(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016559
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】タンクの靭性信頼性評価方法
(51)【国際特許分類】
G01N 3/30 20060101AFI20240131BHJP
G01N 3/31 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
G01N3/30 S
G01N3/31 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118784
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】518022743
【氏名又は名称】三菱造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡部 亨尚
(72)【発明者】
【氏名】久保 俊之
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA14
2G061AB04
2G061AC04
2G061BA05
2G061CB04
(57)【要約】
【課題】タンクの靭性の評価を、適切、かつ容易に行う。
【解決手段】タンクの靭性信頼性評価方法は、応力拡大係数の経時的変化とタンクの設計寿命とに基づいて要求破壊靭性値を取得するステップと、タンクのシャルピー衝撃試験に基づくシャルピー遷移曲線から材料の遷移温度を取得するステップと、タンクの材料の破壊靭性試験に基づいて、破壊靭性値を取得するステップと、各試験温度と遷移温度との差分の逆数である温度指標と、各試験温度での破壊靭性値との関係に基づいて設計許容条件を取得するステップと、設計許容条件と要求破壊靭性値とに基づいて、要求温度指標を取得するステップと、要求温度指標に基づく遷移温度を有する許容シャルピー遷移曲線を取得するステップと、許容シャルピー遷移曲線に基づいてタンクの材料の靭性信頼性を評価するステップと、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め定めた応力拡大係数の経時的変化とタンクの設計寿命とに基づいて要求破壊靭性値を取得するステップと、
前記タンクの材料の各試験温度でのシャルピー衝撃試験に基づくシャルピー遷移曲線から前記材料の遷移温度を取得するステップと、
前記タンクの材料の各前記試験温度での破壊靭性試験に基づいて、各前記試験温度における破壊靭性値を取得するステップと、
各前記試験温度と前記遷移温度との差分の逆数である温度指標と、各前記試験温度での破壊靭性値との関係に基づいて、各温度指標で破壊靭性特性を満足する設計許容条件を取得するステップと、
前記設計許容条件と前記要求破壊靭性値とに基づいて、要求温度指標を取得するステップと、
前記要求温度指標に基づく要求遷移温度を有する許容シャルピー遷移曲線を取得するステップと、
前記許容シャルピー遷移曲線に基づいて前記タンクの材料の靭性信頼性を評価するステップと、を含む
タンクの靭性信頼性評価方法。
【請求項2】
前記要求破壊靭性値を取得するステップでは、前記応力拡大係数の経時的変化に基づき、前記タンクが設計寿命に到達したときの前記応力拡大係数を、前記要求破壊靭性値として取得する
請求項1に記載のタンクの靭性信頼性評価方法。
【請求項3】
前記材料の遷移温度を取得するステップでは、
各前記試験温度と、各前記試験温度で前記シャルピー衝撃試験を行った際の吸収エネルギーとの相関に基づいて前記シャルピー遷移曲線を取得し、
前記シャルピー遷移曲線に基づいて、前記タンクの材料における前記吸収エネルギーの上限値と下限値との中間値であるときの温度を前記材料の遷移温度として取得する
請求項1又は2に記載のタンクの靭性信頼性評価方法。
【請求項4】
前記設計許容条件を取得するステップでは、
各前記試験温度と前記遷移温度との差分の逆数である温度指標と、各前記試験温度での破壊靭性値との関係に基づいて取得される相関線図に対し、所定の間隔を開けて設定される設計線図を前記設計許容条件として取得する
請求項1又は2に記載のタンクの靭性信頼性評価方法。
【請求項5】
前記要求温度指標を取得するステップでは、
前記設計許容条件としての前記設計線図に基づいて、前記要求破壊靭性値に対応する前記温度指標を、前記要求温度指標として取得する
請求項4に記載のタンクの靭性信頼性評価方法。
【請求項6】
前記許容シャルピー遷移曲線を取得するステップでは、
前記要求温度指標に基づいて得られる遷移温度を、要求遷移温度として取得し、
前記要求遷移温度に基づいて、前記許容シャルピー遷移曲線を取得する
請求項1又は2に記載のタンクの靭性信頼性評価方法。
【請求項7】
前記材料の靭性信頼性を評価するステップでは、
実際に製造された前記タンクから試験片を採取して、前記シャルピー衝撃試験を行い、
