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特開2024-165581ファインブランキング金型の負荷検出装置及び負荷検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165581
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ファインブランキング金型の負荷検出装置及び負荷検出方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/00 20060101AFI20241121BHJP
   B21D 28/16 20060101ALI20241121BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B21D28/00 Z
B21D28/00 D
B21D28/16
B21C51/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081876
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005924
【氏名又は名称】株式会社三井三池製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 英幸
【テーマコード(参考)】
4E048
【Fターム(参考)】
4E048AC02
4E048AC03
4E048AD01
4E048GA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】主パンチによる外形の打ち抜きと合わせてピアスパンチによる穴開け等のプレス加工を行う形態のファインブランキング金型において、不良品の検知または不良品の予防のための、金型の負荷検出装置及び負荷検出方法を提供する。
【解決手段】主パンチ10と、板押さえ20と、カウンターパンチ30と、ダイ40と、ピアスパンチ51と、を有するファインブランキング金型1において、前記ピアスパンチ51の負荷を検出する負荷検出装置100であって、前記ピアスパンチ51の底部に接する位置に交換可能に配置されており、プレス工程において前記ピアスパンチ51に加わる負荷を計測するセンサー102を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主パンチと、板押さえと、カウンターパンチと、ダイと、ピアスパンチと、を有するファインブランキング金型において、前記ピアスパンチの負荷を検出する負荷検出装置であって、
前記ピアスパンチの底部に接する位置に交換可能に配置されており、プレス工程において前記ピアスパンチに加わる負荷を計測するセンサーを有することを特徴とするファインブランキング金型の負荷検出装置。
【請求項2】
前記ピアスパンチの外側に交換可能に配置されたセンサー取付体を有し、前記センサーは前記センサー取付体に装着されていることを特徴とする請求項1記載のファインブランキング金型の負荷検出装置。
【請求項3】
前記ファインブランキング金型は、前記ピアスパンチを位置決めするとともに保持するピアスパンチ挿入穴が形成された第1位置決めプレートと、前記センサー取付体を位置決めするとともに保持するセンサー取付体挿入穴が形成された第2位置決めプレートと、を有することを特徴とする請求項2記載のファインブランキング金型の負荷検出装置。
【請求項4】
前記センサーがひずみゲージであることを特徴とする請求項1,2または3記載のファインブランキング金型の負荷検出装置。
【請求項5】
主パンチと、板押さえと、カウンターパンチと、ダイと、ピアスパンチと、を有するファインブランキング金型において、
前記ピアスパンチの底部に接する位置に交換可能に配置されており、前記ピアスパンチに加わる負荷を計測するセンサーを含む負荷検出装置と、前記センサーによる測定値を処理する処理装置と、を用いて前記ピアスパンチの負荷を検出する負荷検出方法であって、
前記主パンチによる被加工材の外形のせん断および前記ピアスパンチによる前記被加工材のプレス加工を行うプレス工程と、
前記プレス工程において前記ピアスパンチに加わる負荷を前記センサーにより計測する計測工程と、
前記センサーによる測定値を前記処理装置により処理し、所定の判定条件を満たした際に異常判定を発する判定工程と、
を順に行うことを特徴とするファインブランキング金型の負荷検出方法。
【請求項6】
前記判定条件は、前記測定値が設定されたピアスパンチ破損閾値を下回った場合に異常判定を発することを特徴とする請求項5記載のファインブランキング金型の負荷検出方法。
【請求項7】
