(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165577
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】画像形成装置、寿命判断方法、および画像形成システム
(51)【国際特許分類】
G01M 13/021 20190101AFI20241121BHJP
【FI】
G01M13/021
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081870
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】神谷 昌吾
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 義和
(72)【発明者】
【氏名】石原 康弘
(72)【発明者】
【氏名】江口 達也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 隆史
(72)【発明者】
【氏名】井口 幸宣
【テーマコード(参考)】
2G024
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024BA12
2G024CA11
2G024FA06
2G024FA15
(57)【要約】
【課題】駆動系で使用される樹脂部品の正確な寿命予測を行うことができること。
【解決手段】画像形成装置1は、メカ機構を駆動させる駆動部60と、駆動部60に掛かるトルクデータを検知する検知部71と、駆動部60の周囲の温度を取得する環境情報取得部72と、トルクデータと、温度とに基づいて、駆動部60内の樹脂部品の寿命を判断する判断部80と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メカ機構を駆動させる駆動部と、
前記駆動部に掛かる負荷を検知する検知部と、
前記駆動部の周囲の環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記負荷と、前記環境情報とに基づいて、前記駆動部内の樹脂部品の寿命を判断する判断部と、
を備える部品寿命判断装置。
【請求項2】
前記駆動部は、ギアとローラを含む駆動系列を備え、
前記判断部は、
前記駆動系列の強度計算による寿命予測データを有し、
前記駆動部の動作時に掛かる負荷とそのときの環境情報の監視データを蓄積し、
蓄積した前記監視データを応力に換算して、前記寿命予測データに基づいて、強度計算に対する累積疲労損傷度を算出し、
前記駆動系列と、当該駆動系列を支持する各樹脂部品の寿命予測データを補正する、
請求項1に記載の部品寿命判断装置。
【請求項3】
前記駆動部は、ギアとローラを含む駆動系列を備え、
前記判断部は、
前記駆動系列の強度計算による寿命予測データを有し、
前記駆動部の動作時に掛かる負荷とそのときの環境情報の監視データを蓄積し、
蓄積した前記監視データを応力に換算して、前記寿命予測データに基づいて、強度計算に対する累積疲労損傷度を算出し、
前記駆動系列と、当該駆動系列を支持する各樹脂部品の寿命のカウントを修正する、
請求項1に記載の部品寿命判断装置。
【請求項4】
前記駆動系列および当該駆動系列を支持する各樹脂部品の交換時期を通知する通知部を、さらに備える、
請求項2または3に記載の部品寿命判断装置。
【請求項5】
前記駆動系列および当該駆動系列を支持する各樹脂部品の破損の可能性を警告する閾値を変更すると共に、破損の可能性を警告する通知する通知部を、さらに備える、
請求項2または3に記載の部品寿命判断装置。
【請求項6】
前記監視データは、
強度計算、トルク、衝撃強度、温度、および湿度の少なくともいずれかを含む、
請求項2または3に記載の部品寿命判断装置。
【請求項7】
前記判断部は、
前記樹脂部品の交換時期または破損の可能性を通知する際、前記駆動系列または当該駆動系列を支持する各樹脂部品の疲労強度を算出する、
請求項2または3に記載の部品寿命判断装置。
【請求項8】
前記通知部は、
前記樹脂部品の少なくともいずれかの交換時期を通知する際、当該樹脂部品を特定して、操作パネルに報知する、
請求項4に記載の部品寿命判断装置。
【請求項9】
メカ機構を駆動させる駆動部と、
前記駆動部に掛かる負荷を検知する検知部と、
前記駆動部の周囲の環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記負荷と、前記環境情報とに基づいて、前記駆動部内の樹脂部品の寿命を判断する判断部と、
を備える画像形成装置。
【請求項10】
画像形成装置と、サーバとが通信可能に接続された画像形成システムであって、
前記画像形成装置は、
メカ機構を駆動させる駆動部と、
前記駆動部に掛かる負荷を検知する検知部と、
前記駆動部の周囲の環境情報を取得する環境情報取得部と、を備え、
前記サーバは、
前記負荷と、前記環境情報とに基づいて、前記駆動部内の樹脂部品の寿命を判断する判断部を、備える、
画像形成システム。
【請求項11】
前記サーバは、
前記樹脂部品の寿命に関する情報を前記画像形成装置に通知する通知部を、さらに備える、
請求項10に記載の画像形成システム。
【請求項12】
前記画像形成装置は、
前記樹脂部品の寿命に関する情報をパネルに表示する、
請求項10に記載の画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、寿命判断方法、および画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の画像形成装置は、異なる温度環境や顧客が優先的に使用するモードの違いなど、様々な条件で使用されている。そのため、画像形成装置の寿命を予測する場合は、最悪な条件で使用されたことを想定して、寿命計算が行われる。
【0003】
そのため、画像形成装置において、例えば、ギア等の樹脂部品をリファービッシュ機として再利用できるかどうかの正確な判断は難しい。また、樹脂部品の交換のタイミングについても、使用する温度環境や使用モードにより各駆動系の蓄積ダメージが異なるため、想定外に蓄積ダメージが少なかったとしても、例えば、定期的に交換されたり、破損した部品と一緒に交換されたりする。
【0004】
また、画像形成装置の機内においても、交換可能なユニット側の駆動系列と、本体側の駆動系列とでは、動作時の温度や湿度、使用モード、経時変化によるトルクの変化などによりダメージの蓄積が異なることも多い。そのため、駆動系列ごとに寿命到達時間がずれてしまうことがあり、実使用に応じた正確な寿命計算が困難である。
【0005】
特に、複合機(MFP:Multi-Function Peripheral)やプリンタの駆動系の寿命予測において駆動系を構成する各部位の劣化度合いは、部位の材料、温度、負荷などにより、ダメージの蓄積が異なる。そのため、駆動系列および駆動系列を構成する各部品の正確な寿命を予測することは、困難である。
【0006】
例えば、駆動系列ごとに画像形成装置の使用環境が異なるため、ダメージの蓄積によっては、駆動系列ごとに寿命の到達が変化する。そのため、部品によっては早期に交換すべき部品もある。このように、駆動系列を構成する各部品の正確な寿命を予測することは、困難となっている。
