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特開2024-16558基板乾燥装置、基板処理装置及び基板乾燥方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016558
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】基板乾燥装置、基板処理装置及び基板乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
H01L21/304 651M
H01L21/304 651B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118780
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000002428
【氏名又は名称】芝浦メカトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】松下 淳
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA09
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AB48
5F157AB51
5F157AB64
5F157AB90
5F157AC03
5F157AC56
5F157BB23
5F157BB45
5F157BH18
5F157CB13
5F157CB14
5F157CB22
5F157CE61
5F157CF16
5F157CF22
5F157CF34
5F157CF40
5F157CF42
5F157CF44
5F157DA21
5F157DB32
5F157DB34
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基板の表層全体のパターン閉塞の発生を低減できる基板乾燥装置、基板処理装置及び基板乾燥方法を提供することができる。
【解決手段】実施形態の乾燥装置(基板乾燥装置)300は、被処理面上に処理液による液膜が形成された状態の基板Wが搬入される乾燥室31と、乾燥室31に搬入された基板Wを支持する支持部34と、乾燥室31内に設けられ、基板Wにおける被処理面の表層を、液膜と表層との間の全体にライデンフロスト現象による気層が生じる温度以上に加熱するフラッシュランプ321と、フラッシュランプ321の加熱による気層を維持するように、加熱により表層の温度を維持する温度維持部(ハロゲンランプ322)と、支持部34とともに基板Wを回転させることにより、表層との間に気層が生じた液膜を、基板Wの回転による遠心力により排出させる駆動機構35と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理面上に処理液による液膜が形成された状態の基板が搬入される乾燥室と、
前記乾燥室に搬入された前記基板を支持する支持部と、
前記乾燥室内に設けられ、前記基板における前記被処理面の表層を、前記液膜と前記表層との間の全体にライデンフロスト現象による気層が生じる温度以上に加熱するフラッシュランプと、
前記フラッシュランプの加熱による前記気層を維持するように、加熱により前記表層の温度を維持する温度維持部と、
前記支持部とともに前記基板を回転させることにより、前記表層との間に前記気層が生じた前記液膜を、前記基板の回転による遠心力により排出させる駆動機構と、
を有することを特徴とする基板乾燥装置。
【請求項2】
前記温度維持部は、前記フラッシュランプが発光する前に又は同時に加熱を開始することを特徴とする請求項1記載の基板乾燥装置。
【請求項3】
前記温度維持部は、前記フラッシュランプの消灯後も加熱を継続することを特徴とする請求項1記載の基板乾燥装置。
【請求項4】
前記フラッシュランプ及び前記温度維持部は、前記基板を挟んで互いに反対の側に配置されていることを特徴とする請求項1記載の基板処理装置。
【請求項5】
基板を回転させながら処理液を供給することにより処理する処理装置と、
処理済の前記基板を回転させながら処理液を供給することにより洗浄する洗浄装置と、
請求項1乃至4のいずれかに記載の基板乾燥装置と、
前記洗浄装置において洗浄された前記基板を、処理液による液膜が形成された状態で搬出し、前記基板乾燥装置に搬入する搬送装置と、
を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
支持部が、被処理面上に処理液による液膜が形成された状態で乾燥室に搬入された基板を支持し、
駆動機構が、前記支持部とともに前記基板を回転させ、
フラッシュランプが、前記基板における前記被処理面の表層を、前記液膜と前記表層との間の全体にライデンフロスト現象による気層が生じる温度以上に加熱し、
温度維持部が、前記フラッシュランプの加熱による前記気層を維持するように、加熱により前記表層の温度を維持し、
前記液膜を、前記基板の回転による遠心力により排出させる、
ことを特徴とする基板乾燥方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板乾燥装置、基板処理装置及び基板乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体や液晶パネルなどを製造する製造工程では、ウェーハや液晶基板などの基板の被処理面に処理液を供給して被処理面を処理し、処理後、被処理面を洗浄、乾燥させる基板処理装置が用いられる。この基板処理装置の乾燥工程においては、被処理面の表層に形成されたパターン同士の間隔や構造、処理液の表面張力などに起因して、例えばメモリセルやゲート周りなどの微細な凹凸のパターンが倒壊して閉塞することがある。この傾向は、近年の半導体の高集積化や高容量化に伴う微細化に伴って高くなる。
【0003】