前記判定条件は、前記測定値が設定された排出不良閾値を上回った場合に異常判定を発することを特徴とする請求項5記載のファインブランキング金型の負荷検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファインブランキング工法のプレス加工における不良品の検知または不良品の予防のための、金型の負荷検出装置及び負荷検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被加工材を加工して製品を得る際、ダイに対して相対移動するパンチによって被加工材を打ち抜く方式の一般的な打ち抜きプレス加工が広く知られているが、より高精度なプレス加工の工法として、主パンチに対向して配置されたカウンターパンチと、被加工材を挟んで固定する板押さえと、を有し、このカウンターパンチと板押さえによって被加工材を拘束した状態で塑性加工を行う方式のプレス加工であるファインブランキング工法が知られている(例えば、特公昭48-44548号公報(特許文献1)参照)。
【0003】
このファインブランキング工法は高精度な製品を得られる反面、金型を構成する主パンチとダイのクリアランスについても0.005~0.02mm程度と非常に高精度であることが要求されることとなり、加えて、従来の一般的な打ち抜きプレス加工に対して、金型の寿命も短くなる傾向にあった。
【0004】
特に、主パンチによる外形の打ち抜きと合わせてピアスパンチ(パンチピン)および対に設置されたノックアウトピンによる穴開け等の加工を行う形態のファインブランキング金型においては、主パンチと比べてピアスパンチとノックアウトピンは細径であるため、特に破損や故障のリスクが高いと言えるところ、チェックする方法として、プレス機にセットされた状態の金型を目視確認して破損や故障を判定することは困難であるため、加工した製品を目視確認することが一般的であるが、製品の加工直後の目視確認でただちに不良品の判定を行うことは困難であり、高頻度で念入りに確認する必要があって作業に時間を要していた。仮に目視確認において不良品であること、すなわち金型が破損または故障していることに気が付かなかった場合、そのまま製造を継続してしまい、不良品の大量発生を生じることや、更に重大な故障や事故を生じることのおそれがあった。
【0005】
これに対して、例えば特開2010-115702号公報(特許文献2)、特開2008-264849号公報(特許文献3)、実全昭55-160220号公報(特許文献4)に示すように、金型の表面、金型の内部、または金型ホルダーに圧電素子やひずみゲージのような圧力検出手段を装着してプレス時の圧力を検出することにより、金型の異常発生を検知したり、金型の寿命を判定したりする方法または装置についての発明が知られている。
【0006】
しかしながら、これら従来発明は一般的な曲げ加工や打ち抜き加工を行うプレス金型についてなされた発明であって、ファインブランキング金型用のものではなく、特に、上述したようなピアスパンチ・ノックアウトピンを有するファインブランキング金型に適用することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭48-44548号公報
【特許文献2】特開2010-115702号公報
【特許文献3】特開2008-264849号公報
【特許文献4】実全昭55-160220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、主パンチによる外形の打ち抜きと合わせてピアスパンチによる穴開け等のプレス加工を行う形態のファインブランキング金型において、不良品の検知または不良品の予防のための、金型の負荷検出装置及び負荷検出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためになされた本発明であるファインブランキング金型の負荷検出装置は、主パンチと、板押さえと、カウンターパンチと、ダイと、ピアスパンチと、を有するファインブランキング金型において、前記ピアスパンチの負荷を検出する負荷検出装置であって、
前記ピアスパンチの底部に接する位置に交換可能に配置されており、プレス工程において前記ピアスパンチに加わる負荷を計測するセンサーを有することを特徴とする。
【0010】
上記本発明によれば、金型自体の改造を要したり、ピアスパンチ自体に特別な工夫をしたりすることなく、交換可能に配置されたセンサーを用いてプレス工程においてピアスパンチに加わる負荷を計測することによって、金型の破損や故障、特にピアスパンチの破損や故障をリアルタイムに検出することが可能であり、製品における不良品の検知または不良品の予防をただちに行うことができる。
