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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165579
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】耐火壁構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/94 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
E04B1/94 R
E04B1/94 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081872
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(71)【出願人】
【識別番号】000180287
【氏名又は名称】エスケー化研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 真美
(72)【発明者】
【氏名】西村 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】田村 知久
(72)【発明者】
【氏名】浮田 長志
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊洋
(72)【発明者】
【氏名】軽賀 英人
(72)【発明者】
【氏名】天野 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 康典
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001DE04
2E001FA04
2E001FA32
2E001GA42
2E001HA21
2E001HB04
2E001HD11
(57)【要約】
【課題】カーテンウォール用耐火ボードに用いられるトバモライト系のけい酸カルシウム板の耐火性能を高めることを目的とする。
【解決手段】耐火壁構造は、かさ密度が0.60g/mm以上で、かつ、曲げ強度が10.0N/mm以上とされ、厚み方向に並ぶ複数のけい酸カルシウム板42を有する耐火ボード40と、複数のけい酸カルシウム板42の表面の少なくとも1つを覆う熱発泡性耐火シート44と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
かさ密度が0.60g/mm以上で、かつ、曲げ強度が10.0N/mm以上とされ、厚み方向に並ぶ複数のけい酸カルシウム板を有するカーテンウォール用耐火ボードと、
複数の前記けい酸カルシウム板の表面の少なくとも1つを覆う熱発泡性耐火シートと、
を備える耐火壁構造。
【請求項2】
前記熱発泡性耐火シートは、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル-エチレン共重合樹脂、酢酸ビニル-バーサチック酸ビニルエステル共重合樹脂、酢酸ビニル-バーサチック酸ビニルエステル-アクリル共重合樹脂、酢酸ビニル-アクリル共重合樹脂、アクリル樹脂、アクリル-スチレン共重合樹脂、ビニルトルエン-ブタジエン共重合体、ビニルトルエン-アクリル共重合樹脂、スチレン-ブタジエン共重樹脂、ポリブタジエン樹脂、エチレン-アクリル共重合樹脂から選ばれる1種以上の合成樹脂を含む、
請求項1に記載の耐火壁構造。
【請求項3】
前記熱発泡性耐火シートは、隣り合う前記けい酸カルシウム板の間に配置される、
請求項1に記載の耐火壁構造。
【請求項4】
複数の前記けい酸カルシウム板のうち、最も外側の前記けい酸カルシウム板の表面を覆う前記熱発泡性耐火シートの外側に配置され、火災時の加熱によって熱軟化又は熱溶融する仕上げ材を備える、
請求項1に記載の耐火壁構造。
【請求項5】
複数の前記けい酸カルシウム板のうち、最も外側の前記けい酸カルシウム板の表面を覆う前記熱発泡性耐火シートの外側に配置される仕上げ材と、
前記仕上げ材を保持するとともに、火災時の加熱によって前記仕上げ材の保持を解除する保持部材と、
を備える、
請求項1に記載の耐火壁構造。
【請求項6】
複数の前記けい酸カルシウム板のうち、最も外側の前記けい酸カルシウム板の表面を覆う前記熱発泡性耐火シートの外側に、該熱発泡性耐火シートと間隔を空けて配置される仕上げ材を備える、
請求項1に記載の耐火壁構造。
【請求項7】
前記熱発泡性耐火シートは、複数の前記けい酸カルシウム板の少なくとも1つの表面に張り付けられる、
請求項1に記載の耐火壁構造。
【請求項8】
前記熱発泡性耐火シートは、複数のタッカーによって前記けい酸カルシウム板の少なくとも1つの表面に固定される、
請求項1に記載の耐火壁構造。
【請求項9】
前記熱発泡性耐火シートを備えた前記けい酸カルシウム板をメタルカーテンウォールのスパンドレル部、柱形、又は外壁の全面に用いた、
請求項1~請求項8の何れか1項に記載の耐火壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
火災時に、熱発泡して断熱層を形成する熱発泡性耐火シートが知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
【0003】
また、トバモライト系のけい酸カルシウム板と、けい酸カルシウム板の表面を被覆するシートと、けい酸カルシウム板とシートとの間に設けられた不燃化剤とを備える被覆シート付パネルが知られている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-237980号公報
【特許文献2】特開2011-094350号公報