パターン倒壊を抑制するためには、表面張力が超純水よりも小さいIPA(2-プロパノール:イソプロピルアルコール)を用いる基板乾燥方法が提案されている。この基板乾燥方法は、基板表面上のDIW(超純水)をIPAとDIWとの混合液に置換し、基板乾燥を行うものである。しかしながら、半導体の微細化は益々進んでおり、IPAのように揮発性が高い有機溶媒を使用する乾燥を行った場合でも、ウェーハのパターンは液体の表面張力などにより倒れることがある。
【0004】
例えば、液体が乾燥していく過程で基板表面の乾燥速度に不均一が生じ、一部のパターン間に液体が残ると、その部分の液体の表面張力によってパターンが倒壊する。詳しくは、液体が残った部分のパターン同士が、液体の表面張力による弾性変形によって倒れ、その液中にわずかに溶けた残渣が凝集する。そして、液体が完全に気化すると、倒れたパターン同士が固着する。
【0005】
これに対処するため、洗浄液を供給後、回転する基板の被処理面の表層を、ライデンフロスト現象が生じる温度まで急速加熱して、表層と洗浄液の液膜との間に気層を生じさせ、液膜を液玉化して、回転の遠心力により基板外へ排出することで、表面張力による微細なパターンの倒壊を抑制する乾燥方法が提案されている(特許文献1参照)。この乾燥方法では、加熱面と直接に接する液膜の内部に微小な気泡が発生している核沸騰状態では足りず、液体と加熱面との間に蒸気膜が介在して、加熱面から蒸気膜を通して熱が伝達することにより蒸気膜に蒸発が起こる膜沸騰状態とする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6400919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、ライデンフロスト現象を利用して、液膜を液玉化して除去する乾燥においても、基板の一部にパターン閉塞する部分が発生する場合がある。これは、基板の表層に接する一部の液膜が、膜沸騰状態ではなく、核沸騰状態に留まることで、液膜が液玉化せずに、パターンの凹凸の間に残留し、最終的にその部分で表面張力が作用してパターン閉塞が発生すると考えられる。
【0008】
このような一部のパターン閉塞を防ぐために、基板の表層の全体において液膜を膜沸騰状態とするには、基板の表層全体を瞬時に高温にさせる必要がある。より具体的には、基板の表層を、これに接する液膜の沸点温度に対して100℃を超える温度差まで瞬時に加熱する必要がある。さらに、液玉が基板上から排出されるまで、膜沸騰状態の温度を維持する必要がある。
【0009】
半導体の分野で従来から用いられている加熱源としては、フラッシュランプやハロゲンランプが存在する。しかし、フラッシュランプでは、数ミリ秒で基板の表層を瞬時に加熱することができるが、液玉が基板上から排出されるまで、膜沸騰状態の温度を維持できない。一方、ハロゲンランプは、基板の表層を加熱するまで数秒かかるため、フラッシュランプより加熱する速度は遅いが、基板の温度が一旦膜沸騰状態となった場合には、その温度を維持することは可能になる。しかし、より安定的に、液膜を液玉化させるには、ハロゲンランプが膜沸騰温度まで加熱する速度を、数ミリ秒に上げる必要があり、そのためには、膨大な出力を要する。つまり、大きな出力を出せる電源を搭載しなければならず、加熱を繰り返すことにより消費電力も過大となるので、非現実的となる。
【0010】
本発明の目的は、基板の表層全体のパターン閉塞の発生を低減できる基板乾燥装置、基板処理装置及び基板乾燥方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の基板乾燥装置は、被処理面上に処理液による液膜が形成された状態の基板が搬入される乾燥室と、前記乾燥室に搬入された前記基板を支持する支持部と、前記乾燥室内に設けられ、前記基板における前記被処理面の表層を、前記液膜と前記表層との間の全体にライデンフロスト現象による気層が生じる温度以上に加熱するフラッシュランプと、前記フラッシュランプの加熱による前記気層を維持するように、加熱により前記表層の温度を維持する温度維持部と、前記支持部とともに前記基板を回転させることにより、前記表層との間に前記気層が生じた前記液膜を、前記基板の回転による遠心力により排出させる駆動機構と、を有する。
【0012】
本発明の基板処理装置は、基板を回転させながら処理液を供給することにより処理する処理装置と、処理済の前記基板を回転させながら処理液を供給することにより洗浄する洗浄装置と、前記基板乾燥装置と、前記洗浄装置において洗浄された基板を、前記洗浄液による液膜が形成された状態で搬出し、前記基板乾燥装置に搬入する搬送装置と、を有する。
【0013】
本発明の基板乾燥方法は、支持部が、被処理面上に処理液による液膜が形成された状態で乾燥室に搬入された基板を支持し、駆動機構が、前記支持部とともに前記基板を回転させ、フラッシュランプが、前記基板における前記被処理面の表層を、前記液膜と前記表層との間の全体にライデンフロスト現象による気層が生じる温度以上に加熱し、温度維持部が、前記フラッシュランプの加熱による前記気層を維持するように、加熱により前記表層の温度を維持し、前記液膜を、前記基板の回転による遠心力により排出させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、基板の表層全体のパターン閉塞の発生を低減できる基板乾燥装置、基板処理装置及び基板乾燥方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の基板処理装置を示す簡略構成図である。
図2図1の基板処理装置の洗浄装置及び乾燥装置を示す構成図である。
図3】乾燥装置の基板搬入時(A)、膜厚測定時(B)を示す内部構成図である。
図4】乾燥装置の洗浄液供給時(A)、基板待機時(B)を示す内部構成図である。
図5】乾燥装置の基板乾燥時(C)、基板下降時(B)を示す内部構成図である。
図6】実施形態の基板乾燥処理の手順を示すフローチャートである。