前記シャルピー衝撃試験により得られた前記試験片における設定試験温度、及び吸収エネルギーの値を、前記許容シャルピー遷移曲線を基準として判定する
請求項1又は2に記載のタンクの靭性信頼性評価方法。
【請求項8】
前記材料の靭性信頼性を評価するステップでは、
前記試験片に対し、予め設定された設定試験温度で前記シャルピー衝撃試験を行う
請求項7に記載のタンクの靭性信頼性評価方法。
【請求項9】
タンクの材料の各試験温度でのシャルピー衝撃試験に基づくシャルピー遷移曲線から取得された前記材料の遷移温度と、前記タンクの材料の各前記試験温度での破壊靭性試験に基づいて取得された各前記試験温度における破壊靭性値と、に基づいて、前記タンクの靭性信頼性を評価する、前記タンクの靭性信頼性評価方法であって、
予め定めた応力拡大係数の経時的変化と前記タンクの設計寿命とに基づいて要求破壊靭性値を取得するステップと、
各前記試験温度と前記遷移温度との差分の逆数である温度指標と、各前記試験温度での破壊靭性値との関係に基づいて、各温度指標で破壊靭性特性を満足する設計許容条件を取得するステップと、
前記設計許容条件と前記要求破壊靭性値とに基づいて、要求温度指標を取得するステップと、
前記要求温度指標に基づく要求遷移温度を有する許容シャルピー遷移曲線を取得するステップと、
前記許容シャルピー遷移曲線に基づいて前記タンクの材料の靭性信頼性を評価するステップと、を含む
タンクの靭性信頼性評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タンクの靭性信頼性評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属材料を用いて製造される各種の物品においては、物品に応じた所要の強度と靭性とを備えることが要求されている。例えば、特許文献1には、溶接による熱影響部の低温靭性が優れた鋼の製造法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、LPG(液化石油ガス)等の液化ガスを貯蔵するタンクにおいては、タンクを形成する材料の厚さ、強度、靭性等が、規則によって定められている。これに対し、液化二酸化炭素を貯蔵するタンクは、LPGを貯蔵するタンクに比較すると、タンク内の圧力は同等でありながら、タンク内の温度が低い。このため、液化二酸化炭素を貯蔵するタンクに、LPG用のタンクに用いられていた高張力鋼等の材料をそのまま適用すると、所要の靭性が確保できない可能性がある。
【0005】
そこで、液化二酸化炭素用のタンクに関しては、従来の材料に代えて新規材料を使用する可能性があるが、新規材料に関する靭性要求等の規則が未だ定められていないのが実情である。
【0006】
さらに、破壊靭性値は温度や応力状態の影響を受ける。このため、実機状態を模擬して靭性を調査する場合、大型の破壊靭性試験を実施する必要がある。その結果、費用、設備、期間的に実機状態に近い条件で靭性を取得することが困難な場合もある。
【0007】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、タンクの靭性の評価を、適切、かつ容易に行うことができるタンクの靭性信頼性評価方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示に係るタンクの靭性信頼性評価方法は、要求破壊靭性値を取得するステップと、材料の遷移温度を取得するステップと、破壊靭性値を取得するステップと、設計許容条件を取得するステップと、要求温度指標を取得するステップと、許容シャルピー遷移曲線を取得するステップと、材料の靭性信頼性を評価するステップと、を含む。前記要求破壊靭性値を取得するステップでは、予め定めた応力拡大係数の経時的変化とタンクの設計寿命とに基づいて、前記要求破壊靭性値を取得する。前記材料の遷移温度を取得するステップでは、前記タンクの材料の各試験温度でのシャルピー衝撃試験に基づくシャルピー遷移曲線から前記材料の遷移温度を取得する。前記破壊靭性値を取得するステップでは、前記タンクの材料の各前記試験温度での破壊靭性試験に基づいて、各前記試験温度における破壊靭性値を取得する。前記設計許容条件を取得するステップでは、温度指標と、各前記試験温度での破壊靭性値との関係に基づいて、各温度指標で破壊靭性特性を満足する設計許容条件を取得する。前記温度指標は、各前記試験温度と前記遷移温度との差分の逆数である。前記要求温度指標を取得するステップでは、前記設計許容条件と前記要求破壊靭性値とに基づいて、要求温度指標を取得する。前記許容シャルピー遷移曲線を取得するステップでは、前記要求温度指標に基づく要求遷移温度を有する許容シャルピー遷移曲線を取得する。前記材料の靭性信頼性を評価するステップでは、前記許容シャルピー遷移曲線に基づいて前記タンクの材料の靭性信頼性を評価する。
【0009】
