(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016557
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】解析装置、解析方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/15 20200101AFI20240131BHJP
G06F 30/18 20200101ALI20240131BHJP
G06F 30/23 20200101ALI20240131BHJP
G06F 111/10 20200101ALN20240131BHJP
G06F 113/16 20200101ALN20240131BHJP
G06F 119/04 20200101ALN20240131BHJP
【FI】
G06F30/15
G06F30/18
G06F30/23
G06F111:10
G06F113:16
G06F119:04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118779
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 宗一郎
(72)【発明者】
【氏名】松村 友多佳
(72)【発明者】
【氏名】島田 茂樹
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA05
5B146CA01
5B146DJ02
5B146DJ07
5B146DJ14
(57)【要約】
【課題】ケーブルの端部における変形を正確に推定する。
【解決手段】解析装置は、ケーブルの第1端が取り付けられる位置及び角度と、第2端が取り付けられる位置及び角度とを設定する設定部と、前記第1端の位置及び角度並びに前記第2端の位置及び角度が設定された前記ケーブルの、サスペンションが第1状態のときの形状である第1形状及び前記サスペンションが第2状態のときの形状である第2形状を推定する推定部と、推定された前記ケーブルの前記第1形状及び前記第2形状に基づいて、前記ケーブルの曲率変化量を算出する算出部と、を備え、前記推定部は、前記ケーブル全体を仮想的に模擬したケーブルモデルと、前記ケーブルの前記第1端に取り付けられる第1部材及び前記第2端に取り付けられる第2部材のそれぞれを仮想的に模擬した第1部材モデル及び第2部材モデルとを用いて、前記第1形状及び前記第2形状を推定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両において車輪を回転可能に支持する支持機構又は前記支持機構に固定された部品に第1端が取り付けられ、サスペンションを介して前記支持機構に接続された車体に第2端が取り付けられるケーブルを解析する解析装置であって、
前記ケーブルの前記第1端が前記支持機構又は前記支持機構に固定された部品に取り付けられる位置及び角度と、前記第2端が前記車体に取り付けられる位置及び角度とを設定する設定部と、
前記設定部によって前記第1端の位置及び角度並びに前記第2端の位置及び角度が設定された前記ケーブルの、前記サスペンションが第1状態のときの形状である第1形状及び前記サスペンションが第2状態のときの形状である第2形状を推定する推定部と、
前記推定部によって推定された前記ケーブルの前記第1形状及び前記第2形状に基づいて、前記ケーブルの曲率変化量を算出する算出部と、
を備え、
前記推定部は、前記ケーブル全体を均一な物性で仮想的に模擬したケーブルモデルと、
前記ケーブルの前記第1端に取り付けられる第1部材及び前記第2端に取り付けられる第2部材のそれぞれをソリッド要素として仮想的に模擬した第1部材モデル及び第2部材モデルとを用いて、前記第1形状及び前記第2形状を推定する、
解析装置。
【請求項2】
前記物性は、実際のケーブルから測定された曲げ剛性又は前記曲げ剛性から求められる弾性率を含む、
請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記ケーブルモデルは、梁の微分方程式に基づいて定義される梁要素を用いてモデル化されている、
請求項1に記載の解析装置。
【請求項4】
前記サスペンションの前記第1状態は、前記サスペンションの設計上の最小長の状態であり、前記第2状態は、前記サスペンションの設計上の最大長の状態である、
請求項1に記載の解析装置。
【請求項5】
前記解析装置は、前記算出部によって算出された前記ケーブルの曲率変化量に基づいて、前記ケーブルの屈曲寿命を決定する決定部をさらに備える、
請求項1に記載の解析装置。
【請求項6】
前記決定部は、実際のケーブルに対して屈曲試験を実施することによって得られた曲率変化量と屈曲寿命との関係を用いて、前記ケーブルの屈曲寿命を決定する、
請求項5に記載の解析装置。
【請求項7】
前記解析装置は、前記ケーブルの長手方向の位置と前記算出部によって算出された曲率変化量との関係を示すグラフを出力する出力部をさらに備える、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の解析装置。
【請求項8】
車両において車輪を回転可能に支持する支持機構又は前記支持機構に固定された部品に第1端が取り付けられ、サスペンションを介して前記支持機構に接続された車体に第2端が取り付けられるケーブルを解析するための解析方法であって、
前記ケーブルの前記第1端が前記支持機構又は前記支持機構に固定された部品に取り付けられる位置及び角度と、前記第2端が前記車体に取り付けられる位置及び角度とを設定するステップと、
前記第1端の位置及び角度並びに前記第2端の位置及び角度が設定された前記ケーブルの、前記サスペンションが第1状態のときの形状である第1形状及び前記サスペンションが第2状態のときの形状である第2形状を推定するステップと、
推定された前記ケーブルの前記第1形状及び前記第2形状に基づいて、前記ケーブルの曲率変化量を算出するステップと、
を含み、