図7】ライデンフロスト現象を利用した乾燥処理の流れを示す説明図である。
図8】パターン内に残留する液膜を示す説明図である。
図9】フラッシュランプ、ハロゲンランプ及び基板の温度変化を示すグラフである。
図10】温度維持部の変形例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
[概要]
図1に示すように、本実施形態の基板処理装置1は、各種の処理を行う装置を収容した複数のチャンバ1aを備え、前工程でカセット(FOUP)1bに複数枚収容されて搬送されてきた基板Wに対して、各チャンバ1a内で1枚ずつ処理を行う枚葉処理の装置である。未処理の基板Wは、カセット1bから搬送ロボット1cによって1枚ずつ取り出され、バッファユニット1dに一時的に載置された後、以下に説明する各種装置により、各チャンバ1aへの搬送及び処理が行われる。
【0017】
基板処理装置1は、処理装置110、洗浄装置120、搬送装置200、乾燥装置300、制御装置400を含む。処理装置110は、例えば、回転する基板Wに、処理液(例えば、リン酸水溶液、フッ酸及び硝酸の混合液、酢酸、硫酸及び過酸化水素水の混合液(SPM:Sulfuric hydrogen Peroxide Mixture)等)を供給することによって、不要な膜を除去して回路パターンを残すエッチング装置である。洗浄装置120は、エッチング装置でエッチング処理された基板Wを、処理液(洗浄液)により洗浄する。
【0018】
搬送装置200は、バッファユニット1dと各チャンバ1aとの間、各チャンバ1aの間で基板Wを搬送する。例えば、搬送装置200は、処理装置110において処理済の基板Wを洗浄装置120に搬送し、洗浄装置120において洗浄された基板Wを乾燥装置300に搬送する。乾燥装置(基板乾燥装置)300は、洗浄液により洗浄された基板Wを回転させながら加熱することにより、乾燥処理を行う。制御装置400は、上記の各装置を制御する。
【0019】
なお、本実施形態により処理される基板Wは、例えば、半導体ウェーハである。以下、基板Wのパターン等が形成された面を被処理面とする。また、基板の被処理面において、処理液による液膜に接しているパターンの最表面を、表層とする。
【0020】
洗浄処理のための処理液である洗浄液としては、アルカリ洗浄液(APM)、超純水(DIW)、揮発性溶剤(IPA)を使用する。АPMは、アンモニア水と過酸化水素水を混合した薬液であり、残留有機物を除去するために使用する。DIWは、APM処理後、基板Wの被処理面上に残留するAPMを洗い流すために使用する。IPAは、表面張力がDIWよりも小さく、揮発性が高いため、DIWを置換して表面張力によるパターン倒壊を低減するために使用する。
【0021】
[洗浄装置]
洗浄装置120は、図2に示すように、内部で洗浄処理を行う容器である洗浄室11、基板Wを支持する支持部12、支持部12を回転させる回転機構13、飛散する洗浄液Lを基板Wの周囲から受けるカップ14、洗浄液Lを供給する供給部15を有する。供給部15は、洗浄液Lを滴下するノズル15a、ノズル15aを移動させる移動機構15bが設けられている。
【0022】
支持部12に支持され、回転機構13により回転する基板Wの被処理面に、ノズル15aから洗浄液Lを供給することにより、洗浄処理が行われる。洗浄処理は、処理装置110でエッチング処理された基板Wの被処理面にAPMを供給してAPM洗浄を行い、APM洗浄後に、DIWによる純水リンス処理を行うことにより、基板Wの被処理面に残留していたAPMを純水により洗い流す。これにより、基板Wの被処理面はDIWの洗浄液Lにより液盛りされる。さらに、DIWからIPAに最終的に置換される。洗浄室11には、基板Wを搬出入する開口11aが設けられ、開口11aは扉11bによって開閉可能に構成されている。
【0023】
[搬送装置]
搬送装置200は、ハンドリング装置20を有する。ハンドリング装置20は、基板Wを把持するロボットハンド21と、移動機構22を有する。ロボットハンド21は、基板Wを把持する。移動機構22は、ロボットハンド21を移動させる。搬送装置200は、バッファユニット1dと各種装置との間、各種装置の間で、基板Wを搬送する。例えば、エッチング処理を終えた基板Wを処理装置110から搬出して、基板Wの被処理面上に洗浄液Lの液膜が形成された状態で、洗浄装置120へ搬入する。
【0024】
また、移動機構22は、ハンドリング装置20及びロボットハンド21を移動させることにより、洗浄を終えた基板Wを洗浄装置120から搬出してし、基板Wの被処理面上に洗浄液Lの液膜が形成された状態で、乾燥装置300へ搬入する。なお、基板Wの被処理面上に洗浄液Lの液膜が形成された状態で搬送するのは、基板Wの搬送中に、基板Wの被処理面にパーティクルが付着するのを防止するためである。
【0025】
[乾燥装置]
図1に示すように、乾燥装置300は、乾燥室31、加熱部32、窓部33、支持部34、駆動機構35、カップ36、測定部37、供給部38を有する。乾燥室31は、内部において基板Wを乾燥処理するための容器である。乾燥室31には、被処理面上に処理液による液膜が形成された状態の基板Wが搬入される。乾燥室31は、例えば直方体や立方体などの箱形状である。乾燥室31の内壁には、防塵性を高めるために、シリカによりコーティングされている。乾燥室31には、基板Wを搬出入させるための開口31aが設けられている。開口31aは、扉31bによって開閉可能に設けられている。
【0026】
また、乾燥室31には、導入口31c、排気口31dが設けられている。導入口31cには、配管、吸気弁及び清浄なガス(N等)を供給する給気装置を含む給気部31eが接続されている。排気口31dには、配管、排気弁及びガスを排気する排気装置を含む排気部31fが接続されている。導入口31cから清浄なガスを乾燥室31内に供給することで、乾燥室31内を清浄な雰囲気にすることができる。また、導入口31cからガスを乾燥室31内に供給し、排気口31dから乾燥室31内のガスを排出する構成を作ることで、乾燥室31内の気体の流れを作るようにしている。これにより、基板Wを加熱する際に発生する処理液の蒸気が乾燥室31内に充満することなく、乾燥室31から排出できる構成になっている。なお、排気部31fには、後述するフラッシュランプ321から発する閃光で、急速に膨張する雰囲気による圧力を下げる急速排気弁が設けられていてもよい。