【0011】
本発明において、前記ピアスパンチの外側に交換可能に配置されたセンサー取付体を有し、前記センサーは前記センサー取付体に装着されている場合、簡易な構造でセンサーの配置が可能となる。
【0012】
本発明において、前記ファインブランキング金型は、前記ピアスパンチを位置決めするとともに保持するピアスパンチ挿入穴が形成された第1位置決めプレートと、前記センサー取付体を位置決めするとともに保持するセンサー取付体挿入穴が形成された第2位置決めプレートと、を有する場合、組立および分解を容易にしているため、点検時や故障発生時など必要に応じてすぐにピアスパンチの交換を行うこと、またはセンサー取付体ごとセンサーの交換を行うことが可能である。
【0013】
本発明において、前記センサーがひずみゲージである場合、ひずみゲージは単純で安価かつ省スペースであるため特に望ましい。
【0014】
また、本発明であるファインブランキング金型の負荷検出方法は、主パンチと、板押さえと、カウンターパンチと、ダイと、ピアスパンチと、を有するファインブランキング金型において、前記ピアスパンチの底部に接する位置に交換可能に配置されており、前記ピアスパンチに加わる負荷を計測するセンサーを含む負荷検出装置と、前記センサーによる測定値を処理する処理装置と、を用いて前記ピアスパンチの負荷を検出する負荷検出方法であって、
前記主パンチによる被加工材の外形のせん断および前記ピアスパンチによる前記被加工材のプレス加工を行うプレス工程と、
前記プレス工程において前記ピアスパンチに加わる負荷を前記センサーにより計測する計測工程と、
前記センサーによる測定値を前記処理装置により処理し、所定の判定条件を満たした際に異常判定を発する判定工程と、
を順に行うことを特徴とする。
【0015】
本発明において、前記判定条件は、前記測定値が設定されたピアスパンチ破損閾値を下回った場合に異常判定を発する場合、ピアスパンチに加わる負荷がピアスパンチ破損閾値に達しなかったということは、例えばピアスパンチがヒビや折れによる破損を生じて十分な圧力を付加できなかったことを示すため、確実な異常判定をすることができる。
【0016】
本発明において、前記判定条件は、前記測定値が設定された排出不良閾値を上回った場合に異常判定を発する場合、ピアスパンチに加わる負荷が排出不良閾値を超えているということは、例えば横ハリに破損を生じてスクラップの残存などにより過剰な圧力が付加されていることを示すため、確実な異常判定をすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、センサーによってファインブランキング金型におけるピアスパンチの負荷を検出することによって、不良品の検知または不良品の予防を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明であるファインブランキング金型の負荷検出装置の好ましい実施の形態を示す断面図。
図2図1における一部部品を省略したA-A線平面図。
図3図1の部分拡大図。
図4】負荷検出装置を組み込んだファインブランキング金型をセットしたプレス機と、処理装置とを示す構成図。
図5】本発明であるファインブランキング金型の負荷検出方法の好ましい実施の形態を示すフロー図。
図6】1ショットのプレス時のひずみゲージによる検出値および所定の閾値を表したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0020】
図1は、本発明であるファインブランキング金型の負荷検出装置の好ましい実施の形態を示す断面図、図2図1における一部部品を省略したA-A線断面図である。これらの図に示すように、本発明は、主パンチ10と、板押さえ20と、カウンターパンチ30と、ダイ40と、ピアスパンチ51と、大径ピアスパンチ61と、ガイド70と、を有するファインブランキング金型1において、ピアスパンチ51の負荷を検出するための負荷検出装置100である。
【0021】
ファインブランキング金型1は、図示しないプレス機に装着され、固定した下側の金型2(ダイ側)に対して上側の金型3(パンチ側)を相対移動させることによって、その間にセットした金属板である被加工材をプレス加工するものであって、主パンチ10による外形の打ち抜きと合わせてピアスパンチ51によるプレス加工を行う形態のファインブランキング金型である。なお、プレス加工は穴開け、ボス出しまたは半抜きのいずれかとすることができる。
【0022】
主パンチ10は、上側の金型3(パンチ側)に配置され、下向きの押圧力を加えることで被加工材から製品の外形を打ち抜くためのものである。
【0023】