前記推定するステップは、前記ケーブル全体を均一な物性で仮想的に模擬したケーブルモデルと、前記ケーブルの前記第1端に取り付けられる第1部材及び前記第2端に取り付けられる第2部材のそれぞれをソリッド要素として仮想的に模擬した第1部材モデル及び第2部材モデルとを用いて、前記第1形状及び前記第2形状を推定することを含む、
解析方法。
【請求項9】
車両において車輪を回転可能に支持する支持機構又は前記支持機構に固定された部品に第1端が取り付けられ、サスペンションを介して前記支持機構に接続された車体に第2端が取り付けられるケーブルを解析するためのコンピュータプログラムであって、
コンピュータに、
前記ケーブルの前記第1端が前記支持機構又は前記支持機構に固定された部品に取り付けられる位置及び角度と、前記第2端が前記車体に取り付けられる位置及び角度とを設定するステップと、
前記第1端の位置及び角度並びに前記第2端の位置及び角度が設定された前記ケーブルの、前記サスペンションが第1状態のときの形状である第1形状及び前記サスペンションが第2状態のときの形状である第2形状を推定するステップと、
推定された前記ケーブルの前記第1形状及び前記第2形状に基づいて、前記ケーブルの曲率変化量を算出するステップと、
を実行させ、
前記推定するステップは、前記ケーブル全体を均一な物性で仮想的に模擬したケーブルモデルと、前記ケーブルの前記第1端に取り付けられる第1部材及び前記第2端に取り付けられる第2部材のそれぞれをソリッド要素として仮想的に模擬した第1部材モデル及び第2部材モデルとを用いて、前記第1形状及び前記第2形状を推定することを含む、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、解析装置、解析方法、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両内で配索されるワイヤハーネスの形状を有限要素法により算出するワイヤハーネス解析装置が開示されている。特許文献1に開示されたワイヤハーネス解析装置は、連続体とみなしたワイヤハーネスを複数の梁要素に離散化し、ワイヤハーネスの内部状況又はワイヤハーネスが車両に組み付けられる際の作業環境を考慮して補正された物性値を梁要素に割り当て、補正した物性値に基づき、ワイヤハーネスの形状を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、車両に搭載される電動パーキングブレーキ(EPB)システム、アンチロックブレーキ(ABS)システムでは、ホイルハウス内のパーキングブレーキユニット、車輪速センサ等と車体に配置された車載制御装置とが電気絶縁ケーブルによって電気的に接続される。このようなケーブルは、車輪を回転可能に支持する軸受けに固定された部品、例えば、サスペンションアーム、パーキングブレーキユニット等と、車体のホイルハウス付近の部位とに掛け渡され、サスペンションの動きに応じて変形する。ケーブルが変形した場合、ケーブルの端部における変形量が大きくなりやすく、端部付近において断線、被覆の破れ等の損傷が生じる可能性が高い。しかしながら、特許文献1に開示されたワイヤハーネス解析装置では、ワイヤハーネスの端部を含めた全体が梁要素として均等にモデル化されているため、端部における変形の推定が十分ではないおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る解析装置は、車両において車輪を回転可能に支持する支持機構又は前記支持機構に固定された部品に第1端が取り付けられ、サスペンションを介して前記支持機構に接続された車体に第2端が取り付けられるケーブルを解析する解析装置であって、前記ケーブルの前記第1端が前記支持機構又は前記支持機構に固定された部品に取り付けられる位置及び角度と、前記第2端が前記車体に取り付けられる位置及び角度とを設定する設定部と、前記設定部によって前記第1端の位置及び角度並びに前記第2端の位置及び角度が設定された前記ケーブルの、前記サスペンションが第1状態のときの形状である第1形状及び前記サスペンションが第2状態のときの形状である第2形状を推定する推定部と、前記推定部によって推定された前記ケーブルの前記第1形状及び前記第2形状に基づいて、前記ケーブルの曲率変化量を算出する算出部と、を備え、前記推定部は、前記ケーブル全体を均一な物性で仮想的に模擬したケーブルモデルと、前記ケーブルの前記第1端に取り付けられる第1部材及び前記第2端に取り付けられる第2部材のそれぞれをソリッド要素として仮想的に模擬した第1部材モデル及び第2部材モデルとを用いて、前記第1形状及び前記第2形状を推定する。
【0006】
本開示は、上記のような特徴的な構成を備える解析装置として実現することができるだけでなく、特徴的なステップを含む解析方法として実現したり、特徴的なステップをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムとして実現したりすることができる。本開示は、解析装置を含むシステムとして実現したり、解析装置の一部又は全部を半導体集積回路として実現したりすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ケーブルの端部における変形を正確に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係る解析装置による解析対象であるケーブルを説明するための図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る解析装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る解析装置の機能の一例を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、車両に配策されたケーブルの形状を説明するための図である。
【
図5】
図5は、ケーブルの解析モデル全体の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、ケーブルの曲率及び曲率変化量の一例を示すグラフである。