【0007】
ここで、例えば、特許文献1には、「減速装置の特定の部位の寿命を比較的正確に予測できる寿命予測システムを提供する」寿命予測システムが開示されている。
【0008】
この特許文献1の要約には、「寿命予測システム1は、減速機構を有する減速装置200の寿命を予測する寿命予測システムである。寿命予測システム1は、減速装置200に設置され、減速装置の特定の部位に発生した応力を特定するための情報を検出するセンサ320と、センサ320の検出情報に基づいて、特定の部位に発生した応力を特定し、特定した応力に基づいて、当該特定の部位の寿命を予測する予測部と、を備える。」旨が記載されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に記載された寿命予測システムは、減速装置の故障による機械の停止時間を短くするために減速装置の寿命を予測している。特に、特許文献1に記載された寿命予測システムでは、センサによって検出された減速装置に掛かる外部荷重を入力することで、減速装置の寿命を、従来よりも正確に予測している。
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載された寿命予測システムは、金属で形成された減速装置を対象としているため、温度特性が考慮されていない。換言すれば、特許文献1に記載された寿命予測システムは、金属で形成された減速装置の寿命を予測する発明であるため、温度特性を考慮する必要が無い。
【0012】
これに対し、複合機やプリンタでは、樹脂材料が多数使用されており、その樹脂部品が温度特性に依存する。このため、特許文献1に記載の寿命予測システムでは、温度特性に依存する複合機やプリンタに適用することができない。
【0013】
このような課題に関し、本発明では、駆動系で使用される樹脂部品の正確な寿命予測を行うことができる、画像形成装置、寿命判断方法、および画像形成システムを、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち、本発明の上記課題は、下記の構成により解決される。
(1) メカ機構を駆動させる駆動部と、
前記駆動部に掛かる負荷を検知する検知部と、
前記駆動部の周囲の環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記負荷と、前記環境情報とに基づいて、前記駆動部内の樹脂部品の寿命を判断する判断部と、
を備える部品寿命判断装置。
【0015】
(2) 前記駆動部は、ギアとローラを含む駆動系列を備え、
前記判断部は、
前記駆動系列の強度計算による寿命予測データを有し、
前記駆動部の動作時に掛かる負荷とそのときの環境情報の監視データを蓄積し、
蓄積した前記監視データを応力に換算して、前記寿命予測データに基づいて、強度計算に対する累積疲労損傷度を算出し、
前記駆動系列と、当該駆動系列を支持する各樹脂部品の寿命予測データを補正する、
(1)に記載の部品寿命判断装置。
【0016】
(3)前記駆動部は、ギアとローラを含む駆動系列を備え、
前記判断部は、
前記駆動系列の強度計算による寿命予測データを有し、
前記駆動部の動作時に掛かる負荷とそのときの環境情報の監視データを蓄積し、
蓄積した前記監視データを応力に換算して、前記寿命予測データに基づいて、強度計算に対する累積疲労損傷度を算出し、
前記駆動系列と、当該駆動系列を支持する各樹脂部品の寿命のカウントを修正する、
(1)に記載の部品寿命判断装置。
【0017】
(4) 前記駆動系列および当該駆動系列を支持する各樹脂部品の交換時期を通知する通知部を、さらに備える、
(2)または(3)に記載の部品寿命判断装置。
【0018】
(5) 前記駆動系列および当該駆動系列を支持する各樹脂部品の破損の可能性を警告する閾値を変更すると共に、破損の可能性を警告する通知する通知部を、さらに備える、
(2)または(3)に記載の部品寿命判断装置。
【0019】
(6) 前記監視データは、
強度計算、トルク、衝撃強度、温度、および湿度の少なくともいずれかを含む、
(2)または(3)に記載の部品寿命判断装置。
【0020】
(7) 前記判断部は、
前記部品の交換時期または破損の可能性を通知する際、前記駆動系列または当該駆動系列を支持する各樹脂部品の疲労強度を算出する、
(2)または(3)に記載の部品寿命判断装置。
【0021】
(8) 前記通知部は、
前記部品の少なくともいずれかの交換時期を通知する際、当該樹脂部品を特定して、操作パネルに報知する、
(4)に記載の部品寿命判断装置。
【0022】
(9) メカ機構を駆動させる駆動部と、
前記駆動部に掛かる負荷を検知する検知部と、
前記駆動部の周囲の環境情報を取得する環境情報取得部と、
前記負荷と、前記環境情報とに基づいて、前記駆動部内の樹脂部品の寿命を判断する判断部と、
を備える画像形成装置。
【0023】
(10) 画像形成装置と、サーバとが通信可能に接続された画像形成システムであって、
前記画像形成装置は、
メカ機構を駆動させる駆動部と、
前記駆動部に掛かる負荷を検知する検知部と、
前記駆動部の周囲の環境情報を取得する環境情報取得部と、を備え、
前記サーバは、
前記負荷と、前記環境情報とに基づいて、前記駆動部内の樹脂部品の寿命を判断する判断部を、備える、
画像形成システム。
【0024】
(11) 前記サーバは、
前記樹脂部品の寿命に関する情報を前記画像形成装置に通知する通知部を、さらに備える、
(10)に記載の画像形成システム。
【0025】
(12) 前記画像形成装置は、
前記樹脂部品の寿命に関する情報をパネルに表示する、
(10)に記載の画像形成システム。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、駆動系で使用される樹脂部品の正確な寿命予測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施の形態における画像形成装置の全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】画像形成装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図3A】駆動部から取得したトルクデータを示した図である。
【
図3C】駆動部のトルクデータを応力値に換算した値を示した図である。
【
図3D】樹脂である試料B1のS-N曲線の温度依存性を示した特性図である。
【
図3E】樹脂である試料B2のS-N曲線の温度依存性を示した特性図である。
【
図3F】累積疲労損傷度によるS-N曲線を示した特性図である。
【
図4A】第1実施形態に係る画像形成装置の判断部が、監視データから各部品の寿命予測を通知する処理を示したシーケンス図である(その1)。
【
図4B】第1実施形態に係る画像形成装置の判断部が、監視データから各部品の寿命予測を通知する処理を示したシーケンス図である(その2)。
【
図4C】第1実施形態に係る画像形成装置の判断部が、監視データから各部品の寿命予測を通知する処理を示したシーケンス図である(その3)。
【
図5A】ギアと、ローラを含む駆動系列の構成を示した説明図である(その1)。