【特許文献3】特開2000-320044号公報
【特許文献4】特開2017-13433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
耐火建築物等、一定の耐火性能が求められる建物の外壁にメタルカーテンウォール(アルミニウム合金製等)を用いる場合、スパンドレル部(外壁のうち上下に重なっている二つの窓その他の開口部の間の部分)及び柱形(外壁のうち柱状の部分)には外壁としての耐火性能(設計条件に応じた一定時間以上の遮熱性と遮炎性)が求められるため、ガラスの裏側(屋内側)に耐火性能を有するバックボード(以下、「カーテンウォール用耐火ボード」という)を設置することが一般的である。カーテンウォール用耐火ボードにはけい酸カルシウム板がよく用いられる。カーテンウォール用耐火ボードに用いられるけい酸カルシウム板は製造方法によって2種類に分類されていて、それぞれ異なる性能を有している。かさ密度が0.60g/mm以上で、かつ、曲げ強度が10.0N/mm以上のけい酸カルシウム板はJIS A 5430でタイプ2と定義され、一般にトバモライト系けい酸カルシウム板と呼ばれている。
【0006】
ここで、トバモライト系のけい酸カルシウム板は、ゾノトライト系のけい酸カルシウム板(JIS A 5430でタイプ3と定義される)と比較して耐火性能が低く、所定の耐火性能を確保することが難しい。
【0007】
本発明は、上記の事実を考慮し、カーテンウォール用耐火ボードに用いられるトバモライト系のけい酸カルシウム板の耐火性能を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の耐火壁構造は、かさ密度が0.60g/mm以上で、かつ、曲げ強度が10.0N/mm以上とされ、厚み方向に並ぶ複数のけい酸カルシウム板を有するカーテンウォール用耐火ボードと、複数の前記けい酸カルシウム板の表面の少なくとも1つを覆う熱発泡性耐火シートと、を備える。
【0009】
請求項1に係る耐火壁構造によれば、カーテンウォール用耐火ボードは、複数のけい酸カルシウム板を有する。複数のけい酸カルシウム板は、かさ密度が0.60g/mm以上で、かつ、曲げ強度が10.0N/mm以上とされ、一般的にトバモライト系と呼ばれ、厚み方向に並べられる。これらのけい酸カルシウム板の表面の少なくとも1つは、熱発泡性耐火シートによって覆われる。これにより、けい酸カルシウム板の耐火性能が高められる。
【0010】
請求項2に記載の耐火壁構造は、請求項1に記載の耐火壁構造において、前記熱発泡性耐火シートは、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル-エチレン共重合樹脂、酢酸ビニル-バーサチック酸ビニルエステル共重合樹脂、酢酸ビニル-バーサチック酸ビニルエステル-アクリル共重合樹脂、酢酸ビニル-アクリル共重合樹脂、アクリル樹脂、アクリル-スチレン共重合樹脂、ビニルトルエン-ブタジエン共重合体、ビニルトルエン-アクリル共重合樹脂、スチレン-ブタジエン共重樹脂、ポリブタジエン樹脂、エチレン-アクリル共重合樹脂から選ばれる1種以上の合成樹脂を含む。
【0011】
請求項2に係る耐火壁構造によれば、熱発泡性耐火シートは、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル-エチレン共重合樹脂、酢酸ビニル-バーサチック酸ビニルエステル共重合樹脂、酢酸ビニル-バーサチック酸ビニルエステル-アクリル共重合樹脂、酢酸ビニル-アクリル共重合樹脂、アクリル樹脂、アクリル-スチレン共重合樹脂、ビニルトルエン-ブタジエン共重合体、ビニルトルエン-アクリル共重合樹脂、スチレン-ブタジエン共重樹脂、ポリブタジエン樹脂、エチレン-アクリル共重合樹脂から選ばれる1種以上の合成樹脂を含む。これにより、請求項1のけい酸カルシウム板の耐火性能を効率的に高めることができる。
【0012】
請求項3に記載の耐火壁構造は、請求項1に記載の耐火壁構造において、前記熱発泡性耐火シートは、隣り合う前記けい酸カルシウム板の間に配置される。
【0013】
請求項3に係る耐火壁構造によれば、熱発泡性耐火シートは、隣り合うけい酸カルシウム板の間に配置される。これにより、火災時に、隣り合うけい酸カルシウム板のうち、加熱側のけい酸カルシウム板が脱落すると、熱発泡性耐火シートが火災熱を直接受けて熱発泡する。これにより、隣り合う他のけい酸カルシウム板の耐火性能が高められる。
【0014】
請求項4に記載の耐火壁構造は、請求項1に記載の耐火壁構造において、複数の前記けい酸カルシウム板のうち、最も外側の前記けい酸カルシウム板の表面を覆う前記熱発泡性耐火シートの外側に配置され、火災時の加熱によって熱軟化又は熱溶融する仕上げ材を備える。
【0015】
請求項4に係る耐火壁構造によれば、複数のけい酸カルシウム板のうち、最も外側のけい酸カルシウム板の表面を覆う熱発泡性耐火シートの外側に、仕上げ材が配置される。これにより、耐火壁構造の意匠性が高められる。
【0016】
また、仕上げ材は、火災時の加熱によって熱軟化又は熱溶融する。これにより、火災時の加熱によって熱発泡性耐火シートが熱発泡する際に、仕上げ材が熱軟化し、又は熱溶融する。したがって、熱発泡性耐火シートが熱発泡し易くなる。
【0017】
請求項5に記載の耐火壁構造は、請求項1に記載の耐火壁構造において、複数の前記けい酸カルシウム板のうち、最も外側の前記けい酸カルシウム板の表面を覆う前記熱発泡性耐火シートの外側に配置される仕上げ材と、前記仕上げ材を保持するとともに、火災時の加熱によって前記仕上げ材の保持を解除する保持部材と、を備える。
【0018】