【
図7】
図7は、実施形態に係る解析装置による解析処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の実施形態の概要>
以下、本開示の実施形態の概要を列記して説明する。
【0010】
(1) 本実施形態に係る解析装置は、車両において車輪を回転可能に支持する支持機構又は前記支持機構に固定された部品に第1端が取り付けられ、サスペンションを介して前記支持機構に接続された車体に第2端が取り付けられるケーブルを解析する解析装置であって、前記ケーブルの前記第1端が前記支持機構又は前記支持機構に固定された部品に取り付けられる位置及び角度と、前記第2端が前記車体に取り付けられる位置及び角度とを設定する設定部と、前記設定部によって前記第1端の位置及び角度並びに前記第2端の位置及び角度が設定された前記ケーブルの、前記サスペンションが第1状態のときの形状である第1形状及び前記サスペンションが第2状態のときの形状である第2形状を推定する推定部と、前記推定部によって推定された前記ケーブルの前記第1形状及び前記第2形状に基づいて、前記ケーブルの曲率変化量を算出する算出部と、を備え、前記推定部は、前記ケーブル全体を均一な物性で仮想的に模擬したケーブルモデルと、前記ケーブルの前記第1端に取り付けられる第1部材及び前記第2端に取り付けられる第2部材のそれぞれをソリッド要素として仮想的に模擬した第1部材モデル及び第2部材モデルとを用いて、前記第1形状及び前記第2形状を推定する。これにより、第1部材及び第2部材をソリッド要素としてモデル化するため、第1部材及び第2部材の近傍におけるケーブルの変形を正確に推定することができる。
【0011】
(2) 上記(1)において、前記物性は、実際のケーブルから測定された曲げ剛性又は前記曲げ剛性から求められる弾性率を含んでもよい。これにより、ケーブルの曲げ剛性の実測値を用いて、ケーブルを正確にモデル化することができる。
【0012】
(3) 上記(1)又は(2)において、前記ケーブルモデルは、梁の微分方程式によって定義される梁要素を用いてモデル化されていてもよい。これにより、ケーブルを単純な梁要素としてモデル化することができ、ケーブルの第1形状及び第2形状の推定の計算負荷を抑制することができる。
【0013】
(4) 上記(1)から(3)のいずれか1つにおいて、前記サスペンションの前記第1状態は、前記サスペンションの設計上の最小長の状態であり、前記第2状態は、前記サスペンションの設計上の最大長の状態であってもよい。これにより、サスペンションの動作によるケーブルの最大曲率変化量を算出することができる。
【0014】
(5) 上記(1)から(4)のいずれか1つにおいて、前記解析装置は、前記算出部によって算出された前記ケーブルの曲率変化量に基づいて、前記ケーブルの屈曲寿命を決定する決定部をさらに備えてもよい。これにより、ケーブルの屈曲寿命をシミュレーションによって求めることができる。
【0015】
(6) 上記(5)において、前記決定部は、実際のケーブルに対して屈曲試験を実施することによって得られた曲率変化量と屈曲寿命との関係を用いて、前記ケーブルの屈曲寿命を決定してもよい。これにより、シミュレーションによりケーブルの屈曲寿命を正確に推定することができる。
【0016】
(7) 上記(1)から(6)のいずれか1つにおいて、前記解析装置は、前記ケーブルの長手方向の位置と前記算出部によって算出された曲率変化量との関係を示すグラフを出力する出力部をさらに備えてもよい。これにより、ユーザは曲率変化量をケーブルの位置毎に確認することができる。
【0017】
(8) 本実施形態に係る解析方法は、車両において車輪を回転可能に支持する支持機構又は前記支持機構に固定された部品に第1端が取り付けられ、サスペンションを介して前記支持機構に接続された車体に第2端が取り付けられるケーブルを解析するための解析方法であって、前記ケーブルの前記第1端が前記支持機構又は前記支持機構に固定された部品に取り付けられる位置及び角度と、前記第2端が前記車体に取り付けられる位置及び角度とを設定するステップと、前記第1端の位置及び角度並びに前記第2端の位置及び角度が設定された前記ケーブルの、前記サスペンションが第1状態のときの形状である第1形状及び前記サスペンションが第2状態のときの形状である第2形状を推定するステップと、推定された前記ケーブルの前記第1形状及び前記第2形状に基づいて、前記ケーブルの曲率変化量を算出するステップと、を含み、前記推定するステップは、前記ケーブル全体を均一な物性で仮想的に模擬したケーブルモデルと、前記ケーブルの前記第1端に取り付けられる第1部材及び前記第2端に取り付けられる第2部材のそれぞれをソリッド要素として仮想的に模擬した第1部材モデル及び第2部材モデルとを用いて、前記第1形状及び前記第2形状を推定することを含む。これにより、第1部材及び第2部材をソリッド要素としてモデル化するため、第1部材及び第2部材の近傍におけるケーブルの変形を正確に推定することができる。
【0018】
(9) 本実施形態に係るコンピュータプログラムは、車両において車輪を回転可能に支持する支持機構又は前記支持機構に固定された部品に第1端が取り付けられ、サスペンションを介して前記支持機構に接続された車体に第2端が取り付けられるケーブルを解析するためのコンピュータプログラムであって、コンピュータに、前記ケーブルの前記第1端が前記支持機構又は前記支持機構に固定された部品に取り付けられる位置及び角度と、前記第2端が前記車体に取り付けられる位置及び角度とを設定するステップと、前記第1端の位置及び角度並びに前記第2端の位置及び角度が設定された前記ケーブルの、前記サスペンションが第1状態のときの形状である第1形状及び前記サスペンションが第2状態のときの形状である第2形状を推定するステップと、推定された前記ケーブルの前記第1形状及び前記第2形状に基づいて、前記ケーブルの曲率変化量を算出するステップと、を実行させ、前記推定するステップは、前記ケーブル全体を均一な物性で仮想的に模擬したケーブルモデルと、前記ケーブルの前記第1端に取り付けられる第1部材及び前記第2端に取り付けられる第2部材のそれぞれをソリッド要素として仮想的に模擬した第1部材モデル及び第2部材モデルとを用いて、前記第1形状及び前記第2形状を推定することを含む。これにより、第1部材及び第2部材をソリッド要素としてモデル化するため、第1部材及び第2部材の近傍におけるケーブルの変形を正確に推定することができる。
