図である。
図8に示される第1参考形態に係る高周波モジュール120が、
図7に示される第3実施形態に係る高周波モジュール110と違う点は、キャップ30を有するフィルタデバイス100に代えて、多層基板130を有するフィルタデバイス101を備える点である。なお、第1参考形態に係る高周波モジュール120の説明において、上記の実施形態と同様の説明は省略する。
【0073】
高周波モジュール120は、基板112と、フィルタデバイス101と、RF素子111とを備える。基板112には、フィルタデバイス101及びRF素子111が実装されている。フィルタデバイス101は、BAWフィルタチップ20及び多層基板130を備える。多層基板130は、パターンインダクタンスを含む。パターンインダクタンスは、XY面に沿って形成され、Z軸方向に積層されている。多層基板130の側面には、インダクタンス50は形成されていない。
【0074】
高周波モジュール120の動作時において、磁場HA,磁場HB,及び磁場HDが発生する。磁場HDは、多層基板130に含まれるパターンインダクタンスによる磁場である。多層基板130のインダクタンス配線面は、XY面に沿う。
【0075】
参考形態に係るフィルタデバイス101では、BAWフィルタチップ20の信号面と、多層基板130のインダクタンス配線面は、XY面に沿う。フィルタデバイス101では、磁束の方向はZ軸方向に沿う。フィルタデバイス101では、BAWフィルタチップ20による磁場HBと、多層基板130による磁場HDとが重なる。フィルタデバイス101では、BAWフィルタチップ20による磁場HBと、多層基板130による磁場HDとが相互干渉することになる。
【0076】
また、参考形態に係る高周波モジュール120では、多層基板130による磁場HDは、RF素子111にかかる位置まで広がる。
【0077】
一方、
図7に示される第3実施形態に係る高周波モジュール110では、キャップ30の側面30cにインダクタンス50が形成されていることにより、インダクタンス50の配線面を、RF素子111から遠ざけることができると共に、インダクタンス50による磁束の方向をX軸方向とすることができる。キャップ30では、インダクタンス50による磁束の方向を、BAWフィルタチップ20による磁束の方向と交差する方向とすることができる。そのため、第3実施形態に係る高周波モジュール110では、磁場の相互干渉を低減することができる。
【0078】
[第2参考形態に係る高周波モジュール]
次に、
図9を参照して第2参考形態に係る高周波モジュール150について説明する。
図9は、第2参考形態に係る高周波モジュール150を示す断面図である。第2参考形態に係る高周波モジュール150は、実施形態に係るフィルタデバイス100ではなく、フィルタデバイス156を備える。なお、第2参考形態に係る高周波モジュール150の説明において、上記の実施形態及び参考形態と同様の説明は省略する。
【0079】
高周波モジュール150は、基板151と、フィルタデバイス156と、チップインダクタ154と、樹脂モールド155とを備える。基板151には、フィルタデバイス156及びチップインダクタ154が実装されている。複数のチップインダクタ154は、X軸方向において、フィルタデバイス156の両側に配置されている。
【0080】
フィルタデバイス156は、BAWフィルタチップ152及びキャップ153を有する。BAWフィルタチップ152は、BAWフィルタチップ20と同様の構成でもよい。キャップ153は、キャップ30と同様の構成でもよい。キャップ153の側面には、インダクタンス50は形成されていない。
【0081】
高周波モジュール150は、キャップ30の側面30cに形成されたインダクタンス50の代わりに、基板151に実装されたチップインダクタ154を備える。
【0082】
このような第2参考形態に係る高周波モジュール150は、チップインダクタ154を備えることにより、チップインダクタ154を実装するための領域が必要となっていた。一方、実施形態に係るフィルタデバイス100では、キャップ30の側面30cにインダクタンス50が形成されていることにより、チップインダクタ154を実装する必要がない。そのため、フィルタデバイス100を備える高周波モジュールでは、
