(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024165607
(43)【公開日】2024-11-28
(54)【発明の名称】EBG構造基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20241121BHJP
H05K 1/02 20060101ALI20241121BHJP
H05K 1/16 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H05K1/02 J
H05K1/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023081935
(22)【出願日】2023-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000236920
【氏名又は名称】富山県
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(74)【代理人】
【識別番号】100222324
【弁理士】
【氏名又は名称】西野 千明
(72)【発明者】
【氏名】宮田 直幸
【テーマコード(参考)】
4E351
5E316
5E338
【Fターム(参考)】
4E351AA02
4E351GG06
4E351GG20
5E316AA32
5E316AA43
5E316BB02
5E316BB03
5E316BB04
5E316CC08
5E316FF01
5E316HH01
5E316HH22
5E316HH24
5E338AA03
5E338AA16
5E338BB13
5E338BB25
5E338CC04
5E338CC06
5E338CD17
5E338EE11
5E338EE22
5E338EE24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小型化、薄型化を図るのに有効なEBG構造からなる基板の提供を目的とする。
【解決手段】EBG構造の単位構造は、平行に配設された第1導体プレーン11と、第2導体プレーン12と、を備え、第1導体プレーン11と第2導体プレーン12との間であって、一端が第1導体ビア31で接続された第1伝送線路21と、第2伝送線路22を有し、第1伝送線路21の一端は、第1導体プレーン11に短絡接続され、第2伝送線路22の他端は、第2導体プレーン12に対して開放端になっている単位構造が1次元または2次元に配列されていることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平行に配設された第1導体プレーンと第2導体プレーンとを備え、
前記第1導体プレーンと第2導体プレーンとの間であって、一端が導体ビアで接続された第1伝送線路と第2伝送線路を有し、
前記第1伝送線路の他端は前記第1導体プレーンに短絡接続され、前記第2伝送線路の他端は前記第2導体プレーンに対して開放端になっている単位構造が1次元または2次元に配列されていることを特徴とするEBG構造基板。
【請求項2】
前記第1導体プレーンの外側に配設した第3導体プレーンと前記第2導体プレーンの外側に配設した第4導体プレーンの間であって、前記第1伝送線路は前記第1導体プレーンの外側に配設した第3伝送線路を介して前記第1導体プレーンの外側に短絡接続され、
前記第2伝送線路は前記第2導体プレーンの外側に配設した第4伝送線路を介して、前記第2導体プレーンの外側にて開放端になっていることを特徴とする請求項1記載のEBG構造基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ノイズ対策に有効なEBG構造からなる多層基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器の小型化に伴い、デジタル回路からアナログ回路への電磁ノイズの影響が無視できなくなっている。
特に多層基板のプレーン間は平行平板共振を起こし、それがノイズ源となり、Wi-Fi等のGHz帯の通信効率が下がる原因となる。
この場合にチップキャパシタを用いると、コスト増大となる。
そこで、特定の周波数帯において、電磁波伝搬が抑制される特性(阻止帯域)を持つメタマテリアルの1つであるEBG(electromagnetic bandgap)構造が注目されている。
多層基板においては、配列されたパターンを形成することでEBG構造が得られる。
この場合に、電気的特性は基板材料やパターンを形成する単位構造にて決定される。
ここで単位構造のサイズと、阻止帯域の周波数の低周波数化とはトレードオフの関係があり、2GHzレベルの低周波数帯を電磁ノイズ対象のターゲットにするには、単位構造のサイズが大きくなり、これまでは実用化が難しかった。
【0003】
特許文献1には、小型化を目的にした導波路構造を開示している。