【0027】
加熱部32は、基板Wを加熱する装置である。加熱部32は、乾燥室31内の上部に設けられている。加熱部32は、フラッシュランプ321、ハロゲンランプ322を有する。なお、フラッシュランプ321とハロゲンランプ322との間には、石英等の板状体である仕切り窓32aが設けられている。フラッシュランプ321は、直管形であり、水平状態で平行に複数本が配置されている。フラッシュランプ321には、図示しない電源及びコンデンサが接続されており、コンデンサへの蓄電によるエネルギーによって、瞬時に発光して高温に加熱可能となる。本実施形態のフラッシュランプ321は、基板Wの表層を、液膜と表層との間の全体にライデンフロスト現象による気層が生じる温度(以下、ライデンフロスト温度とする)以上に加熱する。なお、ライデンフロスト温度は、液膜の種類、厚さに応じて異なる幅を有する温度範囲である。
【0028】
ハロゲンランプ322は、フラッシュランプ321の加熱による気層を維持するように、加熱により表層の温度を維持する温度維持部である。ハロゲンランプ322は、直管形であり、フラッシュランプ321の上段に、フラッシュランプ321と直交する方向に水平状態で複数本が配置されている。ハロゲンランプ322には、図示しない電源が接続されている。なお、フラッシュランプ321、ハロゲンランプ322ともに、電源は200V以下の一般的な工場用の電源を利用できる。
【0029】
フラッシュランプ321とハロゲンランプ322の方向は直交しているため、全体として格子状となっている。フラッシュランプ321、ハロゲンランプ322は、洗浄液Lそのものよりも、基板Wの表層自体が加熱され易い波長の電磁波(赤外線)を用いることにより、基板Wの熱による気層の発生を促進する。
【0030】
より具体的には、IPAの液膜が存在する基板Wの表層の全体を、数ミリ秒以内に200℃以上に加熱する。これにより、液膜は膜沸騰状態となり、液膜の基板Wとの接触部分を瞬時に均一に気化させて気層を生じさせて、液膜を浮上させることができる。そして、フラッシュランプ321は長時間点灯できないので、ハロゲンランプ322によって基板Wの表層を加熱して、基板Wの近傍の浮上した液を気化させ続けることで、基板Wの表層への再付着を防ぎ、表面張力を作用させることなく液膜を除去できる。
【0031】
窓部33は、加熱部32からの電磁波を透過する部材である。窓部33としては、たとえば、石英等の板状体を用いることができる。窓部33は、乾燥室31内の加熱部32の直下に設けられ、加熱部32と支持部34との間を仕切ることにより、フラッシュランプ321、ハロゲンランプ322の点灯の繰り返しによって、コネクタ部の部材の伸縮が起こることで発生するパーティクルが、上部から基板Wへ付着して金属汚染が発生することを防止している。
【0032】
支持部34は、乾燥室31に搬入された基板Wを支持する。支持部34は、回転テーブル34a、複数の保持部材34b、回転軸34cを有する。回転テーブル34aは、基板Wよりも大きな径の円筒形状であり、上面が平坦な円形となっている。複数の保持部材34bは、基板Wの外周に沿う位置に等間隔で配置され、基板Wと回転テーブル34aの上面との間に間隔を空けて、基板Wを水平状態に保持する。複数の保持部材34bは、図示しない開閉機構によって、基板Wの縁部に接する閉位置と、基板Wの縁部から離れる開位置との間を移動可能に設けられている。回転軸34cは、回転テーブル34aを下方から支持し、回転の中心となる鉛直方向の軸である。
【0033】
駆動機構35は、支持部34に支持された基板Wを回転させるとともに、昇降させる機構である。駆動機構35は、回転部35aと昇降部35bを有する。回転部35aは、モータ等の駆動源を有し、回転軸34cを介して支持部34を回転させる。昇降部35bは、モータにより回動するボールねじにより、スライダが昇降する機構を有し、回転部35aともに、支持部34を上下動させる。
【0034】
本実施形態においては、駆動機構35により変化する支持部34の位置として、待機位置Dと乾燥位置Uが設定されている。待機位置Dは、洗浄液Lによる液膜が形成された状態で、乾燥室31に搬入された基板Wを、加熱部32から離隔して受け取る位置である。
【0035】
より具体的には、待機位置Dは、後述する検出部37a、ノズル38aよりも低い位置である。このように、基板Wを加熱部32から離隔した位置で受け取って支持するのは、以下の理由による。つまり、乾燥処理時のみに加熱部32により加熱(ランプ点灯)したとしても、加熱部32によって発せられる熱によって窓部33が蓄熱する。特に、窓部33は、加熱部32が設置される直下にあることと、材質が石英のため熱伝導率が悪いので、さらに蓄熱しやすい。このため、乾燥処理が繰り返し行われることで、窓部33の蓄熱が進行してしまう。
【0036】
このような環境下で洗浄液Lの液膜が形成された基板Wを搬入すると、蓄熱した窓部33からの輻射熱によって基板W上の液膜の蒸発が開始してしまう。但し、液膜の全体が瞬時に蒸発するわけではなく、一部が蒸発する不均一な乾燥状態となり、残留する洗浄液Lの表面張力によって、パターン閉塞が発生する。このため、加熱部32から離隔した位置に支持することにより、このような輻射熱の影響を受けないようにする必要がある。
【0037】
したがって、待機位置Dは、基板Wの被処理面上に液盛された処理液(乾燥室31に搬入された時点の処理液)が、加熱部32によって繰り返し加熱されて蓄熱される窓部33の輻射熱によって、蒸発する恐れがない(熱による影響が少ない)状態となるまで、窓部33と離れている位置である。乾燥位置Uは、加熱部32に接近して、加熱部32により加熱された基板Wが、液膜との間に気層を生じさせる位置である。本実施形態の待機位置Dは、開口31aの上縁Eよりも下方であり、乾燥位置Uは、開口31aの上縁Eよりも上方である。
