IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本体育施設株式会社の特許一覧 ▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-人工芝及びその施工方法 図1
  • 特開-人工芝及びその施工方法 図2
  • 特開-人工芝及びその施工方法 図3
  • 特開-人工芝及びその施工方法 図4
  • 特開-人工芝及びその施工方法 図5
  • 特開-人工芝及びその施工方法 図6
  • 特開-人工芝及びその施工方法 図7
  • 特開-人工芝及びその施工方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165585
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】人工芝及びその施工方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 13/08 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
E01C13/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081889
(22)【出願日】2023-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】591044175
【氏名又は名称】日本体育施設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越後 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智久
(72)【発明者】
【氏名】谷川 政弘
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AA05
2D051AB04
2D051AE05
2D051AF01
2D051AF17
2D051HA01
2D051HA02
2D051HA04
2D051HA05
2D051HA08
(57)【要約】
【課題】従来人工芝の充填材料として利用されていたゴムチップの代替となる材料を使用することにより、環境負荷の低い人工芝を提供する。
【解決手段】ベースに植設されたパイルと、前記パイルの間におが粉及び砂の混合物が充填されて形成される充填層と、を備える人工芝。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースに植設されたパイルと、
前記パイルの間におが粉及び砂の混合物が充填されて形成される充填層と、を備える人工芝。
【請求項2】
前記パイルの長さが130mm以上、
前記充填層の厚さが100mm以上、及び、
前記パイルの前記充填層からの突出長が15mm以上30mm以下である、請求項1に記載の人工芝。
【請求項3】
ベースに植設されたパイルの間に、おが粉と砂とを交互に充填するとともに、
前記充填の度に、前記パイルの上からブラッシングを施すことで充填した前記おが粉と前記砂とを混合する、人工芝の施工方法。
【請求項4】
前記おが粉及び前記砂は各々複数回にわたり充填される、請求項3に記載の人工芝の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工芝及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、陸上競技の、特に投擲競技にも使用し得る人工芝が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-138403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現状、人工芝の充填材料は砂及びゴムチップが主流である。施工の際は、競技に適した衝撃吸収性や、たとえば槍投げの場合は槍が確実に刺さるように、砂とゴムチップとの比率や充填順序を考慮している。
【0005】
充填材料としてのゴムチップについては、施工の際にゴム臭が拡散したり、充填層が落ち着いていない施工直後に豪雨があるとゴムチップが外部に流出したりすることがあった。また、競技場を解体するために人工芝を撤去する際、充填層として混合されている砂とゴムチップとを分別処理することは困難である。
【0006】