本開示に係るタンクの靭性信頼性評価方法は、タンクの材料の各試験温度でのシャルピー衝撃試験に基づくシャルピー遷移曲線から取得された前記材料の遷移温度と、前記タンクの材料の各前記試験温度での破壊靭性試験に基づいて取得された各前記試験温度における破壊靭性値と、に基づいて、前記タンクの靭性信頼性を評価する。前記タンクの靭性信頼性評価方法は、要求破壊靭性値を取得するステップと、設計許容条件を取得するステップと、要求温度指標を取得するステップと、許容シャルピー遷移曲線を取得するステップと、材料の靭性信頼性を評価するステップと、を含む。前記要求破壊靭性値を取得するステップでは、予め定めた応力拡大係数の経時的変化とタンクの設計寿命とに基づいて、前記要求破壊靭性値を取得する。前記設計許容条件を取得するステップでは、温度指標と、各前記試験温度での破壊靭性値との関係に基づいて、各温度指標で破壊靭性特性を満足する設計許容条件を取得する。前記温度指標は、各前記試験温度と前記遷移温度との差分の逆数である。前記要求温度指標を取得するステップでは、前記設計許容条件と前記要求破壊靭性値とに基づいて、要求温度指標を取得する。前記許容シャルピー遷移曲線を取得するステップでは、前記要求温度指標に基づく遷移温度を有する許容シャルピー遷移曲線を取得する。前記材料の靭性信頼性を評価するステップでは、前記許容シャルピー遷移曲線に基づいて前記タンクの材料の靭性信頼性を評価する。
【発明の効果】
【0010】
本開示のタンクの靭性信頼性評価方法によれば、タンクの靭性の評価を、適切、かつ容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態に係るタンクの靭性信頼性評価方法の評価対象となるタンクの一例を示す断面図である。
【
図2】本開示の実施形態に係るタンクの靭性信頼性評価方法の手順を示すフローチャートである。
【
図3】本開示の実施形態に係る材料の遷移温度を取得するステップで取得される、シャルピー遷移曲線の一例を示す図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る破壊靭性値を取得するステップで取得される、試験温度と破壊靭性値との相関を示す図である。
【
図5】本開示の実施形態に係る要求破壊靭性値を取得するステップで取得される、経過期間と応力拡大係数との相関を示す図である。
【
図6】本開示の実施形態に係る設計許容条件を取得するステップで取得される、温度指標と破壊靭性値との相関、及び設計線図を示す図である。
【
図7】本開示の実施形態に係る許容シャルピー遷移曲線を取得するステップで取得される、許容シャルピー遷移曲線を示す図である。
【
図8】本開示の実施形態に係る材料の靭性信頼性を評価するステップにおいて、許容シャルピー遷移曲線に基づいて行う材料の評価を示す図である。
【
図9】本開示の実施形態の変形例に係るタンクの靭性信頼性評価方法の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態に係るタンクの靭性信頼性評価方法について、
図1~
図8を参照して説明する。
(タンクの構成)
図1に示すように、この実施形態におけるタンクの靭性信頼性評価方法の評価対象となるタンク1は、例えば液化二酸化炭素等の液化ガスを貯留可能である。タンク1は、船舶の船体、洋上浮体設備の浮体本体、陸上の液化ガス貯蔵施設等に設置される。タンク1は、例えば、円筒状をなしている。タンク1は、筒状部2と、鏡板部3と、を備えている。筒状部2は、その中心軸方向Dcに延びている。この実施形態において、筒状部2は、円筒状に形成され、その中心軸方向Dcに直交する断面形状が円形をなしている。鏡板部3は、筒状部2の中心軸方向Dcの両端部にそれぞれ配置されている。各鏡板部3は、半球状で、筒状部2の中心軸方向Dcの開口を閉塞している。なお、タンク1は、円筒状に限られるものではなく、球形、方形等、他の形状であってもよい。タンク1は、複数枚の鋼製の板材同士を溶接することによって形成されている。
【0013】
(タンクの靭性信頼性評価方法の手順)
図2は、本開示の実施形態に係るタンクの靭性信頼性評価方法の手順を示すフローチャートである。
図2に示すように、タンクの靭性信頼性評価方法S10は、材料の遷移温度を取得するステップS11と、破壊靭性値を取得するステップS12と、要求破壊靭性値を取得するステップS13と、設計許容条件を取得するステップS14と、要求温度指標を取得するステップS15と、許容シャルピー遷移曲線を取得するステップS16と、材料の靭性信頼性を評価するステップS17と、を含んでいる。
【0014】
図3は、本開示の実施形態に係る材料の遷移温度を取得するステップで取得される、シャルピー遷移曲線の一例を示す図である。
材料の遷移温度を取得するステップS11では、タンク1に採用する材料について、シャルピー衝撃試験を行う。シャルピー衝撃試験は、タンク1に採用する材料の試験片に対してハンマーで衝撃を与えて試験片を破壊し、試験片を破壊するために要したエネルギーの大きさを、吸収エネルギーEとして取得する。本実施形態では、