【
図5B】ギアと、ローラを含む駆動系列の構成を示した説明図である(その2)。
【
図5C】ギアと、ローラを含む駆動系列の構成を示した説明図である(その3)。
【
図5D】ギアと、ローラを含む駆動系列の構成を示した説明図である(その4)。
【
図6A】操作パネルの表示部に、第6ギアの寿命予測を報知する場合を示した説明図である。
【
図6B】操作パネルの表示部に、第3ギアの軸が破損する可能性を報知する場合を示した説明図である。
【
図7A】第2実施形態に係る画像形成システムにおけるサーバの判断部が、監視データから各部品の寿命予測を通知する処理を示したシーケンス図である(その1)。
【
図7B】第2実施形態に係る画像形成システムにおけるサーバの判断部が、監視データから各部品の寿命予測を通知する処理を示したシーケンス図である(その2)。
【
図7C】第2実施形態に係る画像形成システムにおけるサーバの判断部が、監視データから各部品の寿命予測を通知する処理を示したシーケンス図である(その3)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実現するための一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正または変更されるべきものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。なお、同一の構成については、同一の符号を付すこととし、説明を適宜、省略する。
【0029】
<本実施形態の概要>
本実施形態は、複合機およびプリンタにおける駆動系の寿命予測において、各駆動系列の強度計算による寿命予測データと、複合機およびプリンタの実使用の監視データ(環境情報、動作モード、モータ電流から換算されたトルクなど)を監視して、強度計算による寿命予測データを補正するダメージの蓄積を演算する。
【0030】
寿命予測データとは、一例として、
図3Dから
図3Fなどを用いて後述するが、実測やシミュレーションを通じて疲労破壊を示すS(Stress)-N(Number of cycles to failure)曲線を作成して、一定の繰返し応力から破断する疲労限度を用いて寿命を予測するデータである。
【0031】
これにより、本実施形態は、複合機の実際の使用条件と想定条件による寿命予測データとの乖離を演算することができ、各駆動系列および駆動系列を構成する各樹脂部品の正確な寿命を予測することができる。複合機およびプリンタにおける実使用の監視データは、例えば、環境情報、動作モード、モータ電流から換算されたトルクなどが該当し、駆動系列の安全率を演算して、警告閾値を適宜変更することができる。
【0032】
また、第2実施形態では、一例として、温度と、モータートルク電流とを監視する機能を有する画像形成装置と、複合機およびプリンタの監視データを管理する機能(判断部)を有する装置(例えば、サーバ)で構成される。なお、画像形成装置自身が判断部を備えることで、自装置で寿命予測データを管理することもできる(第1実施形態)。
【0033】
判断部は、監視データを取得し、モータの駆動系列および駆動系列を構成する各樹脂部品の強度を推測することで、適切な保守期間を推定する。また、判断部は、駆動モータートルクの具体的な監視パラメータ(リップルの大きさ、平均値)を使い分け、経過時間に応じた安全率を考慮して警告閾値を可変にすることで、設計段階で予想した状態と使用状態との乖離を判断する。これにより、本実施形態に係る判断部は、各樹脂部品の寿命予測を、より正確に推定することができる。
【0034】
さらに、本実施形態によれば、設計段階で予想した状態と使用状態との乖離を縮小することで、ユニットの交換タイミングや交換部品の絞り込みを行い、ダウンタイムを削減できる。
【0035】
このように、本実施形態によれば、安全率を演算し、故障に対するマージンから警告の閾値を可変にすることで故障危険対象部品を正確に特定することができる。また判断部は、その故障危険対象部品をサーバに登録し、操作パネルに表示したり、携帯端末に送信したり、情報処理装置(例えば、パーソナルコンピュータ:Personal Computer)に送信したりできる。これにより、判断部は、サーバおよび/または画像形成装置に1または複数の報知機能を備えることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、樹脂部品の寿命を予測する部品寿命判断装置を、画像形成装置に適用して説明するが、樹脂部品を使用する製品であれば、寿命判断装置として適用することができる。また、設計段階で予想した状態(想定条件)を標準の寿命予測とし、使用状態(実際の使用条件)を実使用の寿命予測とする。
【0037】
<第1実施形態>
[画像形成装置の概略構成]
以降、本発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態における画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。
図2は、画像形成装置1のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図1と
図2を用いて、画像形成装置1の構成を説明する。
【0038】
画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式を採用する。画像形成装置1は、各感光体ドラム23Y,23M,23C,23K上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト26に一次転写する。画像形成装置1は、中間転写ベルト26上で4色のトナー像を重ね合わせた後、記録媒体6に二次転写することにより、トナー像を形成する。なお、記録媒体6は、所定の坪量、または所定の剛度を有するものとする。
【0039】
YMCKの4色に対応する感光体ドラム23Y,23M,23C,23Kは、中間転写ベルト26の移動方向に沿って配置されている。画像形成装置1は、中間転写ベルト26に各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
【0040】
図2に示すように、画像形成装置1は、主に、画像読取部11、操作パネル12、画像処理部13、画像形成部20Y~20K、搬送部15、制御部10、記憶部16、及び通信部17を備える。また、画像形成装置1は、駆動部60、検知部71、環境情報取得部72、判断部80、通知部18を備える。
【0041】
なお、判断部80および市場交換情報DB161は、後述するサーバ(第2実施形態のサーバ280)に設けられていてもよい。
【0042】
制御部10は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、およびRAM(Random Access Memory)103などを備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各構成部を制御する。このとき、記憶部16に格納されている各種データが参照される。記憶部16は、例えば、不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。また、記憶部16は、市場交換情報DB161を備えている。