【0019】
<本開示の実施形態の詳細>
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態の詳細を説明する。なお、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0020】
[1.解析対象]
図1は、実施形態に係る解析装置による解析対象であるケーブルを説明するための図である。本実施形態に係る解析装置による解析対象のケーブル70は、EPBシステムにおいて用いられるEPBケーブルである。
【0021】
ケーブル70は、車両10の車体11に配置された車載制御装置50と、ホイルハウス12内に配置されたパーキングブレーキユニット40とを電気的に接続するために用いられる。ホイルハウス12には、サスペンション30を介して車体11に接続された車輪20が配置されている。サスペンション30は、サスペンションアーム31を含む。サスペンションアーム31は、車輪20を回転可能に支持する支持機構の一例である。車輪20の車軸には、パーキングブレーキユニット40が配置されている。
【0022】
サスペンションアーム31には、接続部材61が固定されている。接続部材61は、ケーブル70の第1端を接続するための部材である。接続部材61からはケーブル41が延びており、接続部材61とパーキングブレーキユニット40とがケーブル41によって接続されている。
【0023】
車体11には、車載制御装置50が搭載されている。車載制御装置50は、EPBシステムの構成要素であり、パーキングブレーキユニット40を制御する。
【0024】
車体11には、接続部材62が固定されている。接続部材62は、ケーブル70の第2端を接続するための部材である。接続部材62からはケーブル51が延びており、接続部材62と車載制御装置50とがケーブル51によって接続されている。
【0025】
ケーブル70の第1端は、接続部材61に接続される。ケーブル70の第2端は、接続部材62に接続される。これにより、車載制御装置50とパーキングブレーキユニット40とが電気的に接続される。
【0026】
ケーブル70の第1端には、合成樹脂製の補強部材である第1部材71が設けられている。第1部材71は、例えば、ケーブル70の外径と同じ内径を有する円筒であり、ケーブル70の第1端を被覆する。ケーブル70の第1端は、カシメによってサスペンションアーム31に固定されている。ただし、ケーブル70の第1端は、サスペンションアーム31に固定されなくてもよい。支持機構であるサスペンションアームに固定された部品、例えばブレーキキャリパーに、ケーブル70の第1端が固定されてもよい。
【0027】
ケーブル70の第2端には、合成樹脂製の補強部材である第2部材72が設けられている。第2部材72は、例えば、ケーブル70の外径と同じ内径を有する円筒であり、ケーブル70の第2端を被覆する。ケーブル70の第2端は、カシメによって車体11に固定されている。
【0028】
サスペンション30が伸縮することにより、車体11と車輪20との相対的な位置が変化する。これにより、ケーブル70が変形する。ケーブル70の第2端は車体11に固定されているため、車体11と第2端との位置関係は、サスペンション30の動作によって変化しない。ケーブル70の第1端はサスペンションアーム31に固定されているため、車体11と第1端との位置関係は、サスペンション30の動作によって変化する。すなわち、車体11に固定されたケーブル70の第2端は固定端であり、サスペンションアーム31に固定されたケーブル70の第1端は可動端である。
【0029】
サスペンションの動作方向は決まっているため、ケーブル70の変形パターンも決まっている。すなわち、ケーブル70は一定のパターンにしたがって変形する。なお、前輪に配索されたケーブルの変形パターンと、後輪に配策されたケーブルの変形パターンとは異なる。例えば、前輪に配策されたケーブルの変形パターンは、サスペンションだけでなく、ステアリングによる車輪の操舵角の影響を受ける場合がある。
【0030】
ケーブル70の変形量は均一ではなく、変形量が大きい箇所と、変形量が小さい箇所とが存在する。すなわち、ケーブル70が変形すると、ケーブル70の長手方向の位置に応じて、変形量は異なる。このため、サスペンションの動作によって繰り返しケーブル70が変形すると、ケーブル70において変形量が大きい箇所に断線、被覆の破れ等の損傷が生じる。
【0031】
[2.解析装置のハードウェア構成]
図2は、実施形態に係る解析装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係る解析装置100は、有限要素法を用いてケーブル70を解析する。解析装置100は、プロセッサ101と、不揮発性メモリ102と、揮発性メモリ103と、入力装置104と、表示装置105と、通信インタフェース(通信I/F)106とを含む。
【0032】
揮発性メモリ103は、例えばSRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の半導体メモリである。不揮発性メモリ102は、例えばフラッシュメモリ、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)等である。不揮発性メモリ102には、コンピュータプログラムである解析プログラム201及び解析プログラム201の実行に使用されるデータが格納される。解析装置100の各機能は、解析プログラム201がプロセッサ101によって実行されることで発揮される。解析プログラム201は、フラッシュメモリ、ROM、CD-ROMなどの記録媒体に記憶させることができる。プロセッサ101は、解析プログラム201によって、有限要素法によるケーブル70の解析を行うことができる。