図9に示される領域159が不要となり、高周波モジュールの寸法の増大を抑制できる。フィルタデバイス100を備える高周波モジュールでは、モジュールの小型化を図ることができる。フィルタデバイス100を備える高周波モジュールでは、例えばX軸方向において、省スペース化を図ることができる。
【0083】
[第3参考形態に係る高周波モジュール]
次に、
図10を参照して第3参考形態に係る高周波モジュール160について説明する。
図10は、第3参考形態に係る高周波モジュール160を示す断面図である。第3参考形態に係る高周波モジュール160は、実施形態に係るフィルタデバイス100を備えていない。なお、第3参考形態に係る高周波モジュール160の説明において、上記の実施形態及び参考形態と同様の説明は省略する。
【0084】
高周波モジュール160は、パッケージ161と、BAWフィルタチップ152と、ボンディングワイヤ163と、蓋162と、を備える。パッケージ161には、BAWフィルタチップ152が実装されている。BAWフィルタチップ152には、ボンディングワイヤ163が接続されている。ボンディングワイヤ163は、自己インダクタンスLである。ボンディングワイヤ163は、BAWフィルタチップ152から、例えばX軸方向に延びる。
【0085】
蓋162は、Z軸方向において、パッケージ161と対向するように配置されている。蓋162は、BAWフィルタチップ152及びボンディングワイヤ163を覆うように配置されている。パッケージ161と蓋162との間には、隙間が形成されている。BAWフィルタチップ152及びボンディングワイヤ163は、パッケージ161と蓋162との間の隙間に配置されている。
【0086】
このような第3参考形態に係る高周波モジュール160は、ボンディングワイヤ163を備えることにより、ボンディングワイヤ163を実装するための領域が必要となっていた。一方、実施形態に係るフィルタデバイス100では、キャップ30の側面30cにインダクタンス50が形成されていることにより、ボンディングワイヤ163を実装する必要がない。そのため、フィルタデバイス100を備える高周波モジュールでは、
図10に示される領域169が不要となり、高周波モジュールの寸法の増大を抑制できる。フィルタデバイス100を備える高周波モジュールでは、モジュールの小型化を図ることができる。フィルタデバイス100を備える高周波モジュールでは、例えばX軸方向において、省スペース化を図ることができる。
【0087】
[第4参考形態に係る高周波モジュール]
次に、
図11を参照して第4参考形態に係る高周波モジュール170について説明する。
図11は、第4参考形態に係る高周波モジュール170を示す断面図である。第4参考形態に係る高周波モジュール170は、実施形態に係るフィルタデバイス100を備えていない。なお、第4参考形態に係る高周波モジュール170の説明において、上記の実施形態及び参考形態と同様の説明は省略する。
【0088】
高周波モジュール170は、多層基板171と、フィルタデバイス156と、樹脂モールド175とを備える。多層基板171は、パターンインダクタンスを含む。パターンインダクタンスは、XY面に沿って形成され、Z軸方向に積層されている。多層基板171には、フィルタデバイス156が実装されている。樹脂モールド175は、フィルタデバイス156を覆うように形成されている。
【0089】
このような第4参考形態に係る高周波モジュール170は、パターンインダクタンスが積層された多層基板171を備えることにより、Z軸方向に厚くなっていた。一方、実施形態に係るフィルタデバイス100では、キャップ30の側面30cにインダクタンス50が形成されていることにより、実装基板にパターンインダクタンスを積層する必要がない。そのため、フィルタデバイス100を備える高周波モジュールでは、
図11に示される領域179が不要となり、実装基板による板厚の増大を抑制できる。フィルタデバイス100を備える高周波モジュールでは、モジュールの小型化を図ることができる。フィルタデバイス100を備える高周波モジュールでは、例えばZ軸方向において、省スペース化を図ることができる。
【0090】
[実施形態に係るフィルタデバイスの等価回路]
次に
図12を参照して実施形態に係るフィルタデバイス100の等価回路について説明する。