請求項5に係る耐火壁構造によれば、複数のけい酸カルシウム板のうち、最も外側のけい酸カルシウム板の表面を覆う熱発泡性耐火シートの外側に、仕上げ材が配置される。これにより、耐火壁構造の意匠性が高められる。
【0019】
また、仕上げ材は、保持部材によって保持される。保持部材は、火災時の加熱によって仕上げ材の保持を解除する。これにより、火災時の加熱によって熱発泡性耐火シートが熱発泡する際に、仕上げ材が脱落し、熱発泡性耐火シートの熱発泡スペースが確保される。したがって、熱発泡性耐火シートが熱発泡し易くなる。
【0020】
請求項6に記載の耐火壁構造は、請求項1に記載の耐火壁構造において、複数の前記けい酸カルシウム板のうち、最も外側の前記けい酸カルシウム板の表面を覆う前記熱発泡性耐火シートの外側に、該熱発泡性耐火シートと間隔を空けて配置される仕上げ材を備える。
【0021】
請求項6に係る耐火壁構造によれば、複数のけい酸カルシウム板のうち、最も外側のけい酸カルシウム板の表面を覆う熱発泡性耐火シートの外側に、仕上げ材が配置される。これにより、耐火壁構造の意匠性が高められる。
【0022】
また、仕上げ材は、熱発泡性耐火シートと間隔を空けて配置される。これにより、仕上げ材と熱発泡性耐火シートとの間に当該熱発泡性耐火シートの熱発泡スペースが確保される。したがって、熱発泡性耐火シートが熱発泡し易くなる。
【0023】
請求項7に記載の耐火壁構造は、請求項1に記載の耐火壁構造において、前記熱発泡性耐火シートは、複数の前記けい酸カルシウム板の少なくとも1つの表面に張り付けられる。
【0024】
請求項7に係る耐火壁構造によれば、熱発泡性耐火シートは、複数のけい酸カルシウム板の少なくとも1つの表面に張り付けられる。これにより、熱発泡性耐火シートの脱落が抑制される。
【0025】
請求項8に記載の耐火壁構造は、請求項1に記載の耐火壁構造において、前記熱発泡性耐火シートは、複数のタッカーによって前記けい酸カルシウム板の少なくとも1つの表面に固定される。
【0026】
請求項8に係る耐火壁構造によれば、熱発泡性耐火シートは、複数のタッカーによってけい酸カルシウム板の少なくとも1つの表面に固定される。これにより、熱発泡性耐火シートの脱落が抑制される。
【0027】
請求項9に記載の耐火壁構造は、請求項1~請求項8の何れか1項に記載の耐火壁構造において、前記熱発泡性耐火シートを備えた前記けい酸カルシウム板をメタルカーテンウォールのスパンドレル部、柱形、又は外壁の全面に用いた。
【0028】
請求項9に係る耐火壁構造によれば、メタルカーテンウォールのスパンドレル部、柱形、又は外壁の全面の耐火性能が高められる。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明によれば、カーテンウォール用耐火ボードに用いられるトバモライト系のけい酸カルシウム板の耐火性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】第一実施形態に係る耐火壁構造が適用された耐火ボードを示す断面図である。
図2】耐火ボードを示す図1の拡大断面図である。
図3】(A)~(C)は、比較例に係る耐火ボードの火災時の挙動を示す断面図である。
図4】(A)~(C)は、比較例に係る耐火ボードの火災時の挙動を示す断面図である。
図5】(A)及び(B)は、第一実施形態に係る耐火ボードの火災時の挙動を示す断面図である。
図6】(A)及び(B)は、第一実施形態に係る耐火ボードの火災時の挙動を示す断面図である。
図7】第二実施形態に係る耐火壁構造が適用された耐火ボードを示す図2に対応する断面図である。
図8】第一実施形態に係る耐火壁構造の変形例が適用された耐火ボードを示す図2に対応する断面図である。
図9】第一実施形態に係る耐火壁構造の変形例が適用された耐火ボードを示す図2に対応する断面図である。
図10】第一実施形態に係る耐火壁構造の変形例が適用された耐火ボードを屋内側から見た立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(第一実施形態)
先ず、第一実施形態について説明する。
【0032】
(耐火壁構造)
図1には、第一実施形態に係る耐火壁構造が適用された耐火ボード40が示されている。層間区画部材としての耐火ボード40は、カーテンウォール30のスパンドレル部に設けられており、カーテンウォール30と共に構造物の外壁の一部を構成している。
【0033】
耐火ボード40は、鉄骨梁10及びスラブ20の屋外側(矢印OUT側)に配置されており、後述する耐火ボード支持構造によってスラブ20に支持されている。
【0034】
なお、耐火ボード40は、カーテンウォール30のスパンドレル部に限らず、例えば、カーテンウォール30の柱形、又は外壁の全面に用いても良い。また、カーテンウォール30は、メタルカーテンウォールの一例であり、耐火ボード40は、カーテンウォール用耐火ボード、及び耐火壁の一例である。
【0035】
(鉄骨梁)
鉄骨梁10は、H形鋼で形成されている。この鉄骨梁10は、上下方向に互いに対向する上側フランジ部12及び下側フランジ部14と、上側フランジ部12及び下側フランジ部14を接続するウェブ部16とを有している。ここでは図示を省略しているが、一定規模以上の建物に用いる場合は、鉄骨梁10を耐火被覆(吹付け耐火被覆材、巻付け耐火被覆材、ボード耐火被覆材等で被覆)することで、鉄骨梁10の耐火性能を確保する。
【0036】
鉄骨梁10は、スラブ20の端部に沿って配置され、当該スラブ20の端部を支持している。このスラブ20は、鉄筋コンクリート造とされており、鉄骨梁10の上に設けられている。また、スラブ20は、複数階からなる構造物の所定階の床を形成している。これらの鉄骨梁10、及びスラブ20の屋外側(矢印OUT側)には、カーテンウォール30、及び耐火ボード40が設置されている。
【0037】