同公報に開示する構造はオープンスタブ構造であり、面積の大きさを必要としないスタブ長の調整で所望の周波数帯で効果を発揮させられるため、小型化を可能にしている。
通常は導体プレーンの片側だけを使用するケースが多いが、低周波数化を図るのに伝送線路を概ね2倍にする例が開示されている。
同公報
図11に記載されている導波路構造を模式的に表現し、その等価回路を
図4に示す。
伝送線路121,122を導体プレーン111の表裏の両側に配設することで、バンドギャップが現われる周波数は導体プレーンの片面のみに使用する構造よりも概ね1/2になるものの、この導体プレーンを信号線路のリターンパスとして使用できなくなり、その目的のためには新たに導体プレーン112,113を追加する必要が生じる。
なお、
図4中、131,132は導体ビア、141~144は誘電体層を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、小型化、薄型化を図るのに有効なEBG構造からなる基板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るEBG構造基板は、平行に配設された第1導体プレーンと第2導体プレーンとを備え、前記第1導体プレーンと第2導体プレーンとの間であって、一端が導体ビアで接続された第1伝送線路と第2伝送線路を有し、前記第1伝送線路の他端は前記第1導体プレーンに短絡接続され、前記第2伝送線路の他端は前記第2導体プレーンに対して開放端になっている単位構造が1次元または2次元に配列されていることを特徴とする。
ここで、バンドギャップに重なりがあれば、必ずしも周期的な配列からなる単位構造である必要はないが、この単位構造は1次元または2次元的な周期配列であってもよい。
【0007】
このような構造例を
図1に示す。
詳細な説明は後述するが、本発明に係るEBG構造の単位構造は、オープンスタブにショートスタブを直列に配設した点に特徴がある。
これにより、2枚の導体プレーンの内側だけを使用して、バンドギャップ(阻止帯域)の低周波数化を図ることができる点で、特許文献1では新たに余分な導体プレーンの追加が必要なのと相違し、薄型化、低コスト化を図ることができる。
【0008】
本発明においては、前記第1導体プレーンの外側に配設した第3導体プレーンと前記第2導体プレーンの外側に配設した第4導体プレーンの間であって、前記第1伝送線路は前記第1導体プレーンの外側に配設した第3伝送線路を介して前記第1導体プレーンの外側に短絡接続され、前記第2伝送線路は前記第2導体プレーンの外側に配設した第4伝送線路を介して、前記第2導体プレーンの外側にて開放端にすることもできる。
【0009】
本発明においては、
図2に示すように伝送線路の線路長としてオープンスタブの部分にて導体プレーンの内側と外側の両面を使用するとともに、ショートスタブの部分にても導体プレーンの内側と外側の両面を使用することができる。
これにより、オープンスタブの部分での2倍長とショートスタブの部分の2倍長と合せて概ね4倍にすることができ、バンドギャップの周波数を概ね1/4にできることになる。
この場合に、オープンスタブの部分とショートスタブの部分のそれぞれ外側がリターンパスとして利用できなくなるものの、バンドギャップの低周波数化の効果が大きい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、EBG構造のユニットセルにオープンスタブ構造とショートスタブ構造とを直列に配設したので、従来(特許文献1)のオープンスタブ構造のみの構造とは異なる電気的特性が得られる。
これにより、バンドギャップ周波数の低周波数化ができ、単位構造の小型化、薄型化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る単位構造の構造例(実施例1)を示す。
【
図2】本発明に係る単位構造の他の構造例(実施例2)を示す。
【
図4】従来のEBG構造における単位構造の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず、EBG構造について説明する。
基板の電源プレーンとグランドプレーンとの回路はx方向に周期的に続く回路として捉えることができる。
この時、以下に示すような方程式(1)が成り立つ。
ここで、ω:角周波数、k
x:波数、Y:1周期あたりのアドミッタンス、a
x:x方向の1周期の長さ、L
p:1周期あたりのプレーンのインダクタンスである。
この式のωとk
xの間の関係を分散関係と言い、双方が実数として式を満たす時、そのような波が伝播できること意味する。
左辺はk
xが実数の範囲を動いた時に式(2)の間を動くため、式(3)の範囲では波が減衰し、そのような周波数の範囲をバンドギャップまたはストップバンドと呼ぶ。