図12は、実施形態に係るフィルタデバイス100の等価回路を示す回路図である。上記の実施形態のフィルタデバイス100は、フィルタ回路200を含む。フィルタ回路200は、高周波回路を含む。フィルタ回路200は、インピーダンスを整合可能なラダー型のフィルタ回路である。
【0091】
フィルタ回路200は、4つの直列腕の共振子210と、4つの並列腕の共振子220とを備える。直列腕の共振子210は、抵抗素子、容量素子、及びインダクタンス素子を含む。並列腕の共振子220は、抵抗素子、容量素子、及びインダクタンス素子を含む。直列腕の共振子210は、BAWフィルタでもよい。並列腕の共振子220は、BAWフィルタでもよい。直列腕の共振子210は、入力端子241及び出力端子242に直列に接続されている。並列腕の共振子220は、入力端子241及び出力端子242に並列に接続されている。
【0092】
フィルタ回路200は、並列腕の共振子220に直列に接続されたインダクタンス230を含む。4つの並列腕の共振子220には、それぞれインダクタンス230が接続されている。インダクタンス230は、フィルタデバイス100におけるインダクタンス50である。
【0093】
並列腕の共振子220に接続する自己インダクタンスLは、直列腕の共振子210に接続する自己インダクタンスLに比べて大きな値が必要である。
図1に示されるキャップ30の側面30cに設けられたインダクタンス50を、並列腕の共振子220に接続されたインダクタンス230とすることにより、省スペース化を図ることができる。
【0094】
[実施形態に係る高周波モジュールを備える無線通信装置]
次に
図13を参照して実施形態に係る高周波モジュール310を備える無線通信装置300について説明する。
図13は、実施形態に係る高周波モジュール310を備える無線通信装置300のブロック図である。なお、本実施形態の説明において、上記の実施形態及び参考形態と同様の説明は省略する。
【0095】
無線通信装置300は、アンテナ301,302、高周波モジュール310、トランシーバ303、及びBBプロセッサー304を備える。アンテナ301は、送信用アンテナであり、アンテナ302は、受信用アンテナである。
【0096】
高周波モジュール310は、例えばRFFEモジュールである。「RFFEモジュール」は、高周波フロントエンドモジュールの略称である。高周波モジュール310は、BPF311,312、スイッチ313,314、PA315,LNA316を有する。高周波モジュール310は、例えば、信号送信回路及び信号受信回路を有する。信号送信回路は、BPF311、スイッチ313、及びPA315を含む。信号受信回路は、BPF312、スイッチ314、及びLNA316を含む。
【0097】
上記の実施形態に係るフィルタデバイス100は、BPF311,312として使用されている。高周波モジュール310において、BPF311,312の両方に、フィルタデバイス100が使用されていてもよく、BPF311又はBPF312に、フィルタデバイス100が使用されていてもよい。
【0098】
BPF311は、送信側のバンドパスフィルタである。BPF311は、所望の周波数帯域の高周波信号のみを通過させることができる。PA315は、パワーアンプである。信号送信回路は、複数のPA315を有する。PA315は、BPF311に入力される前の高周波信号を増幅する。スイッチ313は、BPF311に接続されるPA315を切り替えることができる。PA315から出力された高周波信号は、スイッチ313を介して、BPF311に入力される。
【0099】
BPF312は、受信側のバンドパスフィルタである。BPF312は、所望の周波数帯域の高周波信号のみを通過させることができる。LNA316は、ローノイズアンプである。信号受信回路は、複数のLNA316を有する。LNA316は、BPF312を通過した高周波信号を増幅する。スイッチ314は、BPF312に接続されるLNA316を切り替えることができる。BPF312から出力された高周波信号は、スイッチ314を介して、LNA316に入力される。
【0100】
トランシーバ303は、LNA316から入力した受信信号をBBプロセッサー304に出力する。トランシーバ303は、BBプロセッサー304から入力した送信信号をPA315に出力する。BBプロセッサー304は、変調前の信号及び復調後の信号であるベースバンド信号を扱う集積回路である。