なお、鉄骨梁10、及びスラブ20は、躯体の一例である。
【0038】
(カーテンウォール)
カーテンウォール30は、スラブ20の上下階に亘って配置されており、構造物の外壁(外装)を構成している。このカーテンウォール30は、格子状に連結された複数の方立32及び無目34と、これらの方立32及び無目34によって形成された格子枠内に設けられた窓ガラス36とを備えている。
【0039】
複数の方立32及び無目34は、一例として、アルミ製とされている。複数の方立32は、水平方向に間隔を空けて立てられている。各方立32は、スラブ20の端部と対向して配置されており、図示しない方立ブラケット及びファスナ等を介して、スラブ20又は鉄骨梁10等の躯体に支持されている。隣り合う方立32には、複数の無目34が架設されている。複数の無目34は、上下方向に間隔を空けて配置されている。
【0040】
(耐火ボード)
耐火ボード40は、カーテンウォール30の屋内側に、窓ガラス36と対向した状態で取り付けられている。この耐火ボード40の外周部は、方立32、及び無目34に沿って設けられた枠状の保持部(レール部)38によって保持されている。
【0041】
耐火ボード40は、スラブ20の屋外側に、スラブ20の上下階に亘って配置されるとともに、スラブ20の端部との間に間隔を空けて配置されている。この耐火ボード40とスラブ20の端部との間には、ロックウール等の層間塞ぎ材22が設けられている。この層間塞ぎ材22によって、火災時に、耐火ボード40とスラブ20の端部との間の空間から、スラブ20の上階に熱気や炎が流入することが抑制されている。
【0042】
なお、耐火ボード40の詳細については、後述する。
【0043】
(耐火ボード支持構造)
前述の通り、耐火ボード40はアルミ製の枠状の保持部(レール部)38によって保持されているが、アルミは660℃程度で溶融するため、火災時には、枠状の保持部(レール部)38で耐火ボード40を支持することが出来ない場合がある。耐火ボード40が脱落すると、上階に延焼し火災被害が拡大するため、枠状の保持部(レール部)38とは別に耐火ボード40を支持する必要がある。そのため、図1に示されるように、耐火ボード40には、耐火ボード支持構造が適用されている。耐火ボード支持構造は、複数のインサートナット50と、複数の支持部材60を有している。
【0044】
インサートナット50は、耐火ボード40の上部における屋内側に埋設されており、その一端が耐火ボード40における屋内側(矢印IN側)の内面40Aから露出している。このインサートナット50の一端には、後述する支持部材60及びブラケット70を接合するためのボルト52が捻じ込まれている。
【0045】
インサートナット50は、例えば、鬼目ナットとされている。このインサートナット50は、例えば、耐火ボード40に形成された下穴にインサートナット50を打ち込み、又は捻じ込むことにより、けい酸カルシウム板42に埋設される。
【0046】
なお、インサートナット50は、耐火ボード40を厚み方向に貫通せず、その他端が耐火ボード40における屋外側(矢印OUT側)の外面40Bから露出していない。
【0047】
複数の支持部材(支持金物)60は、鋼板等の金属板によって形成されており、耐火ボード40の横幅方向に間隔を空けて配置されている。
【0048】
支持部材60は、側面視にて、C字形状に形成されている。また、支持部材60は、ベース部62と、下端フック部64と、上端フック部66とを有している。ベース部62は、帯状に形成されており、耐火ボード40の屋内側(鉄骨梁10側)の内面40Aに沿って配置されている。
【0049】
ベース部62の下端部には、耐火ボード40の下端部を保持する下端フック部64が設けられている。一方、ベース部62の上端部には、耐火ボード40の上端部を保持する上端フック部66が設けられている。このベース部62は、ボルト52によって、インサートナット50に接合されている。
【0050】
また、インサートナット50には、ボルト52によってブラケット70が接合されている。つまり、支持部材60及びブラケット70は、ボルト52によってインサートナット50に共締めされている。
【0051】
なお、耐火ボード40の支持構造は、インサートナット50及び支持部材60に限らず、適宜変更可能である。
【0052】
(ブラケット、躯体側ファスナ)
ブラケット70は、躯体側ファスナ72を介してスラブ20に固定されている。躯体側ファスナ72は、一例として、断面L字状に形成されている。この躯体側ファスナ72は、スラブ20の端部の上面に、ボルトによって固定されている。また、躯体側ファスナ72には、ブラケット70がボルトによって固定されている。
【0053】
なお、ブラケット70及び躯体側ファスナ72の形状や配置等は、適宜変更可能である。また、ブラケット70及び躯体側ファスナ72は、別体とせず、一体に形成することも可能である。さらに、ブラケット70及び躯体側ファスナ72は、スラブ20に限らず、例えば、鉄骨梁10に固定されても良いし、鉄骨梁10に設けられたガセットプレート等に固定されても良い。
【0054】
(耐火ボードの詳細)
次に、耐火ボード40の詳細について説明する。
【0055】
図2に示されるように、耐火ボード40は、一例として、1枚あたり厚さ10~13mm程度の3枚のけい酸カルシウム板42と、2枚の熱発泡性耐火シート44とを有している。3枚のけい酸カルシウム板42は、JIS A 5430に規定されたタイプ2のけい酸カルシウム板とされており、かさ密度が0.60g/mm以上で、かつ、曲げ強度が10.0N/mm以上とされている。このけい酸カルシウム板42は、一般に、トバモライト系のけい酸カルシウム板と呼ばれている。
【0056】