【0043】
市場交換情報DB161は、画像形成装置1を構成する駆動系列および駆動系列を支持する部品(樹脂部品)の寿命予測データを有している。寿命予測データは、一例として、上述した疲労破壊を示すS-N曲線から予測される寿命のデータのことである。本実施形態では、樹脂部品の寿命を予測するため環境情報を使用する。そのため、寿命予測データは、画像形成装置1の駆動部60に掛かる負荷と、駆動部60が配置される場所の環境情報とに基づいて、駆動部60内の各樹脂部品の寿命を判断するデータが含まれる。なお、市場交換情報DB161が有する寿命予測データの詳細については、
図3Aから
図3Fを用いて後述する。
【0044】
駆動部60は、メカ機構を駆動させる。駆動部60は、ギアとローラを含む駆動系列を備えている。よって駆動部60は、搬送用モータ15a、定着駆動モータ61、レジスト駆動モータ62、作像系駆動モータ63、ギア64、およびローラ65を備えている。これにより、本実施形態では、例えば、搬送用モータ15aの駆動系、定着駆動モータ61の駆動系、レジスト駆動モータ62の駆動系、および作像系駆動モータ63の駆動系を有している。なお、各駆動系を構成するメカ機構については、
図5Aから
図5Dを用いて、後述する。
【0045】
検知部71は、駆動部60に掛かる負荷を検知する。検知部71は、駆動部60における各樹脂部品に掛かるトルクデータを取得することで、各樹脂部品の負荷を検知する。例えば、検知部71は、定着駆動モータ61の駆動系や作像系駆動モータ63の駆動系の個別の各トルクデータを取得することで、各駆動系それぞれの樹脂部品の負荷を検知する。
【0046】
環境情報取得部72は、環境情報として、駆動部60の周囲の温度を取得する。環境情報取得部72が環境情報として取得する情報は、温度のみに限定されず、例えば、湿度や、温度と湿度の両方であってもよい。
【0047】
判断部80は、検知部71で検知したトルクデータ(負荷)と、取得した温度(環境情報)とに基づいて、駆動部60内の樹脂部品の寿命を判断する。判断部80は、例えば、市場交換情報DB161から寿命予測データを取得することで、駆動系列の強度計算による寿命予測データを有している。
【0048】
判断部80は、駆動部60の動作時に掛かるトルクデータ(監視データ)とそのときの温度(監視データ)を蓄積する。これにより、判断部80は、蓄積したトルクデータを応力に換算して、寿命予測データに基づいて、強度計算に対する累積疲労損傷度を算出し、駆動系列と、当該駆動系列を支持する各樹脂部品の寿命予測データを補正することができる。なお、判断部80は、寿命予測データを補正することに限定されず、駆動系列と、当該駆動系列を支持する各樹脂部品の寿命のカウントを修正してもよい。
【0049】
また、判断部80は、樹脂部品の交換時期または破損の可能性を通知する際、駆動系列または当該駆動系列を支持する各樹脂部品の疲労強度を算出してもよい。
【0050】
図3Aは、駆動部60から取得したトルクデータを示した図である。
図3Aに示すように、横軸は時間を示し、縦軸はトルクの値を示している。トルクデータは、検知部71により取得された駆動部60に掛かる負荷である。トルクデータは、駆動部60の各モータが配置された位置により異なり、経時的に変化する。トルクデータは、検知部71によりリアルタイムに取得されている。トルクデータは、具体的には、作像系駆動モータ63のトルクデータや定着駆動モータ61のトルクデータが該当する。
【0051】
図3Bは、駆動部60の周囲の温度を示した図である。
図3Bに示すように、横軸は時間を示し、縦軸は温度の値を示している。温度は、環境情報取得部72により取得された駆動部60の周囲の環境情報である。温度は、駆動部60の各モータが配置された位置により異なり、所定時間経過後、ほぼ一定に変化する。また、環境601は、一例として、作像系駆動モータ63の周囲の温度である。環境602は、一例といて、定着駆動モータ61の周囲の温度である。
【0052】
図3Cは、駆動部60のトルクデータを応力値に換算した値を示した図である。
図3Cに示すように、横軸は時間を示し、縦軸は応力値を示している。応力値は、画像形成装置1の製品開発時にCAE(Computer Aided Engineering)解析を行い、シミュレーションによる応力解析を行った測定結果である。判断部80は、検知部71によりリアルタイムに取得されたトルクデータを、随時シミュレーションにより応力値に変換する。
【0053】
図3Dは、樹脂である試料B1のS(Stress)-N(Number of cycles to failure)曲線の温度依存性を示した特性図である。
図3Dに示すように、横軸は時間を示し、縦軸は繰返し応力の値を示している。
図3Dでは、試料B1について、周囲の温度701~703のS-N曲線を示しており、応力の繰返し回数が多くなるほど、より小さい応力で疲労破壊を起こすことを示している。
【0054】
図3Eは、樹脂である試料B2のS-N曲線の温度依存性を示した特性図である。
図3Eに示すように、横軸は時間を示し、縦軸は繰返し応力の値を示している。
図3Eでは、試料B2について、周囲の温度704~706のS-N曲線を示しており、
図3Dと同様に、応力の繰返し回数が多くなるほど、より小さい応力で疲労破壊を起こすことを示している。
【0055】
図3Fは、累積疲労損傷度によるS-N曲線を示した特性図である。
図3Fに示すように、横軸は繰返し回数を示し、応力振幅の値を示している。
図3Fでは、例えば、
図3Cの応力波形を分析した結果、α1、α2、・・・αiの応力振幅が発生したとする。
【0056】
この場合、判断部80は、駆動部60における所定の樹脂部品の破断までの繰返し回数を、
図3FのS-N曲線から読み取り、繰返し回数N1、N2、・・・Niを算出する。これにより、判断部80は、応力振幅α1、α2、・・・αiから、次式を用いて、疲労損傷度を算出する。
【0057】
【0058】
また、判断部80は、次式を用いて、式(1)が示す疲労損傷度の和を算出することで、累積疲労損傷度を算出する。
【0059】
【0060】
判断部80は、式(2)より、累積損傷度が1以上の場合、疲労破壊を起こすと判断し、繰返し回数を寿命予測データとして算出(演算)する。この場合、
図3FのS-N曲線から算出した寿命予測を、標準の寿命予測とすることができる。
【0061】
また、判断部80は、
図3Dおよび
図3Eのように、試料ごとに温度依存特性を有するS-N曲線を有しているため、温度依存特性を考慮した実使用の寿命予測を算出(演算)することができる。これにより、判断部80は、温度依存特性を考慮しない標準の寿命予測に対して、温度依存特性を考慮した実使用の寿命予測を適用し、補正することができる。また、判断部80は、実使用の寿命予測により、寿命予測のカウントを修正することもできる。
【0062】
通知部18は、駆動系列および当該駆動系列を支持する各部品の交換時期を通知する。通知部18は、駆動系列および当該駆動系列を支持する各樹脂部品の破損の可能性を警告する閾値を変更すると共に、破損の可能性を警告する通知してもよい。また、通知部18は、樹脂部品の少なくともいずれかの交換時期を通知する際、当該樹脂部品を特定して、操作パネル12に報知してもよい。