バンドギャップ内の周波数では、ノイズ抑制効果が期待でき、そのような効果を持たせた構造をEBG構造と呼ぶ。
【0013】
図1に本発明に係るEBG構造の単位構造の例(実施例1)を示す。
多層基板は、第1誘電体層41~第3誘電体層43の三層構造の例になっている。
電源プレーンまたは、グランドプレーンとして第1導体プレーン11と第2導体プレーン12とが平行平板に配置されている。
この第1導体プレーン11と第2導体プレーン12との間(内側)であって、第1誘電体層41と第2誘電体層42との境界部に第1伝送線路21を配設し、第2誘電体層42と第3誘電体層43との境界部に第2伝送線路22とを有する。
第1伝送線路21と第2伝送線路22との一端は第2導体ビア32で電気接続されている。
また、第1伝送線路21の他端は、第1導体ビア31にて第1導体プレーン11に短絡接続されたショートスタブ構造になっていて、第2伝送線路の他端は第2導体プレーンの内側にて開放端となるオープンスタブ構造になっている。
伝送線路としては、正方形,長方形等の金属パッチ構造,線形状,スパイラル形状,ミアンダ形状等,電気的特性に応じて選択できる。
図1(b)に、その等価回路を示し、下記式(4)が成り立つ。
【0014】
図2は実施例2として、平行に配置された第1導体プレーン11の外側に第3導体プレーン13を追加し、第2導体プレーン12の外側に第4導体プレーン14を追加することで、第1導体プレーン11の内側と外側の両面に第3導体ビア33を介して、第1伝送線路21と第3伝送線路23との一端を接続してある。
また、第2導体プレーン12の内側と外側の両面に第4導体ビア34を介して第2伝送線路22と第4伝送線路24との一端を接続してある。
第1伝送線路21の他端は第1導体ビア31にて、第1導体プレーン11の外側の面で短絡したショートスタブ構造であり、第4伝送線路24の他端は第2導体プレーン12の外側の面に対して開放端となるオープンスタブ構造になっている。
この場合には、誘電体層は41~47の7層構造となっている、
本実施例は、実施例1よりも伝送線路長が2倍になり、バンドギャップの周波数は概ね1/2の周波数になる。
【0015】
次に本発明に係る
図1に示した実施例と
図4に示した従来例とを比較したので、以下、説明する。
図4(b)に示す従来のオープンスタブEBG構造では、アドミッタンスYは、
と見積もることができる。
一方、
図1(b)の本発明のEBG構造のアドミッタンスYは、前述したとおり、式(4)と見積もることができる。
ここでZ
0とlは、それぞれの図において下側の伝送線路における特性インピーダンスと線路長を、Z
0’とl’は、上側の伝送線路における特性インピーダンスと線路長を、C
pは電源/グラウンド層間の容量を、L
vは導体ビアのインダクタンスを表す。
他の記号については、上記と同一である(上記2例のアドミッタンスは、Z
0=Z
0’かつl=l’の時、同一になる。
これは本発明における方法がこの場合において、伝送線路の線路長を2倍にしたのと同様の効果を持つことを意味する。)。
数値計算法としては、FDTD法を用いた。
【0016】
具体的な計算対象としては、正方形伝送線路の一辺2.1mm、電源/グラウンド層間の誘電体の厚み0.216mm、最小線幅0.1mm、最小線間ギャップ0.1mm、正方形ランドの一辺0.5mm、導体ビアの直径0.25mm、誘電体の比誘電率4.5とした場合のEBG構造で、可能な限り1.4GHz近くが下限であるような幅広い周波数帯のバンドギャップを持つものを検討した。
その結果、どちらも図の下側の伝送線路が0.1mm幅で線路長が7.2mm、図の上側の伝送線路が0.2mm幅で線路長が13.6mm、どちらの伝送線路も最も近い導体プレーンとの間隔を0.013mmとしたような構造を選択した。
図5(a)は従来タイプ、
図5(b)に本発明のFDTD法による結果を示す。
バンドギャップの評価のため、両方ともk
x=k
yの線上の値を用いた。
(a)では1.38~3.02GHzに、(b)では1.40~3.49GHzにバンドギャップができていることがわかる。
ここで、(a)の破線は、従来のタイプの計算において、プレーンに必ず間隙が必要となるが、吸収境界条件を用いた場合計算量が増大するため、代替的な計算手法として、プレーンをz軸の方向に追加することでz軸の方向に関して閉じたためである。
そのような場合、電源/グラウンド層間のモード以外にも破線のようなプレーン間の平面波のモードに由来するバンドが現れる。
計算結果のように、本発明は従来のタイプと同様の効果を持つことがわかる。
【符号の説明】
【0017】
11 第1導体プレーン
12 第2導体プレーン
13 第3導体プレーン
14 第4導体プレーン
21 第1伝送線路
22 第2伝送線路
23 第3伝送線路
24 第4伝送線路
31 第1導体ビア
32 第2導体ビア
33 第3導体ビア
34 第4導体ビア
41 第1誘電体層
42 第2誘電体層
43 第3誘電体層