なお、JIS A 5430には、タイプ3のけい酸カルシウム板も規定されている。タイプ3のけい酸カルシウム板は、一般に、ゾノトライト系のけい酸カルシウム板と呼ばれている。
【0057】
3枚のけい酸カルシウム板42は、厚み方向に並んで配置されている。隣り合うけい酸カルシウム板42の間には、熱発泡性耐火シート44がそれぞれ配置されている。熱発泡性耐火シート44は、加熱によって熱発泡し、断熱層(空気層)を形成するシート状の耐火被覆材である。
【0058】
熱発泡性耐火シート44は、屋外側(矢印OUT側)から2枚目及び3枚目のけい酸カルシウム板42のいずれか、もしくは双方の表面(外面)に接着剤によって張り付けられており、これらの表面(外面)を略全面に亘って覆っている。これにより、火災時に、熱発泡性耐火シート44が熱発泡すると、熱発泡によって形成された断熱層によって屋外側から2枚目及び3枚目のけい酸カルシウム板42の表面が略全面に亘って覆われる。
【0059】
また、熱発泡性耐火シート44は、屋外側から1枚目及び2枚目のけい酸カルシウム板42のいずれか、もしくは双方の表面(内面)に、接着剤によって張り付けられており、これらの表面(内面)を略全面に亘って覆っている。
【0060】
熱発泡性耐火シート44は、例えば、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル-エチレン共重合樹脂、酢酸ビニル-バーサチック酸ビニルエステル共重合樹脂、酢酸ビニル-バーサチック酸ビニルエステル-アクリル共重合樹脂、酢酸ビニル-アクリル共重合樹脂、アクリル樹脂、アクリル-スチレン共重合樹脂、ビニルトルエン-ブタジエン共重合体、ビニルトルエン-アクリル共重合樹脂、スチレン-ブタジエン共重樹脂、ポリブタジエン樹脂、エチレン-アクリル共重合樹脂から選ばれる1種以上の合成樹脂を含む。
【0061】
熱発泡性耐火シート44は、上記合成樹脂に加えて、例えば、発泡剤、難燃剤、炭化剤、充填剤を含有する混合物から形成されるものである。このうち、発泡剤としては、例えばメラミン、ジシアンジアミド、アゾジカーボンアミド等が挙げられ、難燃剤としては、例えばポリリン酸アンモニウム等が挙げられる。また、炭化剤としては、例えばペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等が挙げられ、充填剤としては、例えば二酸化チタン、炭酸カルシウム、無機繊維等が挙げられる。これら各成分については、1種又は2種以上で使用できる。
【0062】
各成分の混合比率(重量比率)は、固形分換算で、合成樹脂100重量部に対して、発泡剤40~150重量部、難燃剤200~600重量部、炭化剤40~150重量部、及び充填剤50~160重量部であることが好ましい。上記混合比率で使用した場合には、耐火性能を効率的に高めることができる。
【0063】
熱発泡性耐火シート44を形成する混合物は、上記各成分に加え、必要に応じて、各種添加剤を含むことができる。添加剤としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく、例えば、顔料、繊維、湿潤剤、可塑剤、滑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、増粘剤、分散剤、消泡剤、架橋剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、希釈溶媒等が挙げられる。
【0064】
熱発泡性耐火シート44の厚みは、適宜設定すれば良いが、好ましくは0.1~10mmであり、より好ましくは0.3~8mmであり、更に好ましく0.5~6mmである。また、熱発泡性耐火シート44の発泡開始温度は、好ましくは150℃以上であり、より好ましくは180℃以上、更に好ましくは200~400℃である。
【0065】
熱発泡性耐火シート44は、繊維質シート等が積層されたものであってもよい。このような繊維質シートとしては、例えば、有機繊維及び/又は無機繊維等を含む公知のシートを使用することができる。
【0066】
なお、けい酸カルシウム板42は、3枚に限らず、複数(2枚以上)あれば良い。
【0067】
(作用)
次に、第一実施形態の作用について説明する。
【0068】
図1に示されるように、本実施形態によれば、カーテンウォール30のスパンドレル部には、耐火ボード40が設けられている。この耐火ボード40によって、火災時における上階延焼が抑制される。
【0069】
ここで、耐火ボード40に用いられるけい酸カルシウム板には、前述したように、ゾノトライト系と、トバモライト系がある。ゾノトライト系けい酸カルシウム板は、耐火性能が高いため、主に耐火ボード等の耐火被覆材として用いられる。一方、トバモライト系は、耐火性能があまり高くないため、主に内装材として用いられる。
【0070】
しかしながら、トバモライト系けい酸カルシウム板は、ゾノトライト系けい酸カルシウム板よりも剛性が高いため、風圧等に対する抵抗力が高い。また、トバモライト系けい酸カルシウム板は、ゾノトライト系けい酸カルシウム板と比較して、大判の製作が可能である。さらに、トバモライト系けい酸カルシウム板は、工場塗装が可能である。そのため、剛性や、意匠性、コスト面から、耐火ボードとしてトバモライト系けい酸カルシウム板を採用したいというニーズがある。
【0071】
ただし、トバモライト系けい酸カルシウム板は、前述したように、ゾノトライト系けい酸カルシウム板と比較して耐火性能が低い。この対策として、耐火ボードとしてトバモライト系けい酸カルシウム板を採用する場合、耐火性能を補うために、トバモライト系けい酸カルシウム板の表面を巻付け耐火被覆材等によって耐火被覆することが考えられる。
【0072】