【0101】
このように、上記のフィルタデバイス100は、無線通信装置300の高周波モジュール310において、BPF311,312として使用することができる。
【0102】
尚、上記実施形態に挙げた構成等に対し、その他の構成要素が組み合わされるなどした他の実施形態であってもよく、ここで示した構成に本発明が何等限定されるものではない。この点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【0103】
上記の実施形態では、キャップ30,30Bの側面30c,30d,30e,30fにインダクタンス50,50Bが形成されている場合について例示しているが、インダクタンス50,50Bは、キャップ30のその他の側面に形成されていてもよい。キャップ30,30Bの側面は、XZ面及びYZ面に限定されず、これらのXZ面及びYZ面に対して傾斜するように配置された面でもよい。また、キャップ30,30Bの側面は、Z軸方向に沿う面でもよく、Z軸方向に対して傾斜する面でもよい。このような側面に、インダクタンス50,50Bが形成されていてもよい。
【0104】
また、キャップ30は、Z軸方向に見て、矩形状を成し、4つの側面の全てに、インダクタンス50,50Bが形成されていてもよく、1つの側面にインダクタンス50,50Bが形成されていてもよく、複数の側面にインダクタンス50,50Bが形成されていてもよい。
【0105】
また、キャップ30,30Bの側面は、Z軸方向に見て、直線的に配置された面でもよく、湾曲している面でもよい。
【0106】
また、
図9に示される第2参考形態に係るフィルタデバイス156において、キャップ153の側面に、インダクタンス50,50Bが形成されていてもよい。この構成のフィルタデバイス156では、キャップ153の側面に、インダクタンス50,50Bを備えることにより、チップインダクタ154の設置数量の削減、及びチップインダクタ154のサイズダウンを図ることができる。その結果、高周波モジュール150の大型化を回避することができる。
【0107】
また、
図11に示される第4参考形態に係るフィルタデバイス156において、キャップ153の側面に、インダクタンス50,50Bが形成されていてもよい。これにより、多層基板171に形成されたパターンインダクタンスの設置数量の削減、及びパターンインダクタンスの面積の縮小を図ることができる。その結果、高周波モジュール170の大型化を回避することができる。
【0108】
また、
図10に示される第3参考形態に係る高周波モジュール160において、パッケージ161及び蓋162の側面に、インダクタンス50,50Bが形成されていてもよい。これにより、ボンディングワイヤ163の設置数量の削減、及びボンディングワイヤ163が配置されるスペースの縮小を図ることができる。その結果、高周波モジュール160の大型化を回避することができる。フィルタデバイスは、Z軸方向において、BAWフィルタチップ152に対して離れて配置された板状の部材(キャップ)を備え、この板状の部材の側面に、インダクタンス50,50Bが形成されていてもよい。
【0109】
また、
図9~
図11に示される参考形態に係るBAWフィルタチップ152において、BAWフィルタチップ152の側面に、インダクタンス60が形成されていてもよい。これにより、インダクタンス50,60の設計の自由度が向上される。
【符号の説明】
【0110】
100,100B,100C:フィルタデバイス、20:BAWフィルタチップ(弾性波共振子フィルタチップ)、21a:第1面(弾性波共振子フィルタチップの第1面)、21b:第2面(弾性波共振子フィルタチップの第2面)、30,30B:キャップ、30a:第1面(キャップの第1面)、30b:第2面(キャップの第2面)、30c:側面、30d:側面(第1側面)、30e:側面(第2側面)、30f:側面(第1側面)、40:ピラー(スペーサ)、50,50B:インダクタンス、60:インダクタンス(第2インダクタンス)、110:高周波モジュール、111:RF素子(高周波素子)、200:フィルタ回路、210:直列腕の共振子、220:並列腕の共振子、241:入力端子、300:無線通信装置、310:高周波モジュール、311,312:BPF(フィルタデバイス)、X:X軸方向(第2方向)、Y:Y軸方向、Z:Z軸方向(第1方向)。