図3に示すように、タンク1に液化二酸化炭素を貯留した状態で想定されるタンク1の使用温度域を含む、複数の試験温度(例えば、試験温度T1~T5)で、それぞれシャルピー衝撃試験を行う。本実施形態では、試験温度T1~T5のそれぞれにおいて、シャルピー衝撃試験を、例えば3回行っている。試験温度T1~T5のそれぞれにおいて、3回のシャルピー衝撃試験における吸収エネルギーEの平均値を、各試験温度T1~T5における吸収エネルギーEの代表値としている。なお、このステップS11で実施するシャルピー衝撃試験の試験温度、各試験回数における試験回数は、適宜変更可能である。
【0015】
次いで、材料の遷移温度を取得するステップS11では、複数の試験温度T1~T5と、タンク1の材料の各試験温度T1~T5での吸収エネルギーEの大きさとの相関に基づき、シャルピー遷移曲線L1を得る。さらに、得られたシャルピー遷移曲線L1において、このタンク1の材料の遷移温度vTrEを取得する。これには、シャルピー遷移曲線L1における吸収エネルギーEの上限値Euと、下限値Ebとの中間値Emを求める。シャルピー遷移曲線L1上で、求められた中間値Emである場合の温度を、遷移温度vTrEとして取得する。ここで、中間値Emは、(上限値Eu+下限値Eb)/2である。
【0016】
図4は、本開示の実施形態に係る破壊靭性値を取得するステップで取得される、試験温度と破壊靭性値との相関を示す図である。
破壊靭性値を取得するステップS12では、タンク1に採用する材料について、破壊靭性試験を行う。破壊靭性試験は、タンク1に採用する材料の試験片に切欠きを形成し、試験片に荷重を印加する。切欠きを起点として発展した亀裂により、試験片が破壊されたときの応力拡大係数を、破壊靭性値Zとして取得する。応力拡大係数は、き裂の先端付近における応力分布の強さを表す。本実施形態では、
図4に示すように、破壊靭性試験を、ステップS11で行ったシャルピー衝撃試験と同じ試験温度T1~T5のそれぞれで実施する。このステップS12では、タンク1の材料の各試験温度T1~T5での破壊靭性試験に基づいて、各試験温度T1~T5における破壊靭性値Zを取得する。
【0017】
上記ステップS11、及びステップS12は、タンク1の製造者が、タンク1の製造現場で行ってもよいが、タンク1に採用する鋼製の板材を製造する材料メーカーで実施するようにしても良い。材料メーカーであれば、シャルピー衝撃試験、及び破壊靭性試験を行うための設備を備えている。したがって、タンク1の製造現場で、特に破壊靭性試験を行う必要性が抑えられる。
【0018】
図5は、本開示の実施形態に係る要求破壊靭性値を取得するステップで取得される、経過期間と応力拡大係数Kとの相関を示す図である。
要求破壊靭性値を取得するステップS13では、予め定めた応力拡大係数Kの経時的変化とタンク1の設計寿命とに基づいて要求破壊靭性値Zrを取得する。具体的には、タンク1において、予め、初期段階から所定寸法の亀裂が存在した場合に、タンク1を使用したときの亀裂の経時的変化を、シミュレーションにより予測する。シミュレーションは、予め設定された応力の履歴に基づいて行われる。シミュレーションによる予測結果に基づき、
図5に示すように、タンク1の使用を開始してからの経過期間と、応力拡大係数Kとの相関を示す相関曲線L2を取得する。さらに、取得された相関曲線L2において、予め設定されたタンク1の設計寿命Teであるときの応力拡大係数Kの大きさを、要求破壊靭性値Zrとして取得する。
【0019】
図6は、本開示の実施形態に係る設計許容条件を取得するステップで取得される、温度指標と破壊靭性値との相関、及び設計線図を示す図である。
設計許容条件を取得するステップS14では、まず、温度指標Yを取得する。温度指標Yは、ステップS11、及びS12で用いた試験温度T1~T5と、ステップS11で取得された遷移温度vTrEとに基づいて、下式(1)により算出される。式(1)に示すように、温度指標Yは、各試験温度T1~T5と遷移温度vTrEとの差分の逆数である。温度指標Yは、試験温度T1~T5のそれぞれに対応して算出される。
温度指標Y=(試験温度(T1~T5)-遷移温度vTrE)
-1 ・・・(1)
【0020】
さらに、ステップS14では、算出された、各試験温度T1~T5に対応した温度指標Yと、ステップS12で取得された、試験温度T1~T5のそれぞれにおける破壊靭性値Zとの相関を示す相関線
図L3を取得する。
ステップS14では、取得された相関線
図L3を基準として、設計許容条件を示す設計線
図L4を取得する。設計線
図L4は、相関線
図L3に対し、所定の安全を見込み、所定の間隔を開けて設定される。設計線
図L4における、温度指標Yごとの破壊靭性値Zの大きさは、相関線
図L3における破壊靭性値Zを下回っている。設計線
図L4は、相関線