しかしながら、トバモライト系けい酸カルシウム板は、ゾノトライト系けい酸カルシウム板よりも硬度が高く、割れ易い。そのため、トバモライト系けい酸カルシウム板には、ビス等を打ち込むことが難しく、トバモライト系けい酸カルシウム板に対する巻付け耐火被覆材の取付方法が問題となる。
【0073】
また、トバモライト系けい酸カルシウム板は、ゾノトライト系けい酸カルシウム板よりも密実であるため、加熱されると、早期に爆裂し易い。また、トバモライト系けい酸カルシウム板は、一般に、複数枚の積層接着板とされる。そのため、火災時には、積層接着された複数のけい酸カルシウム板が順に剥がれ落ちる可能性がある。
【0074】
以下、一例として、比較例に係る耐火ボードの火災時の挙動について説明する。
【0075】
図3(A)、図3(B)、図3(C)、図4(A)、図4(B)、及び図4(C)には、比較例に係る耐火ボード200が示されている。比較例に係る耐火ボード200は、積層接着された3枚のけい酸カルシウム板42を有している。この比較例に係る耐火ボード200は、熱発泡性耐火シート44を有しない点で、本実施形態に係る耐火ボード40と相違する。
【0076】
火災時には、図3(A)に示されるように、耐火ボード200を構成する3枚のけい酸カルシウム板42のうち、先ず、加熱側(屋外側)の1枚目のけい酸カルシウム板42に爆裂等によって亀裂Vが入る。
【0077】
次に、図3(B)に示されるように、亀裂Vから侵入した熱気によって1枚目のけい酸カルシウム板42と2枚目のけい酸カルシウム板42とを張り合わせる接着剤の軟化・分解等が生じ、接着力が低下する。これにより、1枚目のけい酸カルシウム板42が脱落する。
【0078】
図3(C)に示されるように、1枚目のけい酸カルシウム板42が脱落すると、2枚目のけい酸カルシウム板42が火災熱を直接受ける。そのため、1枚目のけい酸カルシウム板42と同様に、2枚目のけい酸カルシウム板42に亀裂Vが入る。
【0079】
次に、図4(A)に示されるように、亀裂Vから侵入した熱気によって2枚目のけい酸カルシウム板42と3枚目のけい酸カルシウム板42とを張り合わせる接着剤の軟化・分解等が生じ、接着力が低下する。これにより、2枚目のけい酸カルシウム板42が脱落する。
【0080】
図4(B)に示されるように、2枚目のけい酸カルシウム板42が脱落すると、3枚目のけい酸カルシウム板42が火災熱を直接受ける。そのため、1枚目及び2枚目のけい酸カルシウム板42と同様に、3枚目のけい酸カルシウム板42に亀裂Vが入る。これにより、図4(C)に示されるように、亀裂Vから屋内側に火災熱が侵入する。
【0081】
これに対して本実施形態に係る耐火ボード40は、図5(A)に示されるように、3枚のけい酸カルシウム板42と、2枚の熱発泡性耐火シート44とを有している。熱発泡性耐火シート44は、厚み方向に隣り合うけい酸カルシウム板42の間にそれぞれ配置されている。
【0082】
これにより、火災時には、図5(A)に示されるように、耐火ボード40を構成する3枚のけい酸カルシウム板42のうち、先ず、加熱側(屋外側)の1枚目のけい酸カルシウム板42に爆裂等によって亀裂Vが入る。この亀裂Vから侵入した熱気によって1枚目のけい酸カルシウム板42と2枚目のけい酸カルシウム板42とを張り合わせる接着剤の軟化・分解等が生じ、接着力が低下する。この結果、1枚目のけい酸カルシウム板42が脱落する。
【0083】
図5(B)に示されるように、1枚目のけい酸カルシウム板42が脱落すると、2枚目のけい酸カルシウム板42の表面(外面)に張り付けられた熱発泡性耐火シート44が火災熱を直接受ける。これにより、熱発泡性耐火シート44が熱発泡し、断熱層44Fが形成される。この結果、2枚目のけい酸カルシウム板42の耐火性能が高められる。
【0084】
図6(A)に示されるように、さらに加熱が進むと、2枚目のけい酸カルシウム板42に亀裂Vが入る。この亀裂Vから侵入した熱気によって2枚目のけい酸カルシウム板42と3枚目のけい酸カルシウム板42とを張り合わせる接着剤の軟化・分解等が生じ、接着力が低下する。この結果、2枚目のけい酸カルシウム板42及び断熱層44Fが脱落する。
【0085】
図6(B)に示されるように、2枚目のけい酸カルシウム板42が脱落すると、3枚目のけい酸カルシウム板42の表面に張り付けられた熱発泡性耐火シート44が火災熱を直接受ける。これにより、熱発泡性耐火シート44が熱発泡し、断熱層44Fが形成される。この結果、3枚目のけい酸カルシウム板42の耐火性能が高められる。
【0086】
このように本実施形態では、耐火ボード40を構成するけい酸カルシウム板42の表面を熱発泡性耐火シート44によって覆うことにより、けい酸カルシウム板42の耐火性能を高めることができる。
【0087】
また、けい酸カルシウム板42の表面に熱発泡性耐火シート44を張り付けることにより、熱発泡性耐火シート44の脱落を抑制することができる。
【0088】
また、熱発泡性耐火シート44は、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル-エチレン共重合樹脂、酢酸ビニル-バーサチック酸ビニルエステル共重合樹脂、酢酸ビニル-バーサチック酸ビニルエステル-アクリル共重合樹脂、酢酸ビニル-アクリル共重合樹脂、アクリル樹脂、アクリル-スチレン共重合樹脂、ビニルトルエン-ブタジエン共重合体、ビニルトルエン-アクリル共重合樹脂、スチレン-ブタジエン共重樹脂、ポリブタジエン樹脂、エチレン-アクリル共重合樹脂から選ばれる1種以上の合成樹脂を含んでいる。これにより、けい酸カルシウム板42の耐火性能を効率的に高めることができる。
【0089】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態において、第一実施形態と同じ構成の部材等には、同符号を付して説明を適宜省略する。