【0033】
プロセッサ101は、例えばCPU(Central Processing Unit)である。ただし、プロセッサ101は、CPUに限られない。プロセッサ101は、GPU(Graphics Processing Unit)であってもよい。プロセッサ101は、例えば、マルチコアプロセッサである。プロセッサ101は、シングルコアプロセッサであってもよい。プロセッサ101は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)であってもよいし、ゲートアレイ、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスであってもよい。この場合、ASIC又はプログラマブルロジックデバイスは、解析プログラム201と同一の処理を実行可能に構成される。
【0034】
不揮発性メモリ102には、解析プログラム201によって生成されるケーブルモデル202が格納される。ケーブルモデル202は、ケーブル70全体を均一な物性で仮想的に模擬したモデルである。ケーブルモデル202が有する物性は、曲げ剛性を含む。曲げ剛性は、ケーブル70のサンプルから測定された値(実測値)である。具体的な一例では、曲げ剛性は、-30℃の低温環境下において行われた三点曲げ試験による実測値である。ケーブルモデル202が有する物性は、曲げ剛性に限られず、曲げ剛性から求められる弾性率であってもよい。弾性率は、ケーブルモデル202の断面2次モーメントと曲げ剛性とから算出される。
【0035】
本実施形態では、ケーブルモデル202は梁要素である。すなわち、ケーブルモデル202は、梁の微分方程式によって定義されたモデルである。
【0036】
さらに不揮発性メモリ102には、第1部材モデル203及び第2部材モデル204が格納される。第1部材モデル203は、第1部材71をソリッド要素として仮想的に模擬したモデルである。第2部材モデル204は、第2部材72をソリッド要素として仮想的に模擬したモデルである。ソリッド要素とは、3次元形状で表現された解析モデルであり、複数の小領域(メッシュ)によって構成されている。各小領域には、弾性率、ポアソン比、比重等の物性値が割り当てられている。
【0037】
不揮発性メモリ102には、属性データ205が格納される。属性データ205は、ケーブル70の属性を示すデータである。属性は、例えば、ケーブル70の長さ、曲げ剛性、及びポアソン比を含む。属性は、ケーブル70の比重をさらに含んでもよい。属性データ205に含まれる曲げ剛性は、三点曲げ試験による実測値である。
【0038】
不揮発性メモリ102には、屈曲寿命データ206が格納される。屈曲寿命データ206は、ケーブル70のサンプルに対して屈曲試験を実施することによって得られた曲率変化量と屈曲寿命との関係を示すデータである。具体的な一例の屈曲試験では、水平かつ互いに平行に配置された直径60mmの2本のマンドレルA、Bの間に、ケーブル70のサンプルを鉛直方向に配置して挟み、上端を一方のマンドレルAの上側に当接するように水平方向に90°屈曲させた後、他方のマンドレルBの上側に当接するように水平方向に90°屈曲させることを-30℃の低温環境下で繰り返す。この繰り返しは、ケーブル中の2本の導体を接続して抵抗値を測定しながら行い、初期抵抗値の10倍以上まで抵抗が上昇したときの回数(右側に曲げてから、左側に曲げた後、右側に戻ってくるまでを屈曲回数1回とする。)を屈曲寿命とした。屈曲寿命は、耐屈曲性の指標値の一例である。
【0039】
不揮発性メモリ102には、解析プログラム201によって生成される曲率変化量データ207が格納される。曲率変化量データ207は、ケーブル70の長手方向の位置と曲率変化量との関係を示すデータである。
【0040】
例えば、入力装置104は、キーボード及びマウス等のポインティングデバイスを含む。入力装置104は、表示装置105の画面に重ねられた静電容量式又は感圧式のタッチパッドであってもよい。入力装置104は、解析装置100へのデータの入力に用いられる。
【0041】
表示装置105は、例えば液晶パネル又はOEL(有機エレクトロルミネッセンス)パネルを含む。表示装置105は、文字又は図形の情報を表示することができる。
【0042】
通信I/F106は、外部装置と通信することができる。例えば、通信I/F106は、ネットワークを介してCAD(Computer Aided Design)装置と接続されており、CAD装置からCADデータを受信することができる。
【0043】
[3.解析装置の機能]
図3は、実施形態に係る解析装置の機能の一例を示す機能ブロック図である。プロセッサ101が解析プログラム201を実行することにより、解析装置100は、入力部111と、設定部112と、生成部113と、推定部114と、算出部115と、決定部116と、出力部117として機能する。
【0044】
入力部111は、主として入力装置104又は通信I/F106によって実現される。出力部117は、主として表示装置105によって実現される。設定部112、生成部113、推定部114、算出部115、及び決定部116は、主としてプロセッサ101によって実現される。
【0045】
解析装置100は、車両10に取り付けられたケーブル70の形状を推定する。さらに具体的には、解析装置100は、初期配索時におけるケーブル70の形状(以下、「初期配索形状」という)と、サスペンション30の設計上の最大縮短時におけるケーブル70の形状(以下、「フルバウンド形状」という)と、サスペンション30の設計上の最大伸長時におけるケーブル70の形状(以下、「フルリバウンド形状」という)とを推定する。
【0046】
図4は、車両に配策されたケーブルの形状を説明するための図である。
図4には、ケーブル70の初期配索形状、フルバウンド形状、及びフルリバウンド形状それぞれの例が示される。