また、主パンチ10よりも上側(プレス機側)には、打ち抜き後のスクラップを取り除くための横ハリ11が備えられており、プレス後にこの横ハリ11を操作することで、パンチ穴に残留したスクラップを排出して取り除くことができる。
【0024】
板押さえ20は、上側の金型3(パンチ側)における主パンチ10の外周に配置され、被加工材が逃げないように固定するためのものであって、被加工材に食い込んで材料拘束を行うV字突起21が形成されている。
【0025】
カウンターパンチ30は、下側の金型2(ダイ側)に配置され、主パンチ10と同一の外形を有し、上向きの押圧力を加えることで主パンチ10による上向きの押圧力と合わせて被加工材に静水圧を印加させるためのものである。
【0026】
ダイ40は、下側の金型2(ダイ側)におけるカウンターパンチ30の周囲に配置され、主パンチ10、板押さえ20およびカウンターパンチ30によって加圧された状態の被加工材を主パンチ10とダイ40との境界においてせん断するためのものである。
【0027】
ピアスパンチ51は、下側の金型2(ダイ側)におけるカウンターパンチ30の内側に配置されており、上側の金型3(パンチ側)における主パンチ10の内側にはピアスパンチ51と対になるようにノックアウトピン52が配置されている。
【0028】
大径ピアスパンチ61はピアスパンチ51よりも大きい穴開け用の部品であり、下側の金型2(ダイ側)におけるカウンターパンチ30の内側に配置されており、上側の金型3(パンチ側)における主パンチ10の内側には大径ピアスパンチ61と対になるように大径ノックアウトピン62が配置されている。
【0029】
本実施の形態において、ピアスパンチ51およびノックアウトピン52は4セット備えられており、それぞれ先端部511の径が異なる。より具体的には、図2に示したピアスパンチ51a,51b,51c,51dは、小さい方からφ0.8、φ1.0、φ1.2、φ1.5の4種の径の先端部を有する。
【0030】
ガイド70は、上側の金型3(パンチ側)に配置され、円柱状を呈し、下側の金型2(ダイ側)に形成されたガイド穴71に挿入されており、固定した下側の金型2(ダイ側)に対して上側の金型3(パンチ側)を相対移動させる際の軸直方向の移動を規制するためのものである。なお、ガイドは複数本設けられていることが望ましいが、図1および図2においては2本目以降の図示を省略している。
【0031】
負荷検出装置100は、ピアスパンチ51の底部512に接する位置(下方)に交換可能に備えられた直方体形状のセンサー取付体101と、センサー取付体101の側面に取り付けられたセンサー102と、センサー102の測定値を信号として出力するためのケーブル103とからなる。
【0032】
本実施の形態におけるセンサー102は歪み量を信号として出力するひずみゲージを使用しているが、そのほか従来周知の力を検出するためのセンサーを使用可能であり、例えばピエゾ素子などの圧電式センサーを使用するものとしてもよい。また、センサー取り付け位置はセンサー取付体101の側面に限るものではなく、センサー取付体101の上面、下面または内部に組み込むものとしてもよく、センサーの形状によってはセンサー取付体101を用いずに、交換可能な状態で直接設置されるものとしてもよい(図示せず)。
【0033】
本実施の形態において、ピアスパンチ51および大径ピアスパンチ61は、第1位置決めプレート80によって位置決めするとともに保持されており、センサー取付体101は、第2位置決めプレート90によって位置決めするとともに保持されている(図1参照)。第2位置決めプレート90に形成されたセンサー取付体101の位置決め用のセンサー取付体挿入穴91は、第1位置決めプレート80に形成されたピアスパンチ51の位置決め用のピアスパンチ挿入穴81と連通している。また、第2位置決めプレート90の下面にはケーブル103を挿通するための溝状の通路92が形成されている。
【0034】
このように第1位置決めプレート80および第2位置決めプレート90を用いて部品の位置決めと保持を行うことによって、組立および分解を容易にしているため、点検時や故障発生時など必要に応じてすぐにピアスパンチ51やノックアウトピン52の交換を行うこと、またはセンサー取付体101ごとセンサー102の交換を行うことが可能であり、これを本発明の特に優れた点としている。
【0035】
図4は、負荷検出装置100を組み込んだファインブランキング金型1をセットしたプレス機4と、処理装置110とを示す構成図であり、このように、負荷検出装置100から出力される信号は、処理装置110によって処理される。
【0036】
処理装置110は、ピアスパンチ51の負荷を検出する負荷検出装置100のセンサー102からケーブル103を介して出力される信号を処理する金型側子機111と、プレス機4の稼働状況に応じて出力される信号を処理するプレス機側子機112と、金型側子機111およびプレス機側子機112と接続された親機113(端末)と、からなる。