【0038】
カップ36は、支持部34を周囲から囲むように円筒形状に形成されている(図2参照)。カップ36の周壁の上部は、径方向の内側に向かって傾斜し、支持部34上の基板Wが露出するように開口している。カップ36は、回転する基板Wから飛散した洗浄液Lを受けて、下方に流す。カップ36の底面には、流れ落ちる洗浄液Lを排出するための排出口(不図示)が形成されている。なお、カップ36は、駆動機構35に接続され、支持部34とともに昇降可能に設けられている。
【0039】
測定部37は、乾燥室31に搬入され、待機位置Dにある基板W上の液膜の膜厚を測定する。測定部37は、検出部37a、揺動アーム37b、揺動機構37cを有する。検出部37aとしては、例えば、レーザ変位計やカメラなどを用いる。揺動アーム37bは、先端に検出部37aが設けられ、検出部37aを、支持部34上の基板Wの被処理面の中心と外周縁との間の中央付近に対向させる測定位置と、その測定位置から退避して基板Wの搬入や搬出を可能とする待機位置とに移動させる。揺動機構37cは、揺動アーム37bを揺動させる機構である。
【0040】
測定部37による膜厚測定法としては、例えば、光干渉原理を用いることができる。なお、別の例として、支持部34内に重量計を用いることが可能である。この重量計を用いる場合には、基板W上の液膜の重量(液膜の重量=液膜を含む基板の重さ-基板の重さ)を理論的あるいは実験的に液膜の厚さに換算する。
【0041】
供給部38は、乾燥室31に搬入され、待機位置Dにある基板W上に洗浄液Lを供給する。供給部38は、ノズル38a、揺動アーム38b、揺動機構38cを有する。ノズル38aは、基板Wの被処理面の中心付近に向けて洗浄液Lを供給する。ノズル38aには、乾燥室31外の貯留部から配管(いずれも不図示)などを介して洗浄液Lが供給される。
【0042】
供給部38が供給する洗浄液Lの種類は、洗浄装置120における洗浄処理において、アルカリ洗浄後のリンス処理で、最終的に基板W上に液盛される液種によって決まる。つまり、DIWでリンス処理が終了する場合は、DIWで液盛された状態で、洗浄装置120から乾燥装置300に搬入される。DIWの場合、供給部38はDIWを供給する。DIWからIPAに最終的に置換される場合は、IPAで液盛された状態で、洗浄装置120から乾燥装置300に搬入される。IPAの場合、供給部38は、搬送途中で揮発してしまったり、搬送途中で大気中の水分を吸収してしまうために、IPAを新たに供給する。
【0043】
揺動アーム38bは、先端にノズル38aが設けられ、ノズル38aを、支持部34上の基板Wの被処理面の中心付近に対向する供給位置と、その供給位置から退避して基板Wの搬入や搬出を可能とする退避位置とに移動させる。揺動機構38cは、揺動アーム38bを揺動させる機構である。なお、乾燥位置Uは、洗浄液Lを基板Wに供給する供給位置にある供給部38よりも上方にある。
【0044】
[制御装置]
制御装置400は、基板処理装置1の各部を制御するコンピュータである。制御装置400は、プログラムを実行するプロセッサと、プログラムや動作条件などの各種情報を記憶するメモリ、各要素を駆動する駆動回路を有する。つまり、制御装置400は、処理装置110、洗浄装置120、搬送装置200、乾燥装置300を制御する。なお、制御装置400は、情報を入力する入力装置、情報を表示する表示装置を有している。
【0045】
制御装置400は、機構制御部41と、膜厚解析部42と、加熱制御部43を有する。機構制御部41は、各部の機構を制御する。例えば、機構制御部41は、駆動機構35の回転部35aを制御することにより、支持部34の回転速度、回転開始及び回転停止のタイミングを制御する。また、機構制御部41は、駆動機構35の昇降部35bを制御することにより、支持部34に対する加熱部32との距離(ギャップ)を制御する。
【0046】
より具体的には、制御装置400は、待機位置Dにて基板Wを支持部34に保持した後、基板Wの被処理面に液盛された洗浄液Lの液膜の膜厚調整を行い、基板Wを回転させながら乾燥位置Uまで上昇させ、フラッシュランプ321、ハロゲンランプ322を点灯させて所定時間乾燥させる。その後、基板Wの回転を維持しながら、待機位置Dまで下降させる。また、ノズル38aの揺動及び洗浄液Lの吐出、検出部37aの揺動及び測定などの動作を制御する。
【0047】
膜厚解析部42は、測定部37により測定された洗浄液Lの液膜の厚さを解析する。膜厚解析部42は、測定部37により測定された洗浄液Lの液膜の厚さ(液膜厚値)が、所定のしきい値の範囲内にあるか否かを判定する。そして、膜厚解析部42は、測定された液膜の厚さが所定のしきい値の範囲内にあると判定した場合、液膜の厚さが適切であるとして、基板Wの回転と上昇を許可する許可信号を機構制御部41に送信する。機構制御部41は、許可信号を受信すると、駆動機構35に支持部34に回転と上昇を命令する信号を送信する。
【0048】
なお、適切な膜厚は、DIWの場合、例えば10μm以下であり、IPAの場合、例えば100μm以下である。これらの膜厚は、加熱部32に近接する時(窓部33に近づく時)に、基板Wから蒸発しない程度の液膜厚さであり、かつ、ライデンフロスト現象による乾燥処理を行う上で、良好に乾燥できる液膜厚である。但し、これらの数値は例示であり、実際には、予め実験等で適切な液膜厚を求めることができる。また、基板Wの回転速度は、例えば、200~300rpm程度であり、液膜調整されても、このような回転速度の範囲では、液膜厚が所定の厚さに維持できる。
【0049】
加熱制御部43は機構制御部41の命令に応じて、加熱部32を制御する。加熱制御部43は、支持部34が乾燥位置Uに来て停止した時に、機構制御部41から出力される命令信号を受信すると、支持部34上の基板Wの被処理面に対する加熱部32による加熱を実行させる。