【0047】
ケーブル70が車両10に取り付けられる(配策される)時点において、サスペンション30は自然長状態である。ケーブル70の初期配索とは、ケーブル70が車両10に配策された当初を意味する。すなわち、ケーブル70の初期配索形状は、サスペンション30が自然長状態におけるケーブル70の形状である。
【0048】
サスペンション30の設計上の最大縮短時(以下、「フルバウンド」という)とは、設計上定められた、サスペンション30が最も縮短した状態を意味する。ケーブル70のフルバウンド形状は、第1形状の一例である。
【0049】
サスペンション30の設計上の最大伸長時(以下、「フルリバウンド」という)とは、設計上定められた、サスペンション30が最も伸長した状態を意味する。ケーブル70のフルリバウンド形状は、第2形状の一例である。
【0050】
ケーブル70の形状を推定するためには、ケーブル70の両端(第1端及び第2端)の3次元空間における位置及び角度を特定する必要がある。したがって、ケーブル70の初期配索形状を推定するためには、初期配索時における車両10での第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度を特定する必要がある。ケーブル70のフルバウンド形状を推定するためには、フルバウンド時における車両10での第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度を特定する必要がある。ケーブル70のフルリバウンド形状を推定するためには、フルリバウンド時における車両10での第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度を特定する必要がある。ただし、車体11に固定されるケーブル70の第2端は固定端であるため、第2端の取付位置及び取付角度は、初期配索時、フルバウンド時、及びフルリバウンド時において共通である。
【0051】
例えば、ユーザが入力装置104を用いることによって、初期配索時、フルバウンド時、及びフルリバウンド時のそれぞれにおけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度を解析装置100に入力する。他の例では、CAD装置(図示せず)がCADデータを送信し、解析装置100がCADデータを受信する。CADデータには、初期配索時、フルバウンド時、及びフルリバウンド時のそれぞれにおけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度、並びに、第2端の取付位置及び取付角度の情報が含まれる。
図3に戻り、入力部111は、初期配索時、フルバウンド時、及びフルリバウンド時のそれぞれにおけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度を受け付ける。
【0052】
設定部112は、入力された初期配索時、フルバウンド時、及びフルリバウンド時のそれぞれにおけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度、並びに、第2端の取付位置及び取付角度を設定する。例えば、設定部112は、初期配索時、フルバウンド時、及びフルリバウンド時のそれぞれにおけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度、並びに、第2端の取付位置及び取付角度を、設定情報として不揮発性メモリ102に保存する。
【0053】
生成部113は、ケーブルモデル202を生成する。具体的な一例では、生成部113は、属性データ205に含まれるケーブル70の長さ、曲げ剛性、及びポアソン比を用いて、ケーブルモデル202を生成する。ケーブルモデル202の生成には、さらにケーブル70の比重が用いられてもよい。
【0054】
図5は、ケーブルの解析モデル全体の一例を示す図である。
図5において、解析モデル35は、ケーブルの3次元モデルとして示されている。
【0055】
解析モデル35は、ケーブルモデル202と、第1部材モデル203と、第2部材モデル204とが組み合わされて構成される。
【0056】
ケーブルモデル202は、有限要素法における梁要素である。すなわち、ケーブルモデル202は、線として定義された要素である。
図5において、ケーブルモデル202は断面積を有する円柱状の3次元モデルとして示されている。
図5に示すように、解析装置100は、表示装置105にケーブルモデル202を3次元の円柱として表示するが、ケーブルモデル202の実体は断面積を有しない線モデルである。曲げ剛性は、ケーブルモデル202において弾性率として用いられる。
【0057】
第1部材モデル203及び第2部材モデル204は、有限要素法におけるソリッド要素である。すなわち、第1部材モデル203及び第2部材モデル204は、3次元形状を定義された要素である。第1部材モデル203は、第1部材71を模擬した3次元形状を有し、第2部材モデル204は、第2部材72を模擬した3次元形状を有する。すなわち、第1部材モデル203及び第2部材モデル204のそれぞれは、円筒形に定義されている。第1部材モデル203及び第2部材モデル204のそれぞれは、複数の小領域に分割されている。第1部材モデル203の各小領域には、第1部材71を模擬した物性情報(弾性率、ポアソン比、及び比重)が割り当てられ、第2部材モデル204の各小領域には、第2部材72を模擬した物性情報(弾性率、ポアソン比、及び比重)が割り当てられている。
【0058】
図3に戻り、推定部114は、設定部112によって第1端の位置及び角度並びに第2端の位置及び角度が設定されたケーブル70の形状を推定する。すなわち、推定部114は、ケーブル70の初期配索形状、フルバウンド形状、及びフルリバウンド形状を推定する。
【0059】