【0090】
図7には、第二実施形態に係る耐火壁構造が適用された耐火ボード40が示されている。耐火ボード40は、3枚のけい酸カルシウム板42と、1枚の熱発泡性耐火シート44とを有している。
【0091】
3枚のけい酸カルシウム板42は、厚み方向に並んで配置されており、互いに積層接着されている。隣り合うけい酸カルシウム板42は、表面(積層面)に塗布された接着剤を介して互いに接着されている。
【0092】
3枚のけい酸カルシウム板42のうち、最も外側(屋外側)のけい酸カルシウム板42の表面(耐火ボード40の外面40B)は、熱発泡性耐火シート44によって覆われている。熱発泡性耐火シート44は、けい酸カルシウム板42の表面に接着剤によって張り付けられている。この熱発泡性耐火シート44の外側(屋外側)には、仕上げ材80が配置されている。
【0093】
仕上げ材(仕上げパネル)80は、一例として、鋼板によって形成されている。この仕上げ材80は、熱発泡性耐火シート44と厚み方向に並んで配置されており、当該熱発泡性耐火シート44の表面(外面)を覆っている。これにより、耐火ボード40の意匠性が高められている。
【0094】
なお、仕上げ材80は、熱発泡性耐火シート44とは接合されておらず、熱発泡性耐火シート44から離れて配置され、又は熱発泡性耐火シート44と接触した状態で配置されている。
【0095】
仕上げ材80は、耐火ボード40と共に、支持部材60に支持されている。より具体的には、仕上げ材80の下端部は、耐火ボード40の下端部と共に、支持部材60の下端フック部64に保持されている。また、仕上げ材80の上端部は、耐火ボード40の上端部と共に、支持部材60の上端フック部66に保持されている。
【0096】
ここで、仕上げ材80は、火災時の加熱によって熱軟化するように形成されている。これにより、火災時に、仕上げ材80が熱軟化すると、仕上げ材80と熱発泡性耐火シート44との間に当該熱発泡性耐火シート44の熱発泡スペースが確保される。
【0097】
なお、仕上げ材80は、例えば、熱発泡性耐火シート44が熱発泡する温度以下の熱で、熱軟化する金属板等で形成することが望ましい。
【0098】
(作用)
次に、第二実施形態の作用について説明する。
【0099】
図7に示されるように、本実施形態によれば、耐火ボード40を構成する複数のけい酸カルシウム板42のうち、最も外側(屋外側)のけい酸カルシウム板42の表面には、熱発泡性耐火シート44が張り付けられている。この熱発泡性耐火シート44の外側(屋外側)には、仕上げ材80が配置されている。この仕上げ材80によって、熱発泡性耐火シート44の表面(外面)を覆い隠すことにより、耐火ボード40の意匠性が高められる。
【0100】
また、仕上げ材80は、火災時の加熱によって熱軟化する。これにより、火災時の加熱によって熱発泡性耐火シート44が熱発泡したときに、仕上げ材80が外側(屋外側)へ変形する。したがって、熱発泡性耐火シート44が熱発泡し易くなるため、仕上げ材80と耐火ボード40との間に、所定の断熱層を形成することができる。
【0101】
なお、本実施形態では、仕上げ材80が、火災時の加熱によって熱軟化するように形成されている。しかし、仕上げ材80は、熱軟化に限らず、例えば、火災時の加熱によって熱溶融するアルミ板等によって形成されても良い。
【0102】
また、図8に示されるように、仕上げ材90は、火災時の加熱によって保持を解除する保持部材92に保持されても良い。具体的には、仕上げ材90は、支持部材60の下端フック部64及び上端フック部66の外側(屋外側)に配置されている。この仕上げ材90の下端部及び上端部は、ネジやビス等の保持部材92によって支持部材60の下端フック部64及び上端フック部66の外面にそれぞれ取り付けられている。
【0103】
ここで、保持部材92は、火災時の加熱によって熱軟化し又は熱溶融するプラスチック等によって形成されている。これにより、火災時の加熱によって保持部材92が熱軟化し又は熱溶融するため、保持部材92による仕上げ材90の保持が解除される。
【0104】
そのため、火災時の加熱によって熱発泡性耐火シート44が熱発泡する際に、仕上げ材90が脱落するため、熱発泡性耐火シート44の熱発泡スペースが確保される。したがって、熱発泡性耐火シート44が熱発泡し易くなるため、所定の断熱層を形成することができる。
【0105】
なお、保持部材92は、熱発泡性耐火シート44が熱発泡する温度以下の熱で、熱軟化し又は熱溶融し、仕上げ材90の保持を解除可能な材料等で形成することが望ましい。
【0106】
また、図9に示される変形例のように、仕上げ材100は、熱発泡性耐火シート44と間隔を空けて配置されても良い。具体的には、仕上げ材100と熱発泡性耐火シート44との間には、スペーサ102が配置されている。
【0107】
スペーサ102は、けい酸カルシウム板等の耐火材によって形成されており、仕上げ材100及び熱発泡性耐火シート44の下端部間、及び仕上げ材100及び熱発泡性耐火シート44の上端部間にそれぞれ配置されている。これらのスペーサ102によって、仕上げ材100と熱発泡性耐火シート44との間に、当該熱発泡性耐火シート44の熱発泡スペースが形成されている。したがって、熱発泡性耐火シート44が熱発泡し易くなるため、所定の断熱層を形成することができる。
【0108】
(変形例)
次に、上記第一実施形態及び第二実施形態の変形例について説明する。なお、以下では、上記第一実施形態を例に各種の変形例について説明するが、これらの変形例は、上記第二実施形態にも適宜適用可能である。
【0109】
上記第一実施形態では、熱発泡性耐火シート44が、けい酸カルシウム板42の表面に接着剤によって取り付けられている。しかし、熱発泡性耐火シート44は、けい酸カルシウム板42の表面にタッカー及び接着剤によって取り付けられても良い。