上記の点に鑑み、本開示の実施態様は、従来人工芝の充填材料として利用されていたゴムチップの代替となる材料を使用することにより、環境負荷の低い人工芝及びその施工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題に鑑み、本開示の実施態様の人工芝は、ベースに植設されたパイルと、前記パイルの間におが粉及び砂の混合物が充填されて形成される充填層と、を備える。なお、前記パイルの長さが130mm以上、前記充填層の厚さが100mm以上、及び、前記パイルの前記充填層からの突出長が15mm以上30mm以下であることが望ましい。
【0008】
また、本開示の実施態様の人工芝の施工方法は、ベースに植設されたパイルの間に、おが粉と砂とを交互に充填するとともに、前記充填の度に、前記パイルの上からブラッシングすることで充填した前記おが粉と前記砂とを混合する。なお、前記おが粉及び前記砂は各々複数回にわたり充填されることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本開示の実施態様は上記のように構成されているので、従来人工芝の充填材料として利用されていたゴムチップの代替となる材料を使用することにより、環境負荷の低い人工芝及びその施工方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の人工芝の断面を模式的に示す。
図2】実施形態の人工芝の施工方法の工程を模式的に示す。
図3】実施形態の人工芝の施工方法の工程を模式的に示す。
図4】実施形態の人工芝の施工方法の工程を模式的に示す。
図5】実施形態の人工芝の施工方法の工程を模式的に示す。
図6】実施形態の人工芝の施工方法の工程を模式的に示す。
図7】実施形態の人工芝の施工方法の工程を模式的に示す。
図8】実施形態の人工芝の施工方法の工程を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施形態を説明する。なお、以下の説明で言及されている材料、寸法、重量及び体積はあくまで例示であって、これらの記載に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本開示の実施形態に係る人工芝10の断面を模式的に示すものである。本実施形態に係る人工芝10は、ベース20に植設されたパイル30と、前記パイル30間におが粉42及び砂41の混合物43が充填されて形成される充填層40と、を備える。ベース20は、たとえば、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン等の合成樹脂を平織り布にしてかつポリプロピレン又はポリエチレンテレフテレートの綿をパンチングして植え付けた基布として形成することができる。このベース20に、たとえば、ポリエチレン、ナイロン等の材質をスプリット製法又はモノフィラメント製法にて太さ10,000dtex以上にて成型したパイル30を、植え付け密度6,000~9,000本/mにて、パイル30の中間部をベース20の裏で折り返して植設することができる。折り返したパイル30の長さは、130mm以上であることが望ましい。ベース20の裏側には、たとえば、SBRラテックス/エチレン系エマルジョン混合体と炭酸カルシウム充填剤との混合物が塗布され、これが裏止め材50となっている。この状態で、ベース20は砕石路盤60の上に敷設される。
【0013】
充填層40は、おが粉42と砂41との混合物である。おが粉42としては、香りがよく、抗菌作用を有し、腐りにくく、保水性を有するヒノキおが粉を用いることが望ましい。ヒノキおが粉は、粒径3mm以下であることが望ましい。このようなおが粉42を、従来慣用されているゴムチップの替わりに充填層40の一部として用いることで、砂41の固結を防止することができるとともに、ゴムチップに比べ熱を吸収しにくい、という利点が生ずる。さらには、建築材料の端材を原料として利用できるので、環境負荷も低くなり、安価に入手できるという利点もある。
【0014】
砂41としては、特に種類は限定されないが、粒径0.2mm~1.5mmの珪砂を用いることが望ましい。
【0015】
図1に示す人工芝10は、ベース20に植設されたパイル30の間に、おが粉42と砂41とを交互に充填するとともに、充填の度に、パイルの上からブラッシングすることで充填したおが粉42と砂41とを混合する方法によって施工される。この混合は、おが粉42と砂41とがなるべく均一になるように行うことが望ましい。おが粉42及び砂41は各々複数回にわたり充填される。たとえば、この充填層40の厚さを100mm以上とすることで、パイル30の充填層40からの突出長を15mm以上30mm以下とすることができる。このような充填層40を備える人工芝10は、槍が確実に刺さるようになっているため、槍投げ競技にも対応可能となっている。
【0016】