推定部114は、設定部112によって設定された、初期再索時におけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度と、ケーブルモデル202と、第1部材モデル203と、第2部材モデル204とに基づいて、ケーブル70の初期配索形状を推定する。推定部114は、設定部112によって設定された、フルバウンド時におけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度と、ケーブルモデル202と、第1部材モデル203と、第2部材モデル204とに基づいて、ケーブル70のフルバウンド形状を推定する。推定部114は、設定部112によって設定された、フルリバウンド時におけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度と、ケーブルモデル202と、第1部材モデル203と、第2部材モデル204とに基づいて、ケーブル70のフルリバウンド形状を推定する。
【0060】
ケーブル70は、導体及びこれを覆う絶縁層からなる少なくとも1本の絶縁線を含むコア電線をシースで被覆した構造を有する。シースは、例えば内側シース層と、前記内側シース層を覆う外側シース層の2層構造を有する。ケーブル70はこのような複雑な構造を有するため、ソリッド要素としてケーブル70を模擬すると、解析モデルも複雑な構造となる。したがって、ソリッド要素の解析モデルを用いてケーブル70の形状を推定すると、計算量が大きくなる。本実施形態に係る解析装置100によれば、ケーブルモデル202が、ケーブル70の全体を均一な物性で仮想的に模擬した梁要素であるので、ケーブル70の形状を推定するための計算負荷を抑制することができる。
【0061】
ケーブル70は、第1端が第1部材71により被覆され、第2端が第2部材72により被覆される。このような構成のケーブル70は、ケーブル70が変形した場合に、ケーブル70が露出した部分と第1部材71との境界付近、及び、ケーブル70が露出した部分と第2部材72との境界付近において変形量が大きくなりやすく、これらの部位において断線、被覆の破れ等の損傷が生じる可能性が高い。本実施形態に係る解析装置100によれば、第1部材71及び第2部材72をソリッド要素として詳細に仮想化するため、ケーブル70の変形量が大きい部位を正確に解析することができ、ケーブル70の端部における変形を正確に推定することができる。
【0062】
算出部115は、推定部114によって推定されたケーブル70のフルバウンド形状及びフルリバウンド形状に基づいて、ケーブル70の曲率変化量を算出する。
【0063】
具体的には、算出部115は、推定されたフルバウンド形状のケーブル70において、ケーブル70の長手方向(軸線方向)の位置毎に、曲率を算出する。さらに算出部115は、推定されたフルリバウンド形状のケーブル70において、ケーブル70の長手方向の位置毎に、曲率を算出する。算出部115は、ケーブル70の長手方向の位置毎に、フルバウンド時における曲率と、フルリバウンド時における曲率との差分を、曲率変化量として算出する。
【0064】
図6は、ケーブルの曲率及び曲率変化量の一例を示すグラフである。
図6において、縦軸は曲率及び曲率変化量を示し、横軸はケーブル70の長手方向の位置として、可動端(第1端)からの距離を示している。
図6には、フルバウンド時における曲率のグラフと、フルリバウンド時における曲率のグラフと、曲率変化量のグラフと、ねじれ率変化量のグラフとが示されている。ケーブル70は部位によって屈曲する方向が異なる。このため、曲率のグラフでは、曲率の絶対値が示されている。ケーブル70は、変形によって屈曲するだけでなく、ねじれが生じる。ねじれ率変化量は、フルバウンド時におけるケーブル70のねじれ量と、フルリバウンド時におけるケーブル70のねじれ量との差分である。
【0065】
図3に戻り、算出部115は、算出したケーブル70の長手方向の各位置の曲率変化量を示す曲率変化量データ207を生成し、生成された曲率変化量データ207を不揮発性メモリ102に保存する。
【0066】
決定部116は、算出部115によって算出されたケーブル70の曲率変化量に基づいて、ケーブルの屈曲寿命を決定する。具体的な一例では、決定部116は、実際のケーブル70に対して屈曲試験を実施することによって得られた曲率変化量と屈曲寿命との関係を用いて、ケーブル70の屈曲寿命を決定する。すなわち、決定部116は、屈曲寿命データ206を用いて、ケーブル70の屈曲寿命を決定する。
【0067】
出力部117は、ケーブル70の解析結果を出力する。具体的には、表示装置105は、ケーブル70の解析結果を表示する。解析結果は、算出部115によって算出された曲率変化量、及び、決定部116によって決定された屈曲寿命の少なくとも1つを含む。
【0068】
出力部117は、ケーブル70の長手方向の位置と算出部115によって算出された曲率変化量との関係を示すグラフを出力することができる。具体的には、出力部117は、不揮発性メモリ102に格納された曲率変化量データ207を参照し、曲率変化量のグラフを出力する。これにより、ユーザは視覚的に各位置の曲率変化量を把握することができる。
【0069】
[4.解析装置の動作]
本実施形態に係る解析装置100の動作を説明する。プロセッサ101は、解析プログラム201を実行することにより、以下の解析処理を行う。
図7は、実施形態に係る解析装置による解析処理の一例を示すフローチャートである。
【0070】