図L3に対し、
図6において互いに平行となるように設定される。
【0021】
要求温度指標を取得するステップS15では、ステップS13で取得された要求破壊靭性値Zrと、ステップS14で設定された、設計許容条件を示す設計線
図L4とに基づいて、要求温度指標Yrを取得する。これには、設計線
図L4に基づいて、要求破壊靭性値Zrに対応する温度指標Yの値を、要求温度指標Yrとして取得する。
【0022】
図7は、本開示の実施形態に係る許容シャルピー遷移曲線を取得するステップで取得される、許容シャルピー遷移曲線を示す図である。
許容シャルピー遷移曲線を取得するステップS16では、ステップS15で取得された要求温度指標Yrと、予め設定された設計温度下限に基づいて、下式(2)により要求遷移温度Trを取得する。これには、要求温度指標Yrに基づいて得られる遷移温度vTrEを、要求遷移温度Trとして取得する。
要求温度指標Yr=(設計温度下限-要求遷移温度Tr)
-1 ・・・(2)
ここで、上記の設計温度下限とは、タンク1の設計温度の下限値である。
【0023】
ステップS16では、上記ステップS11で得たシャルピー遷移曲線L1における吸収エネルギーEの上限値Euと下限値Ebとの中間値Emと、取得された要求遷移温度Trとに基づいて、許容シャルピー遷移曲線L5を取得する。許容シャルピー遷移曲線L5は、予め設定された関数に基づいて表される。
【0024】
図8は、本開示の実施形態に係る材料の靭性信頼性を評価するステップにおいて、許容シャルピー遷移曲線に基づいて行う材料の評価を示す図である。
材料の靭性信頼性を評価するステップS17では、
図8に示すように、ステップS16で取得された許容シャルピー遷移曲線L5に基づいて、タンク1の材料の靭性信頼性を評価する。ステップS17は、例えば、タンク1を実際に製造するに際して実施される。この場合、実際に製造されたタンク1から試験片を採取する。タンク1に使用される金属材料同士を溶接により接合したものを、試験片としてもよい。
また、ステップS17は、例えば、タンク1の設計段階で実施してもよい。ステップS17では、例えば、タンク1の材料として採用可能性のある候補材料を試験片として、評価を行う。
【0025】
材料の靭性信頼性の評価は、試験片に対してシャルピー衝撃試験を行うことで実施する。このとき、ステップS17におけるシャルピー衝撃試験の設定試験温度Ttは、例えば、設計温度下限に設定される。なお、設定試験温度Ttは、試験片の厚さに応じて設定してもよい。具体的には、例えば、試験片の厚さtが、25<t≦30である場合、設定試験温度Ttは、タンク1の設計温度より10℃低い温度、又は-20℃のうち、いずれか低い方とする。また、試験片の厚さtが、30<t≦35である場合、設定試験温度Ttは、タンク1の設計温度より15℃低い温度、又は-20℃のうち、いずれか低い方とする。試験片の厚さtが、35<t≦40である場合、設定試験温度Ttは、タンク1の設計温度より20℃低い温度とする。なお、ここで示した設定試験温度Ttはあくまでも例であり、適宜変更可能である。
本実施形態では、ステップS17におけるシャルピー衝撃試験の設定試験温度Ttは、例えば上記のように定められる1種類のみとされる。すなわち、ステップS17におけるシャルピー衝撃試験は、1種類の設定試験温度Ttのみで行われる。
【0026】
タンク1の材料の靭性信頼性の評価は、許容シャルピー遷移曲線L5を基準として行われる。具体的には、許容シャルピー遷移曲線L5における、シャルピー衝撃試験が実施される設定試験温度Ttに対応する要求吸収エネルギーEtを基準として行う。すなわち、設定試験温度Ttで試験片のシャルピー衝撃試験を行った結果、得られる吸収エネルギーEが、設定試験温度Ttのときの要求吸収エネルギーEtを上回っているか否かを判定する。その結果、試験片における設定試験温度Ttでのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーEが、要求吸収エネルギーEtを上回っていれば、試験片に用いられた材料の靭性信頼性は、要求を満足していると判定される。また、試験片におけるシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーEが、要求吸収エネルギーEtを上回っていない場合、試験片に用いられた材料の靭性信頼性は、要求を満足していないと判定される。要求を満足していないと判定された場合、タンク1の設計者(製造者)は、タンク1に用いる材料の組成、板厚等を変更し、再度評価を行う。
【0027】
(作用効果)