【0063】
制御部10は、通信部17を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えば、パーソナルコンピュータ)との間で各種データの送受信を行う。制御部10は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データに基づいて記録媒体6にトナー像を形成させる。通信部17は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
【0064】
搬送部15は、
図1に示す搬送ローラ32,33、支持ローラ27,28、駆動ローラ29a、テンションローラ29b、レジストローラ38などの全てのローラを含んで構成される。また、これらのローラを総称して、ローラ65(
図2)という。制御部10は、搬送用モータ15aにより搬送部15を駆動することで、搬送経路での記録媒体6の搬送を制御する。
【0065】
制御部10は、画像形成装置1に含まれる各構成部を制御する。制御部10は「制御装置」または「コントローラ」と称してもよい。
【0066】
画像読取部11は、ADF(Automatic document feeder)装置及びスキャナ装置を備える。ADF装置は、原稿トレイに載置された1枚以上の原稿を搬送機構により搬送してスキャナ装置へ送り出す。スキャナ装置は、ADF装置からコンタクトガラス上に搬送された原稿またはコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査する。スキャナ装置は、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部11は、スキャナ装置による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。画像処理部13は、この入力画像データに対して所定の画像処理を実行する。
【0067】
操作パネル12は、例えば、タッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成される。操作パネル12は、表示部121および操作部122を含む。表示部121は、制御部10の制御に従って、各種操作画面、画像の状態表示、各機能の動作状況等を表示する。操作部122は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備える。操作部122は、オペレータ(作業者)による各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部10に出力する。
【0068】
画像処理部13は、画像読取部11からの入力画像データに対して、初期設定またはユーザ設定に応じたデジタル画像処理を行う。例えば、画像処理部13は、記憶部16内の階調補正データ(例えば、階調補正テーブルLUT)に基づいて階調補正を行う。画像処理部13は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を実行する。
【0069】
画像形成部20Y、20M、20C、20Kは、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる転写を行う。Y成分用の画像形成部20Y、M成分用の画像形成部20M、C成分用の画像形成部20C、K成分用の画像形成部20Kは、同様の構成を有する。以下の説明では、Y成分用の画像形成部20Yの構成要素について説明し、同様に構成されている他の画像形成部20M、20C、20Kの構成要素の説明を省略する。
【0070】
画像形成部20Yは、露光装置21Y、現像装置22Y、感光体ドラム23Y、帯電装置24Y、及びドラムクリーニング装置25Y等を備える。この画像形成部20Yは、中間転写ベルト26にY成分のトナー像を形成するものである。
【0071】
感光体ドラム23Yは、例えばアルミニウム製の導電性円筒体(例えば、アルミ素管)の周面に、アンダーコート層(UCL:Under Coat Layer)、電荷発生層(CGL:Charge Generation Layer)、電荷輸送層(CTL:Charge Transport Layer)を順次積層した負帯電型の有機感光体(OPC:Organic Photo-conductor)である。電荷発生層は、電荷発生材料(例えば、フタロシアニン顔料)を樹脂バインダー(例えば、ポリカーボネイト)に分散させた有機半導体からなる。電荷発生層は、露光装置21Yによる露光により一対の正電荷と負電荷を発生させる。電荷輸送層は、正孔輸送性材料(電子供与性含窒素化合物)を樹脂バインダー(例えばポリカーボネイト樹脂)に分散させたものからなり、電荷発生層で発生した正電荷を電荷輸送層の表面まで輸送する。
【0072】
制御部10は、感光体ドラム23Yの駆動モータ(作像系駆動モータ63)に駆動電流を供給することにより、この感光体ドラム23Yを一定の周速度で回転させる。
【0073】
帯電装置24Yは、光導電性を有する感光体ドラム23Yの表面を一様に負極性に帯電させる。帯電装置24M,24C,24Kも、帯電装置24Yと同様に構成され、同様に機能する。
【0074】
露光装置21Yは、例えば、半導体レーザーで構成され、感光体ドラム23Yに対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。感光体ドラム23Yの電荷発生層で正電荷が発生し、電荷輸送層の表面まで輸送されることにより、感光体ドラム23Yの表面電荷(負電荷)が中和される。感光体ドラム23Yの表面には、周囲との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。露光装置21M,21C,21Kも、露光装置21Yと同様に構成され、同様に機能する。
【0075】
現像装置22Yは、例えば二成分現像方式の現像装置である。現像装置22Yは、感光体ドラム23Yの表面に各色成分のトナーを付着させることによりトナー像を形成する。トナー像は、静電潜像を可視化して形成されるものである。現像装置22M,22C,22Kも、現像装置22Yと同様に構成され、同様に機能する。
【0076】
ドラムクリーニング装置25Yは、感光体ドラム23Yの表面に摺接されるクリーニング部材としてのドラムクリーニングブレード等を有する。ドラムクリーニング装置25Yは、一次転写後に感光体ドラム23Yの表面に残存するトナーを、ドラムクリーニングブレードによって除去する。ドラムクリーニング装置25M,25C,25Kも、ドラムクリーニング装置25Yと同様に構成され、同様に機能する。
【0077】
なお、本実施形態では、感光体ドラム23Y,23M,23C,23Kの駆動モータを総称して、作像系駆動モータ63とする。なお、作像系駆動モータ63は、感光体ドラム23Y,23M,23C,23Kに限定されるものではなく、作像系で使用されるモータも含まれる。
【0078】
次に、