図1の人工芝10の施工方法は、たとえば、以下のように実施される。まず、図2に示すように、パイル30の根元に砂41の一部が充填される。次に、図3に示すように、充填された砂41の上に、おが粉42の一部が充填される。そして、パイル30の上からブラッシングを施すことで、図4に示すように、既に充填されている砂41と、新たに充填されたおが粉42とが混合されて混合物43とされる。次いで、図5に示すように、混合物43の上から再度、砂41の一部が充填される。そして、パイル30の上からブラッシングを施すことで、図6に示すように、既に充填されている混合物43と、新たに充填された砂41とが混合されて新たな混合物43とされる。次いで、図7に示すように、混合物43の上から再度、おが粉42の一部が充填される。そして、パイル30の上からブラッシングを施すことで、図8に示すように、既に充填されている混合物43と、新たに充填されたおが粉42とが混合されて新たな混合物43とされる。この工程を繰り返すことで、最終的に図1に示すにように、パイル30の間におが粉42と砂41とが所望の割合で混合された混合物43が充填層40として充填された人工芝10となる。
【0017】
なお、上記の説明では最初に砂41が充填されているが、おが粉42を先に充填してもよい。また、砂41を充填して混合物43とした直後にまた砂41を充填してもよく、同様に、おが粉42を充填して混合物43とした直後にまたおが粉42を充填してもよい。
【実施例0018】
(1)ヒノキおが粉の耐候性試験
充填層の材料としてのおが粉として使用するヒノキおが粉の耐候性を、下記のとおりに試験した。縦30cm、横15cm、高さ10cmのアクリル性トレイの底面に水抜き用の孔を空け、底面及び内側面を布で覆った上で、そこから約7cmの高さまで、ヒノキおが粉を充填したサンプルを作成した。このサンプルを、フラットトレイ式促進耐候性試験機(Q-SUN Xe3、Q-LAB)の槽内に載置し、下記表1に示すステップ1及びステップ2を1サイクルとして、500サイクル、計1000時間に亘り、キセノンアーク灯光(紫外線、可視光線及び赤外線を含むフルスペクトル)照射を繰り返した。ただし、250サイクル消化時点で、槽内のサンプルの前後を入れ替えた。この処置により、サンプルには220MJ相当の類型放射露光が施され、これは外部環境に5年間暴露されたのに相当する。
【0019】
【表1】
【0020】
上記の試験の結果、直接紫外線が当たるおが粉表面の退色は認められたものの、目立った形状の変化はなかった。これにより、ヒノキおが粉は十分な耐候性を有し、長期間に亘る野外の使用に耐え得ることが推察された。
【0021】
(2)臭気官能試験
新品のヒノキおが粉(おが粉A)と、上記(1)の耐候試験後のヒノキおが粉(おが粉B)とを、臭気官能試験に供した。具体的には、内径約8cmのプラスチック瓶に高さ約10cmまでヒノキおが粉を詰め、上部を通気口の空いたプラスチックフィルムで覆った後、容量50Lの固体用臭気サンプリングバッグ(フレックサンプラー(登録商標)、近江オドエアーサービス)内に設置した。その後、無臭空気を充満させ、臭気官能試験が可能となる臭気強度となるまで約3日間、室温13.2~26.2℃、平均19.0℃の試験室内に静置した。静置後のサンプリングバッグ内の空気を、3Lの臭気測定用バッグ(におい袋、近江オドエアーサービス)に分取し、「臭気強度」及び「快・不快度」の2種類の臭気官能試験に供した。
【0022】
官能試験は、臭気判定士による統括の下、平成7年環境庁告示63号第1に規定するパネル(判定試験に適した嗅覚を有すると認められた者)によって行われた。性別に大きな偏りがないように、50代男性3名、40代男性1名、50代女性1名及び20代女性1名の計6名のパネルを選定した。
【0023】
臭気強度は、嗅覚測定法マニュアル(公益社団法人におい・かおり環境協会編)に示された、下記表2に示す6段階の臭気強度表示法に従って各パネルが判定値として点数付けした。
【0024】
【表2】
【0025】
そして、各パネルの判定値のうち、最大値及び最小値(同値の場合はそのうちの1つ)を除き、残りの判定値を平均した。その平均値の小数点以下の数値が0.25以上かつ0.75未満の場合は0.5に丸め、0.75以上又は0.25未満の場合は丸めて整数とした。その結果を下記表3に示す。
【0026】
【表3】
【0027】
上記表3に示すように、おが粉Bはおが粉Aより低い値であった。耐候試験により、天然素材であるヒノキの香りが薄まったために、おが粉Bでは臭気強度が低くなったと考えられる。
【0028】
快・不快度は、下記表4に示すように、「4訂 臭気の嗅覚測定法 三点比較式臭袋法測定マニュアル(著者:岩崎好陽、発行所:公益財団法人 におい・かおり環境協会)」に記載された9段階の快・不快度表示に従い、各パネルが判定値として点数付けした。