【0050】
加熱制御部43は、フラッシュランプ321及びハロゲンランプ322を同時に発光させる。すると、フラッシュランプ321の発光によって、基板Wの被処理面の液膜と表層との間の全体が、ライデンフロスト温度以上に急速に加熱される。例えば、200℃以上の温度で加熱されることにより、数ミリ秒以内に、基板Wの表層全体が、液膜が膜沸騰状態となる温度以上に加熱される。なお、ハロゲンランプ322の発光は、フラッシュランプ321の発光の前であってもよい。つまり、温度維持部は、フラッシュランプ321が発光する前に加熱を開始してもよい。
【0051】
そして、発光し続けるハロゲンランプ322の温度が上昇することにより、基板Wの表層が、ライデンフロスト温度以上に維持され、膜沸騰状態が維持される。これにより、基板Wの被処理面の表層上の洗浄液Lが液玉になる。
【0052】
膜厚解析部42は、測定された洗浄液Lの液膜の厚さが、所定のしきい値の範囲の下限よりも薄いと判定した場合、液膜が薄過ぎるとして、機構制御部41から供給部38に処理液(洗浄液L)の供給指示が出力される。これにより、ノズル38aから洗浄液Lが基板Wの被処理面に所定量(所定時間)供給され、液膜の厚さを所定のしきい値の範囲内とする。その後は、上記のように、基板Wの回転と上昇による乾燥を行う。洗浄液Lの補充時に基板Wを回転させずに停止させても良いが、基板Wを回転させるようにしても良い。
【0053】
膜厚解析部42は、測定された洗浄液Lの液膜の厚さが、所定のしきい値の範囲の上限よりも厚いと判定した場合、液膜が厚過ぎるとして、機構制御部41から駆動機構35に支持部34の回転指示が出力される。これにより、支持部34とともに回転する基板Wの洗浄液Lを、遠心力により飛散させて、液膜の厚さを所定のしきい値の範囲内とする。その後は、上記のように、基板Wの回転と上昇による乾燥を行う。
【0054】
[動作]
以上のような本実施形態の基板処理装置1の動作を、上記の図1及び図2に加えて、図3図5の説明図、図6のフローチャート、図7の説明図を参照して説明する。なお、以下のような手順により基板Wを製造する基板製造方法、基板Wを乾燥させる基板W乾燥方法、基板Wを処理する基板処理方法も、本実施形態の一態様である。また、図3図5においては、カップ36の図示を省略している。
【0055】
図2に示すように、処理装置110においてエッチング処理後の基板Wは、搬送装置200により洗浄装置120に搬入される。洗浄装置120においては、基板Wを保持した支持部12が回転しながら、供給部15が基板Wの被処理面にAPMを供給してアルカリ洗浄を行った後、DIWを供給することによる純水洗浄を行う。また、純水洗浄を終了した後、基板Wの被処理面にIPAを供給する。
【0056】
これにより、基板Wの回転による遠心力によって、IPAが基板Wの被処理面の全域に行き渡り、基板Wの被処理面上に液盛されたDIWがIPAに置換されるアルコールリンス処理が行われる。なお、ここでは、DIWよりも表面張力が低いIPAに置換されるため、基板Wの被処理面上に形成されるパターンの間に働く表面張力が低減される。
【0057】
搬送装置200は、洗浄後の基板Wを洗浄装置120から搬出し、乾燥装置300に搬入する。なお、純水洗浄が終了した後、DIWが液盛された基板Wの被処理面に対して、IPAに置換することは必ず行うとは限らない。つまり、DIWによる純水洗浄のみで洗浄処理を完了してもよい。
【0058】
図3(A)に示すように、被処理面に洗浄液Lによる液膜(IPA)が形成された状態で、乾燥装置300の乾燥室31の開口31aから搬入された基板Wを、待機位置Dにある支持部34の保持部材34bが保持する(ステップS01)。図3(B)に示すように、測定部37の検出部37aは、基板W上の膜厚を測定する(ステップS02)。
【0059】
膜厚が薄い場合には(ステップS03の所定範囲未満)、図4(A)に示すように、供給部38が基板Wの液膜にさらに洗浄液Lを供給することにより膜厚を調整する(ステップS04)。膜厚が厚い場合には(ステップS03の所定範囲超)、支持部34が回転することにより、回転する基板Wから洗浄液Lを飛ばして膜厚を調整する(ステップS05)。
【0060】
膜厚が適切である場合又は調整後に膜厚が適切となった場合には(ステップS03の所定範囲内)、図4(B)に示すように、支持部34が基板Wを回転させながら(ステップS06)、図5(A)に示すように、乾燥位置Uまで上昇することにより、基板Wを加熱部32に接近させる(ステップS07)。基板Wを、加熱部32により加熱される前に回転させることにより、基板Wとともに基板Wの被処理面上の洗浄液Lの液膜を回転させておき、加熱部32により加熱され、基板Wの被処理面との間に気層が発生した後においても、慣性力により洗浄液Lの液膜が回転を継続して遠心力が働くようにする。
【0061】
加熱部32のフラッシュランプ321及びハロゲンランプ322が同時に発光して基板Wの表層を加熱する(ステップS08)。このとき、フラッシュランプ321は、数ミリ秒発光して、基板Wの表層全体を、ライデンフロスト温度以上に急速に加熱させて、ライデンフロスト現象によって、基板Wの表層と液膜との界面に発生する気層を介して、表層から液膜を浮上させる。ハロゲンランプ322は、発光を数秒継続してから消灯することにより、フラッシュランプ321が消灯した後にも基板Wの表層全体を、ライデンフロスト温度以上を維持するように加熱する。
【0062】