上記実施形態のタンク1の靭性信頼性評価方法S10では、タンク1の材料について、シャルピー衝撃試験と、破壊靭性試験と、を行い、材料の遷移温度vTrEと破壊靭性値Zとを取得しておく。また、タンク1について、予め定めた応力拡大係数Kの経時的変化とタンク1の設計寿命とに基づいて要求破壊靭性値Zrを取得する。その上で、各試験温度T1~T5と遷移温度vTrEとの差分の逆数である温度指標Yと、各試験温度T1~T5での破壊靭性値Zとの関係に基づいて、各温度指標Yで破壊靭性特性を満足する設計許容条件を取得する。さらに、設計許容条件と要求破壊靭性値Zrとに基づいて、要求温度指標Yrを取得する。そして、要求温度指標Yrに基づく要求遷移温度Trを有する許容シャルピー遷移曲線L5を取得する。タンク1の材料の靭性信頼性は、このようにして得た許容シャルピー遷移曲線L5に基づいて、適切に評価することができる。
そのため、許容シャルピー遷移曲線L5を事前に取得しておけば、タンク1に採用する材料の靭性信頼性の評価を、シャルピー試験を行うことで実施できる。つまり、タンク1の製造現場で、必ずしも大掛かりな破壊靭性試験を行う必要がなくなる。
したがって、本実施形態のタンク1の靭性信頼性評価方法によれば、タンク1の靭性の評価を、適切、かつ容易に行うことができる。
【0028】
上記実施形態では、応力拡大係数Kの経時的変化に基づき、タンク1が設計寿命に到達したときの応力拡大係数Kを、要求破壊靭性値Zrとして取得することができる。
【0029】
上記実施形態では、各試験温度T1~T5と、各試験温度T1~T5でシャルピー衝撃試験を行った際の吸収エネルギーEとの相関に基づいて、シャルピー遷移曲線L1を取得することができる。さらに、シャルピー遷移曲線L1において、タンク1の材料における吸収エネルギーEの上限値Euと下限値Ebとの中間値Emであるときの温度を、材料の遷移温度vTrEとして取得することができる。
【0030】
上記実施形態では、各試験温度T1~T5と遷移温度vTrEとの差分の逆数である温度指標Yと、各試験温度T1~T5での破壊靭性値Zとの関係に基づいて、相関線
図L3を取得することができる。設計線
図L4は、取得された相関線
図L3に対し、所定の間隔を開けて設定することができる。このようにして設定された設計線
図L4を、設計許容条件とすることができる。
【0031】
上記実施形態では、設計許容条件としての設計線
図L4において、要求破壊靭性値Zrに対応する温度指標Yを、要求温度指標Yrとして取得することができる。
【0032】
上記実施形態では、要求温度指標Yrに基づいて得られる遷移温度vTrEを、要求遷移温度Trとして取得することによって、要求遷移温度Trに基づいて、許容シャルピー遷移曲線L5を取得することができる。
【0033】
上記実施形態では、実際に製造されたタンク1から試験片を採取して、シャルピー衝撃試験を行う。そして、シャルピー衝撃試験により得られた試験片における設定試験温度Tt、及び吸収エネルギーEの値を、許容シャルピー遷移曲線L5を基準として判定することで、試験片の靭性信頼性を評価することができる。
【0034】
上記実施形態では、試験片については、設定された設定試験温度Ttでのみシャルピー衝撃試験を行えばよく、タンク1の靭性信頼性の評価を、容易に行うことができる。
【0035】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
なお、上記実施形態では、タンク1の靭性信頼性評価方法S10の手順について説明したが、その順序については適宜変更可能である。
また、上記実施形態では、タンク1の靭性信頼性評価方法S10として、ステップS11~S17を示したが、例えば、材料の遷移温度を取得するステップS11と、破壊靭性値を取得するステップS12と、を、タンク1に使用される材料を提供する材料メーカーで事前に行うようにしてもよい。その場合、材料メーカーは、取得した材料の遷移温度vTrE、破壊靭性値Zのデータを、タンク1の製造者に提供する。
図9は、本開示の実施形態の変形例に係るタンクの靭性信頼性評価方法の手順を示すフローチャートである。
この場合、タンク1の製造者は、予めタンク1の材料メーカーによって取得された遷移温度vTrEと、破壊靭性値Zと、に基づいて、
図9に示すようなタンク1の靭性信頼性評価方法S20において、上記実施形態と同様のステップS13~S17を実施する。
【0036】
<付記>
実施形態に記載のタンク1の靭性信頼性評価方法S10、S20は、例えば以下のように把握される。
【0037】
(1)第1の態様に係るタンク1の靭性信頼性評価方法S10は、予め定めた応力拡大係数Kの経時的変化とタンク1の設計寿命とに基づいて要求破壊靭性値Zrを取得するステップS13と、前記タンク1の材料の各試験温度T1~T5でのシャルピー衝撃試験に基づくシャルピー遷移曲線L1から前記材料の遷移温度を取得するステップS11と、前記タンク1の材料の各前記試験温度T1~T5での破壊靭性試験に基づいて、各前記試験温度T1~T5における破壊靭性値を取得するステップS12と、各前記試験温度T1~T5と前記遷移温度vTrEとの差分の逆数である温度指標Yと、各前記試験温度T1~T5での破壊靭性値Zとの関係に基づいて、各温度指標Yで破壊靭性特性を満足する設計許容条件を取得するステップS14と、前記設計許容条件と前記要求破壊靭性値Zrとに基づいて、要求温度指標を取得するステップS15と、前記要求温度指標Yrに基づく要求遷移温度Trを有する許容シャルピー遷移曲線L5を取得するステップS16と、前記許容シャルピー遷移曲線L5に基づいて前記タンク1の材料の靭性信頼性を評価するステップS17と、を含む。