【0029】
【表4】
【0030】
そして、各パネルの判定値は、上記臭気強度の場合と同様に処理した。その結果を下記表5に示す。
【0031】
【表5】
【0032】
おが粉Aについては、「やや快」の結果となった。一般的にヒノキの香りは日本人が好むといわれていることから、快寄りの回答をしたパネルが多かったと考えられる。おが粉Bについては、「快でも不快でもない」の結果となった。耐候試験の実施に伴い、ヒノキの香りが薄まったことで、「快」と感じるパネルが減ったものと思われる。一方、耐候試験後の試料であるおが粉Bについてもおが粉Aと同様に不快と感じたパネルは少なく、腐敗臭も感じられなかったことから、耐候試験に伴うおが粉の腐敗等による不快な臭いは発生していなかったと推測される。
【0033】
(3)ヒノキおが粉の抗カビ作用
(3-1)実験1
次に、充填層の材料としてのおが粉として使用するヒノキおが粉の抗カビ作用を、下記のとおりに試験した。寒天100質量部に対し、10質量部、20質量部及び30質量部それぞれ添加した寒天と、ヒノキおが粉は添加しなかった(0質量部)寒天とを、直径9cmのシャーレに注入して固化した。そして、柑橘類(デコポン)に発生した青カビを水につけ、綿棒をその水に浸してから、寒天表面に線状に塗布し、室温で放置した。
【0034】
その結果、ヒノキおが粉無添加の寒天では、塗布後8日目に塗布線上にカビの発生を認め、12日目には塗布線の周囲にもカビが拡がり始め、18日目には塗布線以外の箇所にまでカビが拡がった。ヒノキおが粉10質量部添加寒天では、塗布後8日目に塗布線上に僅かにカビの発生を認め、12日目には塗布線上のカビが増え、18日目には塗布線以外の箇所にも僅かにカビの発生を認めた。ヒノキおが粉20質量部添加寒天及び30質量部添加寒天では、いずれも塗布後8日目では塗布線上に明瞭なカビの発生は認められず、12日目で塗布線上に僅かにカビの発生を認め、18日目になって塗布線上にのみカビが増えていたが、塗布した部位以外のカビの発生は認められなかった。この実験1の結果として、ヒノキおが粉にはカビの発生を抑える効果が認められた。
【0035】
(3-2)実験2
次に、2つのシャーレに寒天を流し込んで固化させ、一方のシャーレ(シャーレA)にはヒノキおが粉を40mL敷き詰め、もう一方のシャーレ(シャーレB)は寒天のみとした。そして、夏蜜柑の皮を約5cm角に切ったものを、シャーレAではヒノキおが粉の上に置き、シャーレBでは寒天の上に置いて、シャーレに蓋をして室温に放置した。
【0036】
その結果、いずれのシャーレでも、夏蜜柑の皮の上には8日目からカビの発生が始まり、11日目、14日目と日数が経つにつれて皮の上のカビが増殖していった。そして、15日目に皮を取り去ったところ、シャーレBでは皮の下に当たっていた寒天にカビが発生していたが、シャーレAでは皮の下に当たっていたおが粉にはカビは発生しておらず、おが粉を除去した寒天の表面にもカビは認められなかった。この実験2の結果としても、ヒノキおが粉にはカビの発生を抑える効果が認められた。
【0037】
(4)珪砂の単独充填
次に、充填層の材料としての砂として使用する珪砂を単独で充填した人工芝について、下記のとおり試験した。珪砂1として、オムニサンドY(住友ゴム工業:1L当たり1.59kg)を使用した。珪砂2として、オムニサンドT3(住友ゴム工業:1L当たり1.56kg)を使用した。珪砂3として、オムニサンドT3(住友ゴム工業:1L当たり1.56kg)を使用した。また、後述する珪砂4として、珪砂3号(住友ゴム工業:1L当たり1.39kg)を使用した。
【0038】
縦50cm、横25cm、高さ12cmの木箱に敷設したパイル長130mmの人工芝に、上記の珪砂1、珪砂2及び珪砂3をそれぞれ84mm、90mm及び105mmの高さまで充填した。充填直後に、「投てき実施可能な人工芝付設ガイドライン」(公益財団法人 日本陸上競技連盟 施設用器具委員会、2018年9月)(以下、「ガイドライン」と略す。)に準拠して、槍の刺さりの有無、槍の貫入深さ、衝撃吸収性及び垂直変位を観察した。
【0039】
具体的には、槍の刺さりの有無は、男子用槍(Nemeth Classic 85m)を2mの高さから落下させ、槍が刺さって自立するかどうかで判断した。槍の貫入深さは、上記男子用槍を2mの高さから落下させ、貫入深さを測定した。衝撃吸収性は、20kgの重りを55mmの高さから落下させて加速度を記録し、力の減少割合と理論上のコンクリート面にかかる力から算出した。垂直変位は、上記衝撃吸収性の測定時におけるサーフェスの潜り込み量として特定した。次いで、充填した珪砂に散水し、珪砂1は散水16時間後に、珪砂2及び珪砂3はいずれも散水4時間後に、それぞれガイドラインに準拠して同様の観察を行った。その結果を下記表6に示す。