【0110】
例えば、図10に示される変形例では、熱発泡性耐火シート44が、けい酸カルシウム板42の表面に接着剤及び複数のタッカー110によって取り付けられている。タッカー110は、一例として、ピッチ(隣り合うタッカー110の間隔)が150mmとされている。
【0111】
ここで、熱発泡性耐火シート44は、熱発泡時に、けい酸カルシウム板42の表面から剥がれる方向(加熱側)に発泡するため、けい酸カルシウム板42の表面から剥がれる可能性がある。
【0112】
また、火災時には、例えば、けい酸カルシウム板42が、側面視にて加熱側へ凸を成すように湾曲変形する。このけい酸カルシウム板42の湾曲変形に熱発泡性耐火シート44が追従することができず、熱発泡性耐火シート44が脱落する可能性がある。
【0113】
さらに、けい酸カルシウム板42の表面に熱発泡性耐火シート44を張り付ける場合は、鉄骨等の鋼材に熱発泡性耐火シート44を張り付ける場合と比較して、剥がれ易い。
【0114】
これに対して本変形例では、前述したように、熱発泡性耐火シート44が、けい酸カルシウム板42の表面に接着剤及び複数のタッカー110によって取り付けられている。これにより、熱発泡時に、けい酸カルシウム板42の表面から熱発泡性耐火シート44が剥がれることが抑制される。
【0115】
また、上記第一実施形態では、隣り合うけい酸カルシウム板42の間に熱発泡性耐火シート44がそれぞれ設けられている。しかし、熱発泡性耐火シート44の数や配置は、適宜変更可能である。したがって、例えば、隣り合うけい酸カルシウム板42の間にそれぞれ設けられた2枚の熱発泡性耐火シート44のうち、1枚の熱発泡性耐火シート44を省略しても良い。また、熱発泡性耐火シート44は、1枚に限らず、複数(2枚以上)積層してもよい。
【0116】
また、熱発泡性耐火シート44は、隣り合うけい酸カルシウム板42の間に限らず、例えば、耐火ボード40の屋内側の内面40Aを覆うように設けられても良いし、耐火ボード40の屋外側の外面40Bを覆うように設けられても良い。つまり、熱発泡性耐火シート44は、複数のけい酸カルシウム板42の表面の少なくとも1つを覆うように設けることができる。
【0117】
また、熱発泡性耐火シート44は、隣り合うけい酸カルシウム板42の間と耐火ボード40の屋内側の内面40Aの双方に設けてもよいし、隣り合うけい酸カルシウム板42の間と耐火ボード40の屋外側の外面40Bの双方に設けてもよい。
【0118】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0119】
なお、以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0120】
(付記1)
かさ密度が0.60g/mm以上で、かつ、曲げ強度が10.0N/mm以上とされ、厚み方向に並ぶ複数のけい酸カルシウム板を有するカーテンウォール用耐火ボードと、
複数の前記けい酸カルシウム板の表面の少なくとも1つを覆う熱発泡性耐火シートと、
を備える耐火壁構造。
(付記2)
前記熱発泡性耐火シートは、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル-エチレン共重合樹脂、酢酸ビニル-バーサチック酸ビニルエステル共重合樹脂、酢酸ビニル-バーサチック酸ビニルエステル-アクリル共重合樹脂、酢酸ビニル-アクリル共重合樹脂、アクリル樹脂、アクリル-スチレン共重合樹脂、ビニルトルエン-ブタジエン共重合体、ビニルトルエン-アクリル共重合樹脂、スチレン-ブタジエン共重樹脂、ポリブタジエン樹脂、エチレン-アクリル共重合樹脂から選ばれる1種以上の合成樹脂を含む、
付記1に記載の耐火壁構造。
(付記3)
前記熱発泡性耐火シートは、隣り合う前記けい酸カルシウム板の間に配置される、
付記1又は付記2に記載の耐火壁構造。
(付記4)
複数の前記けい酸カルシウム板のうち、最も外側の前記けい酸カルシウム板の表面を覆う前記熱発泡性耐火シートの外側に配置され、火災時の加熱によって熱軟化又は熱溶融する仕上げ材を備える、
付記1又は付記2に記載の耐火壁構造。
(付記5)
複数の前記けい酸カルシウム板のうち、最も外側の前記けい酸カルシウム板の表面を覆う前記熱発泡性耐火シートの外側に配置される仕上げ材と、
前記仕上げ材を保持するとともに、火災時の加熱によって前記仕上げ材の保持を解除する保持部材と、
を備える、
付記1又は付記2に記載の耐火壁構造。
(付記6)
複数の前記けい酸カルシウム板のうち、最も外側の前記けい酸カルシウム板の表面を覆う前記熱発泡性耐火シートの外側に、該熱発泡性耐火シートと間隔を空けて配置される仕上げ材を備える、
付記1又は付記2に記載の耐火壁構造。
(付記7)
前記熱発泡性耐火シートは、複数の前記けい酸カルシウム板の少なくとも1つの表面に張り付けられる、
付記1~付記6の何れか1つに記載の耐火壁構造。
(付記8)
前記熱発泡性耐火シートは、複数のタッカーによって前記けい酸カルシウム板の少なくとも1つの表面に固定される、
付記1~付記7の何れか1つに記載の耐火壁構造。
(付記9)
前記熱発泡性耐火シートを備えた前記けい酸カルシウム板をメタルカーテンウォールのスパンドレル部、柱形、又は外壁の全面に用いた、
付記1~付記9の何れか1つに記載の耐火壁構造。
【符号の説明】
【0121】
30 カーテンウォール(メタルカーテンウォール)
40 耐火ボード(カーテンウォール用耐火ボード、耐火壁)
42 けい酸カルシウム板
44 熱発泡性耐火シート
80 仕上げ材
90 仕上げ材
92 保持部材
100 仕上げ材
110 タッカー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10