【0038】
このタンク1の靭性信頼性評価方法S10は、タンク1の材料について、シャルピー衝撃試験と、破壊靭性試験と、を行い、材料の遷移温度vTrEと破壊靭性値Zとを取得しておく。また、タンク1について、予め定めた応力拡大係数Kの経時的変化とタンク1の設計寿命とに基づいて要求破壊靭性値Zrを取得する。その上で、各試験温度T1~T5と遷移温度vTrEとの差分の逆数である温度指標Yと、各試験温度T1~T5での破壊靭性値Zとの関係に基づいて、各温度指標Yで破壊靭性特性を満足する設計許容条件を取得する。さらに、設計許容条件と要求破壊靭性値Zrとに基づいて、要求温度指標Yrを取得する。そして、要求温度指標Yrに基づく要求遷移温度Trを有する許容シャルピー遷移曲線L5を取得する。タンク1の材料の靭性信頼性は、このようにして得た許容シャルピー遷移曲線L5に基づいて、適切に評価することができる。
したがって、事前に、許容シャルピー遷移曲線L5を取得しておけば、タンク1に採用する材料の靭性信頼性の評価は、シャルピー試験を行うことによって実施することができる。
その結果、タンク1の靭性の評価を、適切、かつ容易に行うことができる。
【0039】
(2)第2の態様に係るタンク1の靭性信頼性評価方法S10は、(1)のタンク1の靭性信頼性評価方法S10であって、前記要求破壊靭性値Zrを取得するステップS13では、前記応力拡大係数Kの経時的変化に基づき、前記タンク1が設計寿命に到達したときの前記応力拡大係数Kを、前記要求破壊靭性値Zrとして取得する。
【0040】
これにより、応力拡大係数Kの経時的変化に基づき、タンク1が設計寿命に到達したときの応力拡大係数Kを、要求破壊靭性値Zrとして取得することができる。
【0041】
(3)第3の態様に係るタンク1の靭性信頼性評価方法S10は、(1)又は(2)のタンク1の靭性信頼性評価方法S10であって、前記材料の遷移温度を取得するステップS11では、各前記試験温度T1~T5と、各前記試験温度T1~T5で前記シャルピー衝撃試験を行った際の吸収エネルギーEとの相関に基づいて前記シャルピー遷移曲線L1を取得し、前記シャルピー遷移曲線L1に基づいて、前記タンク1の材料における前記吸収エネルギーEの上限値Euと下限値Ebとの中間値Emであるときの温度を前記材料の遷移温度vTrEとして取得する。
【0042】
これにより、各試験温度T1~T5と、各試験温度T1~T5でシャルピー衝撃試験を行った際の吸収エネルギーEとの相関に基づいて、シャルピー遷移曲線L1を取得することができる。さらに、シャルピー遷移曲線L1において、タンク1の材料における吸収エネルギーEの上限値Euと下限値Ebとの中間値Emであるときの温度を、材料の遷移温度vTrEとして取得することができる。
【0043】
(4)第4の態様に係るタンク1の靭性信頼性評価方法S10は、(1)から(3)の何れか一つのタンク1の靭性信頼性評価方法S10であって、前記設計許容条件を取得するステップS14では、各前記試験温度T1~T5と前記遷移温度vTrEとの差分の逆数である温度指標Yと、各前記試験温度T1~T5での破壊靭性値Zとの関係に基づいて取得される相関線
図L3に対し、所定の間隔を開けて設定される設計線
図L4を前記設計許容条件として取得する。
【0044】
これにより、各試験温度T1~T5と遷移温度vTrEとの差分の逆数である温度指標Yと、各試験温度T1~T5での破壊靭性値Zとの関係に基づいて、相関線
図L3を取得することができる。設計線
図L4は、取得された相関線
図L3に対し、所定の間隔を開けて設定することができる。このようにして設定された設計線
図L4を、設計許容条件とすることができる。
【0045】
(5)第5の態様に係るタンク1の靭性信頼性評価方法S10は、(4)のタンク1の靭性信頼性評価方法S10であって、前記要求温度指標を取得するステップS15では、前記設計許容条件としての前記設計線
図L4に基づいて、前記要求破壊靭性値Zrに対応する前記温度指標Yを、前記要求温度指標Yrとして取得する。
【0046】
これにより、設計許容条件としての設計線
図L4において、要求破壊靭性値Zrに対応する温度指標Yを、要求温度指標Yrとして取得することができる。
【0047】
(6)第6の態様に係るタンク1の靭性信頼性評価方法S10は、(1)から(5)の何れか一つのタンク1の靭性信頼性評価方法S10であって、前記許容シャルピー遷移曲線L5を取得するステップS16では、前記要求温度指標Yrに基づいて得られる遷移温度vTrEを、要求遷移温度Trとして取得し、前記要求遷移温度Trに基づいて、前記許容シャルピー遷移曲線L5を取得する。