これにより、基板Wの表層全体からの液膜の浮上状態が維持されて、液玉となり、遠心力により洗浄液Lを飛ばされて乾燥される(ステップS09)。つまり、図7(A)に示すように、基板Wの被処理面上のパターンPに接触している洗浄液Lは、図7(B)に示すように、フラッシュランプ321の点灯により基板Wだけが瞬時に加熱されることにより、基板Wの表層と洗浄液Lとの接する界面が他の部分の洗浄液Lよりも早く気化を始めるため、パターンPの周囲に、液体(洗浄液L)が気化したガスの層、すなわち気層Gが生成される。そして、ハロゲンランプ322の点灯が維持されることにより、基板Wの表層の温度が維持されるので、気層Gが維持される。なお、図7(B)、(C)、(D)では、基板WのパターンPに細かい斜線によるハッチングを入れることによって、基板Wが急速に加熱され、それが維持されていることを示している。
【0063】
図7(C)に示すように、隣り合うパターンP間の液体(洗浄液L)は気層Gによって瞬時にパターンP間から浮き上がり、図7(D)に示すように、ライデンフロスト現象により直ちに液玉化する(ライデンフロスト現象)。図中、黒塗りの矢印で示すように、洗浄液Lには回転による遠心力がかかっており、生成された各液玉は遠心力によって、基板W上から飛ばされるので、図7(E)に示すように、基板Wの被処理面は乾燥する。
【0064】
このようにして、パターンP間に存在する洗浄液Lを、パターンP間から浮き上がらせることを基板Wの被処理面全体で発生させ、再付着を防止することで、一部のパターンP間に洗浄液Lが残留することを抑えることができ、基板Wの被処理面における液体の乾燥速度が均一となるため、残留した液体による倒壊力(例えば、表面張力など)によってパターンPが倒壊することを抑えることができる。
【0065】
なお、液膜厚が足りずに、ライデンフロスト現象の発生の前に、通常乾燥により液膜が乾燥してしまうと、図8に示すように、一部のパターンP間に残留した洗浄液Lに働く表面張力で、パターン倒壊が発生する。本実施形態では、基板Wの被処理面上の洗浄液Lの液膜厚が適切な厚さに調整されているため、ライデンフロスト現象が発生している間は液膜が維持され、気層により浮上した液膜が、遠心力によりパターンP間から排除されるので、表面張力によるパターン倒壊が防止される。
【0066】
その後、図5(B)に示すように、支持部34は、基板Wの回転を維持しながら、待機位置Dまで下降する(ステップS10)。支持部34が基板Wの回転を停止した後(ステップS11)、搬送装置200が基板Wを開口31aから搬出する(ステップS12)。
【0067】
[効果]
(1)以上のような本実施形態の乾燥装置(基板乾燥装置)300は、被処理面上に処理液による液膜が形成された状態の基板Wが搬入される乾燥室31と、乾燥室31に搬入された基板Wを支持する支持部34と、乾燥室31内に設けられ、基板Wにおける被処理面の表層を、液膜と表層との間の全体にライデンフロスト現象による気層が生じる温度以上に加熱するフラッシュランプ321と、フラッシュランプ321の加熱による気層を維持するように、加熱により表層の温度を維持する温度維持部(ハロゲンランプ322)と、支持部34とともに基板Wを回転させることにより、表層との間に気層が生じた液膜を、基板Wの回転による遠心力により排出させる駆動機構35と、を有する。
【0068】
本実施形態の基板処理装置1は、基板Wを回転させながら処理液を供給することにより処理装置110と、処理済の基板を回転させながら処理液を供給することにより洗浄する洗浄装置120と、洗浄装置120において洗浄された基板Wを、処理液による液膜が形成された状態で搬出し、乾燥装置300に搬入する搬送装置200と、を有する。
【0069】
本実施形態の基板乾燥方法は、支持部34が、被処理面上に処理液による液膜が形成された状態で乾燥室31に搬入された基板Wを支持し、駆動機構35が、支持部34とともに基板Wを回転させ、フラッシュランプ321が、基板Wにおける被処理面の表層を、液膜と表層との間の全体にライデンフロスト現象による気層が生じる温度以上に瞬時に加熱し、温度維持部(ハロゲンランプ322)が、フラッシュランプ321の加熱による気層を維持するように、加熱により表層の温度を維持し、液膜を、基板Wの回転による遠心力により排出させる。
【0070】
このように、短時間しか発光できないが瞬時に高温加熱が可能なフラッシュランプ321により、基板Wの表層をライデンフロスト温度以上に加熱して液膜を浮上させ、温度維持部(ハロゲンランプ322)によってライデンフロスト温度を維持させることができるので、気層により浮上した液膜が表層に再付着せずに、基板W上から排除でき、残留した液体によるパターン倒壊を防ぐことができる。また、ハロゲンランプ322のみによって膜沸騰状態にする場合に比べて、膨大な電力を使用することなく、液膜を安定的に膜沸騰状態にして液玉化することができる。
【0071】
図9に、横軸を時間、縦軸を温度としたグラフに、フラッシュランプ321、ハロゲンランプ322及び基板Wの温度変化を模式的に示す。フラッシュランプ321のみの加熱の場合、図中の破線に示すように、基板の表層を、ライデンフロスト温度(図中、2点鎖線)以上に瞬時に加熱することができるが、液玉が排出されるまで膜沸騰状態の温度を維持できない。一方、ハロゲンランプ322のみの加熱では、図中の1点鎖線に示すように、フラッシュランプ321よりも昇温に時間を要するため、瞬時に表層全体をライデンフロスト温度以上にすることができず、液玉の表層への再付着等が発生してしまう。
【0072】
本実施形態では、フラッシュランプ321が消灯した後にも、ハロゲンランプ322の加熱が継続することにより、図中、実線で示すように、基板Wの平均温度を、ライデンフロスト温度以上に維持することができる。つまり、瞬時に液膜を膜沸騰状態の温度にした後、その温度を維持することが可能となる。ここでいう瞬時、つまり膜沸騰状態となるまでの時間は、3msec以下であることが好ましい。これにより、ごく僅かの時間で液膜の表層のみを膜沸騰状態にすることができる。このように、基板Wの表面全体の液膜の表層が、核沸騰状態にとどまることなく、瞬時に膜沸騰状態になるので、液膜が液玉化しやすくなる。また、瞬時に膜沸騰状態とした後に、その膜沸騰状態を維持できる。より具体的には、基板Wの温度をライデンフロスト温度よりも高い温度(例えば、100℃以上)にすることにより、基板Wの全面にある液膜を、安定的に膜沸騰状態に維持できる。このため、図中、αの領域において、液膜が表層に付着した状態から、ライデンフロスト現象により液膜が表層から浮上したβの領域に遷移した後は、液膜の再付着が防止される。従って、フラッシュランプ321の消灯による基板Wの温度低下を防ぎつつ、ハロゲンランプ322を極度に高温とする必要もなく、ライデンフロスト現象による乾燥処理を実現できる。