図1に示す中間転写ユニット19は、中間転写ベルト26と、一次転写ローラ231Y,231M,231C,231Kと、複数の支持ローラ27,28と、駆動ローラ29aと、テンションローラ29b、及びベルトクリーニング装置261などを備える。この中間転写ユニット19は、中間転写ベルト26上にトナー像を形成し、形成したトナー像を記録媒体6に転写する。
【0079】
中間転写ベルト26は、無端状ベルトで構成される。中間転写ベルト26は、複数の支持ローラ27,28と、駆動ローラ29aと、テンションローラ29bと、一次転写ローラ231Y,231M,231C,231Kにループ状に張架される。複数の支持ローラ27,28は、従動ローラで構成される。駆動ローラ29aが回転することにより、中間転写ベルト26は、矢印A方向に一定速度で走行する。
【0080】
一次転写ローラ231Yは、感光体ドラム23Yに対向して、中間転写ベルト26の内周面側に配置される。一次転写ローラ231Yと感光体ドラム23Yとは、中間転写ベルト26を挟む。一次転写ローラ231Yが感光体ドラム23Yに圧接されることにより、一次転写ニップが形成される。一次転写ニップの部位では、感光体ドラム23Yから中間転写ベルト26へトナー像が転写される。
【0081】
一次転写ローラ231M,231C,231Kも同様に、各色成分の感光体ドラム23M,23C,23Kに対向して、中間転写ベルト26の内周面側に配置され、同様に中間転写ベルト26へトナー像を転写する。
【0082】
二次転写ローラ34は、中間転写ベルト26の外周面側に配置され、支持ローラ27に向けて付勢されて中間転写ベルト26を圧接する。支持ローラ27は、支持ローラ28よりも中間転写ベルト26の走行方向の下流側に配置される。二次転写ローラ34と支持ローラ27は、中間転写ベルト26を挟んでいる。また、二次転写ローラ34が付勢されて支持ローラ27を圧接することにより、二次転写ニップが形成される。二次転写ニップの部位では、中間転写ベルト26から記録媒体6へトナー像が転写される。なお、二次転写ローラ34を、単に、二次転写部と呼ぶこともある。
【0083】
各色の感光体ドラム23Y,23M,23C,23K上のトナー像は、中間転写ベルト26に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラ231Yに一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト26の裏面側(一次転写ローラ231Yと当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、Y成分のトナー像は中間転写ベルト26に静電的に転写される。
【0084】
その後、記録媒体6が二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト26上のトナー像が記録媒体6に二次転写される。典型的には、二次転写ローラ34に二次転写バイアスを印加し、記録媒体6の裏面側(二次転写ローラ34と当接する側)にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は、記録媒体6に静電的に転写される。トナー像が転写された記録媒体6は、定着装置5に向けて搬送される。
【0085】
ベルトクリーニング装置261は、中間転写ベルト26の表面に摺接するベルトクリーニングブレード等を有する。ベルトクリーニング装置261は、二次転写後に中間転写ベルト26の表面に残留する転写残トナーを除去する。
【0086】
定着装置5は、例えば、ベルト加熱方式であり、二次転写ニップの下流側に配置されている。定着装置5は、定着面側部材である無端状の定着ベルト54と、この定着ベルト54が張架されている加熱ローラ53および定着ローラ51と、定着ローラ52を備える。上側の定着ローラ51は、定着駆動モータ61(
図2)によって駆動される駆動ローラであり、加熱ローラ53で加熱された定着ベルト54を駆動する。定着ベルト54は、記録媒体6の定着面(トナー像が形成されている面)側に配置される定着面側部材を有する。下側の定着ローラ52は、定着ローラ51に向けて付勢された加圧ローラであり、記録媒体6の裏面(定着面の反対の面)側に配置される裏面側支持部材を有する。定着ベルト54の定着面側部材と定着ローラ52の裏面側支持部材とは、記録媒体6を加熱加圧しつつ挟持して搬送する定着ニップを形成する。定着装置5は、記録媒体6を加熱加圧することで、二次転写された複数のトナー像を記録媒体6に定着させる。なお、これに限られず、定着装置5は、ローラ加熱方式で構成されてもよい。
【0087】
搬送部15は、給紙部、排紙部および搬送経路を含んで構成される。給紙部を構成する3つの給紙トレイユニット31a~31cには、坪量およびサイズ等に基づいて識別された記録媒体6(例えば、規格長尺シートやA4用紙等)が予め設定された種類ごとに収容される。
【0088】
搬送経路は、複数のローラと、給紙搬送路41~44および搬送路45,46と、記録媒体6の両面に画像形成するための反転搬送路等とを含んで構成される。複数のローラは、搬送ローラ32,33と、レジストローラ38と、排紙ローラ35と、搬送ローラ36,37等を含む。これら複数のローラは、対向している2つのローラで構成される。搬送ローラ32,33とレジストローラ38とは、二次転写ニップよりも搬送方向の上流側に設けられる。
【0089】
レジストローラ38は、記録媒体6を狭持して搬送する駆動ローラと従動ローラの組み合わせであり、レジストローラニップを形成する。レジストローラ38は、トナー像を記録媒体6に二次転写する部位である二次転写ニップに、記録媒体6を搬送する。レジストローラ38は、レジスト駆動モータ62によって駆動ローラが駆動される。
【0090】
給紙トレイユニット31a~31cに収容されている記録媒体6は、最上部から一枚ずつ不図示のピックアップローラによって送出され、給紙搬送路41~43などに搬送されたのち、搬送ローラ32で給紙搬送路44に搬送され、搬送ローラ33で搬送路45に搬送される。その後、記録媒体6は、レジストローラ38で搬送路46を介して二次転写ローラ34に搬送される。レジストローラ38は、記録媒体6の傾きを補正すると共に、記録媒体6の搬送タイミングを調整する。給紙搬送路44は、給紙トレイユニット31a~31cから給紙された記録媒体6を搬送路45,46に搬送する経路である。給紙搬送路44は、搬送路45,46の一端に繋がっている。
【0091】
給紙搬送路41~44は、装置本体内の一方の側部の近傍に設けられる。給紙搬送路41~44は、給紙トレイユニット31a~31cから搬送路45へ上下(略垂直)方向に設けられている。給紙搬送路41~44は、装置本体の一方の側部に設けられた開閉扉(図示せず)が開かれることで、給紙搬送路41~44の経路の一部が外方に露出される。これにより、給紙搬送路41~44の経路の一部が外方に露出されている状態となり、オペレータ(作業者)は、ジャム処理等が可能になる。
【0092】
給紙搬送路41~44は、上方の端部が搬送路45と繋がり、下方の端部が給紙トレイユニット31a~31cと繋がる。
【0093】