【0048】
これにより、要求温度指標Yrに基づいて得られる遷移温度vTrEを、要求遷移温度Trとして取得することによって、要求遷移温度Trに基づいて、許容シャルピー遷移曲線L5を取得することができる。
【0049】
(7)第7の態様に係るタンク1の靭性信頼性評価方法S10は、(1)から(6)の何れか一つのタンク1の靭性信頼性評価方法S10であって、前記材料の靭性信頼性を評価するステップS17では、実際に製造された前記タンク1から試験片を採取して、前記シャルピー衝撃試験を行い、前記シャルピー衝撃試験により得られた前記試験片における試験温度T1~T5、及び吸収エネルギーEの値を、前記許容シャルピー遷移曲線L5を基準として判定する。
【0050】
これにより、実際に前記タンク1に使用される前記材料を試験片として、前記シャルピー衝撃試験を行う。そして、シャルピー衝撃試験により得られた試験片における試験温度T1~T5、及び吸収エネルギーEの値を、許容シャルピー遷移曲線L5を基準として判定することで、試験片の靭性信頼性を評価することができる。
【0051】
(8)第8の態様に係るタンク1の靭性信頼性評価方法S10は、(7)のタンク1の靭性信頼性評価方法S10であって、前記材料の靭性信頼性を評価するステップS17では、前記試験片に対し、予め設定された設定試験温度Ttで前記シャルピー衝撃試験を行う。
【0052】
これにより、試験片については、設定された設定試験温度Ttでのみシャルピー衝撃試験を行えばよく、タンク1の靭性信頼性の評価を、容易に行うことができる。
【0053】
(9)第9の態様に係るタンク1の靭性信頼性評価方法S20は、タンク1の材料の各試験温度T1~T5でのシャルピー衝撃試験に基づくシャルピー遷移曲線L1から取得された前記材料の遷移温度vTrEと、前記タンク1の材料の各前記試験温度T1~T5での破壊靭性試験に基づいて取得された各前記試験温度T1~T5における破壊靭性値Zと、に基づいて、前記タンク1の靭性信頼性を評価する、前記タンク1の靭性信頼性評価方法S20であって、予め定めた応力拡大係数Kの経時的変化と前記タンク1の設計寿命とに基づいて要求破壊靭性値Zrを取得するステップS13と、各前記試験温度T1~T5と前記遷移温度vTrEとの差分の逆数である温度指標Yと、各前記試験温度T1~T5での破壊靭性値Zとの関係に基づいて、各温度指標Yで破壊靭性特性を満足する設計許容条件を取得するステップS14と、前記設計許容条件と前記要求破壊靭性値Zrとに基づいて、要求温度指標を取得するステップS15と、前記要求温度指標Yrに基づく要求遷移温度Trを有する許容シャルピー遷移曲線L5を取得するステップS16と、前記許容シャルピー遷移曲線L5に基づいて前記タンク1の材料の靭性信頼性を評価するステップS17と、を含む。
【0054】
このタンク1の靭性信頼性評価方法S20は、予め、タンク1の材料について、シャルピー衝撃試験と、破壊靭性試験と、を行い、材料の遷移温度vTrEと破壊靭性値Zとを取得しておく。また、タンク1について、予め定めた応力拡大係数Kの経時的変化とタンク1の設計寿命とに基づいて要求破壊靭性値Zrを取得する。その上で、各試験温度T1~T5と遷移温度vTrEとの差分の逆数である温度指標Yと、各試験温度T1~T5での破壊靭性値Zとの関係に基づいて、各温度指標Yで破壊靭性特性を満足する設計許容条件を取得する。さらに、設計許容条件と要求破壊靭性値Zrとに基づいて、要求温度指標Yrを取得する。そして、要求温度指標Yrに基づく要求遷移温度Trを有する許容シャルピー遷移曲線L5を取得する。タンク1の材料の靭性信頼性は、このようにして得た許容シャルピー遷移曲線L5に基づいて、適切に評価することができる。
したがって、事前に、許容シャルピー遷移曲線L5を取得しておけば、タンク1に採用する材料の靭性信頼性の評価は、シャルピー試験を行えば実施することができる。
その結果、タンク1の靭性の評価を、適切、かつ容易に行うことができる。
【符号の説明】
【0055】
1…タンク 2…筒状部 3…鏡板部 Dc…中心軸方向 E…吸収エネルギー Eu…上限値 Eb…下限値 Em…中間値 Et…要求吸収エネルギー K…応力拡大係数 L1…シャルピー遷移曲線 L2…相関曲線 L3…相関線図 L4…設計線図 L5…許容シャルピー遷移曲線 S10、S20…タンクの靭性信頼性評価方法 S11…材料の遷移温度を取得するステップ S12…破壊靭性値を取得するステップ S13…要求破壊靭性値を取得するステップ S14…設計許容条件を取得するステップ S15…要求温度指標を取得するステップ S16…許容シャルピー遷移曲線を取得するステップ S17…材料の靭性信頼性を評価するステップ T1~T5…試験温度 Te…設計寿命 Tr…要求遷移温度 vTrE…遷移温度 Tt…設定試験温度 Y…温度指標 Yr…要求温度指標 Z…破壊靭性値 Zr…要求破壊靭性値