【0073】
なお、フラッシュランプ321は、1秒未満の間に、約300℃程度の温度まで基板Wを加熱できれば、基板Wの表層にある液膜が核沸騰状態を経て(核沸騰状態にとどまることなく)、すぐに膜沸騰状態となることができる。また、図9に基づくと、フラッシュランプ321の加熱温度の最高値を、ライデンフロスト温度に対して、約2倍~約3倍の温度になるように設定すれば、基板Wの表層にある液膜が核沸騰状態にとどまることなく、膜沸騰状態となることができる。
【0074】
ここで、フラッシュランプ321は、ライデンフロスト温度まで瞬時に加熱する必要があるため、高いエネルギーが必要となる。この状態を作り出す場合、パルス幅を小さくすることで、瞬時に高いエネルギーで発光させることができる。
【0075】
図9に示すように、ハロゲンランプ322の加熱温度の立ち上がりは、約1秒でライデンフロスト温度に達する。つまり、フラッシュランプ321の発光終了後、基板平均温度が下降するが、ハロゲンランプ322が約1秒でライデンフロスト温度に達するため、基板平均温度はライデンフロスト温度を維持することができる。
【0076】
(2)温度維持部(ハロゲンランプ322)は、フラッシュランプ321が発光する前に又は同時に加熱を開始する。このため、温度維持部の温度上昇が遅くても、フラッシュランプ321の消灯時には、ライデンフロスト温度以上の加熱が可能となる。
【0077】
(3)温度維持部(ハロゲンランプ322)は、フラッシュランプ321の消灯後も加熱を継続する。このため、フラッシュランプ321の消灯による冷却を防ぎ、ライデンフロスト温度を維持できる。
【0078】
(変形例)
(1)フラッシュランプ321及び温度維持部は、基板Wを挟んで互いに反対の側に配置されてもよい。例えば、図10に示すように、フラッシュランプ321を乾燥室31の天井側に設け、基板Wを挟んで、ハロゲンランプ322を床側に設けてもよい。この態様では、ハロゲンランプ322は、支持台322aに固定支持されている。乾燥室31の床には、円環状の中空モータ341が設置されている。中空モータ341の固定側は、コイルによるステータ341aが構成され、回転側は磁石によるロータ341bが設けられている。
【0079】
ロータ341bには、複数の保持部材34bが設けられている。これにより、保持部材34bに保持された基板Wは、支持台322a上に離隔して配置され、ロータ341bの回転とともに回転する。基板Wの被処理面はフラッシュランプ321に対向する。
【0080】
乾燥時には、上記と同様に、中空モータ341により回転する基板Wに、フラッシュランプ321とハロゲンランプ322を発光させることにより加熱する。このように、基板Wの一方の面と他方の面をそれぞれ加熱することにより、両面に加わる応力の差を縮めることができるので、基板Wに熱膨張が生じて過大な応力が加わり、割れ等が生じることを防止できる。
【0081】
(2)温度維持部は、ハロゲンランプ322には限定されない。赤外線ランプであってもよい。温度維持部の加熱速度が遅い場合には、フラッシュランプ321の発光以前から加熱を開始してもよい。また、温度維持部の加熱速度が速い場合には、フラッシュランプ321の発光後から加熱を開始してもよい。余熱による温度維持が可能であれば、温度維持部として用いるランプの発光を、フラッシュランプ321の発光とともに停止してもよい。
【0082】
(3)処理装置110の処理は、最終的に洗浄と乾燥が必要となる処理であれば、処理の内容及び処理液は、上記で例示したものには限定されない。処理対象となる基板W及び処理液についても、上記で例示したものには限定されない。洗浄装置120において洗浄後、基板Wに液盛りされる洗浄液Lは、IPAには限定されない。例えば、DIWによって液盛りされていてもよい。
【0083】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態及び各部の変形例を説明したが、この実施形態や各部の変形例は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。上述したこれら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明に含まれる。
【符号の説明】
【0084】
1 基板処理装置
1a チャンバ
1b カセット
1c 搬送ロボット
1d バッファユニット
11 洗浄室
11a 開口
11b 扉
12 支持部
13 回転機構
14 カップ
15 供給部
15a ノズル
15b 移動機構
20 ハンドリング装置
21 ロボットハンド
22 移動機構
31 乾燥室
31a 開口
31b 扉
31c 導入口
31d 排気口
31e 給気部
31f 排気部
32 加熱部
32a 仕切り窓
33 窓部
34 支持部
34a 回転テーブル
34b 保持部材
34c 回転軸
35 駆動機構
35a 回転部
35b 昇降部
36 カップ
37 測定部
37a 検出部
37b 揺動アーム
37c 揺動機構
38 供給部
38a ノズル
38b 揺動アーム
38c 揺動機構
41 機構制御部
42 膜厚解析部
43 加熱制御部
110 処理装置
120 洗浄装置
200 搬送装置
300 乾燥装置
321 フラッシュランプ
322 ハロゲンランプ
322a 支持台
341 中空モータ
341a ステータ
341b ロータ
400 制御装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10