【0040】
【表6】
【0041】
まず、珪砂のいずれも、充填直後及び散水後のいずれも槍が刺さらなかった。また、ガイドラインによれば、衝撃吸収性の基準値は50~70%であり、貫入深さの基準値は60mm以上であるところ、これはいずれの珪砂もクリアできていなかった。また、垂直変位の基準値は4~11mmであるところ、これはいずれの珪砂も充填直後はクリアできていたものの、散水後は珪砂3がクリアできていたのみであった。以上より、上記珪砂1~珪砂3のいずれも、投擲用人工芝の充填層として単独で使用するには不適であると結論された。
【0042】
(5)珪砂とヒノキおが粉との交互充填
次に、珪砂とヒノキおが粉とを交互に充填した人工芝について、下記のとおり試験した。まず、縦50cm、横25cm、高さ12cmの木箱に、パイル長130mmの人工芝を敷設した。この人工芝に、充填層1として、下記表7に示す充填順序で、おが粉と珪砂1とを7回ずつ交互に充填した。充填の度に、パイルの上からブラッシングを施し、既に充填されている混合物に対し十分な混合を図った。珪砂とおが粉との体積比は8.2:7.0(≒1.17:1)となり、充填直後の充填層の厚さは95mmとなった。
【0043】
【表7】
【0044】
また、同様の人工芝に、充填層2として、下記表8に示す充填順序で、おが粉と珪砂2とを7回ずつ交互に充填した。充填の度に、パイルの上からブラッシングを施し、既に充填されている混合物に対し十分な混合を図った。珪砂とおが粉との体積比は8.33:7.0(≒1.19:1)となり、充填直後の充填層の厚さは100mmであった。
【0045】
【表8】
【0046】
また、同様の人工芝に、充填層3として、下記表9に示す充填順序で、おが粉と珪砂2とを5回ずつ交互に充填し、さらにおが粉と珪砂3とを2回ずつ交互に充填した。充填の度に、パイルの上からブラッシングを施し、既に充填されている混合物に対し十分な混合を図った。珪砂とおが粉との体積比は8.6:7.0(≒1.23:1)となり、充填直後の充填層の厚さは105mmであった。
【0047】
【表9】
【0048】
以上の充填層1~充填層3を備える人工芝について、ガイドラインに準拠して前記(3)と同様の観察を、充填直後と、散水16時間後(充填層1)又は散水4日後(充填層2及び充填層3)とに行った。その結果を下記表10に示す。
【0049】
【表10】
【0050】
まず、いずれの充填層も、充填直後及び散水後のいずれにおいても槍が刺さり、また、貫入深さの基準値(60mm以上)もクリアしていた。さらに、いずれの充填層も、少なくとも散水後は、衝撃吸収性(50~70%)及び垂直変位(4~11mm)の基準をクリアしていた。以上より、上記充填層1~充填層3はいずれも、投擲用人工芝の充填層として適していることが示された。
【0051】
ここで、前記表6と表10とから、珪砂1及び珪砂2それぞれ単独の場合と、これらにそれぞれおが粉を組み合わせた場合(すなわち、充填層1及び充填層2)とにおいて、衝撃吸収性、垂直変位及び貫入深さの値を抜き出し、下記表11に対比させて示す。
【0052】
【表11】
【0053】
上記表11に示すように、いずれの数値も、おが粉を組み合わせることで改善し、基準値を満たすに至ったことが示された。
【0054】
(6)別の充填例
次に、上記(5)とは別の充填例を示す。すなわち、上記(5)と同様の人工芝に、充填4として、下記表12に充填順序で、1.33Lの珪砂4を2回充填したのち、おが粉と珪砂2とを6回ずつ交互に充填した。充填の度に、パイルの上からブラッシングを施し、既に充填されている混合物に対し十分な混合を図った。珪砂2とおが粉と珪砂4との体積比は7.1:6.0:2.7となり、珪砂とおが粉との体積比は9.8:6.0(≒1.63:1)となり、充填直後の充填層の厚さは101mmとなった。
【0055】
【表12】
【0056】
また、同様の人工芝に、充填層5として、下記表13に示す充填順序で、1.33Lの珪砂4を2回充填し、次いでおが粉と珪砂2とを5回ずつ交互に充填したのち、さらに珪砂2を2回充填した。充填の度に、パイルの上からブラッシングを施し、既に充填されている混合物に対し十分な混合を図った。珪砂2とおが粉と珪砂4との体積比は8.3:5.0:2.7となり、珪砂とおが粉との体積比は11.0:5.0(≒2.2)となり、充填直後の充填層の厚さは105mmとなった。
【0057】
【表13】
【0058】