搬送路45,46は、レジストローラニップを介して、二次転写ニップに記録媒体6を搬送するための経路である。換言すれば、搬送路45,46は、画像形成部20Y~20Kに、記録媒体6を搬送するための経路である。搬送路45,46は、記録媒体6が搬送される主搬送路である。この主搬送路には、搬送方向の上流側から、搬送ローラ33及びレジストローラ38、並びに二次転写ニップ及び定着ニップを経由して、記録媒体6を搬送する経路が含まれる。搬送路46は、記録媒体6の表裏を反転させる反転搬送路に接続されている。
【0094】
[画像形成装置の動作]
次に、第1実施形態に係る画像形成装置1の動作について説明する。
【0095】
図4Aから
図4Cは、第1実施形態に係る画像形成装置1の判断部80が、監視データから各部品の寿命予測を通知する処理を示したシーケンス図である。
【0096】
図4Aでは、第1実施形態に係る画像形成装置1の判断部80は、市場交換情報DB161から、画像形成装置1の駆動系列と、当該駆動系列を支持する各樹脂部品の寿命データ(寿命予測データ)を取得する(ステップS001)。
【0097】
判断部80は、検知部71から駆動部60に掛かるトルクデータ(監視データ)を取得する(ステップS003)。この場合、判断部80は、環境情報取得部72により取得した駆動部60の周囲の温度(環境情報)も取得する。
【0098】
判断部80は、トルクデータ(負荷)と、温度(環境情報)とに基づいて、駆動部60内の樹脂部品の寿命を判断し、標準の寿命予測を実使用の寿命予測に修正する(ステップS005)。
【0099】
判断部80は、修正した寿命予測を修正耐久データとして検知部71に送信する(ステップS007)。また、判断部80は、実使用の寿命予測を正確な寿命予測を示すデータ(寿命データ)として、市場交換情報DB161に記録する(ステップS009)。
【0100】
ここで、駆動系列と、当該駆動系列を支持する各樹脂部品について説明する。
図5Aから
図5Dは、ギア641~647と、ローラ651~653を含む駆動系列の構成を示した説明図である。
【0101】
図5Aでは、一例として、モータ151の駆動系列を示した説明図である。
図5Bに示すように、モータ151には、ギア641が取り付けられている。
図5Cに示すように、ローラ651には、軸661を介して、ギア645と、ローラ653が取り付けられている。これにより、ギア641は、ギア642~644を介して、ギア645と噛み合っている。
【0102】
また、
図1のローラ652には、不図示の軸を介して、ギア647が取り付けられている。ギア641は、ギア642,646を介して、ギア647と噛み合っている。
【0103】
これにより、モータ151が回転すると、ギア641は、ギア642~647を介して、ローラ651とローラ652を回転させることができる。
【0104】
この場合、
図5Aに示すギア643には、
図5Dの領域664に示すように、軸663の根元に負荷がかかるため、軸662から軸663が折れてしまう可能性がある。すなわち、ギア643は、他のギアに比べて多くの負荷が掛かり、寿命が短くなる可能性がある。
【0105】
本実施形態では、ギア641~647と、ローラ651~653と、軸661~663を1つの駆動系列として取り扱うことができ、判断部80は、樹脂で形成された各部品の寿命予測を行う。また、駆動系列ごとに環境情報取得部72を設け、判断部80は、ギア641~647と、ローラ651~653と、軸661~663のそれぞれに対し、駆動系列ごとに、温度環境を反映した正確な寿命予測を行うことができる。
【0106】
ステップS009では、判断部80は、ギア641~647と、ローラ651~653と、軸661~663の各正確な寿命データを、市場交換情報DB161に記憶する。
【0107】
図4Bに戻り、トラブル情報が通知された場合について説明する。
図4Bでは、判断部80は、検知部71から、トラブル情報としてトルクデータを取得する(ステップS011)。この場合、判断部80は、市場交換情報DB161から正確な寿命予測を示す修正寿命データを取得する(ステップS013)。
【0108】
これにより、判断部80は、トラブル情報としてのトルクデータと、修正寿命データとに基づいて、各樹脂部品の寿命予測を行い、各樹脂部品の修正寿命データを表示することができる(ステップS015)。
【0109】
図4Cは、
図4Aの続きを説明したものである。
図4Cでは、判断部80が各樹脂部品の寿命予測を行い、或る部品が寿命であると判定した場合(ステップS021)、判断部80は、操作パネル12の表示部121に、この或る部品が交換時期である旨を報知する(ステップS023)。
【0110】
図6Aは、操作パネル12の表示部121に、第6ギア(ギア646)の寿命予測を報知する場合を示した説明図である。
【0111】
図6Aの表示画面1211には、コメント欄1212に、「あと1万枚印刷すると、搬送部で使用されている第6ギアが、寿命に到達しますので、第6ギアの交換をサービスマンに依頼してください。」と表示されている。
【0112】
なお、操作パネル12の表示部121に表示される情報は、寿命予測に限定されるものではない。例えば、疲労強度を算出し、疲労強度を操作パネル12の表示部121に報知してもよい。
【0113】
図6Bは、操作パネル12の表示部121に、第3ギア(ギア643)の軸663が破損する可能性を報知する場合を示した説明図である。
【0114】
図6Bの表示画面1213には、コメント欄1214に、「もう少しで、レジストで使用されている第3ギア(ギア643)の軸663が、壊れそうです。早急に第3ギアの交換をサービスマンに交換を依頼してください。」と表示されている。
【0115】
このように、画像形成装置1の判断部80は、各駆動系のトルクデータと、その駆動系の温度とに基づいて、駆動部60内の各駆動系における樹脂部品の寿命を判断することができる。
【0116】
以上説明したように、第1実施形態に係る画像形成装置1は、駆動部60と、検知部71と、環境情報取得部72と、判断部80とを備えて構成されている。
【0117】
これにより、画像形成装置1の判断部80は、検知部71で検知したトルクデータと、環境情報取得部72で取得した温度とに基づいて、駆動部60内の駆動系と、当該駆動系列を支持する各樹脂部品の寿命を判断することができる。
【0118】
よって、第1実施形態に係る画像形成装置1の判断部80は、駆動系で使用される樹脂部品の正確な寿命予測を行うことができる。特に、判断部80は、駆動系列ごとに駆動系列を支持する各樹脂部品の寿命予測を行うことができるので、交換すべき部品を部品単位で最小限に抑えることができる。
【0119】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る画像形成システムは、画像形成装置1と、サーバ280と、サービスマン端末290とが通信可能に接続された画像形成システムである。画像形成装置1は、メカ機構を駆動させる駆動部60と、駆動部60に掛かるトルクデータを検知する検知部71と、駆動部60の周囲の温度を取得する環境情報取得部72と、を備えている。サーバ280は、トルクデータと、温度とに基づいて、駆動部60内の樹脂部品の寿命を判断する判断部80を、備えている。サービスマン端末は、操作パネル12を備えている。
【0120】
図7Aから