【0037】
本実施の形態における金型側子機111およびプレス機側子機112は出入力端子を備えた小型コンピュータ(マイクロボード)を用いており、親機113は出入力端子およびディスプレイを備えたノートパソコンを用いている。
【0038】
金型側子機111は、負荷検出装置100のセンサー102から出力される信号をリアルタイムで取得し、分析を行う。本実施の形態においては、1ms単位の歪み量を取得して、歪み量が所定の閾値を超えているか否かを分析可能としている。なお、取得時間の単位はこれより長いものであっても実施可能である。
【0039】
本実施の形態においては、ピアスパンチ破損閾値と、排出不良閾値の2つの閾値を設定している。ピアスパンチ破損閾値は、通常のプレス時の歪み量よりも低い値に設定されており、排出不良閾値は、通常のプレス時の歪み量よりも高い値に設定されている。
【0040】
プレス時に、センサー102で測定した歪み量がピアスパンチ破損閾値を下回った場合、ピアスパンチ51に加わる負荷がピアスパンチ破損閾値に達しなかったということは、例えばピアスパンチ51またはノックアウトピン52がヒビや折れによる破損を生じて十分な圧力を付加できなかったことを示し、ピアスパンチ51またはノックアウトピン52が破損したと判定する。
【0041】
一方、プレス時に、センサー102で測定した歪み量が排出不良閾値を上回った場合、ピアスパンチ51に加わる負荷が排出不良閾値を超えているということは、スクラップの排出不良による過剰な圧力が生じていると考えられ、例えば横ハリ11に破損を生じてスクラップの排出ができていないことを示し、前記横ハリ11が破損したと判定する。なお、横ハリを有しないファインブランキング金型の場合、単純にスクラップの排出不良(スクラップがプレス穴に残存している)と判定する。
【0042】
プレス機側子機112は、プレス機4の稼働状況をリアルタイムで取得し、分析を行う。本実施の形態においては、プレス機4を稼働させるための電源ラインに設置した電圧センサーにより検出した電圧値から、プレス機4の稼働状況を分析可能としている。
【0043】
親機113は、金型側子機111およびプレス機側子機112から受信したデータを記録・統合して可視化するものである。なお、金型側子機111およびプレス機側子機112からデータを受信するのみではなく、金型側子機111およびプレス機側子機112にデータを送信する送受信機能を備えるものとしてもよい。
【0044】
次に、本発明であるファインブランキング金型の負荷検出方法の具体的な実施の形態における各工程について、図5に示したフロー図に基づいて説明する。なお、本実施の形態における装置の全体構成は図4に示した構成図と同一である。
【0045】
<工程1:プレス工程>
プレス工程では、プレス機に負荷検出装置を組み込んだファインブランキング金型をセットし、処理装置を接続した状態で、上下の金型間に金属板である被加工材をセットし(S101)、主パンチによる被加工材の外形のせん断およびピアスパンチによる前記被加工材の穴開け、ボス出しまたは半抜きのプレス加工を行う(S102)。
【0046】
本実施の形態におけるファインブランキング金型によるプレス加工は、1ショットあたり約2秒を要した。また、前記プレス工程においては、長尺の被加工材が使用可能であり、送り機構によってプレス後に被加工材を移動させて再セットすることで、連続加工を行うことも可能である。
【0047】
<工程2:計測工程>
計測工程では、前記プレス工程におけるピアスパンチに加わる負荷は、負荷検出装置のセンサーによってリアルタイムに計測され(S201)、計測値は信号としてケーブルを介して金型側子機へと出力され(S202)、更に金型側子機から親機へとデータが送信されてデータの記録・統合が行われる(S203)。
【0048】
図6は、負荷検出装置のセンサー、すなわち歪み量を信号として出力するひずみゲージによる計測結果であり、縦軸が歪み量、横軸が時間[sec]を示す。プレス圧力(圧縮方向の力)を歪み量として取得するため、数値はマイナスの値になる。
【0049】
本実施の形態におけるセンサーによる計測値は、1ms単位の歪み量を取得可能であるが、書き込み速度の都合から、20ms単位での記録を行った。記録区間は、プレス機に装着した電圧センサーによって分析したプレス機の稼働状況に基づき、1ショットごとの最大負荷時のデータを記録することでデータ量の削減を図るものとした。また、全てのプレス工程が終了する前の最後30秒程度の記録も行うものとした。
【0050】