例えば、ユーザが入力装置104を用いて、初期配索時におけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度と、フルバウンド時におけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度と、フルリバウンド時におけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度とを解析装置100に入力する。他の例では、CAD装置(図示せず)がCADデータを解析装置100へ送信する。CADデータには、初期配索時におけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度と、フルバウンド時におけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度と、フルリバウンド時におけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度とが含まれる。プロセッサ101は、初期配索時におけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度と、フルバウンド時におけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度と、フルリバウンド時におけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度とを取得する(ステップS101)。
【0071】
プロセッサ101は、入力された初期配索時におけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度と、フルバウンド時におけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度と、フルリバウンド時におけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度を設定する(ステップS102)。例えば、プロセッサ101は、初期配索時におけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度と、フルバウンド時におけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度と、フルリバウンド時におけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度を含む設定情報を生成し、生成された設定情報を不揮発性メモリ102に格納する。
【0072】
プロセッサ101は、属性データ205を参照し、属性データ205に含まれるケーブル70の長さ、曲げ剛性、及びポアソン比を用いて、ケーブルモデル202を生成する(ステップS103)。
【0073】
プロセッサ101は、初期配索時におけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度、ケーブルモデル202、第1部材モデル203、及び第2部材モデル204を用いて、ケーブル70の初期配索形状を推定する。プロセッサ101は、フルバウンド時におけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度、ケーブルモデル202、第1部材モデル203、及び第2部材モデル204を用いて、ケーブル70のフルバウンド形状を推定する。さらにプロセッサ101は、フルリバウンド時におけるケーブル70の第1端の取付位置及び取付角度並びに第2端の取付位置及び取付角度、ケーブルモデル202、第1部材モデル203、及び第2部材モデル204を用いて、ケーブル70のフルリバウンド形状を推定する(ステップS104)。
【0074】
プロセッサ101は、フルバウンド時におけるケーブル70の各位置における曲率を算出し、フルリバウンド時におけるケーブル70の各位置における曲率を算出する。さらにプロセッサ101は、フルリバウンド時における曲率とフルリバウンド時の曲率との差分を、曲率変化量としてケーブル70の位置毎に算出する(ステップS105)。
【0075】
プロセッサ101は、ケーブル70の長手方向の位置と曲率変化量との対応関係を示す曲率変化量データ207を生成し、生成された曲率変化量データ207を不揮発性メモリ102に格納する(ステップS106)。
【0076】
プロセッサ101は、屈曲寿命データ206を参照し、算出された曲率変化量からケーブル70の屈曲寿命を決定する(ステップS107)。例えば、曲率変化量の最大値に対応する屈曲寿命が、ケーブル70の屈曲寿命として決定される。
【0077】
プロセッサ101は、表示装置105に解析結果を表示させる(ステップS108)。以上で、解析処理が終了する。
【0078】
[5.変形例]
上述した実施形態では、ケーブルモデル202を梁要素としたが、これに限定されない。ケーブルモデル202は、ケーブル70の全体をを均一な物性で仮想的に模擬したモデルであれば、梁要素でなくてもよい。例えば、軸方向に輪切りにした円柱のソリッド要素の各小領域に同一の物性値(弾性率、ポアソン比、比重)を割り当て、これをケーブルモデルとしてもよい。
【0079】
上述した実施形態では、EPBケーブルを解析対象としたが、これに限定されない。例えば、車輪速センサの検出値を伝送するための信号ケーブルを解析対象としてもよい。
【0080】
[5.補記]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的ではない。本発明の権利範囲は、上述の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及びその範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0081】
10 車両
11 車体
12 ホイルハウス
20 車輪
30 サスペンション
31 サスペンションアーム
40 パーキングブレーキユニット
41 ケーブル
50 車載制御装置
51 ケーブル
61,62 接続部材
70 ケーブル
71 第1部材
72 第2部材
100 解析装置
101 プロセッサ
102 不揮発性メモリ
103 揮発性メモリ
104 入力装置
105 表示装置
106 通信インタフェース(通信I/F)
111 入力部
112 設定部
113 生成部
114 推定部
115 算出部
116 決定部
117 出力部
201 解析プログラム
202 ケーブルモデル
203 第1部材モデル
204 第2部材モデル
205 属性データ
206 屈曲寿命データ
207 曲率変化量データ