図7Cは、第2実施形態に係る画像形成システムにおけるサーバ280の判断部80が、監視データから各部品の寿命予測を通知する処理を示したシーケンス図である。
【0121】
図7Aでは、第2実施形態に係る画像形成システムにおけるサーバ280の判断部80は、市場交換情報DB161から、画像形成装置1の駆動系列と、当該駆動系列を支持する各樹脂部品の寿命データ(寿命予測データ)を取得する(ステップS101)。
【0122】
サーバ280の判断部80は、画像形成装置1の検知部71から、駆動部60に掛かるトルクデータ(監視データ)を取得する(ステップS103)。この場合、サーバ280の判断部80は、環境情報取得部72により取得した駆動部60の周囲の温度も取得する。
【0123】
サーバ280の判断部80は、トルクデータ(負荷)と、温度(環境情報)とに基づいて、画像形成装置1の駆動部60内の樹脂部品の寿命を判断し、標準の寿命予測を実使用の寿命予測に修正する(ステップS105)。
【0124】
サーバ280の判断部80は、修正した寿命予測を修正耐久データとして画像形成装置1に送信する(ステップS107)。また、サーバ280の判断部80は、実使用の寿命予測を正確な寿命予測を示すデータ(寿命データ)として、市場交換情報DB161に記録する(ステップS109)。
【0125】
図7Bに戻り、トラブル情報が通知された場合について説明する。
図7Bでは、サーバ280の判断部80は、画像形成装置1の検知部71から、トラブル情報としてトルクデータを取得する(ステップS201)。この場合、サーバ280の判断部80は、市場交換情報DB161から正確な寿命予測を示す修正寿命データを取得する(ステップS203)。
【0126】
これにより、サーバ280の判断部80は、トラブル情報としてのトルクデータと、修正寿命データとに基づいて、画像形成装置1の各樹脂部品の寿命予測を行い、各樹脂部品の修正寿命データを表示することができる(ステップS205)。
【0127】
図7Cは、
図7Aの続きを示している。
図7Cでは、サーバ280の判断部80が各樹脂部品の寿命予測を行い、或る樹脂部品が寿命であると判定した場合(ステップS301)、サーバ280の判断部80は、この或る樹脂部品が交換時期である旨を、サービスマン端末290に通知する(ステップS305)。
【0128】
サービスマン端末290は、操作パネル12の表示部121に、この或る樹脂部品が交換時期である旨を報知する(ステップS305)。
【0129】
このように、サーバ280の判断部80は、画像形成装置1の各駆動系のトルクデータと、その駆動系の温度とに基づいて、画像形成装置1の駆動部60内の各駆動系における樹脂部品の寿命を判断することができる。
【0130】
以上説明したように、第2実施形態に係る画像形成システムは、サーバ280が、判断部80を備えて構成されている。
【0131】
これにより、サーバ280の判断部80は、画像形成装置1の検知部71で検知したトルクデータと、環境情報取得部72で取得した温度とに基づいて、画像形成装置1の駆動部60内の駆動系と、当該駆動系列を支持する各樹脂部品の寿命を判断することができる。
【0132】
したがって、第2実施形態に係る画像形成システムは、サーバ280が、画像形成装置1の駆動部60内における樹脂部品の寿命予測をサービスマン端末290に通知することができる。サービスマン端末290は、操作パネル12の表示部121に、画像形成装置1の駆動系で使用される樹脂部品の正確な寿命予測を表示することができるので、画像形成装置1における交換すべき部品を最小限に抑えることができる。
【0133】
このように、第2実施形態に係る画像形成システムでは、例えば、リファービッシュ機として画像形成装置1を再利用する場合でも、部品単位の正確な寿命予測により、交換が必要な部品のみ交換することができるので、ダウンタイムを削減することができる。また、サーバ280は、リファービッシュ機としての画像形成装置1をリユースした場合でも、部品単位で寿命予測を行うことで、正確な部品交換を管理することができる。
【0134】
(変形例)
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更実施が可能であり、例えば、次の(a)~(h)のようなものがある。
【0135】
(a)第1実施形態に係る画像形成装置1は、駆動系列および当該駆動系列を支持する各樹脂部品の交換時期を通知する通知部18を、さらに備えていてもよい。
(b)第1実施形態に係る画像形成装置1は、駆動系列および当該駆動系列を支持する各樹脂部品の破損の可能性を警告する閾値を変更すると共に、破損の可能性を警告する通知する通知部18を、さらに備えていてもよい。
(c)監視データは、強度計算、トルク、衝撃強度、温度、および湿度の少なくともいずれかを含んでいてもよい。
【0136】
(d)判断部80は、樹脂部品の交換時期または破損の可能性を通知する際、駆動系列または当該駆動系列を支持する各樹脂部品の疲労強度を算出してもよい。
(e)通知部18は、樹脂部品の少なくともいずれかの交換時期を通知する際、当該樹脂部品を特定して、操作パネルに報知してもよい。
(f)第1実施形態では、本発明を画像形成装置1に適用して説明したが、本実施形態は、樹脂部品を使用する製品であれば、駆動部60と、検知部71と、環境情報取得部72と、判断部80とを備えることで、部品寿命判断装置に適用することができる。
【0137】
(g)検知部71は、監視データをリアルタイム(随時)で取得し、実使用の寿命予測を常時算出することができるので、寿命予測を操作パネル12の表示部121に、常時表示していてもよい。
(h)判断部80は、実使用の寿命予測に基づいて、樹脂部品毎の寿命予測データを自動更新してもよい。
【符号の説明】
【0138】
1 画像形成装置
5 定着装置
6 記録媒体
10 制御部
11 画像読取部
12 操作パネル
13 画像処理部
15 搬送部
15a 搬送用モータ
16 記憶部
17 通信部
18 通知部
19 中間転写ユニット
20Y,20M,20C,20K 画像形成部
21Y,21M,21C,21K 露光装置
23Y,23M,23C,23K 感光体ドラム
24Y,24M,24C,24K 帯電装置
25Y,25M,25C,25K ドラムクリーニング装置
261 ベルトクリーニング装置
26 中間転写ベルト
231Y,231M,231C,231K 一次転写ローラ
27,28 支持ローラ
29a 駆動ローラ
29b テンションローラ
31a,31b,31c 給紙トレイユニット
32,33,36,37 搬送ローラ
34 二次転写ローラ
35 排紙ローラ
38 レジストローラ
41~44 給紙搬送路
45,46 搬送路
54 定着ベルト
53 加熱ローラ
51,52 定着ローラ
60 駆動部
61 定着駆動モータ
62 レジスト駆動モータ
63 作像系駆動モータ
64 ギア
65 ローラ
71 検知部
72 環境情報取得部
80 判断部
151 モータ
161 市場交換情報DB
101 CPU
102 ROM
103 RAM
121 表示部
122 操作部
280 サーバ
290 サービスマン端末
641~647 ギア
651~653 ローラ
661~663 軸
655 ギア
1211,1213 表示画面
1212,1214 コメント欄