また、同様の人工芝に、充填層6として、下記表14に示す充填順序で、1.44Lの珪砂4を2回充填し、次いでおが粉と珪砂2とを5回ずつ交互に充填したのち、さらに珪砂2を2回充填した。充填の度に、パイルの上からブラッシングを施し、既に充填されている混合物に対し十分な混合を図った。珪砂2とおが粉と珪砂4との体積比は9.0:4.0:2.9となり、珪砂とおが粉との体積比は11.9:4.0(≒2.98:1)となり、充填直後の充填層の厚さは115mmとなった。
【0059】
【表14】
【0060】
以上の充填層4~充填層6を備える人工芝について、ガイドラインに準拠して前記(3)と同様の観察を、充填直後と、散水16時間後(充填層4)又は散水4日後(充填層5及び充填層6)とに行った。その結果を下記表15に示す。
【0061】
【表15】
【0062】
まず、いずれの充填層も、充填直後及び散水後のいずれにおいても槍が刺さり、また、貫入深さの基準値(60mm以上)もクリアしていた。さらに、いずれの充填層も、少なくとも散水後は、垂直変位(4~11mm)の基準はクリアしていた。なお、衝撃吸収性(50~70%)はいずれの充填層も基準値を僅かに上回っていたが、実際のフィールド充填作業では、使用する機械の輪荷重等で押圧されることで、基準値の範囲内に収まると思われる。
【0063】
(7)短いパイルの場合
最後に、パイル長が50mmと、上記(4)及び(5)のパイルより短いパイルの人工芝についても、珪砂とおが粉とを組み合わせた充填層が使用可能かどうかを検証した。
【0064】
縦70.7cm、横70.7cm、高さ3cmの木枠に敷設したパイル長50mmの人工芝に、充填層7として、下記表16に示す充填順序で、おが粉と珪砂2とを3回ずつ交互に充填した。充填の度に、パイルの上からブラッシングを施し、既に充填されている混合物に対し十分な混合を図った。珪砂とおが粉との体積比は8.0:6.0(≒1.33:1)となり、充填直後の充填層の厚さは30mmであった。
【0065】
【表16】
【0066】
なお、木枠への人工芝の付設前に、10mm厚の発泡ポリウレタン製のアンダーパッドを付設し、その後、下記表17に示す充填順序で、上記充填層7と同様におが粉と珪砂2とを充填して、充填の度に、パイルの上からブラッシングを施し、既に充填されている混合物に対し十分な混合を図ったものを充填層8とした。
【0067】
【表17】
【0068】
また、上記充填層7と同様の人工芝に、充填層9として、下記表18に示す充填順序で、珪砂2を1回充填し、次いでおが粉を1回充填し、最後に珪砂2を1回充填した。充填の度に、パイルの上からブラッシングを施し、既に充填されている混合物に対し十分な混合を図った。珪砂とおが粉との体積比は5.6:8.4(≒0.67:1)となり、充填直後の充填層の厚さは30mmであった。
【0069】
【表18】
【0070】
なお、木枠への人工芝の付設前に、10mm厚の発泡ポリウレタン製のアンダーパッドを付設し、その後、下記表19に示す充填順序で、上記充填層9と同様におが粉と珪砂2とを充填して、充填の度に、パイルの上からブラッシングを施し、既に充填されている混合物に対し十分な混合を図ったものを充填層10とした。
【0071】
【表19】
【0072】
以上の充填層7~10について、ガイドラインに準拠して前記(3)と同様に、衝撃吸収性及び垂直変位を観察した。なお、充填層8及び充填層10については、充填直後と散水後とに観察を行った。試験はいずれも3回行った。その結果を、衝撃吸収性について下記表20に、垂直変位について下記表21に、それぞれ示す。
【0073】
【表20】
【0074】
【表21】
【0075】
まず、上記表20に示す衝撃吸収性については、アンダーパッドを付設していない充填層7及び充填層9ではいずれも基準値(50~70%)はクリアできていないが、アンダーパッドを付設した充填層8及び充填層10ではいずれも基準値をクリアできていた。なお、散水後の充填層8は、小数点以下を四捨五入すれば基準値に達している。
【0076】
次に、上記表21に示す垂直変位については、アンダーパッドを付設していない充填層7及び充填層9ではいずれも基準値(4~11mm)の下限値付近であったが、アンダーパッドを付設した充填層8及び充填層10ではいずれも基準値をクリアできていた。
【0077】
以上の結果から、パイル長の短い人工芝であっても、アンダーパッドを付設することで、おが粉と砂とが充填された充填層がガイドラインに示す基準値をクリアできることが示された。
【符号の説明】
【0078】
10 人工芝 20 ベース 30 パイル
40 充填層 41 砂 42 おが粉
43 混合物 50 裏止め材 60 砕石路盤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8