この図に示すように、ピアスパンチ破損閾値を歪み量-1000×10-6とし、排出不良閾値を-4000×10-6とした、2つの閾値を設定している。通常時における最大負荷時の測定値は、上記両閾値の間に位置するが、ピアスパンチ破損時における最大負荷時の測定値は、ピアスパンチ破損閾値を下回る値となる。また、スクラップの排出不良が発生した時における最大負荷時の測定値は、通常時の測定値を大幅に超え、点線で示したような排出不良閾値を上回る値となる。
【0051】
<工程3:判定工程>
判定工程では、金型側子機により取得された計測値が、リアルタイムに所定の閾値と比較される(S301)。そして、所定の閾値に対して所定の条件を満たすか否かによって、次の工程が変化する。
【0052】
計測値が所定の閾値に対して所定の条件を満たす場合、最初の工程(被加工材セットS101)へ戻る。計測値が所定の条件を満たすということは、すなわち、計測対象のピアスパンチが正しく圧力を被加工材へ印加できており、正常であることを意味する。
【0053】
計測値が所定の閾値に対して所定の条件を満たさない場合、異常判定を発する(S302)。計測値が所定の条件を満たさないということは、計測対象のピアスパンチが正しく圧力を被加工材へ印加できておらず、何らかの破損・故障を生じたことを意味する。
【0054】
なお、本実施の形態において計測対象のピアスパンチは複数ある(図2に示した各ピアスパンチ)ため、それぞれにおいて上記判定工程が行われる。
【0055】
また、本実施の形態において上述のとおり閾値は2つ設定されているため、ピアスパンチ破損閾値を下回るか否かと、排出不良閾値を上回るか否かの2種の条件に基づいて判定が行われる。
【0056】
すなわち、計測値がピアスパンチ破損閾値を下回った場合、ピアスパンチまたはノックアウトピンが破損したと判定して、異常判定を発する。一方、計測値が排出不良閾値を上回った場合、排出不良が発生したと判定して、異常判定を発する。
【0057】
<工程4:報知工程>
報知工程では、前記判定工程において異常判定が発せられた後、異常を作業者に認識させるために報知を行う(S401)。本実施の工程においては、親機を用いて、音声や映像によって警報を発するものとした。
【0058】
警報を受けた作業者は、金型に異常が発生したことを認知し、装置を停止する(S402)。なお、作業者の手動操作によるものではなく、発せられた異常判定に基づいて自動的に装置を停止するものとしてもよい。
【0059】
なお、このとき計測値がピアスパンチ破損閾値を下回った場合と計測値が排出不良閾値を上回った場合のどちらに該当したかにより、異なる報知を行うものとしてもよい。
【0060】
以上の工程を有するファインブランキング金型の負荷検出方法によれば、ピアスパンチの負荷をリアルタイムに計測し、異常の判定を行うことで、ピアスパンチ・ノックアウトピンまたは横ハリの破損や故障をチェックすることの自動化が可能となる。
【0061】
なお、本実施の形態においては主パンチが独立して可動する可動パンチ型のファインブランキング金型を用いて説明したものであるが、主パンチが固定されている固定パンチ型のファインブランキング金型であっても問題なく実施可能である。
【0062】
以上の通り、本発明であるファインブランキング金型の負荷検出装置及び負荷検出方法によれば、金型自体の改造を要したり、ピアスパンチ・ノックアウトピン自体に特別な工夫をしたりすることなく、交換可能に配置されたセンサーを用いてプレス工程においてピアスパンチに加わる負荷を計測することによってピアスパンチ・ノックアウトピンまたは横ハリの破損や故障をリアルタイムに検出することが可能であり、製品における不良品の検知または不良品の予防をただちに行うことができる。
【0063】
これによって、従来は加工した製品を目視確認することに頼っていた金型のチェックを自動化することが可能となり、不良品の大量発生を防止したり、重大な故障や事故を防止したりすることができる優れた発明である。
【符号の説明】
【0064】
1 ファインブランキング金型、2 下側の金型、3 上側の金型、4 プレス機、10 主パンチ、20 板押さえ、21 V字突起、30 カウンターパンチ、40 ダイ、51 ピアスパンチ、52 ノックアウトピン、61 大径ピアスパンチ、62 大径ノックアウトピン、70 ガイド、71 ガイド穴、80 第1位置決めプレート、81 ピアスパンチ挿入穴、90 第2位置決めプレート、91 センサー取付体挿入穴、92 通路、100 負荷検出装置、101 センサー取付体、102 センサー、103 ケーブル、110 処理装置、111 金型側子機、112 プレス機側子機、113 親機、511 先端部、512 底部
図1
図2
図3
